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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】センサー付きプロテクター
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20231012BHJP
   B60J 10/24 20160101ALI20231012BHJP
   B60J 10/273 20160101ALI20231012BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20231012BHJP
   E05F 15/44 20150101ALI20231012BHJP
【FI】
B60J5/00 D
B60J10/24
B60J10/273
B60J10/86
E05F15/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019187133
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062664
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 博
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌博
(72)【発明者】
【氏名】松本 美智彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 航
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097807(JP,A)
【文献】特開2015-174633(JP,A)
【文献】特許第6424074(JP,B2)
【文献】特開2002-235480(JP,A)
【文献】特開2010-001715(JP,A)
【文献】特開2016-097809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 10/24
B60J 10/273
B60J 10/86
E05F 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に移動して開口部を開閉するスライドドアの前縁部に前方に向かって突出形成されたフランジに取付けられる車内側側壁,車外側側壁,及び両側壁を連結する連結壁からなる断面略U字形状で上下方向に延びる取付基部と、その取付基部の連結部に対して前方に延びるように一体化され、芯線がそれぞれ埋設された2つの導電部が空間部を介して設けられたチューブ状の中空部を備えるとともに、
前記中空部は、前記取付基部に対してその車内側端部及び車外側端部が互いに間をあけて連結され、
前記2つの導電部は、前記取付基部側に設けられた中空下部導電部と、前記中空部の先端側に設けられた中空上部導電部からなり、前記空間部の車内側端部が前記中空部の車内側外殻内面に連設されるような形状でかつ配置され、
前記スライドドアの閉時に前記スライドドアと前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知するセンサー付きプロテクターであって、
前記中空部の前記車内側外殻の形状を、前記中空部の先端側から前記車内側端部まで途中最も車内側に位置する車内側湾曲頂部を通って、車内側に向けて膨出するように湾曲させるとともに、前記車内側端部の肉厚を前記先端の肉厚より厚くし、
断面形状において、前記取付基部に連結された前記中空部の車内側端部の最も車内側に位置する連結点から前記フランジの突出方向に平行な基準線を引くとともに、前記車体の後方向車内側から前記連結点に向かって、乗降者に装着された突起物の予想侵入ラインを引いたときに、
前記取付基部の前記車内側壁の前記連結壁寄りから、前記予想侵入ラインに干渉する突出部を設けたことを特徴とするセンサー付きプロテクター。
【請求項2】
前記突出部を、取付基部の前記車内側壁の全体を車内側に張り出した部分としたことを特徴とする請求項1に記載のセンサー付きプロテクター。
【請求項3】
前記予想侵入ラインは、前記連結点から前記車体の後方向車内側に向かって、前記基準線から25(度)°の角度で傾斜した傾斜線と一致することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサー付きプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン車やワンボックスカーなどのように車体の前後に移動するスライドドアと開口部との間に指等の異物が挟み込まれると対応する信号を出力して異物の存在を検知するセンサーが組込まれたセンサー付きプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、ワゴン車などのようにスライドドア1によって車体の開口部を開閉する自動車においては、センサー付きプロテクター10が取付けられている。
【0003】
これは、スライドドア1の前端面から車体前側に向けて突設され、図7に示すように、車両上下に延びている。
センサー付きプロテクター10は、図8及び図9に示すように、スライドドア1の前端面に取付けられる、車内側壁11a,車外側壁11b及び連結壁11cからなる断面略U字形状の取付基部11とそれに一体成形された中空部12を備え、中空部12には、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
中空部12の外周面は、断面略玉子形状(断面略楕円形状)の外殻12aであり、その外殻12aの両端部12b,12cが取付基部11の左右に間をあけて連結されている。
なお、センサー付きプロテクター10の下部では、取付基部11の車内側壁11a側に断面C字形状のチャンネル部13が一体成形されていて、感圧センサーSに接続されるワイヤーハーネスWを保持している。また、取付基部11の内側には複数の保持リップ14,14が設けられ、また取付基部11には剛性をアップさせるために断面略U字形状の芯材15が埋設されている。さらに取付基部11の車外側壁11bにはシールリップ16が設けられている。
【0004】
センサー(感圧センサー)Sは、車両上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線)31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体(導電部)34,35に埋設されるようにして中空部12内に固定されてなるもので、スライドドア1の閉時にスライドドア1とボディ側開口部との間に異物が挟み込まれると中空部12が部分的に押圧されて潰れ、ゴム様弾性体34,35が接触して2本の芯線31,32が短絡するようになっている。そして、この電気信号の変化が、センサー付きプロテクター10の下側端末部分で2本の芯線31,32に結線されたリード線36,36に接続された制御装置40に伝えられることによって異物の存在が検知される。なおリード線36,36は絶縁体で被覆された状態でワイヤーハーネスWによって束ねられているが、先端は被覆部37,37からむき出した裸線となっている。
【0005】
また、ゴム様弾性体(導電部)34,35は、凹形状の中空上部導電部34と凸形状の中空下部導電部35とからなり、センサー(感圧センサー)Sによる検知範囲を広げるために、空間部33を断面略逆「V」字状で断面略同一幅として前記「V」字状の開口部が取付基部11側に向くような形状でかつ配置されている。
【0006】
そして、中空部12の内周面において、2つの導電部34,35がない部分、すなわち空間部33の両端部33a,33bが連設される部分では強度的に弱くなり、人の乗降車時にカギ等の突起物が強く当接すると破損したり破れたりする恐れがある。中空部12が破れてしまうと雨水や洗車水などが浸入してセンサー機能が失われ、その結果、スライドドア1の開閉が誤動作するといった不具体が懸念されるので、中空部12の外殻12aの外周面の全体、あるいは局所的部分を、中空部12よりも高い硬度の被覆層80で覆っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6424074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8及び図9で示したセンサー付きプロテクター10においては、新たに被覆層80を設ける必要があるので押出成形の生産性が低下する。
また、被覆層80を設けた場合、設けないものと比較して中空部12が撓みにくくなるので、センサー(感圧センサー)Sによる検知感度の精度が低下する場合があった。
【0009】
一方、中空部12の破損や破れの生じを検証した結果、特に乗降者が降車するときに車内側から中空部12の車内側端部12bに、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物が強く当たることが繰り返されることで中空部12が損傷するケースが多いことが判明した。
これにより、中空部12の車内側から侵入する突起物に限定して中空部12の破損等の発生を有効的に防止する手段が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、異物の当接によって破損等が生じることを有効的に防止するとともに検知能力の高いセンサー付きプロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のセンサー付きプロテクターは、車体の前後方向に移動して開口部を開閉するスライドドア(1)の前縁部に前方に向かって突出形成されたフランジ(F)に取付けられる車内側壁(11a),車外側壁(11b),及び両側壁(11a,11b)を連結する連結壁(11c)からなる断面略U字形状で上下方向に延びる取付基部(11)と、その取付基部(11)の連結壁(11c)に対して前方に延びるように一体化され、芯線(31,32)がそれぞれ埋設された2つの導電部(34,35,54,55)が空間部(33,53)を介して設けられたチューブ状の中空部(12,52)を備えるとともに、
前記中空部(12,52)は、前記取付基部(11)に対してその車内側端部(12b,52b)及び車外側端部(12c,52c)が互いに間をあけて連結され、
前記2つの導電部(34,35,54,55)は、前記取付基部(11)側に設けられた中空下部導電部(35,55)と、前記中空部(12,52)の先端側に設けられた中空上部導電部(34,54)からなり、前記空間部(33,53)の車内側端部(33a,53a)が前記中空部(12,52)の車内側外殻(12a,52a)内面に連設されるような形状でかつ配置され、
前記スライドドア(1)の閉時に前記スライドドア(1)と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部(12,52)が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知するセンサー付きプロテクター(10,50)であって、
前記中空部(52)の前記車内側外殻(52a)の形状を、前記中空部(52)の先端(P)側から前記車内側端部(52b)まで途中最も車内側に位置する車内側湾曲頂部(52d)を通って、車内側に向けて膨出するように湾曲させるとともに、前記車内側端部(52b)の肉厚を前記先端(P)の肉厚より厚くし、
断面形状において、前記取付基部(11)に連結された前記中空部(12,52)の車内側端部(12b,52b)の最も車内側に位置する連結点(Q)から前記フランジ(F)の突出方向に平行な基準線(LB)を引くとともに、前記車体の後方向車内側から前記連結点(Q)に向かって、乗降者に装着された突起物の予想侵入ライン(LS)を引いたときに、
前記取付基部(11)の前記車内側壁(11a)の前記連結壁(11c)寄りから、前記予想侵入ライン(LS)に干渉する突出部(100)を設けたことを特徴とする。
なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0012】
また本発明は、前記突出部(100)を、取付基部(11)の車内側壁(11a)の全体を車内側に張り出した部分(101)としたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記予想侵入ライン(LS)は、前記連結点(Q)から前記車体の後方向車内側に向かって、前記基準線(LB)から25(度)°の角度で傾斜した傾斜線と一致することを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センサー付きプロテクターの取付基部の車内側壁の連結壁寄りから、乗降者に装着されたカギ等の突起物の予想侵入ラインに干渉する突出部を設けたので、突起物は、ダイレクトに中空部の車内側端部の最も車内側に位置する連結点に当接することはなく、仮に中空部に当接する場合には連結点よりも中空部の先端に寄った位置となる。
すなわち、突起物が連結点に当接した場合には、中空部自体が変形する量は極めて少ないので中空部は突起物からの衝撃をそのまま受けてしまうが、突起物が突出部に当たって連結点よりも中空部の先端に寄った位置に当接すると、中空部が車外側に向けて変形することによって衝撃を逃がすことができ、これにより、中空部自体が破損等することを抑制することができる。
【0016】
また、突起物が中空部の連結点ではなく連結点から少し離れて中空部の先端に寄った位置に当たるので、連結点に干渉したときに比べて中空部と突起物間の摩擦力が弱くなる。すなわち、中空部と突起物間の摩擦力が弱化することにより摩耗量が低減されるので、突起物による中空部の破損等を防止することができる。
このように、取付基部の車内側壁に突出部を設けるだけで異物の当接によって破損等が生じることを有効的に防止することができる。しかも従来例で示したように、特に中空部を覆う被覆層を設ける必要はないので、中空部が車両の前後方向に撓みにくくなることに起因してセンサー(感圧センサー)による検知感度の精度が低下することもない。
したがって、検知能力の高いセンサー付きプロテクターが得られる。
【0017】
また、突出部については、取付基部の車内側壁に局所的に設けたものだけでなく、取付基部の車内側壁の全体を車内側に張り出した部分として、この張り出した部分が予想侵入ラインに干渉するようにすることもできる。
【0018】
また、予想侵入ラインを連結点から車体の後方向車内側に向かって、基準線から25(度)°の角度で傾斜した傾斜線とすることで、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物に特化した予想侵入ライン上に突出部を設けることで、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物が強く当たることにより中空部が損傷するケースを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクターを示す図7のA-A線拡大断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る他のセンサー付きプロテクターを示す図7のA-A線拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る他のセンサー付きプロテクターを示す図7のA-A線拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る他のセンサー付きプロテクターを示す図7のA-A線拡大断面図である。
図5図4のセンサー付きプロテクターの要部を示す拡大断面図である。
図6】スライドドアによって開閉する自動車の側面図である。
図7図6に示すセンサー付きプロテクターを示す側面図である。
図8】従来例に係るセンサー付きプロテクターを示す図7のA-A線拡大断面図である。
図9】従来例に係るセンサー付きプロテクターを示す図7のB-B線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター10について説明する。ここで、前後とは車両前後方向を示し、上下とは車両における場合は車両上下方向であり、センサー付きプロテクター10においては、中空部12側を上、取付基部11側を下としている。
本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター10は、図6で示したようなスライドドア1によって車体の開口部を開閉する自動車におけるそのスライドドア1の前端面に車体前側に向けて突出するように取付けられ、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられたものである。センサー付きプロテクター10は、図7で示した部分では、従来例で示したものと同一の構成であるが、図7のA-A線拡大断面としてセンサー(感圧センサー)Sが取付けられた部分を示した図1は、従来例で示した図8のものに対して突出部100を新たに設けた点が相違するものである。従来例と同一部分には同一符号を付した。
【0021】
このセンサー付きプロテクター10は、図1に示すように、スライドドア1に形成されたフランジ(F)に直接、取付けられる車内側壁11a,車外側壁11b及び連結壁11cからなる断面略U字形状の取付基部11と、その取付基部11に一体成形され、スライドドア1の閉時にスライドドア1の前端面とその前端面が対向するボディ側開口部との間に指等の異物があるとその異物に弾接するチューブ状の中空部12と、その中空部12に組み込まれ異物を検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sを備え、センサー(感圧センサー)Sは、車両上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線)31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部32内に固定されてなる。この導電性のゴム様弾性体34,35はEPDMなどの合成ゴムが主体となった導電ゴムからなり、センサーSは非導電性の中空部12と一体成形されている。
【0022】
取付基部11の内側には複数の保持リップ14,14が設けられ、また取付基部11には剛性をアップさせるために断面略U字形状の芯材15が埋設されている。さらに取付基部11の車外側壁11bにはシールリップ16が設けられている。
【0023】
中空部12は、取付基部11の連結壁11cに一体成形され、先端側が車両前方に向かって突出するようにされている。
中空部12の連結壁11cに連結される両端部(車内側端部)12b,(車外側端部)12cが取付基部11に対して互いに間をあけて連結されている。
本実施形態では、中空部12の車内側端部12bが取付基部11の連結壁11cと車内側壁11aが連設された角部に連結され、中空部12の車外側端部12cが取付基部11の連結壁11cと車内側壁11bが連設された角部から車内側に少し間をあけた(寄った)位置、本実施形態では、断面形状において取付基部11を車内外に2等分する線より車外側に寄せた位置に連結されている。
【0024】
導電性のゴム様弾性体34,35は、中空部12内において取付基部11側に設けられた中空下部導電部35と、同じく中空部12内において先端側に設けられた中空上部導電部34からなる導電部であり、中空上部導電部34の中央には芯線31が埋設され、中空下部導電部35の中央には芯線32が埋設されている。一般に導電性のゴム様弾性体34,35は内部に気泡の無いソリッド材が用いられる。
【0025】
中空上部導電部34及び中空下部導電部35の形状、及び中空部12内における中空上部導電部34及び中空下部導電部35の配置によって両導電部34,35間に設けられる空間部33の断面形状が定められ、ここでは、断面形状が略逆「V」字状に形成されている。その「V」字状の開口部が取付基部11側を向くとともに「V」字状の車内側端部33a及び車外側端部33bが中空部12の外殻12aの内面にそれぞれ連設されるようにしている。
なお、空間部33の車外側端部33bの一部は、取付基部11の連結壁11cにも直接連設されるようにしてもよい。
【0026】
中空下部導電部35の断面形状は略山形状で底辺が取付基部11の連結壁11cに接していて、また中空上部導電部34の断面形状は略三日月形状で中空上部導電部34の下部両端部は、中空下部導電部35の頂部の位置よりも取付基部11側に寄っていて、僅かな撓みであっても両導電部34,35が容易に接触するようにして、接点のすれ違いを防止している。さらに、中空部12及び中空部12に設けられる2つの導電部34,35及び空間部33の断面形状については車内側方向と車外側方向に左右半分に仕切る対称軸に左右略対称で、その対称軸上に芯線31,32が位置するようにしている。一般に導電性のゴム様弾性体34,35は内部に気泡の無いソリッド材が用いられる。
【0027】
また、センサー付きプロテクター10の取付基部11と中空部12は、例えば、EPDMなどの合成ゴムやTPO,TPSといった熱可塑性エラストマーからなる非導電性のゴム様弾性体で押出成形された押出成形部を構成するもので、車両における上下端末部分では型成形され外形が整えられている。なお、センサー付きプロテクター10の中空部12は、柔軟性を必要とすることから、発泡したスポンジ材が用いられることもある。また取付基部11も同様に発泡したスポンジ材が用いられることがある。
【0028】
そして、センサー付きプロテクター10の断面形状において、取付基部11の車内側壁11aの連結壁11c寄りの位置から車内側に向けて突出する突出部100を設けている。
突出部100の高さは、取付基部11に連結された中空部12の車内側端部12bの最も車内側に位置する連結点QからフランジFの突出方向に平行な基準線LBを引くとともに、車体の後方向車内側から連結点Qに向かって、乗降者に装着されたカギ等の突起物の予想侵入ラインLSを引いたときに、この予想侵入ラインLSに干渉する高さ、すなわち予想侵入ラインLSを越えて車内側に向けて突出する高さに設定している。突出部100の端部(上下両側面)は傾斜面で形成されている。
【0029】
ここで、乗降者に装着されたカギ等の突起物の予想侵入ラインLSは、中空部12の破損や破れの生じを解析したところ、特に乗降者が降車するときに車内側から中空部12の車内側端部12bの最も車内側に位置する連結点Qに、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物が強く当たることにより中空部12が損傷するケースが多いことがデータから判明したので、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物に限定してこの突起物の連結点Qに対する侵入ラインを検証した結果得たものである。なお、突起物とはカギに限定されない。
本実施形態では、乗降者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物の予想侵入ラインLSは、基準線LBから25(度)°の角度で車内側に傾斜した傾斜線と一致するものであった。
【0030】
このように、突出部100は、予想侵入ラインLSに干渉するように設けられているので、乗者のズボンのべルトといった腰周りに装着されたカギ等の突起物は、ダイレクトに中空部12の車内側端部12bの最も車内側に位置する連結点Qに当接することはなく、仮に中空部12に当接する場合には連結点Qよりも中空部12の先端Pに寄った位置となる。
突起物が連結点Qに当接した場合には、中空部12自体が変形する量は極めて少ないので中空部12は突起物からの衝撃をそのまま受けてしまうが、突起物が連結点Qよりも中空部12の先端Pに寄った位置になると、中空部12が車外側に向けて変形することによって衝撃を逃がすことができ、これにより、中空部12自体が破損等することを抑制することができる。
【0031】
また、突起物が中空部12の連結点Qではなく連結点Qから少し離れて中空部12の先端Pに寄った位置に当たるので、連結点Qに干渉したときに比べて中空部12と突起物間の摩擦力が弱くなる。
すなわち、中空部12と突起物間の摩擦力が弱化することにより摩耗量が低減されるので、突起物による中空部12の破損等を防止することができる。
【0032】
本実施形態では、中空部12を材質硬度70度のものとして荷重が上がりすぎない範囲内で高くしたものを使用した。
さらに、耐摩耗性の高い塗料を使用して、中空部12の全外表面から突出部100に至るまで連続して塗装を施した。
【0033】
なお、図示は省略するが、中空部12及びセンサーSが一体成形されて取付基部11が別体成形されている構成であってもよい。
さらに本実施形態では、取付基部11をその内側に複数の保持リップ14,14が設けられ、断面略U字形状の芯材15が埋設されているものとしたが、このタイプの取付基部11であっても保持リップ14が一つであってもよいし、芯材15が埋設されないものでもよい。
【0034】
また本実施形態では、突出部100を取付基部11の車内側壁11aの連結壁11c寄りに設けたが、予想侵入ラインLSに干渉するものであればよいので、突出部100を局所的に設けるものではなく、図2に示すように、取付基部11の車内側壁11aの全体を車内側に張り出すように形成し、その張り出した部分101を突出部100として予想侵入ラインLSに干渉するようにしてもよい。
【0035】
また、突出部100の端部(上下両側面)については傾斜させたが、図3に示すように、取付基部11の連結壁11cから突出部100の端部(上側面)にかけて曲面部を徐変させて外表面を滑らかにした状態で突出部100を設けるようにしてもよい。
【0036】
さらに、センサー付きプロテクター10の中空部12についてはその外周面を、断面略玉子形状(断面略楕円形状)の外殻12aで構成するようにしたが、図4に示すように、センサー付きプロテクター50の中空部52を、いわゆるパンタグラフのように車両前後方向に収縮する断面形状にしてもよい。
【0037】
これは、中空部52の外殻52aの形状については、その車内側を、中空部52の先端側から車内側端部52bまで途中最も車内側に位置する車内側湾曲頂部52dを通って、車内側に向けて膨出するように湾曲させるとともに、車外側についても、中空部52の先端側から車外側端部52cまで途中最も車外側に位置する車外側湾曲頂部52eを通って、車外側に向けて膨出するように湾曲させている。
車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eは曲面状で、中空部52の先端Pから車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eまでの曲面の長さは、車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eから車内側端部52b及び車外側端部52cまでの曲面の長さよりも長くなるようにしている。
【0038】
より具体的には、図5に示すように、中空部の先端Pから、車内側湾曲頂部52dまでの、高さ方向距離L4よりも、車内側湾曲頂部52dから、車内側端部の最も車内側位置Qまでの、高さ方向距離L5を短くするとともに、中空部の先端Pから、車外側湾曲頂部52eまでの、高さ方向距離L6よりも、車外側湾曲頂部52eから、車外側端部の最も車外側位置Rまでの、高さ方向距離L7を短くしている。
さらに具体的には、図5に示すように、L5はL4の0.7倍程度で、L7はL6の0.3倍程度の長さになるように短く設定している。
【0039】
また、中空部52の外殻52aの肉厚を、中空部52の先端側から車内側湾曲頂部52dまで徐々に増加させ、同様に中空部52の先端部から車外側湾曲頂部52eまで徐々に増加させている。中空部52の外殻52aの車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eの肉厚tを、中空部52の先端側の肉厚mの2倍以上、ここでは2倍にしている。
また、車内側湾曲頂部52dから車内側端部52bまでの肉厚については、さらに徐々に増加させることもできるが、ここでは同じ肉厚、すなわち車内側湾曲頂部52dから車内側端部52bまで一定の肉厚tとしている。同様に、車外側湾曲頂部52eから車外側端部52cまでの肉厚についても、さらに徐々に増加させることもできるが、ここでは同じ肉厚、すなわち車外側湾曲頂部52eから車外側端部52cまで一定の肉厚tとしている。
【0040】
また、特に、中空下部導電部55の断面形状については、釣鐘形状としている。そして、空間部53の幅を、断面形状の中央における車両前後方向(中空部52において上下方向)の幅Xから、車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eにかけて幅を徐々に大きくし、車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eで最大幅Yとし、車内側湾曲頂部52d及び車外側湾曲頂部52eから取付基部11側にかけて徐々に小さくしている。
このとき、空間部53の車内側端部53a及び車外側端部53bは、曲面状で中空部52の外殻52aの内面にそれぞれ連設されている。
なお、中空上部導電部54の断面形状は、三日月形状で中空上部導電部54の下部54aの位置は、中空下部導電部55の頂部55aの位置よりも取付基部11側に寄っていて、僅かな撓みであっても両導電部54,55が容易に接触するようにして、接点のすれ違いを防止している。
【0041】
これにより、図5に示すように、断面形状において中空部52の車内外方向の間隔は、車内側湾曲頂部52dと車外側湾曲頂部52eの間隔L1が最大であり、車内側端部52bの最も車内側位置と車外側端部52cの最も車外側位置との間隔L2よりも大きい。
なお、車内側端部52bの最も車内側位置と車外側端部52cの最も車外側位置との間隔L2は、空間部53の車内外方向の最大間隔L3よりも大きい
【0042】
このような断面形状をした中空部52であれば、乗降車時にカギ等の突起物が中空部52の連結点Qではなく連結点Qから少し離れて中空部52の先端Pに寄った位置に当たったとしても、その当接部分の肉厚は厚肉化されているので、当接によって中空部52が破損したり破れたりすることは著しく防止される。
【0043】
ここで、図1に示したように突出部100を設けたセンサー付きプロテクター10(本発明品)と突出部100を設けていないセンサー付きプロテクター10(従来品)について摩耗試験を行って両者を比較した。
これは、センサー付きプロテクター10を25(度)°傾けた状態でフランジに組付け、鍵の先端を30Nの重さで垂直方向に押さえながら100mm/secで水平に移動させてセンサー付きプロテクター10に当接させ、これを何回当接させることによって中空部12に破れが発生したかを観察した。
その結果、従来品に比較して本発明品は約2倍の回数まで破れることはなく、従来品よりもかなり耐摩耗性がよいことを確認することができた。
【符号の説明】
【0044】
1 スライドドア
10 センサー付きプロテクター
11 取付基部
11a 車内側壁
11b 車外側壁
11c 連結壁
12 中空部
12a 外殻
12b 中空部の車内側端部
12c 中空部の車外側端部
13 チャンネル部
14 保持リップ
15 芯材
16 シールリップ
31,32 芯線
33 空間部
33a 空間部の車内側端部
33b 空間部の車外側端部
34 ゴム様弾性体(中空上部導電部)
35 ゴム様弾性体(中空下部導電部)
36 リード線
37 被覆部
40 制御装置
50 センサー付きプロテクター
52 中空部
52a 外殻
52b 中空部の車内側端部
52c 中空部の車外側端部
52d 中空部の車内側湾曲頂部
52e 中空部の車外側湾曲頂部
53 空間部
53a 空間部の車内側端部
53b 空間部の車外側端部
54 中空上部導電部
54a 中空上部導電部の下部
55 中空下部導電部
55a 中空下部導電部の頂部
80 被覆層
100 突出部
101 張り出した部分
F フランジ
L1 車内側湾曲頂部と車外側湾曲頂部の間隔
L2 車内側端部の最も車内側位置と車外側端部の最も車外側位置との間隔
L3 空間部の車内外方向の最大間隔
L4 中空部の先端から、車内側湾曲頂部までの、高さ方向距離
L5 車内側湾曲頂部から、車内側端部の最も車内側位置までの、高さ方向距離
L6 中空部の先端から、車外側湾曲頂部までの、高さ方向距離
L7 車外側湾曲頂部から、車外側端部の最も車外側位置までの、高さ方向距離
LB 基準線
LS 予想侵入ライン
P 中空部の先端
Q 連結点(車内側端部の最も車内側位置)
R 車外側端部の最も車外側位置
S センサー(感圧センサー)
W ワイヤーハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9