(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/82 20060101AFI20231012BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231012BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H01L21/82 B
H01L27/04 D
H01L27/04 C
(21)【出願番号】P 2019144320
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 寛雄
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340461(JP,A)
【文献】特開2013-201158(JP,A)
【文献】特開2010-074125(JP,A)
【文献】特開2004-335902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
H01L 27/04
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記フィルメタル領域は、前記電源ラインに連続して形成される第1部分と、前記接地ラインに連続して形成される第2部分と、を含み、前記第1部分と前記第2部分の間には、ギャップが存在し、
デザインルールが定める配線間クリアランスの下限値をd
MINとするとき、前記第1部分と前記第2部分のクリアランスgは、
d
MIN≦g≦3×d
MIN
を満たすことを特徴とす
る半導体集積回路。
【請求項2】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記フィルメタル領域は、前記電源ラインに連続して形成される第1部分と、前記接地ラインに連続して形成される第2部分と、を含み、前記第1部分と前記第2部分の間には、ギャップが存在し、
デザインルールが定める配線間クリアランスの下限値をd
MIN、最小配線幅をw
MINとするとき、前記第1部分と前記第2部分のクリアランスgは、
d
MIN≦g≦2×d
MIN+w
MIN
を満たすことを特徴とす
る半導体集積回路。
【請求項3】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記フィルメタル領域は、前記電源ラインに連続して形成される第1部分と、前記接地ラインに連続して形成される第2部分と、を含み、前記第1部分と前記第2部分の間には、ギャップが存在し、
前記第1部分および前記第2部分は櫛形であることを特徴とす
る半導体集積回路。
【請求項4】
前記フィルメタル領域と前記第1辺の間、前記フィルメタル領域と前記第2辺の間にはクリアランスが存在することを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1部分はnウェル領域内に形成され、前記第2部分はpウェル領域内に形成されることを特徴とする請求項
1から4のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記第1部分の第1方向の長さと前記第2部分の第1方向の長さは等しいことを特徴とする請求項
1から5のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1部分と前記第2部分は、実質的に点対称であることを特徴とする請求項
1から
6のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記スタンダードセルは、
前記電源ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたPMOSトランジスタと、
前記接地ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたNMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインは前記第1部分と接続され、
前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースは前記第2部分と接続されることを特徴とする請求項
1から7のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記メタル層は、
前記PMOSトランジスタのゲートを前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第1配線と、
前記NMOSトランジスタのゲートを前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第2配線と、
をさらに含むことを特徴とする請求項
8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記メタル層は、
前記PMOSトランジスタのゲートを前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第1配線と、
前記NMOSトランジスタのゲートを前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第2配線と、
をさらに含むことを特徴とする請求項
8に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記スタンダードセルは、
前記電源ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたPMOSトランジスタと、
前記接地ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたNMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記メタル層は、
前記PMOSトランジスタのゲートを前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第1配線と、
前記NMOSトランジスタのゲートを前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第2配線と、
をさらに含むことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項12】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記スタンダードセルは、
前記電源ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたPMOSトランジスタと、
前記接地ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたNMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記メタル層は、
前記PMOSトランジスタのゲートを前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第1配線と、
前記NMOSトランジスタのゲートを前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースの一方と接続する、前記フィルメタル領域と分離した第2配線と、
をさらに含むことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項13】
前記スタンダードセルは、
前記電源ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたPMOSトランジスタと、
前記接地ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたNMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインは前記第1部分と絶縁されており、
前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースは前記第2部分と絶縁されていることを特徴とする請求項
1から7のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項14】
複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路であって、
前記スタンダードセルのメタル層は、
前記スタンダードセルの第1辺に設けられた第1ポートから第2辺に設けられた第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、
前記電源ラインに対して第2方向に離間し、前記第1辺に設けられた第3ポートから前記第2辺に設けられた第4ポートに向かって前記第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、
前記電源ラインと前記接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、前記電源ラインと前記接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、
を含み、
前記フィルメタル領域は、前記電源ラインに連続して形成される第1部分と、前記接地ラインに連続して形成される第2部分と、を含み、前記第1部分と前記第2部分の間には、ギャップが存在し、
前記スタンダードセルは、
前記電源ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたPMOSトランジスタと、
前記接地ラインと前記第2方向に隣接する領域に形成されたNMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記PMOSトランジスタのソースおよびドレインは前記第1部分と絶縁されており、
前記NMOSトランジスタのドレインおよびソースは前記第2部分と絶縁されていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項15】
前記電源ライン、前記接地ラインおよび前記フィルメタル領域の合計面積は、前記スタンダードセルの面積の60%以上を占めることを特徴とする請求項1から
14のいずれかに記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の設計に、自動レイアウトを実行するEDAツールが重要な役割を果たす。EDAツールは、セルやマクロセル(以下、スタンダードセルと総称する)の接続情報(論理回路設計結果、ネットリストと称される)を入力すると、チップ上のスタンダードセルの位置を自動的に決め(配置し)し、その間を自動的に結線する。この機能は、P&R(Place and Route)とも称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リソグラフィ工程においてフォーカスマージンを保証するために、半導体集積回路の設計者は、複数のメタル配線層それぞれにおいて、配線が占める範囲の比率(メタルデンシティ)を均一化する必要がある。
【0004】
いくつかの半導体集積回路の設計においては、設計者による手作業による配置、配線と、P&Rツールによる配置、配線が混在する場合がある。R&Rツールにより設計される領域は、手作業で設計した領域に比べて、メタルデンシティが低くなる傾向が強く、ルール違反が発生しやすい。
【0005】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、従来の機能を確保しつつ、メタルデンシティを高めることができる設計手法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される半導体集積回路に関する。スタンダードセルのメタル層は、第1ポートから第2ポートに向かって第1方向に伸び得る電源ラインと、電源ラインに対して第2方向に離間し、第3ポートから第4ポートに向かって第1方向に伸びるライン状の接地ラインと、電源ラインと接地ラインの間の絶縁を保ちつつ、電源ラインと接地ラインの間に形成されたフィルメタル領域と、を含む。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、メタルデンシティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)~(e)は、いくつかのスタンダードセルの等価回路図である。
【
図2】
図2(a)は、比較技術に係る構造を有する第1スタンダードセルの平面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)の第1スタンダードセルを自動配置して生成された半導体集積回路を示す図であり、
図3(b)は、
図2(b)の第1スタンダードセルを自動配置して生成された半導体集積回路を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、比較技術に係る構造を有する第2スタンダードセルの平面図であり、
図4(b)、(c)は、実施の形態に係る構造を有する第2スタンダードセルの平面図である。
【
図5】
図5(a)は、比較技術に係る構造を有する第3スタンダードセルの平面図であり、
図5(b)、(c)は、実施の形態に係る構造を有する第3スタンダードセルの平面図である。
【
図6】
図6(a)は、比較技術に係る構造を有する第4スタンダードセルの平面図であり、
図6(b)は、実施の形態に係る構造を有する第4スタンダードセルの平面図である。
【
図7】
図7(a)は、比較技術に係る構造を有する第5スタンダードセルの平面図であり、
図7(b)は、実施の形態に係る構造を有する第5スタンダードセルの平面図である。
【
図8】変形例に係るフィルメタル領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
実施の形態に係る半導体集積回路は、複数のスタンダードセルを自動配置配線して構成される。
図1(a)~(e)は、いくつかのスタンダードセルSC1~SC5の等価回路図である。スタンダードセルSC1~SC5はネットリスト上で、4ポート回路ネットワークとして扱われ、したがって4つのポートP1~P4を有する。
図1(a)は、標準的な電源・接地ラインのスタンダードセル(以下、第1スタンダードセルという)SC1であり、第1ポートP1と第2ポートP2を結線する電源ラインVDDと、第3ポートP3と第4ポートP4を結線する接地ラインVSSと、を含む。
【0012】
図1(b)は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタセル(以下、第2スタンダードセルという)SC2であり、PMOSトランジスタMP、NMOSトランジスタMN、抵抗R1,R2を備える。PMOSトランジスタMPのソース、ドレイン、バックゲートは電源ラインVDDと接続され、NMOSトランジスタMNのソース、ドレイン、バックゲートは接地ラインVSSと接続される。PMOSトランジスタのゲートは抵抗R1を介して接地ラインVSSと接続され、NMOSトランジスタのゲートは抵抗R2を介して電源ラインVDDと接続される。
【0013】
図1(c)は4端子ショートのスタンダードセル(以下、第3スタンダードセルという)SC3であり、PMOSトランジスタのゲートは抵抗R3を介して電源ラインVDDと接続され、NMOSトランジスタのゲートは抵抗R4を介して接地ラインVSSと接続される。
【0014】
図1(d)は、3端子ショート、ゲートフローティングのセル(以下、第4スタンダードセルという)SC4であり、PMOSトランジスタMP、NMOSトランジスタMNそれぞれのゲートはフローティング状態となっている。
【0015】
図1(e)は、3端子フローティングのセル(以下、第5スタンダードセルという)SC5であり、PMOSトランジスタMP、NMOSトランジスタMNそれぞれのゲート、ソース、ドレインがフローティング状態となっている。
【0016】
(第1スタンダードセル)
実施の形態の課題を明確化するために、はじめに、本発明者が当初検討したスタンダードセル(以下、比較技術と称する)の構造、レイアウトを説明する。
図2(a)は、比較技術に係る構造を有する第1スタンダードセルSC1aの平面図である。
【0017】
説明の簡素化のために、便宜的に、紙面横方向をx方向(第1方向)、紙面上下方向をy方向(第2方向)と定める。第1スタンダードセルSC1aは矩形であり、y方向に伸びる第1辺S1および第2辺S2を、x方向に伸びる第3辺S3および第4辺S4を有する。第1辺S1には、第1ポートP1と第3ポートP3が設けられ、対向する別の長辺S4には、第2ポートP2と第4ポートP4が設けられる。
【0018】
図2(a)において、第1メタル層(一般的には最下層、以下、単にメタル層という)には、第1ポートP1から第2ポートP2に伸びる電源ラインVDDと、第3ポートP3から第4ポートP4に伸びる接地ラインVSSと、が形成される。各図において、メタル層に形成される配線にはハッチングを付す。比較技術において、電源ラインVDDと接地ラインVSSの間には、他のメタル領域は存在しない。破線は、n型ウェルが形成される領域(nウェル領域)nwを示し、それ以外はpウェル領域pwとなる。
【0019】
続いて、実施の形態に係る第1スタンダードセルの構造およびレイアウトを説明する。
図2(b)は、実施の形態に係る構造を有する第1スタンダードセルSC1bの平面図である。
【0020】
本実施の形態において、第1スタンダードセルSC1bのメタル層には電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FM1が形成される。電源ラインVDDは、第1ポートP1から第2ポートP2に向かって第1方向(方向)に伸びるライン形状を有する。接地ラインVSSは、電源ラインVDDに対して第2方向(y方向)に離間し、第3ポートP3から第4ポートP4に向かって第1方向(x方向)に伸びるライン形状を有する。電源ラインVDDと接地ラインVSSは、
図2(a)の比較技術と同様である。
【0021】
フィルメタル領域FM1は、電源ラインVDDと接地ラインVSSの間の絶縁を保ちつつ、電源ラインVDDと接地ラインVSSの間に設けられている。このフィルメタル領域FM1は、第1スタンダードセルSC1bのメタルデンシティーを増加させる。
【0022】
フィルメタル領域FM1は、2つの部分111,112に分割されている。第1部分111は、電源ラインVDDと連続して形成され、第2部分112は接地ラインVSと連続して形成される。第1部分111と第2部分112の間にはギャップ112が存在しており、2つの部分の絶縁が確保される。
【0023】
なお図面では、説明の容易化のために、電源ラインVDD(接地ラインVSS)と第1部分111(第2部分112)の境界を実線で明示的に示し、かつそれらに異なるハッチングを付しているが、実際のデバイスでは、それらは同一のマスクによって同時かつ連続的に形成されている。
【0024】
メタルデンシティを高めるためには、第1部分111と第2部分112の間のギャップ長gは、デザインルールが許容する範囲でなるべく狭くすることが好ましい。たとえばデザインルールが定めるギャップの下限値をdMINとするとき、ギャップ長gは、以下の範囲で設計してもよい。
dMIN≦g≦2×dMIN
【0025】
デザインルールが定める配線間クリアランスの下限値をdMIN、最小配線幅をwMINとするとき、第1部分と前記第2部分のクリアランスgは、
dMIN≦g≦2×dMIN+wMIN
を満たしてもよい。
【0026】
第1部分111はnウェル領域nw内に形成し、第2部分112はpウェル領域pw内に形成してもよい。
【0027】
フィルメタル領域FMは、第1辺S1、第2辺S2とは接触しておらず、それらとの間に、クリアランスが確保されている点で、単なる低インピーダンス化のための太い電源ラインとは区別される。すなわち電源ラインVDDや接地ラインVSSの第1方向の長さは、スタンダードセルの横幅と等しいのに対して、第1部分111の第1方向の長さxa、第2部分112の第1方向の長さxbは、スタンダードセルの横幅xcより短い。
【0028】
以上が実施の形態に係る第1スタンダードセルSC1bの構成である。
同じデザインルールで設計した場合、
図2(a)ではメタルの占有率は20%程度に留まるのに対して、
図2(b)では80%程度まで増やすことができる。
【0029】
図3(a)は、
図2(a)の第1スタンダードセルSC1aを自動配置して生成された半導体集積回路を示す図であり、
図3(b)は、
図2(b)の第1スタンダードセルSC1bを自動配置して生成された半導体集積回路を示す図である。
【0030】
図2(a)の第1スタンダードセルSC1aを用いて設計した半導体集積回路は、メタルデンシティが低くなりやすい。
【0031】
図2(a)の第1スタンダードセルSC1aの代替として、
図2(b)の第1スタンダードセルSC1bをセルライブラリに登録し、自動配置・配線を実行することにより、
図3(b)のレイアウトが得られ、比較技術に係るスタンダードセルを用いた場合に比べてメタルデンシティを高めることができ、デザインルール違反を防止できる。
【0032】
また
図2(b)の第1スタンダードセルSC1bは、メタルデンシティの向上を主たる目的として設計されたものであるが、副次的な効果として、電源ラインVDD、接地ラインVSSのインピーダンスを下げることができる。
【0033】
なお一般的に、電源ラインVDDや接地ラインVSSは低インピーダンス化が要求されるところであるが、本実施の形態に係る第1スタンダードセルSC1bを、比較技術に係る第1スタンダードセルSC1aの電源ラインVDD、接地ラインVSSそれぞれの配線幅を、低インピーダンス化のみを目的として広げたものと理解してはならない。低インピーダンス化のみを目的とするならば、
図3(a)に示すように、電源ラインVDD、接地ラインVSSの全体にわたり幅をdからd’に広げれば足りる。これに対して
図3(b)では、隣接するスタンダードセルの境界ごと、すなわちポートに対応する箇所において、本来の電源ラインVDD、接地ラインVSSの本来の幅が現れており、比較技術とは明確に異なっている。
【0034】
(第2スタンダードセル)
続いて、
図1(b)の第2スタンダードセル(MOSキャパシタセル)SC2に関して、実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを、比較技術のそれと比較しながら説明する。
【0035】
図4(a)は、比較技術に係る構造を有する第2スタンダードセルSC2aの平面図であり、
図4(b)、(c)は、実施の形態に係る構造を有する第2スタンダードセルSC2b、SC2cの平面図である。
【0036】
はじめに
図4(a)を参照して、比較技術の構造を説明する。第2スタンダードセルSC2aは、第1スタンダードセルSC1aと同じサイズを有する矩形である。第2スタンダードセルSC2aは、PMOSトランジスタMPおよびNMOSトランジスタMNを備える。PMOSトランジスタMPは、nウェル領域nw内の、電源ラインVDDと第2方向に隣接する箇所に形成される。NMOSトランジスタMNは、nウェル領域pw内の、接地ラインVSSと第2方向と隣接する箇所に形成される。なお、ドレインDとソースSは便宜的に付与したものでありそれらは入れ替え可能である。
【0037】
PMOSトランジスタMPのドレインDおよびソースSは、配線W1,W2を介して電源ラインVDDと接続され、そのゲートは、配線W3を介してNMOSトランジスタMNのドレインと接続される。各配線とトランジスタの電極(G,D,S)のコンタクト箇所にはビアホールが形成される。
【0038】
NMOSトランジスタMNのドレインDおよびソースSは、配線W4,W5を介して接地ラインVSSと接続され、そのゲートは、配線W6を介してPMOSトランジスタMPのドレインと接続される。
【0039】
続いて、
図4(b)、(c)を参照して実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを説明する。
【0040】
第2スタンダードセルSC2bのメタル層には、電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FM2が形成される。フィルメタル領域FM2は、第1部分121および第2部分122を含む。
【0041】
第1部分121は、電源ラインVDDと連続して形成されており、この第1部分121は、
図4(a)の配線W1,W2の機能を兼ねている。PMOSトランジスタMPのソースと電源ラインVDDを接続する仮想的な配線(
図4(a)のW1)と、PMOSトランジスタMPのドレインと電源ラインVDDを接続する仮想的な配線(
図4(a)のW2)を考えたときに、第1部分121は、2本の仮想配線W1,W2を包含する矩形領域と把握できる。
【0042】
同様に第2部分122は、接地ラインVSSと連続して形成されており、この第2部分122は、
図4(a)の配線W4,W5の機能を兼ねている。NMOSトランジスタMNのドレインと接地ラインVSSを接続する仮想的な配線(
図4(a)のW4)と、NMOSトランジスタMNのソースと接地ラインVSSを接続する仮想的な配線(
図4(a)のW5)を考えたときに、第2部分122は、2本の仮想配線W4,W5を包含する矩形領域と把握できる。
【0043】
図4(c)の第2スタンダードセルSC2cにおいて、フィルメタル領域FM2の第1部分123は、
図4(b)の第1部分121を、空いているスペースに可能な限り拡張したものである。同様に、フィルメタル領域FM2の第2部分124は、
図4(b)の第1部分122を、空いているスペースに可能な限り拡張したものである。すなわちフィルメタル領域FM2の各部分の形状は矩形には限定されず、多角形やコの字型であってもよい。
【0044】
図4(a)の第2スタンダードセルSC2aの代替として、
図4(b)、(c)のスタンダードセルSC2bやSC2cをセルライブラリに登録し、自動配置・配線を実行することにより、メタルデンシティを高めることができ、デザインルール違反を防止できる。
【0045】
(第3スタンダードセル)
続いて、
図1(c)の第3スタンダードセルSC3に関して、実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを、比較技術のそれと比較しながら説明する。
【0046】
図5(a)は、比較技術に係る構造を有する第3スタンダードセルSC3aの平面図であり、
図5(b)、(c)は、実施の形態に係る構造を有する第3スタンダードセルSC3b,SC3cの平面図である。
【0047】
はじめに
図5(a)を参照して比較技術の構造を説明する。第3スタンダードセルSC3aは、第1スタンダードセルSC1aおよび第2スタンダードセルSC2aと同じサイズを有する矩形であり、第2スタンダードセルSC2aと同様に、PMOSトランジスタMPおよびNMOSトランジスタMNを備える。
【0048】
PMOSトランジスタMPのドレインDおよびソースSは、配線W1,W2を介して電源ラインVDDと接続され、そのゲートは、配線W7を介してPMOSトランジスタMPのドレインと接続される。
【0049】
NMOSトランジスタMNのドレインDおよびソースSは、配線W4,W5を介して接地ラインVSSと接続され、そのゲートは、配線W8を介してNMOSトランジスタMNのドレインと接続される。
【0050】
続いて、
図5(b)、(c)を参照して実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを説明する。
【0051】
第3スタンダードセルSC3bのメタル層には、電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FM3が形成される。フィルメタル領域FM3は、第1部分131および第2部分132を含む。
【0052】
第1部分131は、電源ラインVDDと連続して形成されており、
図5(a)の配線W1,W2の機能を兼ねている。第1部分131は、少なくとも仮想的な配線W1,W2を包含しており、配線W7を避けるようになるべく広く形成される。
【0053】
同様に第2部分132は、接地ラインVSSと連続して形成されており、
図5(a)の配線W4,W5の機能を兼ねている。第2部分132は、少なくとも仮想的な配線W4,W5を包含し、配線W8を避けるようになるべく広く形成される。
【0054】
図5(c)の第3スタンダードセルSC3cでは、第1部分133が、
図5(c)の配線W7も兼ねており、仮想的なW1,W2,W7を包含する矩形と把握される。同様に第2部分134は、
図5(c)の配線W8も兼ねており、仮想的なW4,W5,W8を包含する矩形と把握される。ただし、
図5(c)のスタンダードセルSC3cは、
図5(b)のスタンダードセルSC3bとは完全に等価とはいえない。なぜなら
図1(c)の抵抗R3,R4が、フィルメタル領域FM3によって短絡されるからである。
【0055】
図5(a)の第3スタンダードセルSC3aの代替として、
図5(b)、(c)のスタンダードセルSC3bやSC3cをセルライブラリに登録し、自動配置・配線を実行することにより、メタルデンシティを高めることができ、デザインルール違反を防止できる。
【0056】
(第4スタンダードセル)
続いて、
図1(d)の第4スタンダードセルSC4に関して、実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを、比較技術のそれと比較しながら説明する。
【0057】
図6(a)は、比較技術に係る構造を有する第4スタンダードセルSC4aの平面図であり、
図6(b)は、実施の形態に係る構造を有する第4スタンダードセルSC4bの平面図である。
【0058】
はじめに
図6(a)を参照して比較技術の構造を説明する。第4スタンダードセルSC4aは、他のスタンダードセルと同じサイズを有する矩形であり、PMOSトランジスタMPおよびNMOSトランジスタMNを備える。
【0059】
PMOSトランジスタMPのドレインDおよびソースSは、配線W1,W2を介して電源ラインVDDと接続される。NMOSトランジスタMNのドレインDおよびソースSは、配線W4,W5を介して接地ラインVSSと接続される。PMOSトランジスタMP、NMOSトランジスタのゲートにはコンタクトは設けられず、フローティング状態とされる。
【0060】
続いて、
図6(b)を参照して実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを説明する。
【0061】
第4スタンダードセルSC4bのメタル層には、電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FM4が形成される。フィルメタル領域FM4は、第1部分141および第2部分142を含む。
【0062】
第1部分141は、電源ラインVDDと連続して形成されており、
図6(a)の配線W1,W2の機能を兼ねている。第1部分141は、少なくとも仮想的な配線W1,W2を包含しており、y方向に引き延ばされている。
【0063】
同様に第2部分142は、接地ラインVSSと連続して形成されており、
図6(a)の配線W4,W5の機能を兼ねている。第2部分142は、少なくとも仮想的な配線W4,W5を包含し、y方向に引き延ばされている。
【0064】
図6(a)の第4スタンダードセルSC4aの代替として、
図6(b)のスタンダードセルSC4bをセルライブラリに登録し、自動配置・配線を実行することにより、メタルデンシティを高めることができ、デザインルール違反を防止できる。
【0065】
(第5スタンダードセル)
続いて、
図1(e)の第5スタンダードセルSC5に関して、実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを、比較技術のそれと比較しながら説明する。
【0066】
図7(a)は、比較技術に係る構造を有する第5スタンダードセルSC5aの平面図であり、
図7(b)は、実施の形態に係る構造を有する第5スタンダードセルSC5bの平面図である。
【0067】
はじめに
図7(a)を参照して比較技術の構造を説明する。第5スタンダードセルSC5aは、他のスタンダードセルと同じサイズを有する矩形であり、PMOSトランジスタMPおよびNMOSトランジスタMNを備える。
【0068】
PMOSトランジスタMP、NMOSトランジスタMNそれぞれのゲートG、ドレインD、ソースSにはコンタクトは設けられず、フローティング状態とされる。したがって
図7(a)の構成では、メタル層には電源ラインVDDと接地ラインVSSのみが存在する。
【0069】
続いて、
図7(b)を参照して実施の形態に係るスタンダードセルの構造およびレイアウトを説明する。
【0070】
第5スタンダードセルSC5bのメタル層には、電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FM5が形成される。フィルメタル領域FM5は、第1部分151および第2部分152を含む。
【0071】
第1部分151は、電源ラインVDDと連続して形成されている。このセルでは、第1部分151の障害となる配線は存在しないから、第1部分151は、第1スタンダードセルSC1b(
図2(b))と同様に、nウェル領域nwいっぱいに形成することができる。第2部分152も同様である。
【0072】
図7(a)の第5スタンダードセルSC5aの代替として、
図7(b)のスタンダードセルSC5bをセルライブラリに登録し、自動配置・配線を実行することにより、メタルデンシティを高めることができ、デザインルール違反を防止できる。
【0073】
図8は、変形例に係るフィルメタル領域を示す図である。この変形例においてフィルメタルFMは櫛形である。櫛形のフィルメタルを採用した場合、矩形のフィルメタルに比べてメタルデンシティが低下するが、配線間の容量を大きくできるという利点がある。
【0074】
いずれのスタンダードセルにおいても、フィルメタル領域FMはなるべく広くとることが望ましいく、電源ラインVDD、接地ラインVSSおよびフィルメタル領域FMの合計面積は、スタンダードセルの面積の60%以上とすることが好ましい。
【0075】
なお、すべてのスタンダードセルの共通する特徴として、フィルメタル領域FMに含まれる2つの部分は、実質的に点対称な形状を有していると言える。たとえば
図4(c)を参照すると、2つの部分123と124は点対称である。ただし、セル内のpウェル領域pwとnウェル領域nwのy方向の長さの違いが存在するため、厳密な点対称ではなく、第1部分123と第2部分124の形状はわずかに異なるが、このような場合も「実質的に点対称」に含まれる。
【0076】
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
100 スタンダードセル
110 フィルメタル領域
110A 第1部分
110B 第2部分
120 フィルメタル領域
120A 第1部分
120B 第2部分
130 フィルメタル領域
130A 第1部分
130B 第2部分
140 フィルメタル領域
140A 第1部分
140B 第2部分
150 フィルメタル領域
150A 第1部分
150B 第2部分
S1 第1辺
S2 第2辺
S3 第3辺
S4 第4辺
nw,pw nウェル領域
MP PMOSトランジスタ
MN NMOSトランジスタ