(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】紙用多糖コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 105/00 20060101AFI20231012BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231012BHJP
C08B 37/00 20060101ALI20231012BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C09D105/00
C09D5/00 Z
C08B37/00
D21H19/10 B
(21)【出願番号】P 2018541094
(86)(22)【出願日】2016-10-24
(86)【国際出願番号】 US2016058436
(87)【国際公開番号】W WO2017074859
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-15
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ナタエル・ベハブトゥ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/095046(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/138283(WO,A1)
【文献】特表2017-509718(JP,A)
【文献】特表2017-515921(JP,A)
【文献】特表2015-529096(JP,A)
【文献】国際公開第2015/094402(WO,A3)
【文献】特表2019-501044(JP,A)
【文献】国際公開第2015/195960(WO,A1)
【文献】特表2017-505366(JP,A)
【文献】特表2017-501292(JP,A)
【文献】特表2000-512349(JP,A)
【文献】特開2006-160816(JP,A)
【文献】特表2014-511946(JP,A)
【文献】特表2014-526253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 1/00- 37/18
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
D21B 1/00~ D21J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部分がコーティング組成物の連続層でコーティングされた基質であって、前記コーティング組成物は、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーを含
み、
前記基質は、耐グリース性および/または耐油性である、基質。
【請求項2】
前記水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、95%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む、請求項1に記載の基質。
【請求項3】
前記水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、97%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む、請求項2に記載の基質。
【請求項4】
前記水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、99%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む、請求項3に記載の基質。
【請求項5】
前記コーティング組成物の連続層は、0.1~50マイクロメートルの範囲内の厚みを有する層を形成する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の基質。
【請求項6】
前記コーティング組成物は、さらに1種以上の添加物を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の基質。
【請求項7】
前記コーティング組成物には、デンプンまたはヒドロキシアルキルデンプンが存在しない、請求項1~
6のいずれか1項に記載の基質。
【請求項8】
前記基質は、セルロース基質、ポリマー、紙、織物、板紙、厚紙または段ボールである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の基質。
【請求項9】
1)アルカリ金属水酸化物水溶液中の水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーであって、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーを含む、水性コーティング組成物を提供する工程、
2
)基質の少なくとも一部分に前記コーティング組成物水溶液の層を塗布する工程、および
3)前記塗布層から少なくとも一部分の前記水を除去する工程を含み、
ここで前記基質上に連続層を形成する方法
であって、
少なくとも一部分がコーティング組成物の連続層でコーティングされた基質は、耐グリース性および/または耐油性である、方法。
【請求項10】
前記塗布層を水で洗浄する工程を、工程3)の前または後にさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記塗布層を酸性水溶液で洗浄する工程を、工程3)の前または後にさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記連続層は、0.1~50マイクロメートルの範囲内の厚みを有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
水を除去する前記工程は、蒸発、加熱またはそれらの組み合わせによって実施される、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、それらの全開示がこれにより参照して本明細書に組み込まれる、2015年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/246,349号明細書および2015年11月5日に出願された同第62/251,191号明細書の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、基質、特にセルロース、織物およびポリマー基質のための耐グリース性および耐油性コーティングを提供できるコーティング組成物に向けられる。本コーティング組成物は、基質上に連続層を形成できる、A)水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーおよび/またはB)水溶性α-(1,6→グルカン)ポリマーを含む。本基質は、食品包装用途のために有用な可能性があり、および重要にも容易にリサイクルすることができる。
【背景技術】
【0003】
製紙および包装産業では、それらの最終用途に依存して、様々なセルロース基質のための多数のタイプのコーティング組成物を利用する。耐油性および耐グリース性の紙を製造するためには、製紙工程前の長期間にわたりパルプを叩解する工程を含む圧縮強化する工程によって紙を製造することができる。他の方法では、紙の表面は、ポリマー、例えばポリエチレンでコーティングできる、または例えばフルオロカーボンポリマーなどの仕上げ剤を用いて処理することができる。合成ポリマーを用いてコーティングされた紙は、リサイクルすることが困難になる傾向がある。適正な耐グリース性および耐油性を有し、リサイクルすることができる紙を製造することへの持続的な必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、基質であって、その基質の少なくともその一部分はコーティング組成物の連続層でコーティングされ、そのコーティング組成物は、A)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー、および/またはB)
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;および
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合
を含むデキストランを含み、
ここでそのデキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである基質に関する。
【0005】
本開示は、さらに、
1)A)アルカリ金属水酸化物水溶液中の90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー、および/またはB)デキストラン水溶液を含むコーティング組成物であって、そのデキストランは:
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;および
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合
を含み、
そのデキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmであるコーティング組成物を提供する工程;
2)基質にコーティング組成物水溶液の層を塗布する工程;および
3)塗布された層から少なくとも一部分の水を除去する工程を含み、
ここで乾燥させたコーティング組成物の層は、基質上に連続層を形成する方法にも関する。
【0006】
さらに、本開示は、基質であって、その基質の少なくとも一部分はコーティング組成物の連続層でコーティングされ、そのコーティング組成物は第4級アンモニウムポリα-1,3-グルカンを含む基質に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で言及した全ての特許文献および非特許文献の開示は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本明細書で使用する用語「実施形態」もしくは「開示」は、限定することを意図しておらず、特許請求の範囲または本明細書に記載した実施形態のいずれにも一般的に適用される。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0009】
他に特に開示しない限り、本明細書で使用する用語「1つの」は、参照した特徴の1つ以上(つまり、少なくとも1つ)を含むことが意図されている。
【0010】
本開示の特徴および利点は、当業者であれば、以下の詳細な説明を読むことによってより容易に理解できるであろう。明確にするために別個の実施形態の状況において上下に記載されている本開示の所定の特徴は、単一要素中で組み合わせて提供されてもよいことを理解すべきである。反対に、簡潔にするために単一実施形態の状況で記載されている本開示の様々な特徴は、別個に、または任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。さらに、状況が特に他に規定しない限り、単数形についての言及は複数も含む可能性がある(例えば、「1つの」は、1つ以上を意味する可能性がある)。
【0011】
本願に明記した様々な範囲内での数値の使用は、特に明示的に指示しない限り、規定範囲内の最小値と最大値のどちらにも用語「約」が先行するかのように近似値として記載されている。この方法で、規定範囲の上下のわずかな変動を使用しても、この範囲内の数値と実質的に同一の結果を達成することができる。同様に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のありとあらゆる数値を含む連続範囲であることが意図されている。
【0012】
本明細書で使用するように、
用語「デンプン」は、アミロースおよびアミロペクチンからなる高分子炭水化物を意味する。
【0013】
用語「ヒドロキシアルキルデンプン」は、デンプン内のヒドロキシル基がヒドロキシルアルキル化されている部分加水分解天然デンプンのエーテル誘導体を意味する。
【0014】
語句「水不溶性」は、物質、例えばα-(1,3→グルカン)ポリマーが23℃で水100mL中に5g未満しか溶解しないことを意味する。他の実施形態では、水不溶性は、物質が23℃で水に4g未満または3g未満または2g未満または1g未満しか溶解しないことを意味する。
【0015】
語句「α-(1,3→グルカン)ポリマー」は、グリコシド結合によって一緒に結合されたグルコースモノマー単位を含む多糖であって、グリコシド結合の少なくとも50%がα-1,3-グリコシド結合である多糖を意味する。他の実施形態では、α-1,3-グリコシド結合のパーセンテージは、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%以上(または50%~100%の間の任意の整数値)であってよい。したがって、α-(1,3→グルカン)ポリマーは、10%、5%、4%、3%、2%、1%もしくは0%以下の、α-1,3-グリコシド結合ではないグリコシド結合を含む。α-(1,3→グルカン)ポリマーは、さらに55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する。
【0016】
用語「デキストラン」、「デキストランポリマー」および「デキストラン化合物」は、本明細書では互換的に使用され、主としてα-1,3-結合によって結合された側鎖(分岐)を備える、実質的に(大部分が)α-1,6-結合グルコースモノマーの鎖を一般に含む複雑な分枝状α-グルカンを意味する。本明細書の用語「ゲル化デキストラン」は、本明細書に開示した1つ以上のデキストランが、(i)酵素的デキストラン合成中、および任意選択的に、(ii)そのように合成されたデキストランが単離され(例えば、>90%純粋)、その後水性組成物中に配置されると、粘性溶液もしくはゲル様組成物を形成する能力に関する。
【0017】
本明細書のデキストラン「長鎖」は、「実質的に[もしくは大部分が]α-1,6-グリコシド結合」を含む可能性があるが、これは一部の態様ではそれらが少なくとも約98.0%のα-1,6-グリコシド結合を有する可能性があることを意味する。本明細書のデキストランは、一部の態様では、「分枝鎖構造」(分枝状構造)を含む可能性がある。この構造内では、長鎖は、おそらく反復方法で、他の長鎖から分岐する(例えば、長鎖は他の長鎖からの分岐鎖であってよく、これは順にその分岐鎖自体が他の長鎖からの分岐鎖であってよく、と続く)ことが企図されている。この構造内の長鎖は、分岐鎖構造内の全長鎖の少なくとも70%の長さ(DP[重合度])が分岐鎖構造の全長鎖の平均長の±30%内であることを意味する「長さが類似」であってよいことは企図されている。
【0018】
一部の実施形態におけるデキストランは、典型的には長さが1~3つのグルコースモノマーであり、デキストランポリマーの全グルコースモノマーの約10%未満を含む、長鎖から分岐している「短鎖」をさらに含む可能性がある。そのような短鎖は、典型的にはα-1,2-、α-1,3-および/またはα-1,4-グリコシド結合を含む(一部の態様では、長鎖内に少ないパーセンテージのそのような非α-1,6結合もまた存在する可能性があると考えられる)。
【0019】
用語「グリコシド結合(glycosidic linkage)」および「グリコシド結合(glycosidic bond)」は、炭水化物(糖)分子をまた別の炭水化物などの別の基に結合するタイプの共有結合を意味する。本明細書で使用する用語「α-1,3-グリコシド結合」は、α-D-グルコース分子を、隣接するα-D-グルコース環上の炭素1および3を介して相互に結合するタイプの共有結合を指す。本明細書で使用する用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接α-D-グルコース環上で炭素1および6を介してα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合を意味する。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と呼ぶであろう。
【0020】
本明細書のデキストランの「分子量」は、数平均分子量(Mn)または重量平均分子量(Mw)として表すことができ、それらの単位はDa(ダルトン)もしくはg/モルである。または、分子量は、DPw(重量平均重合度)もしくはDPn(数平均重合度)として表すことができる。これらの分子量測定値を計算するためには、当分野では、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いるなどの様々な手段が公知である。
【0021】
本明細書の用語「回転半径」(Rg)は、デキストランの平均半径を意味し、分子の重心からデキストラン分子の成分(原子)の根二乗平均として計算される。Rgは、例えば、Å(オングストローム)もしくはnm(ナノメートル)単位で表示することができる。本明細書のデキストランの「z平均回転半径」は、光散乱法(例えば、MALS)を使用して測定されるデキストランのRgを意味する。z平均Rgを測定するための方法は公知であり、本明細書で適宜に使用できる。例えば、z平均Rgは、それらの全部が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7531073号明細書、米国特許出願公開第2010/0003515号明細書および同第2009/0046274号明細書、Wyatt(Anal.Chim.Acta 272:1-40)およびMori and Barth(Size Exclusion Chromatography,Springer-Verlag,Berlin,1999)に開示されたように測定することができる。
【0022】
語句「連続層」は、基質の少なくとも一部分に塗布された組成物の層であって、組成物の乾燥層はそれが塗布されている表面の99%以上を被覆し、層内にはその基質表面を露出させる1%未満の孔隙を有する層を意味する。その層が塗布されている表面の99%以上は、その層が塗布されていない基質の領域の余地を与えない。例えば、連続層は基質の一部分にのみ塗布することができ、それでもなおその層が塗布されている領域を連続層であると見なすことができる。乾燥コーティング組成物の層は、個別ポリマーマクロ分子の連続層を形成する。個別マクロ分子は、鎖のからみ合いによって相互結合していると考えられる。このため、コーティング組成物の連続層はさらに、自立層を形成し、サンプルを伸縮させることによって連続性であると特徴付けることもできる。連続層は、5%超の破断点伸びを有するであろう。
【0023】
語句「コーティング組成物」は、基質上に層を形成する全ての固体成分、例えば、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーおよび/またはデキストランポリマーならびに任意選択的な顔料、界面活性剤、分散剤、結合剤、架橋剤および/または他の添加物を意味する。用語固体は、化合物の一部が室温以下では液体の可能性がある場合でさえ使用される。
【0024】
語句「水性コーティング組成物」は、さらに水性担体を含むコーティング組成物を意味する。一部の実施形態では、水性担体は水である。他の実施形態では、水性担体は、塩基の添加に起因して7.0を超えるpHを有する水であってよい。塩基は、例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであってよい。基質に塗布された後に、少なくとも一部分の水は、基質上にコーティング組成物の層を形成するために除去される。水性担体の少なくとも一部分を除去する工程は、50重量%以上の水性担体を除去することを意味する。他の実施形態では、90重量%以上もしくは95重量%以上もしくは99重量%以上の水性担体が除去される。含水率は、カール・フィッシャー滴定法によって評価できる。
【0025】
語句「本質的に~からなる」は、本組成物が本明細書に言及した成分の全部と本組成物の総重量に基づいて5重量%未満の任意の他の成分もしくは成分の組み合わせとを含有することを意味する。例えば、本質的にAおよびBからなる組成物は、少なくとも95重量%のAおよびBならびに5重量%以下の任意の他の成分もしくは成分の組み合わせを含有しなければならないが、ここで重量%は本組成物の総重量に基づく。他の実施形態では、語句本質的に~からなるは、本組成物が、本組成物の総重量に基づいて、4重量%未満もしくは3重量%未満もしくは2重量%未満もしくは1重量%未満もしくは0.5重量%未満の本明細書に言及していない成分を含有することを意味する。
【0026】
一部の実施形態では、基質は、コーティング組成物の連続層でコーティングされるが、ここでそのコーティング組成物は、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーを含む。他の実施形態では、コーティング組成物は、95%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーから本質的になる。さらになお他の実施形態では、コーティング組成物は、99%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーから本質的になる。
【0027】
他の実施形態では、基質は、コーティング組成物の連続層でコーティングされるが、コーティング組成物はデキストランを含み、デキストランは:
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合もしくはα-1,4,6-グリコシド結合
を含み、
ここでデキストランの重量平均分子量(Mw)は、約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである連続層でコーティングされる。
他の実施形態では、コーティング組成物は:(i)1位および6位で結合した約89.5~90.5重量%のグルコース;(ii)1位および3位で結合した約0.4~0.9重量%のグルコース;(iii)1位および4位で結合した約0.3~0.5重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位で結合した約8.0~8.3重量%のグルコース;および(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位で結合した約0.7~1.4重量%のグルコースを有するデキストランポリマーから本質的になる。
【0028】
本開示はさらに、基質上にコーティング組成物の層を形成する方法であって:
1)水性コーティング組成物を提供する工程であって、水性コーティング組成物は、i)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー;およびii)水性水酸化ナトリウムもしくは水性水酸化カリウムを含む工程;
2)基質の少なくとも一部分にコーティング組成物水溶液の層を塗布する工程;および
3)塗布された層から少なくとも一部分の水を除去する工程を含み、ここで乾燥させたコーティング組成物の層は、基質上に連続層を形成する方法にも関する。
【0029】
他の実施形態では、本開示はさらに、基質上でコーティング組成物の層を形成する方法であって:
1)水性コーティング組成物を提供する工程であって、水性コーティング組成物はデキストラン水溶液を含み、そのデキストランは:
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合もしくはα-1,4,6-グリコシド結合
を含み、
ここでデキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである工程;
2)基質の少なくとも一部分にコーティング組成物水溶液の層を塗布する工程;および
3)塗布された層から少なくとも一部分の水を除去する工程を含み、
ここで乾燥させたコーティング組成物の層は、基質上に連続層を形成する方法にも関する。
【0030】
水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーもしくはデキストランポリマーを含むコーティング組成物の層が基質に塗布されると、コーティング組成物の塗布層が耐グリース性および/または耐油性となることが見いだされている。これは、コーティング組成物の塗布層が、グリースおよび/または油が基質に浸透しないように基質に保護を提供することを意味する。
【0031】
水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、酵素法、例えば米国特許第7,000,000号明細書または同第8,871,474号明細書によって提供されるグルコシルトランスフェラーゼ酵素を使用する方法によって製造することができる。一部の実施形態では、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、Gtf Jとの90%以上の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼ酵素によって製造される。水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーの酵素的製造は、55~10,000の範囲内の数平均重合度を生じさせることができる。他の実施形態では、DPnは、75~1,000の範囲内にあってよく、さらにまた別の実施形態では、100~800の範囲内にあってよい。数平均重合度は、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0032】
上記の参考文献に開示された酵素は、さらにまた90%以上のα-1,3-グリコシド結合を有する水不溶性繊維を製造するために特に有用である。90%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、本明細書では均質構造を有する線状ポリマーであると見なすべきである。「均質構造」は、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーが、10%未満のα-1,3-グリコシド結合ではない、例えば、α-1,6-グリコシド結合、α-1,4-グリコシド結合もしくはα-1,3,6-グリコシド分岐点である結合を有することを意味する。他の実施形態では、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、9%未満もしくは8%未満もしくは7%未満もしくは6%未満もしくは5%未満もしくは4%未満もしくは3%未満もしくは2%未満もしくは1%未満のα-1,3-グリコシド結合ではないグリコシド結合を含む。さらにいっそう別の実施形態では、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、95%以上もしくは96%以上もしくは97%以上もしくは98%以上もしくは99%以上のα-1,3-グリコシド結合および1%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点を有する線状ポリマーである。本明細書で使用するα-1,3-グリコシド結合のパーセンテージは、ポリマー組成物中のモノマー単位の総数で割ったα-1,3-グリコシド結合によって結合されているモノマー単位の平均数(×100)を意味する。α-1,3-グリコシド結合のパーセンテージは、1H NMRスペクトル内のピークの積分によって決定されるが、ここで水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーのサンプルは、3重量%のLiClを含有するd6-ジメチルスルホキシド(DMSO)およびd6-DMSO中の0.1mLのトリフルオロ酢酸中で溶媒和される。α-1,3-グリコシド結合ではない結合のパーセンテージは同一方法で、同一の一般式を使用して決定することができる。
【0033】
デキストランポリマーは、どちらも全体として参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/075,460号明細書(2014年11月5日出願)および対応する米国特許出願公開第2016/0122445(A1)号明細書に記載された、アミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素を使用する酵素的プロセスによって製造することができる。一部の実施形態では、デキストランは、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)グルコシルトランスフェラーゼ酵素の生成物ではない。他の実施形態では、デキストランは、(i)1位および6位でのみ結合した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位でのみ結合した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位でのみ結合した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1、3および6位でのみ結合した約7.7~8.6重量%のグルコース;および(v)(a)1位、2位および6位または(b)1位、4位および6位でのみ結合した約0.4~1.7重量%のグルコースを含む可能性がある。所定の実施形態では、デキストランは:(i)1位および6位でのみ結合した約89.5~90.5重量%のグルコース;(ii)1位および3位でのみ結合した約0.4~0.9重量%のグルコース;(iii)1位および4位でのみ結合した約0.3~0.5重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位でのみ結合した約8.0~8.3重量%のグルコース;および(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ結合した約0.7~1.4重量%のグルコースを含む可能性がある。
【0034】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および6位でのみ結合した約87、87.5、88、88.5、89、89.5、90、90,5、91、91.5、92、92.5もしくは93重量%のグルコースを含む可能性がある。一部の例では、1位および6位でのみ結合した約87~92.5、87~92、87~91.5、87~91、87~90.5、87~90、87.5~92.5、87.5~92、87.5~91.5、87.5~91、87.5~90.5、87.5~90、88~92.5、88~92、88~91.5、88~91、88~90.5、88~90、88.5~92.5、88.5~92、88.5~91.5、88.5~91、88.5~90.5、88.5~90、89~92.5、89~92、89~91.5、89~91、89~90.5、89~90、89.5~92.5、89.5~92、89.5~91.5、89.5~91もしくは89.5~90.5重量%のグルコースが存在してよい。
【0035】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および3位でのみ結合した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1もしくは1.2重量%のグルコースを含む可能性がある。一部の例では、1位および3位でのみ結合した約0.1~1.2、0.1~1.0、0.1~0.8、0.3~1.2、0.3~1.0、0.3~0.8、0.4~1.2、0.4~1.0、0.4~0.8、0.5~1.2、0.5~1.0、0.5~0.8、0.6~1.2、0.6~1.0もしくは0.6~0.8重量%のグルコースが存在してよい。
【0036】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および4位でのみ結合した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6もしくは0.7重量%のグルコースを含む可能性がある。一部の例では、1位および4位でのみ結合した約0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.5、0.2~0.4、0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5もしくは約0.3~0.4重量%のグルコースが存在してよい。
【0037】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位、3位および6位でのみ結合した約7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5もしくは8.6重量%のグルコースを含む可能性がある。一部の例では、1位、3位および6位でのみ結合した約7.7~8.6、7.7~8.5、7.7~8.4、7.7~8.3、7.7~8.2、7.8~8.6、7.8~8.5、7.8~8.4、7.8~8.3、7.8~8.2、7.9~8.6、7.9~8.5、7.9~8.4、7.9~8.3、7.9~8.2、8.0~8.6、8.0~8.5、8.0~8.4、8.0~8.3、8.0~8.2、8.1~8.6、8.1~8.5、8.1~8.1、8.1~8.3もしくは8.1~8.2重量%のグルコースが存在してよい。
【0038】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、(a)1位、2位および6位または(b)1位、4位および6位でのみ結合した約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6もしくは1.7重量%のグルコースを含む可能性がある。一部の例では、(a)1位、2位および6位または(b)1位、4位および6位でのみ結合した約0.4~1.7、0.4~1.6、0.4~1.5、0.4~1.4、0.4~1.3、0.5~1.7、0.5~1.6、0.5~1.5、0.5~1.4、0.5~1.3、0.6~1.7、0.6~1.6、0.6~1.5、0.6~1.4、0.6~1.3、0.7~1.7、0.7~1.6、0.7~1.5、0.7~1.4、0.7~1.3、0.8~1.7、0.8~1.6、0.8~1.5、0.8~1.4、0.8~1.3重量%のグルコースが存在してよい。
【0039】
本明細書のデキストランは、相互から反復して分岐する長鎖(大多数または全部のα-1,6-結合を含有する)が存在する分枝状構造(例えば、長鎖は、順にそれ自体が他の長鎖から分岐することができ、さらにそれ自体が他の長鎖から分離できるなどの、他の長鎖からの分岐鎖であってよい)であってよいと考えられる。分岐鎖構造は、さらに長鎖からの短枝を含んでいてよい;これらの短鎖は、大部分が例えばα-1,3および-1,4結合を含むと考えられる。デキストラン中の分岐点は、他の長鎖から分岐している長鎖からであろうと、または長鎖から分岐している短鎖からであろうと、α-1,6結合内に含まれるグルコースからのα-1,3、-1,4または-1,2結合を含むと思われる。平均すると、一部の実施形態では、デキストランの全分岐点の約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~35%、20~30%、20~25%、25~35%もしくは25~30%が長鎖に分岐する。大部分(>98%もしくは99%)または全部の他の分岐点は、短鎖に分岐する。
【0040】
デキストラン分岐鎖構造の長鎖は、一部の態様では長さが類似の場合がある。長さが類似であるとは、分岐鎖構造内の全長鎖の少なくとも70%、75%、80%、85%もしくは90%の長さ(DP)が分岐鎖構造の全長鎖の平均長の±15%(または10%、5%)の範囲内にあることを意味する。一部の態様では、長鎖の平均長(mean lengthもしくはaverage length)は、約10~50モノマー単位(すなわち、10~50グルコースモノマー)である。例えば、長鎖の平均個別長は、約10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、10~50、10~40、10~30、10~25、10~20、15~50、15~40、15~30、15~25、15~20、20~50、20~40、20~30もしくは20~25DPである可能性がある。
【0041】
所定の実施形態におけるデキストラン長鎖は、実質的にα-1,6-グリコシド結合および少量(2.0%未満)のα-1,3-および/またはα-1,4-グリコシド結合を含む可能性がある。例えば、デキストラン長鎖は、約または少なくとも約98%、98.25%、98.5%、98.75%、99%、99.25%、99.5%、99.75%もしくは99.9%のα-1,6-グリコシド結合を含む可能性がある。所定の実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,4-グリコシド結合を含んでいない(すなわち、そのような長鎖は、大部分がα-1,6結合および少量のα-1,3結合を有する)。これとは逆に、一部の実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,3-グリコシド結合を含んでいない(すなわち、そのような長鎖は、大部分がα-1,6結合および少量のα-1,4結合を有する)。上記の実施形態の任意のデキストラン長鎖は、例えば、さらにα-1,2-グリコシド結合を含まない場合がある。それでも一部の態様では、デキストラン長鎖は、100%のα-1,6-グリコシド結合を含む可能性がある(他の鎖から分岐するためにそのような長鎖によって使用される結合を除く)。
【0042】
一部の態様におけるデキストラン分子の短鎖は、長さが1~3グルコースモノマーであり、デキストランポリマーの全グルコースモノマーの約5~10%未満を含んでいる。本明細書の短鎖の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは全部は、長さが1~3グルコースモノマーである。デキストラン分子の短鎖は、例えば、デキストラン分子の全グルコースモノマーの約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満もしくは1%未満を含む可能性がある。
【0043】
一部の態様におけるデキストラン分子の短鎖は、α-1,2-、α-1,3-および/またはα-1,4-グリコシド結合を含む可能性がある。短鎖は、全部を(個別的にではなく)一緒に検討した場合、(i)これらの結合の全3つ、または(ii)例えば、α-1,3-およびα-1,4-グリコシド結合を含んでいてよい。本明細書のデキストラン分子の短鎖は、デキストランの他の短鎖に関して異種(すなわち、結合プロファイルにおける一部の変動を示す)または同種(すなわち、類似もしくは同一の結合プロファイルを共有する)であってよい。
【0044】
所定の実施形態におけるデキストランは、約または少なくとも約5,000万、5,500万、6,000万、6,500万、7,000万、7,500万、8,000万、8,500万、9,000万、9,500万、1,000万、1億500万、1億1,000万、1億1,500万、1億2,000万、1億2,500万、1億3,000万、1億3,500万、1億4,000万、1億4,500万、1億5,000万、1億5,500万、1億6,000万、1億6,500万、1億7,000万、1億7,500万、1億8,000万、1億8,500万、1億9,000万、1億9,500万もしくは2億(または5,000万~2億の間のいずれかの整数)(またはこれらの数値中の2つの数値間のいずれかの範囲)のMwを有することができる。デキストランのMwは、例えば、約5,000万~2億、6,000万~2億、7,000万~2億、8,000万~2億、9,000万~2億、1億~2億、1億1,000万~2億、1億2,000万~2億、5,000万~1億8,000万、6,000万~1億8,000万、7,000万~1億8,000万、8,000万~1億8,000万、9,000万~1億8,000万、1億~1億8,000万、1億1,000万~1億8,000万、1億2,000万~1億8,000万、5,000万~1億6,000万、6,000万~1億6,000万、7,000万~1億6,000万、8,000万~1億6,000万、9,000万~1億6,000万、1億~1億6,000万、1億1,000万~1億6,000万、1億2,000万~1億6,000万、5,000万~1億4,000万、6,000万~1億4,000万、7,000万~1億4,000万、8,000万~1億4,000万、9,000万~1億4,000万、1億~1億4,000万、1億1,000万~1億4,000万、1億2,000万~1億4,000万、5,000万~1億2,000万、6,000万~1億2,000万、7,000万~1億2,000万、8,000万~1億2,000万、9,000万~1億2,000万、1億~1億2,000万、1億1,000万~1億2,000万、5,000万~1億1,000万、6,000万~1億1,000万、7,000万~1億1,000万、8,000万~1億1,000万、9,000万~1億1,000万、1億~1億1,000万、5,000万~1億、6,000万~1億、7,000万~1億、8,000万~1億、9,000万~1億もしくは9,000万~1億500万であってよい。これらのMwのいずれも、所望であれば、Mwを162.14で割ることによって重量平均重合度(DPw)で表示することができる。
【0045】
本明細書のデキストランのz平均回転半径は、約200~280nmであってよい。例えば、z平均Rgは、約200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275もしくは280nm(または200~280nmの間の任意の整数)であってよい。他の例として、z平均Rgは、約200~280、200~270、200~260、200~250、200~240、200~230、220~280、220~270、220~260、220~250、220~240、220~230、230~280、230~270、230~260、230~250、230~240、240~280、240~270、240~260、240~250、250~280、250~270もしくは250~260nmであってよい。
【0046】
一部の態様におけるデキストランのMwおよび/またはz平均Rgは、実施例に開示したプロトコルと類似または同一のプロトコルにしたがって測定できる。例えば、本明細書のMwおよび/またはz平均Rgは、0.4~0.6mg/mL(例えば、約0.5mg/mL)の0768gtfによって生成されたデキストランを150~250ppm(例えば、約200ppm)のNaN3を備える0.05~1.0M(例えば、約0.075M)のTris(ヒドロキシメチル)アミノメタンバッファー中に最初に溶解させることによって測定できる。無水デキストランの溶媒和は、45~55℃(例えば、約50℃)で12~18時間振とうすることによって達成できる。生じたデキストラン溶液は、3基のオンライン検出器:示差屈折計(例えば、Waters 2414屈折率検出器)、準弾性光散乱(QELS)検出器(例えば、Wyatt Technologies,Santa Barbara,CA製のQELS検出器)を装備した多角度光散乱(MALS)光度計(例えば、Heleos(商標)-2 18角度 多角度MALS光度計)および示差毛細管粘度計(例えば、Wyatt製のVISCOSTAR(商標)示差毛細管粘度計と結合された分離モジュール(Waters Corporation(Milford,MA製のALLIANCE(商標)2695分離モジュール)を含む好適なフローインジェクション・クロマトグラフィー装置内に進入することができた。デキストランのポリマーピークをインジェクションピークから分離するためには、2基の好適なサイズ排除カラム(例えば、Agilent Technologies,Santa Clara,CA製のAQUAGEL-OH GUARDカラム)を使用することができるが、ここで移動相はサンプル溶媒(上記)と同一であってよく、流量は約0.2mL/分であってよく、インジェクション量は約0.1mLであってよく、カラム温度は約30℃であってよい。データ収集のため(例えば、Waters製のEMPOWER(商標)バージョン3ソフトウェア)およびマルチ検出器データ整理のため(Wyatt製のASTAR(商標)バージョン6ソフトウェア)に、好適なソフトウェアを使用できる。MALSデータは、重量平均分子量(Mw)およびz平均回転半径(Rg)を提供することができ、WELSデータは、例えば、z平均流体力学半径を提供できる。
【0047】
水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、水分散液を形成する。必要な水性コーティング組成物を形成するために、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、塩基水溶液中、例えば、アルカリ金属水酸化物水溶液、水酸化ナトリウム水溶液もしくは水酸化ナトリウム水溶液中に分散および/または溶解させられる。一部の実施形態では、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウムであるが、他の実施形態では、アルカリ金属水酸化物は水酸化カリウムである。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの両方の組み合わせもまた使用することができる。水中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、水とアルカリ金属水酸化物の総重量に基づいて、2重量%~10重量%の範囲内にあってよい。他の実施形態では、アルカリ金属水酸化物の濃度は、3~9重量%もしくは4~8重量%の範囲内にあってよく、ここで重量%は水とアルカリ金属水酸化物の総重量に基づく。
【0048】
水性コーティング組成物は、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーを金属水酸化物水溶液に添加する工程および溶液が形成されるまで撹拌する工程によって調製することができる。水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~50重量%の範囲内で存在してよい。1つの実施形態では、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~30重量%の範囲内で存在してよい。水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーが5重量%未満で存在する場合はコーティング組成物の連続フィルム形成能力が減少し、この濃度は30重量%を超える場合は、水性コーティング組成物の濃度は基質の均一層を形成するのが困難になるポイントまで増加する。他の実施形態では、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、水性コーティング組成物中に1~30重量%もしくは2~25重量%もしくは2~20重量%の範囲内で存在してよいが、ここで重量%は水性コーティング組成物の総重量に基づく。
【0049】
いずれか任意の実施形態では、水性担体中,例えばアルカリ金属水酸化物水溶液中の水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーの溶解限度は、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーの分子量、水性塩基の濃度、混合時間、形成されるにしたがった溶液の粘度、溶液が曝される剪断力および混合が行われる時点の温度の関数である。一般に、低分子量水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、他の条件が同等であれば、高分子量より高溶解性であろう。一般に、より速い剪断混合、より長い混合時間およびより高温にはより高い溶解度が結び付いているであろう。混合のための最高温度は、水性塩基の沸点によって限定される。アルカリ金属水酸化物の最適濃度は、混合プロセス中の他のパラメーターに依存して変動する可能性がある。
【0050】
デキストランポリマーは、水性担体中、例えば水中で溶液を形成できる。デキストランポリマーと水性担体との混合物を撹拌する工程は、水性コーティング組成物を形成する。デキストランは、水性コーティング組成物中に、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~50重量%の範囲内で存在してよい。他の実施形態では、デキストランは、5~30重量%もしくは2~25重量%もしくは2~20重量%の範囲内で存在してよいが、ここで重量%は水性コーティング組成物の総重量に基づく。一部の実施形態では、コーティング組成物は、本質的にデキストランポリマー、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーまたはそれらの組み合わせからなる。
【0051】
コーティング組成物は、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーおよび/またはデキストランポリマーに加えて、さらに1種以上の添加物を含む可能性がある。好適な添加物は、例えば、結合剤、分散剤、第4級アンモニウム塩、塩化カルシウム、ケイ酸カルシウム;界面活性剤、例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化界面活性剤;硬化剤、例えば、活性ハロゲン化合物、ビニルスルホン化合物、エポキシ化合物;分散剤、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリリン酸塩、ポリカルボン酸塩;流動性改善剤;潤滑剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、アンモニウムおよび/または亜鉛、ワックスもしくはワックスエマルジョン、アルキルケテン二量体、グリコール;消泡剤、例えば、オクチルアルコール、シリコーン系消泡剤;離型剤;発泡剤;浸透剤、例えば、1,2-プロパンジオール、トリエチレングリコールブチルエーテル、2-ピロリドン;蛍光漂白剤、例えば、蛍光増白剤;保存料、例えば、ベンゾイソチアゾロンおよびイソチアゾロン化合物;殺生物剤、例えば、メタホウ酸塩、チオシアン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンズイソチアオリン-3-オン;黄変阻害剤、例えば、ヒドロキシメチルスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム;紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール化合物;酸化防止剤、例えば、立体障害フェノール化合物;不溶化剤;帯電防止剤;pH調節剤、例えば、弱塩基、第1級、第2級もしくは第3級アミン、硫酸、塩酸;耐水剤、例えばケトン樹脂、アニオン性ラテックス、グリオキサール;湿潤および/または乾燥強化剤、例えば、グリオキサール系樹脂、酸化ポリエチレン、メラミン樹脂、ユリアホルムアルデヒド;架橋剤;光沢インクホールドアウト添加物;耐グリース性および耐油性添加物;レベリング助剤、例えば、ポリエチレンエマルジョン、アルコール/酸化エチレンまたはそれらの組み合わせが含まれる。コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~5重量%の範囲内の量で任意の1種以上の列挙した添加物を含有することができる。他の実施形態では、添加物は、0.1~4重量%もしくは0.5~3.5重量%もしくは0.5~3重量%の範囲内の量で存在してよい。全ての重量%は、コーティング組成物の総重量に基づく。
【0052】
好適な結合剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、シラノール修飾ポリビニルアルコール、ポリウレタン、デンプン、コーンデキストリン、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、キサンタン、カラゲナン、カゼイン、大豆タンパク質、グアールゴム、合成ポリマー、スチレンブタジエンラテックス、スチレンアクリレートラテックスまたはそれらの組み合わせを含む可能性がある。一部の実施形態では、結合剤はポリビニルアルコールである。他の実施形態では、結合剤は、ポリビニルアルコール、シラノール修飾ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニルのうちの2つ以上の組み合わせである。一部の実施形態では、コーティング組成物には、結合剤が存在しない。他の実施形態では、コーティング組成物には、デンプンおよび/またはヒドロキシアルキルデンプンが存在しない。他の実施形態では、コーティング組成物には、水溶性多糖類が存在しない。本明細書で使用する語句~が存在しないは、コーティング組成物が1重量%未満の成分、もしくは0.5重量%未満もしくは0.1重量%未満もしくは0.01重量%未満の成分を含有することを意味する。さらに別の実施形態では、~が存在しないは、その特定の成分を1H NMRによって検出できないことを意味する。
【0053】
存在する場合、添加物は、本プロセスが水性コーティング組成物Iを形成する任意の時点に添加することができる。添加物は、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーが添加される前、水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーが添加される間、または水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーが添加された後に、アルカリ金属水酸化物水溶液中に分散および/または溶解させることができる。他の実施形態では、添加物は、デキストランポリマーが添加される前、デキストランポリマーの添加中またはデキストランポリマーの添加後に水中に分散および/または溶解させることができる。
【0054】
基質は、耐グリース性および/または耐油性であることが所望である任意の基質であってよい。これは特に、耐グリース性および耐油性が必要とされる食品産業において望ましい。一部の実施形態では、基質は、紙および織物などの多孔性基質であってよい、または木材、金属もしくは石造などの硬質基質上であってよい。一部の実施形態では、基質は、例えば、セルロース基質、ポリマー、紙、織物、板紙、厚紙もしくは段ボールであってよい。
【0055】
本開示は、さらに、
1)A)アルカリ金属水酸化物水溶液中の90%以上のα-1,3-グルコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グルコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー、および/またはB)デキストランを含む水性コーティング組成物であって、そのデキストランは:
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;および
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合
を含み、
そのデキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである水性コーティング組成物を提供する工程;
2)基質の少なくとも一部分にコーティング組成物水溶液の層を塗布する工程;および
3)塗布された層から少なくとも一部分の水を除去する工程を含み、
ここで乾燥させたコーティング組成物の層は、基質上に連続層を形成する方法にも関する。
【0056】
水性コーティング組成物の層は、基質の少なくとも一部分に塗布することができる。一部の実施形態では、この層は、当分野において公知の任意の方法によって、例えば、エアナイフコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、ワイヤーバーコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、キャストコーティング、フレキシブルブレードコーティング、グラビアコーティング、ジェットアプリケーターコーティング、ショートドウェルコーティング、スライドホッパーコーティング、カーテンコーティング、フレキソ印刷コーティング、サイズプレスコーティング、リバースロールコーティングおよびトランスファーロールコーティングによって塗布することができる。水性コーティング組成物は、基質の少なくとも一部分上、例えば、基質の片面もしくは両面上、片面の一部分または平坦基質の両面の一部分上に塗布することができる。水性コーティングは、基質に1回または基質に複数回塗布することができる。
【0057】
基質の少なくとも一部分への水性コーティング組成物の層の塗布後、コーティング組成物の連続層を生成するために、水性コーティング組成物の塗布層から少なくとも一部分の水を除去することができる。水は、蒸発、加熱またはそれらの組み合わせによって除去することができる。例えば、風乾もしくは熱風乾燥、直線状トンネル乾燥、アーク乾燥、エアループ乾燥、接触もしくは伝導乾燥、放射エネルギー乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥またはそれらの組み合わせが使用されてよい。コーティングされた基質は、任意選択的に、表面の平滑性および光沢を改善するために乾燥後にカレンダー加工することができる。カレンダー加工することは、コーティングされた基質をニップおよびローラーに1回以上通過させることによって実施することができる。
【0058】
本方法は、また別の4)コーティング組成物の塗布層を水で洗浄する工程を含む可能性がある。コーティング組成物の塗布層を洗浄する工程は、工程3)の前または工程3)の後に実施することができる。コーティング組成物の塗布層を洗浄する工程は、アルカリ金属水酸化物の少なくとも一部分を除去するために役立つことができる。一部の実施形態では、水は、酸もしくは酸性水溶液と置換することができる。例えば、酢酸、酢酸水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液、クエン酸水溶液または他の酸性水溶液を使用することができる。
【0059】
コーティング組成物水溶液は、基質に0.1~30g/m2(グラム/メートル2)の範囲内の乾燥コーティング重量を塗布するような割合で塗布することができる。他の実施形態では、乾燥コーティング重量は、0.5~25g/m2もしくは1~20g/m2の範囲内であってよい。コーティング組成物の乾燥層は、0.1~50マイクロメートル(μm)の範囲内の厚みを有する可能性がある。他の実施形態では、厚みは、0.5~40μmもしくは1~30μmもしくは1~20μmの範囲内であってよい。
【0060】
本明細書に開示した実施形態の非限定的例には下記が含まれる:
1.基質であって、その基質の少なくとも一部分はコーティング組成物の連続層でコーティングされており、そのコーティング組成物は、A)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー、および/またはB)
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;および
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合
を含むデキストランを含み、
デキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである基質。
【0061】
2.水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、Gtf Jとの90%以上の配列同一性を有するグルコシルトランスフェラーゼ酵素によって製造される、実施形態1の基質。
【0062】
3.水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、95%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む、実施形態1または2のいずれか1つの基質。
【0063】
4.コーティング組成物は、さらに1種以上の添加物を含む、実施形態1、2または3のいずれか1つの基質。
【0064】
5.コーティング組成物には、デンプンもしくはヒドロキシアルキルデンプンが本質的に存在しない、実施形態1、2、3または4のいずれか1つの基質。
【0065】
6.水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、99%以上のα-1,3-グリコシド結合および1%未満のα-1,3,6-分岐点を含む、実施形態1、2、3、4または5のいずれか1つの基質。
【0066】
7.基質は、耐グリース性および/または耐油性である、実施形態1、2、3、4、5または6のいずれか1つの基質。
【0067】
8.α-(1,3→グルカン)ポリマーの乾燥層は、0.1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲内の厚みを有する層を形成する、実施形態1、2、3、4、5、6または7のいずれか1つの基質。
【0068】
9.基質は、セルロース基質、ポリマー、紙、織物、板紙、厚紙または段ボールである、実施形態1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか1つの基質。
【0069】
10.
1)A)アルカリ金属水酸化物水溶液中の90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点および55~10,000の範囲内の数平均重合度を有する水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー、および/またはB)デキストラン水溶液を含む水性コーティング組成物であって、そのデキストランは:
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;および
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合
を含み、
ここでデキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである水性コーティング組成物を提供する工程;
2)基質の少なくとも一部分にコーティング組成物水溶液の層を塗布する工程;および
3)塗布された層から少なくとも一部分の水を除去する工程を含み、
ここで乾燥させたコーティング組成物の層は、基質上に連続層を形成する方法。
【0070】
11.塗布層を水で洗浄する工程を、3)水の少なくとも一部分を除去する工程の前または後にさらに含む、実施形態10の方法。
【0071】
12.塗布層を酸性水溶液で洗浄する工程を、3)水の少なくとも一部分を除去する工程の前または後にさらに含む、実施形態10または11のいずれか1つの方法。
【0072】
13.乾燥層は、0.1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲内の厚みを有する層を形成する、実施形態10、11または12のいずれか1つの方法。
【0073】
14.水を除去する工程は、蒸発、加熱またはそれらの組み合わせによって実施される、実施形態10、11、12または13のいずれか1つの方法。
【0074】
15.デキストランは:
(i)1位および6位で結合した約89.5~90.5重量%のグルコース;
(ii)1位および3位で結合した約0.4~0.9重量%のグルコース;
(iii)1位および4位で結合した約0.3~0.5重量%のグルコース;
(iv)1位、3位および6位で結合した約8.0~8.3重量%のグルコース;および
(v)
(a)1位、2位および6位、または
(b)1位、4位および6位
で結合した約0.7~1.4重量%のグルコースを含む、実施形態1の基質。
【0075】
16.デキストランは、分岐鎖構造内で一緒に結合した鎖を含み、それらの鎖は長さが類似であり、実質的にα-1,6-グリコシド結合を含む、実施形態1または15のいずれか1つの基質。
【0076】
17.平均鎖長は、約10~50モノマー単位である、実施形態1、15または16のいずれか1つの基質。
【0077】
18.デキストランの重量平均分子量は、8,000万~1億2,000万ダルトンである、実施形態1、15、16または17のいずれか1つの基質。
【0078】
19.デキストランのz平均回転半径は、230~250nmである、実施形態1、15、16、17または18のいずれか1つの基質。
【0079】
20.基質であって、その基質の少なくとも一部分はコーティング組成物の連続層でコーティングされており、そのコーティング組成物は第4級アンモニウムポリα-1,3-グルカンを含む基質。
【0080】
21.コーティング組成物は、さらに1種以上の添加物を含む、実施形態20の基質。
【0081】
22.コーティング組成物には、デンプンもしくはヒドロキシアルキルデンプンが本質的に存在しない、実施形態20または21の基質。
【0082】
23.基質は、耐グリース性および/または耐油性である、実施形態20、21または22の基質。
【0083】
24.乾燥層は、0.1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲内の厚みを有する、実施形態20、21、22または23の基質。
【0084】
25.基質は、セルロース基質、ポリマー、紙、織物、板紙、厚紙または段ボールである、実施形態20、21、22、23または24の基質。
【実施例】
【0085】
他に特に明記しない限り、全ての成分はSigma-Aldrich,St.Louis,Missouriから入手できる。
【0086】
PENFORD(登録商標)Gum270デンプンは、Ingredion,Inc.,Westchester,Illinoisから入手できる。
【0087】
水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーは、米国特許第8,871,474号明細書に記載の方法にしたがって製造された。このポリマーは、約300の数平均重合度および>98%のα-1,3-グリコシド結合を有していた。
【0088】
コーティング組成物#1の調製
14.99gのグルカンポリマー#1を水40.01gと混合し、均質分散液が得られるまでローターステーターを使用して撹拌した。次にこの分散液に5.02gの40%の水酸化ナトリウム溶液を加え、溶液が形成されるまで撹拌を継続した。
【0089】
比較コーティング組成物Aの調製
19.98gのPENFORD(登録商標)gum270を水80.04gと混合し、均質スラリーが形成されるまで撹拌した。この混合物を濃度が高くなるまで混合しながら加熱した。熱源を取り除き、基質上にコーティングするために十分冷めるまでこの混合物を手動で撹拌した。
【0090】
耐グリース性および耐油性試験
全試験は、パルプ製紙業界技術協会(TAPPI)試験方法T-559を使用して実施した。
【0091】
コーティング組成物は0.127mm(ミリメートル)または0.203mmに設定したギャップを備えるMyerバーを使用して食品包装紙用の紙に塗布した。コーティングした紙は、次に対流式オーブン内で乾燥させた。TAPPI試験を使用して試験すると、比較コーティング組成物Aは試験#1に不合格であったが、コーティング組成物#1は試験#1および#5に合格した。
【0092】
コーティング組成物#2の調製
4.5重量%のNaOH水溶液中の水不溶性α-(1,3→グルカン)ポリマーの12重量%溶液は、溶液が形成されるまで撹拌することによって生成した。
【0093】
NK-40型の無漂白クラフト紙を基質として使用した。
【0094】
製紙産業において一般的な手順にしたがって、グルカン溶液をNK-40型の無漂白クラフト紙基質上に手作業でコーティングした。コーティング重量の尺度を得るために、新規にコーティングした紙とコーティングしていない紙との重量差に固体率(この場合には16.5%)を掛け、コート紙の面積で割った。コーティングは、紙の手作業でのコーティングのために「0」、「10」および「20」メイヤー(Mayer)ロッドを使用して実施した。コーティングは、3回ずつ実施した。コーティング重量の平均値および相対標準誤差を下記の表1に示した。コート紙は、105℃で5分間乾燥させた。次に紙を少なくとも24時間にわたり室温に放置した。
【0095】
【0096】
耐グリース性は、標準「キット」型の試験(TAPPI T559標準)を使用して測定した。グルカンコーティングは、全コーティング重量についてクラフト紙の耐グリース性の劇的な改善を付与した。コート紙の「ガーレー(Gurley)」空隙率および「シェフィールド(Sheffield)」粗さは、TAPPI T-460およびTAPPI T536-88標準法にしたがって、Technidyne Corporation,New Albany,Indianaによって製造された「PROFILE Plus粗さおよび空隙率テスター」を使用して測定した。これらの測定結果もまた上記の表に示した。コート紙の空隙率は、より高いガーレー数によって指示されたように劇的に低下した。最大コーティング重量では、ガーレー空隙率値もまた正確に測定するには高過ぎた。コーティングは、シェフィールド粗さパラメーターによって指示されたように、紙により平滑な表面を付与した。
【0097】
デキストランポリマーの調製
大腸菌(E.coli)内でのグルコシルトランスフェラーゼ(0768)の発現および活性粗酵素溶解物の生成
本実施例では、大腸菌(E.coli)内での成熟グルコシルトランスフェラーゼ(gtf)酵素の発現について説明する。大腸菌(E.coli)発現菌株の粗細胞溶解物を生成すると、これはスクロースの存在下でゲル生成物形成活性を示した。
【0098】
1,484個のアミノ酸を有する推定上のYGリピート含有ヒドロラーゼ(GENBANK内でGI番号339480768に分類されたが、現在はGI番号497964659を有する)は、全ゲノムショットガンシーケンシングによってロイコノストック・シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)菌株KCTC3652から同定された。この推定グルコシルトランスフェラーゼ(本明細書ではgtf0768と称する)は、グルカン結合ドメインを含有するグリコシルヒドロラーゼのGH70ファミリーに属する。gtf0768のN末端37アミノ酸セグメントは、SIGNALP 4.0プログラム(Petersen et al.,Nature Methods 8:785-786)によって酵素のシグナルペプチドであると推定された。
【0099】
gtf0768の細菌発現のためのプラスミドを構築するために、シグナルペプチドを伴わないgtfの成熟形をコードするDNA配列は、GenScript USA Inc.(Piscataway,NJ)によって構築された。合成された配列は、pET23D+ベクター(Novagen(登録商標);Merck KGaA,Darmstadt,Germany)のNheIおよびHindIII部位内にサブクローニングされた。この構築物によってコードされた0768gtf(配列番号2)は、gtf0768の野生型成熟(予測)形と比較して、N末端で開始メチオニンおよび3個の追加アミノ酸(Ala-Ser-Ala)およびC末端で6個のヒスチジン残基を含んでいた。プラスミド構築物の配列を確認し、アンピシリン選択を行って大腸菌(E.coli)BL21 DE3宿主細胞内に形質転換させると、発現菌株EC0052が生じた。
【0100】
EC0052の細胞および空のpET23D+ベクターだけを含有するコントロール菌株は、100μg/mLのアンピシリンを加えたLB培地中で約0.5のOD600へ増殖させ、次に3時間にわたり37℃で1mMのIPTGを用いて誘導した、または23℃で一晩誘導した。この誘導期間後、細胞を4,000×g、10分間の遠心分離によって収集し、PBSバッファー(pH6.8)中に再懸濁させた。次に、細胞を14,000psi(約96.53MPa)でFrench Pressに2回通すことにより溶解し、その後、細胞破片を15,000×gで20分間遠心分離することによりペレット化した。各粗細胞溶解物の上清を等分し、-80℃で凍結させた。
【0101】
EC0052細胞由来の粗細胞溶解物の活性は、スクロースとの反応によってチェックした。コントロール反応は、空ベクターを含有する細胞から調製された細胞溶解物を用いて同様に構成した。各スクロース反応は、100g/Lのスクロース、10mMのクエン酸ナトリウム(pH5)および1mMのCaCl2を備える10%(v/v)の細胞溶解物を使用して構成した。2、3時間にわたる37℃での反応のインキュベーション後、その中にEC0052細胞溶解物が加えられていた試験管内で、デキストランであると考えられるゲル様生成物が形成された。コントロール反応中では、ゲル様生成物は形成されなかった。HPLC分析は、EC0052細胞溶解物を含有する反応中ではスクロースが消費されるが、コントロール反応中では消費されないことを確証した。この結果は、EC0052粗細胞溶解物が活性gtf0768酵素を発現すること、およびこのgtfが高粘性を有するデキストラン生成物を生成することを示唆した。
【0102】
デキストランポリマー#1の調製
20mMのリン酸ナトリウムバッファー(バッファーは1Mストック(pH6.5)からのddH2Oを用いて希釈した)、100g/Lのスクロースおよび上記で生成した25単位(2mL/L)のgtf0768酵素溶液を含有する12mLの反応を調製した。この反応を25℃で27時間にわたり100rpmでインキュベーターシェーカー内(Innova,Model 4000)で振とうした。
【0103】
gtf酵素は、反応を10分間にわたり85℃で加熱することによって非活性化した。次に、粘性生成物を沈降させるために、非活性化粘性反応をメタノールと混合した。白色沈降物が形成された。上清を注意深くデカンテーションした後に、白色沈降物をメタノールを用いて2回洗浄した。固体生成物を45℃で48時間、オーブン内で真空乾燥させた。
【0104】
反応のサンプル(1mL)をそれぞれ0、0.5、1、2および24時間後に取り出した。gtf酵素は、各サンプル中で10分間にわたり80℃で加熱することによって非活性化した。各サンプルは次に、無菌水を用いて10倍に希釈した。500μLの希釈サンプルを遠心管フィルター(SPIN-X、0.45μmのナイロン、2.0mLのポリプロピレンチューブ、Costar製品番号8170)中に移し、卓上遠心分離機内で12,000rpmで60分間遠心し、その後にHPLC分析のために200μLの貫流量を使用して反応中のスクロース消費率を測定した。各サンプルを分析するために次のHPLC条件を適用した:カラム(AMINEX HPX-87C炭水化物カラム、300×7.8mm、Bio-Rad、製品番号125-0095)、溶離液(水)、流量(0.6mL/分)、温度(85℃)、屈折率検出器。サンプルのHPLC分析は、0768gtf反応中の実質的なスクロース消費を指示した。
【0105】
さらにHPLCを使用して、反応の他の生成物を分析した。ポリマー収率は、反応中に残留した全部の他の糖類の量を出発スクロースの量から減じることによって逆算した。逆算した数値は、粘性生成物の乾燥重量分析と一致した。スクロース、ロイクロース、グルコースおよびフルクトースは、HPX-87Cカラムを用いるHPLC(上述したHPLC条件)によって定量した。DP2-7二糖類は、次の条件を用いてHPLCによって定量した:カラム(AMINEX HPX-42A炭水化物カラム、300×7.8mm、Bio-Rad、製品番号125-0097)、溶離液(水)、流量(0.6mL/分)、温度(85℃)、屈折率検出器。これらのHPLC分析は、0768gtf反応のグルコシル含有糖生成物が92.3%のポリマー生成物、1.3%のグルコース、5.0%のロイクロースおよび1.4%のDP2~7オリゴ糖から構成されることを指示した。
【0106】
上記の反応の乾燥デキストラン粉末生成物のサンプル(約0.2g)を分子量分析のために使用した。分子量は、3基のオンライン検出器:Waters製の示差屈折計2414、Wyatt Technologies(Santa Barbara,CA)製の準弾性光散乱(WELS)検出器を備えるWyatt Technologies(Santa Barbara,CA)製のHeleos(商標)2 18角度 多角度光散乱(MALS)測光計およびWyatt製のViscoStar(商標)示差毛細管式粘度計と結合したWaters Corporation(Milford,MA)製のALLIANCE(商標)2695分離モジュールを使用するフローインジェクションクロマトグラフィー法によって決定した。乾燥デキストラン粉末を、200ppmのNaN3を含有する水性Tris(Tris[ヒドロキシメチル]アミノメタン)バッファー(0.075M)中に0.5mg/mLで溶解させた。デキストランの溶解は、50℃で一晩振とうすることによって達成した。Agilent Technologies(Santa Clara,CA)からの2基のAQUAGEL-OH GUARDカラムを使用してインジェクションピークからデキストランポリマーのピークを分離した。この手順についての移動相はデキストラン溶媒と同一であり、流量は0.2mL/分であり、インジェクション量は0.1mLであり、カラム温度は30℃であった。データ収集のためにはWaters製のEMPOWER(商標)バージョン3のソフトウェアを使用し、マルチ検出器データ整理のためにはASTRA(商標)バージョン6のソフトウェアを使用した。
この研究から、デキストランポリマー生成物が78.6×106g/モル(すなわち、大まかに7,800万ダルトン)の重量平均分子量(MALS分析から)、213nmのz平均回転半径(MALS分析から)および187nmのz平均流体力学半径(QELS分析から)を有すると決定された。
【0107】
デキストランポリマー#1を含む紙コーティング
12および15重量%のデキストランポリマー#1の水溶液は、脱イオン水を使用して調製した。混合液は、溶液が形成されるまで撹拌した。水性コーティング組成物は、1本以上のメイヤーロッドを使用してNK-40型無漂白クラフト紙上にコーティングした。コート紙は105℃で5分間乾燥させ、次に標準温度で一晩放置した。3回の反復についての平均コーティング重量は6.4g/m2±2.5%の相対標準誤差であった。
【0108】
【0109】
耐グリース性は、標準「キット」型の試験(TAPPI T559標準)を使用して、1試験当たり3回ずつ測定した。上記のデキストランコート紙およびコントロールとしてコーティングしていない同一タイプの紙を使用した。コントロールの紙はキット値0で不合格であったが、デキストランコート紙は、コーティング厚みに依存して、キット値3~4、7~8もしくは10~11に達して不合格となったので、未処理コントロールと比較してはるかに改善された耐グリース性を示した。「ガーレー」空隙率は、コート紙を100mLの空気が通過するために要する秒数を測定する。コート紙のガーレー空隙率およびシェフィールド粗さはどちらも、TAPPI T-460およびTAPPI T536-88標準法にしたがって、Technidyneによって製造された「PROFILE Plus粗さおよび空隙率テスター」を使用して測定した。
【0110】
化学修飾多糖類を含む数種の多糖類を使用して、紙上の多糖類を含むコーティング組成物のグリースバリア特性を評価した。全てのコーティング組成物は水性であった。各コーティング組成物は、表3に示した所望の固体濃度を用いて調製した。ポリマー溶液は、下記で説明するように、水中に混合しながら直接的に溶解させた。
【0111】
コーティング組成物#3の調製
このコーティング組成物は、デキストランポリマー#2を含んでいた。デキストランは、米国特許出願公開第2016/0122445(A1)号明細書に開示されたように調製した。デキストランポリマー#2の10重量%の水溶液を調製した。
【0112】
比較コーティング組成物Bの調製
10重量%のポリビニルアルコール(Elvanol 80-18)水溶液を含有する比較コーティング組成物を調製した。この比較組成物は、多糖を含有していなかった。
【0113】
コーティング組成物#4の調製
このコーティング組成物は、75%のポリビニルおよび25%のα-(1,3→グルカン)ポリマーを含んでいた。グルカンポリマーは、最終組成物が75重量部のポリビニルアルコール(PVOH)および25重量部のグルカンを有しているようにPVOH溶液中に分散させた。PVOHは、溶解させるために70~90℃に加熱した。
【0114】
コーティング組成物#5の調製
このコーティング組成物は、第4級アンモニウムポリα-1,3-グルカン、特別にはトリメチルアンモニウムヒドロキシプロピルポリα-1,3-グルカンを含んでいた。第4級アンモニウムポリα-1,3-グルカンおよびそれらの調製は、国際公開第2015/195960号パンフレットに記載されている。10gのポリα-1,3-グルカン(Mw[重量平均分子量]=168,000)を、温度監視用の熱電対、再循環浴に接続したコンデンサーおよびマグネティック・スターバーを装備した容量500mLの丸底フラスコ中の100mLのイソプロパノールに加えた。この調製物に30mLの水酸化ナトリウム(17.5%溶液)を滴下し、次にこれを加熱板上で25℃に加熱した。この調製物を1時間撹拌すると、温度が55℃に上昇した。反応を得るために、次に3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-トリメチルアンモニウムクロリド(31.25g)を加え、これを55℃で1.5時間保持し、その後に90%の酢酸を用いて中和した。このようにして生成した固体(トリメチルアンモニウムヒドロキシプロピルポリα-1,3-グルカン)を真空濾過により収集し、エタノール(95%)で4回洗浄し、20~25℃の真空下で乾燥させ、NMRおよびSECによって分析して分子量およびDoSを決定した。DoSは0.8であった。
【0115】
上記のコーティング組成物のそれぞれは、マイヤーロッドを使用して175もしくは176g/m2のクラフトカード用紙(Recollections、65ポンド(lb)/176坪量(gsm))基質上に手作業でコーティングした。コーティングしていないカード用紙は、下記の表およびコーティング手順の下記の説明では「ベース紙」と呼ぶ。ハンド・ドローダウンコーティングに使用するベース紙を平滑面上に配置し、その表面に固定するために縁をテープ留めした。上端およびコーティング溶液(2~5mL)まで3~5cmであるベース紙の上端上の所望のコーティングロッド(バー)を一直線でコーティングロッド(バー)の下方に向けて均一に塗布する。ロッド(バー)とロッドの各側に保持された2本のハンドを紙の上端から下端まで一定の安定した速度で、両側に均一な握力を加えながらドローダウンした。ロッドは、ドローダウンプロセス中に回転させてはならない。湿潤コート紙は、乾燥工程中のカーリングを回避するために縁上に重りまたはテープを用いて平坦面上に配置した。乾燥を加速するために、ファン/ホットガンを使用して表面を乾燥させることができる。
【0116】
コート基質は、105℃で5分間乾燥させた。コーティング重量は、コーティングしていない紙とコート紙との間の質量差によって決定し、面積により正規化した。
【0117】
コーティング組成物のグリースバリア特性は、TAPPI T559cm-02試験にしたがって標準「キット」型試験を使用して評価した。数値は、1~12(1は最低の性能能力であり、12は最高である)である。結果は、表3に表示した。
【0118】
PVOHは優秀なグリースバリア特性を有することが公知であり、多糖類系コーティング組成物の多くは類似のコーティング重量で匹敵するグリースバリア性能を有することを証明した(詳細については下記の表を参照されたい)。
【0119】
【0120】
鉱油飽和炭化水素(MOSH)および鉱油芳香族炭化水素(MOAH)に対するバリアは、再生紙の使用が増加するにつれて(インク汚染の量が増加するにともなって)ますます重要になりつつある。したがって、特に食品包装に使用される紙では、鉱油の移動を回避するためのバリアコーティングが必要とされる。MOSHおよびMOAH値が低いほど、コーティング性能は良好である。
【0121】
3種のコーティング組成物をMOSHおよびMOAHバリア保護について評価した。コーティング組成物は、本明細書で上述した通りであった。コーティング重量および結果は、表4に報告した。
【0122】
MOSHおよびMOAH(10日間、40℃)バリア分析は、「Barriers Against the Migration from Recycled Paper Board into Food:Measuring Efficiency by Surrogate Components」(Biedermann-Brem and Krob,Pack Techno.Sci,02/2014)に詳述された方法にしたがって実施した。紙(供与体)は鉱油(Gravex 913)を用いてスパイクし、試験バリアを移動セル内に配置した。Tenax(登録商標)(受容体)は、移動させられる鉱油の吸収剤として使用する(サンプルとは直接接触させない)。きつくキャップを閉めた移動セルは、10日間にわたり40℃で保管した。これに続いて、Tenax(登録商標)は有機溶媒を用いて抽出し、抽出物は鉱油上のオンライン-HPLC-GC-FIDを用いて測定した。2つずつの各サンプルに加えて、陽性コントロール(透過性用紙の代わり)および陰性コントロール(バリアとして使用したアルミニウムホイル)も同様にランした。全コート基質サンプルは、10cm×10cmの寸法を有していた。
【0123】
表4におけるMOSHおよびMOAHの結果は、コーティング組成物#5におけるような水溶性カチオン性グルカンを含有するコーティング組成物がPVOHのバリア性能に匹敵する並外れたバリア性能を示すことを証明している。
【0124】