IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7365104メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム
<>
  • -メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム 図1
  • -メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20231012BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20231012BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231012BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20231012BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F222/40
C08J5/18 CEY
C08L33/10
G02B5/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2016226127
(22)【出願日】2016-11-21
(65)【公開番号】P2017101230
(43)【公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2015228101
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 史樹
(72)【発明者】
【氏名】平本 千尋
(72)【発明者】
【氏名】木村 真由子
(72)【発明者】
【氏名】米村 真実
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】杉江 渉
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-96960(JP,A)
【文献】特開2009-52021(JP,A)
【文献】特開2010-215708(JP,A)
【文献】特開2011-126986(JP,A)
【文献】特開2012-31332(JP,A)
【文献】特開2015-135355(JP,A)
【文献】特開2015-172112(JP,A)
【文献】特開2014-193982(JP,A)
【文献】特開2001-151814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
C08L 33/00- 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸エステル単量体単位(A):50~97質量%と、マレイミド系構造単位(B-1)及びグルタルイミド系構造単位(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも一種の主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0~20質量%とを含むメタクリル系樹脂であって
下記条件(1)~(3):
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、8万~22万である。
(2)前記(B)構造単位の含有量が、前記(B)構造単位と前記(C)単量体単位との合計量を100質量%として、45~100質量%である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
を満たメタクリル系樹脂の製造方法であって、該製造方法が、
前記メタクリル系樹脂が、反応器に前記単量体単位(A)、前記構造単位(B)、及び、必要に応じて、単量体単位(C)を構成し得る単量体を加える調合工程と、重合開始剤を前記反応器に添加して、前記単量体の重合反応を行う重合工程とを含む、メタクリル系樹脂の製造方法であって
前記重合工程では、下記条件(i):
条件(i):重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計をB時間として、添加速度を漸減させて、重合開始剤の添加開始から0.5×B時間までに、少なくとも一度、重合開始剤の単位時間当たりの添加量を、添加開始時の単位時間当たりの添加量よりも小さくすること。
を満たすことを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法
【請求項2】
前記メタクリル系樹脂が、さらに下記条件(4)を満たす、請求項1に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が1万以下の成分の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、0.1~5.0質量%である。
【請求項3】
前記メタクリル系樹脂が、さらに下記条件(5)を満たす、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
(5)前記分子量が1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)が、2.5~8.5である。
【請求項4】
前記メタクリル系樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
【請求項5】
前記(C)単量体単位が、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
【請求項6】
前記(C)単量体単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、請求項5に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂と、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の熱安定剤とを混合してメタクリル系樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物の製造方法
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂と、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の紫外線吸収剤とを混合してメタクリル系樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物の製造方法
【請求項9】
請求項7又は8に記載のメタクリル系樹脂組成物の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂組成物をフィルム成型してフィルムを得る工程を含むことを特徴とする、フィルムの製造方法
【請求項10】
前記フィルムのフィルム厚みが0.01~1mmである、請求項9に記載のフィルムの製造方法
【請求項11】
前記フィルムが光学フィルムである、請求項9又は10に記載のフィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたメタクリル系樹脂、それを含むメタクリル系樹脂組成物、及びそれを含むフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ市場の拡大に伴い、画像をより鮮明に見たいという要求が高まっており、透明性、耐熱性、強度に加え、より高度な光学特性が付与された光学材料が求められている。
【0003】
上記光学材料として、透明性、表面硬度、光学特性等の観点から、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル重合体)が注目されてきている。
従来、アクリル系樹脂の中でも、特にグルタル酸無水物(例えば、特許文献1参照。)や無水マレイン酸(例えば、特許文献2参照。)等を(メタ)アクリル酸エステル単量体に共重合することにより耐熱性を改良したアクリル系樹脂が、光学材料として優れていることが報告されている。
【0004】
しかしながら、上記のように耐熱性を改良したアクリル系樹脂(耐熱性アクリル系樹脂)は、汎用アクリル樹脂、すなわちメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体に比べて、高温成型では熱分解しやすいという欠点がある。
また、成型品の大型化、薄肉化(フィルム化等)に伴い、高温での成型及び高温で滞留時間が長くなるため、成型加工時に発泡が生じる場合があるという欠点も有している。
さらに、耐熱性アクリル系樹脂は、強度が弱く、靭性が低いため、フィルムの成型加工性やハンドリング性の点により生産性に劣るという問題を有している。
【0005】
従来、耐熱性アクリル系樹脂の強度を向上させる技術として、グルタル酸無水物系単位を含有するアクリル系樹脂に、多層構造を有する架橋弾性体を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、無水マレイン酸単位を含有するアクリル系樹脂にアクリルゴムを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらには、無水マレイン酸単位を含有するアクリル系樹脂に、多層構造ゴム及び熱安定剤を添加する技術(例えば、特許文献5参照)や、主鎖に環構造を有する構造単位を含有するアクリル系樹脂に、ゴム質重合体、及び必要に応じて紫外線吸収剤を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-241197号公報
【文献】特開平03-023404号公報
【文献】特開2000-178399号公報
【文献】特開平05-119217号公報
【文献】特開2010-126550号公報
【文献】特開2014-098117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されているアクリル系樹脂においては、耐湿熱性、熱安定性が不十分であり、また、上記特許文献3及び4に開示されているアクリル系樹脂の組成物は、ゴム質成分の添加により耐熱性が低くなることや、熱安定性がさらに悪くなり、発泡や異物が生じ易くなることといった問題を有している。
引用文献1~4に開示されているアクリル系樹脂又はアクリル系樹脂組成物は、特に、フィルム成型時において、熱劣化、樹脂分解、異物の発生等が見られ、アクリル系樹脂が本来有する優れた光学特性を充分発揮することができないという問題を有している。
【0008】
また、上記特許文献5に開示された技術では、熱安定剤を添加することで、ある程度の高い耐熱性を付与しつつ、優れた機械強度と成型安定性とを付与することが可能となっている。しかしながら、熱安定剤の添加により色調が悪くなる傾向があるうえ、成型加工時に熱安定剤がブリードアウトするといった成型不良を起こす可能性もあるという問題を有している。
【0009】
また、一般的に、耐熱性アクリル系樹脂は、流動性が悪く、より薄いフィルムを製造する場合には溶融温度を高くする必要がある。かかる事情から、耐熱性アクリル系樹脂には、より高い成型安定性が求められている。
【0010】
さらに、上記特許文献6に開示された技術では、成型加工性、すなわち、フィルムを成型する際のフィルムのロールへの貼り付きにくさを改善する効果が必ずしも十分ではなく、より高いレベルでのフィルム外観及び光学特性に対する要求を満足させるためには、フィルムの成型加工性において更なる改良が望まれている。
【0011】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明においては、実用上十分な光学特性を有し、耐熱性、熱安定性、及び成型加工性に優れる、メタクリル系樹脂、それを含むメタクリル系樹脂組成物、及びそれを含むフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
[1]
メタクリル酸エステル単量体単位(A):50~97質量%と、マレイミド系構造単位(B-1)及びグルタルイミド系構造単位(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも一種の主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0~20質量%とを含むメタクリル系樹脂であって
下記条件(1)~(3):
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、8万~22万である。
(2)前記(B)構造単位の含有量が、前記(B)構造単位と前記(C)単量体単位との合計量を100質量%として、45~100質量%である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
を満たメタクリル系樹脂の製造方法であって、該製造方法が、
前記メタクリル系樹脂が、反応器に前記単量体単位(A)、前記構造単位(B)、及び、必要に応じて、単量体単位(C)を構成し得る単量体を加える調合工程と、重合開始剤を前記反応器に添加して、前記単量体の重合反応を行う重合工程とを含む、メタクリル系樹脂の製造方法であって
前記重合工程では、下記条件(i):
条件(i):重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計をB時間として、重合開始剤の添加開始から0.5×B時間までに、少なくとも一度、重合開始剤の単位時間当たりの添加量を、添加開始時の単位時間当たりの添加量よりも小さくすること。
を満たすことを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法
[2]
前記メタクリル系樹脂が、さらに下記条件(4)を満たす、[1]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が1万以下の成分の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、0.1~5.0質量%である。
[3]
前記メタクリル系樹脂が、さらに下記条件(5)を満たす、[1]又は[2]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
(5)前記分子量が1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)が、2.5~8.5である。
[4]
ガラス転移温度が120℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂の製造方法
[5]
前記(C)単量体単位が、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂の製造方法
[6]
前記(C)単量体単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、[5]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法
【0014】
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂と、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の熱安定剤とを混合してメタクリル系樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物の製造方法
[8]
[1]~[6]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂と、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の紫外線吸収剤とを混合してメタクリル系樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物の製造方法
【0015】
[9]
[7]又は[8]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂組成物をフィルム成型してフィルムを得る工程を含むことを特徴とする、フィルムの製造方法
[10]
前記フィルムのフィルム厚みが0.01~1mmである、[9]に記載のフィルム。
[11]
前記フィルムが光学フィルムである、[9]又は[10]に記載のフィルムの製造方法
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、実用上十分な光学特性を有し、耐熱性、熱安定性、外観性、及び成型加工性に優れる、メタクリル系樹脂、それを含むメタクリル系樹脂組成物、及びそれを含むフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態のメタクリル系樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの溶出曲線の概略を示す図である。
図2】本実施形態のメタクリル系樹脂及び樹脂組成物のロールへの貼り付き防止性の評価における、製膜時の第一温調ロール及び第二ロールの周辺の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、以下において、本実施形態のメタクリル系樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「~単量体単位」、及び/又は複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」という。
また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
【0019】
(メタクリル系樹脂)
本実施形態のメタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50~97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0~20質量%とを含み、下記条件(1)~(3)を満たすメタクリル系樹脂である。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、8万~22万である。
(2)前記(B)構造単位の含有量が、前記(B)構造単位と前記(C)単量体単位との合計量を100質量%として、45~100質量%である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
【0020】
以下、メタクリル系樹脂に含まれる単量体単位及び構造単位について詳細に記載する。
【0021】
((メタクリル酸エステル単量体単位(A)))
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体単位(A)(以下、(A)単量体単位と記載する場合がある。)としては、下記一般式(1)で示される単量体単位が好適に用いられる。
【0022】
【化1】
【0023】
前記一般式(1)中、Rは、炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~8の基であることが好ましい。
【0024】
前記一般式(1)に示すメタクリル酸エステル単量体単位(A)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(2)で示すメタクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。
【化2】
【0025】
前記一般式(2)中、Rは、炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~8の基であることが好ましい。
【0026】
かかる単量体の具体例としては、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられ、耐熱性や取扱性、光学特性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルが好ましく、入手しやすさ等の観点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0027】
前記メタクリル系樹脂のメタクリル酸エステル単量体単位(A)は、後述する主鎖に環構造を有する構造単位(B)により、メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、及び本実施形態のフィルムに対して耐熱性を十分に付与する観点から、メタクリル系樹脂中に50~97質量%含まれ、好ましくは55~97質量%、より好ましくは55~95質量%、さらに好ましくは60~93質量%、さらにより好ましくは60~90質量%含まれる。
【0028】
((主鎖に環構造を有する構造単位(B)))
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成する、主鎖に環構造を有する構造単位(B)(以下、(B)構造単位と記載する場合がある。)は、マレイミド系構造単位(B-1)、グルタル酸無水物系構造単位(B-2)、グルタルイミド系構造単位(B-3)、ラクトン環構造単位(B-4)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む。
主鎖に環構造を有する構造単位(B)は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
[マレイミド系構造単位(B-1)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するマレイミド系構造単位(B-1)としては、下記一般式(3)で示される構造単位が好適に用いられる。
【0030】
【化3】
【0031】
前記一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が1~12のアルコキシ基、炭素数が6~12のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表し、当該アルキル基、アルコキシ基、アリール基は、炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0032】
マレイミド系構造単位(B-1)を形成するための単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイミド;N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-アルキル基置換マレイミド;N-フェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-エチルフェニルマレイミド、N-ブチルフェニルマレイミド、N-ジメチルフェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-(o-クロロフェニル)マレイミド、N-(m-クロロフェニル)マレイミド、N-(p-クロロフェニル)マレイミド等のN-アリール基置換マレイミドが挙げられる。
上記単量体は、耐熱性付与、耐湿熱性の観点から、好ましくは、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-(o-クロロフェニル)マレイミド、N-(m-クロロフェニル)マレイミド、N-(p-クロロフェニル)マレイミドが挙げられ、入手のしやすさ、耐熱性付与の観点から、より好ましくはN-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられ、さらに好ましくはN-フェニルマレイミドが挙げられる。
上述したマレイミド系構造単位(B-1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
[グルタル酸無水物系構造単位(B-2)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するグルタル酸無水物系構造単位(B-2)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B-2)構造単位としては、下記一般式(4)で示される構造単位が好適に用いられる。
【0034】
【化4】
【0035】
前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
上述したグルタル酸無水物系構造単位(B-2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
グルタル酸無水物系構造単位(B-2)の形成方法は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)で表される構造の単量体を、上述したメタクリル酸エステル単量体単位(A)をなす単量体と共重合させた後、触媒の存在/非存在下での加熱処理により環化する方法が挙げられる。
【化5】
【0037】
前記一般式(5)中、Rは、水素原子、炭素数が1~6の置換、又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、水素原子、又はt-ブチルを表す。
【0038】
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(5)で表される構造の単量体がメタクリル系樹脂中に未反応のまま残っていてもよい。
【0039】
[グルタルイミド系構造単位(B-3)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するグルタルイミド系構造単位(B-3)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B-3)構造単位としては、下記一般式(6)で示される構造単位が好適に用いられる。
【0040】
【化6】
【0041】
前記一般式(6)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
また、Rは、水素原子、炭素数が1~6の置換又は非置換のアルキル基、炭素数が6~18の置換又は非置換のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表す。
特に好適には、R、R、及びRは、いずれもメチル基である。
上述したグルタルイミド系構造単位(B-3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、特に限定されず、耐熱性や成型加工性、光学特性等を考慮して、適宜決定することができる。
グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、メタクリル系樹脂を100質量%として、1~60質量%であることが好ましく、更に好ましくは3~50質量%であり、とりわけ好ましくは3~25質量%である。
なお、グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、例えば、国際公開第2015/098096号の[0136]~[0137]に記載の方法で、算出することができる。
【0043】
グルタルイミド系構造単位(B-3)を含む樹脂の酸価は、樹脂の物性、成型加工性、色調等のバランスを考慮すると、0.50mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.45mmol/g以下である。
なお、酸価は、例えば、特開2005-23272号公報に記載の滴定法等により算出することができる。
【0044】
グルタルイミド系構造単位(B-3)は、メタクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸を共重合させた後、高温下で、アンモニアやアミンを、尿素又は非置換尿素反応させる方法、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体とアンモニア又はアミンとを反応させる方法、ポリメタクリル酸無水物とアンモニア又はアミンとを反応させる方法等の公知の方法によって得ることができる。
具体的には、アールエムコプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等挙げられる。
【0045】
また、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルコールとのハーフエステル、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸をイミド化することによっても、上記グルタルイミド系構造単位(B-3)を形成することができる。
【0046】
さらに、他の好ましい調整法としては、(メタ)アクリル酸エステル及び、必要に応じて、芳香族ビニル単量体やその他のビニル単量体を重合させた後、イミド化反応を行い、上記グルタルイミド系構造単位(B-3)を含む樹脂を得る方法も挙げられる。
イミド化反応の工程においては、イミド化剤を用いて行ってよく、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。ここで、イミド化剤としては、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、シクロヘキシルアミン等を好適に用いることができる。
イミド化反応を実施する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、押出機、又は横型二軸反応装置、バッチ式反応槽を用いる方法が挙げられる。押出機としては、特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機を好適に用いることができる。より好適には、二軸押出機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いることができる。
また、上記樹脂を製造するにあたっては、イミド化反応の工程に加えて、エステル化剤で処理するエステル化工程を含むことができる。エステル化工程を含めることによって、イミド化工程中に副生した、樹脂中に含まれるカルボキシル基をエステル基に変換することができ、樹脂の酸価を所望の範囲に調整することができる。ここで、エステル化剤としては、本願の効果を発揮できる範囲であれば特に制限はされないが、好適にはジメチルカーボネート、トリメチルアセテートを使用することができる。エステル化剤の使用量は、特に制限されないが、樹脂100質量部に対して、0~12質量部であることが好ましい。また、エステル化剤に加えて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンを、触媒として併用することもできる。
【0047】
[ラクトン環構造単位(B-4)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するラクトン環構造単位(B-4)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B-4)構造単位としては、下記一般式(7)で示される構造単位が好適に用いられる。
【化7】
【0048】
前記一般式(7)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20の有機基を表す。なお、当該有機基は、酸素原子を含んでいてもよい。
上述したラクトン環構造単位(B-4)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ラクトン環構造単位(B-4)を含有する重合体の形成方法は、特に限定されないが、側鎖に水酸基を有する単量体、例えば、下記一般式(8)で表される構造の単量体(2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル等)と、上述したメタクリル酸エステル系単量体(A)等のエステル基とを有する単量体を共重合した後に、得られた共重合体を、所定の触媒の存在/非存在下で加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入することにより製造する方法が挙げられる。
【化8】
【0050】
前記一般式(8)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~6の置換又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
特に好適には、Rは、水素原子であり、Rは、メチル基である。
【0051】
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(8)で表される構造の単量体がメタクリル系樹脂中に未反応のまま残っていてもよい。
【0052】
ここまでに記載されるメタクリル系樹脂に含まれる(B)構造単位としては、熱安定性、成型加工性から、マレイミド系構造単位(B-1)及びグルタルイミド系構造単位(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましく、マレイミド系構造単位(B-1)を含むことがより好ましい。
マレイミド系構造単位(B-1)の中でも、入手のしやすさを考慮すると、好ましくはN-シクロヘキシルマレイミド系の構造単位及び/又はN-アリール置換マレイミド系の構造単位であり、少量添加での耐熱性付与効果を考慮すると、N-アリール置換マレイミド系の構造単位がより好ましく、さらに好ましくはN-フェニルマレイミド系の構造単位である。
【0053】
主鎖に環構造を有する構造単位(B)は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の耐熱性や熱安定性、強度及び流動性の観点から、メタクリル系樹脂中に3~30質量%含まれている。メタクリル系樹脂中における前記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の耐熱性・熱安定性付与の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、フィルムとして必要な強度、流動性をバランスよく保持する観点から、メタクリル系樹脂中における前記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量は、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは18質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%未満である。
【0054】
メタクリル系樹脂中に、主鎖に環構造を有する(B)構造単位を含むことにより、メタクリル系樹脂を高温環境下に置いた際、熱分解が抑制され、揮発成分の発生量を低減することができる。これにより、本実施形態のメタクリル系樹脂の熱安定性の向上効果が得られる。
【0055】
((メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)))
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成する、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)(以下、(C)単量体単位と記載する場合がある。)としては、芳香族ビニル系単量体単位(C-1)、アクリル酸エステル単量体単位(C-2)、シアン化ビニル系単量体単位(C-3)、これら以外の単量体単位(C-4)が挙げられる。
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0056】
前記(C)単量体単位は、本実施形態のメタクリル系樹脂に求められる特性に応じて、適宜材料を選択することができるが、熱安定性、流動性、機械特性、耐薬品性等の特性が特に必要な場合は、芳香族ビニル系単量体単位(C-1)、アクリル酸エステル単量体単位(C-2)、シアン化ビニル系単量体単位(C-3)からなる群より選ばれる少なくとも一種が好適である。
【0057】
[芳香族ビニル系単量体単位(C-1)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成する芳香族ビニル系単量体単位(C-1)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(9)で表される芳香族ビニル系単量体が好ましい。
【0058】
【化9】
【0059】
前記一般式(9)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~6のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、水素原子、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が1~12のアルコキシ基、炭素数が6~8のアリール基、炭素数が6~8のアリーロキシ基からなる群より選択されるいずれかであり、Rは、全て同じ基であっても、異なる基であってもよい。また、R同士で環構造を形成してもよい。
nは、0~5の整数を表す。
【0060】
上記一般式(9)で表される単量体の具体例としては、特に限定されるものではないが、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が挙げられる。
上記の中でも、スチレン、イソプロペニルベンゼンが好ましく、流動性付与や、重合転化率の向上による未反応モノマー類の低減等の観点から、スチレンがより好ましい。
これらは、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物において、要求される特性に応じて適宜選択してよい。
【0061】
芳香族ビニル系単量体単位(C-1)を使用する場合の含有量は、耐熱性、残存モノマー種の低減、流動性のバランスを考慮すると、(A)単量体単位と(B)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、23質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
【0062】
芳香族ビニル系単量体単位(C-1)を、上述したマレイミド系構造単位(B-1)と併用する場合、(B-1)構造単位の含有量に対する(C-1)単量体単位の含有量の割合(質量比)(すなわち、(C-1)含有量/(B-1)含有量)としては、フィルムを成型加工する際の加工流動性や、残存モノマー低減によるシルバーストリークス低減効果等の観点から、0.3~5であることが好ましい。
ここで、良好な色調や耐熱性を保持する観点から、上限値は、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。また、残存モノマー低減の観点から、下限値は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上である。
上述した芳香族ビニル系単量体(C-1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[アクリル酸エステル単量体単位(C-2)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するアクリル酸エステル単量体単位(C-2)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(10)で表されるアクリル酸エステル単量体が好ましい。
【0064】
【化10】
【0065】
前記一般式(10)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~12のアルコキシ基を表し、Rは、炭素数が1~18のアルキル基を表す。
【0066】
前記アクリル酸エステル単量体単位(C-2)を形成するための単量体としては、本実施形態のフィルム用のメタクリル系樹脂において、耐候性、耐熱性、流動性、熱安定性を高める観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル等が好ましく、より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルであり、入手しやすさの観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがさらに好ましい。
上記アクリル酸エステル単量体単位(C-2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
アクリル酸エステル単量体単位(C-2)を使用する場合の含有量は、耐熱性及び熱安定性の観点から、(A)単量体単位と(B)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【0068】
[シアン化ビニル系単量体単位(C-3)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するシアン化ビニル系単量体単位(C-3)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられ、中でも、入手のしやすさ、耐薬品性付与の観点から、アクリロニトリルが好ましい。
上記シアン化ビニル系単量体単位(C-3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
シアン化ビニル系単量体単位(C-3)を使用する場合の含有量は、耐溶剤性、耐熱性保持の観点から、(A)単量体単位と(B)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0070】
[(C-1)~(C-3)以外の単量体単位(C-4)]
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成する(C-1)~(C-3)以外の単量体単位(C-4)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0071】
上述した(C)単量体単位を構成する単量体の中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種が、入手のしやすさの観点から、好ましい。
【0072】
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)の含有量は、(B)構造単位による耐熱性付与の効果を高める観点から、メタクリル系樹脂を100質量%として、0~20質量%であり、0~18質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましい。
特に、(C)単量体単位として反応性二重結合を複数有する架橋性の多官能(メタ)アクリレートを使用する場合は、(C)単量体単位の含有量は、重合体の流動性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%質量以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0073】
特に、本実施形態では、メタクリル系樹脂の耐熱性、光学特性の観点から、(B)構造単位と(C)単量体単位との合計量を100質量%とした時に、(B)構造単位の含有量が、45~100質量%である。このとき、(C)構造単位の含有量が0~55質量%である。そして、(B)構造単位の含有量は、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%である。
【0074】
なお、上記メタクリル系樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0075】
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の特性について記載する。
【0076】
<重量平均分子量、分子量分布>
本実施形態のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8万~22万である。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量を前記範囲とすることにより、本実施形態のメタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂組成物は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上である。また、重量平均分子量は、成型加工時の流動性確保の観点から、好ましくは22万以下、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは18万以下、よりさらに好ましくは17万以下である。
また、メタクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスを考慮すると、1.5~5であることが好ましい。より好ましくは1.5~4.5、さらに好ましくは1.6~4、さらにより好ましくは1.6~3、よりさらに好ましくは1.5~2.5である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象であるメタクリル系樹脂の試料の重量平均分子量及び数平均分子量を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0077】
<特定の分子量範囲の成分の割合>
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量が、加工流動性の向上、成型時のシルバーストリークスと呼ばれる銀状痕等の成型品の外観不良の低減、フィルム製膜時のロールへの貼り付き防止の観点から、0.1~5.0質量%であることが好ましい。
上記含有量を0.1質量%以上とすることで、加工流動性を向上させることができる。下限値は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、上記含有量を5.0質量%以下とすることで、成型時のシルバーストリークスを低減することができる等、外観不良を低減することができ、さらには、成型時の金型離れを改善し、フィルム成膜時のロールへの貼り付き性を抑制し、延伸時にフィルムを挟む際に割れの発生を抑制することができる。上限値は、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量は、例えば、GPC溶出曲線から得られるエリア面積比率から求めることができ、具体的には、図1において、溶出曲線の開始点をA、その終了点をB、重量平均分子量1万となる溶出時間におけるベースライン上の点をX、そのGPC溶出曲線上の点をYとしたとき、曲線BYと線分BX、線分XYで囲まれる面積の、GPC溶出曲線におけるエリア面積に対する割合を、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量(質量%)として求めることができる。
好適には、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量は、下記実施例の方法により測定することができる。
【0078】
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
上記含有量を10.0~25.0質量%とすることで、フィルム成型加工時の筋ムラ発生を抑制することができるうえ、フィルム成型時にロールへの貼り付き性が改善される。
そして、加工流動性と、筋ムラの抑制・タッチロールへの貼り付き抑制といった加工時の特性をバランスよく付与する観点から、下限値は、好ましくは12.0質量%以上、より好ましくは13.0質量%であり、また、上限値は、より好ましくは24.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量は、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量の場合と同様に、求めることができる。
【0079】
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、前述の重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、重量平均分子量が5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)が、熱安定性及び加工性のバランスを良好なものとする観点から、2.5~8.5であることが好ましい。
高分子量体と低分子量体の存在比率を見た場合、加熱加工時における高分子量体と低分子量体との間での粘度差の影響により、低分子量体比率が多いと、加工流動性には優れているものの、フィルム加工時にロールへの貼り付き性が高くなる傾向にある一方で、高分子量体比率が高いと、フィルム加工時に筋ムラが発生しやすくなる傾向がある。
両者の特性をバランスよく付与したうえで、より貼り付き性を改善したい場合は、上記割合は、3.0以上とすることが好ましく、より好ましくは3.5以上である。一方で、フィルム加工時の筋ムラをより改善したい場合は、上記比率は、8.0以下であることが好ましく、より好ましくは7.5以下である。
【0080】
本実施形態のメタクリル系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性を十分に得る観点から、120℃以上であることが好ましく、より好ましくは121℃以上、さらに好ましくは122℃以上、さらにより好ましくは123℃以上、よりさらに好ましくは124℃以上、特に好ましくは125℃以上である。
なお、ガラス転移温度は、ASTM-D-3418に準拠して中点法により測定することができ、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
【0081】
(メタクリル系樹脂の製造方法)
本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法は、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂が得られる限り、特に限定されるものではない。
本実施形態のメタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位(A)、主鎖に環構造を有する構造単位(B)、及び、必要に応じて、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)を形成するための各単量体を用い、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法により製造できる。メタクリル系樹脂の製造には、好ましくは塊状重合法、溶液重合法が用いられ、より好ましくは溶液重合法が用いられる。
また、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造は、連続式としてもよいし、バッチ式としてもよい。
そして、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法では、ラジカル重合により単量体を重合することが好ましい。
【0082】
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法の一例として、溶液重合法を用いてバッチ式でラジカル重合で製造する場合について、具体的に説明する。
本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法の一例は、反応器に単量体と、必要に応じて有機溶媒とを加える調合工程と、重合開始剤を前記反応器に添加して、単量体の重合反応を行う重合工程と、必要に応じて、有機溶媒及び未反応の単量体を除去する脱揮工程とを含む。
【0083】
((調合工程))
本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法の一例においては、初めに、メタクリル酸エステル単量体単位(A)を構成し得る単量体、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を構成し得る単量体、必要に応じてさらに、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)を構成し得る単量体と、有機溶媒とを反応器で調合する(調合工程)。
【0084】
-単量体-
単量体としては、本実施形態のメタクリル系樹脂における各単量体単位(A)~(C)について述べた通りである。
なお、使用する単量体中には、重合反応を過度に妨げない範囲で重合禁止剤が残存していてもよく、残存する重合禁止剤の含有量は、重合反応性及び取扱性の観点から、全単量体の総量に対して、10質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下である。
【0085】
-有機溶媒-
任意選択的に用いられる有機溶媒としては、メタクリル系樹脂中に残存するモノマーを除去するための脱揮工程(後述)での除去効率を考慮して、メタクリル系樹脂の良溶媒であることが好ましい。
有機溶媒の溶解度パラメーターδは、メタクリル系樹脂を構成する共重合体の溶解度を考慮して、7.0~12.0(cal/cm1/2であることが好ましく、より好ましくは8.0~11.0(cal/cm1/2、さらに好ましくは8.2~10.5(cal/cm1/2である。
溶解度パラメーターδの値の求め方は、例えば、非特許文献「Journal of Paint Technology Vol.42、No.541、February 1970」中のP76-P118に記載されているK.L.Hoy著「New Values of the Solubility Parameters From Vapor Pressure Data」や、J.Brandrup他著「Polymer Handbook Fourth Edition」P-VII/675-P714等を参考にすることができる。
なお、1(cal/cm1/2は、約0.489(MPa)1/2である。
有機溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。
【0086】
また、有機溶媒として、重合後の脱揮工程において回収された有機溶媒を使用することもできる。
回収された有機溶媒中には未反応の単量体成分が含まれている場合には、有機溶媒中に含まれる未反応の単量体の含有量を分析し、その後、必要な分だけ単量体を追加することによって、調合を行うこともできる。
【0087】
本実施形態のメタクリル系樹脂の重合工程において使用する有機溶媒の添加量は、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であることが好ましい。
メタクリル系樹脂の重合を溶液重合法で行う場合、有機溶媒の配合量は、具体的には、配合する全単量体の総量を100質量部とした場合に、10~200質量部とすることが好ましい。より好ましくは25~200質量部、さらに好ましくは50~200質量部、さらにより好ましくは50~150質量部である。
【0088】
-反応器-
反応器は、材料の量及び除熱の観点から必要となる大きさを考慮して、適宜選択すればよい。
反応器のL/Dは、重合反応溶液の撹拌効率の観点から、0.5~50が好ましく、より好ましくは1~25であり、さらに好ましくは、1~10である。
【0089】
また、反応器に供する単量体及び/又は有機溶媒の量は、十分に除熱ができる範囲であれば特に問題なく、満液での重合でもよいし、反応器中50~99%の仕込み量で重合させてもよい。また、重合時は還流させてもよい。
【0090】
反応器には撹拌装置が取り付けられていることが好ましく、使用に供される撹拌装置としては、例えば、傾斜パドル翼、平パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、ファウドラー翼(後退翼)、タービン翼、ブルマージン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、リボン翼、スーパーミックス翼、インターミグ翼、特殊翼、軸流翼等の撹拌翼が挙げられ、中でも、傾斜パドル翼、ファウドラー翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好適に用いられる。
【0091】
重合時の撹拌速度は、用いる撹拌装置の種類、撹拌翼の撹拌効率、重合槽の容量等にも依存するが、重合初期の低粘度状態及び重合後期の高粘度状態のいずれも十分に撹拌混合できる速度であればよく、重合安定性を考慮すると、1~500回転/分程度であることが好ましい。
【0092】
各単量体を反応器に導入する方法としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はなく、予め混合して反応器に導入しても、別々に反応器に導入してもよい。生産性、取り扱い性を考慮すると、一部又は全部の単量体を予め混合してから反応器に導入することが好ましい。
特に、予め混合する際には、重合で使用可能な有機溶媒の一部又は全部を同時に混合することができる。有機溶媒を使用する際には、重合に供される単量体を溶解可能なものを使用することが好ましく、有機溶媒の溶解度パラメーターδは、7.0~12.0(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0093】
なお、調合工程においては、本発明の効果を発揮できる範囲で、必要に応じて、単量体及び有機溶媒以外に、分子量調整剤やその他の添加剤(後述の重合工程においても用いられる)も、予め添加することができる。
【0094】
((重合工程))
本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法の一例においては、次いで、重合開始剤、必要に応じて、分子量調整剤、その他の添加剤、追加の単量体を、調合工程後の反応器に添加して、単量体の重合反応を行う(重合工程)。
【0095】
この工程では、重合開始剤の添加開始により、単量体の重合反応が開始される。
なお、重合開始剤は、追加の単量体及び/又は追加の有機溶媒に溶解させたうえで、反応器に添加してもよい。
【0096】
-重合開始剤-
本実施形態において使用される重合開始剤は、重合温度で分解し活性ラジカルを発生するものであればよいが、滞留時間の範囲内で必要な重合転化率を達成することが必要であり、重合温度における半減期が0.6~60分、好ましくは1~30分を満足するような重合開始剤が選択される。但し、重合温度における半減期が60分を超える開始剤に関しても、所定量を一括もしくは10分程の時間で投入することで、本実施形態に適した活性ラジカル量を発生する重合開始剤として使用することができる。その場合に必要な重合転化率を達成するためには、重合温度における半減期が60~1800分、好ましくは260~900分を満足するような重合開始剤が選択される。
好適に使用される重合開始剤は、重合温度、重合時間を鑑みて適宜選択することができ、例えば、日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料及び和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の開始剤を好適に使用することができ、上記半減期は、記載の諸定数等により容易に求めることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)C)、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシビパレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、iso-プロピルパーオキシジカーボネート、iso-ブチルパーオキシジカーボネート、sec-ブチルパーオキシジカーボネート、n-ブチルパーオキシジカーボネート、2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシエチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)25B)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸等のアゾ系化合物等の、一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらの重合開始剤は、1種単独で用いることができ、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0097】
重合開始剤は、重合反応器で所望の重合率を得るために必要な量を添加すればよい。
重合反応においては重合開始剤の供給量を増やすことで重合度を上げることができるが、多量の開始剤を使用することで全体の分子量が低下する傾向にあるうえ、重合時の発熱量が増大するため、過熱により重合安定性が低下する場合もある。
重合開始剤は、所望の分子量を得やすくし、重合安定性を確保するという観点から、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは0.001~0.8質量部であり、より好ましくは0.01~0.5質量部である。重合開始剤の添加量は、重合を行う温度及び開始剤の半減期も考慮して、適宜選ぶことができる。
【0098】
本実施形態におけるメタクリル系樹脂の製造方法では、(a)重合後期におけるオリゴマー(例えば、2量体及び3量体)や低分子量体(例えば、重量平均分子量で500~10,000)の生成量を抑える観点、(b)重合転化率を上げる観点、(c)得られるメタクリル系樹脂の分子量を上げる観点、(d)重合時の過熱抑制による重合安定性の観点等から、重合反応系におけるラジカル量を最適量とすることが好ましい。
より具体的には、本発明の実施形態では、反応系内に残存する未反応モノマー総量に対する重合開始剤より発生するラジカル総量の割合が、常時一定値以下となるように、開始剤の種類、開始剤量、及び重合温度等を適宜選択することが好ましい。
【0099】
以下、重合工程における、好適な重合開始剤の添加方法について記載する。
かかる方法によれば、重合時のラジカル発生量を制御することによって、メタクリル系樹脂の重量平均分子量1万超5万以下の成分量、さらには重量平均分子量1万以下の成分量を所望の範囲とすることができる。
【0100】
本実施形態では、重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計をB時間として、重合開始剤の添加開始から0.5×B時間までに、少なくとも一度、重合開始剤の単位時間当たりの添加量を、添加開始時の単位時間当たりの添加量よりも小さくすること(条件(i))が好ましい。
【0101】
ここで、特に、ラジカル濃度の最適化の観点から、添加速度は漸減させることが好ましい。
【0102】
また、本実施形態では、上記条件(i)に加えて、前記重合開始剤の添加開始から0.01×B~0.3×B時間の間に、重合開始剤の単位時間当たりの添加量を、添加開始時の単位時間当たりの添加量の70%以下とすること(条件(ii))が好ましく、60%以下とすることがより好ましく、50%以下とすることが更に好ましく、40%以下とすることが特に好ましい。
例えば、重合開始時の重合開始剤の添加速度(単位時間当たりの添加量)を100ppm/時とし、重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計であるB時間を10時間とした場合に、重合開始剤の添加開始から0.1~3時間の間に、添加速度(単位時間当たりの添加量)を70ppm/時以下とすることが好ましい。
【0103】
更に好適には、本実施形態では、上記に加えて、前記重合開始剤の添加開始から0.01×B~0.3×B時間の間における、重合開始剤の単位時間当たりの添加量の平均を、重合開始剤の添加開始から0.01×B時間までの間における重合開始剤の単位時間当たりの添加量の平均の70%以下とすることが好ましく、60%以下とすることがより好ましく、50%以下とすることが更に好ましく、40%以下とすることが特に好ましい。
【0104】
そして、本実施形態では、上記条件(i)に加えて、重合開始剤の添加開始から0.7×B~1.0×B時間の間に、重合開始剤の単位時間当たりの添加量を、添加開始時の単位時間当たりの添加量の25%以下とすること(条件(iii))が好ましく、20%以下とすることがより好ましく、18%以下とすることが更に好ましい。
例えば、重合開始時の重合開始剤の添加速度(単位時間当たりの添加量)を100ppm/時とし、重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計であるB時間を10時間とした場合に、重合開始剤の添加開始から7~10時間の間に、添加速度(単位時間当たりの添加量)を25ppm/時以下とすることが好ましい。
【0105】
更に好適には、本実施形態では、上記に加えて、重合開始剤の添加開始から0.7×B~1.0×B時間の間における重合開始剤の単位時間当たりの添加量の平均を、重合開始剤の添加開始から0.01×B時間までの間における重合開始剤の単位時間当たりの添加量の平均の25%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましく、18%以下とすることがさらに好ましい。
【0106】
上記条件(ii)及び条件(iii)は、組み合わせて採用することがより好ましい。
【0107】
さらに、本実施形態では、上記条件(i)に加えて、重合開始剤の添加開始から0.5×B~1.0×B時間の間における重合開始剤の添加量を、重合開始剤の全添加量を100質量%として、20~80質量%とすること(条件(iv))が好ましく、20~70質量%とすることがより好ましく、20~60質量%とすることが更に好ましい。
【0108】
また、本実施形態では、上記条件(i)に加えて、単量体の重合反応を行う重合反応時間を、1.0×B~5.0×B時間とすること(条件(v))が好ましく、1.0×B~4.5×B時間とすることがより好ましく、1.0×B~4.0×B時間とすることがさらに好ましい。
【0109】
上記条件(iv)及び条件(v)は、組み合わせて採用することがより好ましい。
【0110】
なお、上記(i)~(v)のいずれの場合にも、重合開始剤を供給する方法としては、供給安定性の観点から、重合反応で使用する単量体及び/又は有機溶媒に予め溶解させてから供給することが好ましい。使用する単量体及び/又は有機溶媒は、重合反応で使用するものと同一のものが好ましい。また、重合配管での閉塞等を回避する観点から、重合開始剤は有機溶媒に溶解して供給することがより好ましい。
【0111】
-分子量調整剤-
任意選択的に用いられる分子量調整剤としては、連鎖移動剤やイニファータ等が挙げられる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂の製造工程においては、本発明の目的を損なわない範囲で、製造する重合体の分子量の制御を行うことができる。
連鎖移動剤及びイニファータとしては、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤;ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行うことができ、さらには、これらの連鎖移動剤やイニファータの添加量を調整することにより、分子量を制御することができる。
【0112】
これらの連鎖移動剤やイニファータを用いる場合、取扱性や安定性の点から、アルキルメルカプタン類が好適に用いられ、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これら分子量調整剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して、0.001~3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、1種の方法だけを単独で用いてもよいし、2種以上の方法を併用してもよい。
【0113】
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、分子量を調整したり、ポリマーの熱安定性を向上させる目的で、連鎖移動剤(分子量調整剤)を使用してもよく、使用に供される連鎖移動剤としては、本発明の効果を発揮できるものであれば、その種類及び使用方法は限定されるものではない。
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量を適量に制御する必要があり、また重量平均分子量1万以下の成分量も適量に制御する観点から、重合反応系に残るモノマー量に対して、残存する連鎖移動剤の量が過剰にならないような方法を選択することが好ましい。
連鎖移動剤の供給する方法の一例としては、連鎖移動剤を予めモノマーに溶解させておく方法、重合度が50%以下の段階で一括及び/又は逐次添加する方法、重合度90%までの間に一括及び/又は連続的に添加する方法で、連鎖移動剤を添加する量を、徐々に減じていく方法等の方法を好適に用いることができる。
【0114】
-その他の添加剤-
任意選択的に用いられるその他の添加剤は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されることなく、目的に応じて、適宜選択されてよい。
【0115】
重合工程における、重合溶液中の溶存酸素濃度としては、特に限定はされないが、10ppm以下であることが好ましい。
なお、溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計 DOメーターB-505(飯島電子工業株式会社製)を用いて測定することができる。
溶存酸素濃度を低下させる方法としては、重合溶液中に不活性ガスをバブリングする方法、重合前に重合溶液を含む容器内を不活性ガスで0.2MPa程度まで加圧した後に放圧する操作を繰り返す方法、重合溶液を含む容器内に不活性ガスを通ずる方法等が挙げられる。
【0116】
メタクリル系樹脂を溶液重合で製造する場合の重合温度は、重合が進行する温度であれば特に限定されないが、生産性の観点から、50~200℃であることが好ましく、より好ましくは80~200℃であり、さらに好ましくは80~180℃であり、さらにより好ましくは80~160℃であり、特に好ましくは90~160℃である。
【0117】
重合反応時間としては、必要な重合度を得ることができる時間であれば特に限定はされないが、生産性等の観点から、0.5~15時間であることが好ましく、より好ましくは1~12時間であり、さらに好ましくは1~10時間である。
なお、重合反応時間とは、重合開始剤の添加開始から重合反応の停止を行うまでの時間、又は、重合開始剤の添加開始から、重合反応溶液の反応器内からの取り出しを開始するまでの時間をいう。
【0118】
重合工程において、単量体の重合反応を停止する方法は、反応系に合わせて公知の方法を適宜選択してよい。
【0119】
((脱揮工程))
該重合反応器から抜き出された重合反応生成物は、脱揮装置を用いて有機溶媒及び未反応の単量体を除去することができる。除去した溶媒は、精留操作を行った後、重合反応に再利用してもよい。
本発明において好適に使用できる脱揮装置としては、重合反応生成物を、150~320℃の温度で加熱処理し、揮発分を分離回収処理ができる装置であればよい。
一例を挙げると、一か所又は複数個所にベント口を有する押出機や、SCプロセッサ、KRCニーダー、ギアポンプ付真空減圧タンク、高粘度用薄膜蒸発器EXEVA、フラッシュドラム等が挙げられる。
上記の脱揮装置は、1種単独でも2種以上の装置を併用して使用することができる。
本発明においては、脱揮発工程にて、脱揮後の樹脂中に含まれる残存揮発分量の総計が1質量%以下であることが好ましい。
【0120】
本実施形態のメタクリル系樹脂は、以上に記載の製造方法により、製造することができる。
【0121】
(メタクリル系樹脂組成物)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、前述のメタクリル系樹脂を含有することを特徴とし、この他に、任意選択的に、ゴム質重合体、メタクリル系樹脂以外の樹脂であるその他の樹脂、添加剤を含有していてよい。
【0122】
-ゴム質重合体-
ゴム質重合体は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中に、メタクリル系樹脂100質量部に対して、3.5質量部を超えない範囲で含有してもよい。好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは1.5質量部以上のゴム質重合体を含有することにより、フィルム成型時にフィルムがロールへの貼りつきを抑制する効果が得られる。3.5質量部以下、好ましくは3.0質量部以下のゴム質重合体を含有することにより、樹脂の持つ光学特性を保持することができる。
【0123】
ゴム質重合体としては、上記効果を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の材料を使用できる。
例えば、一般的なブタジエン系ABSゴム、アクリル系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フッ素ゴム等の多層構造を有するゴム粒子を使用することができる。
本実施形態のフィルムにおいて高い透明性が求められる場合には、上述したメタクリル系樹脂と近い屈折率を有するゴム質重合体を好適に用いることができ、アクリル系ゴム質重合体が特に好適に用いることができる。
【0124】
本実施形態において好適に使用されるゴム質重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、以下の例1~例3に提案されているアクリル系ゴム質重合体を適用することができる。
【0125】
-例1:特公昭60-17406号公報に開示されているゴム質重合体-
当該例1のゴム質重合体は、以下の(A)工程~(C)工程により製造される多層構造粒子である。
(A)工程:メチルメタクリレート単独又はメチルメタクリレートとこれと共重合可能な単量体との混合物を乳化重合し、25℃以上のガラス転移点をもつ、メチルメタクリレートを主体とする重合体の分散液を得る第一層形成工程。
(B)工程:前記(A)工程により得られる生成物に重合させたときにガラス転移点が25℃以下の共重合体を形成するアルキルアクリレートと、さらにこれと共重合可能な単量体又は多官能性架橋剤と、混合物全重量に対して0.1~5質量%の多官能グラフト剤と、を含有する混合物を加えて乳化重合させる第二層工程。
(C)工程:前記(B)工程により得られる生成物に重合させたときに25℃以上のガラス転移点をもつ重合体を形成するメチルメタクリレート又はこれを主体とする単量体混合物を、連鎖移動剤を段階的に増加させながら、多段階で乳化重合させる第三層形成工程。
前記多層構造粒子は、第三層の分子量が内側から外側に向かって次第に小さくなっているアクリル系ゴムからなる多層構造粒子である。
【0126】
-例2:特開平8-245854公報に開示されているゴム質重合体-
当該例2のゴム質重合体は、以下のアクリル系多層構造体ポリマー粉体である。
このアクリル系多層構造体ポリマー粉体は、ポリマーの溶融開始温度が235℃以上である。内層には、単独で重合した場合のガラス転移温度Tgが25℃以下あるポリマーを含んでおり、当該内層は、少なくとも1層の軟質重合体層である。最外層は、単独で重合した場合にTgが50℃以上であるポリマーを含む硬質重合体層である。
例2のゴム重合体は、アクリル系多層構造ポリマーの乳化ラテックスを凝固して得られる凝固粉を含むアクリル系多層構造ポリマー粉体であって、乾燥後の凝固粉の粒径212μm以下の微粉の割合が40質量%であり、かつ、乾燥後の凝固粉の水銀圧入法で測定した孔径5μm以下の空隙体積が単位面積当たり0.7cc以下である。
【0127】
-例3:特公平7-68318号公報に開示されているゴム質重合体-
当該例3のゴム質重合体は、以下の(a)~(g)の要件を具備する多層構造アクリル系重合体である。
すなわち、当該多層構造アクリル系重合体は、
(a)メチルメタクリレート90~99質量%、アルキル基の炭素数が1~8のアルキルアクリレート1~10質量%及びこれらと共重合可能なα,β-不飽和カルボン酸のアリル、メタリル、又はクロチルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるグラフト結合性単量体0.01~0.3質量%からなる、単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体25~45質量%と、
(b)上記最内硬質層重合体存在下に、n-ブチルアクリレート70~90質量%、スチレン10~30質量%及びこれらと共重合可能なα,β-不飽和カルボン酸のアリル、メタリル、又はクロチルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるグラフト結合性単量体1.5~3.0質量%からなる、単量体混合物を重合して得られる軟質層重合体35~45質量%と、
(c)上記最内硬質層重合体及び軟質層重合体の存在下に、メチルメタクリレート90~99質量%と、アルキル基の炭素数が1~8である単量体1~10質量%との混合物を重合して得られる最外硬質層重合体20~30質量%とからなり、
(d)軟質層重合体/(最内硬質層重合体+軟質層重合体)の重量比が0.45~0.57であり、
(e)平均粒子径が0.2~0.3μmである、多層構造アクリル系重合体であって、さらに当該多層構造アクリル系重合体をアセトンにより分別した場合に、
(f)グラフト率が20~40質量%であり、
(g)当該アセトン不溶部の引っ張り弾性率が1000~4000kg/cmである、多層構造アクリル系重合体である。
【0128】
その他、ゴム質重合体としては、以下の粒子が挙げられる。
例えば、特公昭55-27576号公報、特公昭58-1694号公報、特公昭59-36645号公報、特公昭59-36646号公報、特公昭62-41241号公報、特開昭59-202213号公報、特開昭63-27516号公報、特開昭51-129449号公報、特開昭52-56150号公報、特開昭50-124647号公報等に記載の、3~4層構造のアクリル系ゴム粒子等も使用できる。
【0129】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるゴム質重合体は、多層構造を有していることが好ましい。
ゴム質重合体が多層構造である場合、当該ゴム質重合体の層の数は、多ければ多いほど、その弾性が好適な範囲に制御することが可能であるが、ゴム質重合体を含有した場合のフィルム色調等を考慮すると、中でも、三層構造以上の粒子であることが好ましく、三層構造以上のアクリル系ゴム粒子であることがより好ましい。
ゴム質重合体として、上記三層構造以上のゴム粒子を用いることにより、本実施形態のフィルムの成型加工時の熱劣化や、加熱によるゴム質重合体の変形が抑制され、フィルムの耐熱性や透明性が維持される傾向にある。
【0130】
三層構造以上のゴム質重合体とは、ゴム状ポリマーからなる軟質層と、ガラス状ポリマーからなる硬質層とが積層した構造のゴム粒子をいい、内側から硬質層(一層目)-軟質層(二層目)-硬質層(三層目)の順に形成された三層構造を有する粒子が好ましい例として挙げられる。
硬質層を最内層と最外層に有することにより、ゴム質重合体の変形が抑制される傾向にあり、中央層に軟質成分を有することにより良好な靭性が付与される傾向にある。
【0131】
三層から構成されるゴム質重合体は、例えば、多層構造グラフト共重合体により形成することができる。当該多層構造グラフト共重合体は、例えば、メチルメタクリレートと当該メチルメタクリレートに共重合可能な単量体とを用いて製造できる。
前記メチルメタクリレートと共重合可能な単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、公知の(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン等の単官能単量体や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン等の多官能性単量体が挙げられる。
上記単量体は、必要に応じて、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0132】
具体的に、ゴム質重合体が三層構造を有するものである場合、最内層を形成する共重合体は、メタクリル酸メチル65~90質量%と、これと共重合可能な他の共重合性単量体10~35質量%とを用いた共重合体であることが好ましい。
そして、共重合体は、屈折率を適切に制御する観点から、上記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の共重合性単量体は、アクリル酸エステル単量体0.1~5質量%と、芳香族ビニル化合物単量体5~35質量%と、共重合性多官能単量体0.01~5質量%とを含むものであることが好ましい。
前記アクリル酸エステル単量体(共重合体中で最内層を形成)としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-へキシルが好ましい。
前記芳香族ビニル化合物単量体としては、メタクリル系樹脂に使用される単量体と同様のものを用いることができるが、好ましくは、最内層の屈折率を調整して本実施形態のフィルムの透明性を良好にする観点から、スチレン又はその誘導体が用いられる。
前記共重合性多官能単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリアリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では(メタ)アクリル酸アリルがより好ましい。
【0133】
三層から構成されるゴム質重合体の二層目、すなわち軟質層は、ゴム弾性を示すゴム状共重合体であり、フィルムに優れた衝撃強度を付与するために重要である。
二層目は、例えば、アルキルアクリレートと当該アルキルアクリレートと共重合可能な単量体との共重合体や、共重合性多官能単量体の重合体により形成することが好ましい。
アルキルアクリレートとしては、特に限定されず、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用して用いることができ、特に、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
また、これらのアルキルアクリレートと共重合可能な他の単量体としては、特に限定されず、一般的な単量体を用いることができるが、二層目の屈折率を調整してメタクリル系樹脂に合わせることにより透明性を良好にする観点からは、スチレン又はその誘導体が好ましく用いられる。
前記共重合性多官能単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリアリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
ゴム質重合体が三層構造を有する場合において、前記最外層は、メタクリル酸メチル70~100質量%と、これと共重合可能な他の共重合性単量体0~30質量%とを含む共重合体により形成されていることが好ましい。
前記最外層を形成するメタクリル酸メチルと共重合可能な他の共重合性単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-へキシルが好ましいものとして挙げられる。
【0135】
ゴム質重合体が三層から構成される場合、ゴム質重合体は、架橋構造を有するゴム状重合体を含んでいてもよく、当該架橋構造を有するゴム状重合体は、二層目に含まれていることが好ましい。
ゴム状重合体は多官能性単量体を共重合してなり、重合体において架橋構造を形成させることができる。ゴム状重合体中の架橋構造は、適度なゴム弾性を与え、単量体混合物に溶解することなく、分散状態でその形態を保持することができる。
架橋構造を形成するための多官能性単量体としては、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートと共重合可能な化合物を用いることができる。
多官能性単量体の使用量は、二層目全体に対して0.1~5質量%であることが好ましい。かかる使用量が0.1質量%以上であると、十分な架橋効果が得られ、5質量%以下であると、適度な架橋強度がと優れたゴム弾性効果が得られる。さらに、多官能性単量体の使用量が0.1質量%以上であると、キャスト重合工程を実施した場合においても、ゴム状重合体が溶解又は膨潤することなく、ゴム状弾性体の形態を保持することができる。
【0136】
さらに、二層目には、後述する三層目の重合体との親和性を緊密にするグラフト結合を形成するための多官能グラフト剤を使用することが好ましい。
多官能グラフト剤とは、異なる官能基を有する多官能単量体であり、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のアリルエステル等が挙げられ、中でも、アリルアクリレート、アリルメタクリレートが好ましい。
多官能グラフト剤の使用量は、二層目全体に対して0.1~3質量%の範囲であることが好ましい。多官能グラフト剤の使用量を0.1質量%以上とすることにより、十分なグラフト効果が得られ、3質量%以下とすることによりゴム弾性の低下を防止できる。
【0137】
三層目(最外層)の重合に際しては、メタクリル系樹脂との親和性を良好とするために、連鎖移動剤を用いて分子量を調整することもできる。
【0138】
また、本実施形態のフィルムの透明性を良好にするためには、分散されたゴム質重合体とメタクリル系樹脂との屈折率を合致させる必要がある。しかしながら、上述したように、二層目において、アルキルアクリレートを主成分として使用した場合、二層目の屈折率を、メタクリル系樹脂と完全に一致させることが極めて困難となる。屈折率を合わせるために、例えば、二層目において、アルキルアクリレートとスチレン又はその誘導体とを共重合した場合、ある温度領域では屈折率が略等しくなり透明性は向上するものの、温度を変化させると屈折率のズレが生じ透明性は悪化する。
これを回避する手段として、メタクリル系樹脂とほぼ屈折率が一致している一層目を設ける方法が挙げられる。また、二層目の厚みを小さくすることも、本実施形態のフィルムの透明性の悪化を阻止する上で有効な方法となる。
【0139】
ゴム質重合体の平均粒子径は、本実施形態のフィルムに衝撃強度を付与する観点、表面平滑性の観点、及び所望のフィルム膜厚を得る観点から、0.03~1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.7μmであり、さらに好ましくは0.05~0.5μm、さらにより好ましくは0.05~0.4μm、よりさらに好ましくは0.05~0.3μmである。
ゴム質重合体の平均粒子径が0.03μm以上であると、本実施形態のフィルムにおいて十分な衝撃強度が得られる傾向があり、1μm以下であると、本実施形態のフィルムの表面に、細かなさざ波状の欠陥が現れることを防止して鏡面性が得られ、さらに、加熱成型した場合に、延伸された部分において表面光沢の低下を抑制でき、透明性が確保できる。
【0140】
ゴム質重合体の平均粒子径の測定方法は、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、以下の(1)、(2)に示す方法が挙げられる。
(1)メタクリル系樹脂組成物の成型体の一部を丸鋸にて切り出した後、RuO(ルテニウム酸)染色超薄切片法による観察用の試料を作製し、(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡(機種:H-600型)を使用して染色されたゴム粒子断面を観察し、その後撮影を行う。高倍率にプリントした代表的な粒子20個の直径をスケールにて測定し、粒子の直径の平均値を求めることで、ゴム粒子の平均粒子径を求める。
(2)ゴム質重合体の乳化液をサンプリングして、固形分500ppmになるように水で希釈して、UV1200V分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて波長550nmでの吸光度を測定し、この値から、透過型電子顕微鏡写真より粒子径を計測したサンプルについて、同様に吸光度を測定して作成した検量線を用いて平均粒子径を求める。
上記(1)、(2)の測定方法においては、いずれもほぼ同等の粒子径測定値を得ることができる。
【0141】
メタクリル系樹脂の屈折率とゴム質重合体の屈折率との差は、本実施形態のフィルムにおける、透明性の観点、及び透明性の温度依存性の観点から、0.03以下であることが好ましく、より好ましくは0.025以下、さらに好ましくは0.02以下である。
【0142】
ゴム質重合体の製造方法としては、乳化重合が挙げられる。
具体的には、ゴム質重合体が上述したように、三層から構成される場合、乳化剤及び重合開始剤の存在下、初めに一層目の単量体混合物を添加して重合を完結させ、次に二層目の単量体混合物を添加して重合を完結させ、次いで三層目の単量体混合物を添加して重合を完結させることにより、容易にゴム質重合体(粒子)をラテックスとして得ることができる。
このゴム質重合体はラテックスから塩析、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の方法によって粉体として回収することができる。
ゴム質重合体が、三層から構成される重合体である場合、三層目に硬質層を設けることで、ゴム質重合体の粒子同士の凝集を回避することができる。
【0143】
-その他の樹脂-
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、上述したメタクリル系樹脂、ゴム質重合体以外に、その他の樹脂を組み合わせて含有してもよい。
当該その他の樹脂としては、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に求められる特性を発揮できるものであれば、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。
使用可能な当該熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、AS樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性向上の観点から好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は、耐衝撃性向上の観点から好ましく、また、ポリエステル樹脂は、耐薬品性向上の観点から好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は、難燃性向上の観点から好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性付与、耐衝撃性付与や光学特性の調整が必要な場合に好ましい。さらに、アクリル系樹脂は、前述のメタクリル系樹脂との相溶性が良好であり、透明性を保持したままで、流動性、耐衝撃性等の特性を調整する場合に好ましい。
前記各種熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いても、2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
--アクリル系樹脂--
本実施形態のメタクリル系樹脂に、当該メタクリル系樹脂とは異なるアクリル系樹脂を組み合わせて使用する場合に、当該アクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体単位を形成するために用いる単量体としては、下記一般式(11)で表される単量体が好適に用いられる。
【0145】
【化11】
一般式(11)中、Rは、メチル基である。
また、Rは、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基であり、基はその炭素上に水酸基を有していてもよい。
【0146】
一般式(11)に示すメタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられ、入手しやすさ等の観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
前記メタクリル酸エステル単量体単位は、耐熱性、熱安定性及び流動性のバランスを考慮すると、アクリル系樹脂を100質量%として、80~99.5質量%含まれていてよく、好ましくは85~99.5質量%、より好ましくは90~99質量%、さらに好ましくは92~99.3質量%、さらにより好ましくは92~99質量%、よりさらに好ましくは94~99質量%含まれる。
【0148】
前記アクリル系樹脂は、前記メタクリル酸エステル単量体単位と、当該メタクリル酸エステル単量単位に共重合可能な他のビニル系単量体単位を含む。
【0149】
前記アクリル系樹脂に含まれる、前記メタクリル酸エステル単量単位に共重合可能な他のビニル系単量体単位を形成するために用いる単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(12)で表されるアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
【化12】
一般式(12)中、Rは、水素原子であり、Rは、炭素数が1~18のアルキル基である。
【0150】
メタクリル酸エステル単量単位に共重合可能な他のビニル系単量体単位を形成するために用いる単量体としては、上記アクリル酸エステル単量体以外に、アクリル酸やメタクリル酸等;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びこれらのエステル;スチレン系単量体(例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等)、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0151】
特に、本実施形態のメタクリル系樹脂において、耐候性、耐熱性、流動性、熱安定性を高める観点から、メタクリル酸エステル単量単位に共重合可能な他のビニル系単量体単位を形成するために用いる単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸 n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく、より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルであり、さらに入手しやすさの観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがさらに好ましい。
上記ビニル系単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0152】
前記アクリル系樹脂中における、メタクリル酸エステル単量単位に共重合可能な他のビニル系単量体単位を形成するために用いる単量体の含有量は、メタクリル系樹脂組成物とした際の特性を損なわない範囲で適宜選択できるが、流動性、耐熱性、熱安定性の観点から、アクリル系樹脂を100質量%として、0.5~20質量%であり、好ましくは0.5~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは0.7~8質量%であり、さらにより好ましくは1~8質量%であり、よりさらに好ましくは1~6質量%である。
【0153】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、メタクリル樹脂の耐熱性、加工流動性、熱安定性を考慮して、所望の耐熱性、流動性、熱安定性となるように適宜選択すればよいが、2万~30万であることが好ましく、より好ましくは2万~25万、さらに好ましくは5万~25万、とりわけ好ましくは7万~23万である。
なお、前述したメタクリル系樹脂とアクリル系樹脂との混合メタクリル系樹脂の重量平均分子量は、機械的強度、耐溶剤性及び流動性の観点から、6.5万以上30万以下であることが好ましく、より好ましくは6.5万以上25万以下であり、さらに好ましくは7万以上23万以下である。
また、アクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、流動性、機械特性等の特性のバランスを考慮して適宜選択すればよいが、1.5~7であることが好ましく、より好ましくは1.5~5、さらに好ましくは1.5~4である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象であるメタクリル系樹脂の試料の重量平均分子量及び数平均分子量、ピーク分子量を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0154】
アクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されることなく、メタクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体を用い、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法により製造できる。アクリル系樹脂の製造には、好ましくは塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法が用いられ、より好ましくは溶液重合法、懸濁重合法であり、さらに好ましくは懸濁重合法が用いられる。
【0155】
前述の各種熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いても、2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物において、上述したメタクリル系樹脂と、前記その他の樹脂とを組み合わせて使用する場合、本発明の効果を発現できる範囲であれば特に限定されないが、特性を付与する効果を考慮して、その他の樹脂の配合割合は、前述のメタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計量100質量%に対して、(i)その他の樹脂としてアクリル系樹脂を配合する場合は、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以下であり、また、(ii)その他の樹脂としてアクリル系樹脂以外の樹脂を配合する場合は、前述のメタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計量100質量%に対して、50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは45質量%であり、さらに好ましくは40質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下である。
また、その他の樹脂を配合するときの特性付与効果を考慮すると、その他の樹脂の配合量の下限値としては、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上である。
その他の樹脂の種類や含有量は、その他の樹脂と組み合わせて使用する場合に期待される効果に応じて、適宜選択することができる。
【0157】
本実施形態において、メタクリル系樹脂と、その他の樹脂とを組み合わせて使用する場合、その他の樹脂としては、メタクリル酸エステル単量体単位を少なくとも80~99.5質量%含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が2万~30万であるアクリル系樹脂が好適に用いられる。
この場合、混合系の樹脂を、色調の観点から、メタクリル系樹脂を10~99質量%、アクリル系樹脂を90~1質量%含むものとすることが好ましく、より好ましくはメタクリル系樹脂を15~95質量%、アクリル系樹脂を85~5質量%含むもの、さらに好ましくはメタクリル系樹脂を20~80質量%、アクリル系樹脂を80~20質量%含むものである。
【0158】
-添加剤-
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル);難燃剤(例えば、有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等);難燃助剤(例えば、酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等);硬化剤(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシレンジアミン、m-フェヒレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等のアミン類や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、液状ポリメルカプタン、ポリサルファイド等のポリメルカプタン、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデシル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水クロレンディック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)等の酸無水物等);硬化促進剤(2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、テトラメチルヘキサンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスファインテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアミンテトラフェニルボレート等のボロン塩、1,4-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン等のキノイド化合物等);帯電防止剤(例えば、ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩系、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体等);導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤(アルコール、及びアルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等);結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸、及びその金属塩、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド類等);衝撃付与剤;摺動性改良剤(低分子量ポリエチレン等の炭化水素系、高級アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル又は部分エステル、脂肪酸とポリグリコールとのフルエステル又は部分エステル、シリコーン系、フッ素樹脂系等);相溶化剤;核剤;フィラー等の強化剤;流動調整剤;染料(ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等の染料);増感剤;着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタリシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等の有機系顔料、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属メッキやスパッタリングで被覆したもの等のメタリック顔料等);増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、さらにはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等);消泡剤(シリコーン系消泡剤、界面活性剤やポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤等);カップリング剤;光拡散性微粒子;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。
【0159】
--光拡散性微粒子--
前記光拡散性微粒子としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、ガラスビーズ等の無機微粒子、スチレン架橋ビーズ、MS架橋ビーズ、シロキサン系架橋ビーズ等の有機微粒子等が挙げられる。また、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、MS樹脂、環状オレフィン樹脂等の透明性の高い樹脂材料からなる中空架橋微粒子及びガラスからなる中空微粒子等も光拡散性微粒子として使用できる。
前記無機微粒子としては、拡散性、入手のしやすさの観点から、アルミナ及び酸化チタン等がより好ましい。
また、光拡散性微粒子は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0160】
ここで、光拡散性微粒子の屈折率は、1.3~3.0が好ましく、より好ましくは1.3~2.5、さらに好ましくは1.3~2.0である。屈折率が1.3以上であると、本実施形態のフィルムにおいて実用上十分な散乱性が得られ、3.0以下であると、本実施形態のフィルムが、ランプ近傍の部材に用いられた際、ランプ近傍での散乱を抑制し、輝度ムラや出射光色調のムラの発生を効果的に防止することができる。
なお、前記屈折率とは、D線(589nm)に基づく温度20℃での値である。光拡散性微粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、光拡散性微粒子を、屈折率を少しずつ変化させることのできる液体に浸し、液体の屈折率を変化させながら光拡散性微粒子界面を観察し、光拡散性微粒子界面が不明確になった時の液体の屈折率を測定するという方法が挙げられる。なお、液体の屈折率の測定には、アッベの屈折計等を用いることができる。
【0161】
また、前記光拡散性微粒子の平均粒子径は、0.1~20μmが好ましく、より好ましくは0.2~15μm、さらに好ましくは0.3~10μm、さらにより好ましくは0.4~5μmである。
平均粒子径が20μm以下であると後方反射等による光損失が抑えられ、入光した光を効率的に発光面側に拡散させることができるため好ましい。また、平均粒子径が0.1μm以上であると出射光を拡散させることが可能となり、所望の面発光輝度、拡散性を得ることができるため好ましい。
【0162】
また、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中の光拡散性微粒子の含有量は、光拡散効果の発現の観点、面発光の均一性の観点から、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.0001~0.03質量部が好ましく、より好ましくは0.0001~0.01質量部である。
【0163】
--熱安定剤--
前記熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。本実施形態のメタクリル系樹脂は、溶融押出や、射出成形、フィルム成型用途等、様々な用途で好適に使用される。加工の際に受ける熱履歴は加工方法により異なるが、押出機のように数十秒程度から、肉厚品の成型加工やシート成型のように数十分~数時間の熱履歴を受けるものまで様々である。
長時間の熱履歴を受ける場合、所望の熱安定性を得るために、熱安定剤量添加量を増やす必要がある。熱安定剤のブリードアウト抑制やフィルム製膜時のフィルムのロールへの貼りつき防止の観点から、複数種の熱安定剤を併用することが好ましく、例えば、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
これらの酸化防止剤は、一種又は二種以上を併用してしてもよい。
【0164】
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル等が挙げられる。
特に、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルが好ましい。
【0165】
また、前記熱安定剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤は、市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF社製)、アデカスタブAO-60(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO-80(3、9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA-80(Sumilizer GA-80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。
これらの市販のフェノール系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0166】
また、前記熱安定剤としてのリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、テトラキス(2,4-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスフォナイト、4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。
さらに、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガフォス168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF製)、イルガフォス12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、BASF製)、アデカスタブ329K(ADK STAB-229K、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36(ADK STAB PEP-36、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36A(ADK STAB PEP-36A、ADEKA製)、アデカスタブPEP-8(ADK STAB PEP-8、ADEKA製)、アデカスタブHP-10(ADK STAB HP-10、ADEKA製)、アデカスタブ2112(ADK STAB 2112、ADEKA社製)、アデカスタブ1178(ADKA STAB 1178、ADEKA製)、アデカスタブ1500(ADK STAB 1500、ADEKA製)Sandstab P-EPQ(クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP:4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール、住友化学製)、HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、三光株式会社製)等が挙げられる。
これらの市販のリン系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点から、イルガフォス168、アデカスタブPEP-36、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブHP-10、アデカスタブ1178が好ましく、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブPEP-36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0167】
また、前記熱安定剤としての硫黄系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2、4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(イルガノックス1726、BASF社製)、イルガノックス1520L、BASF社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(アデカスタブAO-412S、ADEKA社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(ケミノックスPLS、ケミプロ化成株式会社製)、ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオネート(AO-503、ADEKA社製)等が挙げられる。
これらの市販の硫黄酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点、取り扱い性の観点から、アデカスタブAO-412S、ケミノックスPLSが好ましい。
これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0168】
熱安定剤の含有量は、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0169】
--潤滑剤--
前記潤滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、アルコール系滑剤等が挙げられる。
【0170】
前記潤滑剤として使用可能な脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の炭素数12~32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールとの複合エステル化合物等を用いることができる。このような脂肪酸エステル系滑剤としては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12-ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート等を挙げることができる。
これらの脂肪酸エステル系滑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、理研ビタミン社製リケマールシリーズ、ポエムシリーズ、リケスターシリーズ、リケマスターシリーズ、花王社製エキセルシリーズ、レオドールシリーズ、エキセパールシリーズ、ココナードシリーズが挙げられ、より具体的にはリケマールS-100、リケマールH-100、ポエムV-100、リケマールB-100、リケマールHC-100、リケマールS-200、ポエムB-200、リケスターEW-200、リケスターEW-400、エキセルS-95、レオドールMS-50等が挙げられる。
【0171】
脂肪酸アミド系滑剤についても、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸アミド系滑剤としては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド;m-キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド等を挙げることができる。
これらの脂肪酸アミド系潤滑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、ダイヤミッドシリーズ(日本化成社製)、アマイドシリーズ(日本化成社製)、ニッカアマイドシリーズ(日本化成社製)、メチロールアマイドシリーズ、ビスアマイドシリーズ、スリパックスシリーズ(日本化成社製)、カオーワックスシリーズ(花王社製)、脂肪酸アマイドシリーズ(花王社製)、エチレンビスステアリン酸アミド類(大日化学工業社製)等が挙げられる。
【0172】
脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩を指し、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、2塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム等が挙げられ、その中でも、得られる透明樹脂組成物の加工性が優れ、極めて透明性に優れたものとなることから、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
市販品としては、一例をあげると、堺化学工業社製SZシリーズ、SCシリーズ、SMシリーズ、SAシリーズ等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩を使用する場合の配合量は、透明性保持の観点から、0.2質量%以下であることが好ましい。
【0173】
上記潤滑剤は、1種単独で用いてもいいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0174】
使用に供される潤滑剤としては、分解開始温度が200℃以上であるものが好ましい。分解開始温度はTGAによる1%減量温度によって測定することができる。
【0175】
潤滑剤の含有量は、潤滑剤としての効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトの発生やスクリューの滑りによる押出不良等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。上記範囲の量で添加すると、潤滑剤添加による透明性の低下を抑制されるうえ、フィルム製膜時に金属ロールへの貼りつきが抑制される傾向にあるうえ、プライマー塗布等のフィルムへの二次加工後の長期信頼性試験において剥がれ等の問題が出難いため、好ましい。
【0176】
--紫外線吸収剤--
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
【0177】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
【0178】
ベンゾトリアジン系化合物としては、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
その中でも、非晶性の熱可塑性樹脂、特にアクリル樹脂と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン骨格(「アルキルオキシ」は、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等の長鎖アルキルオキシ基を意味する)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。
【0179】
紫外線吸収剤としては、特に、樹脂との相溶性、加熱時の揮散性の観点から、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましく、また、紫外線吸収剤自体の押出加工時加熱による分解抑制の観点から、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。
【0180】
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0181】
紫外線吸収剤は、通常、紫外光を吸収し、200~380nmの透過を抑えるために添加するが、薄肉のフィルム等では多量に添加する必要があるうえ、一種の紫外線吸収剤のみでは効果的に透過を抑えることができない。少量で効率的に透過を抑えるためには、200~315nm波長に吸収極大を有する化合物と315~380nm波長に吸収極大を有する化合物を二種併用することが好ましい。例えば、280~300nmの吸収極大を有する、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(株式会社ADEKA製、LA-46)と、350~380nmの吸収極大を有する、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)1,3,5-トリアジン(BASF社製、チヌビン460)、ヒドロキシフェニルトリアジン系のチヌビン477(BASF社製)、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(株式会社ADEKA製、LA-F70)からなる群から選ばれる少なくとも一種とを併用することが好ましい。
【0182】
また、前記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
前記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
【0183】
前記紫外線吸収剤の配合量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、及び成型加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であればよいが、多量に入れて過ぎた場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれもあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下、よりさらに好ましくは2質量部以下であり、さらにより好ましくは0.01~1.8質量部である。
【0184】
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の特性について詳述する。
【0185】
<重量平均分子量、分子量分布>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、8万~22万である。メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量を前記範囲とすることにより、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上である。また、重量平均分子量は、成型加工時の流動性確保の観点から、好ましくは22万以下、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは18万以下、よりさらに好ましくは17万以下である。
また、メタクリル系樹脂組成物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスを考慮すると、1.5~5であることが好ましい。より好ましくは1.5~4.5、さらに好ましくは1.6~4、さらにより好ましくは1.6~3、よりさらに好ましくは1.5~2.5である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法は、メタクリル系樹脂についての前述のとおりとしてよい。
【0186】
<特定の分子量範囲の成分の割合>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量が、加工流動性の向上、成型時のシルバーストリークスと呼ばれる銀状痕等の成型品の外観不良の低減、フィルム製膜時のロールへの貼り付き防止の観点から、0.1~5.0質量%であることが好ましい。
上記含有量を0.1質量%以上とすることで、加工流動性を向上させることができる。下限値は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、上記含有量を5.0質量%以下とすることで、成型時のシルバーストリークスを低減することができる等、外観不良を低減することができ、さらには、成型時の金型離れを改善し、フィルム成膜時のロールへの貼り付き性を抑制し、延伸時にフィルムを挟む際に割れの発生を抑制することができる。上限値は、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量は、メタクリル系樹脂についての前述のとおりとしてよい。
【0187】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物においては、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
上記含有量を10.0~25.0質量%とすることで、フィルム成型加工時の筋ムラ発生を抑制することができるうえ、フィルム成型時にロールへの貼り付き性が改善される。そして、加工流動性と、筋ムラの抑制・タッチロールへの貼り付き抑制といった加工時の特性をバランスよく付与する観点から、下限値は、好ましくは12.0質量%以上、より好ましくは13.0質量%であり、また、上限値は、より好ましくは24.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量は、メタクリル系樹脂についての前述のとおりとしてよい。
【0188】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物においては、前述の重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、重量平均分子量が5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)が、熱安定性及び加工性のバランスを良好なものとする観点から、2.5~8.5であることが好ましい。
高分子量体と低分子量体の存在比率を見た場合、加熱加工時における高分子量体と低分子量体との間での粘度差の影響により、低分子量体比率が多いと、加工流動性には優れているものの、フィルム加工時にロールへの貼り付き性が高くなる傾向にある一方で、高分子量体比率が高いと、フィルム加工時に筋ムラが発生しやすくなる傾向がある。
両者の特性をバランスよく付与したうえで、より貼り付き性を改善したい場合は、上記割合は、3.0以上とすることが好ましく、より好ましくは3.5以上である。一方で、フィルム加工時の筋ムラをより改善したい場合は、上記比率は、8.0以下であることが好ましく、より好ましくは7.5以下である。
【0189】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度は、耐熱性を十分に得る観点から、120℃以上であることが好ましく、より好ましくは121℃以上、さらに好ましくは122℃以上、さらにより好ましくは123℃以上、よりさらに好ましくは124℃以上、特に好ましくは125℃以上である。
なお、ガラス転移温度は、メタクリル系樹脂についての前述のとおりとしてよい。
【0190】
特に、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、
メタクリル酸エステル単量体単位(A):50~97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0~20質量%とを含むメタクリル系樹脂と、その他の樹脂とを含み、
下記条件(1)~(4)を満たす
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、8万~22万である。
(2)前記(B)構造単位の含有量が、前記(B)構造単位と前記(C)単量体単位との合計量を100質量%として、45~100質量%である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量が、10.0~25.0質量%である。
(4)メタクリル系樹脂とその他の樹脂とにおいて、メタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計を100質量%として、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~18質量%を含む。
ことが好ましい。
【0191】
条件(4)について、樹脂組成物の耐熱性と光学特性、熱安定性とのバランスを考慮すると、メタクリル系樹脂とその他の樹脂とにおいて、メタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計を100質量%としたときの、主鎖に環構造を有する構造単位(B)は、より好ましくは3~15質量%であり、さらに好ましくは3~14質量%である。
【0192】
<耐熱性>
耐熱性の指標としては、ガラス転移温度を用いることができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度は、実使用時の耐熱性の観点から、120℃以上であることが好ましく、より好ましくは121℃以上、さらに好ましくは122℃以上、さらにより好ましくは123℃以上、よりさらに好ましくは124℃以上、特に好ましくは125℃以上である。
なお、ガラス転移温度は、ASTM-D-3418に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
【0193】
<熱安定性>
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いてフィルムを製造する場合、成型機内で樹脂が溶融状態で滞留する場合がある。その際、高温下で長時間滞留することになるため、樹脂材料が熱分解しにくいこと、すなわち熱安定性が要求される。
また、本実施形態のフィルムを薄肉にする必要がある場合、高温で成型を行うことが必要となり、高い熱安定性が求められる。
熱安定性の指標としては、所定温度で所定時間保持したときの重量減少割合、及び所定割合だけ重量減少したときの温度(熱分解開始温度)を用いることができる。
【0194】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物では、具体的には、熱重量測定(TGA)において、約290℃で30分保持した時の重量減少割合が、5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下である。
なお、290℃、30分間保持時の重量減少割合については、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0195】
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の熱分解開始温度(1%重量減少時の温度)(℃)は、290℃以上であることが好ましい。より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは310℃以上、さらにより好ましくは320℃以上、よりさらに好ましくは325℃以上である。
なお、熱分解開始温度は、例えば、昇温させた際に1%重量が減じる温度である1%重量減少温度(熱分解開始温度)としてよく、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0196】
本実施形態のフィルムの成型工程において、熱分解を防止し、実用上優れた熱安定性を有するものとするためには、本実施形態のフィルムに含まれるメタクリル系樹脂において、主鎖に環構造を有する構造単位(B)の割合を増加させ、相対的にメタクリル酸エステル系単量体単位(A)を共重合させる量を減少させることが効果的である。但し、(B)構造単位の(A)単量体単位に対する割合が高すぎると、フィルムとして求められる成型流動性、表面硬度等の特性が得られないおそれがある。そのため、これらの特性のバランスを考慮して、(A)単量体単位及び(B)構造単位の割合を定める必要がある。
また、主鎖に環構造を有する構造単位(B)の共重合割合を増やすことは、高温に晒された場合の解重合による分解反応を抑制する意味では効果的であり、(B)構造単位のメ(A)単量体単位に対する割合を高めると、熱安定剤の量を減じても十分な熱安定性を付与することができる。一方で、相対的にメタクリル酸エステル系単量体単位(A)の割合が多いと、高温環境下における熱分解量が増加する。ここで、熱分解抑制の観点から熱安定剤を添加してもよいが、多量に添加し過ぎると、耐熱性の低下を招き、成型時にブリードアウト等の問題も発生することもある。
【0197】
そして、上述したように、メタクリル系樹脂組成物中には、フィルムとして求められる特性を得るため、熱安定剤を含めてもよい。
【0198】
このとき、本実施形態では、熱安定剤の含有量をY(メタクリル系樹脂100質量部に対する含有量(質量部))、メタクリル酸エステル系単量体単位(A)の含有量をP、主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量をQ(いずれも、メタクリル系樹脂100質量%に対する含有量(質量%)をいう。)としたときに、高温下での熱分解抑制、成型加工性、耐熱性のバランスの観点から、含有量Y(質量部)は、0.053×P/Q-0.4以上であることが好ましく、より好ましくは、0.053×P/Q-0.35以上であり、さらに好ましくは、0.053×P/Q-0.3以上であり、さらにより好ましくは、0.053×P/Q-0.27以上であり、よりさらに好ましくは、0.053×P/Q-0.25以上である。
【0199】
(メタクリル系樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂、任意選択的に加えられる、ゴム質重合体、メタクリル系樹脂以外の樹脂であるその他の樹脂、添加剤を、溶融混練することによって、製造することができる。
【0200】
メタクリル系樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。その中でも押出機による混練が、生産性の面で好ましい。混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140~300℃の範囲、好ましくは180~280℃の範囲である。また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
【0201】
(フィルム)
本実施形態のフィルムは、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【0202】
本実施形態のフィルムは、好適には光学フィルムとして用いられる。
【0203】
本実施形態のフィルムの厚みは、光学フィルムとして用いる場合、5~200μmの範囲内であることが好ましい。厚みが5μm以上であれば、実用上十分な強度が確保でき、取り扱い時に容易に破断しにくい。また、厚みが200μm以下であれば、上述した位相差(Re、Rth)及び耐折強度において、良好なバランスとなる。
偏光子保護フィルムとして用いる場合、本実施形態のフィルムの厚みは、5~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましく、10~60μmがさらに好ましい。
透明プラスチック基板として用いる場合、本実施形態のフィルムの厚みは、20~180μmが好ましく、20~160μmがより好ましく、30~160μmがさらに好ましい。
【0204】
以下、本実施形態のフィルムの特性について記載する。
【0205】
<面内位相差Re>
本実施形態に係るフィルムは、面内方向位相差Reの絶対値が、30nm以下であることが好ましい。但し、ここで面内方向位相差Reは、100μm厚に換算して求めた値である。
面内方向位相差Reの絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。
一般に、面内方向位相差Reの絶対値は、複屈折の大小を表す指標である。本実施形態に係るフィルムは、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)の複屈折に対して十分に小さく、光学材料として低複屈折やゼロ複屈折を要求される用途に好適である。
一方、面内方向位相差Reの絶対値が30nmを超える場合、屈折率異方性が高いことを意味し、光学材料として低複屈折やゼロ複屈折を要求される用途には使用できないことがある。また、光学材料(例えば、フィルム、シート等)の機械的強度を向上させるために延伸加工をする場合があるが、延伸加工後の面内方向位相差Reの絶対値が30nmを超える場合は、光学材料として低複屈折やゼロ複屈折材料が得られたことにはならない。
【0206】
<厚み方向位相差Rth>
本実施形態に係るフィルムは、厚み方向位相差Rthの絶対値が、30nm以下であることが好ましい。但し、ここで厚み方向位相差Rthは、100μm厚に換算して求めた値である。
厚み方向位相差Rthの絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。
この厚み方向位相差Rthは、光学材料、特に光学フィルムとしたとき、該光学フィルムを組み込んだ表示装置の視野角特性と相関する指標である。具体的には、厚み方向位相差Rthの絶対値が小さいほど視野角特性は良好であり、見る角度による表示色の色調変化、コントラストの低下が小さい。
本実施形態に係るフィルムは、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)と比較して、光学フィルムとしたときの厚み方向位相差Rthの絶対値が非常に小さいという特徴を有する。
【0207】
<光弾性係数>
本実施形態に係るフィルムは、光弾性係数Cの絶対値が、3.0×10-12Pa-1以下であることが好ましく、2.0×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、1.0×10-12Pa-1以下であることがさらに好ましい。
光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば、化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下記式(i-a)及び(i-b)により定義されるものである。光弾性係数Cの値がゼロに近いほど、外力による複屈折変化が小さいことが判る。
=|Δn|/σ・・・(i-a)
|Δn|=nx-ny・・・(i-b)
(式中、Cは、光弾性係数、σは、伸張応力、|Δn|は、複屈折の絶対値、nxは、伸張方向の屈折率、nyは、面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率、をそれぞれ示す。)
本実施形態に係るフィルムの光弾性係数Cは、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)に比較して十分に小さい。従って、外力に起因した(光弾性)複屈折を生じさせないために複屈折変化を受けにくい。また、成形時の残存応力に起因する(光弾性)複屈折を生じにくいために、成形体内での複屈折分布も小さい。
【0208】
以下、複屈折Δnと延伸倍率Sとの関係について記載する。
本実施形態に係るフィルムは、一軸延伸フィルムとして特性評価した場合に、複屈折Δn(S)と延伸倍率Sとの最小二乗法近似直線関係式(ii-a)において、傾きKの値が下記式(ii-b)を満たすことが好ましい。
Δn(S)=K×S+C・・・(ii-a)
|K|≦0.30×10-5・・・(ii-b)
(式中、Δn(S)は、複屈折、Sは、延伸倍率を示し、ここで、複屈折Δn(S)は、フィルムとして測定した値(上記式(i-b)により求めた値)を100μm厚に換算して求めた値であり、Cは、定数であり、無延伸時の複屈折を示す。)
傾きKの絶対値(|K|)は、0.15×10-5以下であることがより好ましく、0.10×10-5以下であることがさらに好ましい。
ここで、Kの値は、フィルムのDSC測定によりガラス転移温度(Tg)を測定して、(Tg+20)℃の延伸温度、500mm/分の延伸速度で、一軸延伸を行ったときの値である。
一般に、延伸速度を遅くすると複屈折の増加量は小さくなることが知られている。なお、Kの値は、例えば延伸倍率(S)を100%、200%、300%として延伸して得られた一軸延伸フィルムが発現している複屈折(Δn(S))の値をそれぞれ測定し、これらの値を延伸倍率に対してプロットし最小二乗法近似することにより算出することができる。また、延伸倍率(S)とは、延伸前のチャック間距離をL、延伸後のチャック間距離をLとすると、以下の式で表される値である。
S={(L-L)/L}×100(%)
フィルム状又はシート状の成形体では、機械的強度を高めることを目的として延伸加工する場合がある。前述の関係式において、傾きKの値は、延伸倍率(S)に対する複屈折(Δn(S))の変化の大きさを表し、Kが大きいほど延伸に対する複屈折の変化量が大きく、Kが小さいほど延伸に対する複屈折の変化量が小さいことを意味している。
本実施形態に係るフィルムは、傾きKの値が、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)に比較して十分に小さい。従って、既存樹脂が延伸加工時の延伸配向で複屈折が増大するのに対し、延伸加工しても複屈折が増大しにくいという特徴を有する。
【0209】
<屈折率>
本実施形態に係るフィルムの屈折率dblendは、1.48~1.53の範囲であることが好ましい。特に、得られるフィルムを光学フィルムとして使用する場合には、その屈折率dblendが1.48~1.51の範囲であることがより好ましい。屈折率dblendが、この範囲内であれば液晶テレビに用いられる偏光板材料として好適に用いることができる。なお、従来の偏光板材料の屈折率は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂の屈折率が1.49~1.53、トリアセチルセルロース樹脂の屈折率が1.49、環状ポリオレフィン樹脂の屈折率が1.53である。
【0210】
<透明性>
透明性の指標としては、全光線透過率を用いることができる。
本実施形態のフィルムにおける全光線透過率は、用途に応じて適宜最適化すればよいが、透明性の求められる用途で使用される場合は、視認性の観点から、100μm厚みにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。
全光線透過率は高い方が好ましいが、実用上は94%以下でも十分に視認性を確保することができる。
全光線透過率は、例えば、下記実施例の方法により測定することができる。
【0211】
本実施形態のフィルムは、屋外での使用や、液晶テレビでの使用も想定されており、用途によっては紫外線に曝される可能性もある。このとき、紫外線により黄変して透明度が低下する場合があり、フィルムに紫外線吸収剤を添加して抑止する方法を用いることがある。
その場合、100μm厚において380nmの光線透過率は、15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下である。
また、同様に、100μm厚において280nmにおける光線透過率は、15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下である。
【0212】
<成型加工性>
成型加工性は、例えば、フィルム巻き取り用のロールへの貼り付きにくさ等により評価することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により評価することができる。
【0213】
<外観性>
外観性は、例えば、気泡の有無、筋ムラの有無、シルバーストリークスの有無等により評価することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により評価することができる。
外観性の指標の一つである気泡の有無は、例えば、バレル設定温度290℃でフィルムを、例えば、約100μm厚で製膜した際のフィルム100cm当たりに含まれる長径が100μm以上の気泡の個数を、光学顕微鏡を用いて算出して、その個数で評価することができる。
この場合、フィルム表面100cm当たりの気泡の個数は、5個未満であることが好ましく、より好ましくは3個未満、更に好ましくは2個未満である。
【0214】
(フィルムの製造方法)
本実施形態のフィルムは、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いて成型することによって、製造することができる。
【0215】
フィルムの製造方法としては、射出成型、シート成型、ブロー成型、インジェクションブロー成型、インフレーション成型、Tダイ成型、プレス成型、押出成型、発泡成型、キャスト成型等、公知の方法を適用することができ、圧空成型、真空成型等の二次加工成型法も用いることができる。
また、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等の混練機を用いて、メタクリル系樹脂(組成物)を混練製造した後、冷却、粉砕し、さらにトランスファー成型、射出成型、圧縮成型等により成型を行う方法も、フィルムの製造方法の一例として挙げることができる。
【0216】
上記成型後のフィルムは、公知の方法により、延伸されてよい。
フィルムは、機械的流れ方向(MD方向)に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直交する方向(TD方向)に横一軸延伸してもよく、また、ロール延伸とテンター延伸との逐次二軸延伸、テンター延伸による同時二軸延伸、チューブラー延伸による二軸延伸、インフレーション延伸、テンター法逐次二軸延伸等により延伸することによって、二軸延伸してもよい。延伸を行うことによりフィルムの強度を向上させることができる。
特に、テンター法逐次二軸延伸について記載すると、かかる方法では、例えば、単軸又は二軸押出機に、原料樹脂を供給して、溶融混練し、次いで、Tダイより押し出したシートをキャストロール上に導いて、固化する。続いて、押し出したシートをロール式縦延伸機に導入して、機械的流れ方向(MD方向)に延伸した後、縦延伸シートをテンター式横延伸機に導入して、機械的流れ方向に直交する方向(TD方向)に延伸する。このテンター法逐次二軸延伸によれば、延伸倍率を容易にコントロールすることが可能であり、MD方向及びTD方向の配向バランスの取れたフィルムを得ることができる。
【0217】
最終的な延伸倍率は、得られた成型・延伸体の熱収縮率より判断することができる。延伸倍率は、少なくともどちらか一方向に、0.1~400%であることが好ましく、10~400%であることがより好ましく、50~350%であることがさらに好ましい。下限未満の場合、耐折強度が不足する傾向にあり、上限超の場合、フィルム作製過程で破断や断裂が頻発し、連続的に安定的にフィルムが作製できない傾向にある。この範囲に設計することにより、複屈折、耐熱性、強度の観点で好ましい延伸成型体を得ることができる。
【0218】
延伸温度は、Tg-30℃~Tg+50℃であることが好ましい。ここで、Tg(ガラス転移点)とは、フィルムを構成する樹脂組成物についてのものをいう。得られるフィルムにおいて、良好な表面性を得るためには、延伸温度の下限が、好ましくは(Tg-20℃)以上であり、より好ましく(Tg-10℃)以上、さらに好ましくはTg以上、とりわけ好ましくは(Tg+5℃)以上、特に好ましくは(Tg+7℃)以上である。また、延伸温度の上限は、好ましくはTg+45℃以下、さらに好ましくは(Tg+40℃)以下である。
【0219】
なお、本実施形態のフィルムを光学フィルムとして用いる場合、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うことが好ましい。熱処理の条件は、従来公知の延伸フィルムに対して行われる熱処理の条件と同様に適宜選択されてよく、特に限定されるものではない。
【0220】
ここで、本実施形態のフィルムを光学フィルムとして用いる場合には、目的とするフィルムと該フィルムと非接着性の樹脂とを、多層ダイで共押出して、その後、非接着性の樹脂層を取り除いて、目的とするフィルムのみを得る手法を、好適に用いることができる。
この手法は、下記(a)~(c)の観点で好ましい。
(a)非接着性の樹脂層による断熱効果と、膜強度向上の効果とで、製膜安定性を向上できる点。
(b)製膜時に空気中のチリ、浮遊物、ゴミ、添加剤等の気化物、その他の異物がフィルムに付着するのを防ぐ効果がある点。
(c)製膜後の取り扱い時のフィルム表面の傷つき防止、及び、ゴミ等の異物の付着防止の効果がある点。
非接着性の樹脂をアクリル系熱可塑性樹脂の片側のみに適用して共押出ししても、上記(a)~(c)の効果は得られるが、アクリル系熱可塑性樹脂の両側を非接着性の樹脂で挟み込んで共押出しする方が、より高い効果が得られる。
多層ダイで共押出しする非接着性の樹脂の溶解度パラメータの値が、フィルムを構成する樹脂の溶解度パラメータの値と近いと、両樹脂は、相容性が良くなってしまい、ブレンドした場合に混ざり易い傾向にあり、製膜時に共押出しした際に接触する樹脂層同士が接着し易い傾向にある。よって、非接着性の樹脂を選択する場合には、フィルムを構成する樹脂とは、極性が異なり、溶解度パラメータの値の差が大きい、樹脂を選択することが好ましい。
また、共押出し時には、接触する2種の樹脂同士の温度や粘度が大きく異なると、接触する樹脂の界面で層間の乱れを起して、透明性の良好なフィルムが得られなくなる傾向がある。よって、フィルムの主成分であるアクリル系熱可塑性樹脂に対して非接着性の樹脂を選択する際には、ダイ内でのアクリル系熱可塑性樹脂の温度に近い温度で、アクリル系熱可塑性樹脂の粘度と近い粘度を有する、樹脂を選択することが好ましい。
非接着性の樹脂としては、上述した条件を満たせば、多種多様な熱可塑性樹脂が使用可能であるが、好ましくはポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素含有樹脂が挙げられ、より好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくはポリプロピレン系樹脂である。
【0221】
本実施形態のメタクリル系樹脂及び本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、フィルム等の各種成形体の材料として好適に用いることができる。
成形体の用途としては、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、導光棒、レンズ等の自動車部品用途、ハウジング用途、衛生陶器代替等のサニタリー用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ、ヘッドアップディスプレイ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等が挙げられ、また、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等にも用いることができる。また、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
【0222】
本実施形態のメタクリル系樹脂及びその樹脂組成物を用いたフィルム等の各種成形体には、例えば、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をさらに行うこともできる。
【実施例
【0223】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0224】
[原料]
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[メタクリル系樹脂を構成するモノマー]]
・メタクリル酸メチル(MMA)
旭化成ケミカルズ(株)社製(重合禁止剤として中外貿易(株)社製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・N-フェニルマレイミド(N-PMI):株式会社日本触媒製
・N-シクロヘキシルマレイミド(N-CMI):株式会社日本触媒製
・2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA):Combi Bloks社製
・アクリロニトリル(AN)
【0225】
[[有機溶媒]]
・メタキシレン:三井化学株式会社製
・トルエン
【0226】
[[その他]]
・n-オクチルメルカプタン(n-octylmercaptan、NOM):日油(株)社製、連鎖移動剤として使用。
・t-ドデシルメルカプタン:和光純薬株式会社製、連鎖移動剤として使用。
・亜リン酸ジメチル:和光純薬株式会社製。
・パーヘキサC-75(EB):日油株式会社製、純度75%(エチルベンゼン25%入り)、重合開始剤として使用。
・t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート:日油株式会社製、重合開始剤として使用。
・パーヘキサ25B:日油株式会社製、純度90%以上、重合開始剤として使用。
・リン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物:堺化学製、Phoslex A-18、環化縮合の触媒として使用。
【0227】
[[添加剤]]
(a-1)アデカスタブPEP-36A(PEP-36):株式会社ADEKA社製
(a-2)アデカスタブHP-10:株式会社ADEKA社製
(a-3)アデカスタブAO-412S:株式会社ADEKA社製
(a-4)アデカスタブAO-80:株式会社ADEKA社製
(a-5)Irganox1010:BASF社製
(a-6)LA-F70:株式会社ADEKA社製
(a-7)LA-46:株式会社ADEKA社製
(a-8)チヌビン460:BASF社製
(a-9)リケマールH-100:理研ビタミン株式会社製
(a-10)リケスターEW-400:理研ビタミン株式会社製
【0228】
[[その他の樹脂]]
(R-1)スタイラックT8707:旭化成株式会社製
(R-2)下記の手順に従って得られた樹脂
4枚傾斜パドル翼を取り付けた攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、混合液(A)を得た。
次いで、60Lの反応器に、水26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(A)を添加し、さらに、メタクリル酸メチル21900g、アクリル酸メチル560g、ラウロイルパーオキサイド45g、及びn-オクチルメルカプタン54gを予め混合した重合体原料を投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。前記重合体原料を投入してから120分後に発熱ピークが観測された。
その後、92℃に1℃/min速度で昇温した後、60分間約92℃の温度を保持し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。
次に、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去した上で、水分を濾別し、得られたスラリーを脱水してビーズ状ポリマーを得た。得られたビーズ状ポリマーを、pH8~9.5程度に調整した水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、上記と同様に脱水し、更にイオン交換水で洗浄、脱水を繰り返して洗浄し、ポリマー粒子を得た。
当該ポリマーは、GPCで測定した重量平均分子量が10万、ビカット軟化温度が109℃であった。
【0229】
以下、メタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂組成物の特性の測定方法について記載する。
【0230】
(I.メタクリル系樹脂の重量平均分子量の測定)
後述の製造例で製造したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を、下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製、PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0231】
(II.単量体単位の組成の測定)
重合により得られたアクリル系共重合体について、NMR及びFT-IRの測定を実施し、単量体単位及び構造単位の組成を確認した。
NMR:日本電子株式会社製、JNM-ECA500
FT-IR:日本分光社製、IR-410、ATR法(Dura Scope(ATR結晶:ダイヤモンド/ZnSe)、分解能:4cm-1)を用いた。
【0232】
(III.特定の分子量範囲の成分の割合)
上記(I)の分子量測定装置を用いて、分子量500以上1万以下の成分による分画より、重量平均分子量1万以下の成分の含有量とした。また、同様に、重量平均分子量1万超5万以下の成分の含有量を求めた。さらに、重量平均分子量1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、重量平均分子量5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)を算出した。
【0233】
以下、メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、及びフィルムの特性の評価方法について記載する。
【0234】
<1.耐熱性:ガラス転移温度の測定>
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物について、熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、ASTM-D-3418に準拠して測定を行い、中点法によりガラス転移温度(℃)を算出した。評価結果を表1に示す。
【0235】
<2.成型加工性:ロールへの貼り付き防止性>
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を、押出機(プラスチック工学研究所製、φ32mm単軸押出機)(L/D=32、ベント数:1個)を、設定温度:270℃、スクリュー回転数15rpm、ロール回転速度1m/分、ロール温度:(ガラス転移温度-20℃)から(ガラス転移温度+15℃)まで範囲の条件で用いて、約100μm厚のシートに製膜した。
シートは、設定温度を変化させることが可能な第一温調ロール(材質:S45C、ハードクロムメッキ処理、表面粗度0.2S、鏡面仕上げ)を介して、第二ロールに巻き取った。ここで、第一温調ロール及び第二ロールの外径はともに15cmとし、第一温調ロールと第二ロールとの間の距離(両ロールの中心間距離)は24cmとした。第一温調ロールの中心の高さと第二ロールの中心の高さとは同じに設定した。
図2に、本実施形態のメタクリル系樹脂及び樹脂組成物のロールへの貼り付き防止性の評価における、製膜時の第一温調ロール及び第二ロールの周辺の様子を示す。
図2に示す通り、第1温調ロールから第二ロールに向かうシートは、第1温調ロールの最下端から所定距離だけロールの外周に沿って貼り付き、ロールから離反し、その後、ほぼ同径の第二ロールに巻き取られる。図中の実線は、本試験における定常時のフィルムを示しており、ここで、第1温調ロールの最下端と第1温調ロールの断面中心と上記離反点とがなす角度をθ(図2参照)としたとき、定常時における角度θは本試験においては通常40°である。一方、図中の破線は、貼付き時のフィルムを示しており、本試験では、上記角度θが90°である時を貼付き時とする。
このとき、上記角度θが90°に達した時点での第1温調ロールの設定温度を貼付開始温度として、(貼付開始温度-ガラス転移温度)の差温(℃)を観察した。
そして、差温が+7℃以上のものを「◎」、差温が+5℃以上のものを「○」、+5℃未満のものを「×」として、ロールへの貼り付き防止性の評価の指標とした。(貼付開始温度-ガラス転移温度)の差が大きいほど、ロールへの貼り付き防止性が良好であると評価した。評価結果を表1に示す。
【0236】
<3.熱安定性評価>
(3-a)1%重量減少時の温度
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂及び樹脂組成物を用いて、下記装置及び条件で、測定を行った。そして、樹脂及び樹脂組成物の重量が1%減少する時の温度を算出し、熱分解開始温度(1%重量減少時の温度)(℃)とした。評価結果を表1に示す。
測定装置:差動型示差熱天秤 Thermo plus EVO II TG8120、株式会社リガク製
サンプル量:約10mg
測定雰囲気:窒素(100mL/分)
測定条件:100℃で5分保持し、10℃/分で400℃まで昇温しながら、1%重量が減じる点を熱分解開始温度(1%重量減少温度)とした。
(3-b)290℃、30分保持時の分解量
メタクリル系樹脂及び樹脂組成物について、下記設定条件で重量測定を行い、約290℃で30分間保持した際の重量減少割合(%)を算出した。評価結果を表1に示す。
測定装置:差動型示差熱天秤 Thermo plus EVO II TG8120(株式会社リガク製)
サンプル量:約10mg
測定雰囲気:窒素(100mL/分)
測定条件:50℃で2分保持し、20℃/分で200℃まで昇温し、20℃/分で250℃まで昇温し、10℃/分で設定温度284℃まで昇温し、284℃60分間保持し、保持開始から30分間経過後の重量減少割合(%)を算出した。なお、設定温度284℃としたときの測定温度は約290℃となっていた。
【0237】
<4.光学特性>
(4-a)面内位相差(Re)
メタクリル系樹脂及び樹脂組成物について、大塚電子(株)製RETS-100を用いて、回転検光子法により波長400~800nmの範囲における位相差(nm)を測定し、得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。評価結果を表1に示す。
なお、複屈折の絶対値(|Δn|)と面内位相差(Re)は、以下の関係にある。
Re=|Δn|×d
(d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|nx-ny|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率)
【0238】
(4-b)厚み方向位相差(Rth)
メタクリル系樹脂及び樹脂組成物について、王子計測機器(株)製位相差測定装置(KOBRA-21ADH)を用いて、波長589nmにおける位相差(nm)を測定し、得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。評価結果を表1に示す。
なお、複屈折の絶対値(|Δn|)と厚み方向位相差(Rth)は以下の関係にある。
Rth=|Δn|×d
(d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|(nx+ny)/2-nz|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率、nz:面外で延伸方向と垂直な厚み方向の屈折率)
【0239】
なおここで、理想となる、3次元方向すべてについて完全光学的等方性であるフィルムでは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)が共に0となる。
【0240】
(4-c)光弾性係数の測定
メタクリル系樹脂及び樹脂組成物について、Polymer Engineering and Science 1999, 39, 2349-2357に詳細について記載のある、複屈折測定装置を用いて、光弾性係数(Pa-1)を測定した。
具体的には、レーザー光の経路にフィルムの引張り装置(井元製作所製)を配置し、23℃で伸張応力をかけながら、フィルムの複屈折を、大塚電子(株)製RETS-100を用いて、回転検光子法により波長400~800nmの範囲について、測定した。伸張時の歪速度は50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)、試験片幅は6mmで測定を行った。
複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σR)との関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め、下記式に従って光弾性係数(CR)を計算した。計算では、伸張応力が2.5MPa≦σR≦10MPaのデータを用いた。評価結果を表1に示す。
CR=|Δn|/σR
ここで、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|nx-ny|
(nx:伸張方向の屈折率、ny:面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率)
【0241】
(4-d)透明性
(4-d-1)全光線透過率の測定
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂及び樹脂組成物からなるフィルム(約100μm厚)を用いて、ISO13468-1規格に準拠して、全光線透過率の測定を行い、透明性の指標とした。評価結果を表1に示す。
(4-d-2)380nm光線透過率の測定
上記(4-d-1)と同様に、波長380nmの光線について光線透過率の測定を行った。評価結果を表1に示す。
(4-d-3)280nm全光線透過率の測定
上記(4-d-1)と同様に、波長280nmの光線について光線透過率の測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0242】
<5.外観性>
(5-a)気泡の有無
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂及び樹脂組成物を用いて、押出機(プラスチック工学研究所製、φ32mm単軸押出機)(L/D=32、ベント数:1個)を、設定温度:290℃、ロール温度:(ガラス転移温度-10℃)にて、約100μm厚、約12cm幅のフィルムを製造した。使用した樹脂組成物は事前に105℃設定のオーブンにて24時間乾燥させておいた。
製造したフィルムを、温度が安定してから約5分経過後から、約20cmずつ合計10枚切り出した。そして、各フィルムの表面を光学顕微鏡を用いて観察し、フィルム100cm当たりに含まれる長径が100μm以上の気泡の個数を各フィルムについて数えて、当該個数の10枚での平均値を算出した。評価結果を表1に示す。
【0243】
(5-b)筋ムラの有無
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂及び樹脂組成物を用いて、設定温度280℃にて膜厚約100μmのフィルムを製造した。
その際、フィルム表面において、筋ムラの発生していないと判断されたものを「○」、発生していると判断されたものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0244】
<6.総合評価>
上記評価において、フィルム用途に最も適していると判断されるものを「◎」、フィルム用途に適していると判断されるものを「〇」、いずれかで不良が見られ、フィルム用途に適していないと判断されるものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0245】
以下、メタクリル系樹脂の製造例について記載する。
【0246】
[製造例1]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、432.3kgのメタクリル酸メチル(MMA)、33.0kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、84.7kgのN-シクロヘキシルマレイミド(CMI)、450.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して100質量ppm仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC-75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.40kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.30kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.15kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.14kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに2時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から9時間後まで重合反応を行った。
重合反応中、内温は127±2℃で制御した。得られた重合液の重合転化率を測定したところ、MMA単位:94.2質量%、PMI単位:95.9質量%、CMI単位:92.0質量%であった。総じて、重合転化率は94%であった。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られたペレットの重量平均分子量は18万、ガラス転移温度は135℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:79質量%、PMI単位:6質量%、CMI単位:15質量%であった。
なお、製造例1における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0247】
[製造例2]
530.8kgのメタクリル酸メチル(MMA)、19.3kgのN-フェニルマレイミド(N-PMI)、450kgのメタキシレン及び、n-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して200質量ppmとした以外は、製造例1と同様に実施した。
得られたペレットのガラス転移温度は121℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:97質量%、PMI単位:3質量%であった。
【0248】
[製造例3]
380.1kgのメタクリル酸メチル(MMA)、6.1kgのN-フェニルマレイミド(N-PMI)、163.9kgのN-シクロヘキシルマレイミド(N-CMI)450kgのメタキシレン及び、n-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して200質量ppmとした以外は、製造例1と同様に実施した。
得られたペレットのガラス転移温度は145℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:71質量%、PMI単位:1質量%、CMI単位:28質量%であった。
【0249】
[製造例4]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、437.5kgのメタクリル酸メチル(MMA)、46.5kgのN-フェニルマレイミド(N-PMI)、66.0kgのN-シクロヘキシルマレイミド、450kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して100質量ppm仕込み、これに窒素を通じつつ、撹拌しながら120℃まで昇温した。
別途、0.18kgのパーヘキサ25Bと0.73kgのメタキシレンとを混合した開始剤フィード液A、及び0.061kgのパーヘキサ25Bと0.24kgのメタキシレンとを混合した開始剤フィード液Bを調整した。
原料溶液温度が130℃に到達したところで、フィード速度5.5kg/時で開始剤フィード液Aを10分間フィードした。2時間経過後、原料溶液温度を0.5時間かけて115℃に降温し、115℃となった段階で、フィード速度1.8kg/時で開始剤フィード液Bを10分間フィードした(B時間=2.83時間)後、そのまま反応を継続し、合計12時間重合反応を実施して反応を完結させた。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られたペレットのガラス転移温度は132℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:81質量%、N-PMI単位:8質量%、N-CMI単位:11質量%であった。
なお、製造例4における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0250】
[製造例5]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、470.3kgのメタクリル酸メチル(MMA)、34.1kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、45.7kgのN-シクロヘキシルマレイミド(CMI)、450.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して700質量ppm仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC-75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.14kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から8時間後まで重合反応を行った。
重合反応中、内温は127±2℃で制御した。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:86質量%、N-PMI単位:6質量%、N-CMI単位:8質量%であった。
なお、製造例5における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0251】
[製造例6]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、437.5kgのメタクリル酸メチル(MMA)、46.5kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、59.4kgのN-シクロヘキシルマレイミド(CMI)、6.6kgのアクリロニトリル(AN)、450.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して100質量ppm仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら120℃まで昇温した。
別途、0.18kgのパーヘキサ25Bと0.73kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液A、及び0.061kgのパーヘキサ25Bと0.24kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Bを調整した。
原料溶液温度が130℃に到達したところで、フィード速度5.5kg/時で開始剤フィード液Aを10分間フィードした。2時間経過後、反応釜内温度を0.5時間かけて115℃に降温し、115℃となった段階で、フィード速度1.8kg/時で開始剤フィード液Bを10分間フィードした(B時間=2.83時間)後、そのまま反応を継続し、合計13時間重合反応を実施して反応を完結させた。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm二軸脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られたペレットのガラス転移温度は130℃であった。
また、NMR、及びFT-IRより求めた組成は、MMA単位:81質量%、PMI単位:8質量%、CMI単位:10質量%、AN単位:1質量%であった。
なお、製造例6における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0252】
[製造例7]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、492.3kgのメタクリル酸メチル(MMA)、57.8kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、450.0kgのメタキシレンを仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのPHC-75と1.82kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液を調整した。
原料溶液温度が128℃に到達したところで、フィード速度0.05kg/時で開始剤フィード液のフィードを開始し、0.5時間後、フィード量を0.18kg/時に変更して3.5時間フィード、次いで0.52kg/時で2時間フィードの合計6時間かけて開始剤をフィードした後、さらに2時間反応させて、合計8時間かけて重合反応を完結させた。
重合反応中、内温は128±2℃で制御した。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm二軸脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
ガラス転移温度は130℃であった。
また、NMRから求めた組成は、MMA単位:90質量%、PMI単位:10質量%であった。
なお、製造例7における製造方法は、前述の製法の条件(i)、(ii)、(iv)、(v)を満たしていたが、条件(iii)を満たしていなかった。
【0253】
[製造例8]
パドル翼を備えた内容量20Lのステンレス製反応釜に、6.48kgのメタクリル酸メチル(MMA)、0.72kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、7.20kgのトルエン、及び亜リン酸ジメチルを全単量体の総量100質量部に対して1000質量ppm、t-ドデシルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して4000質量ppm仕込み、100rpmで撹拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始した。反応釜内の温度が100℃に達した時点で、反応釜内にt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(全単量体の総量100質量部に対して3000質量ppm)加え、重合温度105~110℃、還流下で、合計15時間、重合反応を行った。
次いで、得られた重合液をシリンダー温度240℃にコントロールしたベント付き42mm二軸押出機に供給し、ベント口より真空脱揮し、押し出されたストランドをペレット化して、透明性耐熱樹脂のペレットを得た。
ガラス転移温度は130℃であり、NMRから求めた組成は、MMA単位:90質量%、N-PMI単位:10質量%であった。
なお、製造例8における製造方法は、前述の製法の条件(i)を満たしていなかった。
【0254】
[製造例9]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、41.0kgのメタクリル酸メチル(MMA)、10.0kgの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(Combi Bloks社製)、50.0kgのトルエンを仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌し液温度を107℃まで昇温した。
別途、0.05kgのPHC-75と0.36kgのトルエンを混合した開始剤フィード液を調製した。
原料溶液温度が107℃に到達したところで、開始剤フィード液のフィードを(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度0.20kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.10kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.08kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.07kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.028kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.026kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応させて、合計8時間かけて重合反応を完結させた。
重合反応中、内温は107±2℃で制御した。得られた重合体溶液に、51gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物を加え、還流下(約90~110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm二軸脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で環化縮合反応及び、脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂の組成は、MMA単位:82質量%、ラクトン環構造単位:17質量%、MHMA単位:1質量%であり、ガラス転移温度は129℃であった。
なお、製造例9における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0255】
[製造例10]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した20Lの反応釜に、4.1kgのメタクリル酸メチル(MMA)、1kgの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(Combi Bloks社製)、連鎖移動剤として全単量体の総量100質量部に対して0.20質量部のn-ドデシルメルカプタン、5kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、撹拌しつつ107℃まで昇温した。
100rpmで撹拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始した。重合槽内の温度が100℃に達した時点で、重合槽内にt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを全単量体の総量100質量部に対して0.15質量部加え、重合温度105~110℃、還流下で15時間、重合反応を行った。得られた重合体溶液に、5.1gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物を加え、還流下(約90~110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で環化縮合反応及び、脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂の組成は、MMA単位:82質量%、ラクトン環構造単位:17質量%、MHMA単位:1質量%であり、ガラス転移温度は129℃であった。
なお、製造例10における製造方法は、前述の製法の条件(i)を満たしていなかった。
【0256】
[製造例11]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、69.1kgのメタクリル酸メチル(MMA)、5.32kgのスチレン(St)、9.57kgのメタクリル酸(MAA)、56.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタン0.105kg(全単量体の総量100質量部に対して1250質量ppm)を仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら117℃まで昇温した。
別途、0.029kgのPH25Bと0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Aと、0.0098kgのPH25Bと0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Bを調整した。
原料溶液温度が117℃に達したところで、フィード速度0.774kg/時で開始剤フィード液Aのフィードを10分間行い、2時間反応させた。その後、フィード速度0.66kg/時で開始剤フィード液Bのフィードを10分間行い(B時間=2.33時間)、さらに9時間反応を継続し、合計11時間20分間、重合反応を実施して、反応を完結させた。
得られた重合液は270℃設定の高温真空室に供給し、未反応物及び溶媒を除去し、6員環酸無水物の生成を行った。
この生成共重合体のNMRによる組成分析の結果、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、6員環酸無水物単位:11質量%であった。
このようにして得た共重合体ペレットの0.5kgを内容積5リットルのオートクレーブに仕込み、次いでN,N-ジメチルホルムアミド3.0kgを投入し、撹拌して溶解した。6員環酸無水物単位量に対して2当量のアンモニアを含む28%アンモニア水を仕込み、150℃で2時間反応させた。
反応液を抜き出し、n-ヘキサン中に投入してポリマーを析出させた。このポリマーを、さらに10torrの揮発炉内で250℃、2時間処理した。
最終的に得られた共重合体は、微黄色透明であり、組成は元素分析による窒素含有量定量、NMR、IRから、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、グルタルイミド系構造単位:11質量%であった。上記操作を繰り返し、評価に必要なペレットを準備した。
得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
なお、製造例11における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(iv)を満たしていたが、条件(v)を満たしていなかった。
【0257】
[製造例12]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、550kgのメタクリル酸メチル(MMA)、450kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して400質量ppm仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC-75と1.82kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液を調整した。原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液のフィードを(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.20kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、合計8時間かけて重合反応を完結させた。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られた樹脂ペレット100質量部に対してモノメチルアミンとして5質量部(40質量%モノメチルアミン水溶液)をバレル温度250℃にてベント付二軸押出機にサイドフィーダーより導入し、イミド化反応を実施した。過剰のメチルアミンや水分は押出機下流側に備え付けたベント口から適宜除去し、グルタルイミド環含有メタクリル樹脂ペレットを得た。
イミド化率は5%、すなわち、得られた共重合体の組成は、MMA単位:95質量%、グルタルイミド系構造単位:5質量%であり、ガラス転移温度は122℃であった。
なお、製造例12における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0258】
[製造例13]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した20Lの反応釜に、6.90kgのメタクリル酸メチル(MMA)、0.53kgのスチレン(St)、0.96kgのメタクリル酸(MA)、5.60kgのトルエン、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して1600質量ppm仕込み、これに窒素を通じつつ、撹拌しつつ107℃まで昇温した。
100rpmで撹拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始した。反応釜内の温度が100℃に達した時点で、重合槽内にt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを全単量体の総量100質量部に対して0.15質量部加え、重合温度105~110℃、還流下で15時間、重合反応を行った。
得られた重合液は270℃設定の高温真空室に供給し、未反応物及び溶媒を除去し、6員環酸無水物の生成を行った。
この生成共重合体のNMRによる組成分析の結果、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、6員環酸無水物単位:11質量%であった。
このようにして得た共重合体ペレットの0.5kgを内容積5リットルのオートクレーブに仕込み、次いでN,N-ジメチルホルムアミド3.0kgを投入し、撹拌して溶解した。6員環酸無水物単位量に対して2当量のアンモニアを含む28%アンモニア水を仕込み、150℃で2時間反応させた。
反応液を抜き出し、n-ヘキサン中に投入してポリマーを析出させた。このポリマーを、さらに10toorの揮発炉内で250℃、2時間処理した。
最終的に得られた共重合体は、微黄色透明であり、組成は元素分析による窒素含有量定量、NMR、IRから、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、グルタルイミド系構造単位:11質量%であった。上記操作を繰り返し、評価に必要なペレットを準備した。
得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
なお、製造例13における製造方法は、前述の製法の条件(i)を満たしていなかった。
【0259】
前述の各製造例により製造したメタクリル系樹脂を用いて、メタクリル系樹脂組成物及びフィルムを製造した。
【0260】
[製造例14]
撹拌装置の付いた容器を用いて、メチルメタクリレート90質量部、N-フェニルマレイミド10質量部、キシレン5質量部を混合し、これに、ラウロイルパーオキサイド0.05質量部及びn-オクチルメルカプタン0.15質量部を加えて、溶解させることによって、モノマー配合液を作製した。
一方、大きさが250mm×300mm、厚さが6mmの2枚のガラス板を準備し、これらの外周近辺を柔軟性のある塩化ビニル製ガスケットで貼りまわして、2枚のガラス板の距離が3.5mmになるようにしたセルを組み立てた。
上述したモノマー配合液を、50torrの減圧下で撹拌しながら、2分間の脱揮操作を行った。その後、減圧を解いて場圧に復し、直ちに前記ガラスセルに注入して、セルを配合液で満たした。
次に、60~65℃に温調した温水槽中で22時間おき、その後、115℃に温調した熱風循環オーブン中で3時間おいた後、室内で静置放冷し、ガラス板を除去し、シート状樹脂を得た。
上記のようにして得られたシート状樹脂を、10mmメッシュの網を取り付けた粗粉砕機(セイシン企業(株)製、オリエントミルVM-42D型機)を用いて粉砕し、その後、粉砕物を500μmの篩にかけることによって微粉を取り除いて、粉砕物を得た。
得られた樹脂の組成は、MMA単位:90質量%、N-PMI単位:10質量%であった。
なお、製造例14における製造方法は、前述の製法の条件(i)を満たしていなかった。
【0261】
[製造例15]
0.0288kgのt-ドデシルメルカプタンの代わりに、n-ドデシルメルカプタンを用いた点以外は、製造例と同様に、樹脂を得た。
得られた樹脂の組成は、MMA単位:90質量%、N-PMI単位:10質量%であった。
なお、製造例15における製造方法は、前述の製法の条件(i)を満たしていなかった。
【0262】
[製造例16]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、467.0kgのメタクリル酸メチル(MMA)、55.0kgのN-フェニルマレイミド(PMI)、27.0kgのスチレン(St)、450.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタンを全単量体の総量100質量部に対して1000質量ppm仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC-75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.14kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から8時間後まで重合反応を行った。
重合反応中、内温は127±2℃で制御した。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:85質量%、N-PMI単位:10質量%、スチレン単位5質量%であった。
なお、製造例16における製造方法は、前述の製法の条件(i)~(v)を満たしていた。
【0263】
(実施例1)
製造例1で得られた樹脂100質量部に対し、PEP-36:0.15質量部、及びIrganox1010:0.05質量部をハンドブレンドによりブレンドし、東芝機械株式会社製のベント付(3か所)Φ26mm二軸押出機TEM-26SS(L/D=48、4穴ダイス使用、ダイス設定温度280℃、バレル設定温度280℃;出口側、ホッパー横バレル設定温度230℃)にて、吐出量10kg/時、回転数150rpmにて溶融混練を行って、ペレット状のメタクリル系樹脂組成物を製造した。
また、得られたペレットを、押出機(プラスチック工学研究所製、φ32mm単軸押出機)(L/D=32、ベント数:1個)を、設定温度:270℃、ロール温度:(ガラス転移温度-10℃)にて、約100μm厚フィルムを製造した。
得られた樹脂組成物ペレット及びフィルムを用いて、上記物性評価を行った。
メタクリル系樹脂及び添加剤の配合量等の条件の詳細、及び評価結果を、表1に示す。
【0264】
なお、特に、実施例1で得られたペレットを用いて4mm厚の試験片を作製し、4mm厚の試験片についてISO179/1eU規格に準拠してシャルピー衝撃強さ(ノッチなし)を測定したところ、15kJ/mであった。
また、実施例1で得られたフィルムの熱安定性を、前述の(3-a)及び(3-b)に記載の方法で測定したところ、1%重量減少時の温度が330℃、290℃で30分保持した際の重量減少割合は1.9%であった。
【0265】
(実施例2~16、比較例1~5)
表1に記載の樹脂及び添加剤を用いて、実施例1の方法と同様の方法で造粒を実施し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。なお、添加剤未添加のものは、添加剤を添加せずに造粒を実施した。
【0266】
(実施例17)
製造例10で得られた樹脂95質量部に対し、スタイラックAS T7807を5質量部添加剤をハンドブレンドによりブレンドし、東芝機械株式会社製のベント付(3か所)Φ26mm二軸押出機TEM-26SS(L/D=48、4穴ダイス使用、ダイス設定温度270℃、バレル設定温度270℃;出口側、投入ホッパー横バレル設定温度230℃)にて、吐出量10kg/時、回転数150rpmにて溶融混練を行って、ペレット状のメタクリル系樹脂組成物を製造した。
また、得られたペレットを、押出機(プラスチック工学研究所製、φ32mm単軸押出機)(L/D=32、ベント数:1個)を、設定温度:270℃、ロール温度:(ガラス転移温度-10℃)にて、約100μm厚フィルムを製造した。
得られた樹脂組成物ペレット及びフィルムを用いて、上記物性評価を行った。
メタクリル系樹脂及び添加剤の配合量等の条件の詳細及び評価結果を、表1に示す。
【0267】
(実施例18~22)
表1に記載の組成に変更した以外は、実施例17の方法と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物を製造した。
メタクリル系樹脂及び添加剤等の配合量等の条件、及び評価結果を表1に示す。
【0268】
【表1-1】
【表1-2】
【0269】
表1に示す通り、重量平均分子量が所定の範囲内であり、(B)構造単位の含有量が所定の範囲内であり、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量が所定の範囲内であるものは、フィルム製膜時のロールへの貼りつき性等が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明は、実用上十分な光学特性を有し、耐熱性、熱安定性、及び成型加工性に優れる、メタクリル系樹脂、それを含むメタクリル系樹脂組成物、それを含むフィルム、及びこれらの製造方法を提供することができる。
本発明は、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、導光棒、レンズ等の自動車部品用途、ハウジング用途、衛生陶器代替等のサニタリー用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ、ヘッドアップディスプレイ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等の透明基盤、加飾フィルム等や太陽電池に用いられる透明基盤や、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等として、産業上の利用可能性がある。
図1
図2