IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社岡村製作所の特許一覧

<>
  • 特許-座及び椅子 図1
  • 特許-座及び椅子 図2
  • 特許-座及び椅子 図3
  • 特許-座及び椅子 図4
  • 特許-座及び椅子 図5
  • 特許-座及び椅子 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】座及び椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/14 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A47C7/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190273
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062174
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】ハーフォード アレキザンダー
(72)【発明者】
【氏名】馬場 菜摘
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013305(JP,A)
【文献】特開2013-022080(JP,A)
【文献】特開2014-046128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方を向く荷重支持面を有するとともに、外周部分が支持構造体に下方から支持される支持板を備え、
前記支持板は、左右方向の中心に対して両側に位置する部分に変形容易部を備え、
前記変形容易部には、前記支持板を上方から見て上下方向に交差する方向のうち、左右方向に沿う成分を含む方向に延びるスリット列が前後方向に間隔をあけて複数配列され、
前記スリット列における左右方向の最内端部及び最外端部のうち、前方に位置する端部を基準点とすると、
前記変形容易部は、前後方向で隣り合う前記スリット列のうち、第1スリット列の前記基準点における前記第1スリット列の接線方向と左右方向とのなす第1角度よりも、前記第1スリット列の前方に位置する第2スリット列の前記基準点における前記第2スリット列の接線方向と左右方向とのなす第2角度の方が大きい角度変化領域を含み、
前記スリット列のうち、前記角度変化領域に位置する前記スリット列は、左右方向において前記基準点に向かうに従い前方に向けて湾曲しながら延在し、
前記角度変化領域に位置する前記スリット列の曲率半径は、前方に位置する前記スリット列ほど小さくなっている座。
【請求項2】
前記変形容易部は、前記角度変化領域の後方において、前記基準点における前記スリット列の接線方向と左右方向とのなす第3角度が、前後方向で隣り合う前記スリット列間で等しい角度一定領域を含み、
前記角度一定領域に位置する前記スリット列は、左右方向において前記基準点に向かうに従い前方に向けて直線状に延在している請求項に記載の座。
【請求項3】
前記スリット列は、前記スリット列の延在方向に第1間隔をあけて配列された複数のスリットを備え、
前後方向で隣り合う前記スリット列は、前記第1間隔が前記延在方向にずれて配置されている請求項1又は請求項に記載の座。
【請求項4】
前記支持板における左右方向の中央部は、前後方向に延びるとともに、スリットが形成されていないブランク部を構成し、
前記変形容易部は、前記ブランク部の左右両側に位置している請求項1から請求項の何れか1項に記載の座。
【請求項5】
前記スリット列は、
前記ブランク部に対して第2間隔をあけてスリットが形成された第3スリット列と、
前記第3スリット列に対して前後方向の両側に位置し、前記第3スリット列の前記スリットに対して前記ブランク部に接近した位置にスリットが配置された第4スリット列と、を含んでいる請求項に記載の座。
【請求項6】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の座と、
前記座を下方から支持する前記支持構造体と、を備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座及び椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の着座感を向上させる構成として、例えば下記特許文献1に記載された構成が知られている。下記特許文献1において、椅子の座を構成するシェルは、合成樹脂によって板状に形成されている。シェルには、左右方向の中心線に沿った箇所に位置したセンタースリット群と、左右両端部に位置したサイドスリット群と、センタースリット群とサイドスリット群との間に配置したメインスリット群と、が形成されている。センタースリット群とサイドスリット群とは、前後方向に延びる多数の単位スリットから成っている。メインスリット群は、左右方向の外側に向かうに従い前方に延びる単位スリットが前後方向に間隔をあけて形成された構成である。また、シェルのうち、センタースリット群の前側には、スリットが存在しない略三角形の空白部分が残されている。
【0003】
これにより、シェルのうちメインスリット群の箇所に、臀部が支持されるように着座すると、メインスリット群の箇所は、下方に沈み込むとともに、単位スリットが前後方向に広がるように弾性変形する。また、センタースリット群及びサイドスリット群の箇所は、下方に沈み込むとともに単位スリットが幅方向(左右方向)に広がるように弾性変形する。したがって、下記特許文献1の座によれば、シェルが臀部の形状に合わせて弾性変形することで、着座感を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-93250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、シェルのうち、メインスリット群の箇所と、空白部分と、での剛性差が大きく、メインスリット群の箇所と空白部分とで着座荷重に伴う変形量の差が大きくなる。そのため、メインスリット群の箇所と、空白部分と、の境界に、着座荷重による負荷が集中する可能性があった。また、メインスリット群の箇所と空白部分とで着座荷重に伴う変形量の差が大きいと、メインスリット群の箇所と、空白部分と、の境界において、着座者に対して底付感を与える可能性もある。
【0006】
そこで、本発明は、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる座及び椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る座は、上方を向く荷重支持面を有するとともに、外周部分が支持構造体に下方から支持される支持板を備え、前記支持板は、左右方向の中心に対して両側に位置する部分に変形容易部を備え、前記変形容易部には、前記支持板を上方から見て上下方向に交差する方向のうち、左右方向に沿う成分を含む方向に延びるスリット列が前後方向に間隔をあけて複数配列され、前記スリット列における左右方向の最内端部及び最外端部のうち、前方に位置する端部を基準点とすると、前記変形容易部は、前後方向で隣り合う前記スリット列のうち、第1スリット列の前記基準点における前記第1スリット列の接線方向と左右方向とのなす第1角度よりも、前記第1スリット列の前方に位置する第2スリット列の前記基準点における前記第2スリット列の接線方向と左右方向とのなす第2角度の方が大きい角度変化領域を含み、前記スリット列のうち、前記角度変化領域に位置する前記スリット列は、左右方向において前記基準点に向かうに従い前方に向けて湾曲しながら延在し、前記角度変化領域に位置する前記スリット列の曲率半径は、前方に位置する前記スリット列ほど小さくなっている。
【0008】
本態様によれば、支持板の変形容易部には、支持板を上方から見て上下方向に交差する方向のうち、左右方向に沿う成分を含む方向に延びるスリット列が前後方向に間隔をあけて複数配列されている。これにより、支持板のうち変形容易部に臀部が支持されるように着座すると、変形容易部は、隣り合うスリット列間に位置する帯状部分が下方に沈み込むとともに、各スリット列が延在方向に直交した方向に広がるように弾性変形する。これにより、変形容易部は、臀部の形状に合わせて弾性変形する。
特に、本態様では、角度変化領域において、第1スリット列の基準点における第1スリット列の接線方向と左右方向とのなす第1角度よりも、第1スリット列の前方に位置する第2スリット列の基準点における第2スリット列の接線方向と左右方向とのなす第2角度の方が大きい構成とした。
これにより、角度変化領域を構成するスリット列のうち、前方に位置するスリット列ほど前後方向の成分が大きくなる。そのため、角度変化領域に作用する着座荷重が徐々に前方に分散される。その結果、着座荷重に起因する負荷が、変形容易部と変形容易部の前方領域との境界部分に集中するのを抑制できる。また、角度変化領域において、隣り合うスリット列間に位置する帯状部分が前方に位置するものほど太くなる。これにより、角度変化領域では前方に向かうに従い剛性が高くなる傾向となる。その結果、変形容易部と変形容易部の前方領域との間で支持板の変形量が急激に変化するのを抑制できる。したがって、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる。
また、本態様によれば、角度変化領域に作用する荷重を角度変化領域の前方になめらかに分散し易い。これにより、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる。
【0010】
上記態様の座において、前記変形容易部は、前記角度変化領域の後方において、前記基準点における前記スリット列の接線方向と左右方向とのなす第3角度が、前後方向で隣り合う前記スリット列間で等しい角度一定領域を含み、前記角度一定領域に位置する前記スリット列は、左右方向において前記基準点に向かうに従い前方に向けて直線状に延在していてもよい。
本態様によれば、角度一定領域は、帯状部分の幅が変化しないため、着座荷重により下方に弾性変形し易い。これにより、着座感を良好に維持できる。
また、本態様によれば、変形容易部のうち、角度一定領域を構成するスリット列を直線状に形成することで、スリット列を容易に成形できる。これにより、スリット列の生技性を向上できる。
【0011】
上記態様の座において、前記スリット列は、前記スリット列の延在方向に第1間隔をあけて配列された複数のスリットを備え、前後方向で隣り合う前記スリット列は、前記第1間隔が前記延在方向にずれて配置されていてもよい。
本態様によれば、一のスリット列において、スリット間に位置する第1間隔は、一のスリット列に対して両側に位置する帯状部分同士を接続する接続部として機能する。すなわち、隣り合う帯状部分同士が接続部を介して接続されるので、変形容易部が過大に変形するのを抑制できる。しかも、接続部が隣り合うスリット列間でずれて配置されているので、変形容易部を着座荷重に応じて柔軟に変形させることができる。
【0012】
上記態様の座において、前記支持板における左右方向の中央部は、前後方向に延びるとともに、スリットが形成されていないブランク部を構成し、前記変形容易部は、前記ブランク部の左右両側に位置していてもよい。
本態様によれば、支持板の左右方向の中央部での剛性を高めることができる。これにより、支持板における左右方向の中央部が過大に変形するのを抑制でき、支持板の耐久性を向上させることができる。
例えば、支持板が樹脂材料の射出成形により成形される場合、本態様によれば、支持板の左右方向の中央部に、溶融した樹脂材料の合流部分、所謂ウェルドの発生することが抑制される。これにより、着座によって支持板の左右方向の中央部が下方に沈み込んだ際に、着座荷重による負荷が集中して支持板の経年劣化が早まること等を抑制できる。
【0013】
上記態様の座において、前記スリット列は、前記ブランク部に対して第2間隔をあけてスリットが形成された第3スリット列と、前記第3スリット列に対して前後方向の両側に位置し、前記第3スリットの前記スリットに対して前記ブランク部に接近した位置にスリットが配置された第4スリット列と、を含んでいてもよい。
本態様によれば、第3スリット列とブランク部との第2間隔は、第3スリット列に対して両側に位置する帯状部分同士を接続する接続部として機能する。すなわち、隣り合う帯状部分同士が接続部を介して接続されるので、変形容易部が過大に変形するのを抑制できる。しかも、第4スリット列の延在方向の最内に位置するスリットは、第3スリット列の延在方向の最内に位置するスリットよりもブランク部に接近している。これにより、変形容易部が過大に変形するのを抑制しつつ、変形容易部を着座荷重に応じて柔軟に変形させることができる。
【0014】
本態様に係る椅子は、上記何れかの態様に係る座と、前記座を下方から支持する支持構造体と、を備えている。
本態様によれば、着座感及び耐久性に優れた信頼性の高い椅子を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記各態様によれば、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る椅子の斜視図である。
図2】実施形態に係る座及び支持構造体の分解図である。
図3】実施形態に係るシェルの平面図である。
図4】実施形態に係るシェル右側部分の平面図である。
図5】変形例に係るシェルの平面図である。
図6】変形例に係るシェルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する各実施形態(及び変形例)において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。また、以下の説明における前後上下左右の方向は、着座者から見た方向を示している。
【0018】
[椅子1]
図1は、椅子1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る椅子1は、背凭れ2や座3が支持構造体4に支持されて構成されている。
【0019】
図2は、座3及び支持構造体4の分解斜視図である。
図2に示すように、支持構造体4は、左右一対の脚体10と、後側連結杆11と、前側フレーム12と、側部フレーム13と、を備えている。
各脚体10は、金属等からなるパイプ材が左右方向から見て(側面視)台形枠状に屈曲されて形成されている。具体的に、脚体10は、前脚21と、後脚22と、下側連結杆23と、上側連結杆24と、背凭れ支持部25と、を備えている。
【0020】
前脚21は、下方に向かうに従い漸次前方に向けて延在している。
下側連結杆23は、前脚21の下端部から後方に延在している。下側連結杆23は、接地キャップ26を介して床面F(図1参照)に接地される。
後脚22は、下側連結杆23の後端部から上方に延在している。本実施形態において、後脚22は、上方に向かうに従い前方に向けて傾斜している。
上側連結杆24は、前脚21の上端部から後方に延在している。
【0021】
背凭れ支持部25は、脚体10を構成するパイプ材のうち、上側連結杆24の後端部から上方に屈曲した部分、及び後脚22の上端部から上方に突出した部分同士が溶接等によって接合された構成である。
【0022】
後側連結杆11は、各脚体10における上側連結杆24の後端部同士を架け渡している。後側連結杆11は、上下方向から見て(平面視)後方に向けて凸の円弧状をなしている。後側連結杆11における左右両端部は、それぞれ対応する上側連結杆24に溶接等によって接合されている。
【0023】
前側フレーム12は、金属等の板材が左右方向に沿って延在する構成である。前側フレーム12は、各脚体10のうち、上側連結杆24と前脚21とがなす角部同士を架け渡している。前側フレーム12における左右両端部は、それぞれ対応する角部に溶接等によって接合されている。本実施形態において、前側フレーム12は、上側連結杆24と前脚21とがなす角部に倣って前方に向かうに従い下方に延在している。前側フレーム12には、上下方向に貫通する取付孔29が形成されている。なお、取付孔29は、前側フレーム12において、左右方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0024】
側部フレーム13は、各脚体10において、上側連結杆24から左右方向の内側(椅子1の中心に向かう側)に張り出している。側部フレーム13は、金属等の板材が前後方向に沿って延在する構成である。側部フレーム13は、左右方向の外側端部は、上側連結杆24に溶接等によって接合されている。なお、側部フレーム13は、前後両端縁において、上述した後側連結杆11や前側フレーム12に対しても溶接等によって接合されている。本実施形態において、後側連結杆11、前側フレーム12及び側部フレーム13は、平面視で矩形枠状の座支持部34を構成している。
側部フレーム13には、上下方向に貫通する取付孔36が形成されている。なお、取付孔36は、前後方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0025】
<背凭れ2>
図1に示すように、背凭れ2は、クッション材やメッシュ材等が設けられていないヌードシェルタイプである。背凭れ2は、背凭れ支持部25に支持されている。背凭れ2は、着座者の腰部や背部等を後方から支持する。本実施形態において、背凭れ2は、樹脂材料を射出成形することにより板状に形成されている。具体的に、背凭れ2は、平面視において後方に向けて凸の円弧状をなし、側面視において前方に向けて凸の円弧状をなしている。
【0026】
背凭れ2は、左右方向の両端部に形成された脚体収容部(不図示)内に、上述した背凭れ支持部25が各別に挿入されていることで支持構造体4に支持されている。なお、背凭れ支持部25は、脚体収容部内に収容された状態において、ビス等によって背凭れ2に固定されていてもよく、脚体収容部内に圧入されることで背凭れ2に固定されていてもよい。また、背凭れ2は、樹脂材料等により形成されたシェルが、クッション材やメッシュ材等で覆われた構成であってもよい。
【0027】
<座3>
図2に示すように、座3は、支持構造体4に下方から支持されている。具体的に、座3は、樹脂材料等により形成されたシェル(支持板)50と、シェル50上に設けられたクッション材5と、クッション材5を覆う外皮6と、を備えている。座3は、着座荷重に応じて弾性変形可能に構成されている。
【0028】
シェル50は、樹脂材料を射出成形することにより一体形成されている。シェル50は、座本体51と、連結部52と、を備えている。
座本体51は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。座本体51は、着座時において、着座者の臀部や大腿部等を下方から支持する。すなわち、座本体51の上面は、クッション材5及び外皮6を介して着座荷重が作用する荷重支持面53を構成する。具体的に、座本体51は、主支持部55と、前側連続部56と、を備えている。
【0029】
主支持部55は、上述した座支持部34を上方から覆っている。主支持部55は、平面視矩形状に形成されている。主支持部55は、前後方向に直交する断面視、及び左右方向に直交する断面視で下方に向けて凸の円弧状をなしている。主支持部55の後端部には、後方凹部60が形成されている。後方凹部60は、主支持部55の下面から上方に窪むとともに、主支持部55の左右方向の全域に亘って延在している。上述した後側連結杆11の上端部は、後方凹部60内に収容された状態で、後方凹部60の内面に下方から近接又は当接している。
【0030】
前側連続部56は、主支持部55の前端縁に連なっている。具体的に、前側連続部56は、側面視において、上側連結杆24及び前脚21がなす角部に倣って前方に向かうに従い下方に湾曲しながら延在している。前側連続部56の下面(裏面)には、前後方向に延びる前側リブ61が形成されている。前側リブ61は、左右方向で対向してリブ対62を構成している。リブ対62は、リブ対62を構成する前側リブ61同士の間隔よりも広い間隔をあけて左右方向に並んでいる。各前側リブ61の下端縁は、上述した前側フレーム12に近接又は当接している。但し、前側リブ61の形状やピッチ等は、適宜変更が可能である。
【0031】
座本体51における左右方向の両端部には、側方凹部67が形成されている。側方凹部67は、下方及び左右方向の外側に向けて開放されている。側方凹部67は、座本体51(前側連続部56及び主支持部55)において、前後方向の全体に亘って延在している。上側連結杆24及び前脚21がなす角部から、上側連結杆24及び背凭れ支持部25がなす角部の前側近傍に至る部分は、側方凹部67内に収容された状態で、側方凹部67の内面に下方から近接又は当接している。
【0032】
連結部52は、側方連結部70と、前側連結部71と、を備えている。
側方連結部70は、主支持部55の下面において、左右方向の両端部にそれぞれ形成されている。具体的に、側方連結部70は、主支持部55の下面において、側部フレーム13と平面視で重なる位置に前後方向に延在している。なお、各側方連結部70は、左右対称な構成である。したがって、以下では、左右一対の側方連結部70のうち、右側の側方連結部70を例にして説明する。
【0033】
側方連結部70は、ナット保持部80と、リブ81と、を備えている。
ナット保持部80は、主支持部55の下面のうち、前後方向の中央部及び後端部に配置されている。各ナット保持部80は、何れも同様の構成である。したがって、以下では、中央部に位置するナット保持部80を例にして説明する。
【0034】
ナット保持部80は、左右方向の外側(右側)に開口する箱型に形成されている。ナット保持部80の底壁88には、底壁88を上下方向に貫通する開口部89が形成されている。開口部89は、平面視において、左右方向の外側に向けて開口するC字状に形成されている。
【0035】
リブ81は、主支持部55から下方に突出している。具体的に、リブ81は、接続リブ100と、延長リブ101と、を備えている。
接続リブ100は、前後方向で隣り合うナット保持部80同士を接続している。
延長リブ101は、前後方向の中央部に位置するナット保持部80から前方に向けて延在している。
【0036】
前側連結部71は、ナット保持部120と、リブ121と、を備えている。前側連結部71において、上述した側方連結部70と同様の構成については、適宜説明を省略する。
ナット保持部120は、上述したナット保持部80と同様に左右方向の外側に開口する箱型に形成されている。ナット保持部120の底壁128には、底壁128を上下方向に貫通する開口部129が形成されている。開口部129は、平面視において、左右方向の外側に向けて開口するC字状に形成されている。
【0037】
リブ121は、主支持部55から下方に突出している。具体的に、リブ121は、接続リブ125と、補助リブ126と、を備えている。
接続リブ125は、前後方向に間隔をあけた状態で左右方向に互いに平行に延在している。各接続リブ125は、隣り合うナット保持部120同士を左右方向で接続している。
補助リブ126は、前後方向に延在するとともに、各接続リブ125同士の間を接続している。補助リブ126は、左右方向に間隔をあけて複数配設されている。図示の例において、補助リブ126は、上述した前側リブ61と同一ピッチで配設されている。
【0038】
上述したナット保持部80,120には、ナット(不図示)が挿入されている。シェル50は、開口部89,129と取付孔36,29とが平面視で重なり合うように座支持部34上に積置されている。シェル50は、取付孔36,29及び開口部89,129内にシェル50の下方から挿入されたボルト(不図示)が、ナット保持部80,120内でナットに螺着されることで、座支持部34に固定されている。すなわち、シェル50の外周部分は、支持構造体4に下方から支持されている。
【0039】
<主支持部55>
図3は、実施形態に係るシェル50の平面図である。
図3に示すように、主支持部55は、右側ブランク部161aと、左側ブランク部161bと、前側ブランク部161cと、後側ブランク部161dと、中央ブランク部161eと、変形容易部160と、を備えている。
各ブランク部161は、後述するスリット151,171等の加工が施されていない領域である。すなわち、各ブランク部161の上面は、全体が荷重支持面53を構成する平滑面とされている。
【0040】
右側ブランク部161aは、主支持部55の右端部において、前後方向に沿って延在している。本実施形態において、右側ブランク部161aは、主支持部55における前後方向の全域に亘って延在している。
左側ブランク部161bは、主支持部55の左端部において、前後方向に沿って延在している。本実施形態において、左側ブランク部161bは、主支持部55における前後方向の全域に亘って延在している。
前側ブランク部161cは、主支持部55の前端部において、左右方向に沿って延在している。本実施形態において、前側ブランク部161cは、主支持部55における左右方向の全域に亘って延在している。
後側ブランク部161dは、主支持部55の後端部において、左右方向に沿って延在している。本実施形態において、後側ブランク部161dは、主支持部55における左右方向の全域に亘って延在している。
中央ブランク部161eは、主支持部55における左右方向の中央部において、前後方向に延在している。中央ブランク部161eは、前側ブランク部161c及び後側ブランク部161d間を架け渡している。中央ブランク部161eの前部は、平面視で前方に向かうに従い左右方向の幅が漸次拡大している。中央ブランク部161eは、左右対称な構成である。
【0041】
変形容易部160は、中央ブランク部161eに対して左右方向の両側に位置している。すなわち、左右両側の変形容易部160のうち、右側の変形容易部160は、中央ブランク部161e、前側ブランク部161c、後側ブランク部161d及び右側ブランク部161aで囲まれている。左側の変形容易部は、中央ブランク部161e、前側ブランク部161c、後側ブランク部161d及び左側ブランク部161bで囲まれている。
各変形容易部160は、左右対称な構成である。したがって、以下では、左右一対の変形容易部160のうち、右側の変形容易部160を例にして説明する。
【0042】
図4は、実施形態に係るシェル50右側部分の平面図である。
図4に示すように、変形容易部160は、主支持部55のうち、ブランク部161よりも弾性変形がし易い領域である。すなわち、上述したブランク部161は、変形容易部160に比べて剛性が高くなっている。変形容易部160は、角度一定領域163と、角度変化領域162と、を備えている。
ここで、前側ブランク部161cおよび中央ブランク部161eと、変形容易部160との境界部分を内側と定義する。一方、後側ブランク部161dと右側ブランク部161aと、変形容易部160との境界部分を外側と定義する。
【0043】
角度一定領域163は、主支持部55のうち、左右方向の中央寄り、かつ後部に設定された平面視で三角形状の領域である。角度一定領域163は、複数のスリット列150が前後方向に間隔をあけて配列されて構成されている。スリット列150は、少なくとも一つのスリット151と、スリット151の延長線上に位置する接続部154と、が直線状に並んで構成されている。
【0044】
各スリット列150は、平面視において、左右方向の外側から内側に向かうに従い前方に直線状に、かつ互いに平行に延在している。したがって、各スリット列150における延在方向(以下、単に延在方向という。)の長さは、前方に位置するものほど長くなっている。本実施形態において、前後方向で隣り合うスリット列150間に位置する部分は、延在方向に沿って延びる帯状部分164を構成している。帯状部分164は、着座荷重に伴い上下方向に弾性変形可能に構成されている。本実施形態において、帯状部分164の幅(延在方向に直交する方向での幅)は、延在方向の全体にわたって一様になっている。
【0045】
スリット151は、左右方向の外側から内側に向かうに従い前方に向けて直線状に形成されている。延在方向において、各スリット151は、スリット列150全体の長さに比べて短くなっている。隣り合うスリット列150間において、スリット151の両端部の位置は、延在方向で異なっている。スリット151の両端部は、丸みを帯びた形状となっている。
【0046】
角度一定領域163を構成するスリット列150は、スリット151が一つの単スリット列152と、スリット151が複数(例えば、2つ)の複スリット列153と、を備えている。図示の例では、角度一定領域163を構成するスリット列150のうち、後方に位置する複数列(例えば、後方から数えて1列目から4列目)が単スリット列152を構成し、前方に位置する複数列(例えば、後方から数えて5列目から7列目)が複スリット列153を構成している。
なお、隣り合うスリット列150または隣り合う後述のスリット列170の前後関係は、次のように定義される。中央ブランク部161eとスリット列150,170との境界部分、右側ブランク部161aとスリット列150,170との境界部分のうち、少なくとも一方の境界部分において、帯状部分164または後述の帯状部分180に対して前方に位置するものを前方のスリット列150,170とし、帯状部分164,180に対して後方に位置するものを後方のスリット列150,170とする。
図示の例において、各スリット151は、異なるスリット列150間、及び同一のスリット列150間それぞれにおいて、延在方向の長さが異なっている。但し、単スリット列152及び複スリット列153は、スリット列150の長さやスリット151自体の長さに応じて適宜変更が可能である。また、複スリット列153は、3つ以上のスリット151で構成されていてもよい。
【0047】
接続部154は、各スリット列150のうち、スリット151が形成されていない部分である。接続部154は、隣り合う帯状部分164同士を接続している。接続部154は、一のスリット列150を構成するスリット151のうち、延在方向の最外に位置するスリット151に対して延在方向の外側に位置する外側接続部154aと、一のスリット列150に対して前方に位置する他のスリット列150を構成するスリット151のうち、延在方向の最内に位置するスリット151に対して延在方向の内側に位置する内側接続部154bと、を備えている。内側接続部154b及び外側接続部154aは、各スリット列150間で交互に形成されている。内側接続部154bは、ブランク部161(中央ブランク部161e)に連なっている。
【0048】
上述した複スリット列153において、延在方向で隣り合うスリット151間には、中央接続部154cが形成されている。すなわち、複スリット列153を構成するスリット151同士は、延在方向において第1間隔190をあけて配置されている。中央接続部154cは、隣り合う帯状部分164の間を延在方向の中央部で接続している。本実施形態では、隣り合うスリット列150間において、各接続部154は延在方向で互いにずれた位置に設定されている。但し、隣り合うスリット列150間において、各接続部154は、延在方向で同位置に設定されていてもよい。なお、各接続部154における延在方向の長さは、適宜変更が可能である。
【0049】
角度変化領域162は、主支持部55のうち、角度一定領域163の前方に設定された領域である。角度変化領域162は、複数のスリット列170が前後方向に間隔をあけて配列されて構成されている。スリット列170は、少なくとも一つのスリット171と、スリット171の延長線上に位置する接続部174と、が円弧状に並んで構成されている。
【0050】
各スリット列170は、平面視で左右方向の内側に向けて突の湾曲状に形成されている。図示の例において、各スリット列170の大部分(例えば、後方から数えて8列目から18列目)は、平面視において、左右方向の外側から内側に向かうに従い前方に延在している。各スリット列170の残り(例えば、後方から数えて19列目から22列目)は、左右方向の外側から内側に向かいつつ前方に延在し、最内端部を過ぎると左右方向の内側から外側に向かいつつ前方に延在している。本実施形態において、各スリット列170の曲率半径は、前方に位置するスリット列170ほど小さくなっている。また、同一のスリット列170の曲率半径は、全体に亘って一様になっている。各スリット列170における延在方向(以下、単に延在方向という。)の長さは、各スリット列170のうち前後方向の中間に位置するスリット列170が最も長く、中間に位置するスリット列170から後方又は前方に離間するスリット列170ほど徐々に短くなっている。図示の例において、スリット列170のうち、後方から数えて13列目から15列目のいずれか1列のスリット列170が、最も長い最長スリット列170aである。
【0051】
本実施形態において、前後方向で隣り合うスリット列170間に位置する部分は、延在方向に沿って延びる帯状部分180を構成している。帯状部分180は、着座荷重に伴い上下方向に弾性変形可能に構成されている。帯状部分180の幅(延在方向に直交する幅)は、前方に向かうに従って、漸次太くなっている。
【0052】
スリット171は、平面視で湾曲状に形成されている。延在方向において、各スリット171は、スリット列170全体の長さに比べて短くなっている。隣り合うスリット列170において、スリット171の両端部の位置は、延在方向で異なっている。スリット171の両端部は、丸みを帯びた形状となっている。
【0053】
角度変化領域162を構成するスリット列170は、スリット171が一つの単スリット列172と、スリット171が複数(例えば、2つ又は3つ)の複スリット列173と、を備えている。図示の例では、角度変化領域162を構成するスリット列170のうち、後方に位置する複数列(例えば、後方から数えて8列目から19列目、21列目)が複スリット列173を構成し、前方に位置する複数列(例えば、後方から数えて20列目、22列目)が単スリット列172を構成している。図示の例において、各スリット171は、異なるスリット列170間、及び同一のスリット列170間それぞれにおいて、延在方向の長さが異なっている。但し、単スリット列172及び複スリット列173は、スリット列170の長さやスリット171自体の長さに応じて適宜変更が可能である。また、複スリット列173は、4つ以上のスリット171で構成されていてもよい。
【0054】
接続部174は、各スリット列170のうち、スリット171が形成されていない部分である。接続部174は、隣り合う帯状部分180同士を接続している。接続部174は、一のスリット列170を構成するスリット171のうち、延在方向の最外に位置するスリット171に対して延在方向の外側に位置する外側接続部174aと、一のスリット列170に対して前方に位置する他のスリット列170を構成するスリット171のうち、延在方向の最内に位置するスリット171に対して延在方向の内側に位置する内側接続部174bと、を備えている。内側接続部174bは、ブランク部161(中央ブランク部161e又は前側ブランク部161c)に連なっている。内側接続部174b及び外側接続部174aは、各スリット列170間で交互に形成されている。
【0055】
上述した複スリット列173において、延在方向で隣り合うスリット171間には、中央接続部174cが形成されている。すなわち、複スリット列173を構成するスリット171同士は、延在方向において第1間隔190をあけて配置されている。中央接続部174cは、隣り合う帯状部分180の間を延在方向の中央部で接続している。本実施形態では、隣り合うスリット列170間において、各接続部174は延在方向で互いにずれた位置に設定されている。但し、隣り合うスリット列170間において、各接続部174は、延在方向で同位置に設定されていてもよい。なお、各接続部174における延在方向の長さは、適宜変更が可能である。
【0056】
ここで、変形容易部160を構成するスリット列150,170における左右方向の最内端部は、最外端部より前方に位置している。スリット列150,170の最内端部を基準点185とする。角度一定領域163に位置するスリット列150は、基準点185と前端部とが一致している。角度変化領域162に位置するスリット列170のうち、後方に位置するスリット列170は、基準点185と前端部とが一致している。角度変化領域162に位置するスリット列170のうち、前方に位置するスリット列170は、基準点185が前端部よりも左右方向の内側に位置している。
【0057】
このとき、角度変化領域162に位置するスリット列170のうち、前後方向に隣り合う2つのスリット列170に着目し、後方のスリット列170を第1スリット列186、前方のスリット列170を第2スリット列187とする。このとき、第1スリット列186の基準点185における接線方向と左右方向との成す第1角度A1よりも、第2スリット列187の基準点185における接線方向と左右方向との成す第2角度A2の方が大きく設定されている。
これにより、スリット列170間に位置する帯状部分180の延在方向は、前方に位置するものほど前後方向に沿う成分が大きくなる。帯状部分180の幅は、前方に向かうに従って太くなる。なお、第1角度A1と第2角度A2との角度差は、適宜変更が可能である。
【0058】
角度一定領域163において、基準点185におけるスリット列150の接線方向と左右方向とのなす第3角度A3が、前後方向で隣り合うスリット列150間で等しい。
【0059】
変形容易部160を構成するスリット列150,170のうち、中央ブランク部161eに連なるスリット列150,170に着目する。前後方向に隣り合う2つのスリット列150,170のうち、最後方のスリット列150から偶数番目を第3スリット列188とし、最後方のスリット列150から奇数番目を第4スリット列189とする。第3スリット列188は、内側接続部154b,174bを備えている。すなわち、第3スリット列188の延在方向の最内に位置するスリット151,171は、中央ブランク部161eに第2間隔191をあけて配置されている。
但し、前後方向に隣り合う2つのスリット列150,170のうち、最後方のスリット列150から奇数番目を第3スリット列188とし、最後方のスリット列150から偶数番目を第4スリット列189としてもよい。
【0060】
変形容易部160を構成するスリット列150,170のうち、前側ブランク部161cに連なるスリット列170に着目する。前後方向に隣り合う2つのスリット列170のうち、最後方のスリット列150から偶数番目を第5スリット列192とし、最後方のスリット列150から奇数番目を第6スリット列193とする。第5スリット列192は、内側接続部174bを備えている。すなわち、第5スリット列192の延在方向の最内に位置するスリット171は、前側ブランク部161cに第3間隔194をあけて配置されている。
この場合、隣り合う第6スリット列193を構成するスリット171のうち、最内に位置するスリット171同士の間には、2つの帯状部分180と内側接続部174bとが連なる架け渡し部分181が形成されている。架け渡し部分181は、第5スリット列192を構成するスリット171のうち、最内に位置するスリット171と前側ブランク部161cとの間を架け渡している。架け渡し部分181は、前後方向に沿って延びている。
但し、前後方向に隣り合う2つのスリット列170のうち、最後方のスリット列150から奇数番目を第5スリット列192とし、最後方のスリット列150から偶数番目を第6スリット列193としてもよい。
【0061】
このように、本実施形態では、座3は、シェル50とクッション材5と外皮6とを有している。シェル50は、樹脂材料により形成されている。シェル50の外周部分は、支持構造体4に下方から支持されている。クッション材5は、シェル50上に設けられている。外皮6は、クッション材5を覆っている。
この構成によれば、シェル50は、クッション材5及び外皮6を介して着座されると、外周部分を支点として下方に弾性変形する。これにより、荷重支持面53は、臀部の形状及び着座荷重に応じて弾性変形する。したがって、着座者は良好な着座感を得られる。
本実施形態では、変形容易部160には、シェル50を上方から見て上下方向に交差する方向のうち、左右方向に沿う成分を含む方向に延びるスリット列150,170が前後方向に間隔をあけて複数配列されている。
この構成によれば、シェル50の変形容易部160に臀部が支持されるように着座すると、変形容易部160は、隣り合うスリット列150,170間に位置する帯状部分164,180が下方に沈み込むとともに、各スリット列150,170が延在方向に直交した方向に広がるように弾性変形する。これにより、変形容易部160は、臀部の形状に合わせて弾性変形する。
本実施形態では、角度変化領域162において、第1スリット列186の基準点185における第1スリット列186の接線方向と左右方向とのなす第1角度A1よりも、第1スリット列186の前方に位置する第2スリット列187の基準点185における第2スリット列187の接線方向と左右方向とのなす第2角度A2の方が大きい構成とした。
これにより、角度変化領域162を構成するスリット列170のうち、前方に位置するスリット列170ほど後方向への成分が大きくなる。そのため、角度変化領域162に作用する着座荷重が徐々に前方に分散される。その結果、着座荷重に起因する負荷が、変形容易部160と前側ブランク部161cとの境界部分に集中するのを抑制できる。また、角度変化領域162において、隣り合うスリット列170間に位置する帯状部分180の幅が前方に位置するものほど太くなる。これにより、角度変化領域162では前方に向かうに従い剛性が高くなる傾向となる。その結果、変形容易部160と前側ブランク部161cとの間でシェル50の変形量が急激に変化するのを抑制できる。したがって、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる。
【0062】
本実施形態では、スリット列150,170のうち、角度変化領域162に位置するスリット列170は、左右方向において基準点185に向かうに従い前方に向けて湾曲しながら延在している構成とした。
この構成によれば、角度変化領域162に作用する荷重を角度変化領域162の前方になめらかに分散し易い。これにより、良好な着座感を与えた上で、着座荷重による負荷を分散させ、耐久性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態では、角度一定領域163において、基準点185におけるスリット列150の接線方向と左右方向とのなす第3角度A3が、前後方向で隣り合うスリット列150間で等しい。角度一定領域163に位置するスリット列150は、左右方向において基準点185に向かうに従い前方に向けて直線状に延在している。
この構成によれば、角度一定領域163は、帯状部分164の幅が変化しないため、着座荷重により下方に弾性変形し易い。これにより、着座感を良好に支持できる。
また、この構成によれば、変形容易部160のうち、角度一定領域163を構成するスリット列150を直線状に形成することで、スリット列150を容易に成形できる。これにより、スリット列150の生技性を向上できる。
【0064】
本実施形態では、スリット列150,170は、スリット列150,170の延在方向に第1間隔190をあけて配列された複数のスリット151,171を備え、前後方向で隣り合うスリット列150,170は、第1間隔190が延在方向にずれて配置されている構成とした。
この構成によれば、一のスリット列150,170において、スリット151,171間に位置する第1間隔190は、一のスリット列150,170に対して両側に位置する帯状部分164,180同士を接続する中央接続部174cとして機能する。すなわち、隣り合う帯状部分164,180同士が中央接続部174cを介して接続されるので、変形容易部160が過大に変形するのを抑制できる。しかも、中央接続部174cが隣り合うスリット列150間でずれて配置されているので、変形容易部160を着座荷重に応じて柔軟に変形させることができる。
【0065】
本実施形態では、シェル50における左右方向の中央部は、前後方向に延びるとともに、スリット151,171が形成されていない中央ブランク部161eを構成している。変形容易部160は、中央ブランク部161eの左右両側に位置している。
この構成によれば、シェル50の左右方向の中央部での剛性を高めることができる。これにより、シェル50における左右方向の中央部が過大に変形するのを抑制でき、シェル50の耐久性を向上させることができる。
例えば、シェル50が樹脂材料の射出成形により成形される場合、この構成によれば、シェル50の左右方向の中央部に、溶融した樹脂材料の合流部分、所謂ウェルドの発生することが抑制される。これにより、着座によってシェル50の左右方向の中央部が下方に沈み込んだ際に、着座荷重による負荷が集中してシェル50の経年劣化が早まること等を抑制できる。
【0066】
本実施形態では、スリット列150,170は、中央ブランク部161eに対して第2間隔191をあけてスリット151,171が形成された第3スリット列188と、第3スリット列188に対して前後方向の両側に位置し、第3スリット列188のスリット151,171に対して中央ブランク部161eに接近した位置にスリット151,171が配置された第4スリット列189と、を含んでいる構成とした。
この構成によれば、第3スリット列188と中央ブランク部161eとの第2間隔191は、第3スリット列188に対して両側に位置する帯状部分164,180同士を接続する内側接続部174bとして機能する。すなわち、隣り合う帯状部分164,180同士が内側接続部174bを介して接続されるので、変形容易部160が過大に変形するのを抑制できる。しかも、第4スリット列189の延在方向の最内に位置するスリット151,171は、第3スリット列188の延在方向の最内に位置するスリット151,171よりも中央ブランク部161eに接近している。これにより、変形容易部160が過大に変形するのを抑制しつつ、変形容易部160を着座荷重に応じて柔軟に変形させることができる。
【0067】
本実施形態では、隣り合う第6スリット列193を構成するスリット171のうち、最内に位置するスリット171同士の間には、2つの帯状部分180と内側接続部174bとが連なる架け渡し部分181が形成されている。架け渡し部分181は、第5スリット列192を構成するスリット171のうち、最内に位置するスリット171と前側ブランク部161cとの間を架け渡している。
この構成によれば、架け渡し部分181の幅は、帯状部分180の幅よりも太くなっている。これにより、変形容易部160のうち、架け渡し部分181が設けられた領域(以下、架け渡し領域とする。)は、架け渡し領域の後方の領域と比較して、スリット151,171の密度が低下する。これにより、架け渡し領域が過大に変形するのを抑制しつつ、架け渡し領域を着座荷重に応じて柔軟に変形させることができる。したがって、変形容易部160と前側ブランク部161cとの間に生じる、着座荷重に伴う変形量の差を減少させることができる。これにより、着座感を向上できる。
また、架け渡し部分181は、前後方向に沿って延びている。これにより、架け渡し部分181の前後方向両端を支点として、下方に弾性変形する。したがって、変形容易部160と前側ブランク部161cとの間に生じる、着座荷重に伴う変形量の差をよりなめらかに減少させることができる。これにより、着座感をより向上できる。
【0068】
本実施形態では、スリット151,171の両端部は、丸みを帯びた形状となっているため、スリット151,171の両端部に応力が集中して破断することを防止できる。
【0069】
本実施形態の椅子1は、上述した座3を備えているため、着座感及び耐久性に優れた信頼性の高い椅子1を提供することができる。
【0070】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0071】
図5は、変形例に係るシェル50の平面図である。
図6は、変形例に係るシェル50の平面図である。
上述した実施形態では、スリット列150,170は、シェル50の左右方向の外側から内側に向かうに従って、前方に延びている構成について説明したが、図5または図6に示すように、スリット列150,170は、シェル50の左右方向の内側から外側に向かうに従って、前方に延びている構成等であってもよい。この場合、変形容易部160を構成するスリット列150,170における左右方向の最外端部は、最内端部より前方に位置しているため、最外端部を基準点185とする。
図5に示す例では、角度変化領域162に位置する各スリット列170は、平面視で左右方向の外側に向けて突の湾曲状に形成されている。
図6に示す例では、角度変化領域162に位置する各スリット列170は、平面視で左右方向の内側に向けて突の湾曲状に形成されている。前方から数えて1列目から3列目のスリット列170は、中央ブランク部161eに接近するスリット171を有している。
【0072】
上述した実施形態では、角度一定領域163のスリット列150は、左右方向において基準点185に向かうに従い前方に向けて直線状に延在している構成について説明したが、スリット列150は、全て左右方向において基準点185に向かうに従い前方に向けて湾曲しながら延在している構成であってもよい。
上述した実施形態では、角度変化領域162に位置するスリット列170は、左右方向において基準点185に向かうに従い前方に向けて湾曲しながら延在している構成について説明したが、変形容易部160を構成する全てのスリット列150,170は、直線状に形成されている構成等であってもよい。
上述した実施形態では、変形容易部160は、角度変化領域162と、角度一定領域163と、を有している構成について説明したが、変形容易部160は、角度変化領域162から構成されていてもよい。
上述した実施形態では、角度一定領域163は、後方から数えて1列目から7列目のスリット列150が設けられた領域であると説明したが、角度一定領域163の領域は、状況に応じて適宜選択可能である。
【0073】
上述した実施形態では、シェル50の上面にクッション材5及び外皮6を有する座3を例にして説明したが、この構成に限られない。座3は、ヌードシェルタイプであってもよく、メッシュ材等が張り渡された構成等であってもよい。
上述した実施形態では、支持構造体4がパイプ材等により枠状に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。支持構造体4は、例えば4本の脚柱が座3の各角部をそれぞれ支持する構成であってもよく、1本の脚柱の上端部から座支持部が張り出している構成等であってもよい。
【0074】
上述した実施形態では、変形容易部160を構成するスリット列150,170が左右方向の内側又は外側に向かうに従い前方に延びる構成(スリット列150,170の延在方向が前後方向及び左右方向の成分を有する構成)について説明したが、この構成に限られない。スリット列150,170は、少なくとも左右方向に沿う成分を有していればよい。すなわち、スリット列150,170は、延在方向が前後方向に一致していなければよい。
【0075】
上述した実施形態では、スリット列150,170は、単スリット列152,172と複スリット列153,173とを有していると説明したが、スリット列150,170は、単スリット列152,172から構成されていてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、スリット列150,170は、接続部154,174を有していると説明したが、スリット列150,170は、接続部154,174を有していなくてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、中央ブランク部161eとスリット列150との間及び前側ブランク部161cとスリット列170との間に第2間隔191が設けられていると説明したが、第2間隔191が設けられていなくてもよい。
【0078】
上述した実施形態では、後述するスリット151,171等の加工が施されていないブランク部161が設けられていると説明したが、ブランク部161が設けられていなくてもよい。
なお、スリット列150,170のピッチや本数、変形容易部160の範囲は、状況に応じて適宜変更可能である。
【0079】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…椅子
3…座
4…支持構造体
50…シェル(支持板)
53…荷重支持面
150,170…スリット列
151,171…スリット
160…変形容易部
161e…中央ブランク部(ブランク部)
162…角度変化領域
163…角度一定領域
185…基準点
186…第1スリット列
187…第2スリット列
188…第3スリット列
189…第4スリット列
190…第1間隔
191…第2間隔
A1…第1角度
A2…第2角度
A3…第3角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6