(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 20/00 20060101AFI20231012BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20231012BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20231012BHJP
H01G 9/20 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08F20/00 510
C08F2/50
C09K3/10 E
H01G9/20 113A
H01G9/20 113B
H01G9/20 303A
(21)【出願番号】P 2022161721
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2018129434の分割
【原出願日】2018-07-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】木本 嶺
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/141299(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/060185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00
C08F 2/50
H01G 9/20
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(C):(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分
からなる光硬化性成分
、又は、
成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、
からなる光硬化性成分と、
光重合開始剤と、
を含有する光硬化性組成物であって、
前記光硬化性組成物の全質量に対する前記光硬化性成分の合計含有割合が、50質量%~99.8質量%であり、
成分(A)及び成分(C)の質量比が60:40~100:0であり、且つ、
成分(A)及び成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含み、
成分(B)は
、リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー
であり、且つ
成分(B)は、成分(C)の多官能光硬化性成分でない、
太陽電池を封止するため又は電子デバイスを封止するための光硬化性組成物。
【請求項2】
成分(C)の含有量が、前記光重合開始剤1質量部当たり、0質量部~35質量部である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系、α‐アミノアセトフェノン系、α‐ヒドロキシアセトフェノン系、又はオキシムエステル系の光重合開始剤である、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーが、ジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(C)は、ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、及び水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記光重合開始剤の前記光硬化性組成物中の含有量は、前記光硬化性成分100質量部に対して、0.01質量部~10質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む太陽電池。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物に関し、より詳しくは光硬化性成分と光重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池は、色素を利用して光エネルギーを電気に変換する太陽電池であり、次世代型太陽電池として注目されている。色素増感型太陽電池は、一般に2枚の導電性基板の間に電解液が封入された構造を有する。当該電解液の封入は、色素増感型太陽電池の耐久性にとって重要である。当該電解液の封入に関して、これまでいくつかの技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、(A)分子内に炭素数10~20の直鎖脂肪族炭化水素を有する(メタ)アクリレート 100重量部、(B)脂環式(メタ)アクリレート 5~15重量部、(C)特定の一般式で示されるスチレン系熱可塑性エラストマー 10重量部以上、及び、(D)光重合開始剤を主成分とする光硬化性の色素増感型太陽電池用シール剤が開示されている。また、下記特許文献2には、特定の単官能(メタ)アクリレート、飽和熱可塑性エラストマー、及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-302564号公報
【文献】特開2010-180324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色素増感型太陽電池の耐久性向上にとって、電解液を封入するために用いられる封止材の性能を高めることは重要である。
例えば、外部の水蒸気が封止材を透過して電解液と接触すると、光エネルギーの電気への変換効率が低下する。そのため、当該封止材の透湿性は低いことが要求される。
電解液の漏洩も当該変換効率を低下させる。そのため、当該封止材は、2枚の導電性電極板との接着性が高いことも要求される。
【0006】
電子デバイスにとっても、素子を封入するために用いられる封止材は重要である。例えば液晶及び有機ELなどの電子デバイスは、素子が樹脂組成物中に封入されている構造をとり、当該素子は水蒸気と接触しないことが望ましい。そのため、水蒸気から素子を保護するために、素子の封入のために用いられる封止材の透湿性は低いことが要求される。
【0007】
以上を踏まえ、本発明は、透湿性が低く且つ接着性に優れた封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の組成を有する光硬化性組成物が、透湿性が低く且つ接着性に優れた封止材として利用できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(C):(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分
からなる光硬化性成分、又は、
成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、
からなる光硬化性成分と、
光重合開始剤と、
を含有する光硬化性組成物であって、
前記光硬化性組成物の全質量に対する前記光硬化性成分の合計含有割合が、50質量%~99.8質量%であり、
成分(A)及び成分(C)の質量比が60:40~100:0であり、且つ、
成分(A)及び成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含み、
成分(B)は、リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーであり、且つ、
成分(B)は、成分(C)の多官能光硬化性成分でない、
太陽電池を封止するため又は電子デバイスを封止するための光硬化性組成物を提供する。
成分(C)の含有量が、前記光重合開始剤1質量部当たり、0質量部~35質量部であってよい。
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系、α‐アミノアセトフェノン系、α‐ヒドロキシアセトフェノン系、又はオキシムエステル系の光重合開始剤であってよい。
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーが、ジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものであってよい。
前記成分(C)は、ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、及び水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。
前記光重合開始剤の前記光硬化性組成物中の含有量は、前記光硬化性成分100質量部に対して、0.01質量部~10質量部であってよい。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物も提供する。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む太陽電池も提供する。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む電子デバイスも提供する。
また、本発明は、光硬化性成分と光重合開始剤とを含有し、前記光硬化性成分が、成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、成分(C):(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含み、成分(A)及び成分(C)の質量比が60:40~100:0であり、且つ、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含む、光硬化性組成物を提供する。
前記成分(B)の極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、カルボキシル基又はリン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、ジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものであってよい。
前記光硬化性成分の前記光硬化性組成物の全質量に対する合計含有割合は、20~100質量%でありうる。
本発明の一つの実施態様に従い、前記光硬化性組成物は、太陽電池を封止するためのものであってよい。
本発明の他の実施態様に従い、前記光硬化性組成物は、電子デバイスを封止するためのものであってもよい。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物も提供する。
本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む太陽電池も提供する。
本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む電子デバイスも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、透湿性が低く且つ接着性に優れた封止材として利用できる光硬化性組成物が提供される。当該光硬化性組成物によって、太陽電池の耐久性を向上することができる。また、当該光硬化性組成物によって、太陽電池以外の電子デバイスの耐久性を向上することもできる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】色素増感型太陽電池の構造の例を示す図である。
【
図3】色素増感型太陽電池の製造方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0013】
1.光硬化性組成物
【0014】
本発明の光硬化性組成物は、光硬化性成分と光重合開始剤とを含有し、前記光硬化性成分が、成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、成分(C):(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含む。前記光硬化性組成物において、成分(A)及び成分(C)の質量比が60:40~100:0であり、且つ、前記光硬化性組成物は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含む。
光硬化性組成物の硬化物に低い透湿度及び優れた接着性を両立させることは困難である場合が多い。本発明者らは、光硬化性組成物が成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を特定の量で含むことによって、当該光硬化性組成物の硬化物が低い透湿度を有し且つ優れた接着性を有することを見出した。本発明の光硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物は透湿度が低く且つ接着性に優れているので、当該光硬化性組成物は、例えば太陽電池及び電子デバイスなどにおける封止材として用いるために適している。以下で、太陽電池及び電子デバイスの具体的な構造の例を示しつつ、本発明の効果をより詳細に説明する。
【0015】
太陽電池のうち色素増感型太陽電池の基本的な構造の模式図を
図1に示す。
図1は、色素増感型太陽電池の断面の一例を模式的に示す図である。
図1に示される色素増感型太陽電池100は、透明導電膜(Transparent Conducting Oxide、TCO)102を積層された透明基板101を有する。透明導電膜102の、透明基板101との接触面と反対側の面に、金属酸化物半導体粒子104から形成される多孔質な金属酸化物半導体層103が形成されている。金属酸化物半導体層103は、例えば多孔質酸化チタンなどの金属酸化物半導体粒子を焼き付けることにより形成されうる。金属酸化物半導体粒子104には色素105が吸着している。また、透明基板101と向かい合うように、基板106が配置され、基板106の透明基板101側の面に導電膜107が積層されている。透明導電膜102と導電膜107との間の空間108が、電解液により満たされている。当該電解液を空間108内に封入するために、封止材109が設けられている。封止材109は、透明導電膜102及び導電膜107に接着されている。
色素増感型太陽電池100に照射された光は、透明基板101及び透明導電膜102を透過して、金属酸化物半導体層103に到達する。当該光は、金属酸化物半導体層103の色素105により吸収され、色素105から電子が放出される。当該電子は、金属酸化物半導体層103に移動し、透明導電膜102を伝わり、そして、回路110を通って、対極の導電膜107に到達する。当該電子によって還元反応が起こり、電解液中に例えばヨウ化物イオン(I
-)が生成される。当該ヨウ化物イオンは、色素105に電子を渡し
て、再度酸化される。以上のサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
なお、電解液の代わりに、固体の電解質が用いられてもよい。固体の電解質を用いた色素増感型太陽電池は、全固体型の色素増感型太陽電池とも呼ばれる。
【0016】
色素増感型太陽電池100において、外部の水蒸気が封止材109を透過して電解液と接触することは、光の電気への変換効率の低下をもたらすので望ましくない。外部の水分の前記透過は、色素増感型太陽電池が全固体型であっても問題となる。
また、封止材109と透明導電膜102又は導電膜107との接着性が悪い場合は、電解液の漏洩が起こり又は外部の水分又は空気が電解液と接触しうる。当該漏洩及び当該接触も、光の電気への変換効率の低下をもたらすので望ましくない。
本発明の光硬化性組成物の硬化物は、低い透湿性と高い接着性とを有する。そのため、本発明の光硬化性組成物は、色素増感型太陽電池などの太陽電池の封止材として使用するために適している。
【0017】
有機EL及び液晶などの電子デバイスの素子は、しばしば封止材によって封入されている。封止材は、電子デバイスの素子を外部から保護するために、例えば水蒸気から素子を保護するために用いられる。電子デバイスの素子の封入パターンの例を
図2に示す。
図2の(A)において、外部から保護されるべき素子201は、例えばガラス又はフィルムなどの1対の基板202及び203により挟まれており、且つ、素子の側面が封止材204によって囲まれている。
図2の(A)は、いわゆる枠封止と呼ばれる方式による素子の封止である。
図2の(B)において、素子211が1枚の基板212上に載せられ、且つ、素子211の基板と接している部分以外の全てが、封止材213によって封止されている。
図2の(B)は、いわゆる全面封止と呼ばれる方式による素子の封止である。
図2の(C)は、
図2の(B)に示した全面封止構造の封止材223に、さらに基板224が積層されている封止方式である。すなわち、素子221が1枚の基板222上に載せられ、素子221の基板と接している部分以外の全てが封止材223によって封止されており、且つ、基板222と対向するように、基板224が封止材223に積層されている。
電子デバイスにおいても、外部の水分が封止材を透過して素子と接触することは望ましくない。例えば、有機ELパネルにおいて、水蒸気が封止材を透過して素子に接触することにより又は水分が封止材と基板との隙間から侵入することにより、その発光領域が縮小する。そのため、電子デバイスの素子においても、封止材は、透湿性が低いこと及び接着性が高いことが望ましい。
本発明の光硬化性組成物の硬化物は、低い透湿性と高い接着性とを有する。そのため、本発明の光硬化性組成物は、電子デバイスの封止材として使用するために適している。
【0018】
以下で、本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分及び光重合開始剤について、それぞれ説明する。
【0019】
[光硬化性成分]
【0020】
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分は、成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び、成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む。本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分は、さらに、成分(C)として、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含んでもよい。本発明の光硬化性組成物中において、成分(A)及び成分(C)の質量比が60:40~100:0であり、且つ、成分(B)が、成分(A)及び成分(C)の合計100質量部に対し0.01質量部~10質量部で含まれる。光硬化性成分が成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を上記の量で含むことにより、前記光硬化性組成物の硬化物は、透湿性が低く且つ接着性に優れている。
【0021】
本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマー若しくはメタクリレートモノマー又はこれらの混合物を意味する。
本発明において、単官能とは、1つの分子が光重合性の炭素-炭素二重結合を1つ有することを意味し、すなわちアクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有することを意味する。すなわち、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーである。
本発明において、脂環式とは、1つの分子内に1つの分子内に1つの脂環式炭化水素基を有することを意味する。すなわち、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、エステル残基〔-C(=O)ORのR〕が脂環式炭化水素基である単官能(メタ)アクリレートである。好ましくは、当該脂環式炭化水素基は、カルボキシル基、エポキシ基、リン酸エステル基、及びハロゲン基などの極性基を有していない脂環式炭化水素基である。
【0022】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、ホモポリマーの場合のTgが100℃以上であり、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらにより好ましくは115℃以上である。このようなTgを有する脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーを前記成分(B)と前記比率で組み合わせることによって、低い透湿性及び高い接着性を達成することができる。Tgが100℃以上であることは、特に透湿性を低めることに寄与する。
また、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーのTgは、例えば260℃以下であり、特には230℃以下であり、より特には200℃以下であってよい。
本発明において、Tgは、1つの脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーのみから構成されるホモポリマーのTgであり、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0023】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくはジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものであり、より好ましくはジシクロペンタニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものである。すなわち、当該モノマーに含まれる脂環式炭化水素基が、好ましくはジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、又はイソボルニル基である。前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーに含まれる脂環式炭化水素基がこれらの構造のいずれかであることが、封止材の透湿性の低下及び接着性の向上に寄与する。
【0024】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの全炭素数は、好ましくは13以上であり、より好ましくは13~16、さらにより好ましくは13~15、特に好ましくは13又は14である。これにより、封止材の透湿性がより低くなり且つ接着性がより高まる。
【0025】
前記成分(A)として用いられる好ましい化合物として、例えば以下を挙げることができる:
イソボルニルメタクリレート(Tg:110℃)、
ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンテニルメタクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、
1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)、
1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、
2-メチルアダマンチルアクリレート(Tg:120℃)、及び
2-メチルアダマンチルメタクリレート(Tg:170℃)。
本発明において、前記成分(A)として、これらの化合物のうちの1つが用いられてよく又は2つ以上の組み合わせが用いられてもよい。
本発明の特に好ましい実施態様において、前記成分(A)は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートである。本発明の特に好ましい実施態様において、前記成分(A)は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-トである。
【0026】
前記成分(B)の(メタ)アクリレートモノマーが有する極性基は、好ましくはカルボキシル基、リン酸基、水酸基、又はアミノ基であり、より好ましくはカルボキシル基又はリン酸基である。特には、前記成分(B)は脂環式の(メタ)アクリレートモノマーでない。極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを前記成分(A)と前記比率で組み合わせることによって、低い透湿性及び高い接着性を達成することができる。極性基は、特に接着性を高めることに寄与する。
【0027】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、及び2-ヒドロキシエチルフタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)を挙げることができる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとして、これら化合物のうちの1つが用いられてよく又は2以上の組み合わせが用いられてもよい。
【0028】
リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、リン酸(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、及びリン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)を挙げることができる。リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、これら化合物のうちの1つが用いられてよく又は2以上の組み合わせが用いられてもよい。
【0029】
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記成分(B)は、リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはリン酸(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、及びリン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)のうちから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであり、さらにより好ましくはリン酸(2-アクリロイルオキシエチル)及び/又はリン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)である。
【0030】
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分のうち成分(C)の量は0質量部であってよく、すなわち、光硬化性成分は成分(C)を含まなくてもよい。この場合、成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して例えば0.01質量部~10質量部、好ましくは0.05質量部~10質量部、より好ましくは1~5質量部でありうる。このような質量比で前記成分(A)及び前記成分(B)を含むことによって、本発明の光硬化性組成物は、低い透湿性と高い接着性とを両立することができる。低い透湿性と高い接着性とを両立させることはしばしば困難であるが、本発明者らは以上で述べたとおりの組成により、低い透湿性と高い接着性とを両立させることができることを見出した。
前記光硬化性成分が成分(C)を含まない場合、本発明の光硬化性組成物は成分(A)及び成分(B)のみを光硬化性成分として含みうる。
【0031】
前記光硬化性成分はさらに、成分(C)として、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含んでもよい。成分(C)は、成分(A)及び成分(B)以外の光硬化性成分である。成分(C)のより具体的な化合物は、以下に記載されているとおりである。成分(C)として、これら化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせ(例えば2つ又は3つの組み合わせ)を用いることができる。成分(C)を含むことにより、本発明の光硬化性組成物の硬化物の透湿性の低下及び接着性の向上をもたらすことができる。特には、成分(C)が多官能であることが、当該硬化物の透湿性の低下及び接着性の向上に寄与していると考えられる。本発明において、多官能とは、前記群に含まれる官能基を合計で例えば2つ以上、特には2~20、より特には2~10有することを意味してよい。
成分(C)を含むことは、本発明の光硬化性組成物の硬化物のフレキシブル性の向上の観点からも好ましい。当該向上されたフレキシブル性は、フレキシブルな太陽電池又は電子デバイスを製造するために有益である。
【0032】
前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば(メタ)アクリロリル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、(メタ)アクリロイル基を1つ有し且つエポキシ基又はオキセタニル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、及び(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートを挙げることができ
る。
また、(メタ)アクリロリル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ有する光硬化性成分として、例えば、ポリエーテル系多官能ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコン系多官能(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート(特には水添ポリブタジエン系ウレタンアクリレート)、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、及び水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの化合物に含まれる官能基の数は、例えば2~6である。
以上で述べた化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0033】
前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えばビニルエーテル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ、特に好ましくは2つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及びトリエチレングリコールジビニルエーテルを挙げることができる。
また、前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、ビニルエーテル基を1つ有し且つエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0034】
前記エポキシ基を含有する多官能光硬化性成分として、エポキシ基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ、特に好ましくは2つ有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートを挙げるこ
とができる。
また、前記エポキシ基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば多官能エポキシ樹脂を挙げることができ、より具体的にはエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂を挙げることができる。
エポキシ基を2つ以上(特には2つ)有するエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールF型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型多官能エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、及びビフェニル型多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。
また、エポキシ基を2つ以上(特には3つ以上)有するエポキシ樹脂として、例えばナフタレン型多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、ゴム変性型多官能エポキシ樹脂、キレート変性型多官能エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂、及び多官能エポキシ化ポリブタジエンを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0035】
前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、オキセタニル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、キシリレンビスオキセタン及び3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタンを挙げることができる。
また、前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、オキセタニル基を1つ有し且つエポキシ基又はビニルエーテル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、3‐エチル‐3‐(グリシジルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(オキシラニルメトキシ)オキセタン、及び3-エチル-3-(ビニルオキシメチル)オキセタンを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0036】
特に好ましくは、前記成分(C)は、(メタ)アクリロイル基を含有する多官能光硬化性成分であり、より好ましくはポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
【0037】
本発明の光硬化性組成物が前記成分(C)を含む場合、好ましくは、成分(A):成分(C)の質量比が60:40~100未満:0超であり、且つ、前記光硬化性組成物は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含む。
成分(A):成分(C)の質量比は、より好ましくは60:40~99.9:0.1であり、より好ましくは60:40~99:1であり、より好ましくは63:37~98:2であり、さらにより好ましくは65:35~95:5であり、特に好ましくは70:30~85:15である。
成分(B)の含有量は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、より好ましくは0.03~10質量部であり、特に好ましくは0.05~10質量部である。
例えば、本発明の光硬化性組成物が前記成分(C)を含む場合、成分(A):成分(C)の質量比が70:30~85:15であり、且つ、前記光硬化性組成物は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.05~10質量部含む。
本発明の光硬化性組成物が前記成分(C)を含む場合における、成分(A)及び成分(C)の上記質量比は、成分(A)及び成分(C)の合計質量を100質量部とした場合の、当該100質量部の内訳である。また、本発明の光硬化性組成物が成分(C)を含む場合における成分(B)の含有量は、成分(A)及び成分(C)の合計質量を100質量部とした場合の当該100質量部に対する量である。
成分(A)~(C)に関する上記質量比が、透湿性の低下、接着性の向上、及び硬化物のフレキシブル性の向上の観点から特に好ましい。
前記光硬化性成分が成分(C)を含む場合、本発明の光硬化性組成物は成分(A)、成分(B)、及び成分(C)のみを光硬化性成分として含みうる。
【0038】
前記光硬化性組成物の全質量に対する前記光硬化性成分の合計含有割合は、好ましくは20質量%~99.9質量%であり、より好ましくは30質量%~99.8質量%であり、より好ましくは50質量%~99.5質量%、さらにより好ましくは80質量%~99.5質量%、特に好ましくは90質量%~99.5質量%でありうる。光硬化性成分の合計含有割合が低すぎる場合は、硬化が不十分となる場合がある。
【0039】
[光重合開始剤]
【0040】
本発明の光硬化性組成物は、光重合開始剤を含む。本発明において、光重合開始剤として、好ましくはアシルフォスフィンオキサイド系、α‐アミノアセトフェノン系、α‐ヒドロキシアセトフェノン系、又はオキシムエステル系の光重合開始剤が用いられ、より好ましくはアシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を用いられる。
アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤として、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを挙げることができる。特に好ましくは、本発明において、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが光重合開始剤として用いられる。
α‐アミノアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンを挙げることができる。
α‐ヒドロキシアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及び2-ヒロドキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンを挙げることができる。
オキシムエステル系の光重合開始剤として、例えば1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及び、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)を挙げることができる。
【0041】
前記光重合開始剤の前記光硬化性組成物中の含有量は、前記光硬化性成分100質量部に対して、例えば0.01質量部~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.1質量部~8質量部の範囲内であり、より好ましくは0.2~5質量部の範囲内にある。
【0042】
[充填材]
【0043】
本発明の光硬化性組成物は、充填材を含みうる。充填材の量を調節することによって、光硬化性組成物の粘度を調整することができる。充填材は、例えば無機粒子であってよく、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイトが挙げられる。例えば100~500m2/g、好ましくは200~400m2/gの比表面積を有するフュームドシリカ(特には親水性フュームドシリカ)が、本発明の光硬化性組成物の充填材として好ましい。
【0044】
充填材の量は、例えば充填剤の種類又は求められる光硬化性組成物の粘度に応じて、当業者により適宜選択されてよい。充填材がフュームドシリカである場合、フュームドシリカは、光硬化性組成物の全質量に対して、例えば1質量%~10質量%、好ましくは2質量%~9質量%、より好ましくは3質量%~8質量%の含有割合で含まれてよい。上記含有割合によって、本発明の光硬化性組成物が封止材として利用しやすい粘度を有する。
【0045】
[硬化手段]
【0046】
本発明において、光硬化性組成物とは、当該組成物に光を照射することにより硬化する性質を有する組成物である。本発明の光硬化性組成物を硬化させるために照射される光は、例えば紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、又はアルファ線であり、より好ましくは紫外線及び電子線であり、さらにより好ましくは紫外線でありうる。
光を照射するための装置は、照射される光の種類により当業者により適宜選択されうる。当該装置として市販入手可能なものが用いられてよい。例えば、電子線を照射するには、通常20~2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を照射する。電子線の照射線量は、例えば1~300kGyであり、好ましくは5~200kGyでありうる。また、紫外線を照射するために、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及び無電極ランプなどのUV照射装置が用いられてよい。照射される紫外線の波長は、例えば200nm~400nmでありうる。
【0047】
[用途]
【0048】
本発明の光硬化性組成物は、例えば封止材として用いられてよい。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、封止された内部を外部の水蒸気から保護するために適している。当該硬化物は、接着性に優れているので、封止材によって封入された液体、例えば電解液などが漏洩することを防ぐことができる。すなわち、本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物も提供する。
【0049】
本発明の一つの好ましい実施態様に従い、本発明の光硬化性組成物は、太陽電池を封止するために用いられてよく、より特には太陽電池を構成する電解液又は電解質を封止するために用いられてよい。前記太陽電池は、好ましくは色素増感型太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、又は有機薄膜太陽電池であり、特に好ましくは色素増感型太陽電池でありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、色素増感型太陽電池の電解液又は固体型電解質を封止するのに特に適している。
【0050】
本発明の他の好ましい実施態様に従い、本発明の光硬化性組成物は、電子デバイスを封止するために用いられてよい。前記電子デバイスは、好ましくは液晶パネル又は有機ELパネルでありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、液晶パネル又は有機ELパネルの素子を封止するのに特に適している。
【0051】
[製造方法]
【0052】
本発明の光硬化性組成物は、本発明の属する技術分野において既知の撹拌手段を用いて製造されてよい。例えば、本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分と光重合開始剤とを容器内で撹拌機により撹拌することによって、当該光硬化性組成物を製造することができる。撹拌機として、当技術分野で既知の装置が用いられてよい。例えば撹拌時間及び撹拌時の温度などの撹拌条件も、当業者により適宜設定されてよい。
【0053】
[使用方法]
【0054】
本発明の光硬化性組成物の使用方法を、
図3を参照しながら以下に説明する。
まず、
図3(a)に示されるとおり、基板301上に、本発明の光硬化性組成物302が塗布される。当該塗布は、例えば光硬化性組成物302によって所望の領域を囲むように行われうる。次に、
図3(b)に示されるとおり、基板303が、光硬化性組成物302を挟んで基板301と向かい合うように重ねられる。その後、
図3(c)に示されるとおり、光(例えば紫外線)が光硬化性組成物302に到達するように照射される。当該照射によって、光硬化性組成物302が硬化する。その結果、基板301及び303並びに光硬化性組成物302の硬化物によって規定された空間が形成される。
例えば色素増感型太陽電池を製造する場合は、基板301及び303は、例えば導電膜を積層された基板であり、光硬化性組成物は当該導電膜上に塗布される。そして、当該導電膜及び当該光硬化性組成物の硬化物によって規定された空間に電解液が封入されて、フレキシブルな色素増感型太陽電池が製造される。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、当該導電膜との接着性に優れている。そのため、本発明の光硬化性組成物は、封止材として使用するのに適している。
また、他の種類の太陽電池(例えばペロブスカイト太陽電池又は有機薄膜太陽電池)又は電子デバイスにおいても、本発明の光硬化性組成物が封止材として使用されてよい。
【0055】
2.太陽電池
【0056】
本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物を含む太陽電池も提供する。当該太陽電池において、当該硬化物は、好ましくは封止材として含まれており、より好ましくは電解液又は固体電解質を封止するための封止材として含まれている。当該太陽電池は、好ましくは色素増感型太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、又は有機薄膜太陽電池であり、より好ましくは色素増感型太陽電池である。これらの太陽電池において本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合、本発明の効果がより顕著に奏される。
【0057】
本発明の色素増感型太陽電池は、例えば上記「1.光硬化性組成物」にて説明された
図1に示すとおりの構造を有しうる。以下、
図1に示された構成要素のそれぞれについてより詳細に説明する。
【0058】
透明基板101としては、透明なガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム用いられてよく、又は、透明で耐熱性のある他のフィルムが用いられてもよい。
【0059】
透明導電膜(透明電極)102として、例えば酸化インジウムと酸化スズとを含むITO膜が用いられてよい。酸化インジウム及び酸化スズの質量割合は例えば、それぞれ90~99質量%及び10~1質量%であり、好ましくは92~98質量%及び8~2質量%でありうる。また、透明導電膜として、酸化スズにフッ素をドーピングした膜(FTO)が用いられてもよい。
透明導電膜102の対極基板を構成する基板106として、例えばガラス又はガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。導電膜107は、透明導電膜102と同様に、ITO膜又はFTO膜であってよい。
【0060】
金属酸化物半導体層103を形成する金属酸化物半導体として、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物が挙げられる。これらの中でも二酸化チタンが特に好ましい。金属酸化物半導体として、より好ましくは直径が10~30nmである超微粒子の二酸化チタン粒子が用いられる。当該二酸化チタン粒子によって、色素を吸着させるのに適した広大な比表面積を有する二酸化チタン膜を形成することができる。
【0061】
色素105として、例えば金属含有色素又は有機色素など、当技術分野で既知の色素が用いられてよい。色素105として、例えばルテニウム錯体〔RuL2(NCS)2、L=4,4′-ジカルボキシ-2,2′-ビピリジン〕、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、C60誘導体、スチリルベンゾチアゾリウムプロピルスルフォネート(BTS)、及び植物の色素などを挙げることができる。
【0062】
空間108を満たす電解液は、電解質を有機溶剤に溶解又は分散した溶液でありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、当該電解液を封止するために適しており、特にはこのような電解液の漏洩を防ぐのに適している。
当該電解質として、ヨウ素/ヨウ素化合物及び臭素/臭素化合物などの酸化還元対(レドックス系)が用いられてよく、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが特に好ましい。
当該電解質を溶解又は分散させる有機溶剤として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、若しくは3-メトキシプロピオニトリル、又はこれらの2種以上の混合物などが用いられてよい。
前記電解液には、電解質及び溶媒に加えて、当技術分野で用いられる各種添加剤が含まれてもよい。添加剤の例として、例えば増粘剤、粘性を低下させてイオンの拡散を円滑にするための常温溶融塩(例えば1-プロピルー2,3-ジメチルイミダゾリウムイオダイドなど)、及び逆電流を防ぎ開放起電力を高めるための4-tert-ブチルピリジンなどを挙げることができる。
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記電解液は、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート溶液でありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、当該電解液に対する耐薬品性に優れている。
【0063】
本発明の色素増感型太陽電池は、当業者に既知の製造方法により適宜製造されてよい。本発明の色素増感型太陽電池は、例えば、以下の工程を含む製造方法により製造されうる。
【0064】
(1)光硬化性組成物塗布工程
当該工程において、透明基板層、透明導電膜層、及び色素を吸着した金属酸化物半導体層がこの順に積層された導電性基板、又は、導電膜層及び基板層がこの順に積層された導電性基板に、本発明の光硬化性組成物が塗布される。当該塗布は、例えばスクリーン印刷又はディスペンサーなどの塗布手段により行われてよい。当該塗布される場所は、封止されるべき電解液又は固体電解質が配置される位置に応じて当業者により適宜設定されうる。本発明の光硬化性組成物の塗布パターンは、例えば環状、長方形、又は正方形など、製造されるべき色素増感型太陽電池の形状に合わせて決定されてよい。例えば、本発明の光硬化性組成物は、電解液又は固体電解質が配置される位置を囲み且つ幅0.5mm~1mmの線を形成するように塗布されうる。
【0065】
(2)貼り合わせ工程
当該工程において、前記2つの導電性基板が貼り合わせられる。貼り合わせ後の封止材の厚みが例えば5μm~100μm、より好ましくは20μm~50μmとなるように、前記塗布工程において塗布される量が設定されうる。
【0066】
(3)硬化工程
当該工程において、本発明の光硬化性組成物に光が照射される。当該光の照射によって、本発明の光硬化性組成物が硬化する。光は、透明基板層、透明導電膜層、及び金属酸化物半導体層が積層された前記導電性基板を透過させて照射されてよく、又は、前記2つの導電性基板の間を光が通るように照射されてもよい。
【0067】
(4)電解液封入工程
当該工程において、電解液が、硬化した本発明の光硬化性組成物及び前記2つの導電性基板により規定された空間内に封入される。
当該封入を行うために、基板の一部に開口部が設けられてよく、又は、開口部が形成されるように本発明の光硬化性組成物が塗布されてもよい。当該開口部から、前記空間内に電解液が注入されうる。当該注入後、当該開口部は、本発明の光硬化性組成物により封止し、そして、当該光硬化性組成物に光を照射して硬化することにより、封止されうる。又は、当該開口部は、他の常温硬化性接着剤を用いて封止されてもよい。
なお、固体電解質が用いられる場合は、前記貼り合わせ工程の前に、当該固体電解質が前記2つの導電性基板の間に配置される。そして、当該配置後に、貼り合わせ工程及び効果工程が行われて、本発明の色素増感型太陽電池が製造される。
【0068】
3.電子デバイス
【0069】
本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物を含む電子デバイスも提供する。当該電子デバイスにおいて、当該硬化物は、好ましくは封止材として含まれており、より好ましくは素子を封止するための封止材として含まれている。当該電子デバイスは、好ましくは液晶パネル又は有機ELパネルである。これらの電子デバイスにおいて本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合、本発明の効果がより顕著に奏される。これらの電子デバイスにおいて本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合の封止方式は、例えば、上記で説明したとおり、枠封止方式であってよく、又は、全面封止方式であってもよい。封止方式は、これらに限らず、保護されるべき素子の少なくとも一部が、本発明の光硬化性組成物の硬化物によって接触していればよい。
【0070】
本発明の電子デバイスは、当業者に既知の製造方法により適宜製造されてよい。例えば、電子デバイスの素子の少なくとも一部が、本発明の光硬化性組成物と接触するように当該素子と当該光硬化性組成物とを配置すること、そして次に、当該光硬化性組成物に光を照射して当該光硬化性組成物を硬化させることを含む。当該素子及び当該光硬化性組成物の配置の仕方として、例えば上記で説明した枠封止方式又は全面封止方式が採用されてよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。
【0072】
(1)製造方法
以下の表1に示されるとおりの組成となるように、表1に示される各成分を計量しそして攪拌機にて30分間撹拌して、実施例1~9及び比較例1~5の光硬化性組成物を得た。表1中の数値の単位はいずれも質量部である。
表1に示される材料の化合物名は以下のとおりである。
FA-513AS:ジシクロペンタニルアクリレ-ト(Tg120℃)
FA-512AS:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト(TG15℃)
SR-217:4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(TG34℃)
KAYAMER PM-2:リン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)
CN-9014NS:水添ポリブタジエン系ウレタンアクリレート
アエロジル300:ヒュームドシリカ
IRGACURE 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
【0073】
(2)透湿度の評価
JIS Z 0208に従い、製造された光硬化性組成物の硬化物の透湿度を測定した。すなわち、テフロン(登録商標)コーティングされた金属板上に光硬化性組成物を100μmの厚みで塗布し、メタルハライドランプで積算光量が3,000mJ/cm2となるように紫外線を照射して当該光硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物が、前記基準が指定する形状にカットされ、そして、塩化カルシウム約5gを計量した容器にセットされた。60℃/90%RH雰囲気の恒温恒湿器内に、当該容器を24時間保管し、保管前後の重量差から透湿度(g/m2・day)を算出した。硬化物の透湿度が100g/m2・day以下である場合に、当該硬化物は、透湿度の観点から良好な性能を有していると判定された。測定結果が、以下の表1に示されている。
【0074】
(3)引張せん断接着強さの評価
JIS K 6850に従い、製造された光硬化性組成物の硬化物の引張せん断接着強さを測定した。すなわち、25mm×100mmのITO膜付PENフィルム2枚の間に光硬化性組成物の塗布面積が25mm×12.5mm且つ塗布厚が100μmとなるように塗布及び貼り合せを行い、メタルハライドランプで積算光量が3,000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、当該光硬化性組成物を硬化させた。作製した試験片を、引張試験機を用いて試験速度10mm/minで引張り、引張せん断接着強さ(MPa)を測定した。引張せん断接着強さが1.0MPa以上である場合に、当該光硬化性組成物の硬化物は、接着性の観点から良好な性能を有していると判定された。測定結果が、以下の表1に示されている。
【0075】
【0076】
表1に示されるとおり、実施例1~9の光硬化性組成物の硬化物はいずれも100g/m2・day以下であり、且つ、せん断接着強さが1.0MPa以上であった。すなわち、実施例1~9の光硬化性組成物の硬化物はいずれも、低い透湿度を有し且つ高い引張せん断接着強さを有していた。
成分(A)及び成分(C)の量がそれぞれ55質量部及び45質量部である比較例1の光硬化性組成物の硬化物は、透湿度が118g/m2・dayであり、透湿度の観点からは良好な性能を有さなかった。比較例1の結果と実施例1~6(特には実施例4)の結果との対比より、成分(A)及び成分(C)の量を調節することが、硬化物の透湿度を低くすることに寄与していることが分かる。
比較例2及び3の組成は、成分(A)の代わりにホモポリマーの場合のTgが100℃未満である脂環式(メタ)アクリレートモノマーが用いられた点が異なる以外は、実施例3の組成と同じである。比較例2及び3の光硬化性組成物の硬化物の透湿度はそれぞれ230g/m2・day及び340 g/m2・dayであり、透湿度の観点からは良好な性能を有さなかった。比較例2及び3の結果と実施例3の結果との対比より、成分(A)のTgが100℃以上であることが、硬化物の透湿度を下げることに寄与していることが分かる。
実施例3及び7~9の組成並びに比較例4及び5の組成は、成分(B)の量が異なる以外は同じである。実施例7及び比較例5の結果の対比より、成分(B)は、硬化物に接着性をもたらすために必要であることが分かる。また、実施例3及び7~9の結果並びに比較例4及び5の結果より、成分(B)の量を調整することによって、透湿度を低くすることができることが分かる。
以上のとおり、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の量を調節することによって、光硬化性組成物の硬化物に低い透湿度及び優れた接着性をもたらすことができる。
【0077】
また、実施例1~6のうち、実施例1の光硬化性組成物の硬化物は、特に透湿度が低かった。そのため、実施例1における成分(A)及び(C)の含有比率又はそれと同様の含有比率(例えば成分(A)の質量部:成分(C)の質量部=90:10~97:3)を採用することによって、透湿度を特に低くすることができる。
【0078】
成分(C)を含む実施例1~5の光硬化性組成物の硬化物は、成分(C)を含まない実施例6の光硬化性組成物の硬化物よりもフレキシブルであった。そのため、成分(C)を含むことによって、硬化物をよりフレキシブルにすることができる。