(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】建設機械の油圧制御回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20231012BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20231012BHJP
E02F 9/22 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
F15B11/00 A
F15B11/02 M
E02F9/22 K
(21)【出願番号】P 2020043027
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒向 志乃
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190261(JP,A)
【文献】特開2013-204223(JP,A)
【文献】特開2014-118985(JP,A)
【文献】特開2014-001769(JP,A)
【文献】特開2017-020604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037602(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B11/00-11/22
F15B21/14-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に上下動自在に支持されるブームと、該ブームの先端側に揺動自在に支持されるスティックと、ブームを上下動させるべく伸縮作動するブームシリンダと、スティックを機体に対してイン・アウト方向に揺動させるべく伸縮作動するスティックシリンダと、前記ブームシリンダおよびスティックシリンダの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプとを備えてなる建設機械の油圧制御回路であって、該油圧制御回路は、
第一油圧ポンプ、油タンクおよびブームシリンダに接続され、ブームシリンダに対する油の給排方向を切換えるブーム用第一方向切換弁と、
第二油圧ポンプ、油タンクおよびブームシリンダに接続され、ブームシリンダに対する油の給排方向を切換えるブーム用第二方向切換弁と、
第一、第二油圧ポンプのうち一方の油圧ポンプ、油タンクおよびスティックシリンダに接続され、スティックシリンダに対する油の給排方向を切換えるスティック用第一方向切換弁と、
第一、第二油圧ポンプのうち他方の油圧ポンプ、油タンクおよびスティックシリンダに接続され、スティックシリンダに対する油の給排方向を切換えるスティック用第二方向切換弁と、
一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁に至るスティック用供給油路に配され、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁への供給流量を制御する流量制御弁と、
ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁に至る回生油路に配され、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁への供給流量を制御する回生弁とを備える一方、
前記スティック用第一方向切換弁は、流量制御弁からの供給流量、あるいは回生弁からの供給流量、あるいは流量制御弁および回生弁からの供給流量を増減することなくスティックシリンダに供給する構成にするとともに、
ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、
ブーム用第一方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からロッド側油室への再生流量を制御し、
ブーム用第二方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、
回生弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される回生流量を制御し、
流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される供給流量を制御し、
スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、
スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのロッド側油室への供給流量と、ヘッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路。
【請求項2】
請求項1において、スティックアウト操作と複合操作されていないブーム下降操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からロッド側油室への再生流量を制御し、ブーム用第二方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路。
【請求項3】
請求項1または2において、ブーム下降操作と複合操作されていないスティックアウト操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのロッド側油室への供給流量と、ヘッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、ブーム上昇操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁は、第一油圧ポンプからブームシリンダのヘッド油室への供給流量と、ロッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御し、ブーム用第二方向切換弁は、第二油圧ポンプからブームシリンダのヘッド側油室への供給流量を制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項において、スティックイン操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのヘッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのロッド側油室からヘッド側油室への再生流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのヘッド側油室への供給流量と、ロッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧制御回路の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械のなかには、例えば油圧ショベルのように、機体に上下動自在に支持されるブームと、該ブームの先端側に揺動自在に支持されるスティックとを備えるとともに、これらブーム、スティックを、それぞれブームシリンダ、スティックシリンダの伸縮作動に基づいて駆動せしめるように構成したものがある。このような建設機械の油圧制御回路として、建設機械に設けられる複数の油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二の油圧ポンプを設けるとともに、前記ブームシリンダやスティックシリンダのように作業内容等に応じて大流量を必要とする油圧アクチュエータについては、第一、第二の両方の油圧ポンプからの圧油供給を可能にするために、第一、第二油圧ポンプにそれぞれ接続されてブームシリンダ、スティックシリンダに対する油給排制御を行うブーム用、スティック用の第一、第二方向切換弁を備えた回路が、従来から広く用いられている(例えば、特許文献1の
図3参照)。
ところで、前述したような建設機械の従来の油圧制御回路に設けられる方向切換弁は、油圧アクチュエータに対する作動油の給排方向を切換える方向切換制御と、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を制御する供給流量制御と、油圧アクチュエータから油タンクへの排出流量を制御する排出流量制御とを同時に行うように構成されている。このため、方向切換弁のスプール移動位置に対する供給用の開口面積と排出用の開口面積との関係が一意的に決まってしまって、供給流量制御と排出流量制御とを独立して行うことができない。さらに、油圧アクチュエータの一方の油室からの排出油を該油圧アクチュエータの他方の油室に供給する再生制御を行う場合に、部品点数の増加を抑えるべく、前記方向切換弁によって再生流量制御も行うようにすると、スプールの移動位置に対する再生用の開口面積も一意的に決まってしまうことになって、再生流量制御も独立して行えないことになる。
一方、低燃費化を図るべく、二つの油圧アクチュエータの複合操作時に、一方の油圧アクチュエータからの排出油を他方の油圧アクチュエータに供給する回生制御(例えば、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、ブームシリンダのヘッド側油室からの排出油をスティックシリンダのロッド側油室に供給する回生制御)を行う技術も従来から知られているが、この場合に、回生流量に対応させて油圧ポンプからの供給流量や油タンクへの排出流量さらには再生流量を個別に増減制御しようとしても、前記供給流量制御と排出流量制御さらには再生流量制御を同時に行う方向切換弁では行うことができず、個別に制御する場合には、別途専用の供給流量制御弁や排出流量制御弁、再生流量制御弁が必要であって、部品点数が多くなってコスト削減の妨げになるという問題があった。
そこで、前記特許文献1のものでは、スティックシリンダに対する油給排制御を行う第一、第二方向切換弁の上流側に、該第一、第二方向切換弁に供給する圧油の量を制御する制御弁が設けられている。この場合、制御弁によって第一、第二方向切換弁に供給する圧油の量を変化させることで、方向切換弁のスプール移動位置が同じであっても作業内容等に応じて第一、第二油圧ポンプからスティックシリンダへの圧油供給量を変化させることが可能となる。
また、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を制御する流量制御弁と、該流量制御弁の下流側に配され、油圧アクチュエータに対する作動油の給排方向を切換えるとともに油圧アクチュエータからの排出流量を制御する方向切換弁を設けて、油圧アクチュエータに対する供給流量制御と排出流量制御とを個別の弁で制御するようにした技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5778086号公報
【文献】特開2017-20604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のものは、油圧アクチュエータに圧油供給するために方向切換弁に設けられる供給用弁路(第2の内部通路)が、操作具操作量に対応する方向切換弁のスプール位置に応じて流量を変化させる構成となっているとともに、制御弁を制御する制御装置は、制御弁の開度と方向切換弁の開度との合成が、従来の方向切換弁の開度と同等となるように制御する構成となっている。つまり、油圧ポンプの吐出油をスティックシリンダに供給するにあたり、直列関係で設けられている制御弁と方向切換弁とがそれぞれ供給流量制御を行う構成になっているため、制御が複雑となって、正確な供給流量制御が難しい。このため、特許文献1のものに前述した回生制御を組み込もうとした場合に、回生流量に対応させて油圧ポンプからの供給流量や油タンクへの排出流量を個別に増減制御しようとしても、このような制御を精度良く行うことはできないという問題がある。
一方、特許文献2のものは、油圧アクチュエータへの供給流量を制御するのは流量制御弁だけで、方向制御弁は供給流量制御を行わない構成のため特許文献1のような問題はないが、このものでは、ブームシリンダ、スティックシリンダの油圧供給源として第一、第二の二つの油圧ポンプが設けられている一方で、ブーム用、スティックシリンダ用の方向切換弁はそれぞれ一つしか設けられておらず、第一、第二油圧ポンプからの吐出油を第一、第二流量制御弁でそれぞれ流量制御した後に合流させて方向切換弁に供給する構成となっている。このため、前述した従来の回路、つまり、第一、第二油圧ポンプにそれぞれ接続されてブームシリンダ、スティックシリンダに対する油給排制御を行うブーム用、スティック用の第一、第二方向切換弁を備えた回路をそのまま利用することはできず、第一、第二油圧ポンプからの合計流量に対応した新たな方向切換弁が必要になるうえ、新たな回路構成のバルブユニットを製造しなければならず、コスト高の要因となる。しかして、従来のブーム用、スティック用の第一、第二方向切換弁を備えた回路を利用して、回生流量に対応させて油圧ポンプからの供給流量や油タンクへの排出流量さらには再生流量を個別に増減制御したいという要望があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体に上下動自在に支持されるブームと、該ブームの先端側に揺動自在に支持されるスティックと、ブームを上下動させるべく伸縮作動するブームシリンダと、スティックを機体に対してイン・アウト方向に揺動させるべく伸縮作動するスティックシリンダと、前記ブームシリンダおよびスティックシリンダの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプとを備えてなる建設機械の油圧制御回路であって、該油圧制御回路は、第一油圧ポンプ、油タンクおよびブームシリンダに接続され、ブームシリンダに対する油の給排方向を切換えるブーム用第一方向切換弁と、第二油圧ポンプ、油タンクおよびブームシリンダに接続され、ブームシリンダに対する油の給排方向を切換えるブーム用第二方向切換弁と、第一、第二油圧ポンプのうち一方の油圧ポンプ、油タンクおよびスティックシリンダに接続され、スティックシリンダに対する油の給排方向を切換えるスティック用第一方向切換弁と、第一、第二油圧ポンプのうち他方の油圧ポンプ、油タンクおよびスティックシリンダに接続され、スティックシリンダに対する油の給排方向を切換えるスティック用第二方向切換弁と、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁に至るスティック用供給油路に配され、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁への供給流量を制御する流量制御弁と、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁に至る回生油路に配され、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁への供給流量を制御する回生弁とを備える一方、前記スティック用第一方向切換弁は、流量制御弁からの供給流量、あるいは回生弁からの供給流量、あるいは流量制御弁および回生弁からの供給流量を増減することなくスティックシリンダに供給する構成にするとともに、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、ブーム用第一方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からロッド側油室への再生流量を制御し、ブーム用第二方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、回生弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される回生流量を制御し、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのロッド側油室への供給流量と、ヘッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路である。
請求項2の発明は、請求項1において、スティックアウト操作と複合操作されていないブーム下降操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からロッド側油室への再生流量を制御し、ブーム用第二方向切換弁は、ブームシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、ブーム下降操作と複合操作されていないスティックアウト操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのロッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのヘッド側油室から油タンクへの排出流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのロッド側油室への供給流量と、ヘッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路である。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、ブーム上昇操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁は、第一油圧ポンプからブームシリンダのヘッド油室への供給流量と、ロッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御し、ブーム用第二方向切換弁は、第二油圧ポンプからブームシリンダのヘッド側油室への供給流量を制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路である。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、スティックイン操作時に、回生弁は回生油路を閉じる一方、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのヘッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのロッド側油室からヘッド側油室への再生流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのヘッド側油室への供給流量と、ロッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する構成にしたことを特徴とする建設機械の油圧制御回路である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、ブーム用第一、第二方向切換弁およびスティック用第一、第二方向切換弁を利用して、ブームシリンダ、スティックシリンダに対する再生流量制御、排出流量制御、供給流量制御を、回生流量に応じて独立して制御できることになって、高効率化や操作性の向上に大きく貢献できるとともに、コスト抑制を達成できる。
請求項2の発明とすることにより、ブーム下降操作時においてブーム用第一、第二方向切換弁が行う制御は、スティックアウト操作と複合操作されていても複合操作されていなくても同じとなり、これにより、ブーム下降操作中にスティックアウト操作を開始したり停止したりしても、ブームシリンダに対する油給排制御の連続性が損なわれてしまうがないとともに、制御の簡略化が図れる。
請求項3の発明とすることにより、スティックアウト操作時においてスティック用第一、第二方向切換弁が行う制御は、ブーム下降操作と複合操作されていても複合操作されていなくても同じとなり、これにより、スティックアウト操作中にブーム下降操作を開始したり停止したりしても、スティックシリンダに対する油給排制御の連続性が損なわれてしまうがないとともに、制御の簡略化が図れる。
請求項4の発明とすることにより、ブーム上昇操作時においても、ブーム用第一、第二方向切換弁を利用してブームシリンダに対する供給流量制御と排出流量制御とを独立して制御できる。
請求項5の発明とすることにより、スティックイン操作時においても、スティック用第一、第二方向切換弁を利用してスティックシリンダに対する供給流量制御と排出流量制御と再生流量制御とを独立して制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第一の実施の形態を示す油圧制御回路図である。
【
図3】第一の実施の形態におけるブーム用第一、第二方向切換弁の開口特性を示す図であって、(A)は下降側作動位置のブーム用第一方向切換弁、(B)は上昇側作動位置のブーム用第一方向切換弁、(C)は下降側作動位置のブーム用第二方向切換弁、(D)は上昇側作動位置のブーム用第二方向切換弁の開口特性を示す。
【
図4】第一の実施の形態におけるスティック用第一、第二方向切換弁の開口特性を示す図であって、(A)はイン側作動位置のスティック用第一方向切換弁、(B)はアウト側作動位置のスティック用第一方向切換弁、(C)はイン側作動位置のスティック用第二方向切換弁、(D)はアウト側作動位置のスティック用第二方向切換弁の開口特性を示す。
【
図5】第一の実施の形態における制御装置の入出力を示すブロック図である。
【
図6】第二の実施の形態を示す油圧制御回路図である。
【
図7】第二の実施の形態におけるブーム用第一方向切換弁の開口特性を示す図であって、(A)は下降側作動位置、(B)は上昇側作動位置の開口特性を示す。
【
図8】第三の実施の形態を示す油圧制御回路図である。
【
図9】第三の実施の形態におけるスティック用第一方向切換弁の開口特性を示す図であって、(A)はイン側作動位置、(B)はアウト側作動位置の開口特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、本発明の第一の実施の形態について
図1~
図5に基づいて説明すると、
図1は、本発明の建設機械の一例である油圧ショベル1を示す図であって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等の各部から構成されており、さらに該フロント作業機4は、基端部が上部旋回体3(機体)に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に揺動自在に取付けられるバケット7等から構成されているとともに、油圧ショベル1には、前記ブーム5、スティック6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるためのブームシリンダ8、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10や、下部走行体2を走行せしめるための左右の走行モータ(図示せず)、上部旋回体3を旋回せしめるための旋回モータ(図示せず)等の各種油圧アクチュエータが備えられている。尚、油圧ショベル1の構成は後述する第二、第三の実施の形態においても同様であり、
図1は第一~第三の実施の形態に共用する。また、本発明では、スティック先端部を機体に近づける方向へのスティック6の揺動をスティックイン(イン方向への揺動)とし、スティック先端部を機体から遠ざける方向へのスティック6の揺動をスティックアウト(アウト方向の揺動)とする。
【0009】
前記ブームシリンダ8は、ヘッド側油室8aへの油供給及びロッド側油室8bからの油排出により伸長することでブーム5を上昇せしめる一方、ロッド側油室8bへの油供給及びヘッド側油室8aからの油排出により縮小することでブーム5を下降せしめる構成となっている。また、スティックシリンダ9は、ヘッド側油室9aへの油供給及びロッド側油室9bからの油排出により伸長することでスティック6をイン方向に揺動せしめる一方、ロッド側油室9bへの油供給及びヘッド側油室9aからの油排出により縮小することでスティック6をアウト方向に揺動せしめる構成となっているが、これらブームシリンダ8、スティックシリンダ9に対する油給排制御について、
図2に示す油圧制御回路図に基づいて説明すると、
図2において、11、12は前記油圧ショベル1に備えられる各種油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプ、13、14は第一、第二油圧ポンプ11、12の吐出油がそれぞれ供給される第一、第二ポンプ油路、15は油タンク、16、17はブームシリンダ8に対する油の給排方向を切換えるブーム用第一、第二方向切換弁、18、19はスティックシリンダ9に対する油の給排方向を切換えるスティック用第一、第二方向切換弁であって、ブーム用第一方向切換弁16およびスティック用第一方向切換弁18は、第一ポンプ油路13から分岐形成されたブーム用第一供給油路13A、スティック用第一供給油路13Bを介して第一油圧ポンプ11に、ブーム用第二方向切換弁17およびスティック用第二方向切換弁19は、第二ポンプ油路14から分岐形成されたブーム用第二供給油路14A、スティック用第二供給油路14Bを介して第二油圧ポンプ12にそれぞれ接続されている。さらに、前記スティック用第一供給油路13Bには、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18への供給流量を制御する後述の流量制御弁20が配設されている。
尚、前記ブームシリンダ8およびスティックシリンダ9は大流量を必要とする油圧アクチュエータであるため、第一、第二の両方の油圧ポンプ11、12から圧油供給できるようにブーム用第一、第二方向切換弁16、17、スティック用第一、第二方向切換弁18、19が設けられている。また、前記
図2において、21、22は第一油圧ポンプ11に接続される左走行用方向切換弁、バケット用方向切換弁、23、24は第二油圧ポンプ12に接続される右走行用方向切換弁、旋回用方向切換弁であって、これら方向切換弁21~24は、それぞれ対応する操作具操作に応じて中立位置から作動位置に切換わって、対応する油圧アクチュエータ(左走行用モータ、バケットシリンダ10、右走行用モータ、旋回モータ)に対する油給排制御を行うが、これらの方向切換弁21~24の詳細な説明は省略する。
【0010】
さらに、
図2において、51は回生油路であって、該回生油路51は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから前記スティック用第一方向切換弁18に至るように設けられている。そして、該回生油路51には、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18への供給流量を制御する後述の回生弁52が配設されている。この場合に、回生油路51は、前記流量制御弁20の下流側においてスティック用第一供給油路13Bと合流してスティック用第一方向切換弁18に至るように設けられており、これにより、流量制御弁20と回生弁52とは、スティック用第一方向切換弁18に対して並列状態となるように配設されている。
【0011】
また、
図2において、25、26は第一、第二バイパス弁であって、第一バイパス弁25は、第一油圧ポンプ11に接続される各方向切換弁21、16、22、18に形成のセンタバイパス通路21a、16a、22a、18aを順次通って第一油圧ポンプ11から油タンク15に至る第一センタバイバス油路27の流量制御を行い、また、第二バイパス弁26は、第二油圧ポンプ12に接続される各方向切換弁23、24、17、19に形成のセンタバイパス通路23a、24a、17a、19aを順次通って第二油圧ポンプ12から油タンク15に至る第二センタバイバス油路28の流量制御を行う。この場合に、前記各方向切換弁21、16、22、18、23、24、17、19に形成されるセンタバイパス通路21a、16a、22a、18a、23a、24a、17a、19aは、方向切換弁21、16、22、18、23、24、17、19の切換位置やスプール変位量に関わらず略一定の開口面積を有しているとともに、第一、第二バイパス弁25、26は、後述する制御装置30から第一、第二パイパス弁用電磁弁49、50に出力される制御信号に基づいて開口面積が増減制御されることで、第一、第二センタバイバス油路27、28の流量、つまり、第一、第二油圧ポンプ11、12から油タンク15に流れるバイパス流量を増減制御するようになっている。
尚、本実施の形態では、各方向切換弁のセンタバイパス通路を通る第一、第二センタバイパス油路が設けられており、その最下流に第一、第二パイパス弁が配設されているが、これら方向切換弁の最上流に、第一、第二油圧ポンプの油を油タンクに流す第一、第二バイパス油路を設け、該第一、第二バイパス油路に第一、第二バイパス弁を配設することもできる。この場合には、各方向切換弁に形成されるセンタバイパス通路を廃することができる。
【0012】
ついで、前記ブームシリンダ8、スティックシリンダ9に対して各種流量制御を行うバルブについて詳細に説明する。
まず、前記ブーム用第一方向切換弁16は、第一油圧ポンプ11、油タンク15、ブームシリンダ8のヘッド側油圧8aおよびロッド側油室8bに接続されるとともに、下降側(縮小側)、上昇側(伸長側)のパイロットポート16b、16cを備えた三位置切換スプール弁であって、両パイロットポート16b、16cにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、下降側パイロットポート16bにパイロット圧が入力されることにより下降側作動位置Vに切換わって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油をロッド側油室8bに供給する再生用弁路16dを開く。また、上昇側パイロットポート16cにパイロット圧が入力されることにより上昇側作動位置Wに切換わって、第一油圧ポンプ11の吐出油をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するヘッド側供給用弁路16eを開き、かつ、ブームシリンダ8のロッド側油室8bからの排出油を油タンク15に流すロッド側排出用弁路16fを開くように構成されている。尚、前記再生用弁路16dには、ロッド側油室8bからヘッド側油室8aへの油の流れを阻止するチェック弁が設けられている。
【0013】
また、前記ブーム用第二方向切換弁17は、第二油圧ポンプ12、油タンク15、ブームシリンダ8のヘッド側油圧8aおよびロッド側油室8bに接続されるとともに、下降側(縮小側)、上昇側(伸長側)のパイロットポート17b、17cを備えた三位置切換スプール弁であって、両パイロットポート17b、17cにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、下降側パイロットポート17bにパイロット圧が入力されることにより下降側作動位置Vに切換わって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油を油タンク15に流すヘッド側排出用弁路17dを開く。また、上昇側パイロットポート17cにパイロット圧が入力されることにより上昇側作動位置Wに切換わって、第二油圧ポンプ12の吐出油をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するヘッド側供給用弁路17eに開くように構成されている。
【0014】
さらに、前記
図2において、31、32は前記ブーム用第一、第二方向切換弁16、17の下降側パイロットポート16b、17bにそれぞれパイロット圧を出力するための下降側第一、第二電磁弁、33、34は上昇側パイロットポート16c、17cにそれぞれパイロット圧を出力するための上昇側第一、第二電磁弁であって、これら下降側、上昇側第一、第二電磁弁31~34は、後述する制御装置30からの制御信号に基づいて、該制御信号に応じた圧力のパイロット圧を出力するべく作動する。そして、これら下降側、上昇側第一、第二電磁弁31~34からブーム用第一、第二方向切換弁16、17の下降側、上昇側パイロットポート16b、17b、16c、17cに出力されるパイロット圧によりブーム用第一、第二方向切換弁16、17のスプールが変位して、前述した下降側作動位置V、上昇側作動位置Wに切換わるが、この場合に、スプールの変位量はパイロット圧の増減に応じて増減制御されるようになっている。
【0015】
ここで、前記ブーム用第一方向切換弁16の下降側作動位置Vにおける再生用弁路16d、上昇側作動位置Wにおけるヘッド側供給用弁路16eおよびロッド側排出用弁路16f、ブーム用第二方向切換弁17の下降側作動位置Vにおけるヘッド側排出用弁路17d、上昇側作動位置Wにおけるヘッド側供給用弁路17eの開口特性を
図3に示すが、該
図3に示されるように、これら各弁路16d、16e、16f、17d、17eの開口面積は、スプール変位量が大きくなるほど大きくなるように設定されている。そして、これらスプール変位に伴う各弁路16d、16e、16f、17d、17eの開口面積の増減に応じて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量、第一油圧ポンプ11からヘッド側油室8aへの供給流量、ロッド側油室8bから油タンク15への排出流量、ヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量、第二油圧ポンプ12からヘッド側油室8aへの供給流量がそれぞれ増減制御されるようになっている。
【0016】
また、前記回生弁52は、スプール弁とチェック弁とを直列に配置する、またはチュック機能付きのメータリング可能なポペット弁から構成されており、前述したように、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18の上流側に至る回生油路51に配されている。そして、該回生弁52は、前記制御装置30から回生弁用電磁弁53に出力される制御信号に基づいて該回生弁用電磁弁53から出力されるパイロット圧により作動して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18に供給される回生流量を制御する。該回生弁52からスティック用第一方向切換弁18に供給される回生流量は、後述するように、スティック用第一方向切換弁18によって増減されることなくそのままスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給されるようになっている。
尚、本発明では、同一油圧アクチュエータ間の排出油の再利用(本実施の形態では、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの排出油の再利用、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからヘッド側油室8aへの排出油の再利用)と、複合操作時における一方の油圧アクチュエータから他方の油圧アクチュエータへの排出油の再利用(本実施の形態では、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティックシリンダ9への排出油の再利用)とを区別するため、前者を再生(その流量を再生流量)と称し、後者を回生(その流量を回生流量)と称する。
【0017】
而して、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17が下降側作動位置Vに位置している状態では、ブーム用第一方向切換弁16の再生用弁路16dによって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量が制御され、また、ブーム用第二方向切換弁17のヘッド側排出用弁路17dによって、ヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量が制御されるようになっているとともに、前記回生弁52が開いているときには該回生弁52によって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18に供給される回生流量が制御されるようになっている。該回生弁52からスティック用第一方向切換弁18に供給される回生流量は、後述するように、スティック用第一方向切換弁18によって増減されることなくそのままスティックシリンダ9に供給されるようになっている。
一方、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17が上昇側作動位置Wに位置している状態では、ブーム用第一方向切換弁16のヘッド側供給用弁路16eとロッド側排出用弁路16fとによって、第一油圧ポンプ11からヘッド側油室8aへの供給流量とロッド側油室8bから油タンク15への排出流量とが制御され、また、ブーム用第二方向切換弁17のヘッド側供給用弁路17eによって、第二油圧ポンプ12からヘッド側油室8aへの供給流量が制御されるようになっている。尚、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17が上昇側作動位置Wに位置しているときには、後述するように回生弁52は閉じるように制御される。
【0018】
一方、前記流量制御弁20は、チェック機能付きのメータリング可能なポペット弁から構成されており、前述したように、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18に至るスティック用第一供給油路13Bに配されている。そして、該流量制御弁20は、前記制御装置30から流量制御弁用電磁弁29に出力される制御信号に基づいて該流量制御弁用電磁弁29から出力されるパイロット圧により作動して、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18への供給流量を制御する。該流量制御弁20からスティック用第一方向切換弁18に供給される第一油圧ポンプ11の供給流量は、後述するように、スティック用第一方向切換弁18によって増減されることなくそのままスティックシリンダ9に供給されるようになっている。
【0019】
また、前記スティック用第一方向切換弁18は、第一油圧ポンプ11、油タンク15、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aおよびロッド側油室9bに接続されるとともに、イン側(伸長側)、アウト側(縮小側)のパイロットポート18b、18cを備えた三位置切換スプール弁であって、両パイロットポート18b、18cにパイロット圧が入力されていない状態では、スティックシリンダ9に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、イン側パイロットポート18bにパイロット圧が入力されることによりイン側作動位置Xに切換わって、前記流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油をスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給するヘッド側供給用弁路18dを開き、かつ、ロッド側油室9bからの排出油をヘッド側油室9aに供給する再生用弁路18eを開く。また、アウト側パイロットポート18cにパイロット圧が入力されることによりアウト側作動位置Yに切換わって、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油、あるいは回生弁52から供給される回生油、あるいは流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油と回生弁52から供給される回生油との合流油をロッド側油室9bに供給するロッド側供給用弁路18fを開き、かつ、ヘッド側油室9aからの排出油を油タンク15に流すヘッド側排出用弁路18gを開くように構成されている。尚、本実施の形態では、後述するように、スティック用第一方向切換弁18がイン側作動位置Xに位置しているときには回生弁52は閉じており、該回生弁52からスティック用第一方向切換弁18への回生油の供給は行われないようになっている。また、前記再生用弁路18eには、ヘッド側油室9aからロッド側油室9bへの油の流れを阻止するチェック弁が設けられている。
【0020】
また、前記スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12、油タンク15、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aおよびロッド側油室9bに接続されるとともに、イン側(伸長側)、アウト側(縮小側)のパイロットポート19b、19cを備えた三位置切換スプール弁であって、両パイロットポート19b、19cにパイロット圧が入力されていない状態では、スティックシリンダ9に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、イン側パイロットポート19bにパイロット圧が入力されることによりイン側作動位置Xに切換わって、第二油圧ポンプ12の吐出油をスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給するヘッド側供給用弁路19dを開き、かつ、ロッド側油室9bからの排出油を油タンク15に流すロッド側排出用弁路19eを開く。また、アウト側パイロットポート19cにパイロット圧が入力されることによりアウト側作動位置Yに切換わって、第二油圧ポンプ12の吐出油をロッド側油室9bに供給するロッド側供給用弁路19fを開き、かつ、ヘッド側油室9aからの排出油を油タンク15に流すヘッド側排出用弁路19gを開くように構成されている。
【0021】
さらに、前記
図2において、45、46はスティック用第一、第二方向切換弁18、19のイン側パイロットポート18b、19bにそれぞれパイロット圧を出力するためのイン側第一、第二電磁弁、47、48はアウト側パイロットポート18c、19cにそれぞれパイロット圧を出力するためのアウト側第一、第二電磁弁であって、これらイン側、アウト側第一、第二電磁弁45~48は、前記制御装置30からの制御信号に基づいて、該制御信号に応じた圧力のパイロット圧を出力するべく作動する。そして、これらイン側、アウト側第一、第二電磁弁45~48からスティック用第一、第二方向切換弁18、19のイン側、アウト側パイロットポート18b、19b、18c、19cに出力されるパイロット圧によりスティック用第一、第二方向切換弁18、19のスプールが変位して、前述したイン側作動位置X、アウト側作動位置Yに切換わるが、この場合に、スプールの変位量はパイロット圧の増減に応じて増減制御されるようになっている。
【0022】
ここで、前記スティック用第一方向切換弁18のイン側作動位置Xにおけるヘッド側供給用弁路18dおよび再生用弁路18e、アウト側作動位置Yにおけるロッド側供給用弁路18fおよびヘッド側排出用弁路18g、スティック用第二方向切換弁19のイン側作動位置Xにおけるヘッド側供給用弁路19dおよびロッド側排出用弁路19e、アウト側作動位置Yにおけるロッド側供給用弁路19fおよびヘッド側排出用弁路19gの開口特性を
図4に示すが、該
図4に示されるように、スティック用第一方向切換弁18のヘッド側供給用弁路18dおよびロッド側供給用弁路18fは、スプールが中立位置Nから変位するとすぐに、つまり、スプール変位量が小さいうちから開口面積が最大となるように設定されている。これにより、スティック用第一方向切換弁18は、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の供給流量、あるいは回生弁52から供給される回生流量、あるいは流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の供給流量と回生弁52から供給される回生流量との合計流量を増減することなくそのままスティックシリンダ9のヘッド側油室9a、ロッド側油室9bに供給できるようになっている。つまり、スティックシリンダ9への供給流量制御はスティック用第一方向切換弁18では行われず、流量制御弁20で制御された供給流量、あるいは回生弁52で制御された回生流量、あるいは流量制御弁20で制御された供給流量と回生弁52で制御された回生流量との合計流量がそのままスティックシリンダ9のヘッド側油室9a、ロッド側油室9bに供給されるようになっている。
一方、第一スティック用方向切換弁18の再生用弁路18e、ヘッド側排出用弁路18g、スティック用第二方向切換弁19のヘッド側供給用弁路19d、ロッド側排出用弁路19e、ロッド側供給用弁路19f、ヘッド側排出用弁路19gの開口面積は、スプール変位量が大きくなるほど大きくなるように設定されている。そして、これらスプール変位に伴う各弁路18e、18g、19d、19e、19f、19gの開口面積の増減に応じて、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量、ヘッド側油室9aから油タンク15の排出流量、第二油圧ポンプ12からヘッド側油室9aへの供給流量、ロッド側油室9bから油タンク15の排出流量、第二油圧ポンプ12からロッド側油室9bへの供給流量、ヘッド側油室9aから油タンク15の排出流量がそれぞれ増減制御されるようになっている。
【0023】
而して、スティック用第一、第二方向切換弁18、19がイン側作動位置Xに位置している状態では、流量制御弁20によって、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9のヘッド側油室9aへの供給流量が制御され、スティック用第一方向切換弁18の再生用弁路18eによって、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量が制御され、また、スティック用第二方向切換弁19のヘッド側供給油路19dとロッド側排出用弁路19eとによって、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のヘッド側油室9aへの供給流量とロッド側油室9bから油タンク15への排出流量とが制御されるようになっている。尚、前述したように、スティック用第一方向切換弁18がイン側作動位置Xに位置しているときには回生弁52は閉じており、該回生弁52からスティック用第一方向切換弁18への回生油の供給は行われないようになっている。
一方、スティック用第一、第二方向切換弁18、19がアウト側作動位置Yに位置している状態では、流量制御弁20によって、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量が制御され、スティック用第一方向切換弁18のヘッド側排出用弁路18gによって、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量が制御され、また、スティック用第二方向切換弁19のロッド側供給用弁路19fとヘッド側排出用弁路19gとによって、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量とヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量とが制御されるようになっているとともに、前記回生弁52が開いているときには該回生弁52によって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給される回生流量が制御されるようになっている。
【0024】
一方、前記制御装置30は、
図5に示す如く、ブーム用操作具やスティック用操作具、および油圧ショベル1に設けられる他の油圧アクチュエータ(本実施の形態では、前記左右の走行モータ、バケットシリンダ10、旋回モータ)用操作具等の各種操作具の操作をそれぞれ検出する操作検出手段36、第一、第二油圧ポンプ11、12の吐出圧をそれぞれ検出するポンプ用第一、第二圧力センサ37、38、ブームシリンダ8のヘッド側油室8a、ロッド側油室8bの圧力をそれぞれ検出するブーム用ヘッド側、ロッド側圧力センサ39、40、スティックシリンダ9のヘッド側油室9a、ロッド側油室9bの圧力をそれぞれ検出するスティック用ヘッド側、ロッド側圧力センサ41、42、前記他の油圧アクチュエータ用の各種圧力検出センサ(図示しないが、例えば、バケットシリンダ10のヘッド側油室、ロッド側油室の圧力をそれぞれ検出する圧力センサ等)、エンジンコントローラ43等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、第一油圧ポンプ11の容量を可変せしめるレギュレータ11aに制御信号圧を出力する第一油圧ポンプレギュレータ電磁弁11b、第二油圧ポンプ12の容量を可変せしめるレギュレータ12aに制御信号圧を出力する第二油圧ポンプレギュレータ電磁弁12bや、前記ブーム用第一、第二方向切換弁16、17にパイロット圧を出力する下降側、上昇側第一、第二電磁弁31~34、スティック用第一、第二方向切換弁18、19にパイロット圧を出力するイン側、アウト側第一、第二電磁弁45~48、流量制御弁20にパイロット圧を出力する流量制御弁用電磁弁29、回生弁52にパイロット圧を出力する回生弁用電磁弁53、他の油圧アクチュエータ用方向切換弁(本実施の形態では、左走行用方向切換弁21、バケット用方向切換弁22、右走行用方向切換弁23、旋回用方向切換弁24)にパイロット圧を出力する各種電磁弁(図示せず)、前記第一バイパス弁25にパイロット圧を出力する第一バイパス弁用電磁弁49、第二バイパス弁26にパイロット圧を出力する第二バイパス弁用電磁弁50等に制御信号を出力するようになっている。
【0025】
次いで、ブーム用操作具が上昇側あるいは下降側に操作された場合に制御装置30が行うブームシリンダ8の油給排制御について説明する。まず、ブーム用操作具がブーム上昇側に操作された場合(操作検出手段36からブーム上昇操作の操作信号が入力された場合)、制御装置30は、上昇側第一、第二電磁弁33、34にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17の上昇側パイロットポート16c、17cにパイロット圧が入力されて、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17は共に上昇側作動位置Wに切換わる。また、ブーム上昇側に操作された場合、回生弁用電磁弁53にパイロット圧出力の制御信号は出力されず、回生弁52は回生油路51を閉じるように制御される。そして、前述したように、上昇側作動位置Wのブーム用第一方向切換弁16は、第一油圧ポンプ11からヘッド側油室8aへの供給流量とロッド側油室8bから油タンク15への排出流量とを制御し、また、上昇側作動位置Wのブーム用第二方向切換弁17は、第二油圧ポンプ12からヘッド側油室8aへの供給流量を制御する。これにより、ヘッド側油室8aに油供給されると共にロッド側油室8bから油排出されることになってブームシリンダ8が伸長し、ブーム5は上昇することになるが、この場合に制御装置30は、該制御装置30に入力される前記各種信号(操作検出手段36や各種圧力センサ37~42、エンジンコントローラ43からの信号等)に基づいて、ブームシリンダ8に要求される供給流量と排出流量とを求め、これらを独立して制御するべく、上昇側第一、第二電磁弁33、34にそれぞれ制御信号を出力する。このような供給流量と排出流量との独立制御は、ブーム5の上昇操作時(ブームシリンダ8の伸長時)において、ブーム用第一方向切換弁16が第一油圧ポンプ11からの供給流量制御と油タンク15への排出流量制御とを行い、また、ブーム用第二方向切換弁17が第二油圧ポンプ12からの供給流量制御を行うために可能となる。
尚、ブーム5の上昇時において、ブーム用第一方向切換弁16のヘッド側供給用弁路16eの開口面積とロッド側排出用弁路16fの開口面積との関係は、スプール変位量によって一意的に決まってしまうが、供給流量制御のみを行うブーム用第二方向切換弁17のヘッド側供給用弁路17eの開口面積を、ブーム用第一方向切換弁16からの供給流量(第一油圧ポンプ11からの供給流量)とブーム用第二方向切換弁17からの供給流量(第二油圧ポンプ12からの供給流量)との合計流量がブームシリンダ8の要求する供給流量となるように増減制御することによって、ブームシリンダ8に対する供給流量制御と排出流量制御とを独立して制御できることになる。
【0026】
一方、ブーム用操作具が下降側に操作された場合(操作検出手段36からブーム下降操作の操作信号が入力された場合)に制御装置30が行う制御は、ブーム下降操作がスティックアウト操作との複合操作(同時操作)であるか否かによって異なるため、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合の制御については後述し、ここでは、ブーム下降操作され、且つ、スティックアウト操作との複合操作ではない(同時にスティックアウト操作されていない)場合の制御について説明する。この場合、制御装置30は、下降側第一、第二電磁弁31、32にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17の下降側パイロットポート16b、17bにパイロット圧が入力されて、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17は共に下降側作動位置Vに切換わる。また、回生弁用電磁弁53にはパイロット圧出力の制御信号は出力されず、回生弁52は回生油路51を閉じるように制御される。
【0027】
而して、ブーム用操作具が下降側に操作され、且つ、該ブーム下降操作がスティックアウト操作との複合操作でない場合、回生弁52は回生油路51を閉じているが、この状態でのブームシリンダ8に対する油給排制御は、前記下降側作動位置Vのブーム第一、第二方向切換弁16、17によって行われる。そして、前述したように、下降側作動位置Vのブーム用第一方向切換弁16は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量を制御し、また、下降側作動位置Vのブーム用第二方向切換弁17は、ヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量を制御する。これにより、ヘッド側油室8aから油排出されると共にロッド側油室8bに油供給されることになってブームシリンダ8が縮小し、ブーム5は下降することになるが、この場合に制御装置30は、該制御装置30に入力される前記各種信号(操作検出手段36や各種圧力センサ37~42からの信号等)に基づいて、ブームシリンダ8に要求される再生流量と排出流量とを求め、これらを独立して制御するべく、下降側第一、第二電磁弁31、32にそれぞれ制御信号を出力する。このような再生流量と排出流量との独立制御は、ブーム5の下降操作時(ブームシリンダ8の縮小時)において、ブーム用第一方向切換弁16が再生流量制御のみを行い、また、ブーム用第二方向切換弁17が排出流量制御のみを行うために可能となる。
【0028】
次に、スティック用操作具がイン側あるいはアウト側に操作された場合に制御装置30が行うスティックシリンダ9の油給排制御について説明する。まず、スティック用操作具がイン側に操作された場合(操作検出手段36からスティックイン操作の操作信号が入力された場合)、制御装置30は、流量制御弁用電磁弁29にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより流量制御弁20が作動して、第一油圧ポンプ11の吐出油を流量制御された状態でスティック用第一方向切換弁18に供給する。さらに制御装置30は、イン側第一、第二電磁弁45、46にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより、スティック用第一、第二方向切換弁18、19のイン側パイロットポート18b、19bにパイロット圧が入力されて、スティック用第一、第二方向切換弁18、19は共にイン側作動位置Xに切換わる。また、回生弁用電磁弁53にはパイロット圧出力の制御信号は出力されず、回生弁52は回生油路51を閉じるように制御される。そして、前述したように、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からイン側作動位置Xのスティック用第一方向切換弁18を経由してヘッド側油室9aに供給される供給流量を制御し、イン側作動位置Xのスティック用第一方向切換弁18は、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量を制御し、また、イン側作動位置Xのスティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からヘッド側油室9aへの供給流量とロッド側油室9bから油タンク15への排出流量を制御する。これにより、ヘッド側油室9aに油供給されると共にロッド側油室9bから油排出されることになってスティックシリンダ9が伸長し、スティック6はイン方向に揺動することになるが、この場合に制御装置30は、該制御装置30に入力される前記各種信号(操作検出手段36や各種圧力センサ37~42、エンジンコントローラ43からの信号等)に基づいて、スティックシリンダ9に要求される供給流量、再生流量および排出流量を求め、これらを独立して制御するべく、流量制御弁用電磁弁29、イン側第一、第二電磁弁45、46にそれぞれ制御信号を出力する。このような供給流量、再生流量および排出流量の独立制御は、スティック6のイン操作時(スティックシリンダ9の伸長時)において、流量制御弁20が第一油圧ポンプ11からの供給流量制御を行い、スティック用第一方向切換弁18が再生流量制御を行い、また、スティック用第二方向切換弁19が第二油圧ポンプ12からの供給流量制御と排出流量制御とを行うために可能となる。
尚、スティックイン操作時において、スティック用第二方向切換弁19のヘッド側供給用弁路19dの開口面積とロッド側排出用弁路19eの開口面積との関係は、スプール変位量によって一意的に決まってしまうが、供給流量制御のみを行う流量制御弁20の開口面積を、流量制御弁20からの供給流量(第一油圧ポンプ11からの供給流量)とスティック用第二方向切換弁19からの供給流量(第二油圧ポンプ12からの供給流量)との合計流量がスティックシリンダ9の要求する供給流量となるように増減制御することによって、スティックシリンダ9に対する供給流量制御と排出流量制御とを独立して制御できることになる。
【0029】
一方、スティック用操作具がアウト側に操作された場合(操作検出手段36からスティックアウトの操作信号が入力された場合)に制御装置30が行う制御は、スティックアウト操作がブーム下降操作との複合操作であるか否かによって異なるため、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合の制御については後述し、ここでは、スティックアウト操作され、且つ、ブーム下降操作との複合操作ではない(同時にブーム下降操作されていない)場合の制御について説明する。この場合、制御装置30は、流量制御弁用電磁弁29にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより流量制御弁20が作動して、第一油圧ポンプ11の吐出油を流量制御された状態でスティック用第一方向切換弁18に供給する。さらに制御装置30は、アウト側第一、第二電磁弁47、48にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより、スティック用第一、第二方向切換弁18、19のアウト側パイロットポート18c、19cにパイロット圧が入力されて、スティック用第一、第二方向切換弁18、19は共にアウト側作動位置Yに切換わる。また、回生弁用電磁弁53にはパイロット圧出力の制御信号は出力されず、回生弁52は回生油路51を閉じるように制御される。
【0030】
而して、スティック用操作がアウト側に操作され、且つ、該スティックアウト操作がブーム下降操作との複合操作でない場合、回生弁52は回生油路51を閉じているが、この状態でのスティックシリンダ9に対する油給排制御は、前記流量制御弁20と、アウト側作動位置Yのスティック用第一、第二方向切換弁18、19によって行われる。そして、前述したように、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からアウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18を経由してロッド側油室9bに供給される供給流量を制御し、アウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18は、ヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量を制御し、また、アウト側作動位置Yのスティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からロッド側油室9bへの供給流量とヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量を制御する。これにより、ロッド側油室9bに油供給されると共にヘッド側油室9aから油排出されることになってスティックシリンダ9が縮小し、スティック6はアウト方向に揺動することになるが、この場合に制御装置30は、該制御装置30に入力される前記各種信号(操作検出手段36や各種圧力センサ37~42、エンジンコントローラ43からの信号等)に基づいて、スティックシリンダ9に要求される供給流量と排出流量とを求め、これらを独立して制御するべく、流量制御弁用電磁弁29、アウト側第一、第二電磁弁47、48にそれぞれ制御信号を出力する。このような供給流量と排出流量との独立制御は、スティック6のアウト操作時(スティックシリンダ9の縮小時)において、流量制御弁20が第一油圧ポンプ11からの供給流量制御を行い、スティック用第一方向切換弁18が排出流量制御を行い、また、スティック用第二方向切換弁19が第二油圧ポンプ12からの供給流量制御と排出流量制御とを行うために可能となる。
尚、スティックアウト操作時において、スティック用第二方向切換弁19のロッド側供給用弁路19fの開口面積とヘッド側排出用弁路19gの開口面積との関係は、スプール変位量によって一意的に決まってしまうが、供給流量制御のみを行う流量制御弁20の開口面積を、流量制御弁20からの供給流量(第一油圧ポンプ11からの供給流量)とスティック用第二方向切換弁19からの供給流量(第二油圧ポンプ12からの供給流量)との合計流量がスティックシリンダ9の要求する供給流量となるように増減制御する、あるいは、排出流量制御のみを行うスティック用第一方向切換弁18のヘッド側排出用弁路18gの開口面積を、スティック用第一方向切換弁18からの排出流量とスティック用第二方向切換弁19からの排出流量との合計流量がスティックシリンダ9に要求される排出流量となるように増減制御することによって、スティックシリンダ9に対する供給流量制御と排出流量制御とを独立して制御できることになる。
【0031】
次に、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合に制御装置30が行うブームシリンダ8およびスティックシリンダ9の油給排制御について説明する。この場合、制御装置30は、まず、回生条件成立の有無を判断する。この判断は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力がスティックシリンダ9のロッド側油室9bの圧力よりも大きければ、回生条件成立と判断し、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力がスティックシリンダ9のロッド側油室9bの圧力以下の場合には、回生条件不成立と判断する。この判断で、回生条件不成立の場合、つまりブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力がスティックシリンダ9のロッド側油室9bの圧力以下の場合には、前述したブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作されていない場合のブーム下降操作、スティックアウト操作と同一の制御がブームシリンダ8、スティックシリンダ9に対してそれぞれ行われる。そこで、以下の説明では、特にことわらない限り、回生条件が成立している、つまりブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力がスティックシリンダ9のロッド側油室9bよりも大きい場合の、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時の制御について説明する。
【0032】
制御装置30は、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合、下降側第一、第二電磁弁31、32にパイロット圧出力の制御信号を出力するとともに、回生弁用電磁弁53にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17が下降側作動位置Vに切換わるとともに、回生弁52が作動して回生油路51を開く。さらに制御装置30は、流量制御弁用電磁弁29およびアウト側第一、第二電磁弁47、48にパイロット圧出力の制御信号を出力する。これにより流量制御弁20が作動して、第一油圧ポンプ11の吐出油を流量制御してスティック用第一方向切換弁18に供給するとともに、スティック用第一、第二方向切換弁18、19は共にアウト側作動位置Yに切換わる。
【0033】
而して、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合、回生弁52が回生油路51を開くことになり、これにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油が、回生弁52により流量制御された回生油として、アウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18に供給される。さらに、該アウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18には、流量制御弁20により流量制御された第一油圧ポンプ11の吐出油も供給される。そして、これら回生弁52から供給される回生油と流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油とはスティック用第一方向切換弁18の上流側で合流してアウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18に供給され、該スティック用第一方向切換弁18のロッド側供給用弁路18fを経由してスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給されることになるが、この場合、前述したように、ロッド側供給用弁路18fは、回生弁52からの回生流量および流量制御弁20からの供給流量を増減することなくスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給するようになっている。尚、後述するように、第一油圧ポンプ11からの供給流量が必要ない場合には、回生弁52からの回生流量のみがスティック用第一方向切換弁18に供給される。
【0034】
さらに、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合、下降側作動位置Vのブーム用第一方向切換弁16の再生用弁路16dによって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量が制御され、下降側作動位置Vのブーム用第二方向切換弁17のヘッド側排出用弁路17dによって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量が制御される。また、アウト側作動位置Yのスティック用第一方向切換弁18のヘッド側排出用弁路18gによって、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量が制御され、アウト側作動位置Yのスティック用第二方向切換弁19のロッド側供給用弁路19fとヘッド側排出用弁路19gとによって、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量とヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量が制御される。この場合に制御装置30は、該制御装置30に入力される前記各種信号(操作検出手段36や各種圧力センサ37~42、エンジンコントローラ43からの信号等)に基づいて、ブームシリンダ8およびスティックシリンダ9に要求される回生流量や再生流量、排出流量、供給流量を求め、これらを独立して制御するべく、回生弁用電磁弁53、下降側第一、第二電磁弁31、32、流量制御弁用電磁弁29、およびアウト側第一、第二電磁弁47、48に制御信号を出力する。このような独立制御は、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作された場合(回生条件成立の場合)において、回生弁52がブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの回生流量制御を行い、ブーム用第一方向切換弁16がブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量制御を行い、ブーム用第二方向切換弁17がブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量制御を行い、また、流量制御弁20が第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量制御を行い、さらに、スティック用第一方向切換弁18がスティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量制御を行い、スティック用第二方向切換弁19が第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量とヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量とを行うために可能となる。
【0035】
ここで、ブーム5の下降時には(スティックアウト操作との複合操作であるか否かに関わらず)、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17は、共に第一、第二油圧ポンプ11、12の吐出油をブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給しない構成となっている。これは、ブーム5の下降時(ブームシリンダ8の縮小時)において、ピストン受圧面積の関係からブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出量はロッド側油室8bへの供給量に比して大幅に多く(例えば、約2倍)、しかもヘッド側油室8aはフロント作業機4全体の重量がかかっているため高圧であり、このため、ロッド側油室8bへの油供給はヘッド側油室8aからの再生油だけで十分に足りるからである。さらに、ブーム5の下降時のヘッド側油室8aからの排出油は、ロッド側油室8bに供給しても余剰があり、該余剰分は、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合に、スティックシリンダ9のロッド側油室9bに優先的に供給されるように回生流量が制御され、さらにその余剰分が油タンク15に排出されるように排出流量が制御される。このようにブーム5の下降時に、第一、第二油圧ポンプ11、12の吐出油をブームシリンダ8に供給しない構成にするとともに、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油を再生油や回生油として再利用することで、省エネに大きく貢献できることになるが、回生油として用いる場合、スティックアウトに必要な高圧油をブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給できることになって、ブーム5の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される高圧油を効率よく再利用できることになる。
さらに、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合に、制御装置30は、複合操作されていない場合と比して、流量制御弁20により制御される第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量を、回生弁52から供給される回生流量に相当する分だけ減少させるように制御するようになっており、これにより、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量を減少させることができて、低燃費化に貢献できる。この場合、回生流量が多い場合には、流量制御弁20により制御される第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量をゼロとなるように制御することもでき、さらに、スティック用第二方向切換弁19により制御される第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9への供給流量も減少させるように制御することも可能である。
【0036】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、油圧ショベル1の油圧制御回路は、ブームシリンダ8およびスティックシリンダ9の油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプ11、12と、第一油圧ポンプ11、油タンク15およびブームシリンダ8に接続され、ブームシリンダ8に対する油の給排方向を切換えるブーム用第一方向切換弁16と、第二油圧ポンプ12、油タンク15およびブームシリンダ8に接続され、ブームシリンダ8に対する油の給排方向を切換えるブーム用第二方向切換弁17と、第一油圧ポンプ11、油タンク15およびスティックシリンダ9に接続され、スティックシリンダ9に対する油の給排方向を切換えるスティック用第一方向切換弁18と、第二油圧ポンプ12、油タンク15およびスティックシリンダ9に接続され、スティックシリンダ9に対する油の給排方向を切換えるスティック用第二方向切換弁19と、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18に至るスティック用第一供給油路13Bに配され、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18への供給流量を制御する流量制御弁20と、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18に至る回生油路51に配され、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18への供給流量を制御する回生弁52とを備えるとともに、スティック用第一方向切換弁18は、流量制御弁20からの供給流量、あるいは回生弁52からの供給流量、あるいは流量制御弁20および回生弁52からの供給流量を増減することなくスティックシリンダに供給することになる。そして、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、前記ブーム用第一方向切換弁16は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量を制御し、ブーム用第二方向切換弁17は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量を制御し、回生弁52は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティック用第一方向切換弁18を経由してスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給される回生流量を制御し、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18を経由してスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁18は、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量を制御し、スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量と、ヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量とを制御することになる。
【0037】
つまり、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時において、ブーム用第一方向切換弁16は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量のみを制御することになるから、該ブーム用第一方向切換弁16によるブームシリンダ8の再生流量制御を独立して制御できる。また、ブーム用第二方向切換弁17は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量のみを制御するから、該ブーム用第二方向切換弁17によるブームシリンダ8から油タンク15への排出流量制御を独立して制御できる。また、回生弁52は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの回生流量のみを制御するから、該回生弁52によるブームシリンダ8からスティックシリンダ9への回生流量制御を独立して制御できる。また、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量のみを制御するから、該流量制御弁20による第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量制御を独立して制御できる。また、スティック用第一方向切換弁18は、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量のみを制御するから、該スティック用第一方向切換弁18によるスティックシリンダ9から油タンク15への排出流量制御を独立して制御できる。また、スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量と、ヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量とを制御するが、この場合に、供給流量制御あるいは排出流量制御の何れか一方を優先させることで、該スティック用第二スプール弁19による第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9への供給流量制御あるいはスティックシリンダ9から油タンク15への排出流量制御の何れか一方を独立して制御できる。さらに、スティック用第二スプール弁19による供給流量制御あるいは排出流量制御の何れか他方の流量制御は独立して行えないが、該何れか他方の流量制御が排出流量制御であれば、スティック用第一スプール弁18によるスティックシリンダ9から油タンク15への排出流量を増減制御することで、スティックシリンダ9からの合計排出流量を独立して制御でき、また、供給流量制御であれば、流量制御弁20による第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量を増減制御することで、スティックシリンダ9への第一、第二の両方の油圧ポンプ11、12からの合計供給流量を独立して制御できることになる。
【0038】
このように、本実施の形態においては、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に、ブーム5の下降に伴いブームシリンダ8から排出される高圧油を、スティック6をアウト方向に揺動させるときに必要な高圧油の少なくとも一部として利用できることになって、効率の良いエネルギー回生を行えることになるが、この場合に、ブームシリンダ8からスティックシリンダ9への回生流量は回生弁52によって制御されるとともに、該回生流量に応じて、ブームシリンダ8間の再生流量、ブームシリンダ8から油タンク15への排出流量、第一、第二油圧ポンプ11、12からスティックシリンダ9への供給流量、スティックシリンダ9から油タンク15への排出流量をそれぞれ独立して制御できることになる。この結果、回生を行う場合に、その回生流量に応じたブームシリンダ8、スティックシリンダ9の再生流量制御、供給流量制御、排出流量制御を、それぞれ独立して高精度に行えることになって、作業効率の向上、操作性の向上に貢献できるとともに、さらなる低燃費化を達成できることになる。しかもこの制御は、従来から油圧ショベル1の油圧制御回路に汎用的に用いられているブーム用第一、第二方向切換弁16、17およびスティック用第一、第二方向切換弁18、19を利用するとともに、回生流量制御を行う回生弁52と、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9への供給流量制御を行う流量制御弁20とを設けただけの簡単な構成であるから、従来の回路構成用のバルブユニットを利用して簡単に製造することができて、コスト抑制を達成できることになる。
【0039】
このものにおいて、スティックアウト操作と複合操作されていないブーム下降操作時には、回生弁52は回生油路51を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁16は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量を制御し、ブーム用第二方向切換弁17は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク15への排出流量を制御することになるが、この場合にブーム用第一、第二方向切換弁16、17が行う制御は、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に行う制御と同じであるから、例えばブーム下降操作中にスティックアウト操作を開始する場合や、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作中にスティックアウト操作のみを停止するような場合に、ブームシリンダ8に対する油給排制御の連続性が損なわれてしまうがないとともに、制御の簡略化が図れる。
【0040】
さらにこのものにおいて、ブーム下降操作と複合操作されていないスティックアウト操作時には、回生弁52は回生油路51を閉じる一方、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18を経由してスティックシリンダ9のロッド側油室9bに供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁18は、スティックシリンダ9のヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量を制御し、スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のロッド側油室9bへの供給流量と、ヘッド側油室9aから油タンク15への排出流量とを制御することになるが、この場合に流量制御弁20およびスティック用第一、第二方向切換弁18、19が行う制御は、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時に行う制御と同じであるから、例えばスティックアウト操作中にブーム下降操作を開始する場合や、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作中にブーム下降操作のみを停止するような場合に、スティックシリンダ9に対する油給排制御の連続性が損なわれてしまうがないとともに、制御の簡略化が図れる。
【0041】
さらにこのものにおいて、ブーム上昇操作時には、回生弁52は回生油路51を閉じる一方、ブーム用第一方向切換弁16は、第一油圧ポンプ11からブームシリンダ8のヘッド油室8aへの供給流量と、ロッド側油室8bから油タンク15への排出流量とを制御し、ブーム用第二方向切換弁17は、第二油圧ポンプ12からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの供給流量を制御することになる。
つまり、ブーム上昇操作路において、ブーム用第二スプール弁17は、第二油圧ポンプ12からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの供給流量のみを制御することになるから、該ブーム用第二スプール弁17による第二油圧ポンプ12からの供給流量制御を独立して制御できる。また、ブーム用第一スプール弁16は、第一油圧ポンプ11からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの供給流量と、ロッド側油室8bから油タンク15への排出流量とを制御するが、この場合に、排出流量制御を優先させることで、該ブーム用第一スプール弁16による排出流量制御を独立して制御できる。さらに、ブーム用第一スプール弁16による供給流量制御は独立して行えないが、ブーム用第二スプール弁17による第二油圧ポンプ12からの供給流量を増減制御することで、第一、第二の両方の油圧ポンプ11、12からの合計供給流量を独立して制御できることになる。この結果、ブーム上昇操作時においてもブームシリンダ8に対する供給流量制御と排出流量制御とを独立して制御できることになって、高効率化や操作性の向上に大きく貢献できる。
【0042】
さらにこのものにおいて、スティックイン操作時には、回生弁52は回生油路51を閉じる一方、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からスティック用第一方向切換弁18を経由してスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁18は、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量を制御し、スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のヘッド側油室9aへの供給流量と、ロッド側油室9bから油タンク15への排出流量とを制御することになる。
つまり、スティックイン操作時において、流量制御弁20は、第一油圧ポンプ11からスティックシリンダ9のヘッド側油室9aへの供給流量のみを制御することになるから、該流量制御弁20による第一油圧ポンプ11からの供給流量制御を独立して制御できる。また、スティック用第一方向切換弁18は、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量のみを制御するから、該スティック用第一方向切換弁18による再生流量制御を独立して制御できる。また、スティック用第二方向切換弁19は、第二油圧ポンプ12からスティックシリンダ9のヘッド側油室9aへの供給流量と、ロッド側油室9bから油タンク15への排出流量とを制御するが、この場合に、排出流量制御を優先させることで、該スティック用第二方向切換弁19による排出流量制御を独立して制御できる。さらに、スティック用第二方向切換弁19による供給流量制御は独立して行えないが、流量制御弁20による第一油圧ポンプ11からの供給流量を増減制御することで、第一、第二の両方の油圧ポンプ11、12からの合計供給流量を独立して制御できることになる。この結果、スティックイン操作時においてもスティックシリンダ9に対する供給流量制御と排出流量制御と再生流量制御とを独立して制御できることになって、高効率化や操作性の向上に大きく貢献できる。
【0043】
次に、本発明の第二の実施の形態について、
図6に示す油圧制御回路図に基づいて説明するが、第二の実施の形態のものは、後述するブーム用第一方向切換弁55以外のものは第一の実施の形態と同様であるため、これらについては同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0044】
前記第二の実施の形態のブーム用第一方向切換弁55は、第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16と同様に、下降側、上昇側のパイロットポート55b、55cを備え、下降側、上昇側パイロットポート55b、55cにパイロット圧が入力されることにより、中立位置Nから下降側作動位置V、上昇側作動位置Wに切換わるが、第二の実施の形態のブーム用第一方向切換弁55の下降側作動位置Vには、第一領域V1と第二領域V2とが設けられている。この場合に、第二領域V2は、中立位置Nからのスプール変位量が第一領域V1よりも大きい位置に設定されている。そして、第一領域V1に位置している状態では、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油をロッド側油室8bに供給する再生用弁路55dを開く。また、第二領域V2に位置している状態では、前記再生用弁路55dを開くとともに、第一油圧ポンプ11の吐出油をロッド側油室8bに供給するロッド側供給用弁路55gを開くように構成されている。尚、
図6中、55aはブーム用第一方向切換弁55に設けられるセンタバイパス通路である。
【0045】
ここで、前記下降側作動位置Vの第一、第二領域V1、V2における再生用弁路55d、ロッド側供給用弁路55gの開口特性を
図7(A)に示すが、再生用弁路55dの開口特性は、前記第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16の下降側作動位置Vにおける再生用弁路16dの開口特性と同じであり、また、ロッド側供給用弁路55gの開口特性は、第一領域V1では閉じているが第二領域V2になるとすぐに開口面積が大きくなるように設定されている。そして、該ロッド側供給用弁路55gの開口面積がすぐに大きくなることにより、ブーム用第一方向切換弁55が第二領域V2に位置している状態では、第一油圧ポンプ11の吐出油を素早くブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給することができるようになっている。
尚、第二の実施の形態のブーム用第一方向切換弁55は、上昇側作動位置Wにおいては、第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16の上昇側作動位置Wと同様に、第一油圧ポンプ11の吐出油をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するヘッド側供給用弁路55eを開き、かつ、ブームシリンダ8のロッド側油室8bからの排出油を油タンク15に流すロッド側排出用弁路55fを開くとともに、これらヘッド側供給用弁路55e、ロッド側排出用弁路55fの開口特性は、第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16のヘッド側供給用弁路16e、ロッド側排出用弁路16fの開口特性と同様に設定されている(
図7(B)参照)。
【0046】
一方、第二の実施の形態において、制御装置30は、操作検出手段36からブーム下降操作の信号が入力された場合、ブーム用ヘッド側圧力センサ39から入力されるブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力に基づいて、機体持上げ操作(バケット7を接地させた状態でブーム5を下降操作することでブーム5を機体に対して相対的に下降せしめ、これにより機体の一部を持上げる操作)であるか否かを判断する。
【0047】
ここで、前記機体持上げ操作であるか否かの判断は、ブーム用ヘッド側圧力センサ39から入力されるブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力値に基づいて行う。つまり、ブーム5を空中下降(バケット7が接地していない状態でのブーム5の下降)させる場合には、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧油にフロント作業機4の総重量がかかっているため、ヘッド側油室8aの圧力は高圧になっている。一方、バケット7が接地する等してブーム5の下降に抗する力が作用している状態でブーム5を下降させると、ブームシリンダ8に引張力が働いてヘッド側油室8aの圧力が空中下降させる場合よりも低下するが、機体持上げ操作時には、機体の重量に抗してブーム5を下降させることになるためブームシリンダ8に強い引張力が働き、ヘッド側油室8aの圧力がさらに低下する。そこで、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力が予め設定される設定圧Ps未満まで低下した場合には機体持上げ操作であると判断し、また、設定圧Ps以上の場合には機体持上げ操作でないと判断する。
【0048】
さらに、操作検出手段36からブーム下降の操作信号が入力された場合、制御装置30は、第一の実施の形態の場合と同様に、下降側第一、第二電磁弁31、32に対してパイロット圧出力の制御信号を出力し、これによりブーム用第一、第二方向切換弁55、17は下降側作動位置Vに切換わるが、この場合、機体持上げ操作でない(ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力が設定圧Ps以上である)と判断された場合には、下降側第一電磁弁31に対し、ブーム用第一方向切換弁55を第一領域V1に位置せしめるための圧力のパイロット圧(スプール変位量が第一領域V1となるパイロット圧)を出力するように制御信号を出力する。これにより、ブーム用第一方向切換弁55が第一領域V1に位置して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油をロッド側油室8bに供給する再生用弁路55dを開く。
【0049】
これに対し、操作検出手段36からブーム下降の操作信号が入力されたときに、機体持上げ操作である(ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力が設定圧Ps未満である)と判断された場合には、制御装置30は、下降側第一電磁弁31に対し、ブーム用第一方向切換弁55を第二領域V2に位置せしめるための圧力のパイロット圧(スプール変位量が第二領域V2となるパイロット圧)を出力するように制御信号を出力する。これにより、ブーム用第一方向切換弁55が第二領域V2に位置して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油をロッド側油室8bに供給する再生用弁路55dを第一領域V1のときよりも大きく開くとともに、第一油圧ポンプ11の吐出油をロッド側油室8bに供給するロッド側供給用弁路55gを開く。尚、ブーム用第一方向切換弁55は第二領域V2に位置しているとき、ヘッド側油室8aからの排出油をロッド側油室8bに供給する再生用弁路55dを開いているが、機体持上げ操作時にはロッド側油室8bの圧力はヘッド側油室8aの圧力よりも高圧となるため再生は行われないとともに、再生用弁路55dに設けられたチェック弁により逆流(ロッド側油室8bからヘッド側油室8aへの油の流れ)は阻止されている。
【0050】
この様に、第二の実施の形態においては、ブーム下降操作時(ブームシリンダ8の縮小時)において、機体持上げ操作である場合に、ブーム用第一方向切換弁55が第二領域V2に位置してロッド側供給用弁路55gを開く。これにより、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに第一油圧ポンプ11からの吐出油が供給されることになって、機体の重量に抗してブーム5を下降させる機体持上げ操作をスムーズに行うことができる。
【0051】
しかも、前記ブーム用第一方向切換弁55が下降側作動位置Vの第一領域V1に位置している状態では、第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16が下降側作動位置Vに位置している場合と同様に、再生用弁路55dによって、ヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生流量を制御する。また、ブーム用第一方向切換弁55が下降側作動位置Vの第二領域V2に位置している状態では、ロッド側供給用弁路55gによって、第一油圧ポンプ11からロッド側油室8bへの供給流量を制御する(前述したようにヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの再生は行われない)。つまり、下降側作動位置Vのブーム用第一方向切換弁55は、第一領域V1に位置しているときには再生流量制御のみを行い、また、第二領域V2に位置しているときには供給流量制御のみを行う構成となっている。さらに、上昇側作動位置Wに位置しているブーム用第一方向切換弁55は、第一の実施の形態のブーム用第一方向切換弁16が上昇側作動位置Wに位置しているときと同様に、第一油圧ポンプ11からの供給流量制御と排出流量制御とを行う。また、ブーム用第二方向切換弁17は第一の実施の形態と同様のものであるから、下降側作動位置Vに位置しているときには排出流量制御のみを行い、上昇側作動位置Wに位置しているときには第二油圧ポンプ12からの供給流量制御のみを行う。而して、第二の実施の形態のものにおいても、ブーム用第一、第二方向切換弁16、17を利用して、ブームシリンダ8に対する供給流量、再生流量および排出流量をそれぞれ独立して制御できることになる。
【0052】
尚、この第二の実施の形態において、機体持上げ操作でないと判断された場合、つまり、ブーム用第一方向切換弁55が下降側作動位置Vの第一領域V1に位置している状態で、ブーム下降操作とスティックアウト操作とが複合操作された場合には、前述した第一の実施の形態と同様のブーム用第一、第二方向切換弁55、17、回生弁52、流量制御弁20、スティック用第一、第二方向切換弁18、19の制御が行われる。一方、機体持上げ操作とスティックアウト操作とは同時に行われる操作ではないため、機体持上げ操作であると判断された場合には、回生弁52は常に回生油路51を閉じるように制御される。
【0053】
次に、本発明の第三の実施の形態について、
図8に示す油圧制御回路図に基づいて説明するが、第三の実施の形態のものは、後述するスティック用第一方向切換弁54以外のものは第一の実施の形態と同様であるため、これらについては同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0054】
前記第三の実施の形態のスティック用第一方向切換弁54は、第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18と同様に、イン側、アウト側のパイロットポート54b、54cを備え、イン側、アウト側パイロットポート54b、54cにパイロット圧が入力されることにより、中立位置Nからイン側作動位置X、アウト側作動位置Yに切換わるが、第三の実施の形態のスティック用第一方向切換弁54のイン側作動位置Xには、第一領域X1と第二領域X2とが設けられている。この場合に、第二領域X2は、中立位置Nからのスプール変位量が第一領域X1よりも大きい位置に設定されている。そして、第一領域X1に位置している状態では、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油をスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給するヘッド側供給用弁路54dを開き、かつ、ロッド側油室9bからの排出油をヘッド側油室9aに供給する再生用弁路54eを開く。また、第二領域X2に位置している状態では、前記ヘッド側供給用弁路54dおよび再生用弁路54eを開くと共に、ロッド側油室9bからの排出油を油タンク15に流すロッド側排出用弁路54hを開くように構成されている。尚、
図8中、54aはスティック用第一方向切換弁54に設けられるセンタバイパス通路である。
【0055】
ここで、前記イン側作動位置Xの第一、第二領域X1、X2におけるヘッド側供給用弁路54d、再生用弁路54e、ロッド側排出用弁路54hの開口特性を
図9(A)に示すが、ヘッド側供給用弁路54dおよび再生用弁路54eの開口特性は、前記第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18のイン側作動位置Xにおけるヘッド側供給用弁路18dおよび再生用弁路18eの開口特性と同じであり、また、ロッド側排出用弁路54hの開口特性は、第一領域X1では閉じているが第二領域X2になるとすぐに開口面積が大きくなるように設定されている。そして、該ロッド側排出用弁路54hの開口面積がすぐに大きくなることにより、スティック用第一方向切換弁54が第二領域X2に位置している状態では、ロッド側油室9bからの排出油を素早く油タンク15に流すことができるようになっている。
尚、第三の実施の形態のスティック用第一方向切換弁54は、アウト側作動位置Yにおいては、第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18のアウト側作動位置Yと同様に、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油、あるいは回生弁52から供給される回生油、あるいは流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油と回生弁52から供給される回生油との合流油をロッド側油室9bに供給するロッド側供給用弁路54fを開き、かつ、ヘッド側油室9aからの排出油を油タンク15に流すヘッド側排出用弁路54gを開くとともに、これらロッド側供給用弁路54f、ヘッド側排出用弁路54gの開口特性は、第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18のロッド側供給用弁路18f、ヘッド側排出用弁路18gの開口特性と同様に設定されている(
図9(B)参照)。
【0056】
一方、第三の実施の形態において、制御装置30は、操作検出手段36からスティックインの操作信号が入力された場合、スティック用ヘッド側、ロッド側圧力センサ41、42から入力されるスティックシリンダ9のヘッド側油室9a、ロッド側油室9bの圧力に基づいて、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生が可能であるか否かを判断する。この場合、ロッド側油室9bの圧力Prがヘッド側油室9aの圧力Phよりも大きければ(Pr>Ph)再生可能と判断し、ロッド側油室9bの圧力Prがヘッド側油室9aの圧力Ph以下ならば(Pr≦Ph)再生不可能と判断する。
【0057】
さらに、操作検出手段36からスティックインの操作信号が入力された場合、制御装置30は、第一の実施の形態の場合と同様に、イン側第一、第二電磁弁45、46に対してパイロット圧出力の制御信号を出力し、これによりスティック用第一、第二方向切換弁54、19はイン側作動位置Xに切換わるが、この場合、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生が可能である(ロッド側油室9bの圧力Prがヘッド側油室9aの圧力Phよりも大きい(Pr>Ph))と判断された場合には、イン側第一電磁弁45に対し、スティック用第一方向切換弁54を第一領域X1に位置せしめるための圧力のパイロット圧(スプール変位量が第一領域X1となるパイロット圧)を出力するように制御信号を出力する。これにより、スティック用第一方向切換弁54が第一領域X1に位置して、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油をスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給するヘッド側供給用弁路54dを開き、かつ、ロッド側油室9bからの排出油をヘッド側油室9aに供給する再生用弁路54eを開く。
【0058】
これに対し、操作検出手段36からスティックインの操作信号が入力されたときに、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生が不可能である(ロッド側油室9bの圧力Prがヘッド側油室9aの圧力Ph以下である(Pr≦Ph))と判断された場合には、制御装置30は、イン側第一電磁弁45に対し、スティック用第一方向切換弁54を第二領域X2に位置せしめるための圧力のパイロット圧(スプール変位量が第二領域X2となるパイロット圧)を出力するように制御信号を出力する。これにより、スティック用第一方向切換弁54が第二領域X2に位置して、流量制御弁20から供給される第一油圧ポンプ11の吐出油をスティックシリンダ9のヘッド側油室9aに供給するヘッド側供給用弁路54dを最大開口に維持し、スティックシリンダ9のロッド側油室9bからの排出油をヘッド側油室9aに供給する再生用弁路54eをさらに開くととともに、ロッド側油室9bからの排出油を油タンク15に排出するロッド側排出用弁路54hを開く。尚、スティック用第一方向切換弁54は第二領域X2に位置しているとき、ロッド側油室9bからの排出油をヘッド側油室9aに供給する再生用弁路54eを開いているが、ロッド側油室9bの圧力Prがヘッド側油室9aの圧力Ph以下であるため再生は行われないとともに、再生用弁路54eに設けられたチェック弁により逆流(ヘッド側油室9aからロッド側油室9bへの油の流れ)は阻止されている。
【0059】
この様に、第三の実施の形態においては、スティックイン操作時(スティックシリンダ9の伸長時)において、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生が不可能である場合に、スティック用第一方向切換弁54が第二領域X2に位置してロッド側排出用弁路54hを開く。これにより、ロッド側油室9bからの排出油がアンロード状態で油タンク15に流れてロッド側油室9bの圧力が素早く低下することになって、ロッド側油室9bが高圧のためにスティックシリンダ9の作動速度が損なわれてしまうことを確実に回避できるようになっている。
【0060】
しかも、前記スティック用第一方向切換弁54がイン側作動位置Xの第一領域X1に位置している状態では、第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18がイン側作動位置Xに位置している場合と同様に、流量制御弁20によって、第一油圧ポンプ11からヘッド側油室9aへの供給流量が制御され、スティック用第一方向切換弁54の再生用弁路54eによって、ロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生流量が制御される。また、スティック用第一方向切換弁54がイン側作動位置Xの第二領域X2に位置している状態では、流量制御弁20によって、第一油圧ポンプ11からヘッド側油室9aへの供給流量が制御され、スティック用第一方向切換弁54のロッド側排出用弁路54hによって、ロッド側油室9bから油タンク15への排出流量が制御される(前述したようにロッド側油室9bからヘッド側油室9aへの再生は行われない)。つまり、イン側作動位置Xのスティック用第一方向切換弁54は、第一領域X1に位置しているときには再生流量制御のみを行い、また、第二領域X2に位置しているときには排出流量制御のみを行う構成となっている。さらに、アウト側作動位置Yに位置しているスティック用第一方向切換弁54は、第一の実施の形態のスティック用第一方向切換弁18がアウト側作動位置Yに位置しているときと同様に、排出流量制御のみを行う。また、スティック用第二方向切換弁19は第一の実施の形態と同様のものであるから、イン側作動位置Xに位置しているときには第二油圧ポンプ12からの供給流量制御と排出流量制御とを行い、アウト側作動位置Yに位置しているときには第二油圧ポンプ12からの供給流量制御と排出流量制御とを行う。而して、第三の実施の形態のものにおいても、スティック用第一、第二方向切換弁54、19を利用して、スティックシリンダ9に対する供給流量、再生流量および排出流量をそれぞれ独立して制御できることになって、第一の実施の形態と同様の効果を奏することになる。尚、第三の実施の形態において、スティックアウト操作時の制御は、ブーム下降操作との複合操作時の場合も含めて、第一の実施の形態と同様である。
【0061】
尚、本発明は上記第一~第三の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、前記各実施の形態に設けられるブーム用第一、第二方向切換弁、スティック用第一、第二方向切換弁は、何れもパイロット圧により切換わるパイロット作動式の方向切換弁であるが、これらの方向切換弁を、制御装置からの制御信号が直接入力される電磁比例式の方向切換弁を用いて構成することもできる。
また、第一~第三の実施の形態のものでは、回生油は、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時にブームシリンダのヘッド側油室からスティックシリンダのロッド側油室に供給される構成になっているが、ブーム下降操作とスティックイン操作との複合操作時においても、ブームシリンダのヘッド側油室からスティックシリンダのヘッド側油室に回生油を供給する構成にすることも可能である。このように構成する場合、ブーム下降操作とスティックイン操作との複合操作時に、ブーム用第一、第二方向切換弁の制御は、ブーム下降操作とスティックアウト操作との複合操作時の場合と同様とする一方、回生弁は、ブームシリンダのヘッド側油室からスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのヘッド側油室に供給される回生流量を制御し、流量制御弁は、一方の油圧ポンプからスティック用第一方向切換弁を経由してスティックシリンダのヘッド側油室に供給される供給流量を制御し、スティック用第一方向切換弁は、スティックシリンダのロッド側油室からヘッド側油室への再生流量を制御し、スティック用第二方向切換弁は、他方の油圧ポンプからスティックシリンダのヘッド側油室への供給流量と、ロッド側油室から油タンクへの排出流量とを制御する。
また、第一~第三の実施の形態のものでは、回生弁から回生油が供給される第一スティック用方向切換弁を第一油圧ポンプに接続される構成にしたが、第一スティック用方向切換弁を第二油圧ポンプに接続する構成にすることもできる。この場合、第二スティック用方向切換弁は第一油圧ポンプに接続される一方、流量制御弁は、第二油圧ポンプから第一スティック用方向切換弁に至るスティック用供給油路に配されて、第二油圧ポンプから第一スティック用方向切換弁への供給流量を制御する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、機体に上下揺動自在に支持されるブームと、該ブームの先端側に揺動自在に支持されるスティックとを備えた油圧ショベル等の建設機械の油圧制御回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
5 ブーム
6 スティック
8 ブームシリンダ
9 スティックシリンダ
11 第一油圧ポンプ
12 第二油圧ポンプ
15 油タンク
16 ブーム用第一方向切換弁
17 ブーム用第二方向切換弁
18 スティック用第一方向切換弁
19 スティック用第二方向切換弁
20 流量制御弁
30 制御装置
51 回生油路
52 回生弁