(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】吐出ポンプ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20231012BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20231012BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D47/34 ZAB
B65D47/34 BSF
B65D51/24 BRL
F04B9/14 B
(21)【出願番号】P 2019216172
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-038543(JP,A)
【文献】特開2009-208786(JP,A)
【文献】特開2018-052601(JP,A)
【文献】米国特許第05401148(US,A)
【文献】特開2019-151404(JP,A)
【文献】特開2013-227057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 51/24
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着キャップと、
前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有し、前記装着キャップに対して前記容器本体側に押し下げ可能に設けられる吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを上方付勢する付勢部材と、前記吐出ヘッドの動作に応じて容器本体内の前記内容物を吸引する吸引機構とが配置されると共に、前記装着キャップに螺合されて保持されるシリンダと、
を備え、
前記シリンダは、その外周面に前記シリンダと前記装着キャップとの螺合を解除するための回転操作を行うための操作部が設けられ、
前記装着キャップには、前記吐出ヘッドを覆うオーバーキャップが装着され、
当該オーバーキャップは、前記操作部が内嵌される嵌合部を有し、当該嵌合部に前記操作部を内嵌させることで前記操作部を回転操作するための治具として用いることができ、
前記付勢部材又は前記吸引機構、或いはその両方は金属製部材を含み、
当該金属製部材は、前記装着キャップと前記シリンダとの螺合を解除することで前記シリンダから取り外し可能である吐出ポンプ。
【請求項2】
前記装着キャップは、前記容器本体の口部の外周面に装着される装着筒と、当該装着筒に設けられ前記シリンダの先端が圧入されるシリンダ溝とを備え、
前記シリンダ溝と前記シリンダの先端部とが互いに当接する当接面のうち、いずれか一方の当接面には予めねじ山が設けられており、他方の当接面には前記ねじ山のリード角よりも大きな角度で縦方向に延びる複数の縦リブが設けられており、前記シリンダ溝に対して前記シリンダの先端部を打栓することで前記シリンダ溝と前記シリンダとが螺合された請求項1に記載の吐出ポンプ。
【請求項3】
前記装着キャップの外周面には、前記嵌合部が嵌合される嵌合凸部が設けられる請求項
1又は請求項2に記載の吐出ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口部に装着され、容器本体内に収容された内容物を吐出するための吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の口部に装着され、内容物を吐出する吐出ポンプが知られている。例えば、特許文献1には、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着キャップと、前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有し、装着キャップに対して容器本体側に押し下げ可能に設けられる吐出ヘッドと、装着キャップに保持されるシリンダと、シリンダに接続されて前記容器本体内の内容物を吸引する吸引機構とを備えた吐出ポンプが開示されている。
【0003】
この種の吐出ポンプによれば、吐出ヘッドを押下することで吸引機構により吸引した内容物を吐出口から所定量だけ吐出させることができる。このように簡易な操作で所定量の内容物を吐出させることができるため、シャンプー、リンス、液体石けん、アルコール消毒液、化粧水等の一回の使用量が概ね一定である内容物を収容する容器に吐出ポンプは広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、環境負荷低減に対する取り組みが従来以上に重要になってきており、廃棄物の分別はリサイクルの推進又は廃棄物の適正処理を行う上で極めて重要である。上記従来の吐出ポンプはシリンダ内に吐出ヘッドを上方付勢するコイルスプリング等の金属製部材を含む。そのため、従来は、容器本体から吐出ポンプを取り外して、吐出ポンプを不燃物として分別することが行われていた。しかしながら、吐出ポンプは大部分が樹脂製であり、吐出ポンプについても樹脂製部分と金属製部材とを分別可能とすることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、金属製部材を樹脂製部分と分別することができる吐出ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着キャップと、前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有し、前記装着キャップに対して前記容器本体側に押し下げ可能に設けられる吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドを上方付勢する付勢部材と、前記吐出ヘッドの動作に応じて容器本体内の前記内容物を吸引する吸引機構とが配置されると共に、前記装着キャップに螺合されて保持されるシリンダと、を備え、前記シリンダは、その外周面に前記シリンダと前記装着キャップとの螺合を解除するための回転操作を行うための操作部が設けられ、前記装着キャップには、前記吐出ヘッドを覆うオーバーキャップが装着され、当該オーバーキャップは、前記操作部が内嵌される嵌合部を有し、当該嵌合部に前記操作部を内嵌させることで前記操作部を回転操作するための治具として用いることができ、前記付勢部材又は前記吸引機構、或いはその両方は金属製部材を含み、当該金属製部材は、前記装着キャップと前記シリンダとの螺合を解除することで前記シリンダから取り外し可能である吐出ポンプである。
【0008】
前記装着キャップは、前記容器本体の口部の外周面に装着される装着筒と、当該装着筒に設けられ前記シリンダの先端が圧入されるシリンダ溝とを備え、前記シリンダ溝と前記シリンダの先端部とが互いに当接する当接面のうち、いずれか一方の当接面には予めねじ山が設けられており、他方の当接面には前記ねじ山のリード角より大きな角度で縦方向に延びる複数の縦リブが設けられており、前記シリンダ溝に対してシリンダの先端部を打栓することで前記シリンダ溝と前記シリンダとが螺合されたことが好ましい。
【0011】
前記装着キャップの外周面には、前記嵌合部が嵌合される嵌合凸部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る吐出ポンプによれば、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着キャップとシリンダとが螺合されている。そのため、廃棄時には、装着キャップを容器本体から取り外した後、装着キャップに対してシリンダを回転させるなどして、装着キャップとシリンダとの螺合を解除することができる。シリンダに設けられた付勢部材や吸引機構が金属製部材を含む場合、シリンダからこれらの金属製部材を取り出して、金属製部材と樹脂製部材とを分別することができ、それぞれに適した廃棄処分(リサイクルを含む)等を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態の吐出ポンプを説明するための図であり、(a)は吐出ポンプを示す一部側断面図であり、(b)は吐出ポンプの吐出ヘッドを覆うオーバーキャップである。
【
図2】
図1(a)に示す吐出ポンプに
図1(b)に示すオーバーキャップが取り付けられた状態を示す一部側断面である。
【
図3】
図1の吐出ポンプの各部を説明するための図であり、(a)は
図2のX-X矢視断面の一部であり、オーバーキャップの嵌合部が装着キャップの嵌合凸部に嵌合された状態を示す側断面図であり、(b)はシリンダ溝とシリンダ上端部(先端部)との螺合状態を示す側断面図であり、(c)は
図2のY-Y矢視断面図であり、操作部の断面形状を示している。
【
図4】オーバーキャップに設けられた嵌合部に操作部を内嵌させて、シリンダを装着キャップから取り外す手順を説明するためのシリンダ下部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態の吐出ポンプ100について説明する。
まず、
図1を参照して本実施の形態の吐出ポンプ100の概略構成について説明する。
図1(a)に示す吐出ポンプ100は、図示しない容器本体の口部に装着される装着キャップ10と、内容物を外部に吐出するための吐出口21aを有する吐出ヘッド20と、装着キャップ10の内側において、その下部32が容器本体側に延在するように装着キャップ10に保持されるシリンダ30とを備えている。当該吐出ポンプ100は、装着キャップ10とシリンダ30とを螺合させ、装着キャップ10に対してシリンダ30を回転させることで装着キャップ10からシリンダ30を取り外すことができるように構成したものである。
【0015】
また、吐出ポンプ100には、
図1(b)に示すオーバーキャップ40を装着させることができる。オーバーキャップ40は天壁41を有する筒状に構成されており、その周壁42の下部には切欠き部43(嵌合部)が形成されている。切欠き部43は、所定形状の係合部43aと、当該係合部43aの下部に連設して設けられる案内部43bとを備えている。本実施の形態では、係合部43aは正面視において略六角形(角が丸められた六角形状)を呈する。より具体的には、当該係合部43aは、その最も上方に配置される頂点o
0が正面視において中心軸Oと重なる位置に配置され、互いに対向する二つの辺s
1、s
2が中心軸Oと略平行になるような向きの略六角形を呈する。案内部43bは正面視において略台形を呈する。案内部43bの下端はオーバーキャップ40の下端に一致し、開口している。係合部43aの最大幅(辺s
1とs
2との間の最短距離)よりも案内部43bの下端が大きくなるように切欠き部43が形成されている。一方、吐出ポンプ100の装着キャップ10(装着筒11)の外周面11aには正面視において係合部43aと略同じ所定形状を呈し、外周面11aから径方向外側に突出する嵌合凸部11bが設けられている。オーバーキャップ40を吐出ポンプ100に装着させると、オーバーキャップ40の切欠き部43に、装着キャップ10の嵌合凸部11bが内嵌されて、オーバーキャップ40の抜け止め機構となる(
図2及び
図3(a)参照)。また、当該オーバーキャップ40は、装着キャップ10からシリンダ30を取り外す際に、シリンダ30を装着キャップ10に対して回転させるための治具として用いることができる(
図4)。なお、この点については後述するものとする。
【0016】
なお、本明細書における「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、容器本体を正立姿勢に配置した状態で、吐出ポンプ100を容器本体の口部に装着したときに、容器本体が位置する側を「下」、吐出ヘッド20が位置する側を「上」と称するものとする。また周方向とは、シリンダ30の中心軸線(
図1では符号Oで示す)を中心に周回する向きであり、径方向とは中心軸線に直交する向きをいう。さらに、シリンダ30、オーバーキャップ40、容器本体の中心軸は、シリンダ30の中心軸Oと一致するものとする。以下、各構成要素について説明する。
【0017】
図1及び
図2を参照して吐出ポンプ100の装着キャップ10の構成について説明する。
図1に示すように、装着キャップ10は、容器本体(不図示)の口部の外周面に装着される装着筒11と、装着筒11の上部に設けられるリングキャップ12とを備えている。
【0018】
装着筒11は、容器本体の口部の外周面に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部11cを内周面に有する(
図2参照)。
【0019】
図2に示すように、リングキャップ12は、装着筒11の上端及び容器本体の口部の上端を覆うリング状の底壁13と、底壁13の外周側において底壁の上面から立設される外周筒14と、底壁13の内周端から立設される内周筒15と、内周筒15の上端に連設され径方向内側に突出するリング状の天壁16と、当該天壁16の内周端から垂設される案内筒17とを備えている。外周筒14と、底壁13と、内周筒15とによって、上方が開口するヘッド溝Aが構成される(
図3(b)参照)。また、内周筒15と、天壁16と、案内筒17とによって下方が開口するシリンダ溝Bが構成される。案内筒17は容器本体の口部よりも小径であり、次に説明する吐出ヘッド20が備えるステム22が挿通されている。
【0020】
吐出ヘッド20は、押下部21と、上記ステム22とを備えている。押下部21は、上記吐出口21aを備え、頂壁21bと、当該頂壁21bの外周端から下方に垂設される垂下壁21cと、頂壁21bの裏面に設けられステム22の上端に嵌着される縦筒21dと、垂下壁21cに設けられる吐出口21aと、ステム22とを連通する吐出路21eとを備えている。垂下壁21cの下端は、上記リングキャップ12に設けられた外周筒14と、底壁13と、内周筒15により構成される上記ヘッド溝Aに挿入される。
【0021】
ステム22は、上部筒22aと、上部筒22aに挿入される下部筒22bとを備え、上部筒22aと下部筒22bとは嵌合されている。下部筒22bは、シリンダ30内に配置された付勢部材50によって上方に付勢されている。
【0022】
シリンダ30は上端及び下端が開口する略円筒形状に形成されており、その内側に上記付勢部材50と、内容物を吸引するための吸引機構が設けられる。シリンダ30の内部には、吸引機構により容器本体の内部から吸引された所定量の内容物を貯留する収容空間が設けられる。また、シリンダ30の内部には、上記ステム22の下部筒22b及び上部筒22aの一部が挿入配置される。
【0023】
シリンダ30の上端部31(先端部)は、
図3(b)に拡大して示すように、上記リングキャップ12に設けられた内周筒15と、天壁16と、案内筒17とにより構成される上記シリンダ溝Bに挿入され、シリンダ溝Bと螺合している。具体的には、シリンダ溝Bの溝内壁面となる内周筒15の内周面には、シリンダ30の中心軸方向と平行な縦リブ15aが複数設けられている。また、縦リブ15aには、シリンダ30の上端部31の外周面に設けられたねじ山31a(雄ねじ)に対応するねじ溝15b(雌ねじ)が設けられている。当該ねじ溝15bは、例えば、上端部31の外周面にねじ山31aが形成されたシリンダ30を、上記縦リブ15aが複数設けられたシリンダ溝Bに対して圧入することで、すなわち、いわゆる打栓することで、シリンダ30の上端部31に設けられたねじ山31aに対応するねじ溝15bを、縦リブ15aを変形させて形成(転写)したものである。また、シリンダ30の上端部31は内周筒15と案内筒17によって挟持されている。
【0024】
次に、再び
図1を参照してシリンダ30の下部32の構成を説明する。シリンダ30は上下に長尺な筒状に構成されており、装着キャップ10の内側に配設される部分と、装着キャップ10の下方に配設される部分とを備える。ここでは、装着キャップ10の下方に配設される(露出する)部分をシリンダ30の下部32と称する。シリンダ30の下部32には、
図3(c)に示すように断面が略六角形状を呈する操作部33を備える。この操作部33の外形は、装着キャップ10の外周面11aに設けられた嵌合凸部11b(
図1参照)の外形と略同じ形状である。
【0025】
図1に示すように、当該操作部33の下方には径方向外側に突出する段部34が設けられ、段部34の下方には段部34より小径でありその下端部が下方に向かうにつれて縮径するテーパー部35が設けられ、テーパー部35の下方には容器本体内に導入される吸引パイプ70が嵌着される円筒状のパイプ嵌着部36が設けられている。
【0026】
次に、
図2を参照して、付勢部材50及び吸引機構について説明する。本実施の形態では、付勢部材50は金属製のコイルスプリングであり、ステム22の下部筒22bと、シリンダ30の内周面とに当接されている。押下部21が押下されるなどして、押下部21に下向きの力が加わると、下部筒22bを介して付勢部材50に下向きの力が加わり、コイルスプリングは圧縮する。押下部21に対する下向きの力が解除されると、コイルスプリングは元の形状に復元し、このとき下部筒22bを上方に押し戻す。
【0027】
吸引機構は、ピストン61と、シリンダ30の下部32に設けられる吸い込み弁などから構成される。ピストン61は、リングキャップ12の案内筒17の下方に配置され、シリンダ30の内周面とステム22の下部筒22bの外周面とに摺動可能にシリンダ30に設けられる。吸い込み弁は吸引パイプ70とシリンダ30内の上記収容空間とを繋ぐ内容物の流路を開閉する。
【0028】
次に、当該吐出ポンプ100の動作を簡単に説明する。吐出ヘッド20の押下部21が押下されるなどして、押下部21に下向きの力が加わると、押下部21と共にステム22が下方に移動する。このとき、ピストン61に対してステム22(下部筒22b)が下方に移動し、下部筒22bに設けられた連通孔22cが開放される。なお、連通孔22cは下部筒22bの径方向内外を連通する孔である。この連通孔22cが開放された後、ピストン61が上部筒22aに押下されてシリンダ30内周面に対して摺動しながらステム22とともに下方へ移動し、付勢部材50は下方に圧縮される。このとき、シリンダ30の収容空間内は加圧され、吸い込み弁は閉状態となり、連通孔22cは開状態となる。その結果、シリンダ30の収容空間に貯留されていた内容物がステム22及び吐出ヘッド20に設けられた吐出路21eを介して吐出口21aから外部に吐出される。
【0029】
押下部21に対する下向きの力が解除されると、ステム22は付勢部材50により上方付勢されているため上方に移動し、元の位置に戻る。当該動作に伴って、シリンダ30の収容空間内は負圧になり、連通孔22cは閉状態となり、吸い込み弁は開状態となる。その結果、シリンダ30の収容空間に吸引パイプ70を介して容器本体から内容物が吸引され、シリンダ30の収容空間に再び所定量の内容物が貯留される。
【0030】
続いて、装着キャップ10とシリンダ30との螺合を解除する方法を説明する。上述したとおり、本実施の形態の吐出ポンプ100は、装着キャップ10に設けたシリンダ溝Bと、シリンダ30の上端部31とは螺合している(
図2、
図3(b)参照)。そのため、装着キャップ10に対してシリンダ30を回転させることにより、装着キャップ10とシリンダ30との螺合を解除することができる。
【0031】
本実施の形態の吐出ポンプ100では、シリンダ30の下部に設けた操作部33の外形と切欠き部43の係合部43aの内周面形状が略同じ形状である。そのため、
図4に示すように、例えば、シリンダ30が上方に配置されるように吐出ヘッド20を保持し、オーバーキャップ40に設けられた切欠き部43の案内部43bから操作部33を挿入して、操作部33を係合部43aに内嵌させ、オーバーキャップ40をレンチ(治具)のように用いることができる。このとき、段部34により、係合部43aが抜け止めされる。そして、操作部33をオーバーキャップ40を用いて回転させることで、装着キャップ10とシリンダ30との螺合状態を解除し、装着キャップ10からシリンダ30を簡易に分離することができる。
【0032】
例えば、内容物が液体石鹸等であった場合、シリンダ30等の表面は液体石鹸等が付着しており、シリンダ30の下部32に操作部33が設けられていてもシリンダ30を装着キャップ10に対して回転させることが困難な場合がある。オーバーキャップ40を用いて、シリンダ30を回転させれば、切欠き部43と操作部33とが嵌合しているため、内容物によって滑ることなく、内容物が手に付着することもなく、簡易に装着キャップ10からシリンダ30を分離することができる。
【0033】
以上のことから、本実施の形態の吐出ポンプ100によれば、シリンダ30に設けられた付勢部材50や吸引機構が金属製部材(コイルスプリング、ボール弁など)を含む場合、装着キャップ10からシリンダ30を分離して、シリンダ30内に配置されたこれらの金属製部材を取り出して、金属製部材と樹脂製部材とを分別することができ、それぞれに適した廃棄処分(リサイクルを含む)等を行うことが可能になる。なお、本実施の形態において、付勢部材50以外は樹脂製であり、容器本体も樹脂製であるものとする。
【0034】
従来の吐出ポンプ100では、シリンダ30の上端部をアンダーカット形状とし、シリンダ30の上端部を装着キャップ10に設けたシリンダ溝に圧入(打栓)することで、シリンダ30を装着キャップ10に組み付けていたため、シリンダ30を装着キャップ10から分離することは困難であった。一方、シリンダ30の上端部31にねじ山31aを設けることは比較的容易であるが、シリンダ溝Bの溝内壁面にねじ溝を設けるのは困難であり、製造工程が煩雑になり、コスト増となる。しかしながら、本実施の形態の吐出ポンプ100では、シリンダ30の上端部31にねじ山31aを設け、シリンダ溝Bの溝内壁面に中心軸方向に平行な縦リブ15aを複数設け、シリンダ30の上端部31をシリンダ溝Bに打栓することで、シリンダ溝Bの溝内壁面にねじ溝15bを形成しつつ、従来と同様の方法でシリンダ30を装着キャップ10に組み付けることができ、製造工程を大きく変えることなく、シリンダ30とキャップとを簡易に分離可能な構成を実現することができる。
【0035】
以上説明した本実施の形態は、本発明に係る吐出ポンプ100の一態様に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上記実施の形態では、付勢部材50が金属製のコイルスプリングである構成を例に挙げて説明したが、本発明は当該態様に限定されるものではない。吸引機構として、金属製のボール弁を使用してもよい。また、吐出ヘッド20及び吸引機構の構成は上記実施の形態で示した例に限定されるものではなく、適宜変更可能であるのは勿論である。
【0036】
また、上記実施の形態では、オーバーキャップ40に切欠き部43を設け、オーバーキャップ40の下端側から操作部33を挿入させて、操作部33を切欠き部43に内嵌させるものとしたが、本発明は当該態様に限定されるものではない。例えば、オーバーキャップ40に、操作部33を内嵌可能な貫通孔を設け、これを本発明にいう嵌合部としてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態では、装着キャップ10の外周面11aに嵌合凸部11bを設け、オーバーキャップ40の切欠き部43にこの嵌合凸部11bを内嵌させるものとしたが、装着キャップ10の外周面11aには必ずしもこのような嵌合凸部11bを設ける必要はない。また、操作部33の断面形状、切欠き部43の係合部43aの内周面形状、嵌合凸部11bの外形は本実施の形態に示すような略六角形状に限定されるものではなく、三角形状、四角形状等の種々の多角形状であってもよいのは勿論であるし、円弧の一部が直線で切りかかれたような形状であってもよい。また、これらの形状は同一でなくてもよい。さらに、操作部33は外周面に複数の縦リブを設けたような構成であってもよい。要は操作部33を回転させる際に、操作部33が滑り止めとして機能する形状とされていればよい。また、切欠き部43は操作部33を回転させる際に操作部33と回転させる際に、操作部33と係わり合う辺又は面を有していればよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、シリンダ30の上端部31の外周面にねじ山31aを設け、シリンダ溝Bの溝内壁面に複数の縦リブ15aを設けたが、ねじ山と縦リブとは、シリンダ溝とシリンダ30の上端部(先端部)とが互いに当接する当接面のうち、いずれか一方の当接面に予めねじ山が設けられており、他方の当接面には複数の縦リブが設けられていればよく、上記態様に限定されるものではない。しかしながら、上述したとおり、シリンダ溝Bの溝内壁面にねじ山を設けることは困難である場合が多い。従って、上記実施の形態のように、シリンダ溝B側の当接面には縦リブを設け、シリンダ30の上端部31側の当接面(外周面)にねじ山を設けることが好ましい。
【0039】
また、上記実施の形態では、シリンダ溝Bの溝内壁面に中心軸方向に平行な縦リブ15aを複数設けるものとしたが、一方の当接面に予めねじ山を設け、他方の当接面に複数の縦リブを設ける際には、これらの縦リブがねじ山のリード角よりも大きな角度で並設されていればよく、縦リブの延びる方向は中心軸方向と平行である必要はない。但し、縦リブ15aの延びる方向を中心軸方向と平行または略平行にすることで、成型後の離型が容易になる。
【符号の説明】
【0040】
10 :装着キャップ
11 :装着筒
11a :外周面
11b :嵌合凸部
11c :雌ねじ部
12 :リングキャップ
13 :底壁
14 :外周筒
15 :内周筒
15a :縦リブ
15b :ねじ溝
16 :天壁
17 :案内筒
20 :吐出ヘッド
21 :押下部
21a :吐出口
21b :頂壁
21c :垂下壁
21d :縦筒
21e :吐出路
22 :ステム
22a :上部筒
22b :下部筒
22c :連通孔
30 :シリンダ
31 :上端部
31a :ねじ山
32 :下部
33 :操作部
34 :段部
35 :テーパー部
36 :パイプ嵌着部
40 :オーバーキャップ
41 :天壁
42 :周壁
43 :切欠き部
50 :付勢部材
61 :ピストン
70 :吸引パイプ
100 :吐出ポンプ
A :ヘッド溝
B :シリンダ溝
O :中心軸