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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ボールペンチップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B43K1/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019036688
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138479
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
(72)【発明者】
【氏名】光崎 嘉人
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184373(JP,A)
【文献】特開2013-173276(JP,A)
【文献】特開2009-006637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ本体が軸心に沿った方向に貫通するインキ流通孔を備え、前記インキ流通孔が、該インキ流通孔の前部に形成され底壁を備えたボール包持室と、当該インキ流通孔の後部に形成され前壁を備えたチップ後部孔と、前記ボール包持室の中央から後方へ向って延び前記チップ後部孔と連通するインキ連絡路と、前記インキ連絡路から放射状に延びるインキ流通溝と、を有し、前記ボール包持室にはボールが挿置され、前記ボールの一部をチップ先端部より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップにおいて、
前記インキ流通溝が、前記ボール包持室の底壁から後方へ向って形成され前記チップ後部孔に連通しない第一インキ溝と、前記チップ後部孔の前壁から前方へ向って形成され前記ボール包持室に連通しない第二インキ溝と、を備え、
前記第一インキ溝と前記第二インキ溝とが接することなく、前記インキ連絡路を介して連通するよう形成され、第一インキ溝の溝幅が第二インキ溝の溝幅より大きく形成され、
前記ボールの後方に、当該ボールに当接する棒状部を備えたコイルスプリングが配設され、
前記棒状部は前記第二インキ溝内に入らないように構成され、
前記チップ本体の軸心に沿った方向と直交する方向(側面方向)から視たときに、前記第一インキ溝の後部と前記第二インキ溝の前部とが、部分的に重なるように配設され、
前記第一インキ溝の溝深さをX、当該第一インキ溝と前記第二インキ溝が軸方向において重なる長さをYとしたとき、Y≧0.2Xの関係式を満たすように構成したことを特徴とするボールペンチップ。
【請求項2】
前記第一インキ溝と前記第二インキ溝とが、 前記チップ本体の軸心に沿った方向と直交する横断面において、 軸周上に交互に配列されたことを特徴とする請求項1に記載のボールペンチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用のボールペンチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸心に沿った方向に貫通するインキ流通孔が形成され、該インキ流通孔から放射状に延びる放射状溝が連通するボール抱持室内の底壁にボールを挿置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端部より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップについてよく知られている。
【0003】
こうした従来のボールペンチップにおいて、特許文献1(実公平06-38709号公報「ボールペン」)に開示されているように、インキ流通孔から放射状に延びるインキ流通溝をチップ後部孔に達しない形状のボールペンチップや特許文献2(特開平07-214969号公報「ボールペンチップ」)に開示されているようなインキ流通溝がチップ後部孔に達する形状のボールペンチップもよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平06-38709号公報
【文献】特開平07-214969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したインキ流通溝は、使用するインキの性能によって使い分けている。具体的には、水性ボールペンインキは、筆記の時に紙面に浸透して筆跡となり、インキ吐出量も多いため、特許文献2のようにインキ流通溝をチップ後部孔に達する形状としてある。一方、油性ボールペンインキの場合には、ボールの表面に載ったインキを紙面に転写して筆跡となるため、水性ボールペン用インキに比べてインキ吐出量も少なく、特許文献1のようにインキ流通溝をチップ後部孔に達しない形状とすることが一般的である。
【0006】
ところで、ステンレス鋼等の金属線材からボールペンチップを作製するには、切削加工やパンチ加工等による塑性変形によって所望する形状としてあり、インキ流通溝の場合には、ボール抱持室の底壁に溝形成用ツールを打ち込むことによって塑性変形させて形成している。そのため、押圧距離の短いインキ流通溝をチップ後部孔に達しない形状に比べ、インキ流通溝がチップ後部孔に達する形状のほうが溝形成用ツールへの負担が大きく、その寿命も短いという問題があった。また、インキ流通溝がチップ後部孔に達するように溝形成用ツールで打ち抜くと、打ち抜き時に端部にバリが発生する場合があり、そのバリ取りを行うために別途バリ取り工程を設けねばならず、コストが増大すると共に、バリが取りきれずにボールペンチップ内に残ることでインキ出不良が発生する虞があった。
また、特許文献1のようにインキ流通溝をチップ後部孔に達しない形状とする場合は、チップ後部孔からインキ流通溝へインキが流れる過程で一時的にインキが流れる流路が狭くなることから、インキの流れが阻害されてボール包持室へ十分なインキが供給されない虞があった。
【0007】
本発明はこれらの従来技術に鑑みてなされたものであって、チップ加工時にバリの発生を防ぎ、且つ、インキの種類に限定されることなく良好なインキ吐出量が得られるボールペンチップを簡単な構造で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.チップ本体が軸心に沿った方向に貫通するインキ流通孔を備え、前記インキ流通孔が、該インキ流通孔の前部に形成され底壁を備えたボール包持室と、当該インキ流通孔の後部に形成され前壁を備えたチップ後部孔と、前記ボール包持室の中央から後方へ向って延び前記チップ後部孔と連通するインキ連絡路と、前記インキ連絡路から放射状に延びるインキ流通溝と、を有し、前記ボール包持室にはボールが挿置され、前記ボールの一部をチップ先端部より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップにおいて、
前記インキ流通溝が、前記ボール包持室の底壁から後方へ向って形成され前記チップ後部孔に連通しない第一インキ溝と、前記チップ後部孔の前壁から前方へ向って形成され前記ボール包持室に連通しない第二インキ溝と、を備え、
前記第一インキ溝と前記第二インキ溝とが接することなく、前記インキ連絡路を介して連通するよう形成され、第一インキ溝の溝幅が第二インキ溝の溝幅より大きく形成され、
前記ボールの後方に、当該ボールに当接する棒状部を備えたコイルスプリングが配設され、
前記棒状部は前記第二インキ溝内に入らないように構成され、
前記チップ本体の軸心に沿った方向と直交する方向(側面方向)から視たときに、前記第一インキ溝の後部と前記第二インキ溝の前部とが、部分的に重なるように配設され、
前記第一インキ溝の溝深さをX、当該第一インキ溝と前記第二インキ溝が軸方向において重なる長さをYとしたとき、Y≧0.2Xの関係式を満たすように構成したことを特徴とするボールペンチップ。
2.前記第一インキ溝と前記第二インキ溝とが、 前記チップ本体の軸心に沿った方向と直交する横断面において、 軸周上に交互に配列されたことを特徴とする前記1項に記載のボールペンチップ。」である。
尚、本発明では、チップ本体のボール包持室がある側を前方と表現し、その反対方向を後方と表現する。また、チップ本体のインキ連絡路がある軸心側を内方と表現し、その反対方向を外方と表現する。
【0009】
本発明によれば、インキ流通溝(第一インキ溝、第二インキ溝)をチップ本体におけるインキ流通孔の前後両方向より形成しているため、チップ後部孔からボール包持室へのインキの流動性が向上し、チップ先端からのインキ吐出量が安定することで筆記時における筆跡の濃度、線幅が安定すると共にかすれ等が発生することを防止できる。
また、第一インキ溝と第二インキ溝とを、各々チップ後部孔とボール包持室に連通しない深さで形成することで、一般的なボールペンチップのように、インキ流通溝を溝形成用ツールを打ち込むことで形成する場合は、打ち抜きしないことで抜けバリの発生を抑制することができ、これによりバリを除去するための工程を省くことができる。また、溝形成用ツールを打ち抜かない位置で止める為、ツールに与える負荷が軽減されと共にツールの破損を防止して寿命を延ばすことができる。
【0010】
また、チップ本体の軸心に沿った方向と直交する横断面において、第一インキ溝の後部と第インキ溝の前部とが、同横断面上に配設されるよう構成してもよく、この場合、チップ後方側から流れてきたインキがチップ後部孔の前壁から第二インキ溝に入り、第二インキ溝からインキ連絡路を介して第一インキ溝に移る際に、横断面におけるインキ流通路の面積が、軸心に沿った方向において、溝同士が重なっている間だけ第一インキ溝分広くなることで、インキが淀むことなく第一インキ溝に入り、第一インキ溝からボール包持室にインキがスムーズに供給されることから、インキが潤沢に供給されることで安定した筆跡で筆記することができる。そして、第一インキ溝と第二インキ溝とは接することなく、インキ連絡路を介して連通するよう形成されていることから、横断面において接触しないようインキ連絡路を軸にして一定角度ずれて形成される。このため、第二インキ溝を進んできたインキはインキ連絡路を介して第一インキ溝に入っていく過程でインキに渦状の流れができ、インキが攪拌されることで均一な濃度や色の筆跡を維持することができる。
【0011】
更に、第一インキ溝と第インキ溝とが、チップ本体の軸心に沿った方向と直交する横断面において、 軸周上に交互に配列されるよう構成してもよく、この場合、第二インキ溝から第一インキ溝にインキ連絡を介してインキが流れる際、横断面において第二インキ溝の両隣に第一インキ溝が配置されることから、第二インキ溝から第一インキ溝へのインキの流れがスムーズになり、流動性が向上すると共に、第一インキ溝と第二インキ溝とが軸周上に均等配置されることから、チップ加工時に加工部が変形し難く、精度のよい加工ができる。
尚、インキ流通溝(第一インキ溝、第二インキ溝)の形状は特に限定されることはないが、各々のインキ流通溝の先端が内方へ向って縮径するように傾斜した状態(テーパ状)に形成することが好ましく、この場合、傾斜部によりインキの流れが内方のインキ連絡路に向かい易く、インキの流動性が向上すると共に、溝形成用ツールで溝加工する際にツールに与える負荷が減少するため、ツールの寿命を延ばすことができる。
【0012】
そして、水性インキ用のボールペンチップの場合、インク漏れやインキ中の水分の蒸発を防止する目的でボールを後ろからスプリングを用いて支える構造をとることが多い。このため、インキ連絡路内にスプリングが入ることでインキ連絡路内を流れるインキの容積低下が著しくなることから、本発明の構造を用いることによりスプリングがあっても第二インキ溝から第一インキ溝へとインキが流れる流動路があることでスムーズなインキの流動が行われるため本発明の効果が顕著となる。
尚、スプリングを入れる場合、スプリングの先端はボールの中心に当接するように配置することがボールの回転が安定するため好ましいが、インキ流通溝がスプリングの先端部の幅より大きくなると、スプリングの先端部がインキ流通溝に入ってしまいボールの中心に当たらなくなる場合がある。しかし、本発明の場合は、第一インキ溝と第二インキ溝とを直接連通しないように形成してあるため、第二インキ溝をスプリングの先端部より狭く形成しておけばスプリングのセンタリングが保たれるため、第一インキ溝をスプリング先端部より大きく形成する事でインキの流動性を更に向上させることができる。
【0013】
また、チップ本体を軸心方向に対して垂直方向から視たときに、第一インキ溝の後部と第二インキ溝の前部とが重なる長さをY、第一インキ溝の軸心方向に沿った溝深さをXとしたとき、Y≧0.2Xの関係式を満たすように構成することが好ましく、この場合、チップ本体の後部にあるインキ収容部から流れてきたインキが第二インキ溝から第一インキ溝に移るための長さがしっかり確保され、ボール包持室へのインキ供給がスムーズに行われることから、筆跡が安定する効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チップ加工時にバリの発生を防ぎ、且つ、インキの種類に限定されることなく良好なインキ吐出量が得られるボールペンチップを簡単な構造で提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のボールペンチップの一部省略した要部拡大縦断面図である。
図2図1におけるボールを除いたA-A断面図であり、一部省略した図である。
図3図1におけるB-B断面図であり、一部省略した図である。
図4】ボールペンチップの一部省略した要部拡大縦断面図である。
図5】実施例1のボールペンチップを用いたボールペンレフィルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施例1
図1から図3に示すように、実施例1のボールペンチップ1は、前後に貫通しインキ5が流れるインキ流通孔2aを備えたチップ本体2と、インキ流通孔2aから放射状に延びたインキ流通溝2fと、を有し、インキ流通孔2aの前端側に形成されたボール包持室2bの底壁2cに設けた筆記用のボールと略同形のボール座2hに、ボール径0.5mmのボール3を積載し、チップ先端部2iより突出するように回転自在に包持して構成してある。
【0017】
インキ流通孔2aのボール包持室2bには、図1に示すように、後部が縮径されることで底壁2cが形成され、ボール包持室2bの中央部には径小のインキ連絡路2dが後方へ延びる様に形成してある。また、インキ連絡路2dの後端は拡径されたチップ後部孔2eに連設してある。
また、インキ連絡路2dには、インキ連絡路2dの外周部から外方へ向って放射状に延びるように形成されたインキ流通溝2f(第一インキ溝2f1、第二インキ溝2f2)を形成してある。
【0018】
インキ溝2f(第一インキ溝2f1、第二インキ溝2f2)の形成方法は、特に限定されるものではないが、本実施例では、 第一インキ溝2f1は、ボール包持室2bの底壁2cに溝形成用ツールを前方から打ち込むことで塑性変形させて形成してある。尚、第一インキ溝2f1は、チップ後部孔2eに達しない深さで打ち込んであり、チップ後部孔2eを抜けるように打ち抜き加工を行わないことでバリの発生を防止すると共にツールへの負荷を低減することで、ツールの破損や磨耗が防止される。
【0019】
また、第二インキ溝2f2は、チップ後部孔2eの前壁2gに溝形成用ツールを後方から前方へ向って打ち込むことで、インキ連絡路2dから放射状に延びるように第二インキ溝2f2を形成してある。尚、第二インキ溝2f2は、第一インキ溝2f1同様にボール包持室2bには達しない深さで打ち込んであり、これによりバリの発生と押圧ツールの負荷を低減してある。
【0020】
そして、図2に示すように、放射状に形成された第一インキ溝2f1と第二インキ溝2f2とが、直接連通しないようにチップ本体2の軸心に対して一定の回転角度でずらした位置に形成してある。
具体的に、本実施例では、第一インキ溝2f1を120°間隔で3箇所形成してあり、第二インキ溝2f2は第一インキ溝2f1に対して60°ずらした位置に120°間隔で3箇所形成することで、第一インキ溝2f1と第二インキ溝2f2とが直接連通せず、インキ連絡路2dを介してのみ連通するよう構成した。また、これにより、第一インキ溝2f1と第二インキ溝2f2とが、図2の横断面で見たとき軸周上に交互に形成されるため、第二インキ溝2f2の両隣に第一インキ溝2f1が配置されることからインキの流動性が向上する。
【0021】
また、第一インキ溝2f1と第二インキ溝2f2の軸心に沿った方向における溝深さは、図1のようにチップ本体2を軸心に沿った方向に対して直交する方向(側面方向)から視たときに、軸心に沿った方向において第一インキ溝2f1の後部2jと第二インキ溝2f2の前部2kとが部分的に重なる(オーバーラップする)ように形成してある。
この第一インキ溝2f1の後部2jと第二インキ溝2f2の前部2kとが重なった位置を、図3に示すようにチップ本体2を横断面で視たとき、インキ5が流れる部分の面積が、溝が重なった部分のみ第一インキ溝2f1分増加する。このため、重なった部分を設けることで第二インキ溝2f2から第一インキ溝2f1へのインキ5の流動がスムーズに行われるという優れた効果を奏する。また、第一インキ溝2f1と第二インキ溝2f2とが重なる長さも重要な要素となり、図4に示すように、第一インキ溝2f1の溝深さをX、重なる長さをYとしたとき、インキの流動性を考慮するとY≧0.2Xの関係式を満たすよう構成することが好ましい。具体的に、本実施形態では、第一インキ溝2f1の溝深さXを0.27mm、第一インキ溝2f1の後端と第二インキ溝2f2の前端とが部分的に重なる長さYを0.12mmで形成し、上記関係式を満たすよう構成した。
尚、本発明における第一インキ溝2f1及び第二インキ溝2f2の溝深さは、図4に示すように、インキ連絡路2dと連接している内周部で計測した。
【0022】
また、第一インキ溝2f1の後端2mと第二インキ溝2f2の前端2nとを各々内方へ向って縮径するように傾斜した状態(テーパ状)に形成してあり、この傾斜により第二インキ溝2f2の先端まで流れてきたインキ4がインキ連絡路2dに流れ易くなると共にインキ連絡路2dから第一インキ溝2f1に流れ易くなることから、第二インキ溝2f2から第一インキ溝2f1へ流れるインキ4の流動が更にスムーズになる効果を奏する。 具体的に、本実施例では第一インキ溝2f1の後端2mと第二インキ溝2f2の前端2nの傾斜角度は軸心に沿った方向に対して45°で形成してある。
【0023】
また、ボール3の後方には棒状部4aの先端4bがボール3と当接するようにコイルスプリング4を配設してあり、コイルスプリング4の弾発力でボール3を前方へ弾発してある。そして、筆記時には筆圧によりボール3に後方側への押圧力が掛かることで、ボール3とチップ先端部2iの内壁との間に隙間が形成され、インキ5を筆記面へと流出させる弁機構を構成してある。
尚、コイルスプリング4をチップ本体2の後方から挿入して装着する際、第一インキ溝2f1をチップ後部孔2eに達しないよう形成しているため、チップ後部孔2eの前部にはバリがなくスムーズにインキ連絡路2dに棒状部4aを挿入することができた。
【0024】
更に、本実施例では第一インキ溝2f1の溝幅と第二インキ溝2f2の溝幅とを同じ長さで形成すると共に、その溝幅をコイルスプリング4の棒状部4aより短く形成し、棒状部2aが溝部に入らないようにすることで、棒状部2aのセンタリング性を確保し、ボール3の中央付近に棒状部2aの先端部4bが当接するようにしている。しかしながら、第一インキ溝2f1の溝幅を第二インキ溝2f2の溝幅より大きく形成しても棒状部のセンタリング性には大きな影響がないことから、第一インキ溝2f1と第二インキ溝とが直接連通しない範囲で第一インキ溝2f1の溝幅を大きく形成し、インキ5の流動性を更に向上させてもよい。
【0025】
そして、図5に示すのは、本発明のボールペンチップ1をボールペンレフィル10として用いた例である。具体的には、筒状の連結体11の先端部に本実施例のボールペンチップ1を圧入装着し、連結体の後部にインキ収容体12を圧入装着し、インキ収容筒11内に剪断減粘性を付与した水性ボールペン用のインキ5と、グリース状のインキ追従体14と、を収容してある。
【0026】
次に、図1から図5を用いてインキがチップ本体2の後方にあるインキ収容筒12からチップ先端部2iまで流れる過程を説明する。
ボールペンレフィル10を用いて紙面に筆記すると、インキ収容筒12から流れてきたインキ5は、チップ後部孔2eからインキ連絡路2dに入る際、インキ連絡路2d自体が狭くなる上にコイルスプリング4の棒状部4aにより更にインキ5の流路が狭くなり流動性が低下するが、チップ後部孔2eから前方へ向って形成した第二インキ溝2f2にインキ5が流れることでインキの流動性の低下が低減される。また第二インキ溝2f2の前端2nまで流れてきたインキ5は第二インキ溝2f2の前部2kとオーバーラップさせている第一インキ溝2f1の前部2jに流れるため、スムーズにインキ5がインキ連絡路2dの前部へ流れていき、第一インキ溝2f1とインキ連絡路2dからボール包持室2bにインキ5が供給され、ボ-ル3の周囲にインキ5が流れチップ先端部2iから外部である筆記面へと吐出される。このため、インキ5の流れに淀みが発生し難く、インキの流動性が安定することで筆記時における筆跡濃度の変化、線幅が安定すると共にかすれの発生を防止することができるものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のボールペンチップは、使用するインキに限定されることなく使用可能で、油性ボールペン用インキや水性ボールペン用インキ、剪断減粘性を付与したインキ、修正用インキなど、インキの種類に関わらず使用することができるため、ボールを筆記媒体とするボールペンチップとして広く利用可能であり、特にインキ消費量を多くする場合に効果的に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…ボールペンチップ、
2…チップ本体、2a…インキ流通孔、2b…ボール包持室、2c…底壁、2d…インキ連絡路、2e…チップ後部孔、2f…インキ流通溝(2f1…第一インキ溝、2f2…第二インキ溝)、2g…前壁、2h…ボール座、2i…チップ先端部、2j…後部、
2k…前部、2m…後端、2n…前端、
3…ボール、
4…コイルスプリング、
5…インキ、
10…ボールペンレフィル、
11…連結体、
12…インキ収容筒、
13…尾栓、
14…インキ追従体。
図1
図2
図3
図4
図5