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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】輪軸昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 17/00 20060101AFI20231012BHJP
   B66F 1/02 20060101ALI20231012BHJP
   B66F 7/28 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B66F17/00 E
B66F1/02 Z
B66F7/28 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019185873
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059447
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021669
【氏名又は名称】椿本興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 優介
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-193905(JP,A)
【文献】特開2003-285783(JP,A)
【文献】特開2012-001333(JP,A)
【文献】特開2004-142609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261629(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 1/00- 5/04
B66F 7/00- 7/28
B66F 13/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両台車の輪軸を整備するのに用いる鉄道車両用の輪軸昇降装置において、
前記輪軸の車軸端部をそれぞれ受け、前記輪軸が回転可能に支持する軸支持部と、
一対のチェーン部分を有し、対をなすチェーン部材同士が進行方向に移動することで相互に噛み合って一体化する噛み合いチェーンと、
該噛み合いチェーンの進退に合わせて昇降方向に伸縮する多段ストローク機構を備える直動ガイドと、
前記噛み合いチェーンを進退させるための駆動機構と、を備え、
前記噛み合いチェーンと前記直動ガイドと前記駆動機構とが、前記軸支持部をそれぞれ昇降させる軸支持部昇降機構を構成し
前記駆動機構を同期制御して、前記軸支持部を昇降させること、
を特徴とする鉄道車両用の輪軸昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用の輪軸昇降装置において、
前記輪軸の車軸に取り付けられた歯車箱を受ける歯車箱支持部と、
前記噛み合いチェーンと前記直動ガイドと前記駆動機構とを備えて前記歯車箱支持部を昇降させる歯車箱昇降機構と、を備えること、
を特徴とする鉄道車両用の輪軸昇降装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用の輪軸昇降装置において、
前記軸支持部は、第1軸支持部と第2軸支持部よりなり、
前記第1軸支持部と前記第2軸支持部との距離を調整する軸間調整機構を備えること、
を特徴とする鉄道車両用の輪軸昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両台車の輪軸を整備などのために持ち上げる設備に関し、具体的には輪軸昇降装置の装置構成の省スペース化を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は定期的に分解検査、修繕などを行う必要があり、台車から外した輪軸についてもリフトアップして整備している。輪軸のリフトアップには、油圧シリンダを用いた昇降装置や、電動ジャッキを用いた昇降装置が知られている。しかしながら、例えば油圧シリンダを用いた昇降装置の場合には、輪軸のリフト量に応じた油圧シリンダの大きさを必要とする。輪軸の整備にあたってはリフト量が概ね500mm~700mm程度が必要となるため、床下に配置する昇降装置も同程度以上の深さを要する。そのため、ピットを深くして対応することになるが、整備工場の都合でピットの深さを確保できないケースもある。
【0003】
また、輪軸のリフトアップにテーブルリフト方式を採用することも考えられる。例えば、特許文献1にはテーブルリフトに関する技術が開示されているが、アーム体によって天板体と底板体が近接・離間自在に連結されている。アーム体は天板体と底板体の間に折りたたまれるような構造になっていて、高さ方向にコンパクトに折りたたまれる様子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3076765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を用いる場合、天板体と底板体の間のスペースには、アーム体が折りたたまれて収納される必要があるため、ストローク量を確保するためにはアーム体の長さを必要とし、それに応じて天板体と底板体の面積を広くとる必要がある。したがって、天板体と底板体の間の空間は作業者が体を入れることができない領域となり、天板体はそれなりの面積を必要とするので、作業性が低下して、整備性を損なうことが考えられる。
【0006】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、装置を据え付けるピットの深さより大きなストローク量を確保可能な鉄道車両用の輪軸昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用の輪軸昇降装置は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)鉄道車両台車の輪軸を整備するのに用いる鉄道車両用の輪軸昇降装置において、前記輪軸の車軸端部をそれぞれ受け、前記輪軸が回転可能に支持する軸支持部と、一対のチェーン部分を有し、対をなすチェーン部材同士が進行方向に移動することで相互に噛み合って一体化する噛み合いチェーンと、多段ストローク機構を備える直動ガイドと、前記噛み合いチェーンを進退させるための駆動機構と、該駆動機構を用いて前記軸支持部をそれぞれ昇降させる軸支持部昇降機構と、を備え、前記駆動機構を同期制御して、前記軸支持部を昇降させること、を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様により、輪軸昇降装置を納めるピットの深さよりも昇降ストローク量を確保可能な昇降装置の提供が実現できる。これは、軸支持部昇降機構に噛み合いチェーンを用いた昇降装置を採用したためである。噛み合いチェーンを用いた昇降装置はチェーンがロール状に巻かれて収納されるため、比較的コンパクトに収納可能である。そして、多段のストローク機構を備えた直動ガイドを用いているため横方向への荷重に対応する事ができる。このため、輪軸を必要な高さまで安全にリフトアップすることが可能であり、かつ、装置の厚みをコンパクトに押さえることができる。
【0010】
課題に示した通り、工場側の事情でピットを浅くしたいという要望が出る場合があり、こうした要望に応えるためには、従来から用いられてきたシリンダを用いた構成や、電動ジャッキを用いる構成では装置の高さ方向を抑えて作ることが難しかった。しかしながら噛み合いチェーンを用いた推進機構を採用することで、高さ方向を抑えた上で所定の推力を稼ぐことが可能になる。また、テーブルリフトのように整備性を悪化させる事も無いため、整備性の向上にも寄与することが期待できる。
【0011】
(2)(1)に記載の鉄道車両用の輪軸昇降装置において、前記輪軸の車軸に取り付けられた歯車箱を受ける歯車箱支持部と、前記噛み合いチェーンと前記直動ガイドと前記駆動機構とを備えて前記歯車箱支持部を昇降させる歯車箱昇降機構と、を備えること、が好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の態様により、噛み合いチェーンを用いることで、輪軸昇降装置をコンパクトに構成することが可能である。噛み合いチェーンは一組のチェーンを向かい合わせて噛み合うように配置し、モータなどの駆動力を用いて昇降を実現させる機構である。小型の装置に使われるケースが多いが、チェーンを大型化することで、輪軸を上昇させる駆動機構に使用できることを出願人は実験によって確認している。これに直動ガイドによって水平方向の強度を確保することで、コンパクトな輪軸昇降装置を実現することができる。この場合、輪軸の端部を把持して輪軸をリフトアップさせることができる他、モータにブレーキ機能を付加する。この結果、作業者の作業性の向上を図ることができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載の鉄道車両用の輪軸昇降装置において、前記軸支持部は、第1軸支持部と第2軸支持部よりなり、前記第1軸支持部と前記第2軸支持部との距離を調整する軸間調整機構を備えること、が好ましい。
【0014】
上記(3)に記載の態様により、複数の輪軸に対応することができる。鉄道の軌道には代表的な狭い軌道や広い軌間の他にも様々な幅の軌道が採用されており、それぞれ異なる輪軸を用いる場合がある。しかし、輪軸調整機構を備えることで複数種類の輪軸に対応できる構成とすることで、様々な種類の輪軸に対応することが可能となる。このため、整備性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の、鉄道車両用の輪軸昇降装置の平面図である。
図2】本実施形態の、輪軸昇降装置の側面断面図である。
図3】本実施形態の、輪軸昇降装置の段取り替えについて説明する側面断面図である。
図4】本実施形態の、輪軸昇降装置の斜視図である。
図5】本実施形態の、輪軸昇降装置がピット内に納められた状態の斜視図である。
図6】本実施形態の、軸支持ユニットが下端にある状態の説明図である。
図7】本実施形態の、軸支持ユニットが中間にある状態の説明図である。
図8】本実施形態の、軸支持ユニットが上端にある状態の説明図である。
図9】本実施形態の、歯車箱支持ユニットが上端にある状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。図1に、本実施形態の、鉄道車両用の輪軸昇降装置の平面図を示す。図2に、輪軸昇降装置の側面断面図を示す。図3に、輪軸昇降装置の段取り替えについての側面断面図を示す。図4に、輪軸昇降装置の斜視図を示す。図5に、輪軸昇降装置がピット内に納められた状態の斜視図を示す。輪軸昇降装置100は、工場内に設けられたピット10に納められている。よって、工場内の床面に対して設けられた軌道20上を、輪軸50を転がして輪軸昇降装置100の上に移動させることが可能である。なお軌道20は、基準側レール20Aと、狭い軌間に対応する第1レール20Bと、広い軌間に対応する第2レール20Cよりなる。
【0017】
この輪軸昇降装置100にて、鉄道車両に用いられる輪軸50をリフトアップする。輪軸50は、車軸50cの両端に設けられる車軸端部50aと、車軸50cに取り付けられる車輪50b、そして、車輪50bの内側に配置されている歯車箱50dよりなる。なお、歯車箱50dに関しては、歯車箱50dを備えていない輪軸50も存在するが、その場合にも本発明を適用することが可能である。そして輪軸昇降装置100は、移動側ユニット101と固定側ユニット102よりなり、移動側ユニット101には第1軸支持ユニット110が備えられ、固定側ユニット102には第2軸支持ユニット120と歯車箱支持ユニット130が備えられている。
【0018】
輪軸50は、広い軌間用50Aと狭い軌間用50Bがあり、車軸50cの長さが異なる。このような2種類の輪軸50を、移動側ユニット101を移動させることで、図3に示す様に輪軸昇降装置100でリフトアップする設計となっている。なお、必要に応じて輪軸昇降装置100を複数種類の輪軸50に対応させることもできる。第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120は、ほぼ同じ構造となっており、第1昇降装置111Aは第1直動ガイドユニット115Aを、第2昇降装置111Bは第2直動ガイドユニット115Bを備えている。また、歯車箱支持ユニット130も、第1軸支持ユニット110と第2軸支持ユニット120と似たような構成になっていて、第3昇降装置111Cと、第3直動ガイドユニット115Cを備えている。
【0019】
第1昇降装置111Aには第1ブレーキ付きモータ112Aが、第2昇降装置111Bには第2ブレーキ付きモータ112Bが備えられて、第1ブレーキ付きモータ112A及び第2ブレーキ付きモータ112Bの回転によって、第1昇降装置111A及び第2昇降装置111Bの内部に備えられた図示しない噛み合いチェーンが進退する構造になっており、蛇腹構造の第1ブーツ113A及び第2ブーツ113Bで覆われた部分が伸縮するのに合わせて、第1直動ガイドユニット115A及び第2直動ガイドユニット115Bが同期して動作する。この時、第3直動ガイドユニット115Cも同期して動作する。なお、輪軸50に歯車箱50dを備えていない場合には、第3直動ガイドユニット115Cを同期させないような制御を選べるようにするのが望ましい。
【0020】
図6に、軸支持ユニットが下端にある状態の説明図を示す。図7に、軸支持ユニットが中間にある状態の説明図を示す。図8に、軸支持ユニットが上端にある状態の説明図を示す。図6乃至図8では、図2の右側面から見た様子が示されているので、第2軸支持ユニット120を説明する図となっている。ただし、第1軸支持ユニット110も同様の構造となっている。このため、図示される符号は、例えば、第2直動ガイドユニット115Bは、第1直動ガイドユニット115Aと同じものを説明している。表記としては最初に出てくる場合に、第2直動ガイドユニット115B(第1直動ガイドユニット115A)と示している。
【0021】
輪軸50の車軸端部50aを直接受けているのが第2車軸受140B(第1車軸受140A)であり、第2車軸受140Bには一対の第2ローラ141B(一対の第1ローラ141A)が設けられ、輪軸50を回転可能に支持している。第2車軸受140Bは、第2天板139B(第1天板139A)に支持され、第2天板139Bには第2内側ロッド133B(第1内側ロッド133A)が接続されている。
【0022】
第2内側ロッド133Bは、第2内側リニアブッシュガイド134B(第1内側リニアブッシュガイド134A)によって直動可能に支持されている。第2内側リニアブッシュガイド134Bは第2内側ベース135B(第1内側ベース135A)に固定されている。また第2内側ベース135Bの両脇には第2外側リニアブッシュガイド132B(第1外側リニアブッシュガイド132A)が固定されていて、第2外側リニアブッシュガイド132Bは、それぞれ両端が第2外側ロッド保持具138B(第1外側ロッド保持具138A)に保持される第2外側ロッド131B(第1外側ロッド131A)を貫通支持している。第2外側ロッド保持具138Bは、第2外側ベース136B(第1外側ベース136A)に固定されている。そして、第2外側ベース136Bは固定側ユニット102に、図示しない第1外側ベース136Aは移動側ユニット101に固定される。
【0023】
図9に、歯車箱支持ユニットが上端にある状態の説明図を示す。歯車箱支持ユニット130は、前述したように第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120とほぼ同じ構成になっているが、第3ブレーキ付きモータ112Cを配置する場所の確保の問題で、チェーン118を利用した構成となっている。つまり、第3ブレーキ付きモータ112Cの軸にはスプロケット117が備えられ、第3昇降装置111C側にチェーン118を介して動力を伝達する構造となっている。
【0024】
そして、歯車箱支持ユニット130は、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120と同様の構造となっている。そのため、第3天板139Cには第3内側ロッド133Cが接続され、第3内側ロッド133Cは、第3内側リニアブッシュガイド134Cによって直動可能に支持されている。第3内側リニアブッシュガイド134Cは第3内側ベース135Cに固定されている。また第3内側ベース135Cの両脇には第5外側リニアブッシュガイド132Cが固定されていて、第5外側リニアブッシュガイド132Cは、それぞれ両端が第3外側ロッド保持具138Cに保持される第3外側ロッド131Cを貫通支持している。第3外側ロッド保持具138Cは、第3外側ベース136Cに固定され、第3外側ベース136Cは固定側ユニット102に固定されている。
【0025】
また、第3内側ロッド133Cの先端には第3天板139Cが備えられる。そして、第3天板139Cによって、保持具145を支持することができる。保持具145は図示していないが下端にローラを備えており、第3天板139Cの上面に当接する構造となる。保持具145はこのような構造であるため、使用しない時には外しておくことができる。
【0026】
輪軸昇降装置100は、このような構成を有しており、図示しない操作盤に備えられたスイッチなどを操作することで、輪軸50を昇降させることが可能である。ここで、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120は、同期して上昇、降下する構造になっていて、図2に示す様に第1ポジションP1から上端位置である第2ポジションP2まで輪軸50を持ち上げることができる。また、図7に示す様な中間位置である第3ポジションP3に停止させることも可能である。ここで、輪軸50に歯車箱50dを備えていれば、保持具145などを用いて歯車箱支持ユニット130を上昇させることで、歯車箱50dが回転しないように保持しておくことが可能である。歯車箱50dを保有していない輪軸50をリフトアップさせる場合には、歯車箱支持ユニット130を動作させないこともできる。
【0027】
本実施形態の鉄道車両用の輪軸昇降装置100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0028】
まず、本実施形態の効果として、装置を据え付けるピット10の深さより大きなストローク量を確保可能な鉄道車両用の輪軸昇降装置100の提供が可能になるという効果が得られる点が挙げられる。これは、鉄道車両台車の輪軸50を整備するのに用いる鉄道車両用の輪軸昇降装置100において、輪軸50の車軸端部50aをそれぞれ受け、輪軸50が回転可能に支持する軸支持部に相当する第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120と、一対のチェーン部分を有し、対をなすチェーン部材同士が進行方向に移動することで相互に噛み合って一体化する噛み合いチェーンと、多段ストローク機構を備える第1直動ガイドユニット115A及び第2直動ガイドユニット115Bと、噛み合いチェーンを進退させるため駆動機構に相当する第1ブレーキ付きモータ112A及び第2ブレーキ付きモータ112Bと、を用いた、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120をそれぞれ昇降させる第1昇降装置111A及び第2昇降装置111Bと、を備えているからである。
【0029】
つまり、第1軸支持ユニット110、第2軸支持ユニット120、及び歯車箱支持ユニット130に、噛み合いチェーンを用いた第1昇降装置111A、第2昇降装置111B及び第3昇降装置111Cを備えていることで、その高さを低く抑えることが可能となる。噛み合いチェーンは噛み合う前の状態で、例えば特開2018-65634号公報に示される様に、チェーンを巻回して収納する構造になっているために高さ方向にもコンパクトに配置が可能だからである。このため、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120のストロークが650mmに設定されている場合にも、ピット10の深さは500mm以下に抑えることが可能となる。
【0030】
ピット10の深さを抑えることは、ピット10の施工にかかるコストを抑えることに繋がる他、工期の短縮にも寄与できる。特に老朽化した設備の更新などを考えると、既存のピット10を流用できることが望ましいため、従来の構造よりもコンパクトに収まった輪軸昇降装置100の提供は、工期短縮などのメリットが得られる点でも優れている。
【0031】
また、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120を駆動する第1ブレーキ付きモータ112Aと第2ブレーキ付きモータ112Bを同期制御して、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120を同期して昇降させることで、安全に輪軸50を昇降することができる。また、必要に応じて歯車箱支持ユニット130も第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120と同期して昇降させることで、輪軸50昇降時に歯車箱支持ユニット130が動いてしまうことを防止して、輪軸50を安全に昇降させることに繋がる。
【0032】
また、第1ブレーキ付きモータ112A及び第2ブレーキ付きモータ112Bを用いて同期制御しているために、第1ポジションP1から第2ポジションP2にリフトアップさせるだけで無く、図7に示した中間位置である第3ポジションP3など、任意の高さで停止することが可能である。水平方向への力は、第1直動ガイドユニット115A、第2直動ガイドユニット115Bによって受ける構造になっているので、水平方向の強度も確保される。このために、輪軸50を回転しながら整備するような場合にも対応可能である。更に、第1ブーツ113A及び第2ブーツ113Bが噛み合いチェーンの外側に設けられていることで、巻き込み防止の機能も有している。
【0033】
また、輪軸50は第1車軸受140A及び第2車軸受140Bによって回転可能に保持されているので、第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120によってリフトアップされた状態で、輪軸50を回転させて整備することができる。こうした構造になっていることで、作業性を向上している。また、輪軸昇降装置100は、移動側ユニット101と固定側ユニット102よりなるので、広い軌間用50Aと狭い軌間用50Bに対応するように段取り替えをすることが可能である。こうした配慮も、作業性の向上に寄与している。
【0034】
また、第1ブレーキ付きモータ112A及び第2ブレーキ付きモータ112Bを用いて第1軸支持ユニット110及び第2軸支持ユニット120を昇降させる構造を採用することで、例えば油圧式のシリンダを用いた場合のように停止時に油圧によって高さを維持する必要が無くなる。このようにすることで検査、整備作業中に油圧ポンプの駆動音による騒音を生じるようなこともない。また、エンコーダ内蔵の第1ブレーキ付きモータ112A及び第2ブレーキ付きモータ112Bの採用によって、同期制御をし易くなることもメリットと考えられる。油圧で高ストロークを昇降させる構成とすると、昇降タイミングのずれが発生することや、油漏れを心配する必要があるが、こうした問題点を解消し、作業者の安全性を高めることができる。また、このことでメンテナンス性が高められることもメリットとして挙げられる。
【0035】
以上、本発明に係る鉄道車両用の輪軸昇降装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 ピット
50 輪軸
100 輪軸昇降装置
110 第1軸支持ユニット
111A、111B、111C 第1、第2、第3昇降装置
112A、112B、112C 第1、第2、第3ブレーキ付きモータ
113A、113B、113C 第1、第2、第3ブーツ
115A、115B、115C 第1、第2、第3直動ガイドユニット
120 第2軸支持ユニット
130 歯車箱支持ユニット
140A、140B 第1、第2車軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9