(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】天井部材取り付け具、建物天井及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20231012BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
E04B9/22 C
E04B9/22 E
E04B9/00 K
(21)【出願番号】P 2019214653
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋竹 教行
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-027946(JP,A)
【文献】実開平02-085716(JP,U)
【文献】実公昭36-021157(JP,Y1)
【文献】特開平10-183850(JP,A)
【文献】特開平03-151438(JP,A)
【文献】特開昭58-54147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/22
E04B 9/00
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が上方に開いた略コの字状を有し、底片に貫通孔を備えていて、天井下地材にスライド自在に係止される、係止材と、
前記底片の上方から前記貫通孔に遊嵌される遊嵌体と、該遊嵌体の上方にあって前記底片の上面に載置される載置片とを備える、取り付け材と、を有し、
前記遊嵌体の底面において、天井部材が取り付けられる取り付け手段が設けられていることを特徴とする、天井部材取り付け具。
【請求項2】
前記貫通孔の断面寸法に比べて前記遊嵌体の断面寸法が小さいことを特徴とする、請求項1に記載の天井部材取り付け具。
【請求項3】
前記底片の上面に座ぐり溝が設けられ、該座ぐり溝の中央に前記貫通孔が設けられており、
前記取り付け材のうち、前記載置片が前記座ぐり溝に収容され、前記遊嵌体が前記貫通孔に遊嵌していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の天井部材取り付け具。
【請求項4】
前記取り付け手段が、
雄型スナップボタンと、該雄型スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態、
雄型スナップボタンと、該雄型スナップボタンに勘合される中継スナップボタンと、該中継スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態、
リベット孔とリベットからなる形態、
螺子孔と螺子からなる形態、
垂れ片と、該垂れ片の下端において側方に張り出す張り出し片とにより形成され、該張り出し片の上に前記天井部材を差し込んで取り付ける、差し込み材からなる形態、のいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の天井部材取り付け具。
【請求項5】
前記天井下地材に対して、複数の請求項1乃至4のいずれか一項に記載の天井部材取り付け具の有する前記係止材がスライド自在に係止されており、
それぞれの前記天井部材取り付け具の有する前記取り付け材を介して、前記天井部材が前記天井部材取り付け具に取り付けられていることを特徴とする、建物天井。
【請求項6】
前記天井部材は、
天井面材、
天井照明機器、
天井空調機器、
天井感知器、
避難誘導灯、
防犯カメラ、
音響スピーカー、のいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする、請求項5に記載の建物天井。
【請求項7】
天井下地材に対して天井部材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記天井下地材に対して、複数の請求項1乃至4のいずれか一項に記載の天井部材取り付け具の有する前記係止材をスライド自在に取り付け、
それぞれの前記天井部材取り付け具の有する前記取り付け材を介して、前記天井部材を前記天井部材取り付け具に取り付けることを特徴とする、建物天井の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部材取り付け具、建物天井及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物天井の施工においては、上向き作業にて、専用工具を用いた固定手段(ビス、ネジ等)により、野縁等の天井下地材に対して天井面材の取り付けが行われている。この天井面材の取り付けには経験や技能を要し、誰でも行える作業ではない。労働力不足が叫ばれ、省人化技術が切望される昨今、誰でも簡単に建物天井を施工できる技術の開発が課題となっている。
【0003】
一方、石膏ボード等の天井面材は一般に突付けにより施工されるが、突付け施工では隣接する天井面材間に隙間が生じた場合に、隙間が目立つといった課題がある。隙間の発生を解消するべく、天井面材間にジョイント材を介在させる等の措置が講じられるが、ジョイント材の施工においても上記するように経験や技術が必要となり、施工期間の長期化や資材コストの増加といった新たな課題が生じる。
【0004】
ここで、省力化を達成して廃材の発生を無くし、簡便できれいな仕上がりの素地を与える吊式天井施工法が提案されている。具体的には、野縁と野縁の天井材取り付け面に少なくとも天井材取り付け代を確保する大きさで結合された下地基材片とからなる吊式天井下地材を構成し、この吊式天井下地材を吊部材に適宜の間隔で配設して天井材敷設用下地骨組を構成した後、隣接する下地基材片面に天井材を取り付ける方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の吊式天井施工法では、下地材に対して下地基材片を接着及びビスにより固定し、下地基材片に対して天井材を接着及びビスにより固定することから、上記する課題、すなわち、誰でも簡単に建物天井を施工できないといった課題を解消するものではない。
【0007】
一方、天井には、天井板、Tバーやハット型バー等の天井下地材、照明機器、空調機器等がシステム化されたシステム天井が普及しており、このシステム天井には、長尺な天井下地材に天井板が張り付けられたライン型のシステム天井や、格子状に組まれた天井下地材に天井板が張り付けられたグリッド型のシステム天井などがある。システム天井を適用することにより、天井下地材に各種ボード材を張り、その上に化粧ボード等を留め付ける捨張り工法による天井や、天井下地材に化粧ボード等を直接留め付ける直張り工法による天井に比べて、天井に取り付けられるパーティション(もしくは間仕切壁)や照明機器、空調機器等の設置や設置の変更の自由度を高めることができる。
【0008】
しかしながら、従来のシステム天井では、Tバーやハット型バー等、天井下地材の種類ごとに天井部材(天井面材や空調機器等)の取り付け構成が一義的に設定されることから、例えば、天井下地材に対して取り付けられる天井部材を変更しようとした際に、天井下地材を完全に変更する(天井下地材の全体設計を見直す)必要が生じ得る。
【0009】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、天井下地材に取り付けられる天井部材が変更される場合でも、天井下地材の完全な変更を不要にできる、天井部材取り付け具、建物天井及びその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による天井部材取り付け具の一態様は、
断面形状が上方に開いた略コの字状を有し、底片に貫通孔を備えていて、天井下地材にスライド自在に係止される、係止材と、
前記底片の上方から前記貫通孔に遊嵌される遊嵌体と、該遊嵌体の上方にあって前記底片の上面に載置される載置片とを備える、取り付け材と、を有し、
前記遊嵌体の底面において、天井部材が取り付けられる取り付け手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、天井下地材と、この天井下地材にスライド自在に係止される係止材を維持したまま、天井部材が取り付けられる取り付け材のみを変更することにより、様々な天井部材の取り付けが可能になる。ここで、天井部材が取り付けられる取り付け手段には、天井面材を取り付けるスナップボタンや、照明機器や空調機器等を取り付ける螺子孔と螺子等が挙げられる。また、天井部材には、
また、本発明による天井部材取り付け具の他の態様は、前記貫通孔の断面寸法に比べて前記遊嵌体の断面寸法が小さいことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、係止材の底片にある貫通孔に対して、取り付け材の遊嵌体が遊びを有した状態で遊嵌していることにより、例えば、天井下地材が施工誤差を有した状態で設置されている場合であっても、係止材に対して取り付け材を上記遊びの範囲でスライドさせることにより、取り付け材の有する取り付け手段に対して天井部材を容易に取り付けることが可能になる。例えば、天井下地材を一度組み付けてしまうと、仮に天井下地材が施工誤差を有した態様で取り付けられている場合に、この施工誤差を有する天状下地材に対して、天状面材等の天井部材を取り付けるためには、天井下地材の取り付け位置を変更する施工を行った後に、あらためて天井下地材に対して天井部材を取り付けることが必要となり、調整に手間と時間を要する。しかしながら、本態様の天井部材取り付け具を適用することにより、往々にして施工誤差を有した状態で設置され得る天井下地材に対して、天井下地材の取り付け位置を変更することなく、取り付け材の有する取り付け手段に対して天井部材を容易に取り付けることができる。
【0013】
また、本発明による天井部材取り付け具の他の態様は、前記底片の上面に座ぐり溝が設けられ、該座ぐり溝の中央に前記貫通孔が設けられており、
前記取り付け材のうち、前記載置片が前記座ぐり溝に収容され、前記遊嵌体が前記貫通孔に遊嵌していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、取り付け材の載置片が座ぐり溝に収容されることにより、係止材の底片の上面のうち、座ぐり溝の周囲の領域を天井下地材の底面に当接させることができ、従って、天井下地材に対して天井部材取り付け具を安定的に固定することができる。
【0015】
また、本発明による天井部材取り付け具の他の態様は、前記取り付け手段が、
雄型スナップボタンと、該雄型スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態、
雄型スナップボタンと、該雄型スナップボタンに勘合される中継スナップボタンと、該中継スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態、
リベット孔とリベットからなる形態、
螺子孔と螺子からなる形態、
垂れ片と、該垂れ片の下端において側方に張り出す張り出し片とにより形成され、該張り出し片の上に前記天井部材を差し込んで取り付ける、差し込み材からなる形態、のいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、上記する様々な形態の取り付け手段を有する取り付け材のみを変更することにより、天井下地材とこれに係止される係止材を変更することなく、様々な天井部材の取り付けを実現することができる。
【0017】
また、本発明による建物天井の一態様は、
前記天井下地材に対して、複数の前記天井部材取り付け具の有する前記係止材がスライド自在に係止されており、
それぞれの前記天井部材取り付け具の有する前記取り付け材を介して、前記天井部材が前記天井部材取り付け具に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、本発明の天井部材取り付け具を介して天井部材が取り付けられていることにより、様々な形態の建物天井を施工することができる。また、天井下地材と、この天井下地材にスライド自在に係止される係止材を維持したまま、天井部材が取り付けられる取り付け材のみを変更することにより、天井部材の変更に臨機に対応可能な建物天井となる。
【0019】
また、本発明による建物天井の他の態様において、前記天井部材は、
天井面材、
天井照明機器、
天井空調機器、
天井感知器、
避難誘導灯、
防犯カメラ、
音響スピーカー、のいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、上記する様々な形態の天井部材を備えた様々な形態の建物天井を実現することができる。尚、天井感知器には、天井煙感知器と天井炎感知器が含まれる。ここで、天井部材取り付け具を構成する取り付け手段がスナップボタンからなる形態であり、かつ、天井部材が天井面材からなる形態においては、さらに、以下の様々な態様がある。
【0021】
すなわち、本発明による建物天井の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材が取り付けられている建物天井であって、
前記天井部材取り付け具の備える前記取り付け手段は、第一雄部を備える雄型スナップボタンと、該第一雄部が勘合する第一雌部を備える雌型スナップボタンと、を有し、
前記雄型スナップボタンが前記取り付け材に取り付けられており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔が開設されており、
前記第一天井面材と前記第二天井面材の縁部同士が重ね合され、それぞれの対をなす前記ボタン孔に前記第一雄部が挿通され、該第一雄部に前記第一雌部が嵌合されて、前記天井下地材に対して前記天井面材が取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、天井部材取り付け具の備える取り付け手段に雄型スナップボタンと雌型スナップボタンが適用され、相互に隣接する、第一天井面材と第二天井面材の縁部が相互に重ね合されてそれぞれのボタン孔が位置決めされ、ボタン孔に雄型スナップボタンが挿通され、雄型スナップボタンに雌型スナップボタンが留め付けられることにより、誰でも簡単に施工でき、かつ天井面材間に隙間が生じることはない。
【0023】
また、本発明による建物天井の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材が取り付けられている建物天井であって、
前記天井部材取り付け具の備える前記取り付け手段は、第一雌部を備える雌型スナップボタンと、該第一雌部に勘合する第一雄部を備える雄型スナップボタンと、を有し、
前記雌型スナップボタンが前記取り付け材に取り付けられており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔が開設されており、
前記第一天井面材と前記第二天井面材の縁部同士が重ね合され、それぞれの対をなす前記ボタン孔に前記第一雌部が挿通され、該第一雌部に前記第一雄部が嵌合されて、前記天井下地材に対して前記天井面材が取り付けられていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、天井部材取り付け具の備える取り付け手段に雄型スナップボタンと雌型スナップボタンが適用され、相互に隣接する、第一天井面材と第二天井面材の縁部が相互に重ね合されてそれぞれのボタン孔が位置決めされ、ボタン孔に雌型スナップボタンが挿通され、雌型スナップボタンに雄型スナップボタンが留め付けられることにより、誰でも簡単に施工でき、かつ天井面材間に隙間が生じることはない。
【0025】
また、本発明による建物天井の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材が取り付けられている建物天井であって、
前記天井部材取り付け具の備える前記取り付け手段は、第一雄部を備える雄型スナップボタンと、該第一雄部が勘合する第二雌部と第二雄部とを備える中継スナップボタンと、該第二雄部が嵌合する第一雌部を備える雌型スナップボタンと、を有し、
前記雄型スナップボタンが前記取り付け材に取り付けられており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔が開設されており、
前記第一天井面材の有する前記ボタン孔に前記第一雄部が挿通され、該第一雄部に前記第二雌部が嵌合されることにより、前記雄型スナップボタンと前記中継スナップボタンにて前記第一天井面材が固定され、
前記第二天井面材の有する前記ボタン孔に前記第二雄部が挿通され、該第二雄部に前記第一雌部が嵌合されることにより、前記中継スナップボタンと前記雌型スナップボタンにて前記第二天井面材が固定されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、取り付け手段がさらに中継スナップボタンを備えていることにより、雄型スナップボタンと中継スナップボタンにて第一天井面材を留め付けた後、次に、中継スナップボタンと雌型スナップボタンにて第二天井面材を留め付けることができ、より一層簡易な施工が実現できる。
【0027】
また、本発明による建物天井の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材が取り付けられている建物天井であって、
前記天井部材取り付け具の備える前記取り付け手段は、第一雌部を備える雌型スナップボタンと、該第一雌部に勘合する第二雄部と第二雌部とを備える中継スナップボタンと、該第二雌部に嵌合する第一雄部を備える雄型スナップボタンと、を有し、
前記雌型スナップボタンが前記取り付け材に取り付けられており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔が開設されており、
前記第一天井面材の有する前記ボタン孔に前記第一雌部が挿通され、該第一雌部に前記第二雄部が嵌合されることにより、前記雌型スナップボタンと前記中継スナップボタンにて前記第一天井面材が固定され、
前記第二天井面材の有する前記ボタン孔に前記第二雌部が挿通され、該第二雌部に前記第一雄部が嵌合されることにより、前記中継スナップボタンと前記雄型スナップボタンにて前記第二天井面材が固定されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、取り付け手段がさらに中継スナップボタンを備えていることにより、雌型スナップボタンと中継スナップボタンにて第一天井面材を留め付けた後、次に、中継スナップボタンと雄型スナップボタンにて第二天井面材を留め付けることができ、より一層簡易な施工が実現できる。
【0029】
また、本発明による建物天井の他の態様は、前記天井面材が、軽量で薄厚の板材により形成されていることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、天井面材が軽量で薄厚の板材により形成されていることから、天井面材の設置が容易になり、かつ、建物架構に対する天井面材の重量の影響を抑制することができる。また、天井面材が薄厚であることから、第一天井面材と第二天井面材の双方の縁部同士を重ね合わせても、重ね合わせ箇所における段差が目立たなくなり、すっきりとした重ね合わせラインを形成できる。ここで、「薄厚」とは、例えば厚みが1mm乃至数mmの範囲のことである。さらに、天井面材が板材により形成されていることから、天井面材がある程度の剛性を有しており、従って天井面材同士の重ね合わせ箇所をスナップボタンにて留め付ける際に、良好な留め付け性が担保される。例えば、板材でなく、軽量な紙製の天井面材の場合には、紙故に剛性が小さく、スナップボタンを留め付ける際に天井面材が撓み易く、留め付け難くなる。
【0031】
また、本発明による建物天井の施工方法の一態様は、
天井下地材に対して天井部材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記天井下地材に対して、複数の前記天井部材取り付け具の有する前記係止材をスライド自在に取り付け、
それぞれの前記天井部材取り付け具の有する前記取り付け材を介して、前記天井部材を前記天井部材取り付け具に取り付けることを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、本発明の天井部材取り付け具を介して天井部材を取り付けることにより、様々な形態の建物天井を容易に施工することができる。また、天井下地材と、この天井下地材にスライド自在に係止される係止材を維持したまま、天井部材が取り付けられる取り付け材のみを変更することにより、天井部材の変更に臨機に対応しながら建物天井を施工することができる。さらに、上記するように、係止材の底片にある貫通孔に対して、取り付け材の遊嵌体が遊びを有した状態で遊嵌していると、天井下地材が施工誤差を有した状態で設置されている場合であっても、係止材に対して取り付け材を上記遊びの範囲でスライドさせることにより、取り付け材の有する取り付け手段に対して天井部材を容易に取り付けることが可能になる。ここで、天井部材取り付け具を構成する取り付け手段がスナップボタンからなる形態であり、かつ、天井部材が天井面材からなる形態においては、さらに、以下の様々な態様がある。
【0033】
すなわち、本発明による建物天井の施工方法の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記取り付け材に対して取り付け手段を構成する雄型スナップボタンのみを取り付けておき、ここで、該取り付け手段は、第一雄部を備える前記雄型スナップボタンと、該第一雄部が勘合する第一雌部を備える雌型スナップボタンとにより構成されており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔を開設しておき、
前記第一天井面材と前記第二天井面材の縁部同士を重ね合せ、それぞれの対をなす前記ボタン孔に前記第一雄部を挿通し、該第一雄部に前記第一雌部を嵌合することを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、雄型スナップボタンと雌型スナップボタンからなる取り付け手段を備えた天井部材取り付け具を天井下地材にスライド自在に設け、天井下地材に沿って複数の天井部材取り付け具を所定位置にスライドさせて位置決めし、第一天井面材と第二天井面材の縁部の重ね合わせ箇所にあるボタン孔に雄型スナップボタンを挿通し、雌型スナップボタンを留め付けて建物天井を施工することから、天井面材間に隙間を生じさせることなく、誰でも簡単に施工することができる。ここで、上記するように、軽量で薄厚の板材により形成されている天井面材を適用することにより、天井面材の設置が容易になり、二つの天井面材の重ね合わせ箇所における段差が目立たなく、すっきりとした重ね合わせラインを形成でき、スナップボタンによる良好な留め付け性を担保できる。
【0035】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記取り付け材に対して取り付け手段を構成する雌型スナップボタンのみを取り付けておき、ここで、該取り付け手段は、第一雌部を備える前記雌型スナップボタンと、該第一雌部に勘合する第一雄部を備える雄型スナップボタンとにより構成されており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔を開設しておき、
前記第一天井面材と前記第二天井面材の縁部同士を重ね合せ、それぞれの対をなす前記ボタン孔に前記第一雌部を挿通し、該第一雌部に前記第一雄部を嵌合することを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、雌型スナップボタンと雄型スナップボタンからなる取り付け手段を備えた天井部材取り付け具を天井下地材にスライド自在に設け、天井下地材に沿って複数の天井部材取り付け具を所定位置にスライドさせて位置決めし、第一天井面材と第二天井面材の縁部の重ね合わせ箇所にあるボタン孔に雌型スナップボタンを挿通し、雄型スナップボタンを留め付けて建物天井を施工することから、天井面材間に隙間を生じさせることなく、誰でも簡単に施工することができる。
【0037】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記取り付け材に対して取り付け手段を構成する雄型スナップボタンのみを取り付けておき、ここで、該取り付け手段は、第一雄部を備える前記雄型スナップボタンと、該第一雄部が勘合する第二雌部と第二雄部とを備える中継スナップボタンと、該第二雄部が嵌合する第一雌部を備える雌型スナップボタンとにより構成されており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔を開設しておき、
前記第一天井面材の有する前記ボタン孔に前記第一雄部を挿通し、該第一雄部に前記第二雌部を嵌合することにより、前記雄型スナップボタンと前記中継スナップボタンにて前記第一天井面材を固定し、
前記第二天井面材の有する前記ボタン孔に前記第二雄部を挿通し、該第二雄部に前記第一雌部を嵌合することにより、前記中継スナップボタンと前記雌型スナップボタンにて前記第二天井面材を固定することを特徴とする。
【0038】
本態様によれば、雄型スナップボタンと雌型スナップボタンに加えて中継スナップボタンを備えた取り付け手段を適用することにより、雄型スナップボタンと中継スナップボタンにて第一天井面材を留め付けた後、次に、中継スナップボタンと雌型スナップボタンにて第二天井面材を留め付けることができ、施工性がより一層良好になり、より一層簡易な施工を実現できる。
【0039】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様は、
天井下地材に対して、該天井下地材にスライド自在に係止される天井部材取り付け具を介して天井面材を取り付ける、建物天井の施工方法であって、
前記取り付け材に対して取り付け手段を構成する雌型スナップボタンのみを取り付けておき、ここで、該取り付け手段は、第一雌部を備える前記雌型スナップボタンと、該第一雌部に勘合する第二雄部と第二雌部とを備える中継スナップボタンと、該第二雌部に嵌合する第一雄部を備える雄型スナップボタンとにより構成されており、
前記天井面材は、第一天井面材と第二天井面材を含み、それぞれの天井面材の縁部には、相互に重ね合された際に対応する位置に複数の対をなすボタン孔を開設しておき、
前記第一天井面材の有する前記ボタン孔に前記第一雌部を挿通し、該第一雌部に前記第二雄部を嵌合することにより、前記雌型スナップボタンと前記中継スナップボタンにて前記第一天井面材を固定し、
前記第二天井面材の有する前記ボタン孔に前記第二雌部を挿通し、該第二雌部に前記第一雄部を嵌合することにより、前記中継スナップボタンと前記雄型スナップボタンにて前記第二天井面材を固定することを特徴とする。
【0040】
本態様によれば、雌型スナップボタンと雄型スナップボタンに加えて中継スナップボタンを備えた取り付け手段を適用することにより、雌型スナップボタンと中継スナップボタンにて第一天井面材を留め付けた後、次に、中継スナップボタンと雄型スナップボタンにて第二天井面材を留め付けることができ、施工性がより一層良好になり、より一層簡易な施工を実現できる。
【発明の効果】
【0041】
以上の説明から理解できるように、本発明の天井部材取り付け具、建物天井及びその施工方法によれば、天井下地材に取り付けられる天井部材が変更される場合でも、天井下地材の完全な変更を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する係止材の一例を、斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する係止材の一例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び取り付け手段の一例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び取り付け手段の他の例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び取り付け手段のさらに他の例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び取り付け手段のさらに他の例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図7】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を、斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を、斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】実施形態に係る建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
【
図10】
図9に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
【
図11】
図10に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
【
図12】
図11に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
【
図13】
図12に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
【
図14】
図13に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図であって、かつ、実施形態に係る建物天井の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、実施形態に係る天井部材取り付け具、建物天井とその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0044】
[実施形態に係る天井部材取り付け具]
はじめに、
図1乃至
図8を参照して、実施形態に係る天井部材取り付け具の一例について説明する。ここで、
図1及び
図2はそれぞれ、実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する係止材の一例を、斜め上方と斜め下方から見た斜視図である。また、
図3乃至
図6はいずれも、実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び取り付け手段の例を、斜め下方から見た斜視図である。さらに、
図7及び
図8はそれぞれ、実施形態に係る天井部材取り付け具の一例を、斜め下方と斜め上方から見た斜視図である。
【0045】
図1及び
図2に示すように、天井部材取り付け具を構成する係止材10Aは、二つの垂れ片11と、双方の垂れ片11を繋ぐ底片12とを有する断面形状が上方に開いた略コの字状を呈しており、双方の垂れ片11の上端はコの字の内側に折り曲げられて係止爪13を形成している。尚、図示例の係止爪13は、垂れ片11に対して上方に傾斜した態様で折り曲げられているが、垂れ片11に対して垂直に折り曲げられている形態であってもよい。
【0046】
係止材10Aは、軽量鉄骨の溝形鋼を用いて、その端部を折り曲げ加工して係止爪13を形成してもよいし、軽量鉄骨の平鋼を折り曲げ加工してコの字状の断面及び係止爪13を形成してもよい。また、係止材10Aは、硬質の樹脂を成形することにより形成してもよい。
【0047】
係止材10Aの底片12の中央には、平面視円形の貫通孔15が設けられており、底片12の上面14には平面視円形の座ぐり溝16が設けられ、座ぐり溝16の中央に貫通孔15が位置している。
【0048】
一方、
図3に示す取り付け材10Bは、係止材10Aの底片12の上方から貫通孔に遊嵌される平面視円形の遊嵌体18と、遊嵌体18の上方にあって底片12の上面14に載置される平面視円形の載置片17とを備える。より詳細には、載置片17は、係止材10Aの底片12のうち、座ぐり溝16に収容され、載置片17が座ぐり溝16に収容された状態において、底片12の上面14と載置片17の上面が面一となるように設定されている。取り付け材10Bは、平鋼や、硬質の樹脂を成形することにより形成される。
【0049】
遊嵌体18の底面には、天井部材が取り付けられる取り付け手段21が固定されている。
【0050】
ここで、
図3に示す取り付け手段21はスナップボタンからなる形態であり、より具体的には、雄型スナップボタン22と、雌型スナップボタン23とを有する。雄型スナップボタン22は第一雄部22aを備え、雌型スナップボタン23は第一雄部22aに対してX1方向に勘合する第一雌部23aを備える。
【0051】
雄型スナップボタンと22と雌型スナップボタン23は、鋼やアルミニウム等の金属、硬質の樹脂などにより形成される。尚、
図3では、雄型スナップボタン22と雌型スナップボタン23が取り付けられていない状態として示している。取り付け手段21は、天井下地材に対して取り付けられる天井部材が天井面材の場合に好適である。
【0052】
遊嵌体18の底面の例えば中央位置に、雄型スナップボタン22の底部(第一雄部22aと反対側の端部)が、嵌合や溶接、接着等により固定される。
【0053】
一方、
図4に示す取り付け手段21Aも、取り付け手段21と同様にスナップボタンからなる形態であるが、その構成は、雄型スナップボタン22と、雌型スナップボタン23に加えて、中継スナップボタン24を有する。
【0054】
中継スナップボタン24は第二雌部24aと第二雄部24bを備え、雄型スナップボタン22の第一雄部22aに対して第二雌部24aがX2方向に勘合し、第二雄部24bに対して雌型スナップボタン23の第一雌部23aがX3方向に勘合する。尚、
図4においても、雄型スナップボタン22と雌型スナップボタン23、及び中継スナップボタン24がそれぞれ取り付けられていない状態として示している。取り付け手段21Aも、天井下地材に対して取り付けられる天井部材が天井面材の場合に好適である。
【0055】
尚、図示を省略するが、
図3に示す形態と異なり、遊嵌体18の底面に雌型スナップボタンの底部が固定され、雌型スナップボタンに対して雄型スナップボタンが勘合する形態であってもよい。また、同様に図示を省略するが、
図4に示す形態と異なり、遊嵌体18の底面に雌型スナップボタンの底部が固定され、雌型スナップボタンの第一雌部に対して中継スナップボタンの第二雄部が勘合し、中継スナップボタンの第二雌部に対して雄型スナップボタンの第一雄部が勘合する形態であってもよい。
【0056】
一方、
図5に示す取り付け手段21Bは、垂れ片25と、垂れ片25の下端において側方に張り出す張り出し片26とにより形成される差し込み材である。遊嵌体18の底面に対して、垂れ片25の上端が溶接や接着等により固定される。張り出し片26の上に天井面材等が差し込まれることにより、取り付け手段21Bに対して天井面材等が取り付けられるようになっている。
【0057】
一方、
図6に示す取り付け手段21Cは、螺子孔27とビス等の螺子28により形成される。螺子孔27は遊嵌体18Aの下面の中央位置において、遊嵌体18Aの厚み方向に延設している。螺子28を螺子孔27に螺合して固定することから、遊嵌体18Aは遊嵌体18に比べて厚みが厚く設定されている。このような遊嵌体18Aと載置片17により、取り付け材10Cが形成される。
【0058】
尚、図示を省略するが、遊嵌体にリベット孔が設けられ、このリベット孔にリベットが嵌合される形態の取り付け手段等であってもよい。
【0059】
このように、実施形態に係る天井部材取り付け具は、天井下地材に対して係止材10Aがスライド自在に係止された状態において、天井部材に応じた様々な取り付け手段21乃至21Cを備える取り付け材10B、10Cを取り付けることにより、天井部材取り付け具を形成することができる。すなわち、天井下地材に取り付けられる天井部材が変更された場合であっても、天井下地材と係止材10Aはそのまま維持し、天井部材に応じて取り付け材のみを変更することで足りる。
【0060】
図7及び
図8は、取り付け手段21Aを備える取り付け材10Bと、係止材10Aとにより構成される天井部材取り付け具20を示している。
【0061】
図7及び
図8に示すように、貫通孔15の断面寸法(もしくは平面寸法)に比べて遊嵌体18の断面寸法(もしくは平面寸法)が小さく設定され(図示例では、直径長さで2t小さい)、同様に、座ぐり溝16の断面寸法に比べて載置片17の断面寸法が小さく設定されている(図示例では、直径長さで2t小さい)。
【0062】
従って、この寸法差(遊び)の範囲内において、係止材10Aに対して取り付け材10Bを360度方向にスライド可能となっている。
【0063】
[実施形態に係る建物天井とその施工方法]
次に、
図9乃至
図14を参照して、実施形態に係る建物天井の施工方法と、この施工方法により施工される建物天井について説明する。ここで、
図9乃至
図14は順に、実施形態に係る建物天井の施工方法の一例を示す工程図であり、
図14はさらに実施形態に係る建物天井の一例を示す図である。尚、図示する建物天井の施工方法では、
図7及び
図8に示す天井部材取り付け具20を適用する施工方法として説明するが、他の取り付け手段21,21B等を有する天井部材取り付け具を適用する施工方法であってもよい。
【0064】
また、図示例は、天井部材として天井面材を取り上げ、天井面材を天井部材取り付け具20を介して天井下地材に取り付ける方法と、この方法により形成される建物天井を示すが、天井下地材に取り付けられる天井部材は、天井面材以外の形態であってもよい。具体的には、天井面材以外の天井部材として、天井照明機器、天井空調機器、天井感知器(天井煙感知器もしくは天井炎感知器)、避難誘導灯、防犯カメラ、音響スピーカーのいずれか一種もしくは複数が挙げられる。
【0065】
まず、
図9に示すように、天井下地材30は、野縁31と野縁受け32、ハンガー33、及び吊ボルト34により構成される。不図示の天井梁やデッキプレート、コンクリートスラブ等から吊ボルト34を垂下し、吊ボルト34にハンガー33を螺子止めし、このハンガー33に野縁受け32を支持させる。尚、
図9では、図面を見易くするために、野縁受け32を支持するハンガー33と吊りボルト31の一部のみを示している。
【0066】
野縁受け32は第一の方向に延設しており、複数の野縁受け32(
図9では、一つの野縁受け32のみ図示)が、第一の方向に直交する第二の方向に対して所定の間隔を置いて配設されている。ここで、第一の方向とは、例えば平面視矩形の建物の対向する一組の壁と壁を結ぶ方向であり、第二の方向とは、建物の対向する他の一組の壁と壁を結ぶ方向である。
【0067】
野縁受け32に対して、第二の方向に延びる野縁31が、第一の方向に所定の間隔を置いて配設され、支持されている。ここで、野縁受け32と野縁31は断面コの字状の金具により形成されている。また、野縁受け32に対して、野縁31は、ビスやクリップ等により支持されている。
図3において、天井下地材30の上方が天井空間側となり、天井下地材30の下方が室内空間側となる。
【0068】
図9に示すように天井下地材30を施工した後、係止材10Aの二つの垂れ片11の上部を側方に開いて上方の開口を広げ、開口を介して係止材10Aの内部に野縁31を通し、側方に開いた垂れ片11を元に戻すことにより、二つの係止爪13が野縁31の左右上端に係止されて、係止材10Aが野縁31にスライド自在に取り付けられる。この際、係止材10Aの底片12に開設されている座ぐり溝16と貫通孔15にはそれぞれ、取り付け材10Bの載置片17と遊嵌体18が遊びを有した状態で遊嵌しており、遊嵌体18の底面には、取り付け手段21Aを形成する雄型スナップボタン22のみが固定され、雌型スナップボタン23や中継スナップボタン24は取り外しておく。尚、天井下地材30を施工した後に係止材10Aを野縁31に取り付ける方法の他にも、野縁31に対して所定数の係止材10Aを予め取り付けておいた状態で天井下地材30を施工してもよい。
【0069】
図9では、各野縁31に対して三組の係止材10A及び取り付け材10Bが取り付けられているが、取り付けられる係止材10A及び取り付け材10Bの組数は図示例に限定されない。係止材10A及び取り付け材10Bは、野縁31に対して、その長手方向であるY1方向にスライド自在に係止される。
【0070】
次に、
図10に示すように、一つの野縁31に係止されている各係止材10A及び取り付け材10Bの備える雄型スナップボタン22の第一雄部22aに対して、第一天井面材40A(天井面材40の一例)の右側縁部41に開設されているボタン孔43を挿通させるようにして、第一天井面材40AをY2方向に仮に取り付ける。ここでは、図示を省略するが、作業員が第一天井面材40Aを下方から天井下地材30側へ押さえている。
【0071】
天井面材40(40A,40B)は、軽量で薄厚の板材により形成されている。具体的には、野原ホールディングス株式会社製の超軽量天井材:CARLTON(カールトン)や、株式会社エービーシー商会社製の超軽量天井材:かるてんなどを適用できる。
【0072】
図9に示す天井下地材30の施工において、例えば、野縁31の取り付けの際に施工誤差がある場合に、
図10に示すように、各取り付け材10Bの備える雄型スナップボタン22の第一雄部22aに対して第一天井面材40Aのボタン孔43を挿通させようとした際に、野縁31の施工誤差に起因して、第一雄部22aに対してボタン孔43を挿通できない事態が生じ得る。
【0073】
しかしながら、図示する施工方法では、係止材10Aに対して取り付け材10Bが遊びを有した状態で取り付けられ、
図10に示すように360度方向であるZ方向に取り付け材10Bがスライド自在であることにより、この遊びの範囲で取り付け材10Bをスライドさせ、第一雄部22aに対してボタン孔43を挿通させることが可能になる。
【0074】
次に、各ボタン孔43から下方に突出している各第一雄部22aに対して、
図11に示すように、中継スナップボタン24の第二雌部22aをY3方向に順次勘合させていき、各雄型スナップボタン22に対応する中継スナップボタン24を留め付けることにより、複数の雄型スナップボタン22及び中継スナップボタン24にて第一天井面材40Aの右側縁部41を固定する。
【0075】
次に、
図12に示すように、中継スナップボタン24の第二雄部24bに対して、第二天井面材40B(天井面材40の一例)の左側縁部42に開設されているボタン孔43を挿通させ、さらに、第二天井面材40Bの右側縁部41に開設されているボタン孔43を、別途の野縁31に取り付けられている雄型スナップボタン22の第一雄部22aに挿通させることにより、第一天井面材40AをY4方向に仮に取り付ける。ここでも、作業員は第二天井面材40Bを下方から天井下地材30側へ押さえている。
【0076】
図12に示す状態において、第一天井面材40Aの右側縁部41と第二天井面材40Bの左側縁部42が相互に重ね合され、重ね合された箇所において対応するボタン孔43が位置合わせされるようになっている。
【0077】
次に、各ボタン孔43から下方に突出している各第二雄部24bに対して、
図13に示すように、雌型スナップボタン23の第一雌部23aをY5方向に順次勘合させていき、各中継スナップボタン24に対応する雌型スナップボタン23を留め付けることにより、複数の中継スナップボタン24及び雌型スナップボタン23にて第二天井面材40Bの左側縁部42を固定する。
【0078】
次に、
図13に示すように、第二天井面材40Bの右側縁部41においては、各ボタン孔43から下方に突出している各第一雄部22aに対して、中継スナップボタン24の第二雌部24aをY6方向に順次勘合させていき、各雄型スナップボタン22に対応する中継スナップボタン24を留め付けることにより、複数の雄型スナップボタン22及び中継スナップボタン24にて第二天井面材40Bの右側縁部41を固定する。
【0079】
このようにして、第二天井面材40Bの左側縁部42と右側縁部41が隣接する二つの野縁31に対して固定される。
【0080】
ここまでの説明から分かる通り、
図11に示す状態においては、図示されていない第一天井面材40Aの右側縁部41は、同様に図示されていない野縁31に対して固定されており、従って、
図13の状態において、第一天井面材40Aの左側縁部42と右側縁部41はともに、雄型スナップボタン22と中継スナップボタン24と雌型スナップボタン23が相互に留め付けられた天井部材取り付け具20により固定されている。
【0081】
以上の施工を側方(各図の右側)に順次繰り返すことにより、
図14に示すように、各天井面材40の右側縁部41と左側縁部42の重ね合わせ箇所が複数の天井部材取り付け具20により固定されてなる、建物天井50が施工される。尚、
図14は、建物天井50の完成途中を図示したものであり、天井下地材30が天井面材40にて完全に塞がれることにより、建物天井50が形成される。また、図示例は、隣接する野縁31の間の幅よりもわずかに大きな幅を有する天井面材40を、各野縁31に順に取り付ける形態であるが、天井面材が野縁31の二スパンや三スパン程度の幅を有していて、天井面材が一つ置きもしくは二つ置きに野縁31に取り付けられる形態であってもよい。
【0082】
図14からも明らかなように、建物天井50では、隣接する天井面材40の縁部41,42同士が重ね合わされていることから、突合せの場合のように天井面材間に隙間が生じることはない。
【0083】
また、天井面材40が軽量で薄厚の板材により形成されていることから、天井面材40の設置が容易になり、かつ、建物架構に対する天井面材40の重量の影響を抑制することができる。
【0084】
また、天井面材40が薄厚であることから、第一天井面材40Aと第二天井面材40Bの双方の縁部41,42同士を重ね合わせても、重ね合わせ箇所における段差が目立たなくなり、すっきりとした重ね合わせラインを形成できる。
【0085】
また、天井面材40が板材により形成されていることから、天井面材40がある程度の剛性を有しており、従って天井面材40同士の重ね合わせ箇所をスナップボタンにて留め付ける際に、良好な留め付け性が担保される。
【0086】
さらに、雄型スナップボタン22の第一雄部22aに第一天井面材40Aのボタン孔43を挿通し、第一雄部22aと中継スナップボタン24の第二雌部24aを留め付け、次に、中継スナップボタン24の第二雄部24bに第二天井面材40Bのボタン孔43を挿通し、第二雄部24bと雌型スナップボタン23の第一雌部23aを留め付けることにより天井面材40が取り付けられることから、経験や技能の無い素人をはじめ、誰でも簡単に建物天井50を施工することができる。
【0087】
図示する建物天井50は、仮設建物と本設建物のいずれに適用されてもよい。仮設建物としては、屋外イベントのための仮設アリーナや、震災後において早急な施工を要する仮設住宅、仮設の宿泊施設等が挙げられる。また、本設建物としては、商業施設やレジャー施設といった大型店舗、工場、オフィスビル(のシステム天井)、医療・福祉施設、官公庁舎、ホテルや宿泊施設、教育施設等が挙げられる。
【0088】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0089】
10A:係止材
10B,10C:取り付け材
11:垂れ片
12:底片
13:係止爪
14:上面(底片の上面)
15:貫通孔
16:座ぐり溝
17:載置片
18:遊嵌体
20:天井部材取り付け具
21,21A:取り付け手段(スナップボタン)
21B:取り付け手段(差し込み材)
21C:取り付け手段(螺子孔および螺子)
22:雄型スナップボタン
22a:第一雄部
23:雌型スナップボタン
23a:第一雌部
24:中継スナップボタン
24a:第二雌部
24b:第二雄部
25:垂れ片
26:張り出し片
27:螺子孔
28:螺子(ビス)
30:天井下地材
31:野縁(天井下地材)
32:野縁受け(天井下地材)
33:ハンガー(天井下地材)
34:吊りボルト(天井下地材)
40:天井面材
40A:第一天井面材(天井面材)
40B:第二天井面材(天井面材)
41:右側縁部(縁部)
42:左側縁部(縁部)
43:ボタン孔
50:建物天井