(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】エッチング液組成物及びシラン化合物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
H01L21/308 E
(21)【出願番号】P 2019097131
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0060000
(32)【優先日】2018-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515268869
【氏名又は名称】エスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム チョル ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハム ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】カク ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョン ホ
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2013-0076918(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0066180(KR,A)
【文献】特開2016-029717(JP,A)
【文献】特表2010-515245(JP,A)
【文献】特表2020-503664(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109841511(CN,A)
【文献】特開昭62-283982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸及び下記化学式1で表されるシラン化合物を含むエッチング液組成物。
【化1】
前記化学式1中、
Aはn価ラジカルであり;
LはC
1-C
5のヒドロカルビレンであり;
R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル又はアルコキシであり、R
1~R
3はそれぞれ存在するか、又はヘテロ元素を通じて互いに連結され、
nは2~4の整数である。
【請求項2】
前記R
1~R
3は互いに独立してC
1-C
20アルコキシであるか、又はR
1~R
3は窒素を通じて互いに連結されるC
1-C
20アルコキシである、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記AはC
1-C
20のヒドロカルビレン、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル、結合部位がPであるラジカル又はアミン塩ラジカルである、請求項1又は請求項2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
前記C
1-C
20のヒドロカルビレンはC
1-C
20アルキレン又はC
6-C
20アリーレンである、請求項3に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
前記結合部位がNであるラジカルは*-NR
14-*、*-NR
15CSNR
16-*、*-NR
17CONR
18-*、*-NR
19L
1NR
20-*、*-NR
21CONR
22L
2NR
23CONR
24-*、*-NR
25CONL
3L
4NCONR
26-*、
【化2】
である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
ここで、R
14~R
27は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、
L
1~L
5はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
41(OR
42)pであり、ここでR
41及びR
42は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、
L
6は直接結合又は(CH
2)qNR
43NR
44であり、ここでR
43及びR
44は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【請求項6】
前記結合部位がOであるラジカルは*-O-*である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
【請求項7】
前記結合部位がSであるラジカルは*-S-*、*-S-S-*、
【化3】
である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
【請求項8】
前記結合部位がPであるラジカルは
【化4】
である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
ここで、R
28及びR
29は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、(C
1-C
20)アルコキシ又は(C
1-C
20)アルキル(C
1-C
20)アルコキシである。
【請求項9】
前記アミン塩ラジカルは*-N
+(R
11R
12)X
3
--*又は
【化5】
である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
ここで、R
11及びR
12は独立して、水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、
X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基である。
【請求項10】
nが2である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項11】
前記シラン化合物は下記構造式(1)~(38)から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【化6】
【化7】
【化8】
…[構造式(1)]~[構造式(38)]
(前記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【請求項12】
エッチング液組成物全体に対して前記シラン化合物を0.001~1重量%含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
【請求項13】
下記化学式2で表されるシラン化合物をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
【化9】
前記化学式2中、R
71~R
74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルである。
【請求項14】
アンモニウム塩をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング液組成物、特に、酸化膜のエッチング率を最小化し且つ窒化膜を選択的に除去することができる高選択比のエッチング液組成物に関する。また、本発明はエッチング液組成物の添加剤として用いるのに適したシラン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸化膜(SiO2)などの酸化膜及びシリコン窒化膜(SiNx)などの窒化膜は代表的な絶縁膜であり、これらのシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜は半導体製造工程においてそれぞれ単独で、又は1層以上の膜が交互に積層されて用いられる。また、このような酸化膜及び窒化膜は金属配線などの導電性パターンを形成するためのハードマスクとしても利用される。
【0003】
上記窒化膜を除去するためのウェットエッチング工程では一般にリン酸(phosphoric acid)と脱イオン水(deionized water)の混合物が用いられている。上記脱イオン水はエッチング率の減少及び酸化膜に対するエッチング選択性の変化を防止するために添加されるものであるが、供給される脱イオン水の量の微細な変化でも窒化膜エッチング除去工程に不良が発生するという問題がある。また、リン酸は強酸で腐食性を有しており、取り扱いに困難がある。
【0004】
これを解決するために、従来はリン酸(H3PO4)にフッ酸(HF)又は硝酸(HNO3)などを含むエッチング液組成物を利用して窒化膜を除去する技術が公知となっていたが、却って窒化膜と酸化膜とのエッチング選択比を阻害させる結果をもたらした。また、リン酸とケイ酸塩、又はケイ酸を含むエッチング液組成物を利用する技術も公知となっていたが、ケイ酸やケイ酸塩は基板に影響を及ぼす可能性があるパーティクルを発生させ、却って半導体製造工程に適さないという問題点がある。
【0005】
一方、このような窒化膜の除去のためのウェットエッチング工程でリン酸を利用する場合、窒化膜と酸化膜とのエッチング選択比の低下によって窒化膜のみならずSOD酸化膜までもエッチングされて有効酸化膜高さ(Effective Field Oxide Height、EFH)を調節することが困難となる。そのため、窒化膜の除去のための十分なウェットエッチング時間を確保することができなかったり、追加の工程が必要となったりし、変化を誘発して素子特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
したがって、半導体製造工程で酸化膜に対して窒化膜を選択的にエッチングしながらもパーティクルの発生のような問題点を有しない高選択比のエッチング液組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は酸化膜のエッチング率を最小化し且つ窒化膜を選択的に除去することができ、素子特性に悪影響を及ぼすパーティクルの発生などの問題点を有しない高選択比のエッチング液組成物及び上記エッチング液組成物に用いられるシラン化合物を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はエッチング液組成物を提供しようとするものであり、リン酸及び下記化学式1で表されるシラン化合物を含むエッチング液組成物を提供する。
【0009】
【0010】
上記化学式1中、Aはn価ラジカルであり、LはC1-C5のヒドロカルビレンであり、R1~R3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル又はアルコキシであり、R1~R3はそれぞれ存在するか、又はヘテロ元素を通じて互いに連結され、nは2~5の整数である。
【0011】
一実施形態によれば、上記R1~R3は互いに独立してC1-C20アルコキシであるか、又はR1~R3は窒素を通じて互いに連結されるC1-C20アルコキシであるエッチング液組成物を提供する。
【0012】
一実施形態によれば、上記AはC1-C20のヒドロカルビレン、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル、結合部位がPであるラジカル又はアミン塩ラジカルであるエッチング液組成物を提供する。
【0013】
一実施形態によれば、上記C1-C20のヒドロカルビレンはC1-C20アルキレン又はC6-C20アリーレンであるエッチング液組成物を提供する。
【0014】
一実施形態において、上記結合部位がNであるラジカルは*-NR
14-*、*-NR
15CSNR
16-*、*-NR
17CONR
18-*、*-NR
19L
1NR
20-*、*-NR
21CONR
22L
2NR
23CONR
24-*、*-NR
25CONL
3L
4NCONR
26-*、
【化2】
であるエッチング液組成物を提供し、ここで、R
14~R
27は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、L
1~L
5はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
41(OR
42)pであり、ここでR
41及びR
42は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、L
6は直接結合又は(CH
2)qNR
43NR
44であり、ここでR
43及びR
44は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【0015】
一実施形態において、上記結合部位がOであるラジカルは*-O-*であるエッチング液組成物を提供する。
【0016】
一実施形態において、上記結合部位がSであるラジカルは*-S-*、*-S-S-*、
【化3】
であるエッチング液組成物を提供する。
【0017】
一実施形態において、上記結合部位がPであるラジカルは
【化4】
であるエッチング液組成物を提供し、ここで、R
28及びR
29は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、(C
1-C
20)アルコキシ又は(C
1-C
20)アルキル(C
1-C
20)アルコキシである。
【0018】
一実施形態において、上記アミン塩ラジカルは*-N
+(R
11R
12)X
3
--*又は
【化5】
であるエッチング液組成物を提供し、ここで、R
11及びR
12は独立して、水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基である。
【0019】
一実施形態において、上記nが2であるエッチング液組成物を提供する。
【0020】
一実施形態において、上記シラン化合物は下記構造式(1)~(38)から選択される少なくとも一つであるエッチング液組成物を提供する。
【0021】
【化6】
【化7】
【化8】
…[構造式(1)]~[構造式(38)]
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【0022】
一実施形態において、エッチング液組成物全体に対して上記シラン化合物を0.001~1重量%含むエッチング液組成物を提供する。
【0023】
一実施形態において、下記化学式2で表されるシラン化合物をさらに含むエッチング液組成物を提供する。
【0024】
【0025】
上記化学式2中、R71~R74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルである。
【0026】
一実施形態において、アンモニウム塩をさらに含むエッチング液組成物を提供する。
【0027】
本発明は他の実施形態として、エッチング液組成物に添加されることができる添加剤としてのシラン化合物を提供しようとするものであり、他の実施形態によれば、下記化学式1で表されるシラン化合物を提供する。
【0028】
【0029】
上記化学式1中、R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル又はアルコキシであり、R
1~R
3はそれぞれ存在するか、又はヘテロ元素を通じて互いに連結され、LはC
1-C
5のヒドロカルビレンであり、nは2~4の整数であり、Aは*-N
+R
11R
12X
3
--*、
【化11】
*-NR
19L
1NR
20-*、*-NR
21CONR
22L
2NR
23CONR
24-*、
【化12】
であり、ここで、R
11、R
12、R
19~R
24及びR
27はそれぞれ独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、X
1~X
3は独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であり、L
1及びL
5はC
1-C
20アルキレン又はC
6-C
20アリーレンであり、L
2はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
41(OR
42)
pであり、ここで、R
41及びR
42はC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、L
6は直接結合又は(CH
2)
qNR
43CONR
44であり、ここで、R
43及びR
44は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【0030】
他の実施形態において、上記化学式1で表されるシラン化合物は次の構造式で表される化合物から選択されるものであるシラン化合物を提供する。
【0031】
【発明の効果】
【0032】
本発明によるエッチング液組成物は酸化膜の表面と反応して酸化膜を保護することができる保護膜を形成するシラン化合物を含むことにより酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比が高い。
【0033】
また、本発明のエッチング液組成物を利用すると、窒化膜の除去時に酸化膜の膜質損傷や酸化膜のエッチングによる電気的特性の低下を防止し、パーティクルの発生を防止して、素子特性を向上させることができる。
【0034】
特に、本発明は2以上のシランを含むシラン化合物を用いることにより少量の添加でも優れた選択比が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【
図2】フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0037】
本発明の一実施形態によるエッチング液組成物はリン酸及びシラン化合物を含む。
【0038】
上記リン酸はシリコン窒化物と反応して窒化物をエッチングすることができる。シリコン窒化物とリン酸は下記式のように反応してエッチングされることができる。
【0039】
3Si3N4+27H2O+4H3PO4→4(NH4)3PO4+9SiO2H2O …[式(1)]
【0040】
上記リン酸は、これに限定するものではないが、例えば、濃度80%のリン酸を含むリン酸水溶液であってもよい。上記リン酸水溶液に用いられる水としては、特に限定するものではないが、脱イオン水を利用することが好ましい。
【0041】
上記シラン化合物は次の化学式1で表されることができる。
【0042】
【0043】
上記化学式1中、R1~R3は独立してそれぞれ水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル又はアルコキシであってもよく、上記R1~R3はそれぞれ存在するか、又はヘテロ元素を通じて互いに連結されることができる。より具体的には、R1~R3は独立してC1-C20アルコキシであってもよく、ヘテロ元素である窒素を通じて互いに連結されるC1-C20のアルコキシであってもよい。
【0044】
上記Lは直接結合であってもよく、又はC1-C3のヒドロカルビレン、より具体的にはC1-C3のアルキレンであってもよい。
【0045】
また、上記nは2~4の整数であってもよい。
【0046】
上記Aはn価のラジカルを示す。例えば、Aはヒドロカルビレン、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル、結合部位がPであるラジカル又はアミン塩ラジカルなどであってもよい。
【0047】
上記ヒドロカルビレンはC1-C20アルキレン又はC6-C20アリーレンであってもよく、より具体的には、例えば、(CH2)2、(CH2)6などであるか、又はフェニレンなどであってもよい。このとき、上記nは2の整数である。
【0048】
上記結合部位がNであるラジカルは、例えば、nが2の整数の場合として、上記Aは*-NH-*などの*-NR
14-*、*-NHCSNH-*などの*-NR
15CSNR
16-*、*-NHCONH-*などの*-NR
17CONR
18-*、*-NH(CH
2)
3NH-*又は*-NCH
3(CH
2)
3NCH
3-*などの*-NR
19L
1NR
20-*、*-NHCONH(CH
2)
2NHCONH-*、*-NHCONH(C
6H
4)NHCONH-*又は*-NHCONH(CH
2)
2O(CH
2)
2O(CH
2)
2NHCONH-*などの*-NR
21CONR
22L
2NR
23CONR
24-*、*-NHCON(CH
2)
2(CH
2)
2NCONH-*などの*-NR
25CONL
3L
4NCONR
26-*などであってもよい。また、nが3の整数の場合としては
【化15】
であってもよい。さらに、nが4の整数の場合としては、
【化16】
であってもよい。
【0049】
ここで、上記R14~R27は独立して水素、C1-C20アルキル又はC6-C20アリールであり、L1~L5はC1-C20アルキレン、C6-C20アリーレン又はR41(OR42)pであり、ここでR41及びR42は独立してC1-C20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、L6は直接結合又は(CH2)qNR43NR44であり、ここでR43及びR44は独立して水素、C1-C20アルキル又はC6-C20アリールであり、qは1~5の整数である。
【0050】
上記結合部位がOであるラジカルは、例えば、*-O-*であってもよい。このとき、nは2の整数である。
【0051】
上記結合部位がSであるラジカルは*-S-*、*-S-S-*、
【化17】
であってもよく、このとき、nは2の整数である。
【0052】
一方、結合部位がPであるラジカルは
【化18】
であってもよく、このとき、nは2又は3の整数である。ここで、R
28及びR
29は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、(C
1-C
20)アルコキシ又は(C
1-C
20)アルキル(C
1-C
20)アルコキシであってもよい。
【0053】
また、上記Aはアミン塩ラジカルであってもよく、具体的には、*-N
+(R
11R
12)X
3
--*又は
【化19】
であってもよく、nは2の整数である。ここで、R
11及びR
12は独立して、水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であってもよい。
【0054】
上記のような化学式1で表されるシラン化合物は、例えば、次のようなシラン化合物であってもよい。
【0055】
【化20】
【化21】
【化22】
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【0056】
上記のようなシラン化合物は2以上のシランを有することにより酸化膜と反応して酸化膜の表面に対して保護膜を形成することができ、これにより、リン酸によって酸化膜がエッチングされることを抑制することができる。したがって、リン酸による窒化膜をエッチング除去するにあたり、酸化膜に対する窒化膜の選択性を向上させるためのエッチング液添加剤として好適に用いることができる。
【0057】
シラン化合物に含まれた酸素は酸化膜の表面に結合して酸化膜を保護し、シラン化合物に含まれた酸素は酸化膜の表面に水素結合することができ、エッチング液組成物内で窒化物がエッチングされる間に酸化膜がエッチングされることを最小化することができる。特に、本発明で提供されるシラン化合物は2以上のシラン基を有することにより酸化膜の表面との結合性が高く、酸化膜に対する窒化物のエッチング選択性をさらに増加させることができる。したがって、本発明のシラン化合物を含むエッチング液は酸化膜のエッチング率を最小化し且つ窒化膜に対する選択性を向上させることができる。
【0058】
一方、上記式(1)においてSiO2H2Oは酸化膜の表面に析出して酸化膜の厚さを増加させる可能性がある。このような現象を異常成長という。特に、エッチング液組成物内で窒化物のエッチング工程が累積して行われる場合、エッチング液組成物内のSiO2H2Oの濃度が増加する可能性があり、このようなSiO2H2Oの濃度増加によって異常成長の発生の度合いが増加する可能性がある。即ち、初期エッチング液組成物ではSiO2H2Oによる異常成長が発生しなくても、累積工程回数が増加するほど異常成長の発生頻度は増加する。しかし、本発明によるシラン化合物を含む場合にはこのような異常成長の現象の発生を抑制することができる。
【0059】
上記本発明のシラン化合物はエッチング液組成物の全重量に対して0.001~1重量%の含量で添加することができる。本発明で用いられるシラン化合物は上記したように2以上のシラン基を有するものであるため、本発明で提案するようなシラン化合物をエッチング液組成物に少量添加してもシリコン酸化膜を効果的に保護することができ、酸化膜に対する窒化物のエッチング選択性を増加させることができる。具体的には、上記シラン化合物の使用量が0.001重量%未満の場合には酸化膜に対する窒化物の高選択性効果を得ることが困難であり、1重量%を超える場合にはシラン化合物がゲル化し、好ましくない。例えば、上記シラン化合物は0.001~0.7重量%、0.002~0.7重量%、0.002~0.5重量%、0.005~0.5重量%などであってもよい。
【0060】
本発明のエッチング液組成物は次の化学式2で表されるシラン化合物をさらに含むことができる。
【0061】
【0062】
上記化学式2中、R71~R74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルである。
【0063】
上記化学式2で表されるシラン化合物はエッチング液組成物の全重量に対して0.005~1重量%の含量で含むことができる。
【0064】
また、アンモニウム塩をさらに添加することができる。アンモニウム塩はエッチング液組成物のゲル化を防止することができ、全重量に対して0.001~10重量%の含量で添加することができる。0.001重量%未満添加すると、ゲル化を低下させる物性改善効果が小さく、10重量%を超えて添加すると、アンモニウム塩がゲル化の原因となる可能性がある。
【0065】
上記アンモニウム塩としては、アンモニウムイオンを有する化合物として、本発明の属する分野で通常用いられるものを本発明でも好適に用いることができる。このようなアンモニウム塩としては、これに限定するものではないが、例えば、アンモニア水、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、フッ酸アンモニウムなどが挙げられ、これらのうちいずれか一つを単独で用いることもでき、2以上を混合して用いることもできる。
【0066】
また、本発明のエッチング液組成物はエッチング性能をさらに向上させるために、本技術分野で通常用いられる任意の添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては界面活性剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤などが挙げられる。
【0067】
本発明のエッチング液組成物は酸化膜と窒化膜を含む半導体素子から窒化膜を選択的にエッチング除去するために用いられるものであり、上記窒化膜はシリコン窒化膜、例えば、SiN膜、SiON膜などを含むことができる。
【0068】
また、酸化膜はシリコン酸化膜、例えば、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate Glass)膜、LPTEOS(Low Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization Layer)膜、ALD(Atomic Layer Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)、O3-TEOS(O3-Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つ以上の膜であってもよい。
【0069】
本発明のエッチング液組成物を利用するエッチング工程は当業界で周知のウェットエッチング方法、例えば、浸漬させる方法、噴射する方法などによって行われることができる。
【0070】
本発明のエッチング液組成物を用いるエッチング工程の例を
図1及び
図2に概略的に示した。
図1及び
図2は、一例として、フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【0071】
まず、
図1に示されたように、基板10上にトンネル酸化膜11、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13及びパッド窒化膜14を順次形成した後、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13及びパッド窒化膜14を選択的にエッチングしてトレンチを形成する。次いで、トレンチをギャップフィルするまでSOD酸化膜15を形成した後、パッド窒化膜14を研磨停止膜としてSOD酸化膜15に対してCMP工程を行う。
【0072】
次に、
図2に示されたように、前述した本発明によるエッチング液組成物を利用したウェットエッチングによってパッド窒化膜14を除去した後、洗浄工程によってバッファ酸化膜13を除去する。これにより、フィールド領域に素子分離膜15Aが形成される。
【0073】
エッチング工程時の工程温度は50℃~300℃の範囲、好ましくは100℃~200℃の範囲、より好ましくは156℃~163℃の範囲であってもよく、適正温度は他の工程とその他の要因を考慮して必要に応じて変更されることができる。
【0074】
このように本発明のエッチング液組成物を利用して行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法によれば、窒化膜と酸化膜が交互に積層されていたり混在していたりする場合に窒化膜に対する選択的エッチングが可能である。また、従来のエッチング工程で問題となっていたパーティクルの発生を防止して工程の安定性及び信頼性を確保することができる。
【0075】
したがって、このような方法は半導体素子製造工程において酸化膜に対して窒化膜の選択的エッチングが必要な様々な過程に効率的に適用されることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は本発明の一例に関するものであり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0077】
合成例1
シラン化合物1
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し還流冷却器を設置した後、アリルエーテル9.8gとトルエン100ml、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(Pt~2%)0.5mlを投入した。
【0078】
トリメトキシシラン37gを投入した後、温度を50℃に昇温した。
【0079】
24時間攪拌した後、回転濃縮機を利用して濃縮した。
【0080】
シリカゲルとテトラヒドロフランを利用してフィルタリングを行った後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物1を30g得た。
【0081】
【化24】
1H-NMR(CDCl
3)3.55(s、18H)、2.52(t、J=7.0Hz、4H)、1.42(qui、J=9.0Hz、4H)、0.58(t、J=7.0Hz、4H)
【0082】
合成例2
シラン化合物2
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入した後、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミン34gとジクロロメタン100mlを投入した。
【0083】
氷槽を利用して冷却した後、酢酸6.0gを1時間に渡ってゆっくりと投入した。
【0084】
投入を終了してから温度を常温に昇温した後、さらに1時間攪拌し、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物2を40g得た。
【0085】
【化25】
1H-NMR(CDCl
3)3.60(s、18H)、3.33(t、J=7.0Hz、4H)、2.20(s、3H)、2.1(qui、J=9.0Hz、4H)、0.60~0.55(m、4H)
【0086】
合成例3
シラン化合物3
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し還流冷却器を設置した後、1,3-ジブロモプロパン20gとトルエン100mlを投入した。
【0087】
3-アミノプロピルトリイソプロピルシラン52gを投入した後、温度を110℃に昇温して24時間攪拌した。
【0088】
常温に冷却した後、トリエチルアミン10gを投入して白い個体が生成されると、フィルタで個体を除去し、濾過された液体を減圧乾燥して、下記の式のようなシラン化合物3を45g得た。
【0089】
【化26】
1H-NMR(CDCl
3)3.57(qui、J=6.8Hz、6H)、2.62~2.50(m、8H)、2.0(br、2H)、1.58(qui、J=7.0Hz、2H)、1.50(qui、J=9.0Hz、4H)、1.24(d、J=6.8Hz、36H)、0.60~0.55(m、4H)
【0090】
合成例4
シラン化合物4
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入しディーンスタークトラップを設置した後、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン32gとトリエタノールアミン30gを投入した。
【0091】
トルエン100mlを投入した後、温度を90℃に昇温してメタノールを除去し24時間攪拌した。
【0092】
常温に冷却した後に生成された個体をフィルタリングし、個体をノルマルヘキサン50mlで2回洗浄した後、個体を減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物4を40g得た。
【0093】
【化27】
1H-NMR(CDCl
3)3.73(t、J=5.5Hz、12H)、2.73(t、J=5.5Hz、12H)、1.35~1.25(m、8H)、0.42(m、4H)
【0094】
合成例5
シラン化合物5
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入しディーンスタークトラップを設置した後、N,N’-ビス[(トリメトキシシリル)プロピル]尿素38gとトリエタノールアミン30gを投入した。
【0095】
トルエン100mlを投入した後、温度を90℃に昇温してメタノールを除去し24時間攪拌した。
【0096】
常温に冷却した後に生成された個体をフィルタリングし、個体をノルマルヘキサン50mlで2回洗浄した後、個体を減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物5を43g得た。
【0097】
【化28】
1H-NMR(CDCl
3)6.0(br、2H)、3.73(t、J=5.5Hz、12H)、3.38(t、J=7.0Hz、4H)、2.73(t、J=5.5Hz、12H)1.55~1.35(m、4H)、0.45(m、4H)
【0098】
合成例6
シラン化合物6
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入した後、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)15gとジクロロメタン100mlを投入した。
【0099】
氷槽を利用して冷却した後、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート44gを1時間に渡ってゆっくりと投入した。
【0100】
投入を終了してから温度を常温に昇温した後、さらに1時間攪拌し、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物6を39g得た。
【0101】
【化29】
1H-NMR(CDCl
3)5.8(br、2H)、5.0(br、2H)、3.85~3.70(m、16H)、3.54(s、4H)、3.38(t、J=7.0Hz、4H)、3.24(t、J=7.0Hz、4H)、1.65~1.58(m、4H)、1.21(t、J=7.0Hz、18H)、0.60~0.52(m、4H)
【0102】
合成例7
シラン化合物7
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し還流冷却器を設置した後、ジアリルスルホン14gとトルエン100ml、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(Pt~2%)0.5mlを投入した。
【0103】
トリメトキシシラン37gを投入した後、温度を50℃に昇温した。
【0104】
24時間攪拌した後、回転濃縮機を利用して濃縮した。
【0105】
シリカゲルとテトラヒドロフランを利用してフィルタリングを行った後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物7を28g得た。
【0106】
【化30】
1H-NMR(CDCl
3)3.60(s、18H)、3.41(t、J=7.0Hz、4H)、1.97~1.89(m、4H)、0.62~0.58(m、4H)
【0107】
合成例8
シラン化合物8
250mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し還流冷却器を設置した後、トリアリルホスフィンオキシド17gとトルエン100ml、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(Pt~2%)0.5mlを投入した。
【0108】
トリメトキシシラン50gを投入した後、温度を50℃に昇温した。
【0109】
24時間攪拌した後、回転濃縮機を利用して濃縮した。
【0110】
シリカゲルとテトラヒドロフランを利用してフィルタリングを行った後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物8を40g得た。
【0111】
【化31】
1H-NMR(CDCl
3)3.57(s、27H)、1.77~1.65(m、6H)、1.47~1.40(m、6H)、0.58(t、J=7.1Hz、6H)
【0112】
実施例1~8及び比較例1
85%リン酸に合成例1~8で得られた各シラン化合物1~8を表1に示したような含量で100重量%になるように添加混合してエッチング液(実施例1~8)を製造した。
【0113】
比較例として、表1に示したように、85%リン酸99.5重量%に3-アミノプロピルシラントリオール(Aminopropylsilanetriol、比較シラン化合物1)0.5重量%を添加混合してエッチング液(比較例1)を製造した。
【0114】
半導体ウエハ上に5000Åの厚さに蒸着されたシリコン窒化膜(SiN)と500Åの厚さに蒸着されたシリコン酸化膜(SiOx)が形成された基板を用意した。
【0115】
上記各シラン化合物を含む実施例1~8及び比較例1のエッチング液を丸フラスコに投入し、156℃~163℃の温度に達したときにシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜に対するエッチングを行った。
【0116】
エッチング速度は、シリコン窒化膜は720秒間、シリコン酸化膜は6000秒間エッチングした後、各膜の処理前の膜厚とエッチング処理後の膜厚との差異をエッチング時間(分)で割って算出した値であり、薄膜厚測定にはエリプソメータ(NANO VIEW、SEMG-1000)を利用した。
【0117】
選択比は酸化膜のエッチング速度に対する窒化膜のエッチング速度の比を示す。
【0118】
実施例9
85%リン酸に合成例3で得られたシラン化合物3を表1に示したような含量で100重量%になるように添加混合してエッチング液(実施例9)を製造した。
【0119】
上記実施例9のエッチング液を用いて実施例1と同一の基板に対して実施例1と同一の方法でシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜に対するエッチングを行った。
【0120】
実施例1と同一の方法で選択比を測定し、その結果を表1に共に示した。
【0121】
【0122】
上記表1に示されたように、実施例1~9の場合、2以上のシラン基を有するマルチシラン化合物をエッチング液の添加剤として用いることによりシリコン酸化膜を殆どエッチングせず、シリコン窒化膜を選択的にエッチングして高い選択比の結果を得た。これに対し、比較例1のモノシラン化合物添加剤はシリコン酸化膜のエッチング速度が高くて選択比が低くなる結果を得た。
【0123】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。