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  • -下足入れ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】下足入れ
(51)【国際特許分類】
   A47B 61/04 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A47B61/04 501E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019102007
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020195469
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】澤瀬 一徳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 江里子
(72)【発明者】
【氏名】井垣 力也
(72)【発明者】
【氏名】田中 康介
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-209646(JP,A)
【文献】実開昭57-097439(JP,U)
【文献】特開2002-045245(JP,A)
【文献】実開昭51-027515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時において最奥に位置する背面壁と、当該背面壁の左右に位置する側壁と、当該背面壁と対向する位置かつ当該側壁の各々の先端部分に取り付けられた開口扉とで形成された箱型の下足入れであって、
内部に下足を斜めに保持するように設けられた下足保持部を備え、
前記下足保持部は、第一板材と、当該第一板材より短手方向の長さが短い第二板材との組み合わせで略L字型に形成され、
当該第一板材及び当該第二板材の接点かつ最下端に位置する下足保持角部を有し、
前記第一板材は、前記下足保持部の最上端に位置する第一板材上端部と、
前記下足保持角部を形成する第一板材下端部と、
前記開口扉側を向いている第一板材表面部とを有し、
前記第二板材は、第二板材上端部と、前記下足保持角部を形成する第二板材下端部と、前記背面壁側を向いている第二板材表面部とを有し、
前記側壁のそれぞれに設けられた複数の穴により、
前記側壁の一方から他方に渡って、前記背面壁側に位置して着脱自在に取り付けられた第一棒材及び当該第一棒材より低く前記開口扉側に位置して着脱自在に取り付けられた第二棒材をさらに備え、
前記下足保持部が、
前記第一棒材に対して前記第一板材上端部、
前記第二棒材に対して前記第二板材上端部をそれぞれ引っ掛けた状態で着脱自在に取り付けられており、
前記穴は、第一棒材が取り付けられている第一の穴より背面壁から遠く、かつ上方に位置すると共に、第二棒材を中心とし、第一棒材と第二棒材との距離を半径とする円弧上にある第二の穴を含み、
第一棒材の位置を、第一の穴の位置から第二の穴の位置へ移動可能である
ことを特徴とする下足入れ。
【請求項2】
垂直方向に対する前記第一板材表面部の角度は、19~39°で、
前記第一板材表面部と前記第二板材表面部とでなす角度は、90~110°である
ことを特徴とする請求項1に記載の下足入れ。
【請求項3】
側壁に設けられる前記複数の穴は、垂直上下方向の間隔が22~42mmである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の下足入れ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅の各居室の玄関に設置する下足入れに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅等の一般住宅では、玄関に常設の下足入れに下足を収納していた。下足入れとしては、上下方向に設けられた棚板で、複数の下足を保持するものであった。しかしながら、棚板により内部が暗くなり下足が見えにくいばかりでなく、内部の通気性が悪く、湿気や悪臭がこもりやすいため、下足にカビや雑菌が繁殖してしまう問題があった。
【0003】
そこで、複数のシャフトを組み合わせた棚部材を形成することで、下足を引っ掛けたり載置したりできるのみならず、内部が見えやすく通気性が高まるシューズラックが開示されている(特許文献1参照。)。また、上記棚部材の角度が変更自在な構造であることから、下足の形状や使用者の好みに合わせて収納することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-27167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、集合住宅の各居室の面積縮小による間口の狭小化に伴い、隣接する部屋の一部を切り欠いて形成したスペースに奥行400mmの下足入れを配置している。すなわち、下足入れのスペースが、上記部屋の形状を歪にしてしまうため、部屋の商品価値を低下させる問題が生じるおそれがある。しかしながら、特許文献1では、下足入れの奥行に関する定義が詳細になされておらず、上記棚部材による奥行の低減効果が不明であることから、上記問題を解決するには至らない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、下足を保持する部分の形状、寸法、及び位置を、内部空間に対して相対的に定義することで、奥行の低減効果を確実に得られる下足入れを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明における下足入れは、使用時において最奥に位置する背面壁と、上記背面壁の左右に位置する側壁と、上記背面壁と対向する位置かつ上記側壁の各々の先端部分に取り付けられた開口扉とで形成された箱型の下足入れであって、内部に下足を斜めに保持するように設けられた下足保持部を備え、上記下足保持部は、第一板材と、上記第一板材より短手方向の長さが短い第二板材との組み合わせで略L字型に形成され、上記第一板材及び上記第二板材の接点かつ最下端に位置する下足保持角部を有し、上記第一板材は、上記下足保持部の最上端に位置する第一板材上端部と、上記下足保持角部を形成する第一板材下端部と、上記開口扉側を向いている第一板材表面部とを有し、上記第二板材は、第二板材上端部と、上記下足保持角部を形成する第二板材下端部と、上記背面壁側を向いている第二板材表面部とを有することを特徴としている。
さらに、上記第一板材上端部と上記背面壁との間隔は、27~47mmで、上記第二板材上端部と上記開口扉との間隔は、65~85mmで、上記第一板材上端部と上記第二板材上端部との間隔は、118~138mmで、上記第二板材表面部の短手方向の長さは、40~60mmであることが望ましい。
【0008】
さらに、垂直方向に対する上記第一板材表面部の角度は、19~39°で、上記第一板材表面部と上記第二板材表面部とでなす角度は、90~110°であることが望ましい。
【0009】
また、上記側壁の一方から他方に渡って、上記背面壁側に位置して着脱自在に取り付けられた第一棒材及び上記第一棒材より低く上記開口扉側に位置して着脱自在に取り付けられた第二棒材をさらに備え、上記下足保持部が、上記第一棒材に対して上記第一板材上端部、上記第二棒材に対して上記第二板材上端部をそれぞれ引っ掛けた状態で着脱自在に取り付けられており、上記第一棒材及び上記第二棒材の移動範囲が、垂直方向かつ上方向及び/又は下方向に22~42mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明における下足入れによれば、従来の下足入れより150~170mm薄い奥行にて複数の下足を好適に収納することができる。
そして、下足保持部が、最下端に下足保持角部を有するように略L字型に形成され、背面壁から27~47mmかつ開口扉から65~85mm離れて配置され、下足保持部の奥行が118~138mm、下足保持部の底に該当する第二板材表面部の短手方向の長さが40~60mmであることにより、背面壁や開口扉に触れず落下や位置ずれしないように下足保持部に確実に保持された状態で下足を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における下足入れの(a)正面概念図、(b)上記正面概念図のA-A断面概念図である。
図2図1(b)の部分拡大図である。
図3図1(b)の別の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図3を参照しつつ、本発明の一実施形態における下足入れの構造及び使用方法について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線をかくれ線(破線)や想像線(二点鎖線)で示し、断面部分をハッチングで示した部分もある。
説明において、上方、下方、側方、垂直方向、水平方向等の方向を示す用語は、基本的に、通常使用する向きで下足入れを設置した状態における位置関係とする。
【0013】
図1に示すとおり、下足入れSは、一般的な住宅の玄関に設置し、内部に個々の下足を収納する箱型のものである。
なお、下足入れSの高さ及び横幅に限定はなく、玄関への設置に影響しない限り、いずれでもよい。
【0014】
図1に示すとおり、下足入れSは、符番しない住宅の玄関の壁に面し、使用時において最奥に位置する背面壁1と、背面壁1の左右に位置する側壁2,2と、背面壁2と対向する位置かつ側壁2,2の各々の先端部分に取り付けられた開口扉3,103とで形成されている。下足入れSは、内部に下足を斜めに保持するように設けられた下足保持部4,104を備えている。
なお、背面壁1、側壁2,2、及び開口扉3の厚みは、同じでも異なっていてもよい。開口扉3は、例えば、片方又は両方の開き戸式・引き戸式・折れ戸式であり、下足の出し入れに影響しない限り、いずれでもよい。下足保持部4は、下足保持部104より下側に配置されてもよく、限定はない。
【0015】
まず、下足保持部4について説明する。
図1及び図2に示すとおり、下足保持部4は、側壁2,2の一方から他方に渡って設けられており、下足を斜めに立て掛ける第一板材41と、第一板材41より低い位置にあり第一板材41より短手方向の長さが短い第二板材42との組み合わせで略L字型に形成され、第一板材41及び第二板材42の接点かつ最下端に位置する下足保持角部43を有する。
なお、下足保持部4の数に限定はなく、下足の収納に影響しない限り、いくつでもよい。
【0016】
図2に示すとおり、第一板材41は、下足保持部4の最上端に位置する直線状の第一板材上端部41aと、下足保持角部43を形成する直線状の第一板材下端部41bと、開口扉3側を向いている平坦状の第一板材表面部41cとを有する。
第二板材42は、直線状の第二板材上端部42aと、下足保持角部43を形成する直線状の第二板材下端部42bと、背面壁1側を向いている平坦状の第二板材表面部42cとを有する。
なお、下足保持部4の形成及び下足入れSに対する配置に影響しない限り、第一板材上端部41a、第一板材下端部41b、第二板材上端部42a、及び第二板材下端部42bは、例えば、湾曲状でも凸凹状でもよく、第一板材表面部41c及び第二板材表面部42cは、例えば、曲面状でも凸凹状でもよい。
【0017】
第一板材上端部41aと背面壁1との間隔w1は27~47mmで、27mmより狭いと収納時に下足の一部が背面壁1に接して位置ずれしやすいおそれがあり、47mmより広いと背面壁1側に生じる余剰スペースにより下足入れSの奥行が増加するおそれがあるため、好ましくは32~42mm、より好ましくは35~39mm、最適値としては37mmである。
【0018】
第二板材上端部42aと開口扉3との間隔w2は65~85mmで、65mmより狭いと収納時に下足の一部が開口扉3に接して閉まらないおそれがあり、85mmより広いと開口扉3側に生じる余剰スペースにより下足入れSの奥行が増加するおそれがあるため、好ましくは70~80mm、より好ましくは73~77mm、最適値としては75mmである。
【0019】
第一板材上端部41aと第二板材上端部42aとの間隔w3は118~138mmで、118mmより狭いと下足保持部4の傾きが急過ぎて収納時に下足が滑り落ちるおそれがあり、138mmより広いと下足保持部4の傾きが緩やか過ぎて下足入れSの奥行が増加するおそれがあるため、好ましくは123~133mm、より好ましくは126~130mm、最適値としては128mmである。
【0020】
第二板材表面部42cの短手方向の長さw4は40~60mmで、40mmより短いと下足の一部が納まらずはみ出てしまうおそれがあり、60mmより長いと下足の一部が接することで収納時の安定性がかえって悪化するおそれがあるため、好ましくは45~55mm、より好ましくは47~53mm、最適値としては50mmである。
第一板材表面部41cの短手方向の長さw5は163~183mmで、163mmより短いと下足を支え切れなかったり背面壁1又は開口扉3に下足の一部が接したりするおそれがあり、183mmより長いと上下の下足保持部4との間隔が狭くなり下足を出し入れしにくくなるおそれがあるため、好ましくは168~178mm、より好ましくは170~175mm、最適値としては173mmである。
【0021】
垂直方向に対する第一板材表面部の角度d1は19~39°で、19°より急だと収納時に下足が倒れてしまうおそれがあり、39°より緩やかだと収納時に下足が寝そべってしまい下足入れSの奥行が増加するおそれがあるため、好ましくは24~34°、より好ましくは27~31°、最適値としては29°である。
第一板材表面部41cと第二板材表面部42cとでなす角度d2は90~110°であり、90°より緩やかだと収納時に下足の一部が第二板材表面部42cからはみ出てしまい位置ずれにより落下するおそれがあり、110°より急だと下足保持角部43に下足の一部が納まり切らず位置ずれにより落下するおそれがあるため、好ましくは95~105°、より好ましくは98~102°、最適値としては100°である。
また、上記角度d1及び上記角度d2が上記範囲外だと、上記間隔w1~w3及び上記長さw4・w5も上記範囲外になってしまうおそれがある。
【0022】
図1及び図2に示すとおり、下足入れSは、側壁2,2の一方から他方に渡って、背面壁1側に位置して着脱自在に取り付けられた第一棒材5及び第一棒材5より低く開口扉3側に位置して着脱自在に取り付けられた第二棒材6をさらに備えている。詳細には、側壁2,2は、同一の高さに位置して対向する穴を複数有し、第一棒材5及び第二棒材6は、各々の両端を穴に挿し込んだ状態で取り付けられる。
下足保持部4が、第一棒材5に対してフック状の第一板材上端部41a、第二棒材6に対してフック状の第二板材上端部42aをそれぞれ引っ掛けた状態で着脱自在に取り付けられている。なお、下足保持部4が、同一高さの位置に対向する穴に設けられたダボに引っ掛けられていてもよい。
第一棒材5及び第二棒材6の移動範囲w6が、垂直方向かつ上方向及び/又は下方向に22~42mmであり、22mmより狭いと移動前後で高さが略同等であるためサイズの異なる下足を収納しにくいおそれがあり、42mmより広いと移動前後で高さが変わり過ぎて余剰スペースが生じてしまうおそれがあるため、好ましくは27~37mm、より好ましくは30~34mm、最適値としては32mmである。
第一棒材5の移動範囲が、第二棒材6を中心とし、第一棒材5と第二棒材6との距離を半径Rとする円弧上であることにより、第一棒材5のみの移動に伴い第一板材41が急勾配になり第一板材上端部41aが背面壁1から間隔w1b分遠のくため、大きめの靴の収納時につま先が背面壁1に接することを回避することができる。換言すれば、第一棒材5が挿し込まれる第一の穴に対し、上記円弧上に位置する第二の穴は、上記円弧上であり、上記第一の穴より背面壁1から遠く、かつ上方に位置している。この場合、間隔w1bは47mmより狭く、角度d1は19°より緩やかにするのが好ましい。
【0023】
次に、下足保持部104について、下足保持部4と相違する点のみ説明し、下足保持部4と同等又は類似する点の説明は省略する。
図1及び図3に示すとおり、下足保持部104は、背面壁1側に位置して下足を斜めに立て掛ける第一板材141と、第一板材141より低い位置にあり第一板材141より短手方向の長さが短い第二板材142と、第二板材142より高い位置にあり開口扉103に接合された第三板材143との組み合わせで上側を開放した略箱型に形成されている。さらに、下足保持部104は、第一板材141と第三板材143との間に、内部を長手方向に略二等分して各々の空間に下足を斜めに収納するための仕切り板材144を有する。開口扉103は、下端を支軸にして回動するヒンジ式の開き戸であり、下足保持部104は、開口扉103の動作に追従する。
なお、仕切り板材144は、下足保持部104の内部を三等分以上にするように複数個あてもよい。
【0024】
次に、図2及び図3を参照しつつ、下足入れSの使用方法について説明する。
まず、図2に示すとおり、例えば、女性用のハイヒールの場合、第一板材上端部41aにかかと部分を引っ掛け、第一板材表面部41cに裏部分の一部を載置すると、つま先部分が第二板材上端部42aを越えた状態で収納できる。一方、男性用の革靴の場合、下足保持角部43に一致するように第二板材表面部42cにかかと部分を載置し、第一板材表面部41cに裏部分の一部を載置すると、つま先部分が第一板材上端部41aを越えた状態で保持できる。さらに、下足の種類に応じて、第一棒材5及び第二棒材6の高さを任意に変更できる。
また、図3に示すとおり、スニーカーの場合、開口扉103を開け、背面壁1側に甲部分が向き、第二板材表面部42cにつま先部分が近接した状態で、仕切り板材144で等分された各々の空間に靴が刺さった状態で保持できる。
【符号の説明】
【0025】
S 下足入れ
1 背面壁
2 側壁
3,103 開口扉
4,104 下足保持部
5 第一棒材
6 第二棒材
図1
図2
図3