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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】織機の駆動制御方法及び駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/00 20060101AFI20231012BHJP
   D03D 47/30 20060101ALI20231012BHJP
   D03D 51/12 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
D03D51/00 Z
D03D47/30
D03D51/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018028448
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019143261
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直幸
(72)【発明者】
【氏名】小堀 裕一朗
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
H02P1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された設定回転数に従って定常運転時に主軸が回転駆動されるように主軸を駆動する主軸駆動装置における原動モータの駆動が制御される織機において、
前記設定回転数よりも低い回転数に設定された起動回転数であって前記主軸駆動装置の負荷を考慮して定められた回転数以下で且つ前記設定回転数の40%以上に設定される起動回転数が予め設定され、
起動開始時点から前記主軸の回転数が前記設定回転数に達するまでの織機の起動にあたり、織機の1サイクル以上に亘る起動期間で緯入れを伴いつつ前記起動が行われ、且つ、起動開始時点からの前記原動モータの制御が前記起動回転数に従って行われると共に、前記主軸の回転数が前記起動回転数に達した時点以降に、予め定められた回転数上昇態様に従って前記主軸の回転数が前記起動回転数から前記設定回転数まで上昇するように前記原動モータの駆動が制御され、
前記回転数上昇態様は、前記設定回転数よりも低く且つ前記起動回転数よりも高い回転数として定められる1以上の中間回転数で織機の1サイクル以上に亘って前記主軸が回転駆動される状態を含むように定められる
ことを特徴とする織機の駆動制御方法。
【請求項2】
前記回転数上昇態様を前記中間回転数が含まれるように定めた上で、前記中間回転数に向けた回転数上昇量が織機に設定され、前記起動回転数から前記設定回転数まで回転数を上昇させる過程における前記原動モータの駆動の制御が前記回転数上昇量に基づいて行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の織機の駆動制御方法。
【請求項3】
前記定常運転時における緯入れのための緯入れ条件である基本緯入れ条件が予め織機に設定されており、前記定常運転時の緯入れが前記基本緯入れ条件に従って行われ、
前記起動期間においては、前記起動回転数に従って主軸が回転駆動されるときの緯入れ及び前記中間回転数に従って主軸が回転駆動されるときの緯入れがそれぞれの回転数に応じて定められた緯入れ条件に従って行われる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の織機の駆動制御方法。
【請求項4】
前記起動回転数に従って主軸が回転駆動されるときの前記緯入れ条件及び前記中間回転数に従って主軸が回転駆動されるときの前記緯入れ条件が、前記基本緯入れ条件とそれぞれの回転数とに基づいた算出によって求められる
ことを特徴とする請求項3に記載の織機の駆動制御方法。
【請求項5】
予め設定された設定回転数に従って定常運転時に主軸が回転駆動されるように主軸を駆動する主軸駆動装置における原動モータの駆動を制御すると共に緯入れを実行すべく緯入れに関与する各緯入れ関連装置の動作を制御する織機の駆動制御装置であって、
前記設定回転数よりも低い回転数に設定された起動回転数であって前記主軸駆動装置の負荷を考慮して定められた回転数以下で且つ前記設定回転数の40%以上に設定される起動回転数、及び該起動回転数から前記設定回転数まで前記主軸の回転数を上昇させるために予め定められた回転数上昇態様に応じて設定された駆動設定値が記憶された記憶部を備え、
前記回転数上昇態様は、前記設定回転数よりも低く且つ前記起動回転数よりも高い回転数として定められる1以上の中間回転数で織機の1サイクル以上に亘って前記主軸が回転駆動される状態を含むように定められ、
織機の起動開始時点から前記主軸の回転数が前記設定回転数に達するまでの織機の起動が織機の1サイクル以上に亘る起動期間で緯入れを伴いつつ行われるように前記原動モータの駆動及び前記各緯入れ関連装置の動作を制御し、且つ、前記起動開始時点からの前記原動モータの制御を前記起動回転数に従って行うと共に、前記主軸の回転数が前記起動回転数に達した時点以降に、前記回転数上昇態様に従って前記主軸の回転数が前記起動回転数から前記設定回転数まで上昇するように前記原動モータの制御を前記駆動設定値に基づいて行う
ことを特徴とする織機の駆動制御装置。
【請求項6】
前記回転数上昇態様を前記中間回転数が含まれるように定めた上で、前記駆動設定値は、前記中間回転数に向けた回転数上昇量を含むように設定される
ことを特徴とする請求項5に記載の織機の駆動制御装置。
【請求項7】
前記定常運転時における緯入れのための緯入れ条件である基本緯入れ条件が予め織機に設定されており、前記定常運転時の緯入れを前記基本緯入れ条件に従って行い、
前記起動期間においては、前記起動回転数に従って主軸を回転駆動するときの緯入れ及び前記中間回転数に従って主軸を回転駆動するときの緯入れをそれぞれの回転数に応じて定められた緯入れ条件に従って行う
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の織機の駆動制御装置。
【請求項8】
前記起動回転数に従って主軸を回転駆動するときの前記緯入れ条件及び前記中間回転数に従って主軸を回転駆動するときの前記緯入れ条件は、前記基本緯入れ条件とそれぞれの回転数とに基づいた算出によって求められる
ことを特徴とする請求項7に記載の織機の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
予め設定された設定回転数に従って定常運転時に主軸が回転駆動されるように主軸を駆動する原動モータの駆動が制御される織機における、その織機の駆動制御方法及びそのための駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機においては、例えば特許文献1に開示されているように、定常運転時における主軸の回転数が設定回転数として予め設定されており、定常運転時においては、主軸がその設定回転数で回転駆動されるように原動モータによって駆動され、それによって製織が行われている。その上で、近年の一般的な織機では、停止状態からのその起動時においては、短い起動時間(例えば、織機の1~2サイクル相当の時間)で主軸の回転数が前記の設定回転数に達するように原動モータの駆動を制御するといった態様で織機が起動されている。
【0003】
しかし、前記のように短い起動時間で主軸の回転数を設定回転数にまで立ち上げる織機の起動方法では、製織条件等によっては、その原動モータを含む主軸駆動装置に対し過大な負荷が掛かる場合がある。
【0004】
具体的には、例えば、設定回転数が高い場合がその一例として挙げられる。すなわち、設定回転数が高く、且つ起動時間が短い場合には、原動モータに対しその設定回転数及び起動時間に応じた加速が求められるため、その設定回転数によっては、起動時において主軸駆動装置に対し過大な負荷が掛かる状態となる。また、開口装置において使用される枠枚数が多い場合や、製織に用いられる経糸の種類や設定張力によって綜絖枠を駆動するために大きな力が必要とされる場合には、その開口装置が原動モータを駆動源とする織機においては、その起動時において主軸駆動装置に対し掛かる負荷が大きい。そのため、その場合にも、前記のように短い時間で主軸を立ち上げようとすると、主軸駆動装置に対し過大な負荷が掛かる状態となる。
【0005】
そして、織機の起動時において、主軸駆動装置に対し前記のように過大な負荷が掛かった状態となると、そのときの織機の状態等によっては、想定した起動時間内に主軸の回転数が設定回転数まで立ち上がらず、所望の状態での製織が行われずに織物に織段等の欠点が生じた状態となるといった問題が発生する場合がある。さらに、織機の起動毎に主軸駆動装置に対し前記のような過大な負荷が掛かると、その主軸駆動装置の早期の破損を招くといった問題が発生する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-64478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、前記のような問題の発生を防止すべく、主軸の回転数を設定回転数にまで立ち上げる上で想定する起動時間を、前記のような短い時間ではなく、より長い時間(織機の複数サイクルに亘る期間)とし、その長い起動時間で主軸の回転数を直線的に上昇させるといった起動方法で織機を起動することが考えられる。そして、そのような起動方法によれば、前記のように短い起動時間で主軸の回転数を設定回転数にまで立ち上げる場合と比べ、主軸駆動装置に掛かる負荷が軽減されるため、前記問題の発生を可及的に防止することができる。
【0008】
但し、そのように織機の複数サイクルに亘るような長い起動時間で織機を起動させる場合、その期間においても緯入れが行われるようにすることが望ましい。何故なら、主軸(原動モータ)の駆動を開始するのに伴ってそれを駆動源とする筬の揺動運動も開始されるため、緯入れが行われない場合には、複数回に亘る空打ちが行われることとなり、それが原因で織布に織段(厚段)が生じた状態となる虞があるからである。
【0009】
しかし、前記のように長い起動時間で織機を起動させる場合には、緯入れを行ったとしても織布に織段(薄段)が生じた状態となる虞がある。詳しくは、織機の複数サイクルに亘って主軸の回転数を設定回転数にまで直線的に立ち上げる場合には、その主軸の回転数の加速勾配は緩やかなものとなる。そのため、織機は、起動開始直後の数サイクル間は主軸の回転数が低い状態で運転され、その状態で緯入れを伴う製織が行われることとなる。しかし、そのように主軸の回転数が低い状態では、筬の揺動運動による筬打ち力も弱いため、その間に緯入れされた緯糸が十分に打ち込まれず、薄段が生じた状態となる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、主軸の回転数の立ち上げにあたって主軸駆動装置に掛かる負荷を軽減すると共に、起動期間において緯入れを行うものとした上で前記した筬打ち力不足に起因する織布への織段の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による織機の駆動制御方法は、予め設定された設定回転数に従って定常運転時に主軸が回転駆動されるように主軸を駆動する主軸駆動装置における原動モータの駆動が制御される織機において、前記設定回転数よりも低い回転数に設定された起動回転数であって前記主軸駆動装置の負荷を考慮して定められた回転数以下で且つ前記設定回転数の40%以上に設定される起動回転数が予め設定されることを特徴とする。その上で、起動開始時点から前記主軸の回転数が前記設定回転数に達するまでの織機の起動にあたり、織機の1サイクル以上に亘る起動期間で緯入れを伴いつつ前記起動が行われ、且つ、起動開始時点からの前記原動モータの制御が前記起動回転数に従って行われると共に、前記主軸の回転数が前記起動回転数に達した時点以降に、予め定められた回転数上昇態様に従って前記主軸の回転数が前記起動回転数から前記設定回転数まで上昇するように前記原動モータの駆動が制御されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による駆動制御装置は、予め設定された設定回転数に従って定常運転時に主軸が回転駆動されるように主軸を駆動する主軸駆動装置における原動モータの駆動を制御すると共に緯入れを実行すべく緯入れに関与する各緯入れ関連装置の動作を制御すると共に、前記設定回転数よりも低い回転数に設定された起動回転数であって前記主軸駆動装置の負荷を考慮して定められた回転数以下で且つ前記設定回転数の40%以上に設定される起動回転数、及び該起動回転数から前記設定回転数まで前記主軸の回転数を上昇させるために予め定められた回転数上昇態様に応じて設定された駆動設定値が記憶された記憶部を備える。その上で、織機の起動開始時点から前記主軸の回転数が前記設定回転数に達するまでの織機の起動が織機の1サイクル以上に亘る起動期間で緯入れを伴いつつ行われるように前記原動モータの駆動及び前記各緯入れ関連装置の動作を制御し、且つ、前記起動開始時点からの前記原動モータの制御を前記起動回転数に従って行うと共に、前記主軸の回転数が前記起動回転数に達した時点以降に、前記回転数上昇態様に従って前記主軸の回転数が前記起動回転数から前記設定回転数まで上昇するように前記原動モータの制御を前記駆動設定値に基づいて行うことを特徴とする。
【0013】
そして、その本発明による駆動制御方法及び駆動制御装置において、前記回転数上昇態様は、前記設定回転数よりも低く且つ前記起動回転数よりも高い回転数として定められる1以上の中間回転数で織機の1サイクル以上に亘って前記主軸が回転駆動される状態を含むように定められることを特徴とする。
【0014】
なお、前記した「織機の1サイクル」とは、織機の連続運転中において主軸が1回転(0°~360°)する期間に相当する期間であって、その期間中に一連の製織動作(緯入れ~筬打ち)が1回行われる期間である。また、「緯入れ関連装置」は、給糸体から引き出された緯糸の緯入れに関与する装置であり、例えば、測長貯留装置(係止ピン)、メインノズルが含まれる。また、緯入れ装置が補助メインノズル、サブノズル、緯糸ブレーキ、クランパ等を含む場合には、それらも「緯入れ関連装置」に含まれる。

【0015】
さらに、前記のように前記回転数上昇態様を前記中間回転数が含まれるように定めた上で、本発明は、前記中間回転数に向けた回転数上昇量が織機に設定され、前記起動回転数から前記設定回転数まで回転数を上昇させる過程における前記原動モータの駆動の制御が前記回転数上昇量に基づいて行われるものであっても良い。なお、その場合、駆動制御装置においては、前記駆動設定値が前記回転数上昇量を含むように設定される。
【0016】
また、織機においては、前記定常運転時における緯入れのための緯入れ条件である基本緯入れ条件が予め織機に設定されると共に前記定常運転時の緯入れが前記基本緯入れ条件に従って行われるが、その織機において、本発明による駆動制御方法及び駆動制御装置を、前記起動期間においては、前記起動回転数に従って主軸を回転駆動するときの緯入れ及び前記中間回転数に従って主軸を回転駆動するときの緯入れがそれぞれの回転数に応じて定められた緯入れ条件に従って行われるものとしても良い。
【0017】
さらに、前記起動回転数に従って主軸を回転駆動するときの前記緯入れ条件及び前記中間回転数に従って主軸を回転駆動するときの前記緯入れ条件は、前記基本緯入れ条件とそれぞれの回転数とに基づいた算出によって求められることとしても良い。なお、ここで言う「緯入れ条件」とは、前記の緯入れ関連装置の作動タイミングを設定したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明による織機の駆動制御方法及び駆動制御装置によれば、前記のように設定された前記起動回転数に従って起動開始時点からの前記原動モータの制御が行われると共に前記主軸の回転数が前記起動回転数に達した時点以降では前記回転数上昇態様に従って前記原動モータの制御が行われる。それにより、前記主軸の回転数を短い起動時間で前記設定回転数にまで一気に上昇させるように前記原動モータの制御が行われる従来の起動方法と比べ、前記主軸の回転数を前記設定回転数まで立ち上げる起動期間において前記主軸駆動装置に掛かる負荷が軽減される。その結果として、想定した起動時間内に前記主軸の回転数が前記設定回転数まで立ち上がらずに製織される織物に織段等の欠点が生じるといった問題や、前記主軸駆動装置に過大な負荷が繰り返し掛かることによって前記主軸駆動装置が早期に破損してしまうといった問題の発生を防止することができる。
【0019】
加えて、本発明によれば、同じように前記主軸駆動装置に掛かる負荷を軽減すべく前記起動期間を織機の複数サイクルに亘る長い期間に設定して前記主軸の回転数を緩やかな一定の加速勾配で前記設定回転数まで上昇させる起動方法と比べ、起動開始直後の織機サイクルから十分な筬打ち力を発生させることができるため、前記した空打ちや筬打ち力不足に起因する織布への織段の発生を防止することができる。
【0020】
また、前記回転数上昇態様を前記のような中間回転数で織機の1サイクル以上に亘って前記主軸が回転駆動される状態が含まれるように定めることにより、本発明は前記起動期間において緯入れを行うことを前提としているが、その緯入れを安定して行うことができる。
【0021】
さらに、前記起動期間における緯入れが前記のようにそれぞれの回転数に応じて定められた緯入れ条件に従って行われるようにすることにより、その前記起動期間における緯入れがより最適な緯入れ条件で行われることとなる。その上で、その前記起動期間における緯入れのための前記緯入れ条件が、前記のような前記基本緯入れ条件と前記したそれぞれの回転数とに基づいた算出によって求められるようにすることにより、前記設定回転数や前記回転数上昇態様が変更された場合でも、その変更毎に前記緯入れ条件を手入力する手間が省かれるため、その設定作業において作業者に掛かる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明が適用される空気噴射式織機を示す全体構成図である。
図2】本発明の駆動制御装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の織機の駆動制御方法による主軸の回転数が設定回転数に達するまでの一連の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では、図1~3に基づき、本発明の一実施例について説明する。但し、本実施例では、前提とする織機として空気噴射式織機を例に本発明を説明する。
【0024】
図1に示すように、その空気噴射式織機1において、緯入れ装置10は、給糸体11、給糸体11から引き出された緯糸を緯入れ長さに応じた長さだけ貯留する測長貯留装置12、緯糸を緯入れするためのメインノズル13、メインノズル13から射出された緯糸の飛走を助勢する複数のサブノズル14、及び緯入れされた緯糸を切断するための給糸カッタ15を含んでいる。また、図示の例では、緯入れ装置10は、メインノズル13の上流側に設けられてメインノズル13による緯入れを補助する補助メインノズル16、及び緯入れの終期に緯糸に対し制動力を作用させるための緯糸ブレーキ装置17を含んでいる。
【0025】
そして、その緯入れ装置10において、メインノズル13、補助メインノズル16は、それぞれに対応させて設けられた電磁開閉弁13a、16a及び各ノズル13、16に対し供給する圧縮空気の圧力を調整するための調圧装置13b、16bを介し、圧縮空気を供給する流体供給源18に接続されている。また、各サブノズル14は、それぞれに対応させて設けられた電磁開閉弁14a及び各サブノズル14に共通の調圧装置14bを介し、メインノズル13と共通の流体供給源18に接続されている。
【0026】
その上で、その空気噴射式織機1においては、予め設定された噴射開始タイミングで電磁開閉弁13a、16aが制御されてメインノズル13及び補助メインノズル16に対し圧縮空気が供給されると共に、続く緯入れ開始タイミングで測長貯留装置12において係止ピン12aが駆動されて貯留ドラム12b上の緯糸の係止ピン12aによる係止が解除される。それにより、測長貯留装置12における貯留ドラム12b上で貯留されている緯糸が解舒されつつメインノズル13から緯糸が射出される緯入れ動作が開始される。
【0027】
さらに、そのメインノズル13から射出された緯糸は、サブノズル14から噴射される圧縮空気によって助勢されながら経糸開口内を飛走する。そして、その緯糸の先端が反給糸側の所定の位置に達するようなタイミングである緯入れ終了タイミングで測長貯留装置12において係止ピン12aが緯糸を係止することにより、緯糸が拘束されてその飛走が停止し、それにより1回の緯入れが完了した状態となる。なお、メインノズル13及び補助メインノズル16からの圧縮空気の噴射は、その緯入れの期間中のタイミングとして設定された噴射終了タイミングにおいて停止される。
【0028】
また、その緯入れの終期において緯糸ブレーキ装置17が作動することにより、緯糸の飛走速度が減速され、前記した係止ピン12aによる拘束時に緯糸に掛かる衝撃が緩和される。そして、そのように緯入れが完了すると、その緯入れされた緯糸が筬19によって織前に対し筬打ちされると共に、経糸開口が閉じられることにより、その緯入れされた緯糸が織前に織り込まれた状態となる。さらに、その筬打ち後、メインノズル13に連なる緯糸が給糸カッタ15により切断される。それにより、メインノズル13に挿通されている緯糸は、その先端が自由端となり、次の緯入れが可能な状態となる。因みに、経糸開口を形成する/閉じる経糸開口装置(図示略)及び筬19は、空気噴射式織機1の主軸20に連結されており、その主軸20を駆動源として所定の態様で製織中において駆動される。
【0029】
また、そのような空気噴射式織機1において、緯入れ装置10は、メインノズル13、補助メインノズル16及び各サブノズル14に対する圧縮空気の供給を制御する各電磁開閉弁13a、16aの動作、測長貯留装置12における係止ピン12aの進退動作、緯糸ブレーキ装置17の動作(より詳しくは、緯入れ装置10における制動部材17aを駆動するための駆動モータ17bの駆動)を制御する緯入れ制御装置32を含んでいる。
【0030】
その緯入れ制御装置32は、記憶器32aを有しており、その記憶器32aには緯入れ条件として前記したメインノズル13、補助メインノズル16及び各サブノズル14の噴射開始・終了タイミング、緯入れ開始・終了タイミング、緯糸ブレーキ装置17の作動開始・終了タイミング等の設定値が記憶されている。
【0031】
なお、空気噴射式織機1は、入力設定器40を備えており、前記の各設定値は、その入力設定器40において設定されると共に、その入力設定器40から緯入れ制御装置32に伝送され、前記の記憶器32aに記憶される。また、空気噴射式織機1は、主軸20の回転角度を検出する角度検出器50を有しており、主軸20の1回転単位でその回転角度を検出するように構成されている。そして、その検出された主軸20の回転角度は、緯入れ制御装置32に対しても出力されている。
【0032】
その上で、緯入れ制御装置32は、角度検出器50から出力された主軸20の回転角度と記憶器32aにおける前記の各設定値とに基づき、前記した緯入れ装置10における各電磁開閉弁13a、14a、16aの動作、係止ピン12aの進退動作、緯糸ブレーキ装置17の動作等を制御する。
【0033】
具体的には、メインノズル13及び補助メインノズル16に関しては、緯入れ制御装置32は、メインノズル13及び補助メインノズル16に対し設定された噴射開始タイミングの設定値と主軸20の回転角度位置(以下、「クランク角度」とも言う。)とが一致した時点において、メインノズル13に対応する電磁開閉弁13a及び補助メインノズル16に対応する電磁開閉弁16aを開弁する制御を実行する。それにより、メインノズル13及び補助メインノズル16に対する圧縮空気の供給が開始され、その噴射開始タイミングにおいてメインノズル13及び補助メインノズル16からの圧縮空気の噴射が開始される。また、緯入れ制御装置32は、メインノズル13及び補助メインノズル16に対し設定された噴射終了タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、前記のように開弁した各電磁開閉弁13a、16aを閉弁する制御を実行する。それにより、メインノズル13及び補助メインノズル16に対する圧縮空気の供給が停止され、その噴射終了タイミングにおいてメインノズル13及び補助メインノズル16からの圧縮空気の噴射が停止される。
【0034】
さらに、各サブノズル14に関しては、緯入れ制御装置32は、各サブノズル14に対し設定された噴射開始タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、各サブノズル14に対応する電磁開閉弁14aを開弁する制御を実行する。それにより、各サブノズル14に対する圧縮空気の供給が開始され、それぞれの噴射開始タイミングにおいて各サブノズル14からの圧縮空気の噴射が開始される。また、緯入れ制御装置32は、各サブノズル14に対し設定された噴射終了タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、各電磁開閉弁14aを閉弁する制御を実行する。それにより、前記した各サブノズル14に対する圧縮空気の供給が停止され、それぞれの噴射終了タイミングにおいて各サブノズル14からの圧縮空気の噴射が停止される。
【0035】
また、測長貯留装置12に関しては、緯入れ制御装置32は、緯入れ開始タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、係止ピン12aを貯留ドラム12bから離間させるべく係止ピン12aを後退させる制御(より詳しくは、係止ピン12aを進退駆動するソレノイド等の駆動装置の制御)を実行する。それにより、測長貯留装置12は、貯留ドラム12b上で貯留されている緯糸を解舒可能な状態(緯入れ可能な状態)となる。また、緯入れ制御装置32は、予め設定された係止ピン12aの進出タイミング(緯入れ終了前のタイミング)において、緯糸を係止可能な状態とすべく係止ピン12aを貯留ドラム12bへ向けて進出させる制御を実行する。それにより、測長貯留装置12は、係止ピン12aにより緯糸を係止することが可能な状態となり、前記した緯糸の飛走に伴って貯留ドラム12b周りを周回する緯糸が係止ピン12aにより係止され、緯糸の飛走が停止される。
【0036】
また、緯糸ブレーキ装置17に関しては、緯入れ制御装置32は、その緯糸ブレーキ装置17に対し設定された作動開始タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、緯糸に対し制動力を作用させるように制動部材17aを駆動モータ17bで駆動する制御を実行する。但し、その作動開始タイミングは、緯入れ過程の終期(緯入れ終期)のタイミングとして設定されている。そして、緯入れ終期において緯糸が給糸側で制動部材17aによって屈曲された状態となり、飛走する緯糸が制動された状態となる。さらに、緯入れ制御装置32は、緯糸ブレーキ装置17に対し設定された作動終了タイミングの設定値とクランク角度とが一致した時点において、緯糸から離間するように制動部材17aを駆動モータ17bで駆動する制御を実行する。但し、その作動終了タイミングは、緯入れ終了後のタイミングとして設定されている。そして、その制動部材17aの駆動により、緯糸が屈曲された状態が解消される。
【0037】
なお、以上で説明したように本実施例の空気噴射式織機1においては、測長貯留装置12における係止ピン12aの進退動作、メインノズル13、補助メインノズル16及び各サブノズル14の噴射動作、緯糸ブレーキ装置17の動作が、記憶器32aに記憶された緯入れ条件の設定値に従って制御される。その上で、定常運転状態の製織中においては、その定常運転用の緯入れ条件としての基本緯入れ条件に従い、前記した各装置の動作が制御される。そして、本実施例では、そのように緯入れ条件に従って動作が制御される測長貯留装置12(係止ピン12a)、メインノズル13、補助メインノズル16、各サブノズル14、及び緯糸ブレーキ装置17が、本発明で言う緯入れ関連装置に相当する。
【0038】
また、空気噴射式織機1は、主制御装置31を有しており、前記した入力設定器40がその主制御装置31に対し接続されている。また、前記した緯入れ制御装置32もその主制御装置31に対し接続されている。さらに、前記した角度検出器50も主制御装置31に対し接続されており、主制御装置31には、その角度検出器50で検出された主軸20の回転角度が入力されている。そして、その角度検出器50で検出された主軸20の回転角度は、主制御装置31を介して前記のように緯入れ制御装置32に対して出力されている。
【0039】
また、空気噴射式織機1は、主軸20を回転駆動する主軸駆動装置60における原動モータ60aの駆動を制御するインバータ33を備えている。そして、空気噴射式織機1は、主軸20の目標の回転数に基づいてインバータ33を制御して原動モータ60aの駆動を制御するように構成されている。具体的には、インバータ33は、目標とする主軸20の回転数(主軸回転数)に応じた出力周波数を発生し、原動モータ60aがその目標の主軸回転数に応じた回転数(目標回転数)で駆動されるように原動モータ60aの駆動を制御する。すなわち、原動モータ60aは、インバータ33の出力周波数に応じた回転数で駆動されるように制御される。因みに、本実施例では、空気噴射式織機1は、原動モータ60aが駆動伝達機構(図示略)を介して主軸20に対し連結され、原動モータ60a(出力軸)の回転がその駆動伝達機構を介して主軸20に伝達されるように構成されている。したがって、本実施例の空気噴射式織機1における主軸駆動装置60は、その駆動伝達機構も含んでいる。
【0040】
但し、近年の一般的な織機では、起動時においては、原動モータ60aの回転数が短時間で前記目標回転数に達するように、例えば定常運転時において回転数を変更する場合における制御(定常運転時制御)と比べ、異なる状態での原動モータ60aの制御(起動用制御)が行われている。そして、本実施例の空気噴射式織機1でも、原動モータ60aの回転数が零の状態から立ち上げられる起動時においては、その前記起動用制御によって原動モータ60aの駆動が制御される。また、主軸回転数が設定された定常運転時の回転数に達した以降では、原動モータ60aは、前記定常運転時制御によりその駆動が制御される。
【0041】
以上のように空気噴射式織機1は、主制御装置31、緯入れ制御装置32、及びインバータ33を備えている。そして、その各制御装置は、空気噴射式織機1における駆動制御装置30に含まれている。その上で、本発明では、その駆動制御装置30は、織機の起動時において、従来のように主軸回転数を定常運転時の回転数である設定回転数まで一気に立ち上げるように原動モータ60aの制御を行うのではなく、先ずはその設定回転数よりも低い回転数として設定された起動回転数まで主軸回転数を立ち上げ、その起動回転数に達した時点以降では予め定められた主軸回転数の上昇態様(回転数上昇態様)に従って主軸回転数が設定回転数まで上昇するように原動モータ60aの制御を行うことを特徴としている。以下に、その駆動制御装置30について、その具体的な構成を詳述する。
【0042】
駆動制御装置30は、前記したインバータ33に対し接続された駆動制御部34を備えている。また、その駆動制御部34は、前記した設定回転数及び起動回転数が記憶された記憶部34aを含んでいる。さらに、その駆動制御部34は、前記した主制御装置31に対し接続されている。そして、前記した設定回転数及び起動回転数は、入力設定器40において設定されると共に、その入力設定器40から主制御装置31を介して駆動制御部34に伝送されることで記憶部34aにおいて記憶される。また、前記のように角度検出器50で検出されて主制御装置31に入力された主軸20の回転角度は、その主制御装置31を介して駆動制御部34に対しても出力されている。
【0043】
そして、駆動制御部34は、前記のように目標とする主軸回転数に応じた出力周波数をインバータ33が発生するように、その目標とする主軸回転数に応じた周波数指令信号をインバータ33に対し出力する。したがって、前記のように起動回転数に向けて主軸回転数を立ち上げるにあたっては、起動の開始時点において、駆動制御部34がその起動回転数に応じた周波数指令信号を出力し、インバータ33は、その周波数指令信号に従って起動回転数に応じた出力周波数を発生させる。また、前記した回転数上昇態様に従って起動回転数から設定回転数まで主軸回転数を上昇させるにあたっては、その回転数上昇態様に応じた周波数指令信号を出力し、インバータ33は、その周波数指令信号に従って回転数上昇態様に応じた出力周波数を発生させる。
【0044】
なお、その起動回転数について、その起動回転数は、前記のように設定回転数よりも低い回転数として設定される回転数であり、具体的には、織機の起動時において主軸駆動装置60に掛かる負荷を考慮して定められる回転数以下の回転数として設定される。但し、本発明では、その起動回転数は、設定回転数の40%以上の回転数として設定される。より詳しくは、以下の通りである。
【0045】
一例として、本実施例では、設定回転数が一般的な製織における回転数と比べて非常に高い1800rpmに設定されている場合とする。その場合、織機の仕様や製織条件が同じであっても、一般的な製織における起動時間(設定回転数まで主軸回転数を上昇させる時間)と同じような時間でその設定回転数まで主軸回転数を立ち上げようとすると、主軸駆動装置に過大な負荷が掛かることとなり、その負荷に起因する先で述べた問題が生じる虞がある。そこで、起動回転数は、その主軸を立ち上げる時間とその際に主軸駆動装置に掛かる負荷とを考慮し、前記問題が発生しないような回転数(許容回転数)を定めた上で設定される。なお、その許容回転数は、織機の仕様や製織条件等によって異なるが、本実施例では、一例として1000rpmとする。
【0046】
前記許容回転数が前記のように定められることにより、起動回転数は、それ以下の回転数として設定される。但し、その起動回転数は、前記のように設定回転数の40%以上の回転数として設定される。その理由としては、本発明は、主軸回転数が零の状態から設定回転数まで上昇するまでの起動の期間(起動期間)においても緯入れを行うことを前提としている。その場合、先で述べた筬打ち力不足に起因する織段等が発生しないように起動開始直後の織機サイクルから十分な筬打ち力が必要となるため、起動回転数は、主軸回転数が起動開始直後においてもそのような十分な筬打ち力が得られるような回転数に達するように設定されていなければならないからである。
【0047】
その上で、本実施例では、十分な筬打ち力を確保すると共に主軸回転数を設定回転数まで上昇させる時間をより短くするために、起動回転数は、前記許容回転数の上限、すなわち1000rpmに設定されているものとする。なお、その1000rpmは、設定回転数である1800rpmに対し40%以上の回転数である。
【0048】
また、前記した回転数上昇態様について、その回転数上昇態様は、主軸回転数をどのようにして起動回転数から設定回転数まで上昇させるかを定めたものである。その回転数上昇態様としては、例えば、起動回転数よりも高く且つ設定回転数よりも低い回転数(本出願で言う「中間回転数」)を1以上定め、起動回転数から中間回転数へ向けて主軸回転数を上昇させると共に中間回転数から設定回転数へ向けて主軸回転数を上昇させるといったかたちで段階的に主軸回転数を上昇させるといった態様が考えられる。但し、その態様において、中間回転数が2以上設定される場合には、その途中に低い方の中間回転数から高い方の中間回転数へ向けて主軸回転数を上昇させる段階を含む。
【0049】
その上で、本実施例では、その回転数上昇態様は、予め定められた所定の回転数上昇量ずつ複数回に亘って設定回転数まで段階的に主軸回転数が上昇されるように定められているものとする。言い換えれば、本実施例の回転数上昇態様は、起動回転数から設定回転数までの回転数の範囲を複数に等分割し、その各中間回転数を経て設定回転数まで段階的に主軸回転数が上昇されるといった態様に定められているものとする。具体的には、本実施例では、前記範囲(1000rpm~1800rpm)を4分割し、その各中間回転数(1200rpm、1400rpm、1600rpm)へ向けて回転数上昇量200rpmずつ主軸回転数が上昇されるといったかたちで回転数上昇態様が定められる。その上で、本実施例では、その回転数上昇量200rpmが駆動制御部34の記憶部34aに記憶されているものとする。なお、その回転数上昇量も、入力設定器40により入力設定され、記憶部34aに伝送される。
【0050】
ところで、一般的な織機の起動方法においては、起動時における設定回転数までの主軸回転数の立ち上げが、前述のように前記起動用制御によって行われる。それに対し、本実施例では、その起動方法は、前記した起動回転数までの主軸回転数の立ち上げが前記起動用制御によって行われ、その一方で、主軸回転数が起動回転数に達した後に主軸回転数を設定回転数まで上昇させるにあたっては主軸回転数が前記定常運転時制御に従って制御されるように設定されているものとする。すなわち、前記の中間回転数へ向けた主軸回転数の上昇、及び中間回転数から設定回転数へ向けた主軸回転数の上昇が、前記定常運転時制御に従って行われる。
【0051】
なお、前記定常運転時制御においては、上昇させるべき回転量だけ主軸回転数を上昇させるのに要する時間は、主軸駆動装置60の構成やその主軸駆動装置60にかかる負荷等の影響を受ける。そこで、本実施例の回転数上昇態様は、前記のように主軸回転数を中間回転数に向けて上昇させるために駆動制御部34から周波数指令信号が出力された時点から次に主軸回転数を中間回転数(又は設定回転数)に向けて上昇させるために駆動制御部34から周波数指令信号が出力される時点までの期間が前記のような影響を考慮して設定されたものとされる。具体的には、本実施例では、前記期間が織機の2サイクルとなるように回転数上昇態様が定められる。その上で、その回転数上昇態様を実現するために、その前記期間(2サイクル)の設定値(設定期間)が駆動制御部34の記憶部34aに記憶される。また、その設定期間も、入力設定器40により入力設定され、記憶部34aに伝送される。
【0052】
以上のような本実施例の駆動制御装置30によれば、空気噴射式織機1の運転を開始すべく入力設定器40に設けられた運転釦が作業者により操作されて運転信号が入力設定器40から主制御装置31へ向けて出力されると、その運転信号が主制御装置31を介して駆動制御部34に入力される。駆動制御部34は、その運転信号の入力に伴い、前記した起動用制御が実行される状態に切り換えられると共に、起動回転数(1000rpm)に応じた周波数指令信号をインバータ33に対し出力する。それにより、原動モータ60aの駆動が起動用制御によって制御されて、主軸回転数が短時間で起動回転数まで立ち上げられる。
【0053】
そして、主軸回転数が起動回転数に達した後に、駆動制御部34は前述のように定められた回転数上昇態様に従って主軸回転数が上昇するように原動モータ60aを制御する状態に切り換えられるが、本実施例では、その切り換えの時点(切換時点)は、運転釦が操作されてから主軸20が2回転程度回転する期間が経過した時点に設定されているものとする。詳しくは、その切換時点は、運転釦が操作されてから(運転信号が発生した時点から)主軸回転数が起動回転数に達するまでの期間を越えた時点に設定されている必要がある。そして、運転釦が操作されてから起動用制御によって主軸回転数が設定された回転数まで立ち上がる期間は、試験あるいは過去の実績等から把握することが可能である。そこで、本実施例では、前記切換時点は、その把握された期間を踏まえ、前記のように設定される。具体的には、起動開始時点のクランク角度が300°であるものとし、その上で、前記切換時点は、クランク角度が2回目の360°(0°)に達した時点であるように定められているものとする。
【0054】
そして、そのように定められた前記切換時点は、駆動制御部34における記憶部34aに記憶される。また、駆動制御部34は、主制御装置31から出力されるクランク角度とその記憶部34aに記憶された前記切換時点とに基づき、運転釦が操作されてからクランク角度がその前記切換時点に達したかを判別するように構成されている。その上で、駆動制御部34は、クランク角度が前記切換時点に達したと判別された時点において、起動用制御から定常運転時制御が実行される状態に切り換えられると共に、インバータ33に対して回転数上昇態様に応じた周波数指令信号を出力する。
【0055】
なお、前記切換時点以降に駆動制御部34から出力される周波数指令信号は、前記した中間回転数に応じた周波数指令信号となる。但し、前述のように本実施例では、記憶部34aに記憶されている情報はその中間回転数ではなく前記のような回転数上昇量(200rpm)である。そこで、駆動制御部34が周波数指令信号を出力するにあたっては、駆動制御部34が次に上昇させるべき回転数を算出した上で、その算出された回転数(算出回転数)の出力が行われる。言い換えれば、本実施例の駆動制御部34は、そのような算出回転数を求める機能(算出機能)を有している。具体的には、駆動制御部34は、その周波数指令信号を出力する時点の主軸回転数(起動回転数又は中間回転数)に前記の回転数上昇量を加算し、それによって求められた算出回転数に応じた周波数指令信号を出力するように構成されている。そして、本実施例では、前記したように記憶部34aに記憶されると共に次の周波数指令信号を出力するための次の算出回転数を求めるために用いられる回転数上昇量が、本発明で言う駆動設定値に相当する。
【0056】
その上でしたがって、前記切換時点で駆動制御部34から出力される周波数指令信号は、起動回転数(1000rpm)に前記の回転数上昇量(200rpm)を加算して求められた算出回転数(中間回転数=1200rpm)に応じた周波数指令信号とされる。そして、その周波数指令信号に基づいた出力周波数に従ってインバータ33が原動モータ60aを制御することにより、主軸回転数が最初の中間回転数(1200rpm)まで上昇する。
【0057】
また、本実施例の回転数上昇態様を実現するために、駆動制御部34は、前述のように記憶部34aにおいて前記設定期間(2サイクル)を記憶しており、2サイクル毎に回転数上昇態様に応じた周波数指令信号を出力するように構成されている。更には、駆動制御部34は、前記のような算出機能による算出回転数の算出を次の周波数指令信号の出力時点よりも前に設定された所定のタイミング(算出タイミング)で行うように構成されているものとする。
【0058】
したがって、例えば前記切換時点(算出回転数に応じた周波数指令信号が出力される「先」の時点)から2サイクル経過した時点である「後」の時点については、その前記後の時点で出力される周波数指令信号の基となる回転数は、前記後の時点よりも前であって前記先の時点(前記切換時点)よりも後の算出タイミングにおいて算出される。そして、その算出タイミングで求められた算出回転数(1200+200=1400rpm)に応じた周波数指令信号が前記後の時点において出力され、その結果として主軸回転数が次の中間回転数(1400rpm)まで上昇する。以降、その前記後の時点が前記先の時点となると共にその2サイクル後が前記後の時点となって、前記と同様に算出回転数の算出及びその算出回転数に応じた周波数指令信号の出力が行われる。
【0059】
その上で、駆動制御部34は、前記算出機能により求められた算出回転数が設定回転数と一致した場合には、その算出回転数ではなく記憶部34aに記憶されている設定回転数に基づいて周波数指令信号を出力すると共に、それ以降における前記算出機能を無効とする(算出を行わない)ように構成されているものとする。それにより、主軸回転数が設定回転数(1800rpm)にまで上昇されると共に、その設定回転数に達した時点以降は、空気噴射式織機1は、主軸回転数がそれ以上は上昇せずに、主軸20が設定回転数で回転駆動された状態(定常運転状態)となる。
【0060】
因みに、以上で説明したような本実施例の主軸回転数の上昇の態様を線図で表すと、図3において実線で示したようなかたちとなる。その上で、そのような態様で主軸20が駆動されると、実際の主軸回転数の変化は、図3において破線で示したようなかたちとなる。
【0061】
このように、本実施例の駆動制御装置30による起動時における織機の駆動制御方法(起動方法)によれば、設定回転数よりも低い回転数であってその織機の起動時において主軸駆動装置60に掛かる負荷を考慮して設定された起動回転数まで主軸回転数を一旦立ち上げた後、予め定められた回転数上昇態様に従って設定回転数まで主軸回転数を上昇させるといったかたちで織機が起動される。したがって、その起動方法によれば、従来のように一気に設定回転数まで主軸回転数を立ち上げる従来の起動方法(従来方法)と比べて、起動時において主軸駆動装置60に掛かる負荷が軽減される。
【0062】
なお、その起動方法によれば、前記のように主軸駆動装置60に掛かる負荷が軽減されるため、従来の一般的な織機において行われている起動時の制御態様であって短時間で目標とする回転数(本発明の場合は起動回転数)まで主軸回転数を立ち上げる制御態様で織機を起動させても、その起動時において主軸駆動装置60に掛かる負荷は許容される。したがって、その負荷を考慮して設定回転数まで緩やかな加速勾配で主軸回転数を立ち上げるといった起動方法で織機を起動させる必要が無いため、織機の起動開始直後において筬打ち力不足に起因する織段が発生することは無い。
【0063】
さらに、本実施例では、その回転数上昇態様は、前述のような複数の中間回転数を含むように定められている。それにより、本発明は前述のように前記起動期間においても緯入れを行うことを前提としているが、その緯入れが安定して行われることとなる。
【0064】
詳しくは、本発明においては、その回転数上昇態様は、中間回転数を含まない、すなわち、起動回転数から設定回転数まで主軸回転数を一気に上昇させる態様であっても良い。そして、その態様であっても、前記従来方法と比べ、起動時において主軸駆動装置60に掛かる負荷は軽減される。但し、その場合、起動回転数から設定回転数へ向けて主軸回転数が連続的に変化する状態となる。それに対し、本実施例の回転数上昇態様は、複数の中間回転数を含み、起動回転数から各中間回転数を経て設定回転数まで主軸回転数を段階的に上昇させる態様に定められている。
【0065】
具体的には、その回転数上昇態様は、周波数指令信号が出力されることによって上昇する主軸回転数の1回の上昇量を200rpmとすると共に、その周波数指令信号が織機の2サイクルの間隔をおいて出力されるように定められている。なお、本実施例において2サイクルに設定された前記設定期間は、前述のように主軸駆動装置60に掛かる負荷等による影響を考慮して設定されるものであり、主軸回転数を設定された回転数上昇量(200rpm)だけ上昇させるのに要する期間よりも(十分に)長い期間である。
【0066】
したがって、そのように定められた回転数上昇態様によれば、起動回転数から設定回転数まで主軸回転数が上昇する間に、主軸20が中間回転数で回転駆動される期間が存在することとなる。また、回転数が上昇する期間における回転数の上昇量(変化量)も、主軸回転数が連続的に変化する場合と比べて小さくなる。それにより、本発明は前記起動期間においても緯入れを行うことを前提としているが、その緯入れが安定して行われる。
【0067】
また、本実施例の駆動制御装置30は、その前記起動期間での緯入れを、前述した基本緯入れ条件ではなく、設定回転数に応じた周波数指令信号が出力されるよりも前の時点において1サイクル以上に亘って存在する織機の各運転状態における回転数(起動回転数又は中間回転数(算出回転数))に応じて定められた緯入れ条件に従って行うように構成されているものとする。
【0068】
具体的には、駆動制御装置30において、駆動制御部34は、前記した緯入れ制御装置32に対しても接続されている。そして、駆動制御部34は、インバータ33に対し周波数指令信号を出力する時点で、その出力される周波数指令信号の基となった起動回転数又は中間回転数(算出回転数)を緯入れ制御装置32に対して出力するように構成されているものとする。但し、駆動制御部34は、前記算出機能により求められた算出回転数が設定回転数と一致した場合には、その算出回転数ではなく、記憶部34aに記憶されている設定回転数を緯入れ制御装置32に対して出力するように構成されているものとする。
【0069】
その上で、緯入れ制御装置32は、その駆動制御部34から入力される起動回転数又は算出回転数(以下、総称して「入力回転数」と言う。)に基づき、各入力回転数に応じた緯入れ条件を求め、その入力回転数に応じた周波数指令信号を駆動制御部34が出力した時点から2サイクルの間の緯入れを、その求めた緯入れ条件に従って行うように構成されているものとする。
【0070】
なお、緯入れ制御装置32における各入力回転数に応じた緯入れ条件の求め方について、本実施例では、緯入れ制御装置32が、入力回転数に応じた前述の各緯入れ条件の設定値を算出により求めるための演算式を記憶しているものとする。また、その演算式は、各緯入れ条件について、基本緯入れ条件における設定値(基本設定値)と設定回転数とを固定値として含み、入力回転数と設定回転数との比によって基本設定値を入力回転数に応じた設定値に変更するように設定されている。
【0071】
それにより、緯入れ制御装置32は、前記のように駆動制御部34からの入力回転数が入力される毎に、その演算式を用い、各緯入れ条件について入力回転数に応じた設定値を求める。その上で、緯入れ制御装置32は、その求められた各緯入れ条件の設定値を一時的に記憶し、その設定値に従って前記のように各緯入れ関連装置の動作を制御する。
【0072】
このように、本実施例の駆動制御装置30によれば、前記起動期間での緯入れについて、起動回転数に従って主軸回転数が制御される運転状態では、その起動回転数に応じた各緯入れ条件の設定値に従って各緯入れ関連装置の動作が制御されて緯入れが実行される。また、各中間回転数(算出回転数)に従って主軸回転数が制御される運転状態では、その算出回転数に応じた各緯入れ条件の設定値に従って各緯入れ関連装置の動作が制御されて緯入れが実行される。それにより、前記起動期間における緯入れが、各運転状態に応じた最適な緯入れ条件で行われ、各緯入れが安定して行われる。なお、前述のように算出された算出回転数が設定回転数と一致した場合には、主軸回転数が設定回転数に従って制御される運転状態となるが、その運転状態では、基本緯入れ条件の基本設定値に従って緯入れが実行される。
【0073】
また、本実施例では、その各運転状態に応じた緯入れ条件の設定値が、予め設定された演算式を用いて算出される。それによれば、設定回転数や基本緯入れ条件の基本設定値等が変更された場合でも、その変更毎に起動回転数及び中間回転数に応じた緯入れ条件を作業者が手入力する手間が省かれるため、その設定作業において作業者に掛かる負担を軽減できる。
【0074】
以上では、前提とする織機として空気噴射式織機を例に本発明による駆動制御装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0075】
(1)前記実施例では、設定回転数が1800rpmの織機を例として本発明を説明した。しかし、本発明が前提とする織機は、その設定回転数については特に限定されるものではなく、その設定回転数が前記実施例の1800rpmよりも高く設定されたものや、低く設定されたものも含む。すなわち、本発明は、起動時に主軸駆動装置に掛かる負荷を考慮して織機に適用されるものであり、設定回転数に応じて適用されるものではないため、適用される織機における設定回転数は特に限定されない。
【0076】
なお、設定回転数が高い場合にはその設定回転数まで主軸回転数を立ち上げるのに前記負荷が大きくなることは前述の通りであるが、設定回転数が低い場合、特に前記実施例における起動回転数よりも低い場合(例えば、700rpm)であっても、本発明は適用される。何故なら、例えば、開口装置が原動モータを駆動源とする織機であってその開口装置における綜絖枠を駆動するのに前述のように大きな力が必要とされる織機においては、設定回転数が低い回転数に設定されている場合であっても、前記した設定回転数が高い場合と同様にその起動時における前記負荷が大きくなり、その大きな前記負荷に起因して主軸駆動装置の破損を招くといった問題が発生してしまうからである。
【0077】
その上で、本発明における起動回転数は、前記のように本発明の適用が求められる織機においてそのときの設定回転数を踏まえて設定される回転数であり、その設定回転数よりも低い前記した前記許容回転数以下であって、その設定回転数の40%以上に設定される回転数である。したがって、その起動回転数は、当然ながら前記実施例の1000rpmに限定されるものではない。例えば、設定回転数が前記した700rpmであって前記許容回転数が500rpmである場合には、起動回転数は、280rpm~500rpmの間で任意に(好ましくは上限に近い方で)設定される。
【0078】
(2)回転数上昇態様について、前記実施例では、回転数上昇態様が中間回転数を含むように定められており、その中間回転数あるいは設定回転数へ向けた回転数上昇量は、各上昇段階において一律の200rpmに設定されている。しかし、本発明においては、回転数上昇態様が前記実施例のように中間回転数を含むように定められる場合であっても、その中間回転数あるいは設定回転数へ向けた各上昇段階での回転数上昇量は、前記実施例のような設定に限らず、任意に設定可能である。
【0079】
例えば、回転数上昇態様は、起動回転数及び設定回転数が前記実施例と同じ場合において、先ずは起動回転数から400rpm上昇させ、その上昇後の中間回転数(1400rpm)から再び400rpm上昇させて主軸回転数を設定回転数にもたらすといった態様であっても良い。この場合、各上昇段階での回転数上昇量は前記実施例と同じく一律であるが、回転数上昇態様における中間回転数は、1つのみとなる。また、その同じ場合において、回転数上昇態様は、起動回転数から3回の上昇段階を経て主軸回転数を設定回転数にもたらすこととし、その3回のうちの2回の上昇段階における回転数上昇量を300rpmとした上で、残りの回転数上昇量を200rpmとするといった態様であっても良い。すなわち、各上昇段階における回転数上昇量は、前記実施例のように全ての上昇段階で一律に設定されるものに限らず、各上昇段階で任意に設定されるものとしても良い。
【0080】
但し、回転数上昇量は、その上昇量分だけ主軸回転数を上昇させる際の主軸回転数の変化が緯入れに与える影響を考慮して(緯入れに悪影響を及ぼさない程度に)求められる許容上昇量の範囲内において設定される。なお、前記したように、本発明が適用される織機において設定回転数は特に限定されるものではなく、また、起動回転数はその設定回転数及び前記許容回転数に基づいて設定される。そこで、回転数上昇態様における回転数上昇量は、前記許容上昇量及びそのときの起動回転数から設定回転数までの範囲を踏まえ、その範囲を何段階に分けて上昇させるかや、その各上昇段階でどれだけの上昇量を上昇させるか等に基づいて定められる。
【0081】
(3)また、その回転数上昇態様について、前記実施例では、その回転数上昇態様に従った主軸回転数の上昇を実現するために、主軸回転数を上昇させるための周波数指令信号が所定の期間毎に出力されるように前記した設定期間が設定されている。なお、その設定期間は、前述のように主軸回転数を回転数上昇量だけ上昇させるのに要する時間(上昇期間)を考慮して設定される。その上で、前記実施例では、その設定期間は、主軸回転数を200rpm上昇させる前記上昇期間を含むと共に織機のサイクル単位で設定される上での最短の期間である2サイクルに設定されている。
【0082】
しかし、本発明において、回転数上昇態様は、その設定期間が前記実施例のように最短の期間に設定されるものに限らない。すなわち、その設定期間は、前記上昇期間を含む期間であって織機のサイクルの整数倍の期間であれば良い。したがって、例えば、回転数上昇量が前記実施例と同じく200rpmの場合でも、その設定期間は、前記した最短の期間である2サイクルよりも長い任意の期間であっても良い。但し、設定期間を長くするとその分だけ起動期間が長くなるため、その設定期間は起動期間も考慮して設定される。
【0083】
さらに、回転数上昇態様は、前記のように複数の中間回転数を含んでいて複数の前記上昇段階を含む(複数の設定期間を含む)場合でも、その全ての設定期間が同じサイクル数に設定されていなくても良い。すなわち、その場合では、起動期間における各上昇段階の設定期間が、前記実施例のように全ての上昇段階で同じサイクル数に設定されるものに限らず、各上昇段階で任意に設定されるものとしても良い。
【0084】
また、本発明において、回転数上昇態様は、前記実施例のような設定期間を含むものには限定されない。例えば、駆動制御装置を、主軸回転数を検出する機能を有すると共に、周波数指令信号が出力された時点以降においてその周波数指令信号が基づく回転数(指令回転数)と検出された主軸回転数(検出回転数)とを比較する機能を有するように構成する。その上で、その指令回転数と検出回転数とが一致した時点以降の所定のタイミング(例えば、クランク角度が0°に達した時点)で次の周波数指令信号の出力を行うように駆動制御装置を構成する。そして、その構成によれば、前記のように設定期間を設定していなくても、回転数上昇量に応じた期間毎に周波数指令信号が出力されるようにすることが可能である。
【0085】
(4)また、前記実施例では、前記のような中間回転数を含む回転数上昇態様を実現する上で、回転数上昇量(200rpm)が設定されて駆動制御部に記憶されており、次に上昇させるべき回転数が回転数上昇量を用いて算出により求められている。しかし、本発明において、回転数上昇態様が前記実施例のように中間回転数を含む場合であっても、前記実施例のように回転数上昇量が設定されていて算出により中間回転数が求められる手法には限らず、その回転数上昇態様において想定される中間回転数自体が予め駆動制御部(記憶部)に記憶されており、周波数指令信号の出力時点で次の中間回転数が選出されるといった手法であっても良い。
【0086】
なお、その場合には、例えば、駆動制御部においてその中間回転数が前記切換時点からのサイクル数と関連付けて記憶される、あるいは前記のように検出回転数に基づいて周波数指令信号が出力されるように駆動制御装置を構成することで、予め定められた期間毎に周波数指令信号が出力されるものとなる。さらに、その場合には、最後の中間回転数(中間回転数が1つの場合はその中間回転数)による駆動後の設定回転数に応じた周波数指令信号の出力も、中間回転数と同様の態様で行われるようにすれば良い。そして、その場合では、そのように駆動制御部の記憶部に記憶される中間回転数が、本発明で言う駆動設定値に相当する。
【0087】
(5)起動期間における緯入れについて、前記実施例では、緯入れ制御装置は、基本緯入れ条件の設定値及び駆動制御部から入力される入力回転数(起動回転数又は中間回転数)に基づいてその入力回転数に応じた各緯入れ条件の設定値を算出すると共に、その各設定値に従って各緯入れ関連装置の動作を制御して緯入れを行うように構成されている。
【0088】
しかし、本発明においては、その各緯入れ条件の設定値が前記実施例のように入力回転数に基づいて算出によって求められるといった手法に限らず、起動回転数及び中間回転数に応じたその各緯入れ条件の設定値を基本緯入れ条件と同じく予め緯入れ制御装置(記憶器)に記憶させておき、各緯入れ条件の設定値が前記のように入力される入力回転数に応じて選出されるといった手法としても良い。詳しくは、起動回転数に従って主軸回転数が制御される運転状態では、起動開始時点において起動回転数に応じた各緯入れ条件の設定値が選択される。さらに、中間回転数に従って主軸回転数が制御される運転状態では、その中間回転数が緯入れ制御装置に入力された時点において、その中間回転数に応じた各緯入れ条件の設定値が選択される。
【0089】
但し、前記したように起動回転数はそのときの設定回転数の40%以上であって前記許容回転数以下の範囲内で任意に設定されるため、そのときの設定回転数及び設定された起動回転数によっては、その設定回転数と起動回転数との差が小さい場合(例えば、前記したような設定回転数が700rpmであって、起動回転数が前記許容回転数である500rpmに設定された場合)もある。そこで、そのように設定回転数と起動回転数との差が小さい場合であって緯入れに支障をきたさない場合には、その起動期間における緯入れを設定回転数に応じた基本緯入れ条件の設定値に従って行うようにしても良い。すなわち、本発明においては、起動期間における緯入れは、その緯入れに支障をきたさない限りは、基本緯入れ条件の設定値に従って行うことも可能である。
【0090】
(6)回転数上昇態様について、前記実施例では、回転数上昇態様は、中間回転数を含むように定められており、主軸回転数が起動回転数に達した時点以降においては、起動回転数から中間回転数を経て(複数の上昇段階を踏んで)設定回転数まで上昇するような態様に定められている。しかし、本発明の回転数上昇態様は、そのように中間回転数を含むものに限らない、すなわち、前記実施例のような複数の上昇段階を踏んで起動回転数から設定回転数まで主軸回転数を上昇させる態様には限らない。詳しくは、例えば、前記したような設定回転数と起動回転数との差が小さい場合(設定回転数:700rpm、起動回転数:500rpm)であって、起動回転数から設定回転数までの範囲が前記した許容上昇量の範囲内である場合には、回転数上昇態様は、中間回転数を含まない態様としても良い。その場合には、回転数上昇態様は、主軸回転数を起動回転数から設定回転数まで一度に上昇させるといった態様となる。
【0091】
(7)なお、本発明は、前記実施例で述べた空気噴射式織機に限らず、水噴射式織機やレピア織機といった他の無杼織機にも適用可能である。また、本発明は、上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【0092】
1 空気噴射式織機
10 緯入れ装置
11 給糸体
12 測長貯留装置
12a 係止ピン
12b 貯留ドラム
13 メインノズル
13a 電磁開閉弁
13b 調圧装置
14 サブノズル
14a 電磁開閉弁
14b 調圧装置
15 給糸カッタ
16 補助メインノズル
16a 電磁開閉弁
16b 調圧装置
17 緯糸ブレーキ装置
17a 制動部材
17b 駆動モータ
18 流体供給源
19 筬
20 主軸
30 駆動制御装置
31 主制御装置
32 緯入れ制御装置
32a 記憶器
33 インバータ
34 駆動制御部
34a 記憶部
40 入力設定器
50 角度検出器
60 主軸駆動装置
60a 原動モータ
図1
図2
図3