(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法及びアクリル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/292 20060101AFI20231012BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20231012BHJP
D06M 13/144 20060101ALI20231012BHJP
D06M 13/203 20060101ALI20231012BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20231012BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20231012BHJP
D06M 101/28 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/02
D06M13/144
D06M13/203
D06M13/224
D06M15/53
D06M101:28
(21)【出願番号】P 2023116710
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/138688(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/215571(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/215572(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化合物(A)及び下記の不飽和化合物(B)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物であって、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の合計と前記溶媒(S)との質量比が、(リン酸化合物(A)+不飽和化合物(B))/溶媒(S)=0.1~2.5であり、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の質量比が、リン酸化合物(A)/不飽和化合物(B)=1.0~26.0であり、前記リン酸化合物(A)が、下記の式(1)に示されるリン酸エステルP1、下記の式(2)に示されるリン酸エステルP2、下記の式(3)に示されるリン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4を含有するものであり、前記リン酸エステルP1、前記リン酸エステルP2、前記リン酸エステルP3及び前記無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が20~90%、前記リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率が5~60%、前記リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%、及び前記無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%であることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
不飽和化合物(B):分子中に不飽和結合を有する炭素数14~22の脂肪酸、及び分子中に不飽和結合を有する炭素数16~22の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【化1】
(式(1)中において、
R
1:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
1:水素原子、又はアルカリ金属。
M
2:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化2】
(式(2)中において、
R
2:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
3:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
3:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化3】
(式(3)中において、
R
4:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
5:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
4:水素原子、又はアルカリ金属。
M
5:水素原子、又はアルカリ金属。)
【請求項2】
前記溶媒(S)が、水である請求項1に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項3】
前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記の油(C)を含有する請求項1に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
油(C):いずれも70℃で液状を呈する炭化水素系化合物、油脂、及びエステルから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項4】
前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、及び前記油(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で40~90質量部、及び前記油(C)を10~60質量部の割合で含有する請求項3に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項5】
前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記の非イオン界面活性剤(D)を含有する請求項3に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
非イオン界面活性剤(D):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項6】
前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、前記油(C)、及び前記非イオン界面活性剤(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で30~90質量部、前記油(C)を5~40質量部、及び前記非イオン界面活性剤(D)を5~45質量部の割合で含有する請求項5に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項7】
前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記のポリエーテル化合物(E)を含有する請求項5に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
【請求項8】
前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、前記油(C)、前記非イオン界面活性剤(D)及び前記ポリエーテル化合物(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で10~45質量部、前記油(C)を5~30質量部、前記非イオン界面活性剤(D)を5~35質量部、及び前記ポリエーテル化合物(E)を20~80質量部の割合で含有する請求項7に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物であって、下記のポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤と併用するものであることを特徴とする、アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
【請求項10】
アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物として、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物と、
アクリル系合成繊維用第2処理剤として、下記のポリエーテル化合物(E)と、を含む、
セットで構成された、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セット。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
【請求項11】
水に、請求項1~8のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法。
【請求項12】
水に、請求項10に記載のアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットを添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを特徴とするアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットの希釈液の調製方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の不揮発分が、付着していることを特徴とするアクリル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸化合物(A)、特定の化学構造を有する不飽和化合物(B)及び溶剤(S)を、特定の組成比で含有する、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法及びアクリル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系合成繊維は、アクリロニトリルと共重合原料から得られたアクリロニトリル共重合物を溶剤に溶解し、湿式紡糸にて紡出、延伸、熱処理等を経て繊維化したものである。アクリル系合成繊維は、化学繊維の中で羊毛に似た性質を有しており、かさ高く、柔らかい風合いに特徴がある。また、カチオン染料による染色性に優れ合成繊維の中では最も鮮明に染めることができる、酸やアルカリなどの薬品に強い、太陽光による劣化や雨水など対する耐候性に優れるなどの特徴を有している。
アクリル系合成繊維用処理剤は、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程で優れた紡績性を得るためにリン酸化合物を主成分とすることが公知であるが、リン酸化合物は、その特性上、非イオン界面活性剤やカチオン界面活性剤などの成分との混合により製剤安定性が大きく低下するという問題があった。
アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性と、処理剤自体の製剤安定性を両立させたアクリル系合成繊維用処理剤は、未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-088654号公報
【文献】特開2005-154992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性と、長期間保管した際の製剤安定性が両立したアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法及びアクリル系合成繊維を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成比を有するリン酸化合物(A)、特定の化学構造を有する不飽和化合物(B)及び溶媒(S)を、特定の組成比で含有することにより、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性と、長期間保管した際の製剤安定性が両立したアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物とし得ることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.リン酸化合物(A)及び下記の不飽和化合物(B)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物であって、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の合計と前記溶媒(S)との質量比が、(リン酸化合物(A)+不飽和化合物(B))/溶媒(S)=0.1~2.5であり、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の質量比が、リン酸化合物(A)/不飽和化合物(B)=1.0~26.0であり、前記リン酸化合物(A)が、下記の式(1)に示されるリン酸エステルP1、下記の式(2)に示されるリン酸エステルP2、下記の式(3)に示されるリン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4を含有するものであり、前記リン酸エステルP1、前記リン酸エステルP2、前記リン酸エステルP3及び前記無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が20~90%、前記リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率が5~60%、前記リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%、及び前記無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%であることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
不飽和化合物(B):分子中に不飽和結合を有する炭素数14~22の脂肪酸、及び分子中に不飽和結合を有する炭素数16~22の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【化1】
(式(1)中において、
R
1:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
1:水素原子、又はアルカリ金属。
M
2:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化2】
(式(2)中において、
R
2:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
3:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
3:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化3】
(式(3)中において、
R
4:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
5:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
4:水素原子、又はアルカリ金属。
M
5:水素原子、又はアルカリ金属。)
2.前記溶媒(S)が、水である1.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
3.前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記の油(C)を含有する1.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
油(C):いずれも70℃で液状を呈する炭化水素系化合物、油脂、及びエステルから選ばれる少なくとも1つ。
4.前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、及び前記油(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で40~90質量部、及び前記油(C)を10~60質量部の割合で含有する3.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
5.前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記の非イオン界面活性剤(D)を含有する3.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
非イオン界面活性剤(D):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1つ。
6.前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、前記油(C)、及び前記非イオン界面活性剤(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で30~90質量部、前記油(C)を5~40質量部、及び前記非イオン界面活性剤(D)を5~45質量部の割合で含有する5.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
7.前記アクリル系合成繊維用処理剤が、更に、下記のポリエーテル化合物(E)を含有する5.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
8.前記リン酸化合物(A)、前記不飽和化合物(B)、前記油(C)、前記非イオン界面活性剤(D)及び前記ポリエーテル化合物(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記リン酸化合物(A)と前記不飽和化合物(B)とを合計で10~45質量部、前記油(C)を5~30質量部、前記非イオン界面活性剤(D)を5~35質量部、及び前記ポリエーテル化合物(E)を20~80質量部の割合で含有する7.に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
9.1.~6.のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物であって、下記のポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤と併用するものであることを特徴とする、アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
10.アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物として、1.~6.のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物と、アクリル系合成繊維用第2処理剤として、下記のポリエーテル化合物(E)と、を含む、セットで構成された、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セット。
ポリエーテル化合物(E):オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも一つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコール。
11.水に、1.~8.のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法。
12.水に、10.に記載のアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットを添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを特徴とするアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットの希釈液の調製方法。
13.1.~8.のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の不揮発分が、付着していることを特徴とするアクリル系合成繊維。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、アクリル系合成繊維に優れた紡績性を付与することが出来るほか、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性において、カード作成時に均一なウェブを得ることができるほか、練条工程において、スライバーの均整性を向上させることが出来る。
加えて、本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、長期間保管した際の製剤安定性にも優れているため、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の運搬や保管の際に分離や沈殿が生じることが無く有用である。
すなわち、本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性と、長期間保管した際の製剤安定性が両立しており、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)と特定の化学構造を有する不飽和化合物(B)を含有するものである。
<リン酸化合物(A)>
本発明におけるリン酸化合物(A)は、下記の式(1)に示されるリン酸エステルP1、下記の式(2)に示されるリン酸エステルP2、下記の式(3)に示されるリン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4を含有し、リン酸エステルP1、リン酸エステルP2、リン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が20~90%、リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率が5~60%、リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%、及び無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%である混合物である。
【化4】
(式(1)中において、
R
1:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
1:水素原子、又はアルカリ金属。
M
2:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化5】
(式(2)中において、
R
2:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
3:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
3:水素原子、又はアルカリ金属。)
【化6】
(式(3)中において、
R
4:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
R
5:炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
M
4:水素原子、又はアルカリ金属。
M
5:水素原子、又はアルカリ金属。)
【0009】
一般式(1)中のR1、一般式(2)中のR2、R3、一般式(3)中のR4、R5としては、例えば、オクチルアルコール、2-エチル-ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2-プロピル-ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2-ブチル-オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール等の炭素数8~20の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基や、オクチルアルコール、2-エチル-ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2-プロピル-ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2-ブチル-オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール等の炭素数8~20の脂肪族1価アルコール1モル当たり、炭素数2~3のアルキレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基が挙げられる。
これらの中でも、一般式(1)中のR1、一般式(2)中のR2、R3、一般式(3)中のR4、R5としては、炭素数8~18の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基が好ましく、炭素数12~18の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基がより好ましく、炭素数16~18の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基がさらに好ましい。
【0010】
本発明のリン酸化合物(A)のP核NMR測定において、上記リン酸エステルP1、リン酸エステルP2、リン酸エステルP3、無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が20~80%であることが好ましく、30~70%であることがより好ましく、40~60%であることがさらに好ましい。
リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率が10~50%であることが好ましく、20~50%であることがより好ましく、30~50%であることがさらに好ましい。
リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率が0.5~30%であることが好ましく、0.5~25%であることがより好ましく、0.5~20%であることがさらに好ましい。
無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率が0.5~30%であることが好ましく、0.5~25%であることがより好ましく、0.5~20%であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤に含有されるリン酸化合物(A)は、「アルカリ過中和前処理」された前記アクリル系合成繊維用処理剤のP核NMR測定において、上記リン酸エステルP1、上記リン酸エステルP2、上記リン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が20~90%、リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率が5~60%、リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%、及び無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率が0.1~40%である混合物である。
この「アルカリ過中和前処理」とは、本発明におけるアクリル系合成繊維用処理剤、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用第1処理剤、それぞれに対して過剰量のアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ラウリルアミン)を添加する前処理を意味する。31P-NMRの測定において、この「アルカリ過中和前処理」を行うことで、リン酸エステルP1、リン酸エステルP2、リン酸エステルP3及び無機リン酸化合物P4に帰属されるピークを明瞭に分けることができ、下記数式(a)~数式(d)による各化合物に帰属されるP核積分比率の計算が可能となる。本発明における31P-NMRの測定では、観測ピークが分かれる程度のアルカリをアクリル系合成繊維用処理剤に加えるアルカリ過中和処理を行った。
前記リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(a)で、前記リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(b)で、前記リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(c)で、前記無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(d)で示される。
数式(a)~数式(d)中、「P化1」は、一般式(1)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分値を、「P化2」は、一般式(2)で示されるリン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分値を、「P化3」は、一般式(3)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分値を、「P化4」は無機リン酸化合物P4に帰属されるP核NMR積分値を示す。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
<不飽和化合物(B)>
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、分子中に不飽和結合を有する炭素数14~22の脂肪酸、及び分子中に不飽和結合を有する炭素数16~22の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1つである不飽和化合物(B)を、必須成分として含有するものである。
本発明の不飽和化合物(B)における、分子中に不飽和結合を有する炭素数14~22の脂肪酸は、脂肪酸のフリー体を意味し、脂肪酸塩は含まない。
本発明における不飽和化合物(B)としては、中でも、分子中に不飽和結合を有する炭素数16~18の脂肪酸、及び分子中に不飽和結合を有する炭素数16~18の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
また、本発明における不飽和化合物(B)として、分子中に不飽和結合を有する脂肪族アルコールが好ましい。
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)を併用することにより、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の製剤安定性が向上するという効果を発揮する。
【0017】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)を必須成分として含有し、かつ、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)の質量比が、リン酸化合物(A)/不飽和化合物(B)=1.0~26.0の範囲とするものである。
リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)の質量比が1.0より小さい場合には、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の製剤安定性が悪くなる。また、26.0より大きい場合には、均一なウェブが得られなくなるほか、練条工程におけるスライバーの均整性が悪化してしまうなど、アクリル系合成繊維に優れた紡績性を付与することが出来なくなる。この紡績性は、後述する実施例における「ウェブ均一性」、「練条詰まり試験」、「練条スカム防止性」により評価することが出来る。
本発明におけるリン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)の質量比は、中でも、2.0~26.0の範囲とすることが好ましく、3.0~26.0の範囲とすることがより好ましく、4.0~26.0の範囲とすることがさらに好ましい。
【0018】
<溶媒(S)>
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒(S)と併用し、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を構成する。なお、本明細書における「大気圧」は、標準気圧を意味する。
溶媒(S)としては、大気圧における沸点が105℃以下であれば良いが、中でも、水が好ましい。
【0019】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)の合計と溶媒(S)との質量比が、(リン酸化合物(A)+不飽和化合物(B))/溶媒(S)=0.1~2.5の範囲である。
リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)の合計と溶媒(S)との質量比を、0.1~2.5の範囲とすることにより、本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の製剤安定性が向上するという効果を発揮する。
本発明におけるリン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)の合計と溶媒(S)との質量比は、中でも、0.1~2.44の範囲とすることが好ましく、0.1~2.38の範囲とすることがより好ましく、0.1~2.32の範囲とすることがさらに好ましい。
【0020】
<油(C)>
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、いずれも70℃で液状を呈する、炭化水素系化合物、油脂類、及びエステル化合物から選ばれる少なくとも1つを油(C)として、含有することが好ましい。
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、油(C)を併用することにより、ウェブ均一性が良化する場合があり好ましい。
70℃で液状である炭化水素系化合物の具体例としては、例えば鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。70℃で液状である油脂類の具体例としては、例えばひまし油、ヤシ油、ごま油、パーム油、トール油、豚脂、牛脂等が挙げられる。
また、70℃で液状であるエステル化合物の具体例としては、例えばブチルステアラート、オクチルステアラート、ステアリルステアラート、オレイルラウラート、イソトリデシルステアラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ラウリルオレアート、トリデシルオレアート、ソルビタンモノステアラート等が挙げられる。
【0021】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)、不飽和化合物(B)、及び油(C)の含有割合の合計を100質量部として、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で40~90質量部、及び油(C)を10~60質量部の割合で含有することが好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で50~90質量部、及び油(C)を10~50質量部の割合で含有することがより好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で60~80質量部、及び油(C)を20~40質量部の割合で含有することがさらに好ましい。
【0022】
<非イオン界面活性剤(D)>
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1つである、非イオン界面活性剤(D)を含有することが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ラウリルアルコールやセチルアルコールのアルキレンオキサイド付加物が、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルの具体例としては、オレイルアルコールのアルキレンオキサイド付加物が、ポリオキシアルキレンアルキルエステルの具体例としては、ステアリン酸のアルキレンオキサイド付加物が、ポリオキシアルキレンアルケニルエステルの具体例としては、オレイン酸やヒマシ油のアルキレンオキサイド付加物が、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物が、それぞれ好適に使用することができる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルケニルエーテルの混合物として、牛脂アルコールのアルキレンオキサイド付加物や、ポリオキシアルキレンアルキルエステルとポリオキシアルキレンアルケニルエステルの混合物として、ヤシ脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物が、好適に使用できる。
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、非イオン界面活性剤(D)を含有することにより、練条詰まりが改善される傾向があり好ましい。
【0023】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)、不飽和化合物(B)、油(C)、及び非イオン界面活性剤(D)の含有割合の合計を100質量部として、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で30~90質量部、油(C)を5~40質量部、及び非イオン界面活性剤(D)を5~45質量部の割合で含有することが好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で30~75質量部、油(C)を15~40質量部、及び非イオン界面活性剤(D)を10~40質量部の割合で含有することがより好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で30~50質量部、油(C)を20~35質量部、及び非イオン界面活性剤(D)を20~40質量部の割合で含有することがさらに好ましい。
【0024】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも1つを構成単位とするポリオキシアルキレングリコールであるポリエーテル化合物(E)を含有することが好ましい。
ただし、本発明におけるポリエーテル化合物(E)は、上記非イオン界面活性剤(D)に該当する化合物は含まない。
本発明におけるポリエーテル化合物(E)としては、エチレングリコールやプロピレングリコールのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、ポリエーテル化合物(E)を併用することにより、練条スカムが防止される傾向があり好ましい。
本発明において、ポリエーテル化合物(E)は、リン酸化合物(A)、不飽和化合物(B)、油(C)及び非イオン界面活性剤(D)と併用してもよいし、別添として、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤としてもよい。ポリエーテル化合物(E)を別添とすることにより、リン酸化合物(A)、不飽和化合物(B)、油(C)及び非イオン界面活性剤(D)の混合物に対する、ポリエーテル化合物(E)の混合比率を微調整することが出来るので、ウェブ均一性のほか、練条つまり、練条スカム防止性を向上し得る点において好ましい。
【0025】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤は、リン酸化合物(A)、不飽和化合物(B)、油(C)、非イオン界面活性剤(D)、及びポリエーテル化合物(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で10~45質量部、油(C)を5~30質量部、非イオン界面活性剤(D)を5~35質量部、及びポリエーテル化合物(E)を20~80質量部の割合で含有することが好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で15~45質量部、油(C)を5~25質量部、非イオン界面活性剤(D)を10~35質量部、及びポリエーテル化合物(E)を20~60質量部の割合で含有することがより好ましく、リン酸化合物(A)と不飽和化合物(B)とを合計で20~45質量部、油(C)を5~20質量部、非イオン界面活性剤(D)を20~35質量部、及びポリエーテル化合物(E)を20~40質量部の割合で含有することがさらに好ましい。
【0026】
本発明における第1態様として、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)、加えてポリエーテル化合物(E)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物とすることができる。
また、本発明における第2態様として、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)とを含有し、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤と併用するものである、アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物とすることができる。
さらに、本発明における第3態様として、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物をアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物として、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを、セットで構成されたアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットとすることができる。
【0027】
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法として、上記第1態様における、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)、加えてポリエーテル化合物(E)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を、水に添加して、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下の希釈液を調製することができる。
本発明における不揮発分は、対象物を105℃で恒量に達するまで熱処理し、揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められるものを意味する。
また、上記第2態様における、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)とを含有するアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを、水に添加して、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下の希釈液を調製することができる。
さらに、上記第3態様における、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物をアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とから構成される、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットを、水に添加して、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下の希釈液を調製することができる。
【0028】
<その他の成分>
本発明において、本発明の効果を損なわない範囲において、その他成分を併用してもよい。
併用し得るその他成分としては、ラウリン酸アミドや、ジエチレントリアミンのモノラウリン酸アミド等のアミド化合物、アルキルスルホネート塩、ジアルキルスルホサクシネート塩などのアニオン界面活性剤のほか、品質保持のために防腐剤や酸化防止剤等が挙げられる。
【0029】
<アクリル系合成繊維>
本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液をアクリル系合成繊維に付与する工程としては、紡糸工程、延伸工程、更には延伸後の各工程が挙げられる。湿式紡糸して延伸及び水洗した後のゲル膨潤状態にある繊維束に付着することが好ましい。付与方法は、浸漬法、スプレー法、ローラー給油法、ガイド給油法等のいずれでもよいが、浸漬法又はスプレー法が好ましい。アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物をゲル膨潤状態にある繊維束に付着する場合には通常、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を付与した後、熱処理して乾燥緻密化を行う。このときの熱処理は、好ましくは120℃以上180℃以下の温度で1分以上7分以下の条件で行われる。本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を付与するアクリル系合成繊維は、乾燥緻密化された後、通常は再度熱処理を行ってもよい。このときの熱処理の温度は、乾熱の場合は180℃以下、湿熱の場合は130℃以下である。本発明のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の付与量は、アクリル系合成繊維に対して、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の不揮発分として好ましくは0.02質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上1質量%以下である。
アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を付与するアクリル系合成繊維としては、特に限定されないが本発明においては、例えば(1)アクリロニトリルを40質量%以上、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アリルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩等の非ハロゲン系ビニルモノマーを60質量%以下の割合で共重合したアクリル繊維、(2)塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲン系ビニルモノマーと、アクリロニトリルとを共重合したモダアクリル繊維、(3)モダアクリル繊維にハロゲン系化合物等を添加したもの等が含まれる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0031】
<アクリル系合成繊維用処理剤>
本発明の具体例であるアクリル系合成繊維用処理剤W-1~W-27は下記表1に、本発明の具体例ではないアクリル系合成繊維用処理剤w-1~w-11は下記表2に、それぞれ示された組成に基づいて、各成分をよく混合して均一にすることで各アクリル系合成繊維用処理剤を調製した。
【0032】
【0033】
【0034】
表1、2に記載した、リン酸化合物(A)の詳細を下記表3にまとめて示す。
【表3】
【0035】
表1、2に記載したリン酸化合物(A)以外の各成分の詳細は以下のとおりである。
<不飽和化合物(B)>
B-1:パルミトレイルアルコール
B-2:オレイルアルコール
B-3:リノレイルアルコール
B-4:エルシルアルコール
B-5:ミリストレイン酸
B-6:オレイン酸
B-7:エルカ酸
B-8:リノール酸
B-9:リノレン酸
b-10:オレイン酸カリウム塩
【0036】
<油(C)>
C-1:20℃での動粘度が約10mm2/sの鉱物油
C-2:40℃での動粘度が約20mm2/sの鉱物油
C-3:40℃での動粘度が約90mm2/sの鉱物油
C-4:ひまし油
C-5:ヤシ油
C-6:パーム油
C-7:ソルビタンモノステアレート
C-8:C12~13分岐アルコールとオレイン酸のエステル化合物
C-9:ステアリルステアラート
C-10:パラフィンワックス(融点55℃)
【0037】
<非イオン界面活性剤(D)>
D-1:ラウリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
D-2:ラウリルアルコール1モルに対してプロピレンオキサイドを6モル付加させた化合物
D-3:ラウリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
D-4:セチルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを23モル付加させた化合物
D-5:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
D-6:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
D-7:牛脂アルコール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加させた化合物
D-8:牛脂アルコール1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物
D-9:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
D-10:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物
D-11:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを3モル付加させた化合物
D-12:ヤシ脂肪酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
D-13:ヤシ脂肪酸1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
D-14:ヒマシ油1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
D-15:ノニルフェノール1モルに対してエチレンオキサイド10モルさせた化合物
【0038】
<ポリエーテル化合物(E)>
E-1:エチレングリコールに1モルに対してエチレンオキサイドを80モル付加させた後、プロピレンオキサイドを20モル付加させた化合物
E-2:エチレングリコールに1モルに対してエチレンオキサイドを80モルとプロピレンオキサイド20モルをランダム付加させた化合物
E-3:プロピレングリコールに1モルに対してエチレンオキサイドを80モルとプロピレンオキサイド20モルをランダム付加させた化合物
E-4:プロピレングリコールに1モルに対してプロピレンオキサイド20モル付加させた後、エチレンオキサイドを80モル付加させた化合物
E-5:エチレングリコールに1モルに対してエチレンオキサイドを30モルとプロピレンオキサイド20モルをランダム付加させた化合物
E-6:プロピレングリコールに1モルに対してエチレンオキサイドを80モルとプロピレンオキサイド70モルをランダム付加させた化合物
【0039】
<その他(F)>
F-1:ラウリン酸アミド
F-2:ジエチレントリアミンのモノラウリン酸アミド
F-3:ジエチレントリアミンのジラウリン酸アミド
F-4:ジエタノールアミンのラウリン酸アミド
【0040】
<アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物>
表1、2に示すアクリル系合成繊維用処理剤W-1~W-27、w-1~w-11、溶媒(S)として水を用いて、下記表4、5に示された組成に基づいて、各成分をよく混合して均一にすることで、実施例1~27、比較例1~17のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を調製した。
【0041】
<評価方法及び評価基準>
(1)製剤安定性に関する評価
実施例1~27、比較例1~17のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を調製後、各組成物を50℃で24時間放置した後、外観を目視で下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎(良好):うるみや分離が見られず均一な状態である。
〇(可):若干うるみや分離がみられるが、製品として問題にならない程度である。
×(不可):分離が激しく、製品として問題である。
なお、うるみとは、評価対象の透明度(光透過性)が低下し、濁っている状態を意味する。
【0042】
(2)ウェブ均一性に関する評価
繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのアクリル系合成繊維に、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の付着量(溶媒(S)を除く)が0.3質量%となるようスプレー給油で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した。その後、25℃×40%RHの雰囲気下に1晩調湿して、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の不揮発分が付着している処理済みアクリル系合成繊維を得た。
得られたアクリル系合成繊維10kgを用い、30℃×70%RHの雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)に供し、紡出速度=140m/分の条件で通過させた。紡出されるカードウェブの均一性を下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎(良好):斑が全くなく、優れて均一である。
○(可):僅かな斑が認められるが、製品として問題にならない。
×(不可):斑が確認でき、製品として問題である。
なお、上記評価基準において「◎」や「〇」の評価が得られたアクリル系合成繊維に付着させたアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、平滑性が良好であることを意味する。
【0043】
(3)練条詰まり試験、練条スカム防止性に関する評価
上記「(2)ウェブ均一性に関する評価方法」におけるアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の不揮発分が付着している処理済みアクリル系合成繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーを30℃×70%RHの雰囲気下でPDF型練条機(石川製作所社製)に供し、紡出速度=250m/分の条件で5回繰り返して通過させた。
練条詰まり試験に関する評価は、PDF型練条機のトランペットへの詰まり回数を下記の基準で評価した。
また、練条スカム防止性に関する評価は、ゴムローラー/レジューサー/トランペット各部分におけるスカムの程度を目視にて下記の基準で評価した。
[練条詰まり試験に関する評価基準]
◎(良好):0~2回
〇(可):3~4回
×(不可):5回以上
[練条スカム防止性に関する評価基準]
◎(良好):スカムがほとんど認められない。
〇(可):スカムが少し認められるが、問題とならない。
×(不可):スカムが多く認められ、問題である。
なお、練条詰まり試験に関する評価基準において「◎」や「〇」の評価が得られたアクリル系合成繊維に付着させたアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、集束性が良好であることを、また、練条スカム防止性に関する評価基準基準において「◎」や「〇」の評価が得られたアクリル系合成繊維に付着させたアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、脱落性が良好であることを、意味する。
【0044】
実施例1~27、比較例1~17のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の組成と合わせ、製剤安定性、ウェブ均一性、練条詰まり試験、練条スカム防止性、それぞれの評価結果を、下記表4、5にまとめて示す。
【表4】
【0045】
【0046】
表4、5に示すとおり、本発明の具体例である実施例1~27のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、長期間保管した際の製剤安定性に優れ、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性に優れているため、カード作成時において均一なウェブを得ることができるほか、数本のカードスライバーを併合し、再度延伸スライバーの均整性を向上させることが出来る。
加えて、本発明の具体例である実施例1~27のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、練条詰まり回数が少なく、スライバーの太さを均整に保つことができ、さらに、練条スカムが認められないか、問題にならない程度であるため、スライバーが乱れることなく均整度を向上させることが出来る。
一方、溶媒(S)を含有しないか、「(リン酸化合物(A)+不飽和化合物(B))/溶媒(S)=0.1~2.5」の範囲から外れる比較例-1~3、14~15、本発明のリン酸化合物(A)とは異なるリン酸化合物を含有する比較例-4、5、本発明の不飽和化合物(B)を含有しないか、本発明の不飽和化合物(B)とは異なる不飽和化合物を含有する比較例-6~8、11、「リン酸化合物(A)/不飽和化合物(B)=1.0~26.0」の範囲から外れる比較例-9、10、12、13、16、17は、ウェブ均一性、練条詰まり試験、練条スカム防止性に劣ることが、また、製剤安定性にも劣るものが多いことが確認された。
【0047】
本発明における2つ目の実施態様である、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを併用する態様について、あるいは、3つ目の態様である、リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物をアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物として、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを、セットで構成されたアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットについて、下記に具体例を示す。
リン酸化合物(A)及び不飽和化合物(B)を必須成分として、油(C)、さらに非イオン界面活性剤(D)を含有しても良いアクリル系合成繊維用処理剤X-1~X-9、X-11~X-14の組成を、下記表6に示す。成分(A)~(D)、(F)の詳細は、上記表1、2と同じである。
下記表6中のアクリル系合成繊維用処理剤X-1~X-9、X-11~X-14は、表1中のアクリル系合成繊維用処理剤W-1~W-9、W-11~W-14からポリエーテル化合物(E)を除いた点以外は、同じ組成である。また、下記表6中のアクリル系合成繊維用処理剤X-4は、表1中のアクリル系合成繊維用処理剤W-4とW-10より、ポリエーテル化合物(E)を除いた組成が同じなので、下記表6より、アクリル系合成繊維用処理剤X-10は除外した。
【0048】
【0049】
表6に示すアクリル系合成繊維用処理剤と、溶媒(S)として水を含有するアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物Y-1~Y-9、Y-11~Y-14の組成を下記表7に示す。
また、得られたアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物について、上記「製剤安定性に関する評価」を実施し、同じ評価基準に基づく評価結果を併せ表7に示す。
表7に示すとおり、アクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物Y-1~Y-9、Y-11~Y-14の製剤安定性は、良好であることが確認された。
【0050】
【0051】
ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤Z-1~Z-6を、下記表8に示す。ポリエーテル化合物(E)の詳細は、上記表1、2と同じである。
【0052】
【0053】
表7に示すアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物Y-1~Y-9、Y-11~Y-14と、表8に示すアクリル系合成繊維用第2処理剤Z-1~Z-6から構成された、実施例28~41のアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを併用する態様、あるいは、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットの組成を下記表9に示す。
また、実施例28~41のアクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットについて、上記「ウェブ均一性に関する評価」、「練条詰まり試験、練条スカム防止性に関する評価」を実施し、同じ評価基準に基づく評価結果を併せ表9に示す。
【0054】
【0055】
表9に示すとおり、本発明における2つ目/3つ目の実施態様である、実施例28~41のアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを併用する態様、あるいは、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットは、長期間保管した際の製剤安定性に優れ、アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性に優れているため、カード作成時において均一なウェブを得ることができるほか、数本のカードスライバーを併合し、再度延伸スライバーの均整性を向上させることが出来る。
加えて、実施例28~41のアクリル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、ポリエーテル化合物(E)を含有するアクリル系合成繊維用第2処理剤とを併用する態様、あるいは、アクリル系合成繊維用2剤型処理剤セットは、練条詰まり回数が少なく、スライバーの太さを均整に保つことができ、さらに、練条スカムが認められないから、スライバーが乱れることなく均整度を向上させることが出来る。
【要約】
【課題】アクリル系合成繊維から紡績糸を得る紡績工程における紡績性と、長期間保管した際の製剤安定性が両立したアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の希釈液の調製方法及びアクリル系合成繊維を提供する。
【解決手段】特定の組成を有するリン酸化合物(A)及び特定の不飽和化合物(B)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有するアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物であって、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の合計と前記溶媒(S)との質量比が、(リン酸化合物(A)+不飽和化合物(B))/溶媒(S)=0.1~2.5であり、前記リン酸化合物(A)及び前記不飽和化合物(B)の質量比が、リン酸化合物(A)/不飽和化合物(B)=1.0~26.0であることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【選択図】なし