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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20231012BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08L23/14
C08L23/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222413
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091769
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】永井 直
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/098865(WO,A1)
【文献】特開2005-120559(JP,A)
【文献】特開平05-132588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/14
C08L 23/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体(A)と、
シリル化ポリオレフィン(B)と、
を含む、オレフィン系樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン系重合体(A)が4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を含み、
前記α-オレフィンが炭素原子数2~10の直鎖状α-オレフィンであり、
前記オレフィン系樹脂組成物中の前記ポリオレフィン系重合体(A)の含有量に対する前記シリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比が0.003以上0.30以下である、オレフィン系樹脂組成物
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン系樹脂組成物において、
前記オレフィン系重合体(A)の前記損失正接tanδの最大値が、0℃~60℃の温度範囲において0.6以上であるオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂組成物において、
前記シリル化ポリオレフィン(B)が下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィンを含むオレフィン系樹脂組成物。
【化1】
(前記式(1)において、A、AおよびAは各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。Aが複数存在する場合、各Aは同一でも異なっていてもよい。ただし、A、A、Aのうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。)
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂組成物において、
前記ポリオレフィン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂組成物から成形される成形体。
【請求項6】
請求項に記載の成形体において、
フィルム、シート、不織布または発泡体である成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系共重合ゴム等のオレフィン系共重合体やそれを含むオレフィン系樹脂組成物は、樹脂もしくは樹脂組成物の塊を重ねておくと表面で付着して簡単に剥離できなくなるブロッキングという現象が起こることが知られ、従来から問題になり種々の対策が行われてきた。
上記ブロッキングを抑制する方法として、例えば、オレフィン系共重合体に、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、高級脂肪酸等のアンチブロッキング剤(粘着防止剤)を混合する方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、高級脂肪酸又は/及びその塩で被覆された粘着性の小さい、オレフィン系共重合ゴムを含むゴムペレットが記載されている。
特許文献2には、高級脂肪酸又は/及びその塩で被覆された粘着性の小さいゴムペレットを製造する方法に於いて、オレフィン系共重合ゴムを含むゴムペレットと微粉末状の高級脂肪酸又は/及びその塩とをアルコールの存在下に混合することを特徴とする粘着性の小さいゴムペレットの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭56-136347号公報
【文献】特開昭59-124829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者による検討の結果、動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体、またはそれを含むオレフィン系樹脂組成物では、上記アンチブロッキング剤の添加によるブロッキングの抑制効果が不十分であることが明らかとなった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ブロッキングが抑制されたオレフィン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体(A)に対して、シリル化ポリオレフィンを配合することにより、ブロッキングが抑制されたオレフィン系樹脂組成物を得ることができることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0009】
[1]
動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体(A)と、
シリル化ポリオレフィン(B)と、
を含むオレフィン系樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載のオレフィン系樹脂組成物において、
上記オレフィン系重合体(A)の上記損失正接tanδの最大値が、0℃~60℃の温度範囲において0.6以上であるオレフィン系樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂組成物において、
上記ポリオレフィン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物において、
上記シリル化ポリオレフィン(B)が下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィンを含むオレフィン系樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)において、A、AおよびAは各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。Aが複数存在する場合、各Aは同一でも異なっていてもよい。ただし、A、A、Aのうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。)
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物において、
上記ポリオレフィン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物において、
上記オレフィン系樹脂組成物中の上記ポリオレフィン系重合体(A)の含有量に対する上記シリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比が0.003以上0.30以下であるオレフィン系樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物から成形される成形体。
[8]
上記[7]に記載の成形体において、
フィルム、シート、不織布または発泡体である成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブロッキングが抑制されたオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本実施形態において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本実施形態に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
1.オレフィン系樹脂組成物
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物は、動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体(A)と、シリル化ポリオレフィン(B)と、を含む。
一般的にアンチブロッキング剤として用いられるタルク、シリカ、炭酸カルシウム等は、オレフィン系重合体との親和性が低いため、樹脂組成物表面に位置するアンチブロッキング剤が時間経過とともに樹脂組成物から脱落するため、ブロッキングが発現しやすくなる傾向にある。また、高級脂肪酸はブロッキングの発現を抑制する効果が小さい傾向があり、効果を発現させるには添加量を増やすことが求められることがある。ただし、その場合は、その他の重合体の特性や物性を悪化させうるという問題がある。また高級脂肪酸の一部には感作性が有ることが知られており、皮膚に接触する用途での仕様が難しくなり得るという問題がある。
一方でシリル化ポリオレフィン(B)は、オレフィン系重合体(A)との親和性が高く、かつブロッキングの発現を抑制する効果が大きいため、適量の添加により、ブロッキングの発現の抑制効果を維持できる。
【0013】
オレフィン系重合体(A)と、シリル化ポリオレフィン(B)と、を含むオレフィン系樹脂組成物は、表面ケイ素濃度が高く、表面自由エネルギーが抑制されるため、ブロッキング発現が抑制されると本発明者らは推察している。
高極性のシリル基はオレフィン系重合体(A)との親和性が低いことから樹脂組成物表面の外側方向に配置され、またシリル化ポリオレフィン(B)のオレフィン部位はオレフィン系重合体(A)との親和性が高いことから、オレフィン部位はオレフィン系重合体(A)と相互作用する。これによりシリル化ポリオレフィン(B)は樹脂組成物の表面から脱落しづらくなり、その結果、オレフィン系重合体(A)のブロッキング発現が抑制されると本発明者らは推察している。
また従来のアンチブロッキング剤と比較し、シリル化ポリオレフィン(B)は樹脂組成物の表面で均一に存在しやすいため、組成物の表面全体でムラなくオレフィン系重合体(A)のブロッキング発現が抑制されるものと本発明者らは推察している。
【0014】
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物において、オレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系重合体(A)の含有量に対するシリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比は、ブロッキングの発現をより一層抑制する観点から、好ましくは0.003以上、より好ましくは0.004以上であり、成形性、その他の重合体との相容性、その他の重合体の特性・物性を維持させる観点から、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.20以下である。
【0015】
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物において、オレフィン系重合体(A)とシリル化ポリオレフィン(B)との合計含有量は、オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0016】
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物の形状としては特に限定されないが、例えば、ペレット状、ベール状、塊状等が挙げられる。
【0017】
以下、本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0018】
<オレフィン系重合体(A)>
本実施形態に係るオレフィン系重合体(A)は、動的粘弾性の温度依存性を測定して得られる損失正接tanδの最大値が、-20℃~80℃の温度範囲において0.2以上であるオレフィン系重合体であり、例えば、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ジエン、官能基化ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン等を単位構成要素とする、単独重合体もしくは共重合体等が挙げられる。
【0019】
直鎖状のα-オレフィンとしては、例えば炭素原子数が2~20のα-オレフィンであり、好ましくは炭素原子数が2~15のα-オレフィン、より好ましくは炭素原子数が2~10のα-オレフィンである。より具体的には、直鎖状のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン-1、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で用いることもでき、または2種類以上の組み合わせで用いることもできる。
【0020】
分岐状のα-オレフィンとしては、例えば炭素原子数が5~20の分岐状のα-オレフィンであり、好ましくは炭素原子数が5~15の分岐状のα-オレフィンである。より具体的には、分岐状のα-オレフィンとしては、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0021】
環状オレフィンとしては、例えば炭素原子数が3~20の環状オレフィンであり、好ましくは炭素原子数が5~15の環状オレフィンである。より具体的には、環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0022】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノまたはポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0023】
共役ジエンとしては、例えば炭素原子数が4~20の共役ジエンであり、好ましくは炭素原子数が4~10の共役ジエンである。より具体的には、共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0024】
非共役ポリエンとしては、例えば、炭素原子数が5~20の非共役ポリエンであり、好ましくは炭素原子数が5~10の非共役ポリエンである。より具体的には、非共役ポリエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0025】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン;ハロゲン化オレフィン;(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミン等の不飽和アミン;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、不飽和カルボン酸から得られた無水物等の不飽和カルボン酸無水物;不飽和カルボン酸から得られたハロゲン化物等の不飽和カルボン酸ハライド;4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のエチレン性不飽和シラン化合物等が挙げられる。
【0026】
水酸基含有オレフィンとしては、例えば、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限されないが、例えば末端水酸基化オレフィン系化合物が挙げられる。末端水酸基化オレフィン系化合物としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ウンデセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセン等の、好ましくは炭素数が2~20、より好ましくは炭素数が2~15の直鎖状の水酸化-α-オレフィン;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセン等の、好ましくは炭素数が5~20、より好ましくは炭素数が5~15の分岐状の水酸化-α-オレフィンが挙げられる。
【0027】
ハロゲン化オレフィンとしては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等の周期表第17族原子を有するハロゲン化-α-オレフィンが挙げられる。具体的には、ハロゲン化オレフィンとしては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化-1-ブテン、ハロゲン化-1-ペンテン、ハロゲン化-1-ヘキセン、ハロゲン化-1-オクテン、ハロゲン化-1-デセン、ハロゲン化-1-ドデセン、ハロゲン化-1-ウンデセン、ハロゲン化-1-テトラデセン、ハロゲン化-1-ヘキサデセン、ハロゲン化-1-オクタデセン、ハロゲン化-1-エイコセン等の、好ましくは炭素原子数が2~20、より好ましくは炭素原子数が2~15の直鎖状のハロゲン化-α-オレフィン;ハロゲン化-3-メチル-1-ブテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-エチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4-エチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-3-エチル-1-ヘキセン等の、好ましくは炭素原子数が5~20、より好ましくは炭素原子数が5~15の分岐状のハロゲン化-α-オレフィンが挙げられる。
【0028】
上記の中でも、ポリオレフィン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を含むことが好ましい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンは、通常、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンである。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンとして用いられる物質のうち、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、水酸化-1-ウンデセンが好ましい。さらに、シリル化ポリオレフィン(B)の添加によってオレフィン系重合体(A)のブロッキングの発現を効果的に抑制する点から、炭素原子数が2~10の直鎖状のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましく、エチレンおよびプロピレンがさらに好ましく、プロピレンが特に好ましい。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンは、例示した物質のうちの1種類のみであってもよく、例示した物質のうちの2種類以上の組み合せであってもよい。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合成分を含んでいてもよい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)と、任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)とを有することが好ましい。これらの構成単位(i)と構成単位(ii)と構成単位(iii)の含有比率は、構成単位(i)、(ii)、(iii)の合計を100モル%とすると、好ましくは構成単位(i)が16~95モル%、構成単位(ii)が5~84モル%、構成単位(iii)が0~10モル%である。より好ましくは、構成単位(i)が26~90モル%、構成単位(ii)が10~74モル%、構成単位(iii)が0~7モル%であり、さらに好ましくは、構成単位(i)が61~85モル%、構成単位(ii)が15~39モル%、構成単位(iii)が0~5モル%である。
【0029】
オレフィン系重合体(A)の極限粘度[η]は、加工性の観点から0.5~5.0dL/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.6~4.0dL/g、特に好ましくは0.7~3.5dL/gである。極限粘度[η]の調整方法は特に制限されないが、重合中に水素分子を併用し重合体の分子量を調整することで、極限粘度[η]を調整することができる。
【0030】
オレフィン系重合体(A)は、ブロッキングの発現をより一層抑制する観点、ならびに加工性の観点から、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは1.0~3.5、より好ましくは1.2~3.0、さらに好ましくは1.5~2.5である。
【0031】
オレフィン系重合体(A)のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0032】
動的粘弾性測定により求められたtanδについて説明する。オレフィン系重合体(A)に対し、雰囲気温度を連続的に変化させながら動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G‘(Pa)、損失弾性率G“(Pa)を測定し、G”/G’で与えられる損失正接tanδを求める。温度と損失正接tanδとの関係をみると、損失正接tanδは一般に特定の温度においてピークを有する。そのピークが現れる温度は一般にガラス転移温度(以下、Tgとも記す)と呼ばれる。損失正接tanδのピークが現れる温度は、後述の動的粘弾性測定に基づき求めることができる。ここで、本実施形態において、通常、損失正接tanδのピーク値が本実施形態に係る損失正接tanδの最大値となる。また、損失正接tanδのピークが2つ以上観察される場合、最も大きいピークのピーク値が本実施形態に係る損失正接tanδの最大値である。
【0033】
本実施形態に係るオレフィン系重合体(A)は、-20℃~80℃の温度範囲における損失正接tanδの最大値が0.2以上であり、好ましくは0℃~60℃の温度範囲における損失正接tanδの最大値が0.6以上であり、より好ましくは0℃~60℃の温度範囲における損失正接tanδの最大値が0.8以上である。損失正接tanδの最大値を上記範囲とすることで、シリル化ポリオレフィン系(B)の添加によるブロッキング発現の抑制効果をより一層向上できる。損失正接tanδは後述の方法で測定できる。なお、損失正接tanδは、オレフィン系重合体(A)の分子骨格、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、さらにそれら比である分子量分布(Mw/Mn)等を変更することにより調整できる。
【0034】
オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50℃~80℃であり、より好ましくは-20℃~70℃であり、さらに好ましくは-10℃~60℃であり、特に好ましくは0℃~50℃である。ガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、シリル化ポリオレフィン(B)の添加によりブロッキングの発現をより一層抑制できる。ガラス転移温度(Tg)は、オレフィン系重合体(A)の分子骨格、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、さらにそれら比である分子量分布(Mw/Mn)等を変更することにより調整できる。
【0035】
本実施形態に係るオレフィン系重合体(A)は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、及び特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0036】
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物中のオレフィン系重合体(A)の含有量は特に限定されないが、オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99.8質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99.0質量%以下、さらにより好ましくは98.0質量%以下、特に好ましくは97.0質量%以下である。上記範囲とすることにより、オレフィン系樹脂組成物のブロッキングの発現がより一層抑制され、成形性により一層優れたオレフィン系樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
<シリル化ポリオレフィン(B)>
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)は、シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有する限りどのような構造でもよい。例えばポリオレフィンにシリコーンがグラフトした構造であるシリコーングラフトポリオレフィン、ポリオレフィンとシリコーンとのブロック共重合体、シリコーンにポリオレフィンがグラフトした構造、上記ブロック共重合体のシリコーン部分にポリオレフィンがグラフトした構造等を挙げることができる。シリル化ポリオレフィン(B)は1種類でもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ブロック共重合体としては、(ポリオレフィン鎖)-(シリコーン鎖)の順に結合したブロック共重合体、(ポリオレフィン鎖)-(シリコーン鎖)-(ポリオレフィン鎖)の順に結合したブロック共重合体等を挙げることができる。
ポリオレフィン鎖は例えば炭素数2~50、好ましくは炭素数2~20のオレフィンに由来する構造単位を含む重合体鎖を例示できる。
中でも下記一般式(1)で表される構造を有するものが好ましい。
【0039】
【化2】
【0040】
上記式(1)において、A、AおよびAは各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。Aが複数存在する場合、各Aは同一でも異なっていてもよい。ただし、A、A、Aのうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。
【0041】
上記A、AおよびAにおけるポリオレフィン鎖は、例えば炭素数2~50、好ましくは炭素数2~20のオレフィンに由来する構造単位を含む重合体鎖である。
【0042】
炭素数2~50のオレフィンとしては、具体的には、エチレン、炭素数3~50のα-オレフィン(プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等)が挙げられる。
これらのうち、エチレン、炭素数3~12のα-オレフィンが好ましく、エチレン、炭素数3~8のα-オレフィンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。
ポリオレフィン鎖は単独重合体鎖であっても、共重合体鎖であってもよい。
【0043】
なかでも、エチレンおよび炭素数3~50のα-オレフィンから選ばれる炭素数2~50のオレフィンのみから構成される重合体鎖が好ましく、さらには、エチレン単独重合体鎖、プロピレン単独重合体鎖、またはエチレン・炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体鎖が好ましい。エチレン・炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体鎖において、全構成単位を100モル%としたとき、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構造単位は、例えば0モル%を超え20モル%以下とすることができ、0モル%を超え10モル%以下とすることもできる。
【0044】
また、上記ポリオレフィン鎖は所望により、他のオレフィン由来の構造単位を含んでもよい。他のオレフィンとしては、シス-2-ブテン等の内部二重結合を含むオレフィン;イソブテン等のビニリデン化合物;スチレン等のアリールビニル化合物;α-メチルスチレン等のアリールビニリデン化合物;メタクリル酸メチル等の官能基置換ビニリデン化合物;5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等の内部二重結合を含む脂肪族環状オレフィン;インデン等の芳香環を含有する環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン等の鎖状または環状のポリエン等が挙げられる。
【0045】
他のオレフィン由来の構造単位の含有量は、ポリオレフィン鎖を構成する全構成単位を100モル%としたとき、0~10モル%が好ましく、0~5モル%がより好ましい。
【0046】
上記ポリオレフィン鎖は、下記のGPC法により求めた数平均分子量が100以上500,000以下であることが好ましく、200以上100,000以下がさらに好ましく、500以上50,000以下がさらに好ましく、700以上10,000以下がさらに好ましい。
また、上記ポリオレフィン鎖は、下記のGPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.1~3.0の範囲にあることが好ましい。
【0047】
GPC測定法:
GPC測定は、温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶媒として使用して測定し、ポリエチレン換算値として分析値(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mn)を得ることができる。
【0048】
測定は以下の条件で行うことができる。また、分子量は、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて求めることができる。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型(Waters社製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mLo-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
分子量換算:PS換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark-Houwink粘度式の係数を用いることができる。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4,aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4,aPE=0.70
【0049】
上記A、A、AおよびRにおいて、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基としては、アルキル基、アリールアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
【0050】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0051】
上記式(1)において、mは1~10,000の整数である。mは5以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、mは1,000以下が好ましく、300以下がより好ましく、50以下がより好ましい。
【0052】
上記A、A、単数または複数のAは、全てがポリオレフィン鎖であってもよいし、一部の基がポリオレフィン鎖でその他は炭素数1~20の炭化水素基であってもよい。
【0053】
上記式(1)において、mが2以上であり、Aのうちの少なくとも1つが他のAと異なる場合、複数種の下記ユニットが存在するが、その並ぶ順序に特に制限はなく、ブロック的であってもランダム的であってもよい。
【0054】
【化3】
【0055】
上記式(1)としては、下記(1A)、(1B)または(1C)で表される構造体が好ましく、その中でも(1A)がより好ましい。
【0056】
(1A)上記式(1)において、AおよびAがポリオレフィン鎖であり、Aが炭素数1~20の炭化水素基である、構造体。
(1B)上記式(1)において、A、Aの一方がポリオレフィン鎖であり、他方が炭素数1~20の炭化水素基であり、Aが炭素数1~20の炭化水素基である、構造体。
(1C)上記式(1)において、AおよびAが炭素数1~20の炭化水素基であり、Aのうち少なくとも1つがポリオレフィン鎖である、構造体。
【0057】
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)において、シリコーン鎖/ポリオレフィン鎖(質量比)は特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは5/95~99/1であり、より好ましくは10/90~95/5である。
【0058】
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、国際公開第2012/098865号公報の段落0089~0145や段落0196~0207等に記載された方法により製造することができる。
【0059】
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物中のシリル化ポリオレフィン(B)の含有量は特に限定されないが、オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、ブロッキングの発現をより一層抑制する観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、成形性、その他の重合体との相容性、その他の重合体の特性・物性を維持させる観点から、好ましくは40.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下、さらにより好ましくは10.0質量%以下である。
【0060】
<その他の重合体>
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物は、オレフィン系重合体(A)およびシリル化ポリオレフィン(B)以外のその他の重合体を含んでもよい。
その他の重合体としては、例えば、オレフィン系重合体(A)およびシリル化ポリオレフィン(B)以外のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0061】
<添加剤>
本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物は、所望により、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオレフィン製品の製造で用いられる各種公知の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0062】
2.成形体
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物から成形される。本実施形態に係る成形体としては、どのような形状でも構わないが、フィルム、シート、不織布または発泡体であることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係るオレフィン系樹脂組成物を、押出成形法、射出成形法、溶融流涎法、インフレーション成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、注型成形法等の公知の方法により成形することができる。
【0064】
3.用途
本実施形態の成形体の用途としては、例えば以下が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
撥水フィルム、撥油フィルム、包装材料;主に携帯電話、スマートフォン、タブレット、タッチパネル、太陽電池、LED等向けの反射防止フィルム、保護フィルム、反射型偏光フィルム;太陽電池向け光取り込みフィルム;有機ELパネルの光取出しフィルム;導光板;抗菌シート;細胞培養向け材料;ウィルス検知センサー材料;LEDの高輝度化;反透明マイクロミラー
【0066】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
1.測定および評価方法
(1)オレフィン系重合体(A)の組成
オレフィン系重合体(A)中の4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィンの含有率(モル%)を、13C-NMRによる測定値から求めた。具体的には、日本電子株式会社製ECP500型核磁気共鳴装置(商品名)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン、積算回数:1万回以上にて、オレフィン系重合体(A)の13C-NMRのスペクトルを測定した。
【0069】
(2)極限粘度
オレフィン系重合体(A)の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。具体的には、約20mgの粉末状のオレフィン系重合体(A)をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定した。このデカリン溶液にデカリン5mlを加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηSPを測定した。この希釈操作を2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηSP/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(式1参照)。
[η]=lim(ηSP/C) (C→0) ・・・式1
【0070】
(3)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
GPC測定は、温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶媒として使用してポリスチレン検量線を用いて測定し、ポリエチレン換算値として分析値(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mn)を得ることができる。オレフィン系重合体(A)とシリル化ポリオレフィン(B)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定は以下の条件でそれぞれ行った。
(3.1)オレフィン系重合体(A)における測定条件:
標準ポリスチレン換算法により算出した。
・装置:GPC(ALC/GPC 150-C plus型、示差屈折計検出器一体型、ウォーターズ コーポレーション(Waters Corporation)社製、商品名)
・溶剤:o-ジクロロベンゼン
・カラム:東ソー株式会社製GMH6-HT(商品名)2本と東ソー株式会社製GMH-HTL(商品名)2本とを直列に接続した構成
・流量:1.0mL/min
・カラム温度:140℃
・分子量換算:標準ポリスチレン換算法
(3.2)シリル化ポリオレフィン(B)における測定条件:
市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて求めた。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型(Waters社製)
・溶剤:o-ジクロロベンゼン
・カラム:東ソー株式会社製TSKgelカラム4本を直列に接続した構成
・流速:1.0ml/分
・温度:140℃
・試料:0.15mg/mLo-ジクロロベンゼン溶液
・分子量換算:PS換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark-Houwink粘度式の係数を用いた。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4,aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4,aPE=0.70
【0071】
(4)動的粘弾性測定
オレフィン系重合体(A)を、厚さ2mmのシート状にプレス成形して、長さ20mm×幅10mm×厚さ2mmの短冊片を切り出した。ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社(TA Instruments Japan Inc.)製粘弾性測定装置ARES(商品名)を用いて、以下の測定条件で動的粘弾性の温度依存性データを測定した。当該測定で得られた、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")との比(G"/G':損失正接)をtanδとした。またtanδを温度に対してプロットした際に、特定温度範囲内で上に凸の曲線すなわちピークが得られれば、ピークの頂点の極大値における温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(測定条件)
Frequency:1.0Hz
Temperature:-70~80℃
Ramp Rate:4.0℃/分
Strain:0.5%
【0072】
(5)ブロッキングの評価方法
後述する方法によって得られた単層フィルム2枚を重ね、200g/cmの荷重をかけて、40℃で24時間放置した。その後、2枚の単層フィルムを手ではがし、その時のフィルムのはがれやすさを、ブロッキング性として以下のように評価した。
◎:抵抗なくはがれる
○:ややはがれにくい
△:はがれにくい
×:極めてはがれにくい
【0073】
2.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
【0074】
(1)オレフィン系重合体(A)
十分に窒素置換した容量1.5リットルの撹拌翼付ステンレス製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)と、4-メチル-1-ペンテン450mlを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、撹拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmolと、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmol含むトルエン溶液0.34mlとを、窒素を用いてオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを撹拌しながら注いだ。
こうして得られた溶媒を含む重合体を、100℃、減圧下で12時間乾燥することでオレフィン系共重合体(A-1)を得た。このオレフィン系共重合体(A-1)中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構造単位の含量は72mol%、プロピレンから導かれる構造単位の含量は28mol%であった。また、このオレフィン系共重合体(A-1)の極限粘度[η]は1.5であり、重量平均分子量(Mw)は337,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。上記方法にて測定された-20℃~80℃、0℃~60℃両温度範囲における損失正接tanδの最大値は2.7であった。上記方法にて測定されたガラス転移温度(Tg)は30℃であった。
【0075】
(2)シリル化ポリオレフィン(B)
[合成例1]
(片末端にビニル基を有するポリエチレンの合成)
国際公開第2012/098865号の合成例2に記載の方法に準じて片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)を合成した。
H-NMR測定により、得られた重合物はホモポリエチレンで、なおかつ片末端のみ二重結合を含有することが明らかであった。この片末端二重結合含有エチレン系重合体(P-1)(単体)の物性は以下の通りであった。
融点(Tm)127℃
Mw=4770、Mw/Mn=2.25(GPC)
末端不飽和率 97%
【0076】
[合成例2]
(白金触媒組成物(C-1)の調製)
マグネットスターラーチップを入れた50mlサンプル管中、塩化白金(II)0.50gを、下記構造のヒドロシランA(HS(A)、Gelest,Inc.製、DMS-H11)(10ml)中に懸濁し、窒素気流下、室温で撹拌した。190時間撹拌した後、シリンジにて反応液を約0.4ml採取し、0.45μmPTFEフィルターを用いて濾過して10mlサンプル管中に濾液を採取し、白金濃度が3.8質量%の白金触媒組成物(C-1)を得た。
ヒドロシランA(HS(A)):HSi(CHO-(-Si(CH-O-)-Si(CH
(n=12~13)
【0077】
[合成例3]
(末端ビニル基を有するポリエチレンのヒドロシランへの導入)
300mlの2ツ口フラスコに、[合成例1]で得た片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)25.1g(11.8mmol)を装入し、窒素雰囲気下で、ヒドロシランA(HS(A))6.7g(5.9mmol;Si-H基として11.8mmol相当)と、[合成例2]で調製した白金触媒組成物(C-1)をヒドロシランA(HS(A))で200倍希釈したもの(C-1a)150μl(Pt換算で1.4×10-6mmol)をさらに装入した。予め内温130℃に昇温しておいた油浴中に、上記2ツ口フラスコをセットし、撹拌した。約3分後ポリマーは融解した。次いで6時間後に冷却し、メタノール約200mlを加え、300mlビーカーに内容物を取り出し2時間撹拌した。その後、固体をろ取しメタノールで洗浄し、60℃、2hPa以下の減圧下で乾燥させることにより、白色固体のシリル化ポリオレフィン(B-1)33.1gを得た。NMR解析の結果、得られたシリル化ポリオレフィン(B-1)は収率98%、オレフィン転化率100%、異性化率2%であった。MFRは測定上限値以上(MFR>100g/10min)であり、分子式より計算される(B-1)中のポリオルガノシロキサン含量は23質量%であった。
【0078】
(3)添加剤
・エルカ酸アミド(アルフローP10(商品名)、日本油脂社製)
・シリカ(クリスタライト5X(商品名)、龍森社製)
【0079】
[実施例1]
オレフィン系共重合体(A-1)99.5質量部に、シリル化ポリオレフィン(B-1)0.5質量部をドライブレンドし、2軸押出機(L/D=60、東芝機械製TEM-26SS)にてシリンダー温度200℃で溶融混合し、樹脂組成物(D-1)を得た。得られた樹脂組成物(D-1)について、サーモ・プラスティックス工業社製フィルム成形装置を用いてTダイ温度210℃でフィルム状に成形し、樹脂組成物(D-1)からなる単層フィルムを得た。単層フィルムの厚さは50μmであった。得られたフィルムを用いて、ブロッキングの評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2~4]
オレフィン系共重合体(A-1)とシリル化ポリオレフィン(B-1)の配合量を表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、単層フィルムをそれぞれ成形した。単層フィルムの厚さはそれぞれ50μmであった。得られたフィルムを用いて、ブロッキングの評価をそれぞれ実施した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
シリル化ポリオレフィン(B-1)を使用しない以外は、実施例1と同様の操作を行い、単層フィルムを成形した。単層フィルムの厚さは50μmであった。得られたフィルムを用いて、ブロッキングの評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
[比較例2および3]
シリル化ポリオレフィン(B-1)を、エルカ酸アミド(アルフローP10(商品名)、日本油脂社製)およびシリカ(クリスタライト5X(商品名)、龍森社製)にそれぞれ変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、単層フィルムをそれぞれ成形した。単層フィルムの厚さはそれぞれ50μmであった。得られたフィルムを用いて、ブロッキングの評価をそれぞれ実施した。得られた結果を表1に示す。
【0083】
【表1】