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  • 特許-レーザドップラ速度計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】レーザドップラ速度計
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20231012BHJP
   G01S 17/58 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01P3/36 E
G01S17/58
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020006638
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113746
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】土井 健一郎
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148561(JP,A)
【文献】特開2016-90383(JP,A)
【文献】特開平7-35856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/36
G01S17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の速度を測定するレーザドップラ速度計であって、
波長が可視領域外のレーザ光である測定光を出射する測定用レーザ光源と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、
前記第1測定光と第2測定光とが、当該レーザドップラ速度計に対する相対位置が予め定められている領域である測定領域を異なる方向から照射するように、前記第1測定光と第2測定光とを、当該第1測定光と第2測定光のうちの少なくとも一方の進行方向を変化させて出射する進路変更光学系と、
前記測定領域で反射した前記第1測定光と第2測定光の反射光の強度を検出し、検出信号として出力する光検出器と、
波長が可視領域内のレーザ光である照準光を出射する照準レーザ光源と、
前記照準レーザ光源が出射した前記照準光を、集光点の位置が前記測定領域内の位置となるように屈折させて出射する屈折光学系とを有することを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項2】
被測定物の速度を測定するレーザドップラ速度計であって、
波長が可視領域外のレーザ光である測定光を出射する測定用レーザ光源と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、
前記第1測定光と第2測定光とが、当該レーザドップラ速度計に対する相対位置が予め定められている領域である測定領域を異なる方向から照射するように、前記第1測定光と第2測定光とを、当該第1測定光と第2測定光のうちの少なくとも一方の進行方向を変化させて出射する進路変更光学系と、
波長が可視領域内のレーザ光である照準光を出射する照準レーザ光源と、
分光手段と、
前記進路変更光学系から出射される前記第1測定光の光軸と、前記進路変更光学系から出射される前記第2測定光の光軸との間に光軸が位置するように配置されたレンズと、
光検出器とを有し、
前記測定領域で反射した前記第1測定光と第2測定光の反射光は、前記レンズに入射し、
前記照準レーザ光源から出射された前記照準光は、前記分光手段に入射し、
前記レンズは、入射した前記反射光を前記分光手段に出射し、
前記分光手段は、前記レンズから入射した前記反射光を前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を、前記レンズに向けて出射し、
前記レンズは、前記分光手段から入射した前記照準光を、集光点の位置が前記測定領域内の位置となるように屈折させて出射すると共に、前記分光手段を介して前記光検出器に入射する反射光が当該光検出器の位置で集光するように、入射した前記反射光を屈折させて出射し、
前記光検出器は、前記分光手段から入射した前記反射光の強度を検出し検出信号として出力することを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項3】
請求項2記載のレーザドップラ速度計であって、
前記分光手段は、前記測定光の波長の光を反射し、前記照準光の波長の光を透過するダイクロイックミラーであり、
当該分光手段は、前記レンズから入射した前記反射光を反射して前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を透過させて前記レンズに向けて出射することを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項4】
請求項2記載のレーザドップラ速度計であって、
前記分光手段は、前記測定光の波長の光を透過し、前記照準光の波長の光を反射するダイクロイックミラーであり、
当該分光手段は、前記レンズから入射した前記反射光を透過させて前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を反射して前記レンズに向けて出射することを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のレーザドップラ速度計であって、
前記測定光として、1400nm以上2600nm以下の波長のレーザ光を用いることを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項6】
請求項5記載のレーザドップラ速度計であって、
前記測定光として、波長1550nmのレーザ光を用いることを特徴とするレーザドップラ速度計。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のレーザドップラ速度計であって、
前記光検出器が検出した前記検出信号のビート周波数に基づいて前記被測定物の速度を計測する計測部を有することを特徴とするレーザドップラ速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザドップラ速度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザドップラ速度計としては、測定用のレーザ光を二つのビームに分岐し、分岐した二つのビームを被測定物上の同じ領域に、被測定物の移動方向と垂直な方向に対して二つのビームが成す角を+θ、-θとなるように照射すると共に、照射した二つのビームによって被測定物上で反射した反射光を検出し、反射光のビート周波数をヘテロダイン検波して、被測定物の速度を算出するレーザドップラ速度計が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、このようなレーザドップラ速度計において、より高精度な速度測定を行うために、測定用のレーザ光として、より出力の高い近赤外レーザ光を用いつつ、不可視の近赤外レーザ光の照射位置を視認できるように、可視光を照準光として出射する技術が知られている(特許文献2)。
【0004】
この技術に係る、レーザドップラ速度計の構成を図3a、bに示す。
図3aのレーザドップラ速度計は、測定用レーザ光源301から出射された不可視の近赤外レーザ光である測定光と、照準用レーザ光源302から出射された可視光のレーザ光である照準光が、それぞれ光ファイバを通ってファイバ型WDM光カプラ303で波長合成され、コリメータレンズ304に出射される。
【0005】
コリメータレンズ304は、ファイバ型WDM光カプラ303から入射する測定光と照準光とを平行ビームに変換してビームスプリッタ305に出射し、ビームスプリッタ305は、コリメータレンズ304から入射する測定光と照準光とをそれぞれ二つに分岐し、分岐した一方の測定光と照準光とよりなる第1レーザ光群を被測定物100に照射し、分岐した他方の測定光と照準光とよりなる第2レーザ光群をミラー306に向けて出射する。
【0006】
そして、ミラー306は、ビームスプリッタ305から入射する第2レーザ光群を反射し、被測定物100に照射する。
ここで、ビームスプリッタ305から出射された第1レーザ光群とミラー306から出射された第2レーザ光群は、被測定物100の同じ領域を照射する。また、ビームスプリッタ305から出射された第1レーザ光群は、被測定物100の移動方向と垂直な方向から+θ傾けた方向から被測定物100を照射し、ミラー306から出射された第2レーザ光群は、被測定物100の移動方向と垂直な方向から-θ傾けた方向から被測定物100を照射する。
【0007】
したがって、第1レーザ光群の測定光と第2レーザ光群の測定光が照射されている領域には、第1レーザ光群の照準光と第2レーザ光群の照準光による可視の光スポットも形成される。
【0008】
次に、対物レンズ307は、被測定物100で反射した第1レーザ光群と第2レーザ光群の反射光を光検出器308に集光し、光検出器308は集光された反射光の測定光を検出し検出信号として出力する。
【0009】
ここで、第1レーザ光群の測定光の反射光の周波数と第2レーザ光群の測定光の反射光の周波数には、被測定物100の速度に応じた大きさのドップラシフトが生じており、光検出器308が出力する検出信号には、ドップラシフトの大きさに応じた周波数のビートが表れる。したがって、このビートの周波数から、被測定物100の速度vを算定できる。
【0010】
次に、図3bのレーザドップラ速度計は、図3aのレーザドップラ速度計で、測定光と照準光の波長合成に使用するファイバ型WDM光カプラ303の代わりに、ダイクロイックミラー309を用いたものであり、図3bのレーザドップラ速度計では、測定用レーザ光源301から測定光をコリメータレンズ304を介してダイクロイックミラー309に出射すると共に、照準用レーザ光源302からコリメータレンズ304を介して照準光をダイクロイックミラー309に出射することにより、ダイクロイックミラー330によって、測定光と照準光とが同軸状に波長合成されてビームスプリッタ305に出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-61928号公報
【文献】特許6474270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図3aに示したレーザドップラ速度計は、測定光と照準光の同一光路での波長合成に比較的高価なファイバ型WDM光カプラが必要となる。また、図3bに示した波長合成にダイクロイックミラーを用いるレーザドップラ速度計では、測定光の分岐の前段に、ダイクロイックミラーを用いた測定光と照準光の同一光路での波長合成のための光学系を設ける必要があり、レーザドップラ速度計を小型化する上で妨げとなる。
【0013】
そこで、本発明は、測定に用いる不可視光である測定光を、当該測定光の照準に用いる可視光である照準光と共に出射するレーザドップラ速度計を、小型化や低コスト化に適した、よりシンプルな構成で実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題達成のために、本発明は、被測定物の速度を測定するレーザドップラ速度計に、波長が可視領域外のレーザ光である測定光を出射する測定用レーザ光源と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、前記第1測定光と第2測定光とが、当該レーザドップラ速度計に対する相対位置が予め定められている領域である測定領域を異なる方向から照射するように、前記第1測定光と第2測定光とを、当該第1測定光と第2測定光のうちの少なくとも一方の進行方向を変化させて出射する進路変更光学系と、前記測定領域で反射した前記第1測定光と第2測定光の反射光の強度を検出し、検出信号として出力する光検出器と、波長が可視領域内のレーザ光である照準光を出射する照準レーザ光源と、前記照準レーザ光源が出射した前記照準光を、集光点の位置が前記測定領域内の位置となるように屈折させて出射する屈折光学系とを備えたものである。
【0015】
また、本発明は、前記課題達成のために、被測定物の速度を測定するレーザドップラ速度計に、波長が可視領域外のレーザ光である測定光を出射する測定用レーザ光源と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、前記第1測定光と第2測定光とが、当該レーザドップラ速度計に対する相対位置が予め定められている領域である測定領域を異なる方向から照射するように、前記第1測定光と第2測定光とを、当該第1測定光と第2測定光のうちの少なくとも一方の進行方向を変化させて出射する進路変更光学系と、波長が可視領域内のレーザ光である照準光を出射する照準レーザ光源と、分光手段と、前記進路変更光学系から出射される前記第1測定光の光軸と、前記進路変更光学系から出射される前記第2測定光の光軸との間に光軸が位置するように配置されたレンズと、光検出器とを備えたものである。ただし、前記測定領域で反射した前記第1測定光と第2測定光の反射光は、前記レンズに入射し、前記照準レーザ光源から出射された前記照準光は、前記分光手段に入射し、前記レンズは、入射した前記反射光を前記分光手段に出射する。また、前記分光手段は、前記レンズから入射した前記反射光を前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を、前記レンズに向けて出射する。また、前記レンズは、前記分光手段から入射した前記照準光を、集光点の位置が前記測定領域内の位置となるように屈折させて出射すると共に、前記分光手段を介して前記光検出器に入射する反射光が当該光検出器の位置で集光するように、入射した前記反射光を屈折させて出射する。そして、前記光検出器は、前記分光手段から入射した前記反射光の強度を検出し検出信号として出力する。
【0016】
このようなレーザドップラ速度計は、たとえば、前記分光手段を、前記測定光の波長の光を反射し、前記照準光の波長の光を透過するダイクロイックミラーとし、当該分光手段において、前記レンズから入射した前記反射光を反射して前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を透過させて前記レンズに向けて出射する。
【0017】
または、前記分光手段を、前記測定光の波長の光を透過し、前記照準光の波長の光を反射するダイクロイックミラーとし、当該分光手段において、前記レンズから入射した前記反射光を透過させて前記光検出器に向けて出射すると共に、前記照準レーザ光源から入射した前記照準光を反射して前記レンズに向けて出射してもよい。
【0018】
以上のレーザドップラ速度計においては、前記測定光として、1400nm以上2600nm以下の波長のレーザ光、たとえば、波長1550nmのレーザ光を用いてもよい。
また、以上のレーザドップラ速度計に、前記光検出器が検出した前記検出信号のビート周波数に基づいて前記被測定物の速度を計測する計測部を備えても良い。
これらのレーザドップラ速度計では、被測定物上の領域が、不可視の前記第1測定光と第2測定光とが共通に照射される測定領域となるように、被測定物に対してレーザドップラ速度計が配置されたときに、被測定物の速度を正しく計測できる。
【0019】
そして、本レーザドップラ速度計は、可視の照準光を、集光点の位置が測定領域内の位置となるように出射するので、照準光により被測定物上に形成される光スポットの位置やサイズに基づいて、測定領域が被測定物上の所望の領域となっているかどうかを識別することができる。よって、照準光を、不可視の第1測定光と第2測定光による測定領域の照準に用いて、レーザドップラ速度計を被測定物100に対して、正しく計測が行える正規配置に設定できる。
【0020】
また、比較的高価なファイバ型WDM光カプラや、測定光分岐の前段に必要となる測定光と照準光の同一光路での波長合成のための光学系が不要となり、レーザドップラ速度計を低コスト、小型に構成できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、測定に用いる不可視光である測定光を、当該測定光の照射位置の照準に用いる可視光である照準光と共に出射するレーザドップラ速度計を、小型化や低コスト化に適した、よりシンプルな構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るレーザドップラ速度計の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーザドップラ速度計の光路を示す図である。
図3】公知のレーザドップラ速度計の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るレーザドップラ速度計の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係るレーザドップラ速度計の構成を示す。
図示するようにレーザドップラ速度計は、測定用レーザ光源1、コリメータレンズ2、ビームスプリッタ3、ミラー4、対物レンズ5、ダイクロイックミラー6、光検出器7、照準用レーザ光源8、計測装置9を備えている。
【0024】
測定用レーザ光源1は、計測装置9の制御に従って、近赤外レーザ光を測定光として出射する。測定用レーザ光源1が出射する近赤外レーザ光としては、1400nmから2600nmまでのアイセーフレーザと呼ばれるレーザ波長範囲の近赤外レーザ光を用いる。以下では、測定光として波長1550nmの近赤外レーザを用いるものとして説明を行う。
【0025】
照準用レーザ光源8は、計測装置9の制御に従って、可視レーザ光を照準光として出射する。以下では、照準光として波長635nmの赤色のレーザを用いるものとして説明を行う。
【0026】
図1aは、レーザドップラ速度計が、正しく被測定物100の速度の計測が行える配置である正規配置に、被測定物100に対して配置されている場合を示しており、正規配置にあるときレーザドップラ速度計は、図1aの右方向をx方向、上方向をz方向、紙面の表から裏に向かう方向をy方向として、被測定物100のx方向の速度vを計測する。
【0027】
そして、正規配置にあるときの、レーザドップラ速度計の動作は以下のようになる。
測定用レーザ光源1は、測定光をコリメータレンズ2に出射し、コリメータレンズ2は、測定光を平行ビームに変換してビームスプリッタ3に出射する。
ビームスプリッタ3は、コリメータレンズ2から入射する測定光を第1測定光と第2測定光との二つの測定光に分岐し、第1測定光を被測定物100に照射し、第2測定光をミラー4に向けて出射する。
【0028】
ミラー4は、ビームスプリッタ3から入射する第2測定光を反射し、被測定物100に照射する。
ここで、ビームスプリッタ3から出射された第1測定光とミラー4から出射された第2測定光は、被測定物100の速度を計測する領域である測定領域を共通に照射する。
また、ビームスプリッタ3から出射された第1測定光はz方向に対してy方向の軸まわりに+θ傾けた方向から測定領域を照射し、ミラー4から出射された第2測定光は、z方向に対してy方向の軸まわりに-θ傾けた方向から測定領域を照射する。
【0029】
次に、対物レンズ5は、被測定物100の測定領域で反射された第1測定光と第2測定光の反射光をダイクロイックミラー6を介して光検出器7に集光する。
ここで、対物レンズ5は、被測定物100の測定領域とxy方向に関して重なる位置に配置されており、その光軸の方向はz方向である。また、対物レンズ5の光軸とビームスプリッタ3から出射された第1測定光の光軸の成す角は+θであり、対物レンズ5の光軸とミラー4から出射された第2測定光の光軸が成す角は-θである。
【0030】
図1bに、x方向に見た、被測定物100で反射された第1測定光と第2測定光の反射光と、対物レンズ5と、ダイクロイックミラー6と、光検出器7との位置関係を示す。
図示するように、被測定物100の測定領域で反射された第1測定光と第2測定光の反射光は、対物レンズ5を通ってダイクロイックミラー6に-z方向から入射する。
ダイクロイックミラー6は、測定光の波長である1550nmの光を100%反射し、照準光の波長である635nmの光を100%透過する。また、光検出器7は、ダイクロイックミラー6から見てy方向に配置されている。
【0031】
よって、ダイクロイックミラー6は、対物レンズ5からz方向に入射する第1測定光と第2測定光の反射光を光検出器7の方向(y方向)に反射し、これにより、対物レンズ5によって第1測定光と第2測定光の反射光がダイクロイックミラー6を介して光検出器7に集光される。
【0032】
次に、光検出器7は、対物レンズ5によってダイクロイックミラー6を介して集光された測定光の反射光を光電変換した検出信号を計測装置9に出力する。
ここで、第1測定光の反射光の周波数と第2測定光の反射光の周波数には、被測定物100の速度vに応じた大きさのドップラシフトが逆方向に生じており、光検出器7が出力する検出信号には、ドップラシフトの大きさに応じた周波数のビートが生じている。
計測装置9は、光検出器7から出力された検出信号のビート周波数を計測し、計測したビート周波数から被測定物100の速度vを算定する。
【0033】
次に、照準用レーザ光源8が出射した照準光は、z方向からダイクロイックミラー6に入射する。そして、照準光は、そのままダイクロイックミラー6を透過して対物レンズ5に入射する。
対物レンズ5は、色収差補正レンズであり、入射する照準光を、第1測定光と第2測定光が共通に照射する被測定物100の測定領域の中心が集光点となるように屈折させて-z方向に出射する。
したがって、被測定物100の測定領域の中心には、照準光による可視の光スポットが形成される。
【0034】
以上、被測定物100に対してレーザドップラ速度計が、正しく被測定物100の速度の計測が行える正規配置にあるときのレーザドップラ速度計の動作について説明した。
さて上述の通り、レーザドップラ速度計は、図2に示すように、正規配置にあるときの被測定物100の測定領域の中心Fを通る照準光を-z方向に出射するので、照準光により被測定物100上に形成される光スポットのxy方向の位置に基づいて、レーザドップラ速度計の配置をxy方向に関して正規配置に設定することができる。
【0035】
また、レーザドップラ速度計は、正規配置にあるときに被測定物100の測定領域の中心Fが集光点となる照準光を出射する。したがって、正規配置にあるときに被測定物100上に照準光により形成される光スポットのサイズは最小となり、レーザドップラ速度計が正規配置から被測定物100に対してz方向、-z方向にずれていくに従い、照準光により被測定物100上に形成される光スポットのサイズは大きくなる。したがって、照準光により形成される光スポットのサイズに基づいて、レーザドップラ速度計の配置をz方向に関して正規配置に設定できる。
【0036】
本実施形態によれば、照準光を、不可視の第1測定光と第2測定光による測定領域の照準に用いて、レーザドップラ速度計を被測定物100に対して、正しく計測が行える正規配置に設定できる。
また、比較的高価なファイバ型WDM光カプラや、測定光分岐の前段に必要となる測定光と照準光の同一光路への波長合成のための光学系が不要となり、レーザドップラ速度計を低コスト、小型に構成できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、本実施形態のレーザドップラ速度計の構成は、ダイクロイックミラー6として、測定光の波長である1550nmの光を100%透過し、照準光の波長である635nmの光を100%反射するダイクロイックミラー6を用い、光検出器7と照準用レーザ光源8の配置を交換した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…測定用レーザ光源、2…コリメータレンズ、3…ビームスプリッタ、4…ミラー、5…対物レンズ、6…ダイクロイックミラー、7…光検出器、8…照準用レーザ光源、9…計測装置、100…被測定物。
図1
図2
図3