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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】スピナー乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/08 20060101AFI20231012BHJP
   F26B 11/18 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
F26B5/08
F26B11/18
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/68 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019145366
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025725
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】井出 悟
(72)【発明者】
【氏名】高岡 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-319930(JP,A)
【文献】実開昭59-183735(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/08
F26B 11/18
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するスピナーテーブルと、
前記スピナーテーブルに設けられてワークを保持する吸着面を有するスピナーテーブルパッドと、
前記吸着面から流体を吸引して前記ワークを前記吸着面に吸着する真空吸引手段と、を有し、
前記吸着面には、前記真空吸引手段につながり前記真空吸引手段によって吸引される前記流体が流れる吸引口と、前記ワーク方向に開口し前記吸引口につながり前記流体が流れる吸引溝と、が形成されており、
前記吸引溝は、一端が前記スピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口しており、
前記ワークを前記吸着面に吸着する際、前記ワークの前記吸着面近傍に付着していた水分を前記吸引溝及び前記吸引口を経由して吸引除去することを特徴とするスピナー乾燥装置。
【請求項2】
前記吸着面には、前記ワーク方向に開口し前記スピナーテーブルパッドの回転中心近傍から両端が回転半径方向に延在する直線状の吸引凹部が形成されており、
前記吸引口は、前記吸引凹部に形成されており、
前記吸引溝は、前記吸引凹部と交差する方向に延在して前記吸引凹部につながっていることを特徴とする請求項1に記載のスピナー乾燥装置。
【請求項3】
記吸引凹部は、両端部が前記スピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口していないことを特徴とする請求項2に記載のスピナー乾燥装置。
【請求項4】
前記吸引口は、前記スピナーテーブルパッドの回転中心よりも回転半径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスピナー乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに付着している水分等を遠心力で飛ばして除去しワークを乾燥させるスピナー乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ等のワークをスピナーテーブルで保持して回転させるスピナー乾燥装置が知られている。この種のスピナー乾燥装置では、スピナーテーブルの保持面上に載置されたワークを真空吸着して保持し、スピナーテーブルの回転によってワークを回転させる。そして、ワークの表面に付着している洗浄水等を遠心力で飛ばして除去し、ワークを乾燥させる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハを保持するスピナーテーブルを備えたスピナー装置が開示されている。同文献に開示されたスピナー装置のスピナーテーブルは、円盤状の回転プレートを有する。ウエハは、この回転プレートの上面側に保持される。
【0004】
回転プレートの下面側には、回転シャフトの上端側が接続されている。一方、回転シャフトの下端側は、モータと連結されている。回転シャフトを介してモータから伝達される回転力によって、回転プレートは、ウエハを保持した状態で回転する。
【0005】
また例えば、特許文献2には、内部に無数の気孔を有する多孔質材からなる円板状の吸着部を備えたスピナーテーブルを有するスピナー式洗浄装置が開示されている。スピナーテーブルの吸着部の上面が、ワークを吸着して保持する保持面として構成されている。
【0006】
同文献に開示されたスピナー式洗浄装置は、スピナーテーブルに保持されたワークに向けて乾燥用エアを噴出するエアノズルと、そのエアノズルに乾燥エアを供給するエア供給手段と、を具備している。
【0007】
保持面に保持されているワークを該保持面より離反させる時に、エア供給手段から送られるエアは、吸着部内を通って保持面からワークに向けて噴き出される。この噴き上げエアにより、ワークは、保持面から噴き上げられる作用を受け、スピナーテーブルから離反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-207744号公報
【文献】特開2010-123858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来技術のスピナー乾燥装置では、ワークの吸着面近傍に残存する水分を減らして乾燥効率を向上させるために改善すべき点があった。
【0010】
具体的には、従来技術のスピナーテーブルでは、ワークを保持する吸着面において水残りが発生し易いという問題点があった。吸着面に水分が残存していると、ワークの回転により水を飛ばす乾燥工程が終了した後にワークをスピナーテーブルの吸着面から離反した際、吸着面に残った水分が飛散して、乾燥工程で乾燥されたワークに水分が再付着してしまう。
【0011】
また、従来技術の真空吸着手段では、スピナーテーブルの回転中にワークが離反しないよう真空に近い状態でワークを強固に保持しており、真空吸着手段を停止して真空引きを停止しても、吸着面に真空部が残り、ウエハを吸着した状態になっている。そのため、乾燥工程後にスピナーテーブルからワークを離反する工程が容易ではなかった。
【0012】
従来技術の真空吸着手段では、吸着されていたワークを乾燥工程後に離反するためには、特許文献2に開示されているように、スピナーテーブルの吸着面に空気を供給するエア供給手段が必要であった。即ち、ワーク吸着用の空気を吸引するための吸着回路と、ワーク離反用の空気を供給するためのリフト回路と、を有する複雑な構成の空気供給装置が必要であった。
【0013】
また、特許文献2に開示されているようにワークを吸着保持していた吸着面に離反のための空気を噴出する方法では、空気配管内等に残存した水分が乾燥工程後ワーク面に再度噴き付けられて付着してしまうという問題点もある。
【0014】
また、スピナーテーブルで吸着して保持する前に、ワークの吸着面側に空気を噴き付けて水分を噴き飛ばす方法も考えられる。しかしながら、空気を噴き付けるための空気供給装置が必要であると共に、空気を噴き付ける工程の後にワークを吸着して回転させる工程を行うことになり、乾燥工程に長時間を要する。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークの吸着を改善して吸着面の水残りを無くし、乾燥工程の短時間化と装置構造の簡素化を図ることができるスピナー乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のスピナー乾燥装置は、回転するスピナーテーブルと、前記スピナーテーブルに設けられてワークを保持する吸着面を有するスピナーテーブルパッドと、前記吸着面から流体を吸引して前記ワークを前記吸着面に吸着する真空吸引手段と、を有し、前記吸着面には、前記真空吸引手段につながり前記真空吸引手段によって吸引される前記流体が流れる吸引口と、前記ワーク方向に開口し前記吸引口につながり前記流体が流れる吸引溝と、が形成されており、前記吸引溝は、一端が前記スピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口しており、前記ワークを前記吸着面に吸着する際、前記ワークの前記吸着面近傍に付着していた水分を前記吸引溝及び前記吸引口を経由して吸引除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスピナー乾燥装置によれば、回転するスピナーテーブルに設けられたスピナーテーブルパッドのワークを保持する吸着面には、真空吸引手段につながり真空吸引手段によって吸引される流体が流れる吸引口と、ワーク方向に開口し吸引口につながり流体が流れる吸引溝と、が形成されている。そして、ワークを吸着面に吸着する際、ワークの吸着面近傍に付着していた水分を吸引溝及び吸引口を経由して吸引除去する。このような構成により、ワークを回転させて遠心力で水分等を飛ばして除去する乾燥工程を行う際に、ワークを保持している吸着面近傍の水残りが無い乾燥工程を短時間で効率良く実行することができる。
【0018】
具体的には、ワークをスピナーテーブルパッドに吸着する前に、ワークの吸着面近傍から水分を噴き飛ばすための空気噴き付け工程等を実行する必要がなく、その工程のための空気供給装置が不要になる。また、空気噴き付け工程が不要になることから、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【0019】
また、ワークに残存する水分が無くなるので、ワークを回転させて乾燥し、スピナーテーブルパッドから離反した後に、ワークに向かって改めて乾燥用の空気噴出をする必要がない。そのため、このような空気噴出を行うための空気供給装置が不要になると共に、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【0020】
また、本発明のスピナー乾燥装置によれば、前記吸着面には、前記ワーク方向に開口し前記スピナーテーブルパッドの回転中心近傍から両端が回転半径方向に延在する直線状の吸引凹部が形成されており、前記吸引口は、前記吸引凹部に形成されており、前記吸引溝は、前記吸引凹部と交差する方向に延在して前記吸引凹部につながっていても良い。これにより、スピナーテーブルパッドの吸着面にワークを好適に吸着して保持することができると共に、吸着面に保持されたワークの吸着面近傍に付着している水分を効率良く吸引して除去することができる。
【0021】
また、本発明のスピナー乾燥装置によれば、前記吸引溝は、一端が前記スピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口しており、前記吸引凹部は、両端部が前記スピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口していなくても良い。このような構成により、スピナーテーブルパッドの周縁に開口する吸引溝の一端から空気を吸引して、その空気流によって、ワークに付着している水分を吸引溝の他端が開口する吸引凹部に向かって効率良く噴き流すことができる。そして、吸引溝を介して空気と共に噴き流された水分を、吸引凹部に形成されている吸引口を経由して吸引して除去することができる。
【0022】
また、吸引溝の一端がスピナーテーブルパッドの周縁から外側に開口しているので、回転による乾燥工程が完了した後には、真空吸引手段による吸引を停止することにより、吸引溝内及び吸引凹部内の圧力はスピナーテーブルパッド外部の圧力と等しくなる。よって、スピナーテーブルパッドによるワークを吸着する力が無くなり、ワークをスピナーテーブルパッドから容易に離反できるようになる。これにより、乾燥工程後の離反工程の時間を短縮することができる。また、ワークをスピナーテーブルパッドから離反する空気を供給するリフト回路を設ける必要がなくなる。よって、乾燥工程の効率を高めると共に、スピナー乾燥装置の生産性を高めることができる。
【0023】
また、本発明のスピナー乾燥装置によれば、前記吸引口は、前記スピナーテーブルパッドの回転中心よりも回転半径方向外側に形成されても良い。これにより、回転による遠心力では除去が難しい回転中心近傍に付着している水分を、真空吸引手段による吸引空気によって吸引口まで流して吸引除去することができる。よって、乾燥効率が向上し、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るスピナー乾燥装置の概略構成を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスピナー乾燥装置のスピナーテーブルパッドの平面図である。
図3】本発明の実施形態に係るスピナー乾燥装置のスピナーテーブルパッド付近を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るスピナー乾燥装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスピナー乾燥装置1の概略構成を示す正面図である。
【0026】
図1を参照して、スピナー乾燥装置1は、例えば、半導体ウエハ等のワークWを回転させて、付着している洗浄用の純水等を遠心力で飛ばして、乾燥させる装置である。ワークWは、円板状や四角形板状の加工対象材料であり、例えば、近年大型化が進められているWLP(Wafer Level Package)、WLPを更に大型化した大型実装基板であるPLP(Panel Level Package)、パッケージ基板、その他の積層基板、半導体基板、コンデンサ等の素子用の基板等であっても良い。
【0027】
スピナー乾燥装置1は、回転するスピナーテーブル10と、スピナーテーブル10の上面に設けられたスピナーテーブルパッド11と、ワークWを吸着するための真空吸引手段としてのバキュームポンプ30と、スピナーテーブル10を回転させる駆動源であるモータ28と、を有する。
【0028】
スピナーテーブル10は、上方から載置されるワークWを支持する部材であり、平面視略円状の形態をなし、その円形状の中心を軸として、吸着されるワークWと共に、略水平方向に回転する。
【0029】
スピナーテーブル10の主軸である軸19は、ロータリージョイント24を介して軸25に回転動力伝達可能に連結されている。軸25は、カップリング26を介して回転動力伝達可能にモータ28のモータ軸29に連結されている。即ち、スピナーテーブル10は、モータ28を駆動源として回転する。
【0030】
スピナーテーブル10の上面に設けられたスピナーテーブルパッド11は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、塩化ビニル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料から形成され、平面視略円状の形態をなす。
【0031】
スピナーテーブルパッド11は、ワークWを吸着保持する部材であり、ワークWと共に回転する。具体的には、スピナーテーブルパッド11の上面がワークWを保持する吸着面12となる。
【0032】
ロータリージョイント24は、スピナーテーブル10の主軸となる軸19及び軸25を回転自在に支え、ワークW側から流れる流体、即ち空気及びワークWに付着していた水分等、をスピナーテーブルパッド11からバキュームポンプ30側に流す経路を形成する継手である。
【0033】
ロータリージョイント24の流体口には、流体を流す経路となるエア配管31が接続され、エア配管31は、バキュームポンプ30に接続されている。エア配管31には、ワークWから吸引した水分を空気と分離する図示しない気液分離装置が設けられても良い。
【0034】
モータ28は、スピナーテーブル10を回転させる駆動源である。前述のとおり、モータ28の出力軸であるモータ軸29は、カップリング26、軸25及びロータリージョイント24の動作軸を介してスピナーテーブル10の回転主軸である軸19に連結されている。
【0035】
ここで、モータ28によって駆動されるスピナーテーブル10の回転数は、60~3000r.p.m.、好ましくは、1500~2500r.p.m.である。このような高速回転により短時間で効率的な乾燥工程を実行することができる。
【0036】
ロータリージョイント24及びモータ28は、支持台35に固定され支持されている。支持台35の上部であって、スピナーテーブル10の下方には、ワークWからの水分を受け流す排水ケース20が設けられている。排水ケース20は、ワークWから飛散する水分を受け取る略カップ状の部材である。
【0037】
排水ケース20の周縁部には、回転するワークWから遠心力によって飛ばされた水分を受け取る壁部22が形成されている。壁部22は略円筒状の形態をなし、その上端近傍には、回転中心方向に延在する略環状円板形の上縁部23が形成されている。排水ケース20の底部には、ワークWから飛散した水分を排出するための排水口21が形成されている。排水口21には図示しない排水管が接続され、排水ケース20に集まった水分は排水管を経由して図示しない排水容器等へ排出される。
【0038】
また、スピナー乾燥装置1は、乾燥用の空気を供給する空気供給装置32と、空気供給装置32からの空気をワークWの上面に吹き付けるエアノズル33と、を備えていても良い。これにより、乾燥工程の更なる効率化を図ることができる。
【0039】
図2は、スピナーテーブルパッド11の平面図であり、吸着面12を上方から見た図である。
図2に示すように、スピナーテーブルパッド11の吸着面12には、スピナーテーブルパッド11の径方向に延在する略直線状の吸引凹部14と、吸引凹部14に交差して水平方向に延在する吸引溝13と、吸引凹部14に形成されて真空吸引手段としてのバキュームポンプ30(図1参照)につながる吸引口15と、が形成されている。
【0040】
吸引凹部14は、吸着面12の上方、即ちワークWの方向、に向かって開口する凹部であり、スピナーテーブルパッド11の回転中心近傍から両端が回転半径方向に略直線状に延在する。吸引凹部14の凹部形状は特に限定されるものではないが、吸引凹部14は、例えば、断面略V字状の溝形状であっても良い。ワークWを吸着する際、吸引凹部14は、バキュームポンプ30によって吸引される流体、即ち空気及びワークWに付着していた水分等、が流れる流路となる。
【0041】
吸引溝13は、吸着面12の上方、即ちワークWの方向、に向かって開口する凹部である。吸引溝13は、吸引凹部14に交差する方向に略直線状に延在し、その一端はスピナーテーブルパッド11の周縁から外側に開口しており、他端は吸引凹部14に開口している。即ち、吸引溝13は、スピナーテーブルパッド11の外部から吸引凹部14の内部に流体が流通可能に形成されている。
【0042】
吸引溝13は、複数本形成されている。具体的には、スピナーテーブルパッド11の回転中心付近を通り略直線状に延在する吸引凹部14の両側に、一端がスピナーテーブルパッド11の外周に開口して他端が吸引凹部14につながる複数本の吸引溝13が略平行に形成されている。
ワークWを吸着する際、吸引溝13は、バキュームポンプ30によって吸引される流体、即ち空気及びワークWに付着していた水分等、が流れる流路となる。
【0043】
吸引口15は、吸引凹部14の底面に形成されている。詳しくは、吸引口15は、スピナーテーブルパッド11の回転中心から回転半径方向外側にずれた2か所に形成されている。
【0044】
吸引口15は、バキュームポンプ30につながり、ワークWを吸着する際、バキュームポンプ30によって吸引される流体、即ち空気及びワークWに付着していた水分等、が流れる流路となる。
【0045】
即ち、ワークWに付着している洗浄用の純水等は、吸引溝13及び吸引凹部14を流れる吸着用の空気によって飛ばされて、その吸着用の空気と共に吸引溝13から吸引凹部14及び吸引口15を経由して流されて除去される。
【0046】
図3は、スピナー乾燥装置1のスピナーテーブルパッド11付近を示す拡大正面図である。図3において、スピナーテーブル10については概略形状を断面で示している。
【0047】
図3に示すように、スピナーテーブル10の上面には、スピナーテーブルパッド11が嵌められる嵌合凹部17が形成されている。嵌合凹部17は、スピナーテーブル10本体の円形状と同心の平面視略円状の形態をなす。スピナーテーブルパッド11は、底面側がスピナーテーブル10の嵌合凹部17に嵌め込まれ、図示しないボルト等によって固定されている。
【0048】
スピナーテーブルパッド11の吸着面12には、前述のとおり、複数の吸引溝13が形成されている。吸引溝13の断面形状は、略V字状である。吸引溝13の深さは、吸引凹部14の深さよりも浅く、具体的には、0.01~1mm、好ましくは、0.05~0.5mmである。このように吸引溝13が好適な形状及び深さで形成されることにより、バキュームポンプ30による流体の吸引でワークWを吸着して回転に耐え得る強さで保持することができる。
【0049】
具体的には、吸引溝13からスピナーテーブルパッド11外部の空気が流れ込んでも、スピナーテーブルパッド11の吸着面12は十分な真空度を維持することができ、遠心力によるワークWの外れはない。
【0050】
また、吸引溝13を好適な形状にすることにより、流路断面積を好適な大きさとして、吸引溝13を流れる空気の速度を適切な状態とし、ワークWに付着していた水分を、吸引溝13を流れる空気によって押し流すことができる。
【0051】
前述のとおり、スピナーテーブルパッド11の吸着面12の回転中心付近には、略直線状に延在する凹部である吸引凹部14が形成されており、吸引凹部14には、流体の流路となる吸引口15が形成されている。詳しくは、吸引口15は、吸引凹部14からスピナーテーブルパッド11の下面に貫通するよう形成されている。
【0052】
スピナーテーブルパッド11の下面には、流体の流路となる凹部である吸引経路16が形成されている。吸引経路16は、スピナーテーブルパッド11の回転中心近傍を通る略直線状の凹部であり、両端近傍が吸引口15につながっている。そして、スピナーテーブルパッド11がスピナーテーブル10の嵌合凹部17に嵌められた状態において、吸引経路16は、スピナーテーブル10の回転中心近傍に形成された吸引経路18につながる流体の流路を形成する。
【0053】
図1から図3を参照して、上述の構成により、ワークWを吸着する際には、スピナーテーブルパッド11の外部から、吸引溝13、吸引凹部14、吸引口15、吸引経路16、吸引経路18、ロータリージョイント24及びエア配管31を経由してバキュームポンプ30につながる流体の流路が形成される。
【0054】
ワークWを回転させて遠心力で水分等を飛ばして除去する乾燥工程を行う際には、バキュームポンプ30を稼働することにより、ワークWをスピナーテーブルパッド11の吸着面12に吸着させて保持することができる。
【0055】
吸引溝13の一端はスピナーテーブルパッド11の外周に開口しているので、ワークWを吸着保持している状態においても、スピナーテーブルパッド11の外周から吸引溝13、吸引凹部14及び吸引口15を経由してバキュームポンプ30に吸引される空気の流れが継続する。
【0056】
上記の空気の流れによって、ワークWを保持している吸着面12近傍において、ワークWに付着していた水分が流されて空気と共に吸引される。即ち、ワークWを吸着面12に吸着する際、ワークWの吸着面近傍に付着していた水分を吸引溝13、吸引凹部14及び吸引口15を経由して吸引除去することができる。よって、水残りが無い乾燥工程を短時間で効率良く実行することができる。
【0057】
例えば、スピナー乾燥装置1を使用した乾燥工程の試験では、ワークWを直径300mm、厚み約800μmのシリコンウエハとし、ワークWの表裏に純水をスプレーした後、回転速度2500r.p.m.で回転させて乾燥工程を実行し、乾燥時間30~45秒で全く問題のない良好な乾燥結果が得られた。また、乾燥工程後のワークWの離反も、バキュームポンプ30を停止することにより、問題無く容易に行うことができた。
【0058】
また例えば、ワークWとしてPLP基板を想定した500mm×500mmのアクリル板を用いた試験では、純水をスプレーした後に回転速度500~2000r.p.m.で回転させる乾燥工程において、乾燥時間90~120秒で良好な乾燥結果が得られている。また、乾燥工程後にバキュームポンプ30を停止することにより、ワークWの離反工程も容易に実行することができた。
【0059】
このようにスピナー乾燥装置1によれば、短時間で効率良く乾燥工程を実行することができる。そして、ワークWをスピナーテーブルパッド11に吸着する前に、従来技術では必要であったワークWの吸着面12近傍から水分を噴き飛ばす空気噴き付け工程等を実行する必要がなく、その工程のための空気供給装置が不要になる。また、空気噴き付け工程が不要になることから、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【0060】
また、回転による乾燥工程中も吸着面12における吸引空気の流れが継続して、ワークWに残存する水分が無くなる。そのため、ワークWを回転させて乾燥し、スピナーテーブルパッド11から離反した後に、ワークWに向かって改めて乾燥用の空気噴出をする必要がない。よって、ワークWを離反した後に空気噴出乾燥を行う空気供給装置が不要になると共に、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【0061】
また、吸引溝13の一端がスピナーテーブルパッド11の周縁から外側に開口しているので、回転による乾燥工程が完了した後には、バキュームポンプ30による吸引を停止することにより、吸引溝13内及び吸引凹部14内の圧力はスピナーテーブルパッド11外部の圧力と等しくなる。
【0062】
よって、スピナーテーブルパッド11によるワークWを吸着する力が無くなり、ワークWをスピナーテーブルパッド11から容易に離反できるようになる。これにより、乾燥工程後の離反工程の時間を短縮することができる。
【0063】
また、ワークWをスピナーテーブルパッド11から離反するために空気を供給するリフト回路を設ける必要がなくなる。即ち、真空回路は、バキュームポンプ30による吸引を行う1回路のみで良いことになる。よって、本実施形態によれば、乾燥工程の効率が高く、且つ構造を簡素化した生産性に優れたスピナー乾燥装置1が得られる。
【0064】
また、スピナー乾燥装置1によれば、吸引口15は、スピナーテーブルパッド11の回転中心よりも回転半径方向外側に形成されている。これにより、回転による遠心力では除去が難しい回転中心近傍に付着している水分を、バキュームポンプ30による吸引空気によって吸引口15まで流して吸引除去することができる。よって、乾燥効率が向上し、乾燥工程の時間を短縮することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 スピナー乾燥装置
10 スピナーテーブル
11 スピナーテーブルパッド
12 吸着面
13 吸引溝
14 吸引凹部
15 吸引口
16 吸引経路
17 嵌合凹部
18 吸引経路
19 軸
20 排水ケース
21 排水口
22 壁部
23 上縁部
24 ロータリージョイント
25 軸
26 カップリング
28 モータ
29 モータ軸
30 バキュームポンプ
31 エア配管
32 空気供給装置
33 エアノズル
35 支持台
図1
図2
図3