(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20231012BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N1/28 E
G01N1/28 G
(21)【出願番号】P 2019182041
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三谷 裕二
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106332(JP,A)
【文献】特開2013-195186(JP,A)
【文献】特開2002-333390(JP,A)
【文献】特開2009-144321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0111231(US,A1)
【文献】特開2020-051089(JP,A)
【文献】大野拓也,コンクリート内部の湿気移動速度に及ぼすセメント種類の影響,コンクリート工学年次論文集,2019年06月15日,Vol.41 No.1,Page.419-424
【文献】佐藤健太朗,養生方法やセメントの相違がコンクリートの内部湿度・乾燥収縮に与える影響,第37回土木学会関東支部技術研究発表会,2010年
【文献】吉岡昌洋,せき板除去後のコンクリート中の水分移動に関する基礎実験,コンクリート工学年次論文集,2008年07月30日,Vol.30 No.2,Page.205-210
【文献】木下竜一,湿度勾配を与えたコンクリートの含水率測定に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.33 No.1,2011年06月15日,Page.779-784
【文献】坂田直子,コンクリートブロック部材のモデル降水による水分移動に及ぼすユニット及び目地構工法の影響,日本建築仕上学会大会学術講演会研究発表論文集,2013年10月17日,Vol.2013,Page.145-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
G01N 1/28
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)、および(E)または(E’)工程を経て、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を測定する、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の測定方法。
(A)コンクリートの円柱成形体からコンクリート板を複数切り出した後、
1枚を除く複数のコンクリート板の周囲をラバーリング(ゴム輪)で封止して供試体を作製する、供試体作製工程
(B)型枠の内側に円周方向に設けた複数の溝に、前記
複数の供試体を設置した後、該供試体の上から、同じく内側に円周方向に複数の溝および測定孔を設けた型枠を被せて密封する、供試体設置工程
(C)所定の乾燥期間において、
型枠内の複数の供試体で仕切られた、型枠内のそれぞれの空間に、前記測定孔から湿度センサを挿入して
、該空間の中心部に設置した湿度センサにより、コンクリート内部の模擬空間の相対湿度を
乾燥期間ごとに測定する、相対湿度測定工程
(D)前記相対湿度測定工程の直後に、供試体を型枠から取り出してラバーリングを外し、直ちに、
(i)複数のレーザー変位計、(ii)乾燥収縮ひずみ測定用の供試体を支持するための正三角形の3つの頂点または正方形の4つの頂点を形成するように配置してなる支持部材、および、(iii)該支持部材の一部を埋設してなる台座を少なくとも含む、乾燥収縮ひずみ測定装置を用いてコンクリート板の
長さ、および質量
(Mt)を測定する
ことを繰り返す、
長さおよび質量の測定工程
(E)コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で28日以上の場合は、前記コンクリート板の質量(Mt、M
0)と、105℃で24時間乾燥したコンクリート板の質量(M
105/24)を用いて、下記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する、相対含水率の算出工程
Ws=M
0-M
105/24 ・・・(1)
Wt=Mt-M
105/24 ・・・(2)
ただし、(1)式中、Wsはコンクリート板の飽和含水量を表し、M
0は乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)における、
作製したすべてのコンクリート板の質量を表わし、M
105/24は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(2)式中、Wtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表し、Mtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の質量を表す。
Wr=100×Wt/Ws ・・・(3)
ただし、(3)式中、Wrは相対含水率を表し、Wsは(1)式で算出したコンクリート板の飽和含水量を表し、Wtは(2)式で算出した所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表す。
(E’)コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で27日以下の場合は、前記(1)および(2)式中のM
105/24に代えて、下記(4)および(5)式を経て算出したM
105/24’を用いて、前記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する、相対含水率の算出工程
Wsat=(M
0-M
105/24)/M
105/24 ・・・(4)
M
105/24’=M
0/(1+Wsat) ・・・(5)
ただし、(4)式中、Wsatはコンクリート板の飽和含水率を表し、M
0はコンクリート板の乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)における
作製したすべてのコンクリート板の質量を表わし、M
105/24はコンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(5)式中、M
105/24’は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量の推定値を表わす。
なお、前記(A)供試体作製工程において、コンクリート板を複数切り出す作業と、該コンクリート板の周囲をラバーリング(ゴム輪)で封止する作業の間に、1枚を除いた複数のコンクリート板について、コンクリート板の質量(M
0
)を測定するとともに、乾燥収縮ひずみ測定装置を用いて該複数のコンクリート板の基長を測定する。そして、残りの1枚のコンクリート板について、質量(M
0
)を測定した後、105℃で24時間乾燥して、その質量(M
105/24
)を測定する。
【請求項2】
前記コンクリート板の厚さが0.5~5cmである、請求項1に記載のコンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を簡易に測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート内部の相対湿度の測定方法は、
(i)コンクリートの乾燥面からの各深さ位置に、湿度センサ(電気湿度計)を埋込んで測定する方法
(ii) コンクリートの乾燥面からの各深さ位置に、測定孔を設け、その空間の湿度を湿度センサで計測する方法
がある(非特許文献1)。
また、コンクリート内部の乾燥収縮ひずみの測定方法は、
(iii)コンクリートの乾燥面からの各深さ位置に埋込みひずみ計を設置し、連続測定する方法
(iv)コンクリートの乾燥面からの各深さ位置に変位計を設置し、連続測定する方法
がある(非特許文献2)。
また、コンクリート内部の相対含水率の測定方法は、
(v) コンクリートの乾燥面からの各深さ位置に水分計を埋込み、連続測定する方法
(vi)所定の材齢でコンクリートを薄く割裂して得た供試体を、105℃で乾燥した後の質量から含水率を算出する方法
がある(非特許文献1)。
【0003】
しかし、前記従来の測定方法には、以下の課題があった。すなわち、
(a) ひずみ計や水分計など設置か所が多いほど、コスト高になる。
(b) コンクリートの乾燥面に近い位置(深さ5cm以下)のごく表層に、センサやひずみ計を設置するのは困難である。
(c) 所定の材齢で割裂する方法は、各材齢分の供試体を作製する必要がある。
(d) 一つの供試体から、相対湿度と乾燥収縮ひずみ、または相対含水率と乾燥収縮ひずみは測定できるとしても、相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の三つの測定は困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「コンクリート中の含水率および湿度の測定値と乾燥収縮率の関係」、コンクリート工学年次論文集、pp.433-438、Vol.37、No.1、2015
【文献】「コンクリートの乾燥収縮によるひずみと応力の解析」、コンクリート工学年次論文集、pp.441-446、Vol.24、No.1、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、単一の装置を用いて、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を、簡易に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的にかなう測定方法を検討した結果、下記の構成を有する測定方法は前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]下記(A)~(D)、および(E)または(E’)工程を経て、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を測定する、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の測定方法。
(A)コンクリートの円柱成形体からコンクリート板を複数切り出した後、1枚を除く複数のコンクリート板の周囲をラバーリング(ゴム輪)で封止して供試体を作製する、供試体作製工程
(B)型枠の内側に円周方向に設けた複数の溝に、前記複数の供試体を設置した後、該供試体の上から、同じく内側に円周方向に複数の溝および測定孔を設けた型枠を被せて密封する、供試体設置工程
(C)所定の乾燥期間において、型枠内の複数の供試体で仕切られた、型枠内のそれぞれの空間に、前記測定孔から湿度センサを挿入して、該空間の中心部に設置した湿度センサにより、コンクリート内部の模擬空間の相対湿度を乾燥期間ごとに測定する、相対湿度測定工程
(D)前記相対湿度測定工程の直後に、供試体を型枠から取り出してラバーリングを外し、直ちに、(i)複数のレーザー変位計、(ii)乾燥収縮ひずみ測定用の供試体を支持するための正三角形の3つの頂点または正方形の4つの頂点を形成するように配置してなる支持部材、および、(iii)該支持部材の一部を埋設してなる台座を少なくとも含む、乾燥収縮ひずみ測定装置を用いてコンクリート板の長さ、および質量(Mt)を測定することを繰り返す、長さおよび質量の測定工程
(E)コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で28日以上の場合は、前記コンクリート板の質量(Mt、M0)と、105℃で24時間乾燥したコンクリート板の質量(M105/24)を用いて、下記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する、相対含水率の算出工程
Ws=M0-M105/24 ・・・(1)
Wt=Mt-M105/24 ・・・(2)
ただし、(1)式中、Wsはコンクリート板の飽和含水量を表し、M0は乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)における、作製したすべてのコンクリート板の質量を表わし、M105/24は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(2)式中、Wtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表し、Mtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の質量を表す。
Wr=100×Wt/Ws ・・・(3)
ただし、(3)式中、Wrは相対含水率を表し、Wsは(1)式で算出したコンクリート板の飽和含水量を表し、Wtは(2)式で算出した所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表す。
(E’)コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で27日以下の場合は、前記(1)および(2)式中のM105/24に代えて、下記(4)および(5)式を経て算出したM105/24’を用いて、前記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する、相対含水率の算出工程
Wsat=(M0-M105/24)/M105/24 ・・・(4)
M105/24’=M0/(1+Wsat) ・・・(5)
ただし、(4)式中、Wsatはコンクリート板の飽和含水率を表し、M0はコンクリート板の乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)における作製したすべてのコンクリート板の質量を表わし、M105/24はコンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(5)式中、M105/24’は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量の推定値を表わす。
なお、前記(A)供試体作製工程において、コンクリート板を複数切り出す作業と、該コンクリート板の周囲をラバーリング(ゴム輪)で封止する作業の間に、1枚を除いた複数のコンクリート板について、コンクリート板の質量(M
0
)を測定するとともに、乾燥収縮ひずみ測定装置を用いて該複数のコンクリート板の基長を測定する。そして、残りの1枚のコンクリート板について、質量(M
0
)を測定した後、105℃で24時間乾燥して、その質量(M
105/24
)を測定する。
[2]前記コンクリート板の厚さが0.5~5cmである、前記[1]に記載のコンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率の測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は単一の装置を用いて、コンクリートの内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を簡易的に取得でき、これらによりコンクリート中の水分移動による乾燥収縮特性を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)はコンクリート板を切り出した状態の模式図の一例を示し、(b)は型枠内に供試体と湿度センサを設置した状態の模式図(断面図)の一例を示す。
【
図2】(a)は円筒形の型枠を開いた状態の一例を示し、(b)は型枠内に形成された、供試体を設置するための溝の一例を示し、(c)はコンクリート板(左の写真)と、コンクリート板の周囲を被覆するためのラバーリング(右の写真)の一例を示し、(d)はラバーリングで周囲を被覆したコンクリート板(供試体)を型枠の溝に設置した状態の一例を示し、(e)は型枠の溝に設置したコンクリート板(供試体)の上から、対となる型枠で蓋をして密封した状態の一例を示し、(f)は測定孔から湿度センサを挿入して相対湿度を測定する状態の一例を示す。
【
図3】4個のレーザー変位計を、該レーザー変位計から照射されたレーザーが90°の角度で交差するように配置してなる、乾燥収縮ひずみ測定装置の一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。ただし、右図において、紙面に対し前方および後方に位置するレーザー変位計は省略した。
【
図4】供試体の乾燥期間と、本発明の方法で測定したコンクリート内部(仮想空間)の相対湿度、コンクリート板の乾燥収縮ひずみおよび相対含水率の関係を示す図である。ただし、図の凡例内の1~5cmは乾燥面からの供試体の厚さの累積を示す。なお、W/C=40%は表1中のコンクリートAを表し、W/C=50%は表1中のコンクリートBを表し、W/C=60%は表1中のコンクリートCを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記(A)供試体作製工程、(B)供試体設置工程、(C)相対湿度測定工程、(D)乾燥収縮ひずみおよび質量の測定工程、および(E)相対含水率の算出工程を経て、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を測定する方法である。
以下、前記各工程に分けて説明する。
【0011】
(A)供試体作製工程
該工程は、コンクリートの円柱成形体からコンクリート板を複数切り出した後、該コンクリート板の周囲をラバーリング(ゴム輪)で封止して供試体を作製する工程である。
ここで、前記コンクリートに用いるセメントや混和材は、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、エコセメント、速硬セメント、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材、および収縮低減剤等が挙げられる。
前記コンクリート板の大きさは、特に限定されないが、その厚さは、割れ難さと乾燥の速さの兼ね合いから、0.5~5cmが好適である。前記ラバーリングは、型枠と供試体が接した位置から湿気が漏れることを防止するために用いる。さらに湿気の漏洩を完全に防止するために、上下の型枠の溝をシリコンオイル等の油で埋めるとよい。
【0012】
(B)供試体設置工程
該工程は、型枠の内側に円周方向に設けた複数の溝に、前記供試体を設置した後、該供試体の上から、同じく内側に円周方向に複数の溝および測定孔を設けた型枠を被せて密封する工程である。
型枠の材質は、特に限定されないが、溝切り等の加工が容易なことから、好ましくはアクリル樹脂や塩化ビニル樹脂等の樹脂である。また、前記測定孔は、湿度センサを挿入しない間は、ゴム栓等で塞いでおく。
【0013】
(C)相対湿度測定工程
該工程は、所定の乾燥期間において、前記測定孔から湿度センサを挿入して相対湿度を測定する工程である。
前記湿度センサは、市販のセンサでよく、例えば、IST HYT939(シスコム社製)が挙げられる。
本発明の技術的特徴は、コンクリート板を、密閉した型枠内に複数枚設置して構成した複数の区間(空間)内を、コンクリート板中の湿気や水分が拡散移動する現象を、コンクリート内部での湿気や水分の拡散移動に喩えて、このコンクリート内部を模擬した空間(模擬空間)内の相対湿度を測定すれば、
図1に示すように、湿度センサが水分に接することなく相対湿度を測定できる点にある。湿度センサが水分に接すると、測定精度は低下する。
【0014】
(D)乾燥収縮ひずみおよび質量の測定工程
該工程は、前記相対湿度測定工程の直後に、供試体を型枠から取り出してラバーリングを外し、直ちに、コンクリート板の乾燥収縮ひずみおよび質量を測定する工程である。
本発明において、乾燥収縮ひずみの測定に用いる装置は、後掲の
図3に示すような、(i)複数のレーザー変位計、(ii)乾燥収縮ひずみ測定用の供試体を支持するための正三角形の3つの頂点または正方形の4つの頂点を形成するように配置してなる支持部材、および、(iii)該支持部材の一部を埋設してなる台座を少なくとも含む、乾燥収縮ひずみ測定装置が好適である。
【0015】
(E)および(E’)相対含水率の算出工程
該工程は、コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で28日以上の場合は、前記コンクリート板の質量(Mt、M0)と、105℃で24時間乾燥したコンクリート板の質量(M105/24)を用いて、下記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する工程である。
Ws=M0-M105/24 ・・・(1)
Wt=Mt-M105/24 ・・・(2)
ただし、(1)式中、Wsはコンクリート板の飽和含水量を表し、M0は乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)におけるコンクリート板の質量を表わし、M105/24は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(2)式中、Wtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表し、Mtは所定の乾燥期間におけるコンクリート板の質量を表す。
Wr=100×Wt/Ws ・・・(3)
ただし、(3)式中、Wrは相対含水率を表し、Wsは(1)式で算出したコンクリート板の飽和含水量を表し、Wtは(2)式で算出した所定の乾燥期間におけるコンクリート板の含水量を表す。
また、コンクリート板の乾燥の開始時期が、コンクリートの材齢で27日以下の場合は、前記(1)および(2)式中のM105/24に代えて、下記(4)および(5)式を経て算出したM105/24’を用いて、前記(1)~(3)式を経て相対含水率(Wr)を算出する工程である。
Wsat=(M0-M105/24)/M105/24 ・・・(4)
M105/24’=M0/(1+Wsat) ・・・(5)
ただし、(4)式中、Wsatはコンクリート板の飽和含水率を表し、M0はコンクリート板の乾燥期間がゼロ(乾燥開始時)におけるコンクリート板の質量を表わし、M105/24はコンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量を表す。また、(5)式中、M105/24’は、コンクリート板を105℃で24時間乾燥した質量の推定値を表わす。
このように、コンクリート板の乾燥の開始時期がコンクリートの材齢で28日以上の場合と27日以下の場合で、相対含水率の算出工程の内容が異なる理由は、コンクリートの材齢が28日以上の場合、コンクリート板中のセメントの水和は飽和状態に近いため、水和による水分の消費よりも、乾燥による水分の減少が大きいため、水和による水分の消費量は無視できるのに対し、コンクリートの材齢が27日以下の場合、水和による水分の消費は無視できないため、水和による水分の消費と乾燥による水分の減少の両方を考慮しなければならないからである。
なお、(4)式と(5)式の導出は以下のとおりである。
まず、工程(A)において円柱供試体からコンクリート板を複数切り出す際に、型枠内に設置するためのコンクリート板のほかに、余分に切り出したコンクリート板を用いて、M0とM105/24を求め、(4)式により乾燥開始時のコンクリート板の飽和含水率を算出する。この飽和含水率を全コンクリート板の飽和含水率として用い、各コンクリート板の乾燥期間がゼロの質量(M0)から、105℃で24時間乾燥した質量を逆算するように(5)式にて予測する。これにより105℃で24時間乾燥することなく、絶乾状態の質量を推定でき、水和による水分減少の影響も考慮することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)普通ポルトランドセメント(略号:C)
太平洋セメント社製である。
(2)山砂(略号:S)
表乾密度は2.56g/cm3である。
(3)砂岩砕石(略号:G)
表乾密度は2.66g/cm3である。
(4)上水道水(略号:W)
(5)AE減水剤(略号:AD)
商品名はポゾリスNo.70[登録商標]で、BASF社製である。
(6)AE剤(略号:AE)
商品名はマスターエア404[登録商標]で、BASF社製である。
【0017】
2.コンクリート板の作製と基長および質量の測定
表1に示すコンクリートの配合に従い、前記の各材料を容量50リッターのパン型ミキサに一括して投入し、2分間混練した後、該混練物を内径10cm、高さ20cmの型枠に打設して成形しコンクリートを得た。次に、該コンクリートを20℃で7日間湿空養生した後に脱型し、
図1の(A)に示すように、コンクリートの底面(打設面とは反対の面)側から切り出して、厚さ1cmのコンクリート板を6枚作製し、そのうちの5枚はコンクリート板の質量(M
0)と、
図3に示す乾燥収縮ひずみ測定装置を用いてコンクリート板の基長を測定した。また、残りの1枚は、質量(M
0)を測定した後、105℃で24時間乾燥して、その質量(M
105/24)を測定した。
【0018】
【0019】
3.模擬空間の相対湿度、コンクリート板の長さおよび質量の測定
次に、前記コンクリート板の円周をラバーリングで被覆した5枚の供試体と、5個の湿度センサ(IST HYT939、シスコム社製)をアクリル樹脂製型枠内に、
図1の(b)や
図2の(d)に示すように設置した後、残りのアクリル樹脂製型枠を、
図2の(e)に示すように被せて全体を封印し、コンクリート内部の模擬空間として5つの空間を構成した。そして、
図4に示す乾燥期間毎に、これらの5つの模擬空間内の湿度を測定するとともに、供試体を型枠から取り出し、直ちに供試体のラバーリングを外して、コンクリート板の長さと質量(Mt)を測定した。なお、1枚のコンクリート板の長さと質量を測定する間、残りの4枚のコンクリート板は、空気中での乾燥を防ぐため密閉袋に入れて一時保管した。そして、長さと質量を測定したコンクリート板は、直ちに密閉袋に入れて保管するとともに、新たなコンクリート板を密閉袋から取り出して、同様にして、コンクリート板の長さと質量の測定、および密閉袋への返却と保管を繰り返した。
5枚のコンクリート板の長さと質量の測定が終了した後は、再度、コンクリート板の円周をラバーリングで被覆して、供試体と湿度センサを型枠内に再び設置し、乾燥および前記各種の測定を継続した。
乾燥期間と、測定した相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および、算出した相対含水率の関係を
図4に示す。
図4に示すように、本発明の測定方法によれば、コンクリート内部の相対湿度、乾燥収縮ひずみ、および相対含水率を簡易に測定できる。
【符号の説明】
【0020】
1 供試体
2 台座
3 支持部材
4 レーザー変位計(ただし、黒色の矢印はレーザーを示す。)