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特許7365147高温バルブ用小径アクチュエータと高温バルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】高温バルブ用小径アクチュエータと高温バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/126 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
F16K31/126 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019110267
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020008172
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018123530
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 久修
(72)【発明者】
【氏名】本間 克彦
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183749(JP,A)
【文献】特開平3-234988(JP,A)
【文献】実開昭57-53174(JP,U)
【文献】特開2015-108421(JP,A)
【文献】特開2008-286361(JP,A)
【文献】特表2014-521028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズとベローズフランジとを縦方向に多段状態に積層させ、このベローズとベローズフランジの中心をロッドで貫通させてベローズユニットを構成し、このベローズユニットを小円筒ケースに収納すると共に、各ベローズ内のエアの供給排気による各ベローズの伸縮により各ベローズに固定した前記ロッドを上下動させるようにしたことを特徴とする高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項2】
前記ベローズのエア室内は、前記小円筒ケースに収納可能な大きさの大径ベローズの内側空間であり、この内側空間内と前記ロッドのエア流路とを連通部を介して連通させた請求項1に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項3】
前記ベローズフランジは、前記ベローズの一側に前記小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと、前記ベローズの他側と前記ロッドに密封状態に固定した可動フランジと、から成り、前記連通部は、前記ロッドに開けた連通穴である請求項に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定フランジと前記可動フランジとの間に伸縮構造の小径ベローズを設けた請求項3に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項5】
前記ベローズのエア室内は、外部ベローズの中に内部ベローズを同軸上に配置させて構成された内外ベローズ空間であり、この内外ベローズ空間内と前記ロッドに設けたエア流路とを連通部を介して連通させた請求項1に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項6】
前記ベローズフランジは内外ベローズの一側に前記小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと、前記内外ベローズの他側と前記ロッドに密封状態で固定した可動フランジと、から成り、前記連通部は、前記可動フランジに設けた連通路である請求項に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動フランジの上昇を制限するストッパを前記固定フランジ側に設けた請求項3、4、又は6の何れか1項に記載の高温バルブ用小径アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の高温バルブ用小径アクチュエータをバルブ本体に搭載したことを特徴とする高温バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温バルブ用小径アクチュエータと高温バルブに関し、特に、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積法)プロセスの半導体製造装置に用いる流体制御弁への搭載に極めて好適な高温バルブ用小径アクチュエータと高温バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスのデザインルールの微細化・高集積化やÅレベルの薄膜蒸着コントロールの更なる要求などから、薄膜成長プロセスとして、所謂ALDプロセスの需要の高まりが続いている。このALDプロセスでは、原子・ナノレベルで一層ずつ積み上げるようにして薄膜成長をコントロールするため、ガス供給ラインでは、異なる流体を極めて高速で切り替えてチャンバへの供給・排出サイクルを連続的に繰り返し、薄膜成長を原子層レベルでコントロールする必要があることから、ウェハ上に製品要求レベルの薄膜成長を得るために、通常1000万回レベルのバルブ開閉寿命が必要となる。
【0003】
よって、ALDプロセスで用いられるバルブやアクチュエータにも、従来想定されていたレベルを遥かに超えたレベルの使用回数に耐え得る高耐久性が必須となると共に、バルブ開閉のための高速応答性も必須となる。また、供給ガスは金属化合物からなる蒸気圧が極めて低い特殊な流体なので、ガスの安定供給のためには温度を通常約200度に保つ必要があり、よって、バルブやアクチュエータには、少なくともこのレベル(好適には約250~300度)の温度環境下でも良好に機能を発揮できる耐高温性も必須となる。
【0004】
一方で、近年は半導体素子には益々微細化・高集積化が要求されると共に、半導体製造プロセスの多様化も著しく進展し、製造プロセスに使用される各種のプロセスガスも、個々の用途に応じて多様化や高温・高圧化を伴うほか、特に、シリコンウェハや液晶パネル、或は生産システムの大型化や、特別なガス供給方式への変更なども生じている。これらは、少なくとも供給ガスの流量や多種のガス切り換え・制御を必要とし、よって、少なくともバルブの大型化や設置数の増加など、全体の設置面積の増加、ひいては半導体製造設備の更なる大型化に繋がる需要が依然として継続している。特に、半導体製造装置は通常、半導体素子などの高度な精密機器を高品質に製造するため、少なくともバルブやアクチュエータから成るガス供給系は、クリーンルーム内に全て収容されるが、このクリーンルームにおいても、容積に応じて増大する初期設備費のほか、維持管理や常時運転のためのランニングコストが必要であり生産設備費として大きな負担となる。
【0005】
このような状況下においては、半導体製造装置のバルブやアクチュエータは、たとえ僅かでもこれらを大型化すれば、多数の設置数に伴ってこれらの占有スペースも増大し、装置全体を集積化すべき基本的な要求も損なわれると共に、ガス供給系全体の占有スペースの最適化も損なわれ、これを収容するクリーンルームの容積も大型化が不可避となり、半導体製造設備費の増大をもたらし、ひいては半導体製品の製造コストが悪化する問題が生じる。したがって、少なくともバルブやアクチュエータは、その性能を維持又は更に向上させつつ、それに反して、限りなく小型化、すなわち用途に応じて限りなく無駄を生じない容積・構成に最適設計されなければならない。
【0006】
これに対して、半導体製造装置におけるガス供給系の制御弁等としては通常、所謂ダイレクトタッチ型のダイヤフラムバルブの使用場面が多く、このバルブには、自動制御等のため、クリーン性やコスト性等に優れるエアオペレイト式のアクチュエータが搭載されることが多い。このようなバルブやアクチュエータは、デッドスペースを生じないように可能な限りコンパクト化されているのが通常であり、一般的な集積化ガスシステムでは、バルブボデーは他の機器類と共に継手を有さないコンパクトなベースブロックに組み込まれて集積化されている。近年では例えば、流路径が数ミリ程度であり、かつ1辺が3cm程度の直方体形状に収まる程度まで著しくコンパクト化されたフットプリント内に、矩形状に集積化されたバルブボデーが用いられる。
【0007】
このようなエアオペレイト式のアクチュエータの基本性能はピストン(ロッド)を昇降させる駆動力であり、具体的には、バネなど所定の弾発部材によるダイヤフラム弁体の弾発力や、この弾発力に反して供給エアによって膨張・収縮するエア室のエア圧である。また、上記のようなフットプリント領域が個々のアクチュエータの占有スペースとして割り当てられ、その領域内に収まるようにコンパクト、かつ、取扱性・メンテナンス性よく集積化させるため、ベースブロック上部に所定の接続部を介して着脱自在に取り付けられ、細径円柱形状の外観を呈した構造が多用されている。
【0008】
ただし、実際には、アクチュエータのサイズ・占有スペースの小型化の要求は、基本的には幅方向を決めるフットプリント面積に対する制限であり、高さ方向には比較的制限が緩い場合も多い。このため、アクチュエータ容積の幅方向サイズを更に減少させる必要がある一方で、高さ方向サイズは、維持するか、又はある程度増加させてもよい場合も多い。よって、アクチュエータを更に細径化させつつ高さを維持乃至やや増加させて構成することにより、フットプリントの小型化と共に、この小型化で損なわれ得る駆動力の確保(維持又は増大)を図ることができる。
【0009】
この場合、基本的には2つの手段・方向性が考えられる。その1つは、エア室やこれに応じた弾発部材の数を増加させることで、必要な駆動力を確保する手段であり、この場合は通常、エア室の数(弾発付勢するピストンの数)を高さ方向へ増加させたことによりピストンも多段化された多段ピストン構造となる。この種の従来技術の1つとして特許文献1がある。
【0010】
特許文献1は、多段ピストン構造に関する従来技術の一例であり、具体的には、弁体を駆動させると共に復帰バネに付勢された1つの弁体ピストンの上部には、同軸上に複数の駆動ピストンが多段状に積層されて構成されており、特に弁体ピストンを付勢する復帰バネの導入により、ピストンの高速応答性の確保が図られているが、少なくとも、これら弁体ピストンや駆動ピストンとの間、或はこれらと内装部品との間には、複数のゴム製Oリングが介装されているから、例えばALDプロセスに同文献のアクチュエータを用いた場合、これらのOリングは高温環境下で各ピストンの昇降動に伴い部材間を高速で長期間・多数回の摺動をすることになる。
【0011】
もう1つは、占有容積を維持又はより小型化しながら、弾発するバネ部材の変更など、より強力な駆動力を有する何らかの構造へと駆動源を変更する手段であり、この場合、所定構造のカムを備えることでアクチュエータ駆動力を適切に増幅可能とした倍力機構の導入が代表的である。この種の従来技術の1つに特許文献2がある。
【0012】
特許文献2は、高さ方向へ必要な機能を集約させる一方で、幅方向へのサイズをコンパクトに収めるようにした倍力機構を導入しており、具体的には、一端に傾斜面に転動する転動部、他端にステムを移動させる作動部を有しており、軸部を中心に回動する複数のカムがアクチュエータに内蔵されている。
【0013】
これらのカムは、ピストンの移動方向に沿って略縦方向に向けて支点に軸着されており、幅方向への拡径を極力抑制している。同文献では、細径ながらも強力な弾発力を発揮する皿バネの導入により大きな弁閉力を確保する一方、ベローズへのエア供給による弁開力を、このカムによって倍力するものであり、作動体下面の傾斜面とカムの転動部との力点作用に応じてカムが回動して作動部が作用点を介してステムを昇降動させている。
【0014】
また、同文献の倍力機構は、ベローズのエア駆動力(弁開力)を増幅させるものであるが、弾発部材による弁閉力を、例えばカムにおける梃子の原理を介して増幅する従来技術の提案も多く、何れにせよ、アクチュエータの小型化に伴う駆動力の低下を補うため、所定の倍力機構が内蔵されたアクチュエータに関する従来技術の提案は多数存在する。
【0015】
さらに、別の構造として、特許文献3に示されるような、所謂ベローズアクチュエータ構造が存在する。同文献では、ピストンと仕切板との間に、2重構造のベローズが設けられており、この2重ベローズ間の内部空間に流路を介して駆動用ガスを給排させることにより、コイルスプリングに弾発状態となっているピストンを昇降動させて弁頭を弁座に対して開閉させている。同文献のロッドは仕切板中央の貫通孔に嵌設されたスリーブを挿通しているので、ピストンの昇降動に伴い、このスリーブとロッドとが摺動する構造となっている。
【0016】
さらに、別の構造として、特許文献4に示されるような、所謂多段ダイヤフラムアクチュエータ構造も知られている。同文献では、従来構造の課題、すなわち350度程度の高温などにおいては、ピストンに用いられているOリングの粘着性が高まって脆くなるなどの課題に対し、少なくとも可変するエア室容積をダイヤフラムで区画することにより、Oリングのようなダイナミックシール部位を排除すると共に、エア室も高さ方向へ適宜多段化できる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2018-84272号公報
【文献】特開2016-183749号公報
【文献】実開平6-37670号公報
【文献】米国特許登録第9476516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1、あるいは、この種の多段ピストン構造のアクチュエータは、原理的には、バルブやアクチュエータの使用に応じてピストンに装着された多数のOリングが摺動するので、少なくとも摺動時の摩擦力の分、このOリングと共に摺動するピストンの昇降動性、ひいてはバルブの開閉応答性が損なわれることになると共に、Oリングが多数存在するので、その効果も増幅され易い。
【0019】
また、高温環境下では、ゴム製Oリングの変質や減耗、或は固着現象も生じやすいため、シール性を維持したままの良好な摺動性・高速応答性も損なわれ易く、特にグリースなどが塗布されて長時間静止状態となった後には、グリースが固着してしまう虞もあり、よって、長期間の耐久性にも問題がある。
【0020】
特に、ALDプロセスに用いた場合には、上記のように高温環境に対する耐熱性に加え、この環境下における高速応答性や耐久性にも高い水準が要求されるので、ピストンに複数のOリングを用いることが不可避となる構造が採られた同文献のアクチュエータ、或は従来のこの種の多段ピストン構造では、少なくともピストンの運動特性に原理的な問題を抱えており、十分な信頼性をもって使用することはできないと言わざるを得ない。
【0021】
特許文献2のアクチュエータには、コンパクト化に伴いエア室容積の減少によって弱まったエア推力を補うため、ベローズからの推力を倍力機構であるカムを介してステムに伝達する構造であるから、原理的には、このカムが介在する分、エア推力伝達の遅れが生じ、バルブの開閉応答性が十分に発揮されない虞もある。また、作動体など、カムと作用する部材との間の摩耗も不可避であるから、倍力バランスが崩れてバルブ性能の劣化に繋がる虞もあり、また、このような摩耗により部材の耐久性も損なわれ易い構造と言える。さらに一般的には、倍力機構は複雑な構造であるから、生産性やメンテナンスなどに要されるコストも多く、また、コンパクトなアクチュエータ本体内に内蔵して適切に機能させるためには、高精度な部品寸法や配置・組み立てなども必要である。
【0022】
一方で、特許文献3のようなベローズアクチュエータ構造では、先ず、ベローズ内部空間へ駆動用ガスを供給する流路(供給手段)構造は、アクチュエータ本体の内外を水平方向に連通した構造なので、本体をフットプリント領域内にコンパクトに構成することが不可能であり、また、エア室(ピストン)はただ1つだけの構造であるから、本体の細径化やコンパクト化の要求には全く対応できない。さらに同文献は、基本的に上記のようなALDプロセスが考慮されていないから、アクチュエータ本体に必要とされる耐高温性などへの対策も全く知得できない。特に、前述したように、ロッドがスリーブに摺動するが、このような摺動部位はたとえ一か所でも存在すれば、多数回の高速応答性や高耐久性に大きな欠点であって、とりわけALDプロセスに用いた場合には致命的な欠陥となる。
【0023】
また、特許文献4のような多段ベローズアクチュエータ構造では、その構造の詳細に依らず、ピストンと連動するダイヤフラムによってエア室容積が画定される原理からすれば、十分な駆動力の確保のために、十分に大きなエア室容積を確保しようとした場合、一つのダイヤフラム(一つのエア室)における高さ方向への膨出変形形状には制約が大きいため、アクチュエータ本体の高さ方向への容積増加は実質不可能であり、少なくとも横方向にサイズが大型化することが避けられない構造と言える。実際、同文献の図面においては、エア室容積の内径は、ステムの外径に対して約10倍程度に設けられたアクチュエータが開示されている。
【0024】
よって、同文献のような構造では、上述のようなフットプリント領域内においてサイズをコンパクト化しなければならない課題に十分に対応できない。なお、横方向への大型化の代わりに、エア室を多数積層させることでも確保できるとも考えられるが、アクチュエータの作動性や生産性などの観点から、このような多層化にも実質的には限界があり、例えばエア室が10段以上の構造は現実的ではない。実際、同文献の図面には、最大で3段までの多層構造が示されているに過ぎない。
【0025】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、倍力機構などの複雑な構造を用いることなく、かつ、Oリングなどによる摺動部位を一切排除すると共に、細径・小型化されながらも容易にエア室の多層構造により駆動力の確保・調整を可能とし、極めて良好な高速応答性と耐熱性、及び耐久性を発揮することができ、特にALDプロセスに極めて好適な高温バルブ用小径アクチュエータと高温バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ベローズとベローズフランジとを縦方向に多段状態に積層させ、このベローズとベローズフランジの中心をロッドで貫通させてベローズユニットを構成し、このベローズユニットを小円筒ケースに収納すると共に、各ベローズ内のエアの供給排気による各ベローズの伸縮により各ベローズに固定したロッドを上下動させるようにした高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0027】
請求項2に係る発明は、ベローズのエア室内は、小円筒ケースに収納可能な大きさの大径ベローズの内側空間であり、この内側空間内とロッドのエア流路とを連通部を介して連通させた高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0028】
請求項3に係る発明は、ベローズフランジは、ベローズの一側に小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと、ベローズの他側とロッドに密封状態に固定した可動フランジと、から成り、連通部は、ロッドに開けた連通穴である高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0029】
請求項4に係る発明は、固定フランジと可動フランジとの間に伸縮構造の小径ベローズを設けた高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0030】
請求項5に係る発明は、ベローズのエア室内は、外部ベローズの中に内部ベローズを同軸上に配置させて構成された内外ベローズ空間であり、この内外ベローズ空間内とロッドに設けたエア流路とを連通部を介して連通させた高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0031】
請求項6に係る発明は、ベローズフランジは、内外ベローズの一側に小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと内外ベローズの他側とロッドに密封状態で固定した可動フランジから成り、連通部は、可動フランジに設けた連通路である高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0032】
請求項7に係る発明は、可動フランジの上昇を制限するストッパを固定フランジ側に設けた高温バルブ用小径アクチュエータである。
【0033】
請求項8に係る発明は、高温バルブ用小径アクチュエータをバルブ本体に搭載した高温バルブである。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載の発明によると、ベローズとベローズフランジとを縦方向に多段状態に積層させ、これらの中心をロッドで貫通させてベローズユニットを構成し、このベローズユニットを小円筒ケースに収納し、各ベローズ内のエアの供給排気による各ベローズの伸縮により各ベローズに固定したロッドを上下動させるようにしたから、ピストンにおけるOリングなど、動作に伴って部材間を摺動する部位を排除しながらも、縦方向にエア室を多段状態に積層させたアクチュエータ構造を実現できる。
【0035】
よって、オールメタル構造など、少なくとも300度程度の高温に十分に耐え得る材料のみでアクチュエータを構成することができ、特にALDプロセス用などとして極めて良好な耐高温性を備えることができる。また、縦方向に向けて多段状態に積層させることで容易にエア室の増減が可能となり、よって、横方向へのアクチュエータの大型化を回避した駆動力の増幅・調整が可能となり、少なくとも、限られたフットプリント内においてコンパクト性を保ったまま容易に必要な駆動力の確保・調整が可能となる。
【0036】
さらに、従来の多段ピストン構造のような、多数のOリングから成る摺動部位が一切存在せず、本発明におけるエア室の膨張収縮は、ベローズの収縮に伴うものであるから、部材の摩擦や摩耗が生じることがなく、また、Oリングの劣化や固着なども生じることがない。よって、特にALDプロセス用などとして極めて良好な高速応答性を実現できると共に、極めて多数回の作動にも耐え得る良好な耐久性も備えることができる。しかも、ベローズの自然収縮力を、エア室の膨張・収縮動作に利用できるから、少なくともアクチュエータの高速応答性にさらに有利な構造となっている。
【0037】
請求項2に記載の発明によると、ベローズのエア室内は、小円筒ケースに収納可能な大きさの大径ベローズの内側空間であるから、本体内のスペースを無駄にすることなくエア室1つ当たりの容積を最大限に確保できると共に、ベローズを大径に形成したことにより、エア室の膨張収縮性、すなわちアクチュエータの作動性も良好となる。また、この内側空間内とロッドのエア流路とを連通部を介して連通させたので、エア流路は本体軸心方向のロッド内に、スペースの無駄なく極めてコンパクトに本体内に収めることができ、よって、筐体外周側に突出するなど、エア流路の構成によってアクチュエータ本体の小型化、或はコンパクト性が損なわれることがない。
【0038】
請求項3に記載の発明によると、ベローズフランジは、ベローズの一側に小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと、ベローズの他側とロッドに密封状態に固定した可動フランジと、から成り、連通部は、ロッドに開けた連通穴であるから、ロッドの一部を外部シールする1重のベローズにて、簡易にエア室を構成できると共に、アクチュエータの作動性も良好となる。
【0039】
請求項4に記載の発明によると、固定フランジと可動フランジとの間に伸縮構造の小径ベローズを設けたから、ベローズ内のエア室のシール性、特に固定フランジにおけるロッド軸装部位からのエア漏れを、小径ベローズによって確実に防止でき、よって、良好なアクチュエータの作動性も担保される。
【0040】
請求項5に記載の発明によると、ベローズは、外部ベローズの中に内部ベローズを同軸上に配置させて構成され、ベローズのエア室内は、内外ベローズの空間であり、このエア室内とロッドに設けたエア流路とを連通部を介して連通させたから、内外の2重ベローズによって、少なくともベローズ内のエア室のシール性を確実に担保できる。また、1重ベローズの場合に比して、ベローズ特性のエア室膨張収縮性への寄与、すなわちアクチュエータ作動性への寄与を増大させ得る。
【0041】
請求項6に記載の発明によると、ベローズフランジは、内外ベローズの一側に小円筒ケースに密封状態で固定した固定フランジと、内外ベローズの他側とロッドに密封状態で固定した可動フランジと、から成り、連通部は、可動フランジに設けた連通路であるから、内外2重ベローズで区画された環状空間のエア室内に、可動フランジ側からエアを給排することができ、よって、可動フランジの作動性、すなわちアクチュエータの作動性の向上に寄与できる。
【0042】
請求項7に記載の発明によると、可動フランジの上昇を制限するストッパを固定フランジ側に設けたから、簡易な構造にて可動フランジの上死点を設定することができ、アクチュエータの作動性にも寄与する。
【0043】
請求項8に記載の発明によると、高温バルブ用小径アクチュエータを搭載した高温バルブであるから、少なくとも横幅方向に極めてコンパクト化されながら必要十分な駆動力及び作動性が担保されたアクチュエータを備えた高温バルブの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の第1実施形態のアクチュエータ本体をバルブボデーに取り付けた状態を示した側面図である。
図2図1のA-A線断面において、弁開状態を示した断面図である。
図3図2において、弁閉状態を示した断面図である。
図4】本発明の第1実施形態のベローズユニットの外観を示した側面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】本発明の第2実施形態のアクチュエータ本体をバルブボデーに取り付けた状態であり、中心線右側が弁開状態、同左側が弁閉状態をそれぞれ示した縦断面図である。
図7図6のC-C線断面図である。
図8】(a)は押え部材の斜視図であり、(b)はネジ穴を設けた抜け止め部材の斜視図であり、(c)は押え部材をアクチュエータ本体の上部に取付けた状態を示す要部斜視図である。
図9】押え部材をアクチュエータ本体の上部に取付けた状態を示す一部省略した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態の構造を図面に基づいて詳細に説明する。図1~5は、本発明の第1実施形態(本例)を示しており、図1は、バルブボデー3にこのアクチュエータ本体1を取り付けた状態の側面図、図2は、図1のA-A線断面図であり、バルブが全開した状態を示した断面であり、図3は、バルブが全閉した状態を示した断面図である。
【0046】
図1~3において、本発明のバルブ本体2は、本発明の小径アクチュエータ本体1を搭載する高温バルブの本体であり、本例は、ダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブである。また、同図は1次側流路4に垂直な断面図であるが、後述する図6では、このバルブ本体2と同じ構造のバルブ本体2に対して、1次側流路4、2次側流路5の軸心方向に沿った断面図となっている。
【0047】
図1~3において、バルブ本体2は、上部に搭載されるアクチュエータ本体1の外径と同程度の幅のコンパクトな矩形状の外形であり、集積ブロックの流路方向に沿って、1次側流路4と2次側流路5とが穿設されて外部とこれらの流路を接続可能となっている。1次側流路4は、上向きに屈曲して円形の弁口部を介して弁室8空間へ連通し、この弁口部の周辺部には、シートリング6(弁座)が装着溝にカシメ固着され、シール面上方側に設けられたダイヤフラム7の下面が可撓変形して密着(着座)可能となっている。弁室8底面には、断面略コ字状の環状溝が形成され、この環状溝には、2次側流路5へ連通する円形の出口部が設けられている。
【0048】
図2、3において、弁体であるダイヤフラム7は、略円形状に形成され、金属製ダイヤフラム部材を所定枚数重ねている。ダイヤフラム7の外周縁部は、弁室8空間の外周部に突設形成された環状凸部と、ボンネット9下端の環状受け部との間に狭着固定されて外周シール部を形成している。
【0049】
ボンネット9は、略筒状に形成されており、ボデー3の組み立ての際には、ベース体10、34とボデー3との間に設けられ、ボデー3のメネジ部3aとベース体10、34の下部外周に設けられたオネジ部とを螺合させる際の締付力によって、ベース体10、34の下端面がボンネット9を押し下げ、この押し下げ力によってボンネット9の受け部が環状凸部上に載置されたダイヤフラム7の外周縁部を狭着することで固定される。また、ボンネット9の内周面は略同一径に形成された筒状空間であり、この内周面には、略円柱形状のダイヤフラムピース11が挿入され、後述のように、ダイヤフラムピース11の外周面とボンネット9の内周面とは、ほぼ抵抗なく摺動可能となっている。さらに、ダイヤフラムピース11の上面には、後述のロッド部32、42(ベローズユニット15、35下端部)が当接可能に設けられる。
【0050】
図1~3において、小円筒ケース12は、外径に対して長尺筒状に形成されており、後述のベローズユニット15(図4、5)を収納可能な筐体である。本例では、所定の金属製であり、フットスペース領域内にコンパクトに収まるように、例えばφ38mm以下の薄肉細径に形成されている。図1には、後述の呼吸口12aと止めねじ13が直線状に並んでおり、下部内周面が、ベース体10の上部外周面と固着(螺着)している。
【0051】
ベース体10は、外径が小円筒ケース12の外径と同径程度であり、所定の金属製にて略筒状に形成されており、上部側が小円筒ケース12と接続されると共に、下部側がボデー3上部側と螺着により接続され、外周面には、この螺着する際にレンチなどの工具でベース体10を回動させるための、2面幅状の係合部10cが形成されている。また、後述のように、ベース体10内部において、筒状に形成された上部内周空間には、呼吸口10bと段部10aが設けられ、また下部の中央位置には、穴部10dが設けられる。
【0052】
図4、5において、本発明のベローズユニット15は、ベローズとベローズフランジとを縦方向に多段状態に積層させて構成しており、このベローズとベローズフランジの中心を、ロッド14で貫通させている。本発明のアクチュエータは、金属ベローズを複数個結合して構成されたベローズユニット15を備えたエア駆動アクチュエータであり、ベローズとベローズフランジを溶接により縦に複数個結合して中心にステムを貫通させ、上部からエアを供給すると各ベローズの内側がエアで満たされるような密封状態となっており、エアによって伸びようとする各ベローズの推力の合計が、スプリングを押し上げることで弁開するエアシリンダとなっている。このアクチュエータを搭載したバルブは、良好な高温・高耐久・高速開閉性を備えている。
【0053】
図4、5において、ロッド14(ステム)には、エア流路14aが設けられ、このエア流路14aは、後述のエア室16と連通部17を介して連通しており、また、アクチュエータ本体1の軸心位置で軸心方向に移動可能に内蔵されている。エア流路14aは、パイプ状に形成されたロッド14内の内部流路として形成され、この流路内径はなるべく大きく確保されている。本例の連通部17は、ロッド14に開けた所定径の穴部として、1つのエア室当たり2個の連通穴17が対向位置に設けられている。
【0054】
図2~5に示すように、本例のベローズフランジは、固定フランジ18と、可動フランジ19とから成る。これらのベローズ内のエアの供給排気による各ベローズの伸縮により、ロッド14を上下動させるようにしている。
【0055】
可動フランジ19は、ベローズの他側とロッド14とに密封状態で固定されている。本例の可動フランジ19は、金属製であり、内径側はロッド14の外径側に溶接により固着されてロッド14と一体的に移動できる。可動フランジ19の外径は、小円筒ケース12の内径よりも僅かに小さく形成されているので寸法上は小円筒ケース12内周面と当接することなく小円筒ケース12の軸心方向に上下動可能となっている。なお、最下部の可動フランジ19’は、ベース体10上部内周空間に収容させるため他よりやや小径の外径となっている。
【0056】
固定フランジ18は、その片面側がベローズの一側に密封状態で固定されている。本例の固定フランジ18も、金属製であり、外径側は小円筒ケース12の内径側に対向(嵌合)していると共に、小円筒ケース12の外部から止めねじ13を挿通して螺着させ、小円筒ケース12側に固定されている。固定フランジ18の内径側軸心位置には、所定径の穴部がロッド14を挿通させて上下動可能に確保されており、本例では、凸部18a(18a’)が環状に突設形成され、ロッド14の上下動を調心・案内している。なお、最下部の固定フランジ18’の下面側は、ベース体10上部内周空間底部の段部10aの形状に適合して載置されている。
【0057】
止めねじ13は、本例では、固定フランジ18の1つ当たり、周方向120度間隔で合計3つの止めねじ13を対称位置にそれぞれ小円筒ケース12に固定しているが、設計的な強度やコストなどとの関係で問題がなければ、固定フランジ18の1つ当たり複数箇所、例えば、周方向の互いに90度間隔に合計2箇所、或は単に1箇所のみ(例えば、図示されている止めねじ13の位置のみ)などとして構成してもよい。
【0058】
ストッパ20は、可動フランジ19の上昇を制限する部位として、固定フランジ18側に設けられており、具体的には、固定フランジ18の下面側に所定の径・長さのピン20が固定フランジ18に垂直に螺着固定されている。後述のように、このピン20の先端部が、エア供給によるエア室16の膨張に伴い上昇する可動フランジ19の上面側に当接して上昇を係止する。
【0059】
図4、5に示すように、本例のストッパ20は、固定フランジ18の1つ当たり、周方向90度間隔で3つのピン20を設けているが、個数に制限はなく対称的な位置に適宜設けてもよく、その形状も適宜選択できる。また、後述の第2実施形態のように、本例においても、構造上製作可能であれば、ピン20のような別部材でなく、固定フランジ18下方へ向けて一体的に突出形成させてもよい。
【0060】
また、設計的な強度やコストなどとの関係では、すべての固定フランジ18にストッパ20が必要となることはなく、例えば何れか1つの固定フランジ18に設けるのみでよい。例えば、複数設けられている可動フランジ19の昇降ストロークは、寸法上すべて同一に設定されてはいるが、これらに僅かに違いがある場合は、後述のように動作した際、最もストロークが短い何れかの可動フランジ19の上面にストッパ20が当接した時点で、ベローズユニット15全体の上昇が係止されるので、この当接したストッパ20以外のストッパ20は機能的には不要なものとなる。よって、例えば最下段のストッパ20aのみを設けて、他のストッパ20は設けないベローズユニット構造としてもよい。
【0061】
図2~5において、ベローズユニット15上端部の接続部材21は、金属製で略筒状に形成され、内部にエア流路21aが設けられており、接続部材21の下端部は、上端部材22の上端部と密封状態に固定(溶接)されてエア流路21aと22aとが連通可能に設けられている。上端部材22も金属製で略筒状に形成され、内部にエア流路22aが設けられている。この上端部材22は、外径側がキャップ体23内径側に嵌合しており、この嵌合部において、係合凸部22bの係合により上方への移動が係止され、下方への移動は止め輪24により規制されることでキャップ体23に対して上下動不能に位置決めされている。
【0062】
キャップ体23(天板部材)は、金属製でリング状に形成され、下面側がスプリング25上端側を付勢する受け面となっており、外径側は小円筒ケース12上部内周面に嵌着していると共に、抜け止め部材26によって小円筒ケース12上端側に固定されることによって、アクチュエータ本体1上端面側を閉塞している。抜け止め部材26は、外径側に形成されたオネジ部が、小円筒ケース12上端部内周面のメネジ部に螺着により固定されている。
【0063】
スプリング25は、アクチュエータ本体1に内蔵されて弁閉駆動源となる弾発部材であり、この弾発部材は、その形式、素材、弾発力や内蔵する位置・数など、アクチュエータの実施に応じて任意に選択できるが、本例では、内外2重に配設された小径と大径からなるスプリング25を本体最上部に配置させており、上端側はキャップ体23下面側を付勢し、下端側は最上部の可動フランジ19上面側を付勢することにより、ベローズユニット15を下方に向けて付勢可能に設けられている。
【0064】
上端部材22と最上部の可動フランジ19との間は、小径ベローズ28による伸縮構造で連結されて内部のエア流路14aを密封状態でエア流路22aへ接続している。すなわち、小径ベローズ28の上端部は上端部材22の下端面側に溶接固定されると共に、下端部も最上部の可動フランジ19の上端面側に溶接固定されることにより、小径ベローズ28内部空間は、エア流路14aと22aとの間を、外部と密封状態を維持しつつ伸縮可能にしており、後述するように上下に昇降動するロッド14の動作を吸収するようにしている。また、小径ベローズ28は金属製であり、ロッド14の外形と同程度の小径のものが用いられている。
【0065】
本例のベローズは、大径ベローズ29であり、小円筒ケース12に収納可能な大きさに設けられ、具体的には、小円筒ケース12内周面(可動フランジ19外径)よりも僅かに小さい外径である所定の1重金属ベローズを用いている。大径ベローズ29の上端部は可動フランジ19下面側に溶接により固着され、下端部は固定フランジ18上面側に溶接により固着されており、密封状態の内側空間は、連通穴17を介してロッド14内のエア流路14aと連通したエア室16となっている。なお、最下部の大径ベローズ29’だけは、ベース体10上部内周空間に収容できるように、他よりやや小径のものが用いられている。
【0066】
本例では、固定フランジ18と可動フランジ19との間に伸縮構造の小径ベローズ27が用いられており、この小径ベローズ27は、金属製で大径ベローズ29の半分程度の径であり、上端部は固定フランジ18下面側に溶接により固着され、下端部は可動フランジ19上面側に溶接により固着され、少なくともロッド14外周囲の一部をシール可能に設けられる。なお、最下部の小径ベローズ27は、上端部が固定フランジ18’下面側に溶接により固着され、下端部は下端部材30上面側に溶接により固着されている。
【0067】
下端部材30は、中央部にロッド14の下端部が貫通しており、下面側には、ディスク部材31の上面側が溶接により固着されてエア流路14a終端部位を閉塞し、ベローズユニット15下端部を構成している。このディスク部材31下面側には棒状にロッド部32が突出しており、このロッド部32はベース体10下部の穴部10dの形状に適合して上下動可能に挿入され、ロッド部32下端部は、ダイヤフラムピース11上面側に当接・押圧可能となっている。
【0068】
図2~5に示すように、本例では5カ所にエア室16が多段状に積層して設けられている。本発明のアクチュエータは、本体が限りなくコンパクトに細径化されながら、このような5段構成も容易に実現できるため、駆動力の調整・確保の幅が広く、様々な状況下で使用できる。また、本例では、可動フランジ19、19’や固定フランジ18、18’、或は大径ベローズ29、29’や小径ベローズ27、28の種類がそれぞれ異なっているが、これらをできるだけ共通化して構成することで、アクチュエータのコスト削減につなげることができる。
【0069】
続いて、第1実施形態の作用を説明する。先ず、本例のアクチュエータ本体1をバルブに搭載した使用状態において図2に示した弁開状態、すなわち、エア室16にエアを充填してダイヤフラム7が自己復帰による膨出形状となるまでを説明する。
【0070】
図示しないエア供給源からのエアは、接続部材21内のエア流路21aからロッド14のエア流路14aを介して各連通部(連通穴17)を通って各エア室16に流入し、この流入圧による各エア室16の膨張に伴い、複数の可動フランジ19、19’は、本体最上部から付勢するスプリング25の付勢力に抗しながらそれぞれ上昇すると共に、各ベローズ(大径ベローズ29、29’)も伸びていく。
【0071】
本例のアクチュエータは、このエア室16の膨張の際に、各ベローズ(大径ベローズ29、29’)が自然に備えている上下方向へ伸びようとする拡張力をロッド14の上昇動作の推力に利用できるから、少なくともバルブの開方向への高速応答性に優れている。
【0072】
また、本例では、この膨張によるロッド14の上昇に反して、各小径ベローズ27、28もそれぞれ収縮していく。この収縮に抵抗する各小径ベローズ27、28の反発力によって、ロッド14の上昇推力にロスが生じ得る。
【0073】
具体的には、小径ベローズ28の反発力には、ベローズユニット15が上昇する際に、自身が自然に備える拡張力に加え、エア圧が充填されるエア流路22aと14aとの間を内部で繋いでいるので、この際に受圧するエア圧も加わる。また、小径ベローズ27の反発力には、後述するように、エア室16にエア圧が充填された際に固定フランジ18の軸装部位を通過してくるエア圧も内部で受圧することになるので、自身が自然に備える拡張力に加えて、このエア圧も加わる。よって、小径ベローズ27、28は、それぞれの反発力を最小限にするため、少なくとも、エア圧の受圧面積を小さくすべくなるべく小径であって、且つなるべくバネ定数(収縮時の拡張力)の小さいものを用いることが好ましい。
【0074】
さらに、小径ベローズ27、28からの反発力は素材や種類、特に径に依存するので、総合的に各エア室16の膨張によるロッド14の上昇推力を、アクチュエータに必要とされる作動性や高速応答性に支障を生じないように、本例のベローズユニット15の設計上、適切に作動性を設定・確保することも可能である。
【0075】
上記のようにして上昇した各可動フランジは、上面側がストッパ(ピン20)に当接する上死点に達することで係止される。この状態になれば、ロッド部32の上昇によりダイヤフラムピース11上面が解放され、ダイヤフラム7は、自己形状復帰力によって上方へ膨出形状に自然復帰しつつダイヤフラムピース11を持ち上げ、これに伴いダイヤフラム7下面がシートリング6から離間する。この状態で、バルブは全開状態となり、図2(第1実施形態)に示した状態となる。この状態では、最上部の可動フランジ19は各々スプリング25に弾発された状態となっている。
【0076】
ここで、図2、3に示したように、本例においては、エア室16下部側の固定フランジ18がロッド14を軸装する部位(凸部18a形成部位)はシールされていないから、この部位から圧縮エアが漏れ出すが、このエアは、その下部のロッド14を軸シールしている小径ベローズ27内に密封状に捕獲できるから、本例のエア室16は、連通穴17を除き、実質的に密封状態にシールされている。
【0077】
次に、上記バルブ全開状態から、図3に示した弁閉状態、すなわち、エア室16に充填されたエアを排出してダイヤフラム7がシートリング6に密着するまでを説明する。
【0078】
エア流路14aからエア圧の排出に伴って、エア室16内のエアも排出される。これに伴い、スプリング25に付勢されている最上部の可動フランジ19が下方へ弾発され、ロッド14全体が一体的に下降していく。これに伴い、各ベローズ(大径ベローズ29、29’)もそれぞれ収縮していく。本例ではこの際、前述の場合と逆に、各小径ベローズ27、28が備えている上下に伸びようとする拡張力を、前述したように、それぞれの内部で受圧しているエア圧と共に、ロッド14の下降推力に利用し得る。
【0079】
ロッド14の下降に伴いロッド部32下端部も下降してダイヤフラムピース11上面を押し下げ、ダイヤフラムピース11下面側がダイヤフラム7上面を押圧することにより、ダイヤフラム7は、下向きに凹むように可撓変形させながら下面側がシートリング6上面のシール面に当接する。最終的にダイヤフラムピース11下面側がダイヤフラム7を間に狭着するようにシール面に密着するまでロッド14が下降してバルブの全閉状態となる。
【0080】
次いで、図6、7は、本発明の第2実施形態(他例)のアクチュエータ本体33の構造を示しており、図6の中心線より右側は、バルブボデー3にこのアクチュエータ本体33を取り付けた状態において、弁開状態の縦断面図であり、同図中心線より左側は、バルブが全閉した状態を示した断面図であり、図7は、図6におけるC-C線断面図である。なお、この他例において、第1実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図6において、他例の小円筒ケース37も、外径に対して長尺筒状に形成されており、ベローズユニット35を収納可能な筐体である。この小円筒ケース37も、所定の金属製であり、フットスペース領域内にコンパクトに収まるようにφ38mm以下の薄肉細径に形成され、下部内周面がベース体34の上部外周面と固着(螺着)している。
【0082】
ベース体34は、外径が小円筒ケース37の外径と同径程度であり、所定の金属製にて略筒状に形成されており、上部側が小円筒ケース37と接続されると共に、下部側がボデー3上部側のメネジ部3aと螺着により接続されている。また、後述のように、ベース体34内部において、筒状に形成された上部内周空間には、ベローズユニット35の下部を収納可能とするため、少なくとも呼吸口34bと段部34aが設けられ、また下部の軸心位置には、ロッド部42(ベローズユニット35下端部)を挿入して上下動させることが可能な穴部34dが設けられる。
【0083】
図6に示すように、本発明のベローズユニット35も、ベローズとベローズフランジとを縦方向に多段状態に積層させて構成しており、このベローズとベローズフランジの中心を、ロッド38で貫通させている。本発明のアクチュエータは、金属ベローズを複数個結合して構成されたベローズユニット35を備えたエア駆動アクチュエータであり、ベローズとベローズフランジを溶接により縦に複数個結合して中心にステムを貫通させ、上部からエアを供給すると各ベローズの内側がエアで満たされるような密封状態となっており、エアによって伸びようとする各ベローズの推力の合計が、スプリングを押し上げることで弁開するエアシリンダとなっている。このアクチュエータを搭載したバルブは、良好な高温・高耐久・高速開閉性を備えることができる。
【0084】
図6において、ロッド38(ステム)には、エア流路38aが設けられ、このエア流路38aは、後述のエア室39と連通部52を介して連通しており、また、アクチュエータ本体33の軸心位置で軸心方向に移動可能に内蔵されている。エア流路38aは、パイプ状に形成されたロッド38内の内部流路として形成され、この流路内径はなるべく大きく確保されている。他例の連通部52(52’)は、後述の可動フランジ40に設けた連通路52(52’)であり、1つのエア室当たり2つの連通路52(52’)が軸心方向のエア流路38aから対向して分岐するように設けられている。
【0085】
図6に示すように、他例のベローズフランジも、固定フランジ41と、可動フランジ40とから成る。これらのベローズ内のエアの供給排気による各ベローズの伸縮により、ロッド38を上下動させるようにしている。
【0086】
可動フランジ40は、この他例においては、金属製のロッド38の径方向へフランジ状に張り出すように一体的に形成されたロッド38の一部であり、具体的には、ロッド38は、この可動フランジ40の部分とロッド38の一部である流路部38bとがエア室39の1つ分ごとに形成され、これらがエア流路38aを連通するように3つ縦方向に溶接により固着されて構成されている。可動フランジ40の外径は、小円筒ケース37の内径よりも僅かに小さく形成されているので寸法上は小円筒ケース37内周面と当接することなく小円筒ケース37の軸心方向に上下動可能となっている。なお、最下部の可動フランジ40’は、ベース体34上部内周空間に収容させるため、他よりやや小径の外径であり、また、エア流路38aの終端部位なので、ロッド38の下端部には流路部が形成されておらず、ロッド部42がベース体34の穴部34dに挿通してダイヤフラムピース11上面と当接・押圧可能となっている。
【0087】
固定フランジ41は、この他例においても、ロッド38とは別部材の金属製であり、外径側は小円筒ケース37の内径側に対向(嵌合)していると共に、小円筒ケース37の外部から止めねじ43を挿通して螺着させ、小円筒ケース37側に固定されている。固定フランジ41の内径側軸心位置には、所定径の穴部がロッド38を挿通させて上下動案内可能に確保されている。また、最下部の固定フランジ41’の下面側は、ベース体34上部内周空間底部の段部34aの形状に適合して載置されている。さらに、固定フランジ41’の1つ上の固定フランジ41”の固定には、止めねじ43が用いられておらず、代わりに、外径側が小円筒ケース37下部内周とベース体34上端部との間に挟まれて小円筒ケース37の締め付けによりこれらの間に狭着固定されている。
【0088】
止めねじ43は、他例では、固定フランジ41の1つ当たり1つの止めねじ43にて小円筒ケース37に固定しているが、設計的な強度やコストなどとの関係で問題がなければ、固定フランジ411つ当たり複数箇所、例えば外周の60度間隔に合計6箇所などに設けてもよい。
【0089】
ストッパ44は、可動フランジ40の上昇を制限する部位として、固定フランジ41側に設けられてよいが、この他例では、固定フランジ41”の下面側のみに、所定の幅・長さの突設部44として垂直に突出形成されている。後述のように、この突設部44の先端部が、エア供給によるエア室39の膨張に伴い上昇する最下部の可動フランジ40’の上面側に当接してベローズユニット35の上昇を係止する。
【0090】
突設部44は、固定フランジ41”の下面側に適当な径で同心状に突設した環状の突設部として形成されているが、その形態にも特に制限はなく、例えば、周方向の対称的な位置に2つ(又は4つ)を突設形成してもよく、個数に制限なく固定フランジ41”の対称的な位置に適宜設けてもよく、その形状なども適宜選択できる。また構造上製作可能であれば、前述の第1実施形態のようにピン20のような別部材としてもよく、さらに、すべての固定フランジ41、41’に適宜設けるようにしてもよい。或は、可動フランジ40、40’側から上方へ向けて適宜突設形成するようにしてもよい。
【0091】
図6において、ベローズユニット35上端部の接続部材45は、前述の第1実施形態同様に、上端部材46の上端部と密封状態に固定(溶接)されてエア流路46aとエア流路45aとが連通可能に設けられている。また、他例のアクチュエータ本体33の上部構造、すなわち、上端部材46やキャップ体47の構造、或は、キャップ体47と最上部の可動フランジ40との間に介在するスプリング48の構造も、前述の第1実施形態と同様である。さらに、上端部材46と最上部の可動フランジ40との間を、小径ベローズ49による伸縮構造で連結されて内部のエア流路38aを密封状態で連通している点も同様である。
【0092】
図6、7に示すように、他例のベローズは、外部ベローズ50の中に内部ベローズ51を同軸上に配置させて構成しており、具体的には、小円筒ケース37内周面(可動フランジ40外径)よりも僅かに小さい外径である外部ベローズ50の内側に、同軸上に、ロッド38外周面よりも僅かに大きい内径である内部ベローズ51を設けた2重金属ベローズで構成している。この構成により、同じ性能の第1実施形態の構成に比べて製作コストが増大したり、エア室容積が減少する可能性はあるが、エア室39のシール性を確実にすると共に、エア室39の膨張収縮の応答性(アクチュエータの作動性)も高めることができる。
【0093】
内外ベローズ51、50の上端部は可動フランジ40下面側に溶接により固着され、下端部は固定フランジ41上面側に溶接により固着されており、2重の内外ベローズ51と50との間に形成される密封状態となった筒状の内外ベローズ空間は、可動フランジ40(40’)に開口した連通路52(52’)を介してロッド38内のエア流路38aと連通したエア室39となっている。なお、最下部の内外ベローズ51’、50’だけは、ベース体34上部内周空間に収容できるように、他よりやや小径のものが用いられている。
【0094】
他例では、前述の第1実施形態と異なり、固定フランジ41と可動フランジ40との間には、伸縮構造の小径ベローズ27が用いられていない。これは、他例のエア室39は、内外ベローズ空間で堅密に区画されているから、後述する第1実施形態の場合ように、固定フランジ41がロッド38を軸装する部位からのエア室39内のエア漏れのおそれがなく、よって、この軸装部位のシールが不要となることが理由の一つである。よって、第1実施形態に比べて、少なくとも、小径ベローズ27が不要となる分、アクチュエータ本体33の高さを低く抑えることができる。特に、ベローズユニット35最下部の小径ベローズ27を有さないから、下端部材30やディスク部材31を要さず直接ロッド部42を可動フランジ40’から繋げることができ、よって、少なくともこの分、ベース体34の高さも抑制できる。
【0095】
図6に示すように、本例では4カ所にエア室39が多段状に積層して設けられている。本発明のアクチュエータは、本体が限りなくコンパクトに細径化されながら、このような4段構成も容易に実現できるため、駆動力の調整・確保の幅が広く、様々な状況下で使用できる。また、本例では可動フランジ40、40’や固定フランジ41、41’、41”、或は内外ベローズ51、50や小径ベローズ49の種類がそれぞれ異なっているが、これらをできるだけ共通化して構成することで、アクチュエータのコスト削減につなげることができる。
【0096】
続いて、第2実施形態の作用を説明する。先ず、本発明のアクチュエータ本体33をバルブに搭載した使用状態において図6右側に示した弁開状態、すなわち、エア室39にエアを充填してダイヤフラム7が自己復帰による膨出形状となるまでを説明する。
【0097】
図示しないエア供給源からのエアは、接続部材45内のエア流路45aからロッド38のエア流路38aを介して各連通部(連通路52)を通って各エア室39に流入し、この流入圧による各エア室39の膨張に伴い、複数の可動フランジ40、40’は、本体最上部から付勢するスプリング48の付勢力に抗しながらそれぞれ上昇すると共に、各ベローズ(内外ベローズ51、50、51’、50’)も伸びていく。
【0098】
この他例では、図6に示されるように、連通路52は、略筒状の空間となっている内外ベローズ空間(エア室39)の上部側に開口しているから、内外ベローズ51、50の伸縮方向に沿ってエア圧を供給又は排気できる。また、アクチュエータのサイズが同径の場合は、前述の第1実施形態のエア室16より容積が小さく、さらに、ベローズは2重ベローズから成る。よって、この他例では、エア圧の供給排気に伴うベローズの伸縮応答性が更に良好に構成されている。
【0099】
上記のようにして上昇した各可動フランジは、上面側がストッパ(突設部44)に当接する上死点に達することで係止される。この状態になれば、ロッド部42の上昇によりダイヤフラムピース11上面が解放され、ダイヤフラム7は、自己形状復帰力によって上方へ膨出形状に自然復帰しつつダイヤフラムピース11を持ち上げ、これに伴いダイヤフラム7下面がシートリング6から離間する。この状態で、バルブは全開状態となり、図6右側に示した状態となる。この状態では、最上部の可動フランジ40は各々スプリング48に弾発された状態となっている。
【0100】
次に、上記バルブ全開状態から、図6左側に示した弁閉状態、すなわち、エア室39に充填されたエアを排出してダイヤフラム7がシートリング6に密着するまでを説明する。
【0101】
エア流路38aのエア圧の排出に伴って、エア室39内のエアも排出される。これに伴い、スプリング48に付勢されている最上部の可動フランジ40が下方へ弾発され、ロッド38全体が一体的に下降していく。これに伴い、各ベローズ(内外ベローズ51、50、51’、50’)もそれぞれ収縮していく。
【0102】
ロッド38の下降に伴いロッド部42下端部も下降してダイヤフラムピース11上面を押し下げ、ダイヤフラムピース11下面側がダイヤフラム7上面を押圧することにより、ダイヤフラム7は、下向きに凹むように可撓変形させながら下面側がシートリング6上面のシール面に当接する。最終的にダイヤフラムピース11下面側がダイヤフラム7を間に狭着するようにシール面に密着するまでロッド38が下降してバルブの全閉状態となる。
【0103】
特に、この第2実施形態のベローズユニット35では、エア室39を構成する内外ベローズ51、50以外のベローズとしては、小径ベローズ49のみ用いており、第1実施形態のベローズユニット15の小径ベローズ27に対応するベローズは有していない。よって少なくとも、前述したベローズユニット15が上昇する際の小径ベローズ27による反発力も存在しない分、作動性・高速応答性に優れた構造と言える。
【0104】
上記のように、本発明のアクチュエータでは、少なくともロッド14、38と可動フランジ19、40がそれぞれ一体的に構成されたベローズユニット15、35であって、多段状に積層したすべてのエア室16、39は、エア流路14a、38aを介して互いに連通状態が維持された構造であるから、供給されたエア圧は、可動フランジごとに時間差や偏りを生じることなくすべての各可動フランジ19、40を同時かつ均等に押し上げることができ、これはエアを排出して各可動フランジ19、40が下降する際も同様である。
【0105】
また、アクチュエータ内部のエア流路14a、38aやエア室16、39から成るエア容積の合計も、全体としてできるだけコンパクトに抑えられていると共に、例えば第1実施形態の場合はバルブストロークが1.2mmに設定されるので、エア室の膨張収縮率も小さい。さらに、上述のように、本発明のアクチュエータの作用においては、部材の伸縮運動が存在する代わりに、部材間の摺動や摩擦運動はほとんど存在しない。よって、アクチュエータ内へのエア供給と排出に対しても、時間差をほぼ生じることなく応答作動することができ、極めて良好な高速応答性を実現できる上に極めて高い耐久性も発揮できる。
【0106】
したがって、本発明のアクチュエータは、オールメタル(全金属製)で製作可能な構成となっており、例えば300度などの高温雰囲気でもバルブを支障なく動作させることが可能であり、かつ、摺動部位や摩耗部位を有していないから耐久性も極めて良好であり、しかも、ベローズの多段構造によって小径のアクチュエータ(バルブ)として容易に構成することも可能である。
【0107】
次いで、本発明の第3実施形態(他例)について説明する。第3実施形態では、第1の実施形態における止め輪24を廃止して、替わりに押え部材60を取付けて、この押え部材60によって、接続部材21の回動を規制して上端部材22が回動するのを防止している。
【0108】
本発明の第1実施形態では、上端部材22と最上部の可動フランジ19との間にある小径ベローズ28は、その下側にある多段ベローズが上下した時に、配管側が上下しないように動きを吸収する役割がある。そして、上端部材22は、キャップ体23と嵌合しており、この嵌合部において、係合凸部22bの係合と止め輪24により規制されることで上下方向の動きを規制している。
【0109】
ところで、図2図5に示すように、ベローズユニット15上端部の接続部材21の下端部は、上端部材22の上端部と密封状態に固定(溶接)されているので、この接続部材21を、スパナ等の工具を用いて締めつけする際に、接続部材21の下端部に強い回転力が作用すると、接続部材21の下端部に固定(溶接)された上端部材22が回動する虞があり、また、上端部材22が回動することで上端部材22に溶接された小径ベローズ28に回動力が伝わり小径ベローズ28が捻じれた状態となる虞がある。そして、小径ベローズ28が捻じれた状態で、アクチュエータを作動させると小径ベローズ28が破れやすくなり、多数回の作動に耐え得ることができなくなる。
【0110】
そこで、第3実施形態では上記の欠点を補うために押え部材60を取付けて、上端部材22が回動しないように規制しつつ、かつ、小径ベローズ28に捻じれが生じない構造としている。
【0111】
図8(a)は押え部材60の斜視図であり、図8(b)はネジ穴26aを設けた抜け止め部材26の斜視図であり、図8(c)は押え部材60をアクチュエータ本体1の上部に取付けた状態を示す要部斜視図であり、図9は押え部材60をアクチュエータ本体1の上部に取付けた状態を示す一部省略した要部断面図である。以下説明において、同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0112】
図8(a)に示すように、押え部材60は、略矩形状の基台61に短寸筒状部62、長穴部63、ネジ穴部65を有している。
本例では、長穴部63は長穴状で、略矩形状の基台61に周方向90度間隔で合計4つ設け、第1ネジ71が長穴を貫通して抜け止め部材26のネジ穴26aと螺着できるように設けている。なお、第1ネジ71を抜け止め部材26のネジ穴26aと螺着できれば、周方向に120度間隔で合計3つあるいは、対称位置に合計2つなどとしてもよい。また、押え部材60の長穴部63を長穴状に形成したので、押え部材60を任意の位置で仮着した後に、第1ネジ71が抜け止め部材26のネジ穴26aに螺着できるように位置合わせをすることができる。
短寸筒状部62には、略矩形状に貫通した貫通部64を設け、貫通部64は接続部材21の下端部側六角ナット部の二面幅と係合する係合平行面66を有している。係合平行面66には、第2ネジ72が螺着するネジ穴部65が対称位置にそれぞれ設けられている。
【0113】
図8(b)に示すように、第3実施形態における抜け止め部材26は、ネジ穴26aを追加している。図8(b)より、抜け止め部材26は、ネジ穴26a、係止穴26b、オネジ部26cを有している。ネジ穴26aは第1ネジ71と螺着するように設けられている。図示しない治具を用いて抜け止め部材26が小円筒ケース12と螺着できるようにオネジ部26cを設け、図示しない治具と係止可能に治具係止穴26bを設けられている。
【0114】
図8(c)及び図9に示すように、アクチュエータ本体1を組立て後、アクチュエータ本体1の上部に押え部材60を取付けることによって、接続部材21の回動を規制して上端部材22が回動するのを防止している。
押え部材60の係合平行面66と接続部材21の下端部側六角ナット部の二面幅とが係合するように、接続部材21を貫通部64に貫通させて押え部材60を仮着し、長穴部63から第1ネジ71を抜け止め部材26に設けたネジ穴26aと固着(螺着)すると、押え部材60が固定される。
そして、押え部材60の係合平行面66と接続部材21の下端部側六角ナット部の二面幅とが係合する状態で、接続部材21を貫通部64に貫通させて押え部材60が固定されると、接続部材21の下端部側六角ナット部の二面幅と、押え部材60の係合平行面66とが適合し係合して、この係合によって、接続部材21の下端部が回動するのを抑制することができる。
【0115】
また、押え部材60のみでは、接続部材21の下端部と押え部材60の係合平行面66との係合が多少ぐらつくことがある。このため、接続部材21を確実に固定するために、第2ネジ72を押え部材60のネジ穴部65に固着(螺合)する。
さらに、押え部材60のネジ穴部65に第2ネジ72を固着(螺合)したときには、第2ネジ72の一端が、接続部材21の下端部側の六角ナット部の二面幅の一端と当接して、より効果的に接続部材21が回動するのを防止できる。
すなわち、押え部材60の平行係合面66と接続部材21の下端部側の六角ナット部が係合すると共に、押え部材60に第2ネジ72を固着することで、接続部材21の回動が制御されるので、接続部材21をナット締めしたときに接続部材21の下端部側で回動するのを防止することができる。そして、接続部材21の下端部に固定されている上端部材22の回動も防止することができる。
【0116】
このように、接続部材21をナット締めするときに、過剰な回転が接続部材21の下端部に生じるのを防止しており、接続部材21の下端部が回動しないため、接続部材21に固定(溶接)されている上端部材22も回動せず、さらには、上端部材22と溶接された小径ベローズ28にも回転力が伝達されない。このような構造としたことで、接続部材21をナット締めするときに小径ベローズ28に捻じれが生じるのを防止することができる。
【0117】
加えて、第2ネジ72を固定すると、接続部材21の下端部に固定されていた上端部材22の下方向の動きが規制される。なお、第1実施形態と同様に、係合凸部22bによって上端部材22の上方向の動きが規制される。よって、本例では、止め輪24を廃止しても、上端部材22の上下動の動きを規制することができる。
【0118】
このように、第3実施形態では、押え部材60と、抜け止め部材26と、ネジ部材(第1ネジ71、第2ネジ72)により、上端部材22の回動を規制すると共に、接続部材21の六角ナット部をナット締めして固定するときに、小径ベローズ28に回転負荷がかからない構造なので、小径ベローズ28に回転方向の捻じれが生じない。このため、小径ベローズ28が捻じれた状態で、アクチュエータを作動したことにより、小径ベローズ28が破れる虞もないから、充分な作動性や耐久性を確保することができる。
【0119】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0120】
1 33 アクチュエータ本体
2 バルブ本体
3 ボデー
4 5 流路
6 シートリング(弁座)
7 ダイヤフラム(弁体)
8 弁室
12 37 小円筒ケース
14 38 ロッド
14a 21a 22a 38a 45a 46a エア流路
15 35 ベローズユニット
16 エア室(内側空間)
17 連通穴(連通部)
18 41 固定フランジ(ベローズフランジ)
19 40 可動フランジ(ベローズフランジ)
20 20a ピン(ストッパ)
27 小径ベローズ
29 大径ベローズ(ベローズ)
39 エア室(内外ベローズ空間)
50 外部ベローズ(ベローズ)
51 内部ベローズ(ベローズ)
44 突設部(ストッパ)
52 連通路(連通部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9