(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】粉体船積設備および粉体船積方法
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20231012BHJP
B65G 53/20 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B65G67/60 A
B65G53/20
(21)【出願番号】P 2018228629
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 健祐
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-002184(JP,A)
【文献】国際公開第94/002350(WO,A1)
【文献】特開昭62-214086(JP,A)
【文献】特開昭60-118535(JP,A)
【文献】特開昭59-067194(JP,A)
【文献】特開昭52-099560(JP,A)
【文献】特開2000-128350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60
B65G 53/00
B63B 27/00
B63B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯蔵室を含む輸送船の1つの貯蔵室上に載置される、吊り上げ可能な架台と、
前記架台に取り付けられ、前記貯蔵室を覆うハッチに設けられた供給口および陸側搬送設備と接続され、前記供給口を通じて粉体を投下する搬送装置と、を備え、
前記架台の載置位置によって前記輸送船に対する前記搬送装置の位置が変更可能である、粉体船積設備。
【請求項2】
前記搬送装置は、前記供給口から前記輸送船の左舷または右舷に向かって延びる、請求項1に記載の粉体船積設備。
【請求項3】
前記架台に取り付けられ、前記ハッチに設けられた排気口を通じて空気を吸入する集塵機をさらに備える、
請求項1または2に記載の粉体船積設備。
【請求項4】
岸壁上に配置され、前記ハッチに設けられた排気口を通じて空気を吸入する集塵機をさらに備える、請求項1または2に記載の粉体船積設備。
【請求項5】
前記搬送装置は、岸壁上に配置された陸側エアスライダと接続される船側エアスライダである、請求項1~4の何れか一項に記載の粉体船積設備。
【請求項6】
前記搬送装置は、岸壁上に配置された陸側圧送配管と接続される船側圧送配管である、請求項1~4の何れか一項に記載の粉体船積設備。
【請求項7】
前記複数の貯蔵室の数は3つ以上である、請求項1~6の何れか一項に記載の粉体船積設備。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の粉体船積設備を用いた粉体船積方法であって、
前記架台を1つの貯蔵室上から隣の貯蔵室上に移設する間またはその後に、前記輸送船を貯蔵室のピッチ分だけ前進または後進する、粉体船積方法。
【請求項9】
請求項6に記載の粉体船積設備を用いた粉体船積方法であって、
前記架台を1つの貯蔵室上から隣の貯蔵室上に移設した後に、陸側圧送配管の向きを変更するとともに前記陸側圧送配管に中継ぎ配管を組み込んで前記陸側圧送配管を延長する、粉体船積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送船に粉体を積み込む粉体船積設備および粉体船積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を輸送する輸送船では、貯蔵室の上方に供給口が設けられている。供給口は、貯蔵室を覆うハッチに設けられた比較的に小口径のものであることもあるし、ハッチが開閉式の場合にはハッチが開いたときの大きな開口であることもある。
【0003】
粉体船積設備は、岸壁に設置され、輸送船の貯蔵室へ供給口を通じて粉体を供給する。陸側から輸送船の供給口まで粉体を搬送して投下する搬送装置としては、例えば、エアスライダや圧送配管が用いられる(エアスライダを含む粉体船積設備については、例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
輸送船としては、複数の貯蔵室を含むものもある。このような輸送船に対しては、全ての貯蔵室への粉体の供給を容易に行いたいという要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる粉体船積設備を提供することを目的とする。また、本発明は、その粉体船積設備を用いた粉体船積方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の粉体船積設備は、複数の貯蔵室を含む輸送船の1つの貯蔵室上に載置される架台と、前記架台に取り付けられ、前記貯蔵室の上方に設けられた供給口を通じて粉体を投下する搬送装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、輸送船に載置される架台に搬送装置が取り付けられているので、搬送装置を架台ごと吊り上げれば、輸送船に対する搬送装置の位置を容易に変更することができる。従って、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる。
【0009】
上記の粉体船積設備は、前記架台に取り付けられ、前記貯蔵室の上方に設けられた排気口を通じて空気を吸入する集塵機をさらに備えてもよい。この構成によれば、搬送装置と集塵機とを架台ごと一度に配置変更することができる。
【0010】
上記の粉体船積設備は、岸壁上に配置され、前記貯蔵室の上方に設けられた排気口を通じて空気を吸入する集塵機をさらに備えてもよい。この構成によれば、集塵機が架台に取り付けられる場合と比べ、架台の重量およびコストを低減することができる。
【0011】
例えば、前記搬送装置は、岸壁上に配置された陸側エアスライダと接続される船側エアスライダであってもよい。
【0012】
あるいは、前記搬送装置は、岸壁上に配置された陸側圧送配管と接続される船側圧送配管であってもよい。
【0013】
前記複数の貯蔵室の数は3つ以上であり、前記貯蔵室は開閉式のハッチで覆われていてもよい。この構成によれば、大型のバラ積貨物船を粉体を輸送する輸送船として使用することができる。
【0014】
また、本発明の1つの側面からの粉体船積方法は、上記の粉体船積設備を用いた粉体船積方法であって、前記架台を1つの貯蔵室上から隣の貯蔵室上に移設する間またはその後に、前記輸送船を貯蔵室のピッチ分だけ前進または後進する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の側面からの粉体船積方法は、搬送装置が船側圧送配管である粉体船積設備を用いた粉体船積方法であって、前記架台を1つの貯蔵室上から隣の貯蔵室上に移設した後に、陸側圧送配管の向きを変更するとともに前記陸側圧送配管に中継ぎ配管を組み込んで前記陸側圧送配管を延長する、ことを特徴とする。
【0016】
これらの粉体船積方法によれば、粉体船積にかかるトータルコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る粉体船積設備の平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る粉体船積設備の側面図である。
【
図4】ハッチの供給口にホッパーを接続した状態を示す図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る粉体船積設備の平面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る粉体船積設備の平面図である。
【
図9】輸送船を移動しない場合の粉体船積方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1および
図2に、本発明の第1実施形態に係る粉体船積設備1Aを示す。この粉体船積設備1Aは、岸壁2に設置され、輸送船3に粉体を積み込む。粉体は、特に限定されるものではないが、例えば、フライアッシュやセメントなどである。
【0020】
輸送船3は、船長方向に所定のピッチで並ぶ複数の貯蔵室30を含む(
図1では代表として1つの貯蔵室30を図示)。本実施形態では、各貯蔵室30がハッチ31で覆われており、このハッチ31に供給口32および排気口33が設けられている。つまり、供給口32および排気口33は、貯蔵室30の上方に設けられている。
【0021】
例えば、輸送船3は、貯蔵室30の数が3つ以上であって、ハッチ31が開閉式である大型のバラ積貨物船であってもよい。あるいは、輸送船3は、貯蔵室30の数が2つであり、ハッチ31が開閉不能であって、船体上に集塵機が常設された粉体運搬専用船であってもよい。
【0022】
輸送船3の1つの貯蔵室30上には、ハッチ31を船幅方向に跨ぐように架台4が載置される。架台4は、図略のクレーンによって吊り上げられて、岸壁2上の仮置きスペースと輸送船3上の載置位置との間で移動される。
【0023】
架台4には、粉体を供給口32まで搬送して供給口32を通じて投下する搬送装置5が取り付けられている。本実施形態では、搬送装置5がハッチ31の供給口32と接続される。また、本実施形態では、搬送装置5が船側エアスライダ5Aである。船側エアスライダ5Aは、岸壁2上に配置された陸側エアスライダ11とフレキシブルチューブ12を介して接続される。言うまでもないが、陸側エアスライダ11は粉体船積設備1Aの構成要素である。
【0024】
陸側エアスライダ11および船側エアスライダ5Aのそれぞれは、受入側端部から払出側端部へ向かって下り勾配となっており、エアスライダ内部へエアを供給することによって粉体を流動化させる。これにより、粉体が自重でエアスライダの受入側端部から払出側端部へ流れる。
【0025】
さらに、本実施形態では、架台4に集塵機6が取り付けられている。集塵機6は、排気口33を通じて空気を吸入する。本実施形態では、集塵機6がダクト61を介してハッチ31の排気口33と接続されている。集塵機6は、例えばバグフィルタである。集塵機6によって収集された塵はスクリューコンベア62,63によって搬送され、船側エアスライダ5Aに投入される。
【0026】
輸送船3における1つの貯蔵室30に粉体が満載となったときは、フレキシブルチューブ12が撤去された後に、架台4が図略のクレーンによって粉体充填後の貯蔵室30上から隣の空の貯蔵室30上に移設される。例えば、架台4が仮置きスペースに一旦戻され、輸送船3が貯蔵室30のピッチ分だけ前進または後進した後に、架台5が再度輸送船3に載置されてもよい。換言すれば、架台4の移設の間に輸送船3が前進または後進してもよい。あるいは、架台4の移設後に、輸送船3が貯蔵室30のピッチ分だけ前進または後進してもよい。その後、陸側エアスライダ11と船側エアスライダ5Aとの間にフレキシブルチューブ12が再度挿入される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の粉体船積設備1Aでは、輸送船3に載置される架台4に搬送装置5が取り付けられているので、搬送装置5を架台4ごと吊り上げれば、輸送船3に対する搬送装置5の位置を容易に変更することができる。従って、複数の貯蔵室30への粉体の供給を容易に行うことができる。
【0028】
輸送船3が一定位置に静止する場合は、粉体を供給する貯蔵室30を切り換えるために、陸側エアスライダを旋回可能かつ伸縮可能に構成する必要がある。しかも、貯蔵室30のピッチが比較的に大きなために、陸側エアスライダの伸縮距離を大きく確保する必要がある。従って、粉体船積設備がかなり大型化する。
【0029】
これに対し、本実施形態のように輸送船3が移動する場合は、陸側エアスライダ11を旋回可能かつ伸縮可能に構成する必要がない。従って、粉体船積設備1Aを安価に製造することができる。これにより、粉体船積にかかるトータルコストを低減することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3および
図4に、本発明の第2実施形態に係る粉体船積設備1Bを示す。なお、本実施形態ならびに後述する第3および第4実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0031】
本実施形態の粉体船積設備1Bが第1実施形態の粉体船積設備1Aと異なる点は、集塵機6の配置のみである。本実施形態では、集塵機6が岸壁2上に配置されている。集塵機6は、ダクト64およびフレシキブルチューブ65を介してハッチ31の排気口33と接続されている。
【0032】
より詳しくは、集塵機6は、岸壁2上を移動可能な移動台71に取り付けられている。また、移動台71にはホッパー72も取り付けられており、集塵機6によって収集された塵がスクリューコンベア62によってホッパー72に投入される。1つの貯蔵室30に粉体が満載となったとき、ホッパー72が移動台71から取り外されて、
図4に示すように、その貯蔵室30を覆うハッチ31の供給口32または別のハッチ31の供給口32に接続され、ホッパー72に溜まった塵が貯蔵室30に投入される。
【0033】
なお、ホッパー72は複数存在してもよい。この場合、1つの貯蔵室30に粉体が満載となったときに、塵が溜まったホッパー72を空のホッパー72と取り換え、塵が溜まったホッパー72を供給口32に接続すれば、ホッパー72から貯蔵室30に塵を投入するときにも貯蔵室30内で舞い上がる塵を集塵機6によって収集することができる。
【0034】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、集塵機6が岸壁2上に配置されているので、第1実施形態のように集塵機6が架台4に取り付けられる場合と比べ、架台4の重量およびコストを低減することができる。ただし、第1実施形態のように集塵機6が架台4に取り付けられていれば、搬送装置5と集塵機6とを架台4ごと一度に配置変更することができる。
【0035】
(第3実施形態)
図5および
図6に、本発明の第3実施形態に係る粉体船積設備1Cを示す。本実施形態では、搬送装置5が、岸壁2上に配置された陸側圧送配管13とフレキシブルチューブ14を介して接続される船側圧送配管5Bである。さらに、本実施形態では、集塵機6が排気口33に直接接続されている。
【0036】
本実施形態でも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
(第4実施形態)
図7および
図8に、本発明の第4実施形態に係る粉体船積設備1Dを示す。この粉体船積設備1Dが第3実施形態の粉体船積設備1Cと異なる点は、集塵機6の配置のみである。
【0038】
本実施形態では、集塵機6が岸壁2上に配置されている。より詳しくは、集塵機6は、岸壁2上を走行可能な車両8に搭載されている。集塵機6は、ダクト65およびフレキシブルチューブ66を介してハッチ31の排気口33と接続されている。ダクト65は図略のサポートを介して架台4に取り付けられている。
【0039】
本実施形態でも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、前記実施形態では、架台5が1つの貯蔵室30上から隣の貯蔵室30上に移設する間またはその後に輸送船3を移動することを前提としているが、搬送設備5が船側圧送配管5Bである場合には、輸送船3を移動せずに次のような粉体船積方法を実行してもよい。
【0042】
図9に示すように、架台4を1つの貯蔵室30上(
図9中に実線で示す位置)から隣の貯蔵室30上(
図9中に二点鎖線で示す位置)に移設した後に、陸側圧送配管13の向きを変更するとともに陸側圧送配管13に中継ぎ配管15を組み込んで陸側圧送配管13を延長する。この構成でも、粉体船積設備を安価に製造することができるので、粉体船積にかかるトータルコストを低減することができる。
【0043】
また、前記実施形態では、供給口32および排気口33がハッチ31に設けられているが、ハッチ31が開閉式である場合はハッチ31が開いたときの開口が供給口32兼排気口33であってもよい。この場合、供給口32兼排気口33である開口のうちの搬送装置5の投下口の回りの部分をフードで覆い、このフードに集塵用ダクト(61,64または65)または集塵機6を接続してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1A~1D 粉体船積設備
11 陸側エアスライダ
13 陸側圧送配管
2 岸壁
3 輸送船
30 貯蔵室
31 ハッチ
32 供給口
33 排気口
4 架台
5 搬送装置
5A 船側エアスライダ
5B 船側圧送配管
6 集塵機