(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】芯材および構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20231012BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20231012BHJP
E04C 2/36 20060101ALI20231012BHJP
B64C 1/00 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
B32B3/12 B
B32B5/28 Z
E04C2/36 A
B64C1/00 B
(21)【出願番号】P 2019205877
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000252067
【氏名又は名称】鈴木工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 米太
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-262771(JP,A)
【文献】特開2008-212787(JP,A)
【文献】特開2001-182151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04C 2/36
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の板状部材の長辺側に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込みを有する櫛歯状をなす複数の平面部材を有し、
前記櫛歯状をなす複数の平面部材は、
複数のプリプレグが積層された炭素繊維強化プラスチックにより構成されるとともに、
一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みが等間隔に形成された片櫛歯状をなす複数の第一の平面部材と、
一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みと、他方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みとが、それぞれ等間隔に半周期ずれて形成された両櫛歯状をなす第二の平面部材と、を備え、
前記複数の平面部材が互いに交差するように前記切り込み同士が嵌め合わされることで、前記複数の平面部材によって、六角筒状の複数の第一筒部と三角筒状の複数の第二筒部とが形成されていることを特徴とする芯材。
【請求項2】
前記複数の平面部材は、60°の角度で交差させて嵌め合わされていることを特徴とする請求項1に記載の芯材。
【請求項3】
前記切り込みの長さは、前記板状部材の短辺の長さの半分よりも長いことを特徴とする請求項1
または2に記載の芯材。
【請求項4】
前記切り込みの幅は、前記平面部材を嵌め合わせた状態において、前記切り込みの部分に隙間が形成される幅に設定されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の芯材。
【請求項5】
前記炭素繊維強化プラスチックの繊維の方向は、前記平面部材の短辺に平行な方向であることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の芯材。
【請求項6】
前記炭素繊維強化プラスチックは、クロスプライ積層板であることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の芯材。
【請求項7】
六角筒状の複数の第一筒部と三角筒状の複数の第二筒部とを有する芯材の製造方法であって、
長方形の板状部材の長辺側に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込みを有する櫛歯状をなす複数の平面部材で
あって、複数のプリプレグが積層された炭素繊維強化プラスチックにより構成されるとともに、一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みが等間隔に形成された片櫛歯状をなす複数の第一の平面部材、および一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みと、他方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みとが、それぞれ等間隔に半周期ずれて形成された両櫛歯状をなす第二の平面部材を備える複数の平面部材を準備する工程と、
前記複数の平面部材が互いに交差するように前記切り込み同士を嵌め合わる工程と、を含むことを特徴とする芯材の製造方法。
【請求項8】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の芯材と、
前記芯材の両面に接着された板状部材と、を備えることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状の芯材、および、その芯材を用いた構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で強固な芯材として、六角形状のセル(六角筒)の集合体であるハニカムコアが知られている。ハニカムコアは、多くの構造体の芯材として用いられている。例えば、ハニカムコアを芯材とし、ハニカムコアの両面に板状部材を貼り付けることで、パネル状の構造体とすることができる。このような構造体は、例えば建築物の壁、航空機の機体、大型の加工装置のステージに使用される。
紙、アルミ、プラスチックといった素材によってハニカムコアを構成する場合、当該素材の両面に線状に接着剤を塗布して積層していき、ブロック状になった積層体を必要な幅で断裁し拡げることで、ハニカムコアを製造することができる。
【0003】
しかしながら、ハニカムコアを、比剛性が高く、かつ密度および熱膨張係数が小さいといった特性を有する炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)により構成しようとした場合、上記の製法を採用することはできない。
例えば特許文献1には、円筒形の中空部を有する円筒状のCFRP、もしくは円筒形の中空部を有する六角筒状のCFRPを、多数並べて接着剤で接合した構造の芯材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、CFRPを円筒状もしくは六角筒状に成形し、成形したCFRPを多数並べて接着する必要があるため、製造工程が複雑である。また、特別な専用の加工装置や組み立て装置が必要となり、その分コストが嵩む。
そこで、本発明は、簡易的に作成可能なハニカム状の芯材およびその芯材を用いた構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る芯材の一態様は、長方形の板状部材の長辺側に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込みを有する櫛歯状をなす複数の平面部材を有し、前記複数の平面部材が互いに交差するように前記切り込み同士が嵌め合わされることで、前記複数の平面部材によって、六角筒状の複数の第一筒部と三角筒状の複数の第二筒部とが形成されている。
このように、櫛歯状をなす平面部材同士を切り込みの部分で交差させて組み合わせただけの簡易な構成のハニカム状の芯材とすることできる。したがって、専用の加工装置や組み立て装置を必要とすることなく、簡易的に芯材を作成可能である。また、平面部材が二重になる部分(壁の厚さが二倍になる部分)とそうでない部分(平面部材が一枚である部分)とが混在しないため、芯材の厚さ方向に対して直交する面内における機械的特性および熱的特性を等しくすることができる。そのため、温度変化等による芯材のゆがみを抑制することができる。
【0007】
また、上記の芯材において、前記複数の平面部材は、60°の角度で交差させて嵌め合わされていてもよい。
この場合、第一の筒部を正六角形状の六角筒部、第二の筒部を正三角形状の三角筒部とすることができる。したがって、安定性に優れた芯材とすることができる。
【0008】
さらに、上記の芯材において、前記櫛歯状をなす複数の平面部材は、一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みが等間隔に形成された片櫛歯状をなす複数の第一の平面部材と、一方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みと、他方の前記長辺側に開口する複数の前記切り込みとが、それぞれ等間隔に半周期ずれて形成された両櫛歯状をなす第二の平面部材と、を備えていてもよい。
この場合、二種類の平面部材だけでハニカム状の芯材を構成することができる。
【0009】
また、上記の芯材において、前記切り込みの長さは、前記板状部材の短辺の長さの半分よりも長くてもよい。
この場合、平面部材同士を嵌め合わせた状態において、切り込み部分に隙間を形成することができる。つまり、第一筒部および第二筒部の内部を密閉しないようにすることができる。これにより、筒部に通気性を持たせることができ、温度変化による筒部内部の圧力変化に起因して芯材にゆがみが生じることを抑制することができる。
【0010】
さらに、上記の芯材において、前記切り込みの幅は、前記平面部材を嵌め合わせた状態において、前記切り込みの部分に隙間が形成される幅に設定されていてもよい。
この場合にも、第一筒部および第二筒部の内部を密閉しないようにすることができ、温度変化による筒部内部の圧力変化に起因して芯材にゆがみが生じることを抑制することができる。また、平面部材同士を嵌め合わせた際に、平面部材が切り込み部分で曲がってしまうのを防止することができる。
【0011】
また、上記の芯材において、前記平面部材は、複数のプリプレグが積層された炭素繊維強化プラスチックにより構成されていてもよい。この場合、比剛性が高く、かつ密度および熱膨張係数が小さいといった炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の特性を有するハニカム状の芯材とすることができる。
また、上記の芯材において、炭素繊維強化プラスチックの繊維の方向は、平面部材の短辺に平行な方向であってもよい。この場合、温度変化に起因する、平面部材の短辺への変動(歪)を防ぐことができる。
さらにまた、上記の芯材において、前記炭素繊維強化プラスチックは、クロスプライ積層板であってもよい。この場合、疑似的に等方性を持たせることができる。
【0012】
また、本発明に係る芯材の製造方法の一態様は、六角筒状の複数の第一筒部と三角筒状の複数の第二筒部とを有する芯材の製造方法であって、長方形の板状部材の長辺側に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込みを有する櫛歯状をなす複数の平面部材を準備する工程と、前記複数の平面部材が互いに交差するように前記切り込み同士を嵌め合わる工程と、を含む。
このように、櫛歯状をなす平面部材同士を切り込みの部分で交差させて組み合わせるだけで、ハニカム状の芯材を製造することができる。つまり、専用の加工装置や組み立て装置を必要とすることなく、簡易的に芯材を作成可能である。
【0013】
また、本発明に係る構造体の一態様は、上記のいずれかの芯材と、前記芯材の両面に接着された板状部材と、を備える。
このように、簡易的に作成可能ハニカム状の芯材を用いた構造体とすることができる。上記の芯材は、厚さ方向に対して直交する面内における機械的特性および熱的特性が等しいため、温度変化等によるゆがみが抑制された構造体とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用の加工装置や組み立て装置を必要とすることなく、簡易的に作成可能なハニカム状の芯材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の芯材を構成する第一の平面板を示す図である。
【
図2】本実施形態の芯材を構成する第二の平面板を示す図である。
【
図3】芯材の組み立て工程(第一の工程)を説明する図である。
【
図4】芯材の組み立て工程(第二の工程)を説明する図である。
【
図5】芯材の組み立て工程(第三の工程)を説明する図である。
【
図9】従来のハニカムコアの壁厚が異なる部分を示す図である。
【
図10】本実施形態の芯材を用いた構造体を示す図である。
【
図11】本実施形態の芯材の別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、
図1および
図2に示す二種類の平面部材を組み合わせたハニカム状の芯材について説明する。
図1は、本実施形態におけるハニカム状の芯材を構成する平面部材である第一の平面板11を示す図である。また、
図2は、本実施形態におけるハニカム状の芯材を構成する平面部材である第二の平面板12を示す図である。
【0017】
図1に示すように、第一の平面板11は、長方形の板状部材の一方の長辺側(
図1では上縁側)に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込み11aを有する櫛歯状(片櫛歯状)をなす。切り込み11aは、長辺方向に一定の周期Lで等間隔に形成されている。切り込み11aの長さfは、短辺の長さgの半分よりもやや長い。また、切り込み11aの幅wは、第一の平面板11の板厚よりも広い。
【0018】
また、
図2に示すように、第二の平面板12は、長方形の板状部材の一方の長辺側(
図2では下縁側)に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込み12aと、長方形の板状部材の他方の長辺側(
図2では上縁側)に開口し、当該板状部材の短辺に対して平行な複数の切り込み12bとを有する櫛歯状(両櫛歯状)をなす。
この第二の平面板12においては、切り込み12aと切り込み12bとは、それぞれ長辺方向に一定の周期2Lで等間隔に形成されている。また、切り込み12aと切り込み12bとは、長辺方向に半周期Lだけずれて形成されている。つまり、切り込み12aと切り込み12bとは、長辺方向に一定の周期Lで交互に形成されている。切り込み12aの長さfおよび幅wは、第一の平面板11の切り込み11aの長さfおよび幅wと等しい。
【0019】
ここで、第一の平面板11と第二の平面板12との板厚は等しい。なお、第一の平面板11および第二の平面板12の板厚は、第一の平面板11および第二の平面板12がそれぞれ自立する厚さ(例えば、1mm以上)とすることができる。この第一の平面板11および第二の平面板12の板厚は、必要とされる強度に応じて適宜設定することができる。
【0020】
第一の平面板11および第二の平面板12は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成することができる。
CFRPは、複数のプリプレグが積層されて構成されている。プリプレグは、炭素繊維に、繊維の方向性を持たせたまま樹脂を含浸させたシート状の部材である。プリプレグを構成する樹脂は、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂である。なお、プリプレグを構成する樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0021】
CFRPは、型の中に、複数のプリプレグを繊維の方向が異なるように、必要数層(例えば、8層~24層)積層し、減圧下で120℃~130℃程度に加熱し、加圧(圧着)して硬化させることで成形される。プリプレグとしては、例えば、UD(UNI-DIRECTION)材を使用することができる。ここで、UD材とは繊維の方向が一方向にのみ延びている材料のことである。
【0022】
第一の平面板11および第二の平面板12を構成するCFRPは、プリプレグを繊維の方向が0°/90°の角度となるように積層したクロスプライ積層板とすることができる。より具体的には、当該CFRPは、積層が中央面に対して上下対称となっている対称クロスプライ積層板とすることができる。
図1および
図2において、繊維の方向は、上下方向と左右方向とである。
このようにして製作されたCFRPは、鉄やアルミなどの金属材料よりも低密度(即ち軽い)でありながら、高強度な材料となる。また、疑似的に等方性を持たせた材料となる。
【0023】
複数の第一の平面板11および複数の第二の平面板12を、互いに交差するように切り込み11aや切り込み12aの部分で嵌め合わせることで、複数の第一の平面板11および複数の第二の平面板12によって、六角筒状の複数の六角筒部(第一筒部)と、三角筒状の複数の三角筒部(第二筒部)とが形成されたハニカム状の芯材を作成することができる。
【0024】
以下、本実施形態における芯材の組み立て工程について詳細に説明する。
ここでは、平面板11、12を60°の角度で交差させて嵌め合わせ、正六角筒部と正三角筒部とが形成されたハニカム状の芯材を作成する場合について説明する。
(第一の工程)
図3に示すように、切り込み11aの開口を上に向けた第一の平面板11(以下、「第一の平面板11A」という。)を、平行に複数並べて配置する。このとき、複数の第一の平面板11Aは、当該第一の平面板11Aの平面に対して60°の方向に2L(切り込み11aの周期の2倍)の間隔で、平行に並べて配置する。
【0025】
(第二の工程)
図4に示すように、第一の工程において配置された複数の第一の平面板11Aに、複数の第二の平面板12を嵌め合わせる。具体的には、第一の平面板11Aの切り込み11aに対し、第二の平面板12の下側に開口する切り込み12aを合わせて差し込む。なお、第一の平面板11Aと第二の平面板12とを嵌め合わせた部分は接着しない。
複数の第二の平面板12は、当該第二の平面板12の平面に対して60°の方向に間隔2Lで、平行に並べて配置する。このとき、
図4に示す第一の平面板11Aと第二の平面板12との交差角度θは60°となる。
第二の平面板12が有する切り込み12aは、第一の平面板11Aの切り込み11aに対して、一個おきに差し込まれる。
【0026】
(第三の工程)
図5に示すように、第二の工程において組み付けられた第一の平面板11Aおよび第二の平面板12に、切り込み11aの開口を下に向けた第一の平面板11(以下、「第一の平面板11B」という。)を、複数枚嵌め合わせる。具体的には、第一の平面板11Aにおいて第二の平面板12が差し込まれていない切り込み11aと、第二の平面板12の上側に開口する切り込み12bとに対し、第一の平面板11Bの切り込み11aを合わせて差し込む。なお、第一の平面板11Aと第一の平面板11Bとを嵌め合わせた部分、および、第二の平面板12と第一の平面板11Bとを嵌め合わせた部分は、接着しない。
このとき、複数の第一の平面板11Bは、当該第一の平面板11Bの平面に対して60°の方向に間隔2Lで、平行に並べて配置される。また、
図5に示す第一の平面板11Aと第一の平面板11Bとの交差角度θ´、第二の平面板12と第一の平面板11Bとの交差角度θ″は、いずれも60°となる。
以上により、ハニカム状の芯材10が製造される。
【0027】
このように、
図1に示す第一の平面板11は、芯材10の組み立て工程のうち、第一の工程と第三の工程とで使用する。一方、
図2に示す第二の平面板12は、第二の工程のみで使用する。そのため、芯材10に使用される第一の平面板11の枚数は、第二の平面板12の枚数よりも多い。
【0028】
図6は、本実施形態のハニカム状の芯材10の平面図である。
この
図6に示すように、芯材10は、複数の第一の平面板11A、11Bと、複数の第二の平面板12と、によって構成されている。これら複数の平面板は、互いに60°の角度で交差するように切り込み同士が嵌め合わされており、芯材10には、第一の平面板11A、11Bおよび第二の平面板12によって、正六角形状の複数の六角筒部13と、正三角形状の複数の三角筒部14とが形成されている。
【0029】
通常のハニカムコアは、平面図としてみると、正六角形のセルの集合体であるが、本実施形態における芯材10は、正六角形のセルの周りに正三角形のセルが配置された形状となる。そのため、本実施形態の芯材10はハニカムコアとは呼べず、ハニカム状のコア(疑似的なハニカムコア)となるが、通常のハニカムコアと同様の強度を得ることができる。
また、本実施形態の芯材10は、CFRPにより構成されているため、比剛性が高く、かつ密度および熱膨張係数が小さいといったCFRPの特性を有するハニカム状の芯材とすることができる。
【0030】
通常のハニカムコアをCFRPにより構成する場合、
図7(a)に示すような六角筒状のCFRP部材101を、
図7(b)に示すように隙間なく並べて接着する製法が用いられる。しかしながら、この場合、CFRPを六角筒状に成形する工程や、成形したCFRP部材101を多数並べて接着する工程が必要であり、製造工程が複雑である。
【0031】
また、ハニカムコアを芯材とした構造体としてパネルや平面ステージを作る場合、芯材の上下に板状部材を貼り付ける。このとき、ハニカムコアの六角筒部の内部は、この板状部材により完全に密閉されることになる。板状部材の貼り付けには、一般に熱硬化型の接着剤が用いられ、貼り付け時にハニカムコアは加熱される。ハニカムコアの内部が密閉されていると、板状部材の貼り付けを終えて温度を下げた際に、密閉空間の内部と外部とで圧力差が生じ、構造体にひずみが生じてしまうおそれがある。さらに、構造体の使用時においても、環境温度の変化によって上記の圧力差が生じ、構造体にひずみが生じてしまうおそれがある。
六角筒部の内部を完全に密閉しないようにするためには、六角筒部を構成する壁に、外部に通じるリーク用の穴を形成する必要があり、製造工程がさらに複雑となる。
【0032】
また、通常のハニカムコアをCFRPにより構成する場合、
図8(a)に示すように等間隔でジグザグに折り曲げたCFRP部材102を、
図8(b)に示すように部分的に接着して六角筒部を形成する製法を用いることもできる。
しかしながら、平面状の部材を
図8(a)に示すように等間隔で折り曲げるためには、専用の加工装置が必要である。また、
図7(b)に示すハニカムコアと同様に、リーク用の穴を形成する必要がある。
【0033】
さらに、
図8(b)に示すようにCFRP部材102を貼り合わせて作成されたハニカムコアには、
図9に示すように、二枚の平面状の部材が貼り合わされて壁の厚さが二重になる部分(図中、丸印の部分)と、一枚の平面部材からなる部分と、が混在する。厚さが二重になる壁に対して平行な方向(リボン方向)を第一方向、第一方向に直交する方向を第二方向とした場合、このハニカムコアの強度、剛性、熱膨張率といった機械的特性および熱的特性は、第一方向と第二方向とで異なる。
このことは、ハニカムコアを、例えば精密な加工精度が求められる加工装置のステージの芯材として用いる場合において問題となる。ステージに加わる力や、装置が置かれている環境の温度変化等により、ステージ面に歪が生じるおそれがあるからである。
【0034】
これに対して、本実施形態の芯材10は、櫛歯状をなす平面板が互いに交差するように切り込み同士を嵌め合わせて構成するので、平面板が二重になる部分が存在しない。二枚の平面板が交差する部分(切り込みの部分)では、平面板同士は互いに接触はしているが、部分的な接触であり、また、二枚の平面板同士が接着剤等により強固に固定されているわけではない。
したがって、
図8(b)に示すハニカムコアのような機械的特性および熱的特性の異方性はなく、第一方向と第二方向とで機械的特性および熱的特性は等しい。つまり、温度変化等による歪の 発生を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態の芯材10は、櫛歯状をなす平面板の切り込み同士を嵌め合わせるだけで作成することができる。したがって、特別な専用の加工装置や組み立て装置が不要であり、その分、低コストで作成することができる。
さらに、平面板に形成される切り込みの長さfは、平面板の短辺の長さgの半分よりも長くすることができる。これにより、二枚の平面板が交差する部分(切り込みの部分)に隙間を形成することができる。この隙間は、上述したリーク用の穴の機能を有する。つまり、平面板を交差させるために形成した切り込みが、リーク用の穴の働きを兼用する。したがって、芯材10の上下に板状部材を貼り付けたとしても、芯材10の六角筒部13および三角筒部14の内部が、外部に対して密閉されることがない。そのため、改めてリーク用の穴を形成する工程が不要となり、芯材10の製作時間の短縮とコストダウンを図ることができる。
【0036】
また、平面板に形成される切り込みの幅wは、平面板の板厚よりも広くする。具体的には、切り込みの幅wは、二枚の平面板を所定の角度で嵌め合わせた状態において、切り込みの部分に隙間が形成される幅に設定する。本実施形態のように二枚の平面板を60°の角度で交差させて嵌め合わせる場合、切り込みの幅wは、二枚の平面板を60°の角度で交差して嵌め合わせることができる幅(平面板の板厚(設計値)dと平面板の交差角度θ=60°とに基づいて算出される値)に、所定のあそび(マージン)を設けた値とする。当該あそびは、平面板の板厚の製造上の寸法誤差を考慮して設定することが好ましい。
さらに、切り込みの幅wが広すぎると(あそびが大きすぎると)、平面板を組み付けた際の初期姿勢が斜めになってしまい、座屈しやすい芯材となってしまう。したがって、切り込みの幅wのあそびは、上記座屈を起こさない程度(初期姿勢が斜めにならない程度)に小さく設定することが好ましい。
【0037】
以上のように、本実施形態における芯材10は、厚さ方向に対して直交する面内における機械的特性および熱的特性が等しく、専用の加工装置が不要で、リーク用の穴加工が不要であるハニカム状の芯材とすることができる。
【0038】
本実施形態における芯材10は、さまざまな構造体の芯材として使用することができる。例えば、
図10に示すように、芯材10を上下から挟むようにして板状部材21を配置し、芯材10の両面に接着部材22を用いて接着することにより、パネル状の構造体20とすることができる。
ここで、接着部材22は、シート状の接着剤であってもよいし、液状の接着剤であってもよい。また、芯材10と板状部材21とは、同じ材質のものを使用することが望ましい。同じ材質を使用することで、芯材10と板状部材21との熱膨張係数が同一となり、温度変化による構造体20の歪を抑制することができる。
芯材10と板状部材21との材質をCFRPとすれば、軽量で熱変形(熱膨張)が小さく強固なパネル状の構造体20を作ることができる。
【0039】
また、CFRPは、その繊維と平行な方向については熱膨張係数が小さく、熱による変動(歪)が小さい。したがって、CFRPの繊維の方向を、芯材10となる平面板の短辺と平行な方向とすることにより、温度変化に起因する、板状部材21の表面に対して直交する方向の表面変動(変形や歪)を防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、芯材10となる平面板を構成するCFRPは、プリプレグを繊維の方向が0°/90°の角度となるように積層したクロスプライ積層板を例示したが、繊維の方向を0°/90°の角度だけでなく、それに加えて、その中間の45°/60°の角度に積層したものを使用してもよい。そのように積層したCFRPを使用すれば、芯材10の剛性や伸縮について等方性を持たせることができ、利用の用途がより幅広いものとなる。
このような構造体20は、例えば建築物の壁、航空機の機体、宇宙機器、大型の加工装置のステージなどに使用することができる。
【0040】
(変形例)
上記実施形態においては、芯材10に正六角形状の六角筒部13と、正三角形状の三角筒部14とが形成されている場合について説明したが、六角筒部13および三角筒部14は、正六角形状および正三角形状に限定されない。
例えば、
図11に示すような六角筒部13Aおよび三角筒部14Aが形成された芯材10Aとすることもできる。この
図11に示す芯材10Aは、第一の平面板11Aと、第二の平面板12と、第三の平面板15とによって構成されている。ここで、第三の平面板15は、上述した第一の平面板11Bと切り込みの間隔が異なることを除いては、第一の平面板11Bと同様の構成を有する。この芯材10Aにおいて、第一の平面板11Aと第二の平面板12との交差角度θは120°であり、第一の平面板11Aと第三の平面板15との交差角度θ´は30°であり、第二の平面板12と第三の平面板15との交差角度θ″は30°である。また、第三の平面板15同士の間隔はLである。
【0041】
つまり、上記実施形態では、複数の平面板を60°の角度で交差させて嵌め合わせる場合について説明したが、平面板の交差角度は上記に限定されるものではなく、任意の角度とすることができる。ただし、各平面板を60°の角度で交差させて嵌め合わせた場合、安定性に優れた芯材とすることができるため、好ましい。
また、上記実施形態では、二種類の平面板を用いてハニカム状の芯材10を構成する場合について説明したが、三種類以上の平面板を用いてハニカム状の芯材を構成してもよい。
また、上記実施形態においては、第二の平面部材は、切込みを等間隔に半周期ずらして形成した。しかし、形成する切込みは、等間隔でなくても、また半周期のずれでなくてもかまわない。その場合、六角筒部の周囲に作られる三角筒部の断面が、異なる大きさとなる。三角筒部は、その大きさに多少違いがあっても芯材の強度には問題がない。
【符号の説明】
【0042】
10…芯材、11(11A、11B)…第一の平面板、11a…切り込み、12…第二の平面板、12a,12b…切り込み、13…六角筒部(第一筒部)、14…三角筒部(第二筒部)、15…第三の平面板、20…構造体、21…板状部材、22…接着部材