(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】タイヤ装着状態検出システム、タイヤ装着状態検出方法及びタイヤ装着状態検出プログラム
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20231012BHJP
B60C 23/20 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60C23/04 140E
B60C23/20
(21)【出願番号】P 2018159282
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 恭平
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214708(JP,A)
【文献】特開2005-349958(JP,A)
【文献】特開2000-233615(JP,A)
【文献】特開2005-178522(JP,A)
【文献】特開昭61-033306(JP,A)
【文献】特開2008-074163(JP,A)
【文献】特開2014-031089(JP,A)
【文献】特開2005-263021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0002146(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0052822(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00 - 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出システムであって、
前記車両の前輪寄りまたは前記車両の後輪寄りに配置される第1受信機と第2受信機とを含み、前記第2受信機が車幅方向において前記第1受信機と異なる位置に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットと、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する第1測定部と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する第2測定部と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いて、前記無線信号の全体強度を前記送信機毎に演算する演算部と、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する車両構成保持部と、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する送信機数検出部と、
前記車両構成保持部によって保持されている前記車両構成に基づく前記車輪の数と、前記送信機数検出部によって検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する状態検出部と、
前記状態検出部によって、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する出力部と
を備え、
前記状態検出部は、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことを検出した場合、前記全体強度の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の前輪側
及び前記車両の後輪側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出システム。
【請求項2】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出システムであって、
前記車両の左輪と右輪との間における幅方向中心線を基準とした一方側に配置される第1受信機と、前記幅方向中心線を基準とした他方側に配置される第2受信機とを含み、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットと、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する第1測定部と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する第2測定部と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いた比率である強度比を、前記送信機毎に演算する演算部と、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する車両構成保持部と、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する送信機数検出部と、
前記車両構成保持部によって保持されている前記車両構成に基づく前記車輪の数と、前記送信機数検出部によって検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する状態検出部と、
前記状態検出部によって、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する出力部と
を備え、
前記状態検出部は、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことを検出した場合、前記強度比の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の左側
及び前記車両の右側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記状態検出部による前記車輪位置の検出結果を出力する請求項1または2に記載のタイヤ装着状態検出システム。
【請求項4】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出方法であって、
前記車両の前輪寄りまたは前記車両の後輪寄りに配置される第1受信機と第2受信機とを含み、前記第2受信機が車幅方向において前記第1受信機と異なる位置に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットと、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する第1測定部と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する第2測定部と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いて、前記無線信号の全体強度を前記送信機毎に演算する演算部と
、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する車両構成保持部と
を用い、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出するステップと、
前記車両構成保持部によって保持されている前記車両構成に基づく前記車両の車輪の数を含む車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出するステップと、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力するステップと
を含み、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出するステップでは、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記全体強度の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の前輪側
及び前記車両の後輪側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出方法。
【請求項5】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出方法であって、
前記車両の左輪と右輪との間における幅方向中心線を基準とした一方側に配置される第1受信機と、前記幅方向中心線を基準とした他方側に配置される第2受信機とを含み、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットと、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する第1測定部と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する第2測定部と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いた比率である強度比を、前記送信機毎に演算する演算部と
、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する車両構成保持部と
を用い、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出するステップと、
前記車両構成保持部によって保持されている前記車両構成に基づく前記車両の車輪の数を含む車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出するステップと、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力するステップと
を含み、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出するステップでは、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記強度比の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の左側
及び前記車両の右側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出方法。
【請求項6】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するためのタイヤ装着状態検出プログラムであって、
前記車両の前輪寄りまたは前記車両の後輪寄りに配置される第1受信機と第2受信機とを含み、前記第2受信機が車幅方向において前記第1受信機と異なる位置に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットを有する前記車両を制御するコンピュータに対し、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する処理と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する処理と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いて、前記無線信号の全体強度を前記送信機毎に演算する処理と、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する処理と、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する処理と、
前記車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する処理と、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する処理と
を実行させるためのものであって、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する処理では、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記全体強度の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の前輪側
及び前記車両の後輪側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出プログラム。
【請求項7】
車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するためのタイヤ装着状態検出プログラムであって、
前記車両の左輪と右輪との間における幅方向中心線を基準とした一方側に配置される第1受信機と、前記幅方向中心線を基準とした他方側に配置される第2受信機とを含み、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットを有する前記車両を制御するコンピュータに対し、
前記第1受信機が受信した前記無線信号の強度である第1信号強度を、前記送信機毎に測定する処理と、
前記第2受信機が受信した前記無線信号の強度である第2信号強度を、前記送信機毎に測定する処理と、
前記第1信号強度と前記第2信号強度とを用いた比率である強度比を、前記送信機毎に演算する処理と、
前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する処理と、
前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する処理と、
前記車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する処理と、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する処理と
を実行させるためのものであって、
前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する処理では、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足している
ことが検出された場合、前記強度比の大小関係に基づいて、前記送信機の数が超過しているタイヤ、または前記送信機が起動していない
或いは前記送信機が搭載されていないタイヤが、前記車両の左側
及び前記車両の右側の何れかの車輪位置に装着されていることを検出するタイヤ装着状態検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出システム、タイヤ装着状態検出方法及びタイヤ装着状態検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤ(ここでは、リムホイールに組み付けられたタイヤを意味する)の内圧及び温度などを計測するため、タイヤ内に無線信号(電波)の送信機を含むセンサを取り付けることが普及している。
【0003】
当該センサが検出した情報は、タイヤが装着されている車両の車輪位置(右前輪、左後輪など)と対応付けて管理する必要がある。しかしながら、タイヤ(センサ)が装着される車輪位置は、ローテーションなどによって入れ替わるため、その都度、センサの識別子(ID)と車輪位置との対応付けをアップデートする必要がある。
【0004】
そこで、このようなアップデートの煩雑性を回避するため、タイヤ(センサ)が装着される車輪位置を自動的に検出する方法が知られている。例えば、特許文献1に記載されているタイヤ空気圧監視システムは、車両の前後方向に2つの受信機を配置するとともに、タイヤ内に設けられたタイヤの回転方向を感知するセンサを用いることによって、タイヤ(センサ)が装着される車輪位置を自動的に検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したタイヤ空気圧監視システムでは、各タイヤに1つのセンサが取り付けられており、各センサ、具体的には、各送信機が正常に動作していることが前提となっている。
【0007】
しかしながら、実際の車両(特に、鉱山などの採掘現場を走行するダンプトラックなど)に装着されるタイヤでは、故障、電源投入忘れ、或いは取り付け忘れなどによって、送信機からの無線信号が検出できない場合がある。さらに、1つのタイヤに誤って複数のセンサ(つまり、送信機)が取り付けられてしまう場合もある。
【0008】
このような場合、上述したタイヤ空気圧監視システムでは、各タイヤ(送信機)が装着される車輪位置を正しく検出できなくなる。
【0009】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、タイヤ(送信機)が装着される車輪位置を自動的に検出する場合において、送信機が正常にタイヤに取り付けられていない或いは動作していない状態を検出し得るタイヤ装着状態検出システム、タイヤ装着状態検出方法及びタイヤ装着状態検出プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、車両(例えば、車両10)に装着されたタイヤ(タイヤ31~タイヤ36)に搭載されている送信機(センサ41~センサ46)の状態を検出するタイヤ装着状態検出システム(タイヤ装着状態検出システム100)であって、前記車両に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニット(受信ユニット105)を備え、前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する車両構成保持部(車両構成保持部230)と、前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する送信機数検出部(送信機数検出部250)と、前記車両構成保持部によって保持されている前記車両構成に基づく前記車輪の数と、前記送信機数検出部によって検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する状態検出部(状態検出部260)と、前記状態検出部によって、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足していると判定された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する出力部(出力部270)と備える。
【0011】
本発明の一態様は、車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出方法であって、前記車両に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットを用い、前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出するステップと、前記車両の車輪の数を含む車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出するステップと、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足していると判定された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力するステップとを含む。
【0012】
本発明の一態様は、車両に装着されたタイヤに搭載されている送信機の状態を検出するタイヤ装着状態検出プログラムであって、前記車両に配置され、前記送信機から送信される無線信号を受信する受信ユニットを用い、前記車両の車輪の数を含む車両構成を保持する処理と、前記受信ユニットが受信した前記無線信号に基づいて、前記送信機の数を検出する処理と、前記車両構成に基づく前記車輪の数と、検出された前記送信機の数とに基づいて、前記送信機の数が、前記車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する処理と、前記送信機の数が前記車輪の数に対して超過または不足していると判定された場合、前記送信機の状態が異常であることを出力する処理とを含む。
【発明の効果】
【0013】
上述したタイヤ装着状態検出システム、タイヤ装着状態検出方法及びタイヤ装着状態検出プログラムによれば、タイヤ(送信機)が装着される車輪位置を自動的に検出する場合において、送信機が正常にタイヤに取り付けられていない或いは動作していない状態を検出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、タイヤ装着状態検出システム100を含む車両10の概略平面図である。
【
図2】
図2は、タイヤ状態検出デバイス200の機能ブロック構成図である。
【
図3】
図3は、タイヤ装着状態検出システム100による送信機の状態検出フローを示す図である。
【
図4】
図4は、状態検出例1に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図5】
図5は、状態検出例1に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図6】
図6は、状態検出例1に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図7】
図7は、状態検出例1に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図8】
図8は、状態検出例2に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図9】
図9は、状態検出例2に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図10】
図10は、状態検出例2に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図11】
図11は、状態検出例2に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【
図12】
図12は、変更例に係る車両10Aの概略平面図である。
【
図13】
図13は、変更例に車両10Bの概略平面図及び概略ネットワーク構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0016】
(1)タイヤ装着状態検出システムを含む車両の概略構成
図1は、タイヤ装着状態検出システム100を含む車両10の概略平面図である。
図1に示すように、車両10は、前輪車軸21及び後輪車軸22を備える自動車である。車両10の種類は特に限定されないが、後輪車軸22は、いわゆるダブルタイヤであり、主にトラック及び鉱山用車両などの大型車両を想定している。
【0017】
車両10には、タイヤ31~タイヤ36が装着される。タイヤ31~タイヤ36は、リムホイールに組み付けられたタイヤ(タイヤ・ホイール組立体と呼ばれてもよい)である。
【0018】
ここでは、タイヤ31は、左前の車輪位置(図中の「1」、以下同)に装着される。同様に、タイヤ32~タイヤ36は、右前輪(2)、左外側後輪(3)、左内側後輪(4)、右内側後輪(5)、右外側後輪(6)の位置にそれぞれ装着される。
【0019】
タイヤ31には、タイヤ31の内圧及び温度を測定するセンサ41が搭載される。なお、センサ41は、加速度を測定するセンサを含んでもよい。センサ41は、測定した内圧及び温度のデータを送信する送信機を含む。同様に、タイヤ32~タイヤ36には、センサ42~センサ46が搭載される。センサ41~センサ46は、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)などに好適に用い得る。
【0020】
センサ41には、センサ41(送信機)を識別する識別であるセンサIDとして「a」が割り当てられている。同様に、センサ42~センサ46には、センサIDとして「b」~「f」がそれぞれ割り当てられている。
【0021】
タイヤ装着状態検出システム100は、車両10に装着されたタイヤの状態を検出する。具体的には、タイヤ装着状態検出システム100は、車両10に装着されたタイヤ31~タイヤ36に搭載されている送信機の状態を検出する。
【0022】
タイヤ装着状態検出システム100は、受信ユニット105及びタイヤ状態検出デバイス200を含む。受信ユニット105は、車両10に配置され、センサ41(送信機)~センサ46から送信される無線信号(電波)を受信する。
【0023】
本実施形態では、受信ユニット105は、受信機110と、受信機120とによって構成される。本実施形態において、受信機110は、第1受信機を構成する。また、受信機120は、第2受信機を構成する。
【0024】
受信機110は、便宜上、適宜「RX1」と標記する。受信機110は、各センサ(送信機)、つまり、センサ41~センサ46から送信される無線信号を受信する。なお、無線信号の強度(送信電力)及び使用周波数帯などは、タイヤ装着状態検出システム100の使用地域、或いは車両10の種類によって異なり得る。
【0025】
受信機120は、便宜上、適宜「RX2」と標記する。受信機120も、センサ41~センサ46から送信される無線信号を受信する。受信機120は、受信機110と異なる位置に配置される。具体的には、受信機120は、車幅方向において、受信機110と異なる位置に配置される。また、受信機120は、車両前後方向において、受信機110と同じ位置に配置される。
【0026】
本実施形態では、受信機110は、左輪(例えば、「1」)と、右輪(例えば、「2」との間における中心線CL1(幅方向中心線)を基準とした一方側、具体的には、左側に配置される。一方、受信機120は、中心線CL1を基準とした他方側、具体的には、右側に配置される。
【0027】
より具体的には、受信機110及び受信機120は、中心線CL1を基準として左右対称に配置される。
【0028】
また、本実施形態では、受信機110及び受信機120は、前輪(「1」,「2」)と後輪(「3」~「6」)との間における中心線CL2(前後方向中心線)を基準とした一方側、具体的には、前輪寄りに配置される。
【0029】
タイヤ状態検出デバイス200は、受信ユニット105を用いて、タイヤ31~タイヤ36、つまり、センサ41~センサ46が装着されている車輪位置(「1」~「6」)を検出する。本実施形態では、タイヤ状態検出デバイス200は、車両10に搭載される電子制御ユニット(ECU)の一部として組み込まれる。なお、後述するように、タイヤ状態検出デバイス200によって実現される機能は、通信ネットワーク経由で接続可能な車両10の外部(クラウドなど)に設けられても構わない。
【0030】
(2)タイヤ装着状態検出システムの機能ブロック構成
次に、タイヤ装着状態検出システム100の機能ブロック構成について説明する。具体的には、タイヤ装着状態検出システム100を構成するタイヤ状態検出デバイス200の機能ブロック構成について説明する。
【0031】
図2は、タイヤ状態検出デバイス200の機能ブロック構成図である。
図2に示すように、タイヤ状態検出デバイス200は、第1測定部210、第2測定部220、車両構成保持部230、演算部240、送信機数検出部250、状態検出部260及び出力部270を備える。
【0032】
なお、タイヤ状態検出デバイス200の各機能部は、CPU及びメモリなどのハードウェア上においてコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0033】
第1測定部210は、受信機110と接続される。第1測定部210は、受信機110が受信した無線信号の強度(第1信号強度)を、センサ41~センサ46(送信機)毎に測定する。
【0034】
第2測定部220は、受信機120と接続される。第2測定部220は、受信機120が受信した無線信号の強度(第2信号強度)を、センサ41~センサ46(送信機)毎に測定する。
【0035】
以下、受信機110(第1受信機)が受信した送信機からの信号をR1と適宜標記する。同様に、受信機120(受信機120)が受信した送信機からの信号をR2と適宜標記する。
【0036】
第1測定部210及び第2測定部220が測定対象とする無線信号の強度は、電圧レベルでも電力レベルでもよい。さらに、デシベル(dB)単位で管理してもよい。本実施形態では、電圧レベル(単位:V)が用いられる。
【0037】
また、本実施形態では、センサ41~センサ46から送信される無線信号には、各センサ(送信機)を識別するセンサID(識別子)が含まれる。
【0038】
車両構成保持部230は、車両10の構成情報を保持する。具体的には、車両構成保持部230は、車両10の車輪の数を含む車両構成を保持する。
【0039】
つまり、車両構成保持部230が、センサ(送信機)が搭載されたタイヤが装着される車両の車輪の数を含む車両構成を保持する。車両構成保持部230は、車両10の構成情報を予めメモリに保持してもよいし、通信ネットワーク経由で外部から取得してもよい。
【0040】
演算部240は、受信機110が受信した無線信号の強度(第1信号強度)と、受信機120が受信した無線信号の強度(第2信号強度)とを用いた演算を実行する。
【0041】
具体的には、演算部240は、第1信号強度と第2信号強度とを用いて、無線信号の全体強度を送信機毎に演算する。より具体的には、演算部240は、第1信号強度と第2信号強度との合計値(和)、すなわち、R1+R2を送信機毎に算出する。
【0042】
なお、全体強度とは、第1信号強度と第2信号強度とを用いた無線信号の強度或いは大きさを示す値であればよく、R1+R2に限定されない。例えば(R12+R22)のような累乗された値を用いてもよい。
【0043】
また、演算部240は、第1信号強度と第2信号強度とを用いた比率である強度比を、送信機毎に演算する。
【0044】
本実施形態では、車両構成保持部230は、強度比として、第1信号強度と第2信号強度との商を、センサ毎に演算する。具体的には、車両構成保持部230は、第1信号強度を第2信号強度で除し、商(R1/R2)を算出する。
【0045】
なお、強度比は、第1信号強度と第2信号強度とを用いた比率であればよく、R1/R2に限定されない。商であれば、R2/R1でもよいし、(R1-R2)/(R1+R2)のように、R1及びR2の値を無次元化できるようなものであればよい。
【0046】
送信機数検出部250は、受信ユニット105が受信した無線信号に基づいて、タイヤ31~タイヤ36に搭載されている送信機の数を検出する。具体的には、送信機数検出部250は、受信機110及び受信機120が受信した無線信号(R1, R2)に基づいて、タイヤ31~タイヤ36に搭載されている送信機の数を検出する。
【0047】
より具体的には、送信機数検出部250は、所定時間中に受信機110及び受信機120が受信した無線信号に基づいて、車両10に装着されているタイヤに搭載されている送信機の個数をカウントする。
【0048】
本実施形態では、上述したように、無線信号には、各センサ(送信機)を識別するセンサID(識別子)が含まれているため、送信機数検出部250は、当該センサIDに基づいて、送信機の個数をカウントする。
【0049】
また、送信機数検出部250は、同一の送信機から送信された無線信号の受信回数を用いて、車両10(自車両)に装着されているタイヤに搭載されている送信機の数を検出する。
【0050】
つまり、送信機数検出部250は、同一の送信機から送信された無線信号の受信回数が所定回数に満たない場合、当該送信機を検出対象から除外してもよい。特に、車両10が、駐車(または停車)している場合、近隣に同仕様の車両が存在する可能性があり、当該車両に装着されているタイヤからの無線信号を誤検出してしまう場合があるためである。
【0051】
さらに、後述するように、車両10が、駐車(または停車)している場合、このような誤検出を防止するため、タイヤ状態検出デバイス200の動作自体を停止してもよい。
【0052】
なお、車両10が、駐車(または停車)しているか否かは、車両10から提供される情報(走行速度など)を用いて判定してもよいし、Global Positioning system(GPS)などの衛星測位システムを用いて判定してもよい。
【0053】
状態検出部260は、車両構成保持部230によって保持されている車両構成に基づく車輪の数と、送信機数検出部250によって検出された送信機の数とに基づいて、送信機の数が、車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する。
【0054】
具体的には、送信機数検出部250は、車両10の車輪の数(6)に基づいて、検出された送信機の数が、6を超過(つまり、7以上)するか、または6よりも不足(つまり、5以下)であるか否かを検出する。
【0055】
より具体的には、状態検出部260は、検出されたそれぞれの送信機の全体強度、具体的には、R1+R2の大小関係に基づいて、送信機の数が超過している、具体的には、2つ以上の送信機が搭載されているタイヤ、または送信機の数が不足している、具体的には、送信機が起動していない或いは送信機が搭載されていないタイヤが、車両10の前輪側の車輪位置に装着されているか、または車両10の後輪側の車輪位置に装着されているかを検出する。
【0056】
また、状態検出部260は、検出されたそれぞれの送信機の強度比、具体的には、R1/R2の大小関係に基づいて、送信機の数が超過しているタイヤ、または送信機が起動していないタイヤが、車両10の左側の車輪位置に装着されているか、または車両10の右側の車輪位置に装着されているかを検出する。
【0057】
本実施形態では、状態検出部260は、Δn及びδnを用いて、送信機の数が、車輪の数に対して超過または不足しているか否かを検出する。
【0058】
【0059】
【0060】
Δnは、R1+R2の値を降順で並べ替え、一つ上位(R1
n+1, R2
n+1)との差分を求めたものである。nは、R1+R2の大小関係に基づく順位(
図4~
図11に示す表の行の順番と対応)を示す。
【0061】
同様に、δnは、R1/R2の値を降順で並べ替え、一つ上位(R1n+1, R2n+1)との差分を求めたものである。
【0062】
ここで、R1+R2は、車両前後方向における送信機の情報をもたらすため、Δnを用いることによって、送信機が超過または不足しているタイヤが、車両10の前輪側または後輪側の何れに属するかを判定できる。
【0063】
また、R1/R2は、車幅方向(車両左右方向)における送信機の情報をもたらすため、Δnを用いることによって、送信機が超過または不足しているタイヤが、車両10の左輪側または右輪側の何れに属するかを判定できる。
【0064】
つまり、状態検出部260は、Δn及びδnを用いることによって、送信機が超過または不足しているタイヤが、車両10の何れの車輪位置に装着されているかを検出できる。
【0065】
出力部270は、状態検出部260によって、送信機の数が車輪の数に対して超過または不足していると判定された場合、送信機の状態が異常であることを出力する。
【0066】
具体的には、出力部270は、送信機が超過または不足しているタイヤが装着されている車輪位置を出力できる。つまり、出力部270は、状態検出部260による車輪位置の検出結果を出力する。
【0067】
出力部270は、送信機の状態が異常であること、または送信機が超過または不足しているタイヤが装着されている車輪位置を車両10の表示装置に表示させたり、警報音を鳴動させたりすることができる。或いは、出力部270は、当該内容を車両10の制御装置などに直接出力してもよい。
【0068】
(3)タイヤ装着状態検出システムの動作
次に、上述したタイヤ装着状態検出システム100の動作について説明する。具体的には、車両10に装着されたタイヤ31~タイヤ36に搭載されている送信機の状態を検出する動作について説明する。
【0069】
(3.1)送信機の状態検出フロー
図3は、タイヤ装着状態検出システム100による送信機の状態検出フローを示す。
図3に示すように、タイヤ装着状態検出システム100、具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、受信機110(RX1)及び受信機120(RX2)によって受信された無線信号の強度を取得する(S10)。
【0070】
具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、受信機110(RX1)及び受信機120(RX2)によって受信された送信機毎の無線信号の信号強度を取得する。
【0071】
タイヤ状態検出デバイス200は、取得した信号強度に基づいて、送信機の数を検出する(S20)。
【0072】
本実施形態では、上述したように、タイヤ状態検出デバイス200は、所定時間中に受信機110及び受信機120が受信した無線信号に基づいて、車両10に装着されているタイヤに搭載されている送信機の個数をカウントする。
【0073】
タイヤ状態検出デバイス200は、検出した送信機の数と、保持している車両10の車両構成に基づく車輪の数(6)とが一致するか否かを判定する(S30)。
【0074】
送信機の数と車輪の数とが一致しない場合、つまり、送信機の数が、車輪の数に対して超過または不足している場合、タイヤ状態検出デバイス200は、車両10が停止状態か否かを判定する(S40)。
【0075】
なお、停止とは、車両10の駐車及び停車の何れも含まれる。上述したように、車両10が、駐車(または停車)している場合、近隣に同仕様の車両が存在する可能性があり、当該車両に装着されているタイヤからの無線信号を誤検出してしまう場合があるためである。
【0076】
また、S30及びS40の処理は、逆にしてもよい。つまり、車両10が停止状態か否かを判定した後、検出した送信機の数と、保持している車両10の車両構成に基づく車輪の数とが一致するか否かを判定してもよい。
【0077】
車両10が停止状態でない場合、タイヤ状態検出デバイス200は、検出されたそれぞれの送信機の全体強度を演算する(S50)。具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、受信機110が受信した無線信号の強度(第1信号強度)と、受信機120が受信した無線信号の強度(第2信号強度)との合計値(和)、すなわち、R1+R2を送信機毎に算出する。
【0078】
タイヤ状態検出デバイス200は、R1+R2の大小関係に基づいて、車両前後方向における送信機の過不足を検出する(S60)。具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、送信機の数が超過している、または送信機の数が不足している車輪位置(送信機の過不足位置)が、車両10の前輪側または車両10の後輪側の何れであるかを検出する。
【0079】
より具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、上述したΔnを用いて送信機の過不足位置が、車両10の前輪側または車両10の後輪側の何れであるかを検出する。なお、送信機の過不足位置に検出例については、さらに後述する。
【0080】
次いで、タイヤ状態検出デバイス200は、検出されたそれぞれの送信機の強度比を演算する(S70)。具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、第1信号強度を第2信号強度で除し、商(R1/R2)を算出する。
【0081】
タイヤ状態検出デバイス200は、R1/R2の大小関係に基づいて、車幅方向における送信機の過不足を検出する(S80)。具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、送信機の過不足位置が、車両10の左側または車両10の右側の何れであるかを検出する。
【0082】
より具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、上述したδnを用いて送信機の過不足位置が、車両10の左側または車両10の右側の何れであるかを検出する。
【0083】
タイヤ状態検出デバイス200は、ステップS60の検出結果、つまり、車両前後方向における検出結果と、ステップS80の検出結果、つまり、車幅方向における検出結果とに基づいて、送信機の過不足位置を検出する(S90)。
【0084】
なお、送信機の過不足位置に検出例については、さらに後述する。また、ステップS50, S60と、ステップS70, S80との順序は逆でもよい。
【0085】
タイヤ状態検出デバイス200は、送信機の過不足位置を出力する(S100)。具体的には、タイヤ状態検出デバイス200は、送信機が超過または不足しているタイヤが装着されている車輪位置を示す情報を、車両10の表示装置に表示させたり、車両10の制御装置などに出力したりする。
【0086】
なお、タイヤ状態検出デバイス200は、上述したように、具体的な車輪位置を示す情報に代えて、単に送信機(センサ)の状態が異常であることを出力してもよい。
【0087】
(3.2)送信機の状態検出例
次に、タイヤ装着状態検出システム100による送信機の状態検出例について説明する。具体的には、送信機の数が車輪の数に対して超過している状態の検出例、及び送信機の数が車輪の数に対して不足している状態の検出例について説明する。
【0088】
(3.2.1)状態検出例1
本状態検出例では、送信機(センサ)が車輪の数よりも1つ多い場合について説明する。
図4~
図7は、状態検出例1に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【0089】
図4では、車輪位置「1」(
図1参照)に装着されたタイヤに送信機が2つ搭載されている場合における信号強度が示されている。また、
図5では、車輪位置「5」に装着されたタイヤに送信機が2つ搭載されている場合における信号強度が示されている。
【0090】
図4及び
図5では、センサのID(a, bなど)ではなく、当該送信機が搭載されているタイヤが装着されている車輪位置(P1, P2など)が示されている。さらに、
図4及び
図5では、Δnの値を容易に確認できるように、R1+R2の値が降順で並べられている。
【0091】
図4では、Δ3が最も大きい。これは、P2とP4とにおいて、R1+R2が大きく異なることを意味する。
【0092】
本実施形態では、受信機110及び受信機120が車両10の前方に配置されているため、P1, P2の送信機の信号強度は、P3~P6の送信機の信号強度よりも極めて強い。
【0093】
このため、余分な送信機が搭載されていないならば、R1+R2の値が降順でデータを並べ替えれば、上位2つの送信機が前輪に装着されており、2番目と3番目とを比較するΔ2が最大となるはずである。
【0094】
図4ではΔ3が最大だが、これは前輪にセンサが2つあるためである。また、
図5では、Δ2が最大である。これは余分な送信機が搭載されているタイヤが後輪に装着されているためである。このような特徴を用いることによって、余分な送信機が車両10の前輪側または後輪側に属するかを判定できる。
【0095】
図6は
図4と対応し、
図7は
図5と対応する。つまり、
図6では、車輪位置「1」に装着されたタイヤに送信機が2つ搭載されている場合における信号強度が示されている。また、
図7では、車輪位置「5」に装着されたタイヤに送信機が2つ搭載されている場合における信号強度が示されている。
【0096】
また、
図6及び
図7では、δnの値を容易に確認できるように、前輪側に装着されていると判定された送信機群と、後輪側に装着されていると判定された送信機群とのそれぞれについて、R1/R2の値が降順で並べられている。なお、
図6のδ3、及び
図7のδ2は、前輪側の送信機と、後輪側の送信機とを比較しているため、余分な送信機が搭載されているタイヤが、車両10の左側または右側に位置するかの判定には用いられないため、空欄としている。
【0097】
図6では、δ1が最小だが、これは1行目の送信機のR1/R2の値と、2行目の送信機のR1/R2の値との差分が最小であることを意味する。
【0098】
受信機110及び受信機120は、車幅方向に並んで配置されているため、R1/R2の値の差が少ないことは、送信機の車幅方向における位置に差が少ないことと同義である。
【0099】
つまり、δnが最小となる送信機は、1つ上の行の送信機と同じタイヤに搭載されていると判定してよい。よって、当該送信機を無視して、他の送信機について車輪位置を判定した後、同じタイヤに搭載されていると判定した送信機と同じ車輪位置を割り振ることによって、各送信機が搭載されたタイヤが装着されている車輪位置を決定することができる。
【0100】
また、
図7では、送信機が2つ搭載されているP5に対応するδ5が最小である。つまり、送信機が2つ搭載されているタイヤがダブルタイヤである後輪側の車輪位置に装着されている場合でも、同様の判定が可能である。
【0101】
(3.2.2)状態検出例2
本状態検出例では、送信機(センサ)が車輪の数よりも1つ少なかった場合について説明する。
図8~
図11は、状態検出例2に係る無線信号の信号強度及び演算結果の表である。
【0102】
図8では、車輪位置「1」(
図1参照)に装着されたタイヤの送信機が起動していない場合における信号強度が示されている。また、
図9では、車輪位置「5」に装着されたタイヤの送信機が起動していない場合における信号強度が示されている。
【0103】
なお、送信機が起動していない状態には、送信機の電源が投入れていない場合、送信機の故障、或いは送信機が搭載されていない場合が含まれる。また、
図8及び
図9では、Δnの値を容易に確認できるように、R1+R2の値が降順で並べられている。
【0104】
状態検出例1と同様に、Δnが最大であるnに基づいて、起動していない送信機が車両10の前輪側または後輪側に属するかを判定できる。
【0105】
Δ1が最大の場合、前輪側に送信機が1つしかないことになり、起動していない送信機が搭載されるタイヤは前輪側に装着されている(
図8参照)。Δ2が最大の場合、起動していない送信機が搭載されるタイヤは後輪側に装着されている(
図9参照)。
【0106】
図10は
図8と対応し、
図11は
図9と対応する。つまり、
図10では、車輪位置「1」(
図1参照)に装着されたタイヤの送信機が起動していない場合における信号強度が示されている。また、
図11では、車輪位置「5」に装着されたタイヤの送信機が起動していない場合における信号強度が示されている。
【0107】
また、
図10及び
図11では、δnの値を容易に確認できるように、前輪側に装着されていると判定された送信機群と、後輪側に装着されていると判定された送信機群とのそれぞれについて、R1/R2の値が降順で並べられている。
【0108】
Δnに基づいて、起動していない送信機が車両10の前輪側に属すると判定された場合、R1/R2の値のみを用いて、起動していない送信機が搭載されるタイヤが装着されている車輪位置を判定できる。
【0109】
具体的には、R1/R2の値が1.00以上であれば、当該送信機が搭載されるタイヤは、車輪位置「2」(P2)に装着されていると判定できる。一方、R1/R2の値が1.00以下であれば、当該送信機が搭載されるタイヤは、車輪位置「1」(P1)に装着されていると判定できる。
【0110】
つまり、受信機110が車両10の左側に配置され、受信機120が車両10の右側に配置されているため、R1がR2よりも大きいということは、当該送信機は、車両10の左側に位置するはずだからである。一方、R2がR1よりも大きいということは、当該送信機は、車両10の右側に位置するはずだからである。
【0111】
図10では、R1+R2が最大(4.85)となる送信機からの無線信号の信号強度に基づくR1/R2の値が1.00以下(0.91)であるため、当該送信機は、車輪位置「2」(P2)に装着されているタイヤに搭載されていると判定できる。つまり、起動していない送信機が搭載されるタイヤは、車輪位置「1」(P1)に装着されていると判定できる。
【0112】
なお、残りの送信機が搭載されているタイヤが装着されている車輪位置は、R1/R2の大きい順に車輪位置「3」(P3)~車輪位置「6」(P6)とすればよい。
【0113】
一方、Δnに基づいて、起動していない送信機が車両10の後輪側に属すると判定された場合、
図11に示すように、δnが用いられる。
【0114】
上述したように、δnは、送信機間の車幅方向における位置関係、具体的には、隣接する送信機との車幅方向における距離を示している。よって、後輪側の車幅方向における車輪位置(P3, P4とP5, P6)を比較した際に、δnが最大となる。
【0115】
図11では、車輪位置「5」(P5)に装着されたタイヤの送信機が起動していないため、P4とP6との間のδ4が最大となる。つまり、δnが最大となるnが3であればP3, P4の何れかにおいて、送信機が起動していないと判定できる。
【0116】
同様に、δnが最大となるnが4であればP5, P6の何れかにおいて、送信機が起動していないと判定できる。
【0117】
次いで、R1/R2の大きさに基づいて、送信機が起動していないタイヤが、P3, P4(P5, P6)の何れなのかを判定すればよい。
【0118】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、タイヤ装着状態検出システム100によれば、車両10の車両構成に基づく車輪の数と、送信機数検出部250によって検出された送信機(センサ)の数とに基づいて、送信機の数が、車輪の数に対して超過または不足しているか否かが検出される。
【0119】
さらに、タイヤ装着状態検出システム100によれば、送信機の数が車輪の数に対して超過または不足していると判定された場合、送信機の状態が異常であること、或いは送信機の数が超過している、または送信機の数が不足している車輪位置(送信機の過不足位置)の検出結果が出力される。
【0120】
このため、タイヤ(送信機)が装着される車輪位置を自動的に検出する場合において、送信機が正常にタイヤに取り付けられていない或いは動作していない状態を検出し得る。さらに、送信機の過不足位置を検出し得る。
【0121】
これにより、タイヤ(送信機)が装着される車輪位置を自動的に検出するシステムの利便性を飛躍的に向上し得る。特に、故障、電源投入忘れ、或いは取り付け忘れなどによって、送信機からの無線信号が検出できない場合や、1つのタイヤに誤って複数のセンサ(つまり、送信機)が取り付けられてしまった場合でも、送信機の状態が異常であることを速やかに認識し得る。
【0122】
本実施形態では、第1信号強度と第2信号強度とを用いて、無線信号の全体強度が送信機毎に演算される。さらに、演算された全体強度の大小関係に基づいて、送信機の過不足位置が、車両10の前輪側または車両10の後輪側の何れかの車輪位置に装着されていることが検出される。
【0123】
また、本実施形態では、第1信号強度と第2信号強度とを用いた比率である強度比が送信機毎に演算される。さらに、演算された強度比の大小関係に基づいて、送信機の過不足位置が、車両10の左側または車両10の右側の何れかの車輪位置に装着されていることが検出される。
【0124】
このような検出方法を組み合わせることによって、具体的な送信機の過不足位置を検出し得る。このため、送信機を正常な状態に復帰させる作業が格段に容易になる。
【0125】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0126】
例えば、タイヤ装着状態検出システム100は、車両10とは車両構成が異なる車両でも同様に機能し得る。
図12は、変更例に係る車両10Aの概略平面図である。
【0127】
図12に示すように、車両10Aは、前輪車軸21と、2つの後輪車軸、具体的には、後輪車軸22及び後輪車軸23を備える。
【0128】
車両10Aの場合でも、上述した全体強度(R1+R2)及び強度比(R1/R2)を用いることによって、送信機の過不足位置を検出し得る。
【0129】
上述した実施形態では、送信機(センサ)が1つ多い場合について説明したが、送信機が2つ以上多い場合でも、上述した全体強度(R1+R2)及び強度比(R1/R2)を用いることによって、送信機の過不足位置を検出し得る。
【0130】
上述した実施形態では、受信機110及び受信機120は、中心線CL2(
図1参照)を基準とした前輪寄りに配置されていたが、中心線CL2を基準とした後輪寄りに配置されてもよい。
【0131】
上述した実施形態では、タイヤ状態検出デバイス200が車両10に搭載される電子制御ユニット(ECU)の一部として組み込まれていたが、次のように変更してもよい。
【0132】
図13は、変更例に係る車両10Bの概略平面図及び概略ネットワーク構成図である。
図13に示すように、車両10Bは、タイヤ状態検出デバイス200に代えて、通信デバイス310を備える。
【0133】
通信デバイス310は、無線基地局320と無線通信を実行することができる。通信デバイス310は、例えば、移動通信ネットワーク(LTEなど)に接続可能な無線通信端末である。
【0134】
サーバコンピュータ330は、通信ネットワーク上に設けられ、タイヤ状態検出デバイス200によって実現されていた各機能(第1測定部210、第2測定部220、車両構成保持部230、演算部240、送信機数検出部250、状態検出部260及び出力部270)を実現する。
【0135】
また、当該機能を実現するプログラム、(ソフトウェア、プログラム製品と呼ばれてもよい)は、通信ネットワーク上にダウロード可能な状態で保存されてもよいし、記憶媒体に保存された形態で提供されてもよい。
【0136】
さらに、上述した実施形態では、センサ(送信機)から送信される無線信号には、当該センサ(送信機)を識別する識別子(センサID)が含まれていたが、他の方法(例えば、使用周波数帯、またはチャネル番号など)により、センサを識別可能な場合には、このような識別子は必ずしも必要ない。
【0137】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0138】
10, 10A, 10B 車両
21 前輪車軸
22, 23 後輪車軸
31~36 タイヤ
41~46 センサ
100, 100A タイヤ装着状態検出システム
105 受信ユニット
110, 120 受信機
200 タイヤ状態検出デバイス
210 第1測定部
220 第2測定部
230 車両構成保持部
240 演算部
250 送信機数検出部
260 状態検出部
310 通信デバイス
320 無線基地局
330 サーバコンピュータ