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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】暖房機
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/00 20220101AFI20231012BHJP
   F24H 15/37 20220101ALI20231012BHJP
【FI】
F24H3/00 B
F24H15/37
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019136309
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021021496
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 房俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕悦
(72)【発明者】
【氏名】白原 悠希
(72)【発明者】
【氏名】笠輪 裕士
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-020983(JP,A)
【文献】実開昭59-182002(JP,U)
【文献】実開昭52-020066(JP,U)
【文献】登録実用新案第3216440(JP,U)
【文献】特開平08-042924(JP,A)
【文献】特開2000-329353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H3/00ー3/06,15/37
H05B3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも出力可変のヒータを含む3以上の複数のヒータと、
各前記ヒータを内部に収容し、前記各ヒータの熱を外表面から放熱するアルミニウム合金である独立した3以上の複数の放熱部と、
前記複数のヒータの100%、0%、その間の所定出力の組合せにより実現される出力の合計が段階的に割り当てられた複数の出力レベルから選択される一の前記出力レベル、または設定温度をユーザより受け付ける操作部と、
前記操作部により前記出力レベルの選択を受け付けた場合選択された前記出力レベルになるよう各前記ヒータの出力を個別に制御し、前記操作部により前記設定温度を受け付けた場合前記設定温度と室温との差に応じて決定される前記出力レベルになるように前記ヒータの出力を個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記出力レベルを小から大の方向に切り換える際、前記各ヒータの出力を維持、または大きくする制御のみ行い、前記出力レベルを大から小の方向に切り換える際、前記各ヒータの出力を維持、または小さくする制御のみ行う、暖房機。
【請求項2】
前記複数のヒータは、前記暖房機の設置時における上下方向に沿って配列され、
前記制御部は、前記出力レベルを小から大の方向に切り換える際、上方向に配置された前記ヒータから順に出力を大きくする、請求項1に記載の暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーズヒータなどのヒータを有し、ヒータの熱を直接または間接的に放熱する暖房機が知られている。このような暖房機は、室温を検出する室温センサを備え、検出された室温に応じてヒータの出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-60900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
暖房機が個別に出力が制御可能なヒータを複数有している場合、全ヒータの合計出力が検出された室温に適した出力になるよう、作動するヒータを組み合わせて運転する。出力レベルに応じた出力を得るためには、例えば出力が大きくなる方向の制御であっても、通電中のヒータを非通電とし、また非通電中の他のヒータを通電オンすることで所望の合計出力を得る場合がある。また、さらに出力が大きくなる場合には、再びその非通電中のヒータを通電する場合も起こり得る。
【0005】
このような暖房機には、各ヒータの通電および非通電が繰り返されることにより、熱の利用効率が低下するという課題があった。例えば、通電から非通電となる際には、すでに暖まったヒータの熱が失われてしまう。また、再び通電される際には、再度ヒータが暖まるまでに時間を要してしまう。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、熱の利用効率を向上できる暖房機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る暖房機は、上述した課題を解決するために、少なくとも出力可変のヒータを含む3以上の複数のヒータと、各前記ヒータを内部に収容し、前記各ヒータの熱を外表面から放熱するアルミニウム合金である独立した3以上の複数の放熱部と、前記複数のヒータの100%、0%、その間の所定出力の組合せにより実現される出力の合計が段階的に割り当てられた複数の出力レベルから選択される一の前記出力レベル、または設定温度をユーザより受け付ける操作部と、前記操作部により前記出力レベルの選択を受け付けた場合選択された前記出力レベルになるよう各前記ヒータの出力を個別に制御し、前記操作部により前記設定温度を受け付けた場合前記設定温度と室温との差に応じて決定される前記出力レベルになるように前記ヒータの出力を個別に制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記出力レベルを小から大の方向に切り換える際、前記各ヒータの出力を維持、または大きくする制御のみ行い、前記出力レベルを大から小の方向に切り換える際、前記各ヒータの出力を維持、または小さくする制御のみ行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る暖房機においては、熱の利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る暖房機の一実施形態を示す暖房機の右前方から見た斜視図。
図2】暖房機の前板および左右パネルを取り外し、右前方から見た斜視図。
図3図1のIII-III線に沿う断面図。
図4】暖房機の機能ブロック図。
図5】各ヒータに割り当てられる出力を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る暖房機の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る暖房機の一実施形態を示す暖房機1の右前方から見た斜視図である。
図2は、暖房機1の前板31および左右パネル35を取り外し、右前方から見た斜視図である。
図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、暖房機1の機能ブロック図である。
【0012】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、および「左」は、図1から図3における定義に従う。また、上下方向は、暖房機1の設置時における鉛直方向に対応する。前後方向および左右方向は、暖房機1の設置時における水平方向に対応する。
【0013】
暖房機1は、放熱部10と、ヒータ20と、筐体30と、主制御基板70と、電源基板80と、を主に有する。
【0014】
放熱部10は、暖房機1の設置時における上下方向に沿って配列された上段放熱部10a、中段放熱部10b、および下段放熱部10cを有する複数の放熱部10(複数のヒータ20)である。上段放熱部10a、中段放熱部10b、および下段放熱部10c(以下これらを区別しない場合、単に「放熱部10」という。)は、それぞれ上段ヒータ20a、中段ヒータ20b、および下段ヒータ20c(以下これらを区別しない場合、単に「ヒータ20」という。)を内部に収容し、ヒータ20の熱を外表面から放熱する。
【0015】
放熱部10は、例えばアルミニウム合金のダイカスト成形品である。放熱部10は、ヒータ収容部11と、複数のフィン12と、を有する。ヒータ収容部11は、前後方向に沿う面方向を有する2枚の板状部材13の間に形成され、ヒータ20を収容する。フィン12は、板状部材13から略垂直に左右方向に突出し、上下方向に延びる(上下方向に沿う面方向を有する)。フィン12は、前後方向に沿って、例えば略等間隔で配列される。放熱部10は、左右側面においてボルト14により固定具15と連結される。放熱部10は、この固定具15を介して一対の遮熱板50に固定(架設)される。
【0016】
ヒータ20は、両端に端子21を有する、例えばシーズヒータである。ヒータ20は、主に前後方向に延びたU字形状を有する。ヒータ20は、端子21を放熱部10から露出してヒータ収容部11に収容されている。ヒータ20は、放熱部10の内部に鋳込まれることにより、放熱部10と一体成形される。
【0017】
筐体30は、放熱部10を収容し、暖房機1の外郭をなす。筐体30は、前板31と、後板32と、下板33と、上カバー34と、左右パネル35と、遮熱板50と、仕切板60と、を有する。前板31、後板32、下板33、上カバー34、および左右パネル35は、例えば冷間圧延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などの薄鋼板からなる。遮熱板50および仕切板60は、例えば薄鋼板からなる。
【0018】
前板31は、暖房機1の前面に沿って配置される。前板31は、表示部37と、操作部38と、前側取っ手39と、を有する。表示部37は、暖房機1の運転状態や操作内容を表示する、例えば液晶表示パネルである。操作部38は、暖房機1の電源のオン、オフや、運転内容の指示を受け付ける。前側取っ手39は、表示部37の上方に配置され、ユーザによる暖房機1の移動に用いられる。後板32は、暖房機1の後面に沿って配置される。後板32は、前側取っ手39と前後方向において対になる位置に、後側取っ手(図示せず)を有する。
【0019】
下板33は、筐体30の下方に配置される。下板33は、前板31、後板32、および遮熱板50のベースとなる。下板33は、前後方向においてヒータ室30aおよび基板室30bに亘って配置される。ヒータ室30a側に位置する下板33は、ヒータ室30aへ空気を取り入れるヒータ室側吸込口40aを有する。基板室30b側に位置する下板33は、基板室30bへ空気を取り入れる基板室側吸込口40bを有する。下板33は、暖房機1を移動するために用いられる一対のキャスター付脚41を有する。キャスター付脚41は、筐体30の鉛直方向下方に固定される。キャスター付脚41の詳細については、後述する。
【0020】
上カバー34は、暖房機1の上面に沿って配置される。上カバー34は、グリル42と、金網43と、パネル取付具45と、を有する。グリル42は、ヒータ室側吸込口40aまたは基板室側吸込口40bから取り入れられ、暖房機1内を下から上に向かって流れる空気を吹き出すヒータ室側吹出口46aを有する。金網43は、ヒータ室側吹出口46aを塞ぐように、グリル42の下方に配置される。パネル取付具45は、金網43の下方に配置され、一対の遮熱板50間に前後に架設された枠部材である。パネル取付具45は、左右パネル35を固定するための構造である爪部45aを左右の枠面に有する。
【0021】
左右パネル35は、暖房機1の左右側面に沿ってそれぞれ配置される。左右パネル35は、放熱部10からの高温の熱に対するユーザの安全性を確保するため、放熱部10を覆って遮蔽する。これにより、暖房機1の内部はユーザにより視認されない。
【0022】
左右パネル35は、上端に内面方向の折返し(図示せず)を有する。左右パネル35の上端は、この折り返しをパネル取付具45の爪部45aに引っ掛けることにより固定されている。左右パネル35の下端は、下板33にネジ止めされることにより固定されている。また、左右パネル35の前後端は、前板31および後板32にそれぞれ係止されている。左右パネル35の中央部36aは、外縁部36bに対して放熱部10から離れるように膨出した形状を有している。これにより左右パネル35は、遮熱板50とは非接触に固定されているとともに、放熱部10との間に一定の隙間が設けられている。このため、左右パネル35は、過剰な温度上昇が抑制されている。
【0023】
遮熱板50は、放熱部10からの熱を、前板31および後板32と放熱部10との間で遮熱する。遮熱板50は、下板33に下部が固定され、遮熱板50の上方に位置するパネル取付具45に上部が固定される。これにより、遮熱板50、パネル取付具45および下板33は、暖房機1(ヒータ室30a)の内部骨格を構成している。
【0024】
前方に配置され、前板31と対向する前遮熱板51は、筐体30内部を仕切り、放熱部10と電子部品とを隔離する。すなわち、前遮熱板51は、筐体30がヒータ20を収容するヒータ室30aと、電源基板80、サーモスタット85、リード線87および主制御基板70を収容する基板室30bと、を有するように、筐体30内部を区画する。基板室30bは、ヒータ室30aと前後方向(鉛直方向に直交する水平方向)において区画されている。前遮熱板51は、鉛直方向上方に、基板室側吹出口46b(吹出口)を有する。基板室側吹出口46bは、基板室30bを自然対流で上昇する空気をヒータ室30a側に放出する。
【0025】
仕切板60は、基板室30b内に配置され、基板室30bを電源基板80およびリード線87を含む第一空間90と、主制御基板70を含む第二空間91と、に仕切る。第二空間91は、仕切板60が位置する上下方向の範囲において、仕切板60より前方に位置する空間である。第一空間90は、基板室30bにおける第二空間91以外の空間である。なお、図2および図3から明らかなとおり、第一空間90と第二空間91とは、仕切板60により全ての境界が明確に隔離されているわけではない。
【0026】
仕切板60は、基面61と、傾斜面62と、固定片63と、を有する。基面61は、上下方向に沿う面方向を有する平板である。基面61は、図3に示すように、主制御基板70よりも後方であって、電源基板80およびリード線87よりも前方に配置される。基面61の上端61a(仕切板60の上端)は、電源基板80からの放熱、およびリード線87からのノイズを考慮して、主制御基板70の上方に位置する。基面61の左右の辺61bと遮熱板50との間には、遮熱性およびノイズに対する遮蔽性から、隙間が設けられないのが好ましい。
【0027】
傾斜面62は、基面61の下端(基面下端61c)と連続的に形成された平板であり、基面下端61c位置から下方に向けて前板31に近づくように傾斜する。傾斜面62の下端(傾斜面下端62c)は、前板31に対して隙間92を有する。傾斜面下端62cは、主制御基板70よりも下方に位置する。固定片63は、基面61の左右の辺61bに断続的に設けられ、仕切板60を前遮熱板51の左右側面51aに固定する。
【0028】
仕切板60は、傾斜面下端62c(仕切板60の下端)において、基板室側吸込口40bから吸い込まれ基板室側吹出口46bに向う空気の流路を、第一流路と、第二流路と、に分岐する。第一流路は、第一空間90を経由する、すなわち仕切板60の後方を経由する流路である。第二流路は、第二空間91を経由する、すなわち仕切板60の前方を経由する流路である。
【0029】
主制御基板70は、暖房機1を統括的に制御するマイクロコンピュータを有する回路基板である。主制御基板70は、操作部38を介してユーザの指示を受け付け、この指示に基づいて電源基板80からヒータ20への電源の供給を制御する。
【0030】
また、主制御基板70は、必要な情報を表示するため表示部37を制御する。主制御基板70は、表示部37および操作部38とともに、前板31の表示部37および操作部38の背面側に固定されている。
【0031】
主制御基板70は、室温サーミスタ71およびプラグサーミスタ72と接続されている。室温サーミスタ71(室温センサ)は、キャスター付脚41に固定され、暖房機1の外部の温度を室温とし、主制御基板70に室温に関する情報を供給する。主制御基板70は、室温サーミスタ71から得られた室温に応じて、ヒータ20への電源の供給を制御する。プラグサーミスタ72は、電源プラグ86内に収容されたサーミスタであり、電源プラグ86の温度を検出する。主制御基板70は、プラグサーミスタ72から、トラッキング現象などが発生したとみなされる異常な高温を検出した場合、暖房機1の電源をオフする(ヒータ20への電力供給を停止する)。
【0032】
電源基板80は、主制御基板70の制御に基づいて、各ヒータ20へ電源を供給する。電源基板80は、トライアック81と、ヒートシンク82と、を主に有する。トライアック81は、ヒータ20への電源供給をオン、オフ制御する。ヒートシンク82は、トライアック81の熱を放熱する。
【0033】
また、電源基板80は、サーモスタット85および電源プラグ86と接続されている。サーモスタット85は、リード線87および電源基板80を介して電源プラグ86と直列に接続されている。サーモスタット85は、電源基板80の鉛直方向上方であって、かつ主制御基板70および仕切板60よりも上方に配置される。サーモスタット85は、前遮熱板51に固定され、基板室30bの雰囲気温度が異常な高温となった場合、暖房機1の電源をオフする(ヒータ20への電力供給を遮断する)。
【0034】
主制御基板70は、電源基板80とサーモスタット85の間であって、第二空間91に配置されている。電源基板80は、主制御基板70の下方であって、第一空間90に配置されている。また、リード線87は、第一空間90を上下方向に延びている。
【0035】
ここで、本実施形態においては、主制御基板70は、ヒータ20の出力が、選択された出力レベルになるよう、各ヒータの出力を個別に制御する制御部として機能する。以下、主制御基板70による、ヒータ20の出力制御の詳細について説明する。
【0036】
各ヒータ20の出力は、電源基板80のトライアック81の制御により、0%、50%および100%の間で、可変となっている。出力0%は、ヒータ20が非通電となっている状態である。出力100%は、ヒータ20が通電されている状態である。出力50%は、所定時間(例えば1分)において同時間ずつ(例えば30秒ずつ)、ヒータ20が通電および非通電となる状態である。また、上段ヒータ20aは300W、中段ヒータ20bおよび下段ヒータ20cは600Wの出力を有する。
【0037】
主制御基板70は、予めプログラムされた複数の出力レベルを切り換えながら、室温サーミスタ71から得られる室温に応じて、ヒータ20の出力を制御する。出力レベルは、ヒータ20の出力の合計が出力値として段階的に割り当てられた、複数のレベルを含み、例えば、レベル1からレベル5まで設定されている。各出力レベルの出力は、レベルに応じて段階的に変化し、レベル1が最も出力が小さく、レベル5が最も出力が大きい。
【0038】
例えば、暖房機1が自動で出力を制御する自動運転中である場合、主制御基板70は、室温と、操作部38を介してユーザより受け付けた設定温度との差に応じて、出力レベルを制御する。具体的には、室温が上昇し設定温度に近づくと、出力レベルを下げる。また、室温が低下し設定温度から離れると、出力レベルを上げる。また、暖房機1は、操作部38を介して、ユーザから直接出力レベルの選択を受け付ける手動運転中である場合には、主制御基板70は、ユーザの選択に基づいて出力レベルを制御する。
【0039】
表1および図5に示すように、各出力レベルには、所要の出力が得られるよう、各ヒータ20の通電、非通電の状態および出力の割合が予め割り当てられており、主制御基板70は、予めこれらの情報(例えば、情報テーブル)を記憶している。具体的には、レベル1には300W、レベル2には600W、レベル3には900W、レベル4には1200W、レベル5には1500Wが割り当てられている。各ヒータ20の合計出力が、これら各出力レベルに必要な出力となるように、決定されている。
【0040】
【表1】
【0041】
ここで、主制御基板70は、出力レベルを小から大の方向に切り換える際、各ヒータ20の出力を維持、または大きくするよう、制御する。例えば、レベル1からレベル5の方向にレベルが上昇する際、中段ヒータ20bについては、レベル1からレベル2への上昇時に出力50%から出力100%となるよう、すなわち出力が大きくなるよう制御される。その後は、中段ヒータ20bは、出力100%を維持するよう制御される。
【0042】
また、下段ヒータ20cについては、レベル1からレベル2までは出力0%であり、レベル2からレベル3への上昇時に出力50%となるよう、すなわち出力が大きくなるよう制御される。また、レベル3からレベル4への切換時に出力100%となるよう、すなわち出力が大きくなるよう制御される。その後は、下段ヒータ20cは、出力100%を維持するよう制御される。
【0043】
さらに、上段ヒータ20aについては、レベル1からレベル4までは出力0%であり、レベル4からレベル5への切換時に出力100%となるよう、すなわち出力が大きくなるよう制御される。
【0044】
主制御基板70は、出力レベルを大から小の方向に切り換える際、各ヒータ20の出力を維持、または小さくするよう、制御する。具体的な制御は、上述した出力レベルを小から大の方向に切り換える際の各ヒータ20の制御と逆の制御である。
【0045】
すなわち、上述した情報テーブルは、出力レベルの増加方向においては各ヒータ20の出力を大きくする、または維持する情報のみで、出力レベルの減少方向においては各ヒータの出力を維持する、または小さくする情報のみで構成されている。
【0046】
暖房機1は、このように各ヒータ20の出力が制御されることにより、熱の利用効率を向上できる。すなわち、一度通電され、または出力が上昇したヒータ20は、出力レベルが上昇した場合に、通電状態または出力が上昇する方向の変化が維持される。また、一度非通電となる、または出力が低下したヒータ20は、出力レベルが低下した場合に、非通電状態または出力が低下する方向の変化が維持される。
【0047】
これにより、暖房機1は、出力レベルの変動に対する、各ヒータ20の出力の変動を抑制でき、不要な通電、非通電を繰り返すことによる熱の利用効率の低下を抑制できる。その結果、暖房機1は、例えば出力0%から出力100%に到達するまでの時間などの、ヒータ20の目標出力までの到達時間の不要な増加を低減でき、ユーザの使用感(暖房感)を向上できる。
【0048】
また、各ヒータ20が共通の放熱部を介して放熱する場合に比べ、それぞれ独立した放熱部10を介して放熱する本実施形態の暖房機1は、出力の変動による各放熱部10の放熱効率の低下が大きい。このため、上述した出力制御は、特に有効である。
【0049】
また、放熱部10がアルミニウム合金である場合、熱容量が相対的に大きい。このため、収容するヒータ20が非通電となったことに伴い温度が低下した放熱部10は、再度通電された場合には、温度が上昇するまでに時間を要してしまう。このため、上述した出力制御を行う暖房機1は、アルミニウム合金である放熱部10を有する場合には、特に熱の利用効率を向上できる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0051】
例えば、ヒータの出力制御は、表1に示すものに限らない。また、ヒータの個数や、ヒータの出力も、一例であってこれに限らない。例えば、暖房機は、出力レベルを小から大の方向に切り換える際、上方向に配置されたヒータから順に出力を大きくしてもよい。すなわち、例えば上段および中段ヒータが非通電であり、下段ヒータが通電されている場合には、下段ヒータの熱が上段および中段ヒータに吸収されてしまう虞がある。これに対し、上述のようにヒータの出力を上段側から順に大きくしていくことで、発した熱が効率良く暖房に用いられ、放熱効率を上昇させることができる。
【0052】
制御部(主制御基板70)が、出力レベルを小から大の方向に切り換える際、各ヒータの出力を維持、または大きくする制御のみ行い、出力レベルを大から小の方向に切り換える際、各ヒータの出力を維持、または小さくする制御のみ行う例を説明したが、制御例(情報テーブルの構成例)はこれに限らない。例えば、制御部が、出力レベルの増加方向の一部においてのみ、出力を維持または大きくする制御を行ったり、出力レベルの減少方向の一部においてのみ、出力を維持または小さくする制御を行ったりしてもよく、情報テーブルをこれらのような制御内容で構成してもよい。
【0053】
また、ヒータ20が主に前後方向に延びるU字形状のシーズヒータである例を説明したが、上下方向に延びたり、I字、L字形状などの他の形状であったり、シーズヒータ以外の他の種類のヒータであったりしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 暖房機
10 放熱部
10a 上段放熱部
10b 中段放熱部
10c 下段放熱部
11 ヒータ収容部
12 フィン
20 ヒータ
20a 上段ヒータ
20b 中段ヒータ
20c 下段ヒータ
30 筐体
30a ヒータ室
30b 基板室
31 前板
32 後板
33 下板
34 上カバー
35 左右パネル
37 表示部
38 操作部
40a ヒータ室側吸込口
40b 基板室側吸込口
41 キャスター付脚
42 グリル
43 金網
46a ヒータ室側吹出口
46b 基板室側吹出口
50 遮熱板
60 仕切板
70 主制御基板
71 室温サーミスタ
72 プラグサーミスタ
80 電源基板
81 トライアック
86 電源プラグ
図1
図2
図3
図4
図5