(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】オパール織物の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/13 20060101AFI20231012BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20231012BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20231012BHJP
D02G 3/38 20060101ALI20231012BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20231012BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20231012BHJP
D06Q 1/02 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
D06M15/13
D06M15/693
D06M11/00 120
D02G3/38
D02G3/36
D03D15/47
D06Q1/02
(21)【出願番号】P 2021566022
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 CN2019117197
(87)【国際公開番号】W WO2020228277
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】201910410477.X
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517132876
【氏名又は名称】上海咏姿時装有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鄭 涛
(72)【発明者】
【氏名】鮑 芳
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103498347(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108677320(CN,A)
【文献】特開平04-024237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
D06M10/00-11/84、16/00-16/00、19/00-23/18、
D02G1/00-3/48、D02J1/00-13/00、
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)布地の前処理を行うステップであって、前記前処理は、前記布地に対する反継ぎ、水洗、酸素漂白及び1回目のドライングを含むステップと、
(2)硫酸、ヒドロキシエチルサポニンガム(hydroxyethyl saponin gum)及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前記前処理後の布地にオパール処理を行うステップと、
(3)前記オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得るステップであって、前記後処理は、2回目のドライング、蒸し、洗浄及び乾燥を含むステップと、を含み、
ステップ(1)において、前記布地はコアヤーンに対して繰返、ヒートセット、整経、管巻き、糊付及び製織をこの順に行って得
られ、
前記コアヤーンは疎水性ポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性綿繊維にカバーされたものであり、前記コアヤーンの撚係数の範囲は300~450であり、前記コアヤーンの綿カバー率の範囲は43~48%であることを特徴とするオパール織物の製造方法。
【請求項2】
(1)布地の前処理を行うステップであって、前記前処理は、前記布地に対する反継ぎ、水洗、酸素漂白及び1回目のドライングを含むステップと、
(2)硫酸、ヒドロキシエチルサポニンガム(hydroxyethyl saponin gum)及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前記前処理後の布地にオパール処理を行うステップと、
(3)前記オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得るステップであって、前記後処理は、2回目のドライング、蒸し、洗浄及び乾燥を含むステップと、を含み、
ステップ(1)において、前記布地はコアヤーンに対して繰返、ヒートセット、整経、管巻き、糊付及び製織をこの順に行って得られ、
前記ヒートセットで使用する装置は真空ヒートセット機であり、前記真空ヒートセット機の真空度は1~2気圧で、温度が90~100℃であり、撚数安定率は内層が60~80%で、外層が75~85%であることを特徴とす
るオパール織物の製造方法。
【請求項3】
前記糊付は糊液浸透と被覆が同時に行われる高温糊付であることを特徴とする請求項1に記載のオパール織物の製造方法。
【請求項4】
(1)布地の前処理を行うステップであって、前記前処理は、前記布地に対する反継ぎ、水洗、酸素漂白及び1回目のドライングを含むステップと、
(2)硫酸、ヒドロキシエチルサポニンガム(hydroxyethyl saponin gum)及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前記前処理後の布地にオパール処理を行うステップと、
(3)前記オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得るステップであって、前記後処理は、2回目のドライング、蒸し、洗浄及び乾燥を含むステップと、を含み、
ステップ(1)において、前記布地はコアヤーンに対して繰返、ヒートセット、整経、管巻き、糊付及び製織をこの順に行って得られ、
ステップ(2)において、前記オパール糊は、98%の硫酸30~50重量部と、
ヒドロキシエチルサポニンガム40~60重量部と、アルギン酸ナトリウム5~15重量部とを含むことを特徴とす
るオパール織物の製造方法。
【請求項5】
前記蒸しの温度は108~112℃で、時間が4~6分であることを特徴とする請求項1に記載のオパール織物の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄はアルカリ性洗浄液を使用して45~50℃で13~17分間洗浄することであることを特徴とする請求項1に記載のオパール織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製織分野に属し、具体的には、オパール織物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オパール加工法は、綿、ビスコース、麻、絹、ナイロン、ポリエステル系合成繊維などの2種又は2種以上の繊維からなる織物の表面に、腐食性化学物質(例えば、硫酸、AlCl3など)を付与してドライング、所定の処理により特定の繊維成分を破壊して模様を形成させる模様付け技法で、一般にベルベット生地に用いられる。このような模様は凹凸効果があり、あるいは半透明の状態であるため、装飾効果に優れる。又は、オパール糊に特定の耐性染料を加えて、特定の繊維成分を除去すると同時に別の成分繊維を着色させることで、彩色のオパール織物を得ることもできる。
【0003】
従来、オパール加工法としては直接的な模様付け技法と、防染模様付け技法がある。しかし、製造の過程で、加工プロセスの制限により、オパール織物にはオパール部位の透明度が不十分で、模様の輪郭が鮮明でないなどの問題が多発し、あるいは模様の数が違い、糸が切れるなどの問題があり、オパール織物の全体的な品質が損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は従来の技術における欠点に対して、オパール織物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には、本発明は次の技術的解決手段から実現される。
(1)布地の前処理を行うステップと、
(2)硫酸、合成ガムトラガカンス及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前処理後の布地にオパール処理を行うステップと、
(3)オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得るステップと、を含む、オパール織物の製造方法である。
【0006】
さらに、ステップ(1)において、前記布地はコアヤーンに対して繰返、ヒートセット、整経、管巻き、糊付及び製織をこの順に行って得る。
【0007】
さらに、前記コアヤーンは疎水性ポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性綿繊維にカバーされたものであり、前記コアヤーンの撚係数の範囲は300~450であり、前記コアヤーンの綿カバー率の範囲は43~48%である。
【0008】
さらに、前記ヒートセットで使用する装置は真空ヒートセット機であり、前記真空ヒートセット機の真空度は1~2気圧で、温度が90~100℃であり、撚数安定率は内層が60~80%で、外層が75~85%である。
【0009】
さらに、前記糊付は糊液浸透と被覆が同時に行われる高温糊付である。
【0010】
さらに、ステップ(1)において、前記前処理は、前記布地に対する反継ぎ、水洗、酸素漂白及び1回目のドライングを含む。
【0011】
さらに、ステップ(2)において、前記オパール糊は、98%の硫酸30~50重量部と、合成ガムトラガカンス40~60重量部と、アルギン酸ナトリウム5~15重量部とを含む。
【0012】
さらに、ステップ(3)において、前記後処理は、2回目のドライング、蒸し、洗浄及び乾燥を含む。
【0013】
さらに、前記蒸しの温度は108~112℃で、時間が4~6分である。
【0014】
さらに、前記洗浄はアルカリ性洗浄液を使用して45~50℃で13~17分間洗浄することである。
【発明の効果】
【0015】
従来の技術と比べて、本発明のオパール織物の製造方法は少なくとも次の有益な効果を有する。
(1)本発明のオパール織物の製造方法はプロセスがシンプルで、実現しやすく、コストが安い。製造過程全体で有害な化学製剤を使用しないため、作業者に害がなく環境に不利な影響はない。
【0016】
(2)本発明のオパール織物の製造方法で製造したオパール織物は品質が高く、模様の輪郭が鮮明で、模様が透けてしまい、模様の数が不正確で、糸が切れるなどの問題はなく、模様が美しく、正確にオフセット印刷を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の目的、特徴及び効果の十分な理解のために、具体的な実施形態を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されない。本発明の加工法では下記の内容以外は、いずれも本分野の通常の方法又は装置を用いる。
【0018】
本発明の発明者は従来のオパール織物の製造技法に存在する様々な問題に対し、製造技法の改善を行ってオパール織物の製造方法を提供する。当該製造方法は、(1)布地の前処理を行うことと、(2)硫酸、合成ガムトラガカンス及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前処理後の布地にオパール処理を行うことと、(3)オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得ることと、を含む。
【0019】
好ましくは、具体的な一実施形態に係る本発明のオパール織物の製造方法は、次のステップを含む。
ステップ1であって、布地の前処理である。
【0020】
本発明の製造方法では、例えば、ポリエステル系合成繊維-綿コアヤーンからなる白色の布、ポリエステル系合成繊維-綿混紡布などの従来の布地を使用することができる。
【0021】
後続のオパール処理ステップに備え、オパール処理した箇所における良好な透明度を保証するために、本発明の発明者は布地の製織方法の最適化を行う。当該製織方法において、コアヤーンは疎水性ポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性綿繊維にカバーされたものであり、当該コアヤーンの撚係数の範囲は300~450であり、綿カバー率の範囲は43~48%である。発明者は鋭意検討を重ねたところ、コアヤーンが疎水性ポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性綿繊維にカバーされたものである場合に、最終的なオパール織物は優れた弾性を有することを見出した。コアヤーンの撚係数の大きさとオパール織物の品質は深く関係しており、撚係数が小さすぎる場合に、オパール処理後、長繊維の部分は滑らかさを欠く手触りとなり、絹のような透かし効果が得られない。また、長繊維に撚りをかけると、製品が毛羽立ちしやすいため、耐用年数が縮まる。布地の製織過程で、綿にカバーされた外層の部分は摩擦から綿球ができやすい。撚係数が大きすぎる場合に、製織過程でキンクができやすい。したがって、本発明の発明者はコアヤーンの撚係数を300~450に設定することで、長い耐用年数となる一方、綿球やキンクが生じるなどの問題が避けられる。さらに、本発明の発明者はコアヤーンの綿カバー率の範囲を43~48%に設定することで、最終的な製品は模様が鮮明で、立体感に優れている。
【0022】
本発明に係る布地の製織方法は、具体的には次のステップを含む。
(a)繰返、均一性チェック及び欠陥除去である。
コアヤーンに多くの欠陥があり、ポリエステル系合成長繊維が滑らかであるため、繰返機においてカードワイヤー式ヤーンクリーナーを使用することが好ましく、欠陥の除去効率を高めることができる。カードワイヤーの間隔は0.3~0.4mmであることが好ましい。結び方は一重継ぎとし、簡単にはほつれないよう、小さくて堅牢で引き締まった継ぎ目が要望される。繰返張力は適切に設定する必要があり、繰返張力が大きすぎて、筒体にきつく巻き取ると、内層の撚り止めの効果が損なわれる。その反面、筒体に緩く巻き取ると、撚り止め後のボビン成形の品質が損なわれ、整経のための繰り出しが難しくなる。本ステップではダブルタペット式開口装置を使用し、これはダブルタペット式開口装置を使用すると、2回の綜絖揃えを少しだけずらして行ってもよく、経糸と経糸の間、経糸と綜絖の間の摩擦が低減され、製織時の経糸の切れが緩和されるだけでなく、杼口の開口が一層明瞭になり、浮き織りや掬いなどの欠陥を減らすためにも効果があるためである。
【0023】
オパール織物の経方向と緯方向の充填率、経方向と緯方向の密度はいずれも近く、緯方向の収縮率は普通の綿平織物より大きく、しかもポリエステル系合成長繊維が滑らかで、伸長しやすいため、テンプル装置が布面を効果的に伸張できなければ、製織の過程で耳際の糸切れ又はテンプルきずが生じやすく、しがたってテンプル機構の高度な構成が求められる。本発明において、テーカインテンプルは銅リング式テーカインテンプルを使用し、16枚の銅リングで、歯高さは1mmである。また、布を巻き取るテーカインの鉄外皮は鋭い方が好ましく、布を巻き取るロールは弾性力が大きい方が好ましく、これにより製織の時に、テンプル機構が布面に充分な伸張力を与えることができる。
【0024】
製織工場の温度は20~28℃で、相対湿度が60~75%である。発明者は鋭意検討を重ねたところ、当該温度範囲では織物の特性の安定性が最大限に保たれ、断糸が最大限に低減されるとともに、歪みは起こらず、特に脆性破壊は起こらないことと、当該相対湿度範囲では静電気の発生が減り、毛羽立ちが避けられるとともに、着用者に高い快適性があることを見出した。
【0025】
(b)ヒートセットである。
本ステップは布地の製織にとって特に重要なもので、発明者が鋭意検討を重ねて、オパール織物に使用されるポリエステル系合成繊維-綿コアヤーンの芯がポリエステル系合成長繊維で、ポリエステル系合成長繊維が弾性に優れ、撚糸の撚数が高いため、製織の過程で、経糸と緯糸の張力が少しでも緩むと、キンクができやすくなり、織物の品質が損なわれることを見出したことが理由である。したがって、オパール織物に使用する経コアヤーンと緯コアヤーンは繰返後、ヒートセット処理をしないと、整経と管巻きはできず、糊付と製織に回ることができない。ヒートセット処理により、製織時の管崩れきず、緯糸のもつれ、ループ発生などの不具合を減らして、織物の製織しやすさと品質を向上させることができる。
【0026】
本発明において、ヒートセット装置としては真空ヒートセット機を使用し、撚り止め工程の要件は、コアヤーンボビンの重量が1200gで、ヒートセット機の真空度が1~2気圧で、温度が90~100℃であることで、撚数安定率は内層が60~80%で、外層が75~85%である。前記パラメータの組み合わせにより、管崩れきず、緯糸のもつれ、ループ発生などの不具合を減らすために最適な効果を得ることができる。
【0027】
(c)整経及び管巻きである。
整経では高速整経機を使用し、マガジンクリールにおいて数ロットに分けてボビンを取り替える時は、張力側刺し入れ測定機で測定したデータに基づいて、異なる重さのウエイトリングを多段に配置して、張力の不均一性を軽減することができる。多段にボビンを取り替える場合に、ボビンの直径が異なるため、張力の差が大きく、多段にウエイトリングを配置する必要がない。本発明において、ウエイトリングを多段に配置する場合に、例えば、前段8g、中段7g、後段6gの3段に配置し、多段としない場合に、ウエイトリングは全て9gとする。
【0028】
(d)糊付である。
コアヤーンは糊付を経ると、カバーしている綿繊維とポリエステル系合成長繊維がきつく結合するだけでなく、コアヤーンの表面に層状の糊状膜が被覆され、これによりコアヤーンの強度が向上するとともに、製織中の耐摩耗性が向上する。本発明において、コアヤーンは疎水性のポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性の綿繊維にカバーされたもので、撚糸の撚数が高いため、発明者は糊付処理としては、糊液の浸透と被覆の両方による、前方が後方より重いダブル絞りロールを用いる、高温(温度範囲55~65℃)下糊付という加工プロセスを行い、なお糊付量が少なく、水分率が低く、張力が小さく、伸びが小さいという加工基準を適用する。絞りロールの表面に優れた弾性が必要となるため、好ましくはゴム製の絞りロールを使用する。
【0029】
糊付で使用する糊剤としては改質コーンスターチとPVC(ポリ塩化ビニル)、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)との混合糊、又はPVC、CMC、PAM(ポリアクリルアミド)を主とする化学糊が挙げられる。好ましくは、使用する糊剤はコーンスターチ55%重量とPVC30%重量とCMC15%重量との混合糊である。
【0030】
(e)製織である。
製織で使用する筬は最終的な布地に大きな影響を与える。経糸、緯糸が均一に配列しているというオパール織物の特徴から、本発明では筬番手の高い鋼製筬を使用する。メートル法下筬番手が190以上となれば、製品の品質改善に明らかな効果がある。実際の製織において、筬を通す時は1筬当たり1本の経糸を通すことが好ましく、各筬には最大2本の経糸を通す。
【0031】
製織を終えると綿-ポリエステル系合成繊維二層織物を得、本発明のオパール織物を製造するために使用する布地である。
【0032】
布地を得た後、布地の前処理を行う。前処理は具体的に次のステップを含む。
まず、反継ぎである。オパール処理を行う時に布地が簡単にほつれずしかも堅牢で長持ちするよう、ポリエステル系合成繊維糸を使用して反継ぎすることが好ましい。
【0033】
次に、水洗である。反継ぎ後の布地を清浄な水に入れてすすぎ、例えば、45℃の清浄な水で60分間すすぐ。
【0034】
さらに、酸素漂白である。酸素漂白法(過酸化水素と酸素系漂白剤)を用い、水洗後の布地を酸素漂白剤に入れ、当該酸素漂白剤の温度は約80~88℃で、30~45分間すすぐ。
【0035】
最後に、1回目のドライングである。すすいだ織物を乾燥室に送り込み、織物の整然としている状態を保ち、ドライングを行う。例えば、乾燥室の温度は約92℃で、時間が15分である。
【0036】
ステップ2であって、オパール処理である。
【0037】
オパール糊を使用して前処理後の布地にオパール処理を行う。本発明の発明者はオパール糊の構成の改善を行った。本発明において、オパール糊は98wt%の硫酸30~50重量部、合成ガムトラガカンス40~60重量部及びアルギン酸ナトリウム5~15重量部を30~45℃下で(例えば、12時間)膨潤させて得る。前記構成のオパール糊を使用すると、オパールによる模様付けが鮮明で、糊をきれいに洗い落とすことができ、複数種の繊維の交織/混紡布又はフランネルからポリエステル系合成繊維を除去して、立体的な又は他の特殊な模様付け効果を得るのに適する。合成ガムトラガカンスの化学名はヒドロキシエチルサポニンガム(hydroxyethyl saponin gum)である。
【0038】
オパール糊を得ると、所定の模様をこしらえたオパールプレートを前記布地に置いて、オパール模様の周縁部にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、最後にオパール糊をオパール模様に付与する。オパール模様が形成したら、例えば、30分後に、オパール糊を除去する。
【0039】
ステップ3であって、後処理である。
【0040】
オパール処理後、布地に後処理を行う。具体的には、次のステップを含む。
まず、2回目のドライングである。糊を完全に除去した織物を再びドライヤー(乾燥室)に入れてドライングし、例えば、ドライヤーを100℃に設定し、ドライング時間を5分に設定する。
【0041】
次に、蒸しである。2回目のドライングを経た織物を蒸し、例えば、蒸しの温度は108~112℃で、圧力は1気圧であり、時間が4~6分である。
【0042】
さらに、洗浄である。アルカリ性洗浄液を使用して45~50℃で13~17分洗浄する。アルカリ性洗浄液は、例えば、石鹸、衣料用粉末洗剤などである。
【0043】
最後に、乾燥である。洗浄後の織物を取り出して、日干しで乾燥させると、オパール織物を得る。
【0044】
後処理ステップにより、特に前記条件下で後処理を行うと、オパール織物のオパールした箇所の輪郭が鮮明で、凸凹効果に優れ、織物の充填率が要件を満たすことができ、織物がほつれたり、織物が充填しすぎたりしてオパール効果が見えないことはない。
【0045】
本発明の製造方法で得たオパール織物は総充填率が65~75%で、経方向の充填率が45~55%で、緯方向の充填率が40~55%である。なお、オパール織物の充填率は2つの充填率からなり、1つは織物のコアヤーン部分の充填率で、もう1つは織物の透かし部分の充填率である。織物の充填率が大きすぎると、製織が難しくなり、織物の充填率が小さすぎると、透かし部分の経糸と緯糸がずれやすい。本発明のオパール織物の充填率からすれば、本発明のオパール織物は優れた柔らかさを有し、オパール模様が明瞭で明らかな凸凹効果を有する。
【0046】
本発明の方法で使用する各種の原料、物質はいずれも市場から購入することができ、特に断りがある場合を除き、特段の処理は不要である。
【0047】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は当該実施例の範囲に限定されるものではない。次の実施例で具体的な条件を記さない実験方法は、通常の方法と条件とし、又は商品の取扱説明書に従って選択する。
【0048】
実施例1:布地の製織
(a)繰返である。撚係数が300で綿カバー率が43%のポリエステル系合成繊維-綿コアヤーンを使用し、コアヤーンの均一性をチェックし、カードワイヤーの間隔が0.3mmのカードワイヤー式ヤーンクリーナーを使用して欠陥を除去した。
【0049】
(b)ヒートセットである。真空ヒートセット機を使用し、ヒートセット機の真空度は1気圧で、温度が90℃であり、撚数安定率は内層が78%で、外層が80%であった。
【0050】
(c)整経と管巻きである。整経機においてウエイトリングを、前段8g、中段7g、後段6gと多段に配置した。
【0051】
(d)糊付である。ダブル絞りロールで、約55℃で糊付し、糊剤構成はコーンスターチ55%(重量)、PVC30%(重量)、CMC15%(重量)であった。
【0052】
(e)製織である。筬番手は190で、1筬当たり1本の経糸を通し、織機において製織した。
【0053】
実施例2:布地の製織
(a)繰返である。撚係数が360で綿カバー率が45%のポリエステル系合成繊維-綿コアヤーンを使用し、コアヤーンの均一性をチェックし、カードワイヤーの間隔が0.3mmのカードワイヤー式ヤーンクリーナーを使用して欠陥を除去した。
【0054】
(b)ヒートセットである。真空ヒートセット機を使用し、ヒートセット機の真空度は2気圧で、温度が93℃であり、撚数安定率は内層が75%で、外層が79%であった。
【0055】
(c)整経と管巻きである。整経機においてウエイトリングを、前段8g、中段7g、後段6gと多段に配置した。
【0056】
(d)糊付である。ダブル絞りロールで、約55℃で糊付し、糊剤構成はコーンスターチ55%(重量)、PVC30%(重量)、CMC15%(重量)であった。
【0057】
(e)製織である。筬番手は190で、1筬当たり1本の経糸を通し、織機において製織した。
【0058】
実施例3:布地の製織
(a)繰返である。撚係数が450で綿カバー率が48%のポリエステル系合成繊維-綿コアヤーンを使用し、コアヤーンの均一性をチェックし、カードワイヤーの間隔が0.3mmのカードワイヤー式ヤーンクリーナーを使用して欠陥を除去した。
【0059】
(b)ヒートセットである。真空ヒートセット機を使用し、ヒートセット機の真空度は1気圧で、温度が100℃であり、撚数安定率は内層が80%で、外層が81%であった。
【0060】
(c)整経と管巻きである。整経機においてウエイトリングを、前段8g、中段7g、後段6gと多段に配置した。
【0061】
(d)糊付である。ダブル絞りロールで、約55℃で糊付し、糊剤構成はコーンスターチ55%(重量)、PVC30%(重量)、CMC15%(重量)であった。
【0062】
(e)製織である。筬番手は190で、1筬当たり1本の経糸を通し、織機において製織した。
【0063】
実施例4:オパール織物の製造
(1)前処理である。ポリエステル系合成繊維糸を使用して反継ぎし、反継ぎ後の布地を45℃の清浄な水に入れて60分間すすぎ、約80℃の酸素漂白剤において45分間すすぎ、その後、布地を温度が約92℃の乾燥室に送って15分間ドライングした。
【0064】
(2)オパール処理である。98wt%の硫酸、合成ガムトラガカンス、アルギン酸ナトリウムを重量比30:60:10で混合し、12時間膨潤させてオパール糊を得、オパールプレートを前処理後に布地の上に置いて、オパール模様の周縁部にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、最後にオパール糊をオパール模様に付与し、オパール模様が形成したら、オパール糊を除去した。
【0065】
(3)後処理である。糊を完全に除去した織物を100℃の乾燥室に送って5分間ドライングし、次に108℃と1気圧下で6分間蒸し、さらに衣料用粉末洗剤を使用して45℃下で17分間洗浄し、日干しで乾燥させると、オパール織物を得た。
【0066】
実施例5:オパール織物の製造
(1)前処理である。ポリエステル系合成繊維糸を使用して反継ぎし、反継ぎ後の布地を45℃の清浄な水に入れて60分間すすぎ、約83℃の酸素漂白剤において40分間すすぎ、その後、布地を温度が約92℃の乾燥室に送って15分間ドライングした。
【0067】
(2)オパール処理である。98wt%の硫酸、合成ガムトラガカンス、アルギン酸ナトリウムを重量比40:50:6で混合し、12時間膨潤させてオパール糊を得、オパールプレートを前処理後に布地の上に置いて、オパール模様の周縁部にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、最後にオパール糊をオパール模様に付与し、オパール模様が形成したら、オパール糊を除去した。
【0068】
(3)後処理である。糊を完全に除去した織物を100℃の乾燥室に送って5分間ドライングし、次に110℃と1気圧下で5分間蒸し、さらに衣料用粉末洗剤を使用して46℃下で15分間洗浄し、日干しで乾燥させると、オパール織物を得た。
【0069】
実施例6:オパール織物の製造
(1)前処理である。ポリエステル系合成繊維糸を使用して反継ぎし、反継ぎ後の布地を45℃の清浄な水に入れて60分間すすぎ、約88℃の酸素漂白剤において45分間すすぎ、その後、布地を温度が約92℃の乾燥室に送って15分間ドライングした。
【0070】
(2)オパール処理である。98wt%の硫酸、合成ガムトラガカンス、アルギン酸ナトリウムを重量比50:40:15で混合し、12時間膨潤させてオパール糊を得、オパールプレートを前処理後に布地の上に置いて、オパール模様の周縁部にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、最後にオパール糊をオパール模様に付与し、オパール模様が形成したら、オパール糊を除去した。
【0071】
(3)後処理である。糊を完全に除去した織物を100℃の乾燥室に送って5分間ドライングし、次に112℃と1気圧下で4分間蒸し、さらに衣料用粉末洗剤を使用して50℃下で13分間洗浄し、日干しで乾燥させると、オパール織物を得た。
【0072】
前記実施例は本発明の好ましい実施形態で、本発明の実施形態が前記実施例に限定されない。本発明の趣旨から逸脱することなく他に入れ替え、添削、組み合わせ、補正、省略などを行う場合は、そのいずれも本発明の保護範囲と同等なものとして含まれる。
【0073】
[付記]
[付記1]
(1)布地の前処理を行うステップと、
(2)硫酸、合成ガムトラガカンス及びアルギン酸ナトリウムを含むオパール糊で前処理後の布地にオパール処理を行うステップと、
(3)オパール処理後の布地に後処理を行ってオパール織物を得るステップと、を含むことを特徴とするオパール織物の製造方法。
【0074】
[付記2]
ステップ(1)において、前記布地はコアヤーンに対して繰返、ヒートセット、整経、管巻き、糊付及び製織をこの順に行って得ることを特徴とする付記1に記載のオパール織物の製造方法。
【0075】
[付記3]
前記コアヤーンは疎水性ポリエステル系合成長繊維なる芯が親水性綿繊維にカバーされたものであり、前記コアヤーンの撚係数の範囲は300~450であり、前記コアヤーンの綿カバー率の範囲は43~48%であることを特徴とする付記2に記載のオパール織物の製造方法。
【0076】
[付記4]
前記ヒートセットで使用する装置は真空ヒートセット機であり、前記真空ヒートセット機の真空度は1~2気圧で、温度が90~100℃であり、撚数安定率は内層が60~80%で、外層が75~85%であることを特徴とする付記2に記載のオパール織物の製造方法。
【0077】
[付記5]
前記糊付は糊液浸透と被覆が同時に行われる高温糊付であることを特徴とする付記2に記載のオパール織物の製造方法。
【0078】
[付記6]
ステップ(1)において、前記前処理は、前記布地に対する反継ぎ、水洗、酸素漂白及び1回目のドライングを含むことを特徴とする付記1に記載のオパール織物の製造方法。
【0079】
[付記7]
ステップ(2)において、前記オパール糊は、98%の硫酸30~50重量部と、合成ガムトラガカンス40~60重量部と、アルギン酸ナトリウム5~15重量部とを含むことを特徴とする付記1に記載のオパール織物の製造方法。
【0080】
[付記8]
ステップ(3)において、前記後処理は、2回目のドライング、蒸し、洗浄及び乾燥を含むことを特徴とする付記1に記載のオパール織物の製造方法。
【0081】
[付記9]
前記蒸しの温度は108~112℃で、時間が4~6分であることを特徴とする付記8に記載のオパール織物の製造方法。
【0082】
[付記10]
前記洗浄はアルカリ性洗浄液を使用して45~50℃で13~17分間洗浄することであることを特徴とする付記8に記載のオパール織物の製造方法。