(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B43K21/00 B
(21)【出願番号】P 2019158799
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019122270
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-088821(JP,U)
【文献】実開昭54-033737(JP,U)
【文献】実開昭59-048890(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
B43K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記芯が突出する先端開口部ならびに当該筆記芯を補充するための後端開口部を有する軸筒と、前記軸筒内に内蔵され内部に複数本の予備芯を収容可能な芯収容部を有する芯収容部材と、前記芯収容部材の前方に位置し前記筆記芯を狭持する狭持部を有するチャックと、前記チャックおよび前記芯収容部材を後方に付勢するチャック付勢部材と、前記芯収容部材の後方に位置し前記軸筒の後端開口部から後方へ突出した操作部と、を備え、前記操作部を操作することにより当該操作部と連動した前記チャックを前進させて前記芯を繰り出すシャープペンシルであって、
前記芯収容部材の後方に、前記芯収容部内の予備芯の有無を検知する予備芯検知ユニットが配設され、
前記予備芯検知ユニットは、検知ユニット本体と当該検知ユニット本体に対して前後動自在に係止された表示体とを備え、
前記表示体には前記芯収容部内の予備芯と当接する当接部が形成され、
前記表示体は、前記芯収容部に収納された最後の前記予備芯が前記芯収容部から前記チャック側へ前進したときに当該予備芯に追従して前進することで、前記軸筒の外方から認識される状態が変化するよう構成され、
前記表示体と前記検知ユニット本体との間に弾発部材が配設され、前記表示体は、前記芯収容部内に複数の前記予備芯が収納され当該予備芯の後端と前記当接部とが当接した状態の位置から当該表示体が前記検知ユニット本体に対して相対的に後方へ移動した時のみ前記弾発部材により前方へ弾発されるよう構成したことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記弾発部材は、前記表示体の後部または前記検知ユニット本体の内孔部のどちらか一方に係着されたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記弾発部材が前記表示体の後部に係着された場合、前記検知ユニット本体の内孔部に、前記表示体が後退した際に前記弾発部材の後部が当接する弾発部材当接部が形成され、前記弾発部材が前記検知ユニット本体の内孔部に係着された場合、前記表示体の後部に、前記表示体が後退した際に前記弾発部材の前部が当接する弾発部材当接部が形成され、
前記表示体が後退していない状態では、前記弾発部材と前記弾発部材当接部との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記チャックの前方に前記筆記芯を保持する芯保持部材が配設され、前記弾発部材の最大弾発力をY2、前記保持部材により前記芯を保持した際の保持力をXとしたとき、X≧Y2の関係式を満たすようにしたことを特徴とする請求項1ないし
3の何れか1項に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記チャックの最大前進長さをCLとし、前記弾発部材の最大収縮長さをDLとしたとき、CL<DLとしたことを特徴とする請求項1ないし
4の何れか1項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記検知ユニット本体に付属具が装着されると共に、前記付属具が前記弾発部材として機能するよう構成したことを特徴とする請求項1ないし
5の何れか1項に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯の摩耗に伴い一定量の芯を繰り出す構造を備えたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒内に内蔵された芯収容部内に予備芯が収納され、芯収容部の前方に配置されたチャックにより筆記芯を狭持して紙面等に筆記することができるシャープペンシルはよく知られている。
前述したシャープペンシルは、筆記により使用中の筆記芯が磨耗して短くなると、芯収容部から予備芯がチャック内に供給されるよう構成されているものが多く、予備芯があれば筆記を継続的に行えることから利便性が高く、広く使用されているものである。
【0003】
このため、シャープペンシルにおいては、芯収容部内の予備芯の有無を常に把握することが快適に使用する上で非常に重要な課題となる。
この課題を解決する手段として特許文献1には、軸筒及び芯が収容されている芯タンクを透明な素材で形成することで、外部より内部の芯の状態を視認可能に構成されたシャープペンシルが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、シャープペンシルの芯が非常に細いこと、芯の色が黒色であることから薄暗い場所では見え難いこと、また、複数の部品を介して内部の芯を視認する必要があること等により、時間帯や場所によっては容易に視認することが困難になる虞があった。加えて、内部の芯を透視するには軸筒や芯を収容している芯収容部を透明で形成する必要があり、軸筒に施すことができる加飾に制限が付くという課題があった。
【0005】
これらの課題を解決する手段として、特許文献2には、芯ケース内の芯を外部から覗くことができる覗き窓と、芯の後部に当接する表示筒とを備え、芯ケース内の芯が無くなった際に覗き窓から表示筒が見えるようになる構造にすることで、軸筒の外部から芯の有無を容易に確認することが可能な芯収納表示装置を備えたシャープペンシルが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2のシャープペンシルにおける芯収納表示装置は、構造としては芯ケース内の芯がなくなることで表示筒が前進するため、覗き窓から表示筒の状態を見ることで芯ケース内の芯の有無を確認することができるものであるが、特許文献2では、シャープペンシルに必要不可欠な芯を繰出す機構等とを組み合わせることに関しては開示されておらず、それにより発生する課題に関しては一切記載していないことからシャープペンシルとして使用するには難しいものであった。
【0007】
一方、一般的なシャープペンシルの1回のノック動作による芯の繰り出し量は、チャックを前進させた長さ(ノックストローク)によって決まるのではなく、チャックを締め付けている状態の締具の移動量に依存し、チャックの前進途中で締め具がチャックから外れると芯の前進が止まり、更に、ノック動作を終了してチャックが後方へ戻る際にも芯をチャックで狭持しつつ戻るため、一旦前進した芯がチャックにより引き戻されることから、ノックストロークに対して実際の芯の繰り出し量はかなり小さくなるよう構成されている。(例:ノックストローク4mm、実際の芯繰り出し量0.5mm)このため、ノック途中にチャックを前方へ押すためのノック部材が芯の後端に当接してしまうと、締め具がチャックから外れて芯の前進がとまった後もノック部材で芯を直接押圧してしまい、想定より大きく芯出してしまうこととなる。つまり、チャックで狭持している芯や、その芯の後に縦列で並んでいる補充芯の後方に芯と当接しうるノック部材がある場合はノック部との間に少なくともノックストローク分の隙間が必要となる。また、特許文献2のように補充芯の後端に当接する表示体がある場合は、表示体の後端とノック部材との間にノックストローク分の隙間がないと芯がノック動作時に後ろから押圧されて大きく芯出しされる虞があることから、この場合においてもノックストローク分の隙間は必要となる。
更に、この際、特許文献2のように表示体を芯の後方側に自重により前後動自在に形成してしまうと、ペンシルを傾けることや横置きした時に表示体が後方へ移動してしまい、その状態で筆記芯と補充芯が縦列状態で並んだものが表示体とチャックとの間で挟まる可能性がある。そして、ノックストローク分の隙間がない状態でノック動作をしてしまうことで、表示体が予備芯を介して筆記芯を押してしまい、通常の設定よりも大きく芯出してしまう虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭61-78685号公報
【文献】実開昭54-33737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題を鑑みて発明されたものであって、芯の繰り出し構造と、筆記により筆記芯が消耗し、芯収容部内の予備芯が消費されて最後の芯になったことを検知する予備芯検知機能を備えると共に、芯繰り出し時における芯出量が安定するシャープペンシルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
「1.筆記芯が突出する先端開口部ならびに当該筆記芯を補充するための後端開口部を有する軸筒と、前記軸筒内に内蔵され内部に複数本の予備芯を収容可能な芯収容部を有する芯収容部材と、前記芯収容部材の前方に位置し前記筆記芯を狭持する狭持部を有するチャックと、前記チャックおよび前記芯収容部材を後方に付勢するチャック付勢部材と、前記芯収容部材の後方に位置し前記軸筒の後端開口部から後方へ突出した操作部と、を備え、前記操作部を操作することにより当該操作部と連動した前記チャックを前進させて前記芯を繰り出すシャープペンシルであって、
前記芯収容部材の後方に、前記芯収容部内の予備芯の有無を検知する予備芯検知ユニットが配設され、
前記予備芯検知ユニットは、検知ユニット本体と当該検知ユニット本体に対して前後動自在に係止された表示体とを備え、
前記表示体には前記芯収容部内の予備芯と当接する当接部が形成され、
前記表示体は、前記芯収容部に収納された最後の前記予備芯が前記芯収容部から前記チャック側へ前進したときに当該予備芯に追従して前進することで、前記軸筒の外方から認識される状態が変化するよう構成され、
前記表示体と前記検知ユニット本体との間に弾発部材が配設され、前記表示体は、前記芯収容部内に複数の前記予備芯が収納され当該予備芯の後端と前記当接部とが当接した状態の位置から当該表示体が前記検知ユニット本体に対して相対的に後方へ移動した時のみ前記弾発部材により前方へ弾発されるよう構成したことを特徴とするシャープペンシル。
2.前記弾発部材は、前記表示体の後部または前記検知ユニット本体の内孔部のどちらか一方に係着されたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
3.前記弾発部材が前記表示体の後部に係着された場合、前記検知ユニット本体の内孔部に、前記表示体が後退した際に前記弾発部材の後部が当接する弾発部材当接部が形成され、前記弾発部材が前記検知ユニット本体の内孔部に係着された場合、前記表示体の後部に、前記表示体が後退した際に前記弾発部材の前部が当接する弾発部材当接部が形成され、
前記表示体が後退していない状態では、前記弾発部材と前記弾発部材当接部との間に隙間が形成されていることを特徴とする前記2項に記載のシャープペンシル。
4.前記チャックの前方に前記芯を保持する芯保持部材が配設され、前記弾発部材の最大弾発力をY2、前記保持部材により前記筆記芯を保持した際の保持力をXとしたとき、X≧Y2の関係式を満たすようにしたことを特徴とする前記1項ないし3項の何れか1項に記載のシャープペンシル。
5.前記チャックの最大前進長さをCLとし、前記弾発部材の最大収縮長さをDLとしたとき、CL<DLとしたことを特徴とする前記1項ないし4項の何れか1項に記載のシャープペンシル。
6.前記検知ユニット本体に付属具が装着されると共に、前記付属具が前記弾発部材として機能するよう構成したことを特徴とする前記1項ないし5項の何れか1項に記載のシャープペンシル。」である。
【0011】
本発明のシャープペンシルによれば、芯収容部内に複数の予備芯がある場合には、予備芯の後端に表示体の当接部が当接することで前記表示体の前進が阻まれるため軸筒の外方から認識される当該表示体の表示部の状態が変化することがない。このため、使用者は予備芯が芯収容部内にあることを認識できる。また、芯収容部内の複数の予備芯が最後の芯となった状態では、予備芯検知ユニットが作動し、最後の芯が前方に移動することに伴い当該最後の芯を追従して表示体が前方に移動すると共に軸筒の外部から認識される表示部の状態が変化するため、使用者は芯収容部内の芯が最後の1本になったことを認識できる。
更に、表示体と検知ユニット本体との間に配設された弾発部材を表示体が芯収容部内に複数の予備芯がある状態の位置から後方へ移動したときのみ前方へ弾発されるよう構成することで、弾発部材により検知ユニットに対して表示体が後方へ相対移動する長さを制限しつつ、弾発部材の弾発力以上の力で表示体が後方へ押圧、または、検知ユニット本体が前方へ押圧された場合は弾発部材が変形することで表示体の後部と検知ユニット本体とを近づけることが可能となる。これにより、シャープペンシルを傾けることや、横向きに置いた場合でも表示体が後退する長さを制限することができるため、表示体が後退しノックストロークがなくなった状態で筆記芯と予備芯とが芯収容部内で縦列に並ぶことを防止でき、これにより、芯繰り出し時の芯出量が安定する効果を奏する。
尚、本発明における弾発部材としては、コイルスプリング、合成ゴム、エラストマー、板バネまたはスポンジ等を採用することができるが、コンパクトに形成できると共に収縮時の弾発力を安定して形成することができるコイルスプリングを使用することが好ましい。
【0012】
また、表示体と検知ユニット本体との間に配設される弾発部材は、表示体の後部または検知ユニット本体のどちらか一方に固定してもよく、この場合、弾発部材の一方が固定されるため、使用時や携帯時に弾発部材が軸筒内を移動することで発生する不要な摺動音を防止することができるため好適である。
更に、表示体の後部に弾発部材の前部を固定する場合は、検知ユニット本体の内孔部に、弾発部材の後部が当接する弾発部材当接部を形成してもよく、この場合、筆記具を傾けることで重力により表示体に後方への力が掛かっても表示体が後退する長さを制限することができることから、芯収容部が軸方向に広がることを防止できる。
更にまた、検知ユニット本体の内孔部に弾発部材の後部を固定する場合は、表示体の後部に弾発部材の前部が当接する弾発部材当接部を形成してもよく、この場合においても、筆記具を傾けることで重力により表示体に後方への力が掛かっても表示体が後退する長さを制限することができることから、芯収容部が軸方向に広がることを防止できる。
このため、弾発部材を固定する位置は、表示体の後部または検知ユニット本体の内孔部のどちらかに使用者が任意に選んで固定してよい。
【0013】
また、弾発部材を少なくとも一部をコイルスプリングで形成してもよく、この場合、コイルスプリングの弾発力は負荷の掛かっていない自由長の状態の最小弾発力をY1、表示体の自重をZとしたとき、Y1≧Zとなるよう構成してもよく、この場合、シャープペンシルを傾ける等により表示体が後退して、当該表示体が弾発部材により検知ユニット本体に対して支えられる状態となった際に、コイルスプリングがその自重で収縮することがない為、表示体の前方に形成される芯収容部の軸方向に沿った長さが不必要に長くなることを防止できる。
【0014】
また、弾発部材の最大弾発力をY2、芯保持部材により芯を保持した際の保持力をXとしたとき、X≧Y2の関係を満たすように構成してもよく、この場合、ノック動作時において、筆記芯と予備芯とが縦列に並び、且つ、表示体が予備芯に押されて後方へ移動することで弾発部材が収縮して表示体を弾発部材で前方へ押圧している状態が発生しても、弾発部材の弾発力より芯保持部材の芯の保持力のほうが高いため、チャックがノック動作時に開いて筆記芯の狭持状態を解除しても芯保持部材で筆記芯が保持されることで、弾発部材の弾発力で筆記芯が前進してしまうことがないことから、ノック動作時の筆記芯の繰り出し量が安定する効果を奏する。
【0015】
前記チャックの最大前進長さ(所謂ノックストローク)をCLとし、前記弾発部材の最大収縮長さをDLとしたとき、CL<DLとしてもよく、この場合、芯収容部内でチャックに狭持された筆記芯と、予備芯が縦列に並んだ状態で、筆記芯を前進させるノック動作が行われた場合に、チャックに狭持された筆記芯と予備芯の移動量に差が生じても、チャックが前進した分、弾発部材が収縮することで、筆記芯や予備芯へかかる負荷を低減することができ、これにより芯折れの発生や、予備芯がチャックに狭持されている筆記芯を押すことで大きく筆記芯が前方へ繰り出されることを防止することができる。
【0016】
また、本発明における表示体の材質は、特に限定されず樹脂や金属など様々な材質を選択することができ、また表示体の形状も、特に限定されず円柱形状や角柱形状など様々な形状を選択することができる。
そして、表示体の状態を軸筒の外部から認識することで芯収容部材内の予備芯の有無を確認する手段としては、特に限定されることはないが、例えば、芯収容部材内の芯収容部に最後の芯を含む複数の予備芯が収容され、予備芯の後端に表示体が当接している状態においては外部から見える表示部を白色とし、芯収容部材内の予備芯が最後の芯となり、最後の芯が前方に移動することにより、最後の芯の後端に当接した表示体が芯に追従して前方に移動した状態においては、外部から見える表示部を赤色になるよう構成してもよく、この場合、軸筒の外部から視認される表示部の色が白色から赤色へ変化することで、芯収容部材内の予備芯の有無を外部から容易に認識することができるため好適である。尚、表示部の色の構成は状態が変化したことを認識できればどのような組み合わせでもよい。また、表示体の表示部に文字を印刷したり、記号を刻印したりすることにより、外部から認識できる表示部の文字が表す意味が変化したり、記号の変化により芯収容部材内の予備芯の有無を外部から容易に認識できるよう構成してもよい。更に、表示部が外部から視認できるか否かの変化や外部から視認される表示体の幅の変化で状態が変化したことを認識するよう構成してもよい。
【0017】
また、本発明における予備芯検知ユニットは前記軸筒または前記芯収容部材に対して着脱自在に構成してもよく、この場合、予備芯検知ユニットを取り外すことで芯収容部材の後部および軸筒の後端開口部が解放され、芯を芯収容部材内に補充することができる。また、予備芯検知ユニットを前記軸筒または前記芯収容部材に対して着脱自在に装着する手段は特に限定されることはなく、軽い圧入、乗り越え嵌合、螺着等、適宜選択した係止手段により着脱自在に構成すればよい。
【0018】
更に、予備芯検知ユニットの検知ユニット本体には表示体以外の付属具が装着可能に構成してもよく、例えば、予備芯検知ユニットの後部に係止孔部を設け、当該係止孔部に付属具として消しゴムを着脱自在に挿嵌し、更に、消しゴムを覆うようにキャップ体を後方から着脱自在に構成することで、一般的なシャープペンシル同様に筆跡を消しゴムで消去することができるようにしてもよい。
また、前記付属具を前記弾発部材として機能するよう構成してもよく、この場合、例えば検知ユニット本体の後部に係止孔部を設け、係止孔部に付属具を装着可能に構成することで弾発部材となる当該付属具が検知ユニット本体に容易に装着できると共に付属具を別のものに交換することで弾発力を調整可能となることから好適な形態である。尚、付属具を弾発部材とする場合、当該付属具を合成ゴムやエラストマー等で一体的に形成してもよく、付属具の一部が弾性部となるよう別体で形成した合成ゴム、エラストマー、コイルスプリングなどを接着、嵌合、螺着、圧入等により固着してもよい。
【0019】
尚、予備芯検知ユニットは、構成する部品が紛失しないよう軸筒または芯収容部材に対して一体的に着脱可能となるよう構成することが好ましく、例えば、前述した予備芯検知ユニットに消しゴムやキャップ体を取り付ける場合は、軸筒に対して予備芯検知ユニット全体を取り外す場合とキャップ体のみ予備芯検知ユニットから取り外す場合が発生するため、一方の係止手段に螺子嵌合などの螺着を用いるときは、他方の係止手段は前後への押し引きによる乗り越え嵌合等を用いるなど、着脱の際に掛ける力の方向を変えることで、予備芯検知ユニット全体を着脱する場合と一部の部品のみを着脱する場合とを任意に選択して実行することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、芯の繰り出し構造と、筆記により筆記芯が消耗し、芯収容部内の予備芯が消費されて最後の予備芯になったことを検知する予備芯検知機能を備えると共に、芯繰り出し時における芯出量が安定するシャープペンシルを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1のシャープペンシルの側面図であり、芯収容部内に複数の芯(筆記芯と予備芯を含む)がある状態を示す図である。
【
図2】
図1のシャープペンシルの拡大縦断面図である。
【
図5】実施例1の予備芯検知ユニットの分解図である。
【
図6】
図2において、芯収納部内に存在する芯が最後の予備芯のみの状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図6の状態におけるシャープペンシルの側面図である。
【
図8】
図2において、筆記している芯を消耗した際に、芯と予備芯SLEとが縦列に並んだ状態を示す縦断面図である。
【
図9】
図8の状態からチャックを前進させた状態を示す縦断面図である。
【
図10】
図2において、予備芯検知ユニットを取り外した状態を示す縦断面図である。
【
図11】
図2において、キャップを取り外し、消しゴムを使用する状態を示す縦断面図である。
【
図12】実施例2のシャープペンシルの縦断面図であり、芯収容部内に複数の芯(筆記芯と予備芯を含む)がある状態を示す図である。
【
図13】実施例2の予備芯検知ユニットの分解図である。
【
図14】
図12において、筆記している芯を消耗した際に、芯と予備芯SLEとが縦列に並んだ状態を示す縦断面図である。
【
図15】
図14の状態からチャックを前進させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本実施の形態のシャープペンシルを詳細に説明するが、本発明は以下のシャープペンシルに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
図1は、本発明における第一の実施形態(実施例1)のシャープペンシルの外観図であり、芯収容部材内に複数の芯(予備芯と筆記芯とを含む)がある状態を示している。
図2は、
図1の縦断面図であり、
図3は
図2のA-A線断面図であり、
図4は
図2のB-B線断面図であり、
図5は予備芯検知ユニットの分解図である。
尚、図面の説明において、軸筒の軸方向(長手方向)において先口の前端開口部がある側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。また、軸筒の軸心に近い側を内方と表現し、その反対側を外方と表現する。
【0024】
第一の実施形態(実施例1)のシャープペンシル10は、
図1及び
図2に示すように、筒状に形成された前軸22と、前軸22の内周部に装着された連結体24と、前軸22の前部に連結体24を介して螺着された先口21と、前軸22の後部に係着され外側部にクリップ部23aが形成された後部筒状体23と、で軸筒20が形成され、軸筒20の後部には、ノック用の操作部となる予備芯検知ユニット40が着脱自在に装着され、軸筒20の内方に芯狭持ユニット30を配置して構成している。
【0025】
前軸22について詳述すると、
図2から
図4に示すように、前軸22は透明なポリカーボネート樹脂を用いて射出成形により形成してあり、内孔の前部には内方へ向かって突出する前部内孔部22aを形成すると共に前部内孔部22aには連結体24を装着している。また、後部外周部には、外方へ向って突出する係止突起22bを形成している。
そして、
図1に示すように、前軸22の外周面には転写シートを転写した転写部25を形成してあり、転写部25の一部に長方形の透明な透明部25aを形成する事で、透明部25aを通して前軸22の内部が透視可能な窓部20aを形成している。
【0026】
連結体24について詳述すると、連結体24は筒状に形成してあり、
図2に示すように、連結体24の外周部24aを前軸22の前部内周部22aに圧入装着することで当該連結体を前軸22に対して着脱不能に固定している。また、連結体24の前部外側面には雄螺子部24bを形成している。
【0027】
先口21について詳述すると、先口21は筒状に形成してあり、その先端部は筆記芯LEが出没可能、且つ、当該筆記芯LEを支持する前端開口部21aを有している。また、内孔部21bの後部には雌螺子部21cが形成してあり、雌螺子部21cを連結体25の雄螺子部25cに螺合することで、先口21は連結体24を介して前軸22に着脱自在に装着している。
また、先口21の内孔部21bの前部には、筆記芯LEを軽い力で保持する芯保持部材26を固定している。
【0028】
後部筒状体23について詳述すると、
図2から
図4に示すように、後部筒状体23は筒状の筒状本体23bを有しており、筒状本体23bは外周部に内孔まで貫通した係止孔部23cを有している。そして、係止孔部23cを係止突起22bに係止することで、後部筒状体23を前軸22に着脱不能に係着している。
また、筒状本体23bの外側部には前述したクリップ部23aが前方へ向って延びるように形成してあり、内周部には後端開口部23dから軸方向に沿って前方へ延びるように溝部23eを形成している。尚、溝部23eは軸心を挟んで対向した位置に2箇所形成している。
【0029】
次に、芯狭持ユニット30について詳述する。
図2に示すように、芯狭持ユニット30は、チャック31、締具32、チャック付勢部材33、芯収容部材34、を有している。チャック31はシャープペンシル用の筆記芯LEを解放可能に狭持すると共に、例えば2つに分かたれた頭部31aを有している。チャック31は、後端部分において芯収容部の前端部分に固定されている。そして、複数の頭部31aは環状に形成された締具32を通過しており、その前端部分は互いから離間するように形成されている。また、締具32は前方へ移動することで複数の頭部31aが隣接して筆記芯LEを狭持することができ、締具32が後方へ移動すると、複数の頭部31aが互いから離間して筆記芯LEを解放するよう構成している。また、芯狭持ユニット30は、連結体24の内方に挿入されており、締具32の後端が連結体24の前端に当接可能に配置している。
【0030】
チャック31の複数の頭部31a及び締具32は、先口21の内孔部21b内に位置しており、内孔部21bには締具32の前進を規制する内段21dを備えている。芯狭持ユニット30が先口21に対して相対的に前進するとき、内段21dによって締具32の前進が規制されるまで、チャック31に保持された筆記芯LEが前進する。そして、内段21dによって締具32の前進が規制された状態で更にチャック31が前進を継続することで、頭部31aが互いから離間して筆記芯LEを解放する。このように、本実施例では先口21に対してチャック31と共に筆記芯LEが前進することで当該筆記芯LEを繰出すことができる。
【0031】
芯収容部材34は筒状に形成してあり、後部に拡径した拡径部34aを形成し、拡径部34aの内周部には内方へ向って突出し軸周方に延びるように形成した内方突起34bを形成している。また、芯収納部材34の内部には予備芯SLEが収納される芯収容部34cを有している。
【0032】
次に、予備芯検知ユニット40について詳述する。
図2から
図5に示すように、予備芯検知ユニット40は、検知ユニット本体41と、検知ユニット本体41の内部に前後動可能に挿入された表示体42と、表示体42の後部に装着された弾発部材43と、検知ユニット本体41の後部に挿着された付属具44と、検知ユニット本体41の後部に付属具44を覆うように螺合されたキャップ部材45と、を有している。
【0033】
検知ユニット本体41について詳述すると、
図2から
図5に示すように、検知ユニット本体41は、前端から後方へ向って延び有底部を備えた前孔41aと、後端から前方へ向って延び前孔41aと同様に有底部を備えた後孔41bを形成している。そして、前孔41aの側部には外周部まで貫通し前後に延びるスリット部41cを形成している。また、前部外周部は中央外周部に比べて径小に形成するとともに外方へ向って突出し軸周方向に延びる係止部41dを形成している。更に、後部外周部には外方へ向って突出する突起部41eが軸心を挟んで対称に2か所形成しており、突起部41eの後方には後部雄螺子部41fを形成している。
尚、検知ユニット本体41は、透明なABS樹脂を用いて射出成形で形成してあり、成形後に内部が透視可能に構成している。
【0034】
また、検知ユニット本体41の内部には、前後動自在に表示体42が挿入してあり、表示体42は前棒部材421と後板部材422とを有している。
【0035】
前棒部材421は複数の段部を有する棒状に形成してあり、前部は芯収容部材34の内周部に前後動自在に挿入され、前棒部材421の前部外形は芯収納部材34芯の芯収容部34cの内形に相似させると共に若干小径に形成することで、芯収納部34cに規定長さ(本実施例の場合はJIS S 6005(2019)に基づき、芯の呼び径0.5、長さ60±1mmに設定)の予備芯SLEが存在する場合は、予備芯SLEの後端に前棒部材421の前端421aが当接部として当接するよう構成している。そして、前棒部材421の後部には後部係着部421bを形成している。例えば、前棒部材421は白色のPOM樹脂を用いて形成している。
【0036】
また、後板部材422は板状に形成してあり、前後に貫通する内孔部422aを形成している。また、内孔部422aの後部は拡径しており、弾発部材43の前部が係止される係止段部422bを形成している。そして、内孔部422aの前部には前棒部材421の後部係着部421bが圧入により係着してある。例として、後板部材422は赤色のPOM樹脂を用いて形成している。
尚、弾発部材43の後端43aは固定されておらず、表示体42が検知ユニット本体41の内孔41aに沿って後方へ移動した際に、内孔41aの有底部が弾発部材43の後端43aと当接する弾発部材当接部41gとなるよう構成している。
【0037】
これにより表示体42の外周部には、前棒部材421で構成され白色の前部表示部42aと、後板部材422で構成され赤色の後部表示部42bと、が形成される。
【0038】
また、予備芯検知ユニット40は、
図2に示すように、前部が芯収容部材34の後部に係止され、且つ、後部が軸筒20の後端から後方へ突出しており、予備芯検知ユニット40の後端を前方へ押圧することで芯狭持ユニット30を前進させることができることから、筆記芯LEを前方へ繰り出すノック操作のための操作部としても機能する。
【0039】
ここで、
図5を参照して検知ユニット本体41へ表示体42を装着する方法を説明すると、始めに検知ユニット本体41の前孔41aから弾発部材となる弾発部材43を挿入し、その状態で後板部材422を検知ユニット本体41のスリット部41cから挿入して内段部422bに弾発部材43の前部を装着し、その後に前棒部材421を前孔41aから挿入して後板部材422の内孔部422aに前棒421の後部係着部421bを圧入して係着させることで、表示体42を検知ユニット本体41に対して着脱不能且つ前後動可能に装着している。そして、コイルスプリングで形成された弾発部材43は、表示体42の後板部材422に係止させた状態において、弾発部材43が全く撓んでいない自由長における弾発力が表示体42の重量より強くなるよう構成している。
【0040】
また、
図2に示すように、検知ユニット本体41の後孔41bには付属具44を挿入してあり、後部雄螺子部41fにはキャップ部材45の雌螺子部45aを螺着させることで、キャップ部材45を着脱自在に取り付けてある。尚、例として、付属具44は誤字を修正するための消しゴムとしてもよく、その他の例としては、ボールペンやマーキングペン、修正テープ、スマートフォンやタブレット端末用のタッチペン等を例示することができる。さらに、シャープペンシル10じ使用される筆記芯LEや予備芯SLEが、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含むと共に筆記により可逆熱変色性を有する筆跡を形成可能な固形芯である場合には、紙面との摩擦熱により前記固形芯による筆跡の色を変色もしくは消色可能な摩擦部材を付属具44とすることもできる。
【0041】
上記した構成により、予備芯検知ユニット40は検知ユニット本体41と表示体42と弾発部材43と付属具44とキャップ部材45により構成されて一体的な取り扱いが可能となり、予備芯検知ユニット40は軸筒20の後部及び芯収容部材34の拡径部34aに対して着脱自在に装着される。そして、その装着時に、拡径部34aの内方突起34bと検知ユニット本体41の係止部41dとを乗り越え嵌合させると共に、検知ユニット本体41の突起部41eを後部筒状体の溝部23eに挿入することで、予備芯検知ユニット40は軸筒20及び芯収容部材34に対して着脱自在且つ回転不能に装着される。
尚、予備芯検知ユニット40において、表示体42は検知ユニット本体41が前述したように透明材料で形成されていることから予備芯検知ユニット40の外部から視認可能に構成され、更に、軸筒20の外方から窓部20aを通して表示体42を視認可能に構成している。
【0042】
本実施形態において、芯保持部材26、弾発部材43、表示体42は下記の条件を満たすよう構成している。
芯保持部材26が筆記芯LEを保持した際の芯保持力をX、コイルスプリングとして形成されている弾発部材43の最大弾発力をY2としたとき、X≧Y2を満たし、さらに、コイルスプリングとして形成されている弾発部材43が収縮し始める最小弾発力をY1とし、表示体42の自重により重力方向に掛かる荷重をZとしたとき、Y1≧Zを満たすように各々の部品を形成している。
尚、本実施の形態においては、芯保持部材26の芯保持力Xは0.1N、弾発部材43の最大弾発力Y1は0.08N、弾発部材Y1の最小弾発力Y2は0.01N、表示体42の自重Zは、0.004Nとしているため、上記計算式を満たしている。
【0043】
また、本実施例においては、
図2に示すように、チャック31の最大前進長さをCLとし、弾発部材43の最大収縮長さをDLとしたとき、CL<DLの関係を満たすよう構成している。
【0044】
更に、本発明のシャープペンシル10は先口21の先端開口部21a側が重力方向下方側に位置するように把持した場合、
図2に示すように、予備芯SLEの後端には表示体42の重量が掛かっている。これにより、筆記芯LEが筆記等で消耗して短くなった際、芯収容部43c内の予備芯SLEの内の1本が、筆記芯LEに追従してチャック31内に入り易くなる効果を奏する。その反面、まだ筆記芯LEの後端がチャック31の後端から後方へ突出している状態では、表示体42がその重量で予備芯SLEを前方へ押すことで、予備芯SLEがまだ筆記芯LEが残っているチャック31の後部孔に入ろうとすることで、そこにくさび作用が働き、筆記芯LEの前進を阻害する場合や、互いの芯を傷つけることが考えられる。このため、表示体42の重量はなるべく軽くなるよう樹脂や木材などで形成することが好ましい。また、
図2に示すように、芯収容部34cに予備芯SLEが存在している場合、弾発部材43の後端が検知ユニット本体41の弾発部材当接部41gに当接した状態では、弾発部材43の弾発力により表示体42を予備芯SLEがある前方側へ押圧してしまうため、弾発部材43の後端と検知ユニット本体41の弾発部材当接部41gとの間には隙間を設けることが好ましい。但し、前記隙間は、広げるとその分シャープペンシル10の全長が伸びてしまうことから最小限とすることが望まれるため、予備芯SLEの寸法公差より若干大きく形成することがより好ましい。
【0045】
次に、
図1、
図2、
図6及び
図7を用いて、筆記等により筆記芯LEが消耗した際、予備芯検知ユニット40が作動して芯収容部34c内の芯が予備芯SLEを含めて最後の1本になったことを使用者が認識する状況を説明する。
図2の状態では、筆記芯とLEと予備芯SLEを含め複数の芯が、芯収容部34cに収納されている。このとき、予備芯SLEの前端はチャック31の後端に当接しており、予備芯SLEの後端は表示体42(前棒部材421)の前端421aに当接している。この状態で、シャープペンシル10を外方から見ると、
図1に示すように、前軸20の窓部20aからは、表示体42の前棒部材421が見えると共に後板部材422は見えないよう窓部20aの位置と枠の大きさを調整してある。換言すると、このとき使用者は透明な前軸20の外側面と同じく透明な検知ユニット本体41とを通して表示体42の前部表示部42a(前棒部材421)が見えており、前棒部材421は白色のPOM樹脂で形成してあるため、使用者には 窓部20a(透明部25a)から白色の前部表示部42aのみが見えている状態になっている。このため、使用者は後部表示部42b(後板部材422)が見えないことで芯収容部34cにはまだ予備芯SLEを含めて複数の芯があることを認識することができる。
そして、
図2の状態から、筆記等により筆記芯LE及び予備芯SLEが磨耗して減り、芯収容部34c内に存在する芯が予備芯SLEの1本になり、その予備芯SLEが消耗した筆記芯LEに追従してチャック31内に入ると、最後の予備芯SLEが前進するのに合わせて、表示体42も自重により予備芯SLEに追従して前進し、
図6の状態となる。この際、窓部20aからは
図7に示すように、赤色のPOMで形成した表示体42の後部表示部42b(後板部材422)が見えるよう構成してあるため、使用者の認識は窓部20a(透明部25a)から見える色が白色から赤色に変化する。このため、使用者は色の変化により芯収容部34c内の芯が予備芯SLEを含めて最後の1本になったことを認識することができると共に、芯収容部34cへ予備芯を補充するタイミングを知ることができる。
尚、芯収容部34c内の予備芯SLEの有無を認識する手段として、本実施例では芯窓部20aから視認される表示体42の表示部の色が赤から白に変化することにより認識できるようにしているが、前述したように、色の組み合わせは特に限定されるものではなく、任意に設定してもよい。また、文字や記号、絵柄などが変化することにより認識できるようにしてもよい。
【0046】
次に、シャープペンシル10内においてチャック31で保持している筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んだ状態で芯繰り出し動作を行った場合について説明する。
図8は、
図2の状態から筆記等で筆記芯LEが短くなった際、筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んだ状態を示している。この状態で、
図9の位置まで筆記芯LEを前方へ繰り出すノック動作を行った場合、操作部となる予備芯検知ユニット40が前進し、予備芯検知ユニット40に押されて芯収容部材34とチャック31と締具32が筆記芯LEを保持したまま前進する。この際、筆記芯LEの後端に当接している予備芯SLEと、予備芯SLEの後端に当接している表示体42は、その自重により筆記芯LEに追従して前進する。そして、締具32の前端が先口21の内段21dに当接すると、締具32がチャック31の頭部31aから外れ、チャック31の頭部31aが締具32から解放されることで頭部31aは互いから離間して筆記芯LEの狭持状態が解除される。これにより、筆記芯LEの前進が止まる。この状態から更にチャック31は前進するが、筆記芯LEは芯保持部材26にはまだ保持されていることから、筆記芯LEの前進は停止する。すると、予備芯SLEと表示体42の前進も止まるが、予備芯検知ユニット40の検知ユニット本体41は前進を続けているため、検知ユニット本体41の前孔41aの弾発部材当接部41gが表示体42に固定されたコイルスプリングである弾発部材43の後端に接近する。そして弾発部材43の後端と弾発部材当接部41gとが当接すると、弾発部材43が圧縮されて表示体42と予備芯SLEと筆記芯LEとを前方へ弾発するが、前述したように弾発部材43の最大弾発力Y2と芯保持部材26が筆記芯LEを保持する力Xの関係は、X≧Y2であるため、チャック31が筆記芯LEを離した後も筆記芯LEは前進することなく、弾発部材43が収縮を続ける。この際、前述したように、チャック31の最大前進長さCLと、弾発部材43の最大収縮長さDLとの関係は、CL<DLを満たすことから、チャック31がノック操作によりノックストローク分最前進しても、弾発部材43はまだ収縮が可能であるため、筆記芯LEは締具32がチャック31から離れた後に前進することはないよう構成される。そして、操作部である予備芯検知ユニット40の押圧を解除するとチャック31がチャック付勢部材33の弾発力で後方へ戻り、筆記芯LEの繰り出し操作が終了するため、筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んでも、互いの芯に負荷が掛かり芯の破損が発生することや、予備芯SLEに筆記芯LEが押されることで当該筆記芯LEが大きく前方へ繰り出されることを防止することができるものとなった。
【0047】
また、上述したように、弾発部材43が収縮し始める最小弾発力Y1と、表示体42の自重により重力方向に掛かる荷重Zとの関係は、Y1≧Zを満たすように構成しているため、シャープペンシル10を傾け、重力方向下方側に予備芯検知ユニット40のキャップ部材45が位置する状態になり、表示体42弾発部材43と共に後退して当該弾発部材43の後端が検知ユニット本体41の弾発部材当接部41gに当接した際に、表示部42の自重で弾発部材43が収縮することはない、このため、表示体42は予備芯検知ユニット40の検知ユニット本体41に対して相対的に後方へ移動する長さが制限され、芯収容部34cが後方側に不必要に延びることがない。このため、弾発部材43が収縮した状態で筆記芯LEと予備芯SLEが縦列に並ぶことで、ノック動作時に筆記芯LEが大きく芯出することを防止できる。
【0048】
次に、
図10を用いて、本実施例のシャープペンシル10に予備芯を補充する状態について説明する。
軸筒20に対して、予備芯検知ユニット40のキャップ部材45を把持して後方に引っ張ると、キャップ部材45は雌螺子部45aにより検知ユニット本体41の後部雄螺子部41fに螺合されているために軸心方向への力が加わっても螺合状態が解除されることはなく、キャップ部材45と共に予備芯検知ユニット40が一体的に後方に引っ張られる。この時、芯収容部材34はチャック31に固着されて後方への移動を制限されているため、検知ユニット本体41の係止部41dと芯収容部材34の拡径部34aの内方突起34bとの嵌合状態が外れて、予備芯検知ユニット40が軸筒20から抜き取られる。そして、
図10のように、芯収容部材34の後端と軸筒20(後部筒状体23)の後端開口部が開口状態となる
尚、
図10の状態で補充する芯を軸筒20の後端開口部から軸筒20内に挿入する際、芯収容部材34の後部には拡径部34aが形成されているため、補充する予備芯を軸筒20の後端開口部から芯収容部材34の芯収容部34c内にスムーズに収容させることができる。
【0049】
次に、
図11を用いて、本実施の形態のシャープペンシル10の付属具44を使用する状態について詳細に説明する。
軸筒20を把持し、キャップ部材45を後方からみて反時計回りに回転させると、キャップ部材45が螺合した検知ユニット本体41にも同方向の力が加わるが、検知ユニット本体41の突起部41eは後部筒状体23の溝部23eに挿入してあるため、軸周方向への力が掛かっても軸筒20に対して検知ユニット本体41は回転することがない。このため、キャップ部材45のみが検知ユニット本体41に対して回転し、検知ユニット本体41との螺合が解けてキャップ部材45が外され、検知ユニット本体41に挿嵌された付属具44が露出して使用可能な状態となる。
【0050】
実施例2
図12から
図15を用いて、本発明における第二の実施形態のシャープペンシル110についての説明を行う。尚、本発明の第一の実施形態(実施例1)と同様の部分に関しては説明を省略するものとする。
図12はシャープペンシル110の縦断面図であり、芯収容部内に複数の芯(筆記芯LEと予備芯SLEを含む)がある状態を示しており、
図13は第二の実施形態における予備芯検知ユニット140の分解図であり、
図14は
図12において、筆記芯LEが筆記等により消耗して短くなった際に、筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んだ状態を示す縦断面図であり、
図14は
図13の状態からチャック31を前進させた状態を示す縦断面図である。
【0051】
本実施形態における予備芯検知ユニット140は、
図2から
図5に示すように、検知ユニット本体141と、検知ユニット本体141の内部に前後動可能に挿入された表示体142と、検知ユニット本体141の後部に挿着され弾性部144aを備えた付属具144(弾発部材)と、検知ユニット本体141の後部に付属具144を覆うように螺合されたキャップ部材45と、を有している。
【0052】
検知ユニット本体141について詳述すると、
図12及び
図13に示すように、検知ユニット本体141は、前端から後方へ向って延る前孔141aと、後端から前方へ向って延び前孔141aの後部と連通する後孔141bを形成している。そして、前孔141aの側部には外周部まで貫通し前後に延びるスリット部141cを形成している。また、前部外周部は中央外周部に比べて径小に形成するとともに外方へ向って突出し軸周方向に延びる係止部141dを形成している。更に、後部外周部には外方へ向って突出する突起部141eが軸心を挟んで対称に2か所形成しており、突起部141eの後方には後部雄螺子部141fを形成している。
尚、検知ユニット本体141は、透明なABS樹脂を用いて射出成形で形成してあり、成形後に内部が透視可能に構成している。
【0053】
また、検知ユニット本体141の内部には、前後動自在に棒状の表示体142が挿入してあり、表示体142は前棒部材421と後板部材1422とを有している。
【0054】
後板部材1422は板状に形成してあり、前端に後方へ向って延び底部を備えた孔部1422aを形成している。更に、後板部材1422の後端には付属具144(弾発部材)の前端が当接する弾発部材当接部1422bを形成している。そして、孔部1422aには前棒部材421の後部係着部421bが圧入により係着してある。例として、後板部材422は赤色のPOM樹脂を用いて形成している。
【0055】
これにより表示体142の外周部には、前棒部材421で構成され白色の前部表示部142aと、後板部材1422で構成され赤色の後部表示部142bと、が形成される。
【0056】
また、
図12に示すように、検知ユニット本体141の後孔141b(係止孔部)には付属具144を挿入してあり、後部雄螺子部141fにはキャップ部材45の雌螺子部45aを螺着させることで、キャップ部材45を着脱自在に取り付けてある。
【0057】
付属具144について詳述すると、付属具144は前駒1441と消しゴム1442とで構成されている。
前駒1441は前部に細径で形成された弾性部1441aと後端から前方へ延びる後部孔1441bとが形成してある。例として前駒1441は、合成ゴムであるシリコーンゴムで形成してもよい。
消しゴム1422の前部には前段部1442aを形成してあり、前段部1442aを前駒1441の後部孔1442bに圧入固着することで前駒1441と消しゴム1422と
を一体化してある。
【0058】
次に、
図12から
図15を用いてシャープペンシル110内においてチャック31で保持している筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んだ状態で芯繰り出し動作を行った場合について説明する。
図14は、
図12の状態から筆記等で筆記芯LEが短くなった際、筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んだ状態を示している。この状態で、
図15の位置まで筆記芯LEを前方へ繰り出すノック動作を行った場合、操作部となる予備芯検知ユニット140が前進し、予備芯検知ユニット140に押されて芯収容部材34とチャック31と締具32が筆記芯LEを保持したまま前進する。この際、筆記芯LEの後端に当接している予備芯SLEと、予備芯SLEの後端に当接している表示体142は、その自重により筆記芯LEに追従して前進する。そして、締具32の前端が先口21の内段21dに当接すると、締具32がチャック31の頭部31aから外れ、チャック31の頭部31aが締具32から解放されることで頭部31aは互いから離間して筆記芯LEの狭持状態が解除される。これにより、筆記芯LEの前進が止まる。この状態から更にチャック31は前進するが、筆記芯LEは芯保持部材26にはまだ保持されていることから、筆記芯LEの前進は停止する。すると、予備芯SLEと表示体142の前進も止まるが、予備芯検知ユニット140の検知ユニット本体141は前進を続けているため、付属具144(弾発部材)の弾性部1442aの前端が表示体142の弾発部材当接部1422bに接近する。そし付属具144(弾発部材)の前端と弾発部材当接部1422bとが当接すると、付属具144(弾発部材)の弾性部1442aが圧縮(弾性変形)して表示体142と予備芯SLEと筆記芯LEとを前方へ弾発するが、弾性部1422bが収縮することで、チャック31が筆記芯LEを話した後も筆記芯LEは前進することなはない。この際、チャック31がノック操作によりノックストローク分最前進しても、弾性部1422bはまだ収縮が可能であるよう構成しているため、筆記芯LEは締具32がチャック31から離れた後に前進することはないよう構成される。そして、操作部である予備芯検知ユニット40の押圧を解除するとチャック31がチャック付勢部材33の弾発力で後方へ戻り、筆記芯LEの繰り出し操作が終了するため、筆記芯LEと予備芯SLEとが縦列に並んでも、互いの芯に負荷が掛かり芯の破損が発生することや、予備芯SLEに筆記芯LEが押されることで当該筆記芯LEが大きく前方へ繰り出されることを防止することができるものとなった。
【0059】
尚、第二の実施形態(実施例2)では、付属具144は検知ユニット本体141の後方から後孔141bに対して着脱可能であることから、弾発部材である付属具144の組み付けが容易であると共に前駒1441を弾発力の異なるものと交換することで弾発力の仕様変更が容易に行うことができるものとなった。
【0060】
以上により、芯の繰り出し構造と、筆記により筆記芯が消耗し、芯収容部内の予備芯が消費されて最後の予備芯になったことを検知する予備芯検知機能を備えると共に、芯繰り出し時における芯出量が安定するシャープペンシルを提供することができた。
【符号の説明】
【0061】
10…シャープペンシル、
20…軸筒、20a…窓部、
21…先口、21a…前端開口部、21b…内孔部、21c…雌螺子部、
21d…内段
22…前軸、22a…前部内周部、22b…係止突起、
23…後部筒状体、23a…クリップ部、23b…筒状本体、23c…係止孔部、
23d…後端開口部、23e…溝部、
24…連結体、24a…外周部、24b…雄螺子部、
25…転写部、25a…透明部、
26…芯保持部材、
30…芯狭持ユニット、
31…チャック、31a…頭部、
32…締具、
33…チャック付勢部材、
34…芯収容部材、34a…拡径部、34b…内方突起、34c…芯収容部、
40…予備芯検知ユニット、
41…検知ユニット本体、41a…前孔、41b…後孔、41c…スリット部、
41d…係止部、41e…突起部、41f…後部雄螺子部、
41g…弾発部材当接部、
42…表示体、42a…前部表示部、42b…後部表示部、
421…前棒部材、421a…前端(当接部)、421b…後部係着部、
422…後板部材、422a…内孔部、422b…係止孔部、
43…弾発部材、
44…付属具、
45…キャップ部材、45a…雌螺子部、
110…シャープペンシル、
141…検知ユニット本体、141a…前孔、141b…後孔、141c…スリット部、
141d…係止部、141e…突起部、141f…後部雄螺子部、
142…表示体、142a…前部表示部、142b…後部表示部、
1421…前棒部材、1421a…前端(当接部)、1421b…後部係着部、
1422…後板部材、1422a…孔部、1422b…弾発部材当接部、
144…付属具、
1441…前駒、1441a…弾性部、1441b…後部孔、
1442…消しゴム、1442a…前段部、
LE…筆記芯、
SLE…予備芯。