(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 5/14 20060101AFI20231012BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60C5/14 Z
B29D30/30
(21)【出願番号】P 2020011576
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智仁
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-063112(JP,A)
【文献】特開平04-101835(JP,A)
【文献】特開平04-118302(JP,A)
【文献】特開2011-235791(JP,A)
【文献】特開2011-046073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
B29D 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面を構成する内側層と前記内側層のタイヤ外面側に配置される外側層とを有するインナーライナを備え、
前記インナーライナは、前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部を有し、
前記内側層のタイヤ周方向両端面は、前記外側層のタイヤ周方向両端面より前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側層は、前記外側層より空気不透過性に優れたゴム材料から形成され、
前記外側層は、前記内側層より接着性に優れたゴム材料から形成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側層のタイヤ周方向両端面と前記外側層のタイヤ周方向両端面とは、タイヤ周方向に離間して設けられる、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面はそれぞれ、前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に直線状に傾斜して形成される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面はそれぞれ、前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に曲線状に傾斜して形成される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
タイヤ内面を構成する内側層と前記内側層のタイヤ外面側に配置される外側層とを有するインナーライナを準備し、
前記インナーライナを円筒状に巻回すると共に前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部を形成し、
前記内側層のタイヤ周方向両端面は、前記外側層のタイヤ周方向両端面より前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造では、ベルト及びトレッドなどのタイヤ構成部材が成型ドラムに巻き付けられて円筒状のトレッドバンドが成型される。一方、インナーライナ及びカーカスプライなどのタイヤ構成部材が別の成型ドラムに巻き付けられて円筒状のカーカスバンドが成型される。成型されたカーカスバンドは、両端部にビードが組み付けられると共にビード周りに折り返され、円筒状のグリーンケースが成型される。
【0003】
そして、トレッドバンドがグリーンケースの径方向外側に搬送された後に、グリーンケースが径方向外側に膨張されてトレッドバンドの内面に結合され、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは加硫成型装置によって加硫成型され、空気入りタイヤが製造される。
【0004】
このようにして製造される空気入りタイヤのインナーライナとして、空気不透過性を確保するための内側層とカーカスプライとの接着性を確保するための外側層とを備えたものが知られている。例えば特許文献1には、ブチルゴム層からなる内側層とタイガム層からなる外側層とを有するインナーライナを備えた空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、内側層と外側層とを有するインナーライナを巻回するときに、タイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合されたジョイント部が形成されている。このため、インナーライナのジョイント部は、非ジョイント部に比べて分厚くなってタイヤ周方向におけるユニフォミティ(均一性)が低下する。したがって、タイヤ周方向両端部を突き合わせて接合したジョイント部を形成することが望まれる。
【0007】
しかしながら、空気入りタイヤの製造時にインナーライナのタイヤ周方向両端部を突き合わせて接合したジョイント部を形成する場合、インナーライナを備えたグリーンケースの径方向外側への膨出時などに、インナーライナのジョイント部において内側層から割れが発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、内側層と外側層とを有するインナーライナのジョイント部において内側層から割れが発生することを抑制することができる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タイヤ内面を構成する内側層と前記内側層のタイヤ外面側に配置される外側層とを有するインナーライナを備え、前記インナーライナは、前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部を有し、前記内側層のタイヤ周方向両端面は、前記外側層のタイヤ周方向両端面より前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している空気入りタイヤを提供する。
【0010】
本構成により、インナーライナのジョイント部において、内側層が外側層より大きく傾斜して突き合わせられるので、内側層が外側層と同様に傾斜して突き合わせられる場合に比して内側層のタイヤ周方向両端面の接触面積を大きくして接合強度を高めることができる。したがって、インナーライナのジョイント部において内側層から割れが発生することを抑制することができる。
【0011】
前記内側層は、前記外側層より空気不透過性に優れたゴム材料から形成され、前記外側層は、前記内側層より接着性に優れたゴム材料から形成される。
【0012】
本構成により、インナーライナは、外側層より空気不透過性に優れたゴム材料から形成される内側層を有するので、インナーライナのジョイント部において空気不透過性を確保しつつ内側層から割れが発生することを抑制することができる。また、インナーライナは、内側層より接着性に優れたゴム材料から形成される外側層を有するので、インナーライナのジョイント部における割れの発生をさらに抑制することができる。
【0013】
前記内側層のタイヤ周方向両端面と前記外側層のタイヤ周方向両端面とは、タイヤ周方向に離間して設けられることが好ましい。
【0014】
本構成により、タイヤ周方向に内側層のタイヤ周方向両端面と外側層のタイヤ周方向両端面との間において内側層の外面と外側層の内面とを接触させることができるので、ジョイント部における接触面積を大きくして接合強度を高め、割れの発生をさらに抑制することができる。
【0015】
前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面はそれぞれ、インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に直線状に傾斜して形成され得る。
【0016】
本構成により、内側層及び外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ直線状に傾斜して形成されるので、内側層及び外側層のタイヤ周方向両端面を比較的容易に形成することができ、比較的容易にインナーライナのジョイント部において割れが発生することを抑制することができる。
【0017】
前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面はそれぞれ、インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に曲線状に傾斜して形成され得る。
【0018】
本構成により、内側層及び外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ曲線状に傾斜して形成されるので、直線状に傾斜して形成される場合に比して、内側層及び外側層のタイヤ周方向両端面のそれぞれの接触面積を大きくして接合強度を高め、インナーライナのジョイント部において割れが発生することを抑制することができる。
【0019】
本発明はまた、タイヤ内面を構成する内側層と前記内側層のタイヤ外面側に配置される外側層とを有するインナーライナを準備し、前記インナーライナを円筒状に巻回すると共に前記内側層及び前記外側層のタイヤ周方向両端面がそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部を形成し、前記内側層のタイヤ周方向両端面は、前記外側層のタイヤ周方向両端面より前記インナーライナの厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0020】
本構成により、インナーライナのジョイント部において、内側層が外側層より大きく傾斜して突き合わせられるので、内側層が外側層と同様に傾斜して突き合わせられる場合に比して内側層のタイヤ周方向両端面の接触面積を大きくして接合強度を高めることができる。したがって、インナーライナのジョイント部において内側層から割れが発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る空気入りタイヤ及びその製造方法によれば、内側層と外側層とを有するインナーライナのジョイント部において内側層から割れが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図。
【
図4】インナーライナのジョイント部の第1変形例の断面図。
【
図5】インナーライナのジョイント部の第2変形例の断面図。
【
図6】インナーライナのジョイント部の第3変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ1は、路面に接するトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ幅方向TW両側からそれぞれタイヤ径方向TR内側に延びて空気入りタイヤ1の側面を構成する一対のサイドウォール部3と、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向TR内側にそれぞれ位置して図示しないホイールのリムに固定される一対のビード部4とを備えている。
【0025】
ビード部4は、ビードコア6とビードコア6のタイヤ径方向外側に配置されるビードフィラー7とを有している。ビードコア6は、複数のビードワイヤを束ねて環状に形成されて空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側にそれぞれ配置されている。ビードフィラー7は、ゴム材料から断面略三角形状に環状に形成されている。
【0026】
一対のビード部4の間、具体的には一対のビードコア6の間にはカーカスプライ8が掛け渡されている。カーカスプライ8は、複数のワイヤを並設してゴム材料で被覆して帯状に形成され、タイヤ幅方向両側においてビードコア6の周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に巻き上げられると共にビードフィラー7に沿ってタイヤ径方向外側に延びている。
【0027】
カーカスプライ8のタイヤ径方向内側には、タイヤ内面1aを構成して空気圧を保持するためのインナーライナ20が設けられている。インナーライナ20は、トレッド部2、サイドウォール部3及びビード部4に亘って設けられている。インナーライナ20は、後述する
図3に示すように、タイヤ内面1aを構成する内側層21と、内側層21のタイヤ外面側に配置される外側層22とを有している。
【0028】
トレッド部2におけるカーカスプライ8のタイヤ径方向外側には、第1ベルトプライ10と第1ベルトプライ10のタイヤ径方向外側に配置される第2ベルトプライ11とが設けられている。第2ベルトプライ11は、タイヤ幅方向外側が第1ベルトプライ10よりタイヤ幅方向内側(タイヤ赤道線C1側)に設けられている。第1及び第2ベルトプライ10,11は、複数のワイヤを並設してゴム材料で被覆して帯状に形成され、ワイヤはそれぞれタイヤ周方向に延びている。
【0029】
第2ベルトプライ11のタイヤ径方向外側にはキャッププライ12が配置されている。キャッププライ12は、第1及び第2ベルトプライ10,11を補強するものであり、複数のワイヤを並設してゴム材料で被覆して帯状に形成され、ワイヤはそれぞれタイヤ周方向に延びている。
【0030】
空気入りタイヤ1は、トレッド部2におけるキャッププライ12のタイヤ径方向外側に設けられてトレッド部2の外表面を形成するトレッドゴム13と、ビード部4におけるカーカスプライ8のタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側に設けられてビード部4の外表面を形成するリムストリップゴム14と、サイドウォール部3におけるカーカスプライ8のタイヤ幅方向外側に設けられてサイドウォール部3の外表面を形成するサイドウォールゴム15とを備えている。
【0031】
空気入りタイヤ1について
図2及び
図3を参照してさらに説明する。
【0032】
図2では、インナーライナ20の断面を、インナーライナ20の幅方向に直交する断面、具体的にはタイヤ軸線C2に直交する断面で示している。インナーライナ20は、
図2に示すように、円筒状に巻回されると共に、インナーライナ20のタイヤ周方向TCの先端部である一端部20aと後端部である他端部20bとを突き合わせて接合したジョイント部J1が形成される。
【0033】
図3では、インナーライナ20のジョイント部J1の断面を拡大して示している。インナーライナ20は、帯状に形成され、
図3に示すように、タイヤ内面1aを構成する内側層21と、内側層21のタイヤ外面側に配置される外側層22とを有している。内側層21は、外側層22より空気不透過性に優れたゴム材料から形成され、外側層22は、内側層21より接着性に優れたゴム材料から形成される。
【0034】
内側層21は、外側層22より空気不透過性に優れたゴム材料として、例えばブチルゴムなどから形成される。外側層22は、内側層21より接着性に優れたゴム材料として、例えば天然ゴムなどから形成される。内側層21の厚さは、例えば1.5~5.0mmに設定され、外側層22の厚さは、例えば1.0~2.5mmに設定される。
【0035】
インナーライナ20は、円筒状に巻回されるとき、一端部20aと他端部20bとが突き合わせて接合される。インナーライナ20のタイヤ周方向両端部20a,20bが突き合わせて接合されたジョイント部J1は、ジョイント部J1を除く非ジョイント部20cと厚さがほぼ等しく形成される。これにより、インナーライナ20のタイヤ周方向両端部20a,20bを重ね合わせて接合する場合に比してタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図ることができる。
【0036】
インナーライナ20のジョイント部J1では、内側層21のタイヤ周方向両端面であるタイヤ周方向一端面21a及び他端面21bが突き合わせて接合されると共に外側層22のタイヤ周方向両端面であるタイヤ周方向一端面22a及び他端面22bが突き合わせて接合される。
【0037】
内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bがインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されると共に、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bがインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成される。
【0038】
内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bはそれぞれ、
図3に示すように、タイヤ径方向TRなどインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に直線状に傾斜して形成される。内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bはそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の内端P1aからタイヤ外面側の外端P1bに延びる平面が傾斜角度θ1で傾斜して形成される。
【0039】
外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bについてもそれぞれ、
図3に示すように、タイヤ径方向TRなどインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に直線状に傾斜して形成される。外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bはそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の端点P2aからタイヤ外面側の外端P2bに延びる平面が傾斜角度θ2で傾斜して形成される。
【0040】
インナーライナ20のタイヤ周方向両端面はそれぞれ、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bがインナーライナ20の厚さ方向に連続して設けられ、内側層21のタイヤ周方向両端面21a、21bの外端P1bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bの内端P2aとがそれぞれ一致して形成される。
【0041】
本実施形態では、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜される。内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bより傾斜角度が大きく形成される。
【0042】
内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bの傾斜角度θ1は、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bの傾斜角度θ2より大きい角度に設定される。内側層21の傾斜角度θ1は、例えば50~70度に設定され、外側層22の傾斜角度θ2は、例えば30~60度に設定され、内側層21の傾斜角度θ1は、外側層22の傾斜角度θ2より大きい角度に設定される。
【0043】
インナーライナ20は、内側層21と外側層22とが一体的に形成されると共に、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bが外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜して形成されるように、切断装置によって切断されて成型ドラムに供給され、円筒状に巻回される。インナーライナ20のタイヤ径方向外側には、リムストリップゴム14及びカーカスプライ8が円筒状に巻回される。
【0044】
このように、空気入りタイヤ1では、内側層21と外側層22とを有するインナーライナ20は、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a、21b及び22a,22bがそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部J1を有し、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している。
【0045】
次に、空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。
【0046】
空気入りタイヤ1を製造する際には先ず、トレッド部2を形成するトレッドゴム13、第1及び第2ベルトプライ10,11など、円筒状のトレッドバンドを成型するためのタイヤ構成部材を準備する。一方、インナーライナ20及びカーカスプライ8など、円筒状のカーカスバンドを成型するためのタイヤ構成部材を準備する。
【0047】
そして、成型ドラムにインナーライナ20及びカーカスプライ8などのタイヤ構成部材を順に巻き付けて、円筒状のカーカスバンドを成型する。カーカスバンドの成型では、インナーライナ20を円筒状に巻回すると共に内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bがそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部J1を形成する。内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜して形成する。
【0048】
カーカスバンドは別の成型ドラムに移送され、その後にカーカスバンドの両側部にビードコア6及びビードフィラー7が組み付けられると共にカーカスバンドがビードコア6の周りにドラム幅方向両側に折り返されて、円筒状のグリーンケースが成型される。
【0049】
一方、第1及び第2ベルトプライ10,11並びにトレッドゴム13などのタイヤ構成部材を更に別の成型ドラムに巻き付けて、円筒状のトレッドバンドを成型する。トレッドバンドをグリーンケースの径方向外側に搬送した後に、グリーンケースが径方向外側へトロイダル状に膨出されて、グリーンケースの外面がトレッドバンドの内面に結合されて、カーカストレッド結合体が成型される。
【0050】
次に、カーカストレッド結合体に一対のサイドウォールゴム15が巻き付けられて、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは、タイヤ加硫金型を備えた加硫成型機によって加硫成型され、空気入りタイヤ1が製造される。
【0051】
一対のサイドウォールゴム15は、カーカストレッド結合体が成型された後に巻き付けられて成型されているが、カーカスバンドを成型するときにサイドウォールゴム15を巻き付けて成型することも可能である。
【0052】
本実施形態では、インナーライナ20は、内側層21と外側層22とが一体的に形成され、内側層21と外側層22とが一体的に形成されたインナーライナ20が成型ドラムに巻き付けられる。インナーライナ20は、切断装置によって所定長さに切断して成型ドラムに巻き付けられるが、切断装置によって予め所定長さに切断されたインナーライナ20を成型ドラムに巻き付けるようにすることも可能である。
【0053】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ内面1aを構成する内側層21と内側層21のタイヤ外面側に配置される外側層22とを有するインナーライナ20を備える。インナーライナ20は、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bがそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部J1を有する。内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している。
【0054】
これにより、インナーライナ20のジョイント部J1において、内側層21が外側層22より大きく傾斜して突き合わせられるので、内側層21が外側層22と同様に傾斜して突き合わせられる場合に比して内側層21のタイヤ周方向両端面の接触面積を大きくして接合強度を高めることができる。したがって、インナーライナ20のジョイント部J1において内側層21から割れが発生することを抑制することができる。
【0055】
空気入りタイヤ1の製造時にインナーライナ20のタイヤ周方向両端部20a,20bを突き合わせて接合したジョイント部J1が形成される場合、インナーライナ20を備えたグリーンケースの径方向外側への膨出時などに、インナーライナ20のジョイント部J1において内側層21から割れが発生することを抑制することができる。
【0056】
また、内側層21は、外側層22より空気不透過性に優れたゴム材料から形成され、外側層22は、内側層21より接着性に優れたゴム材料から形成される。これにより、インナーライナ20は、外側層22より空気不透過性に優れたゴム材料から形成される内側層21を有するので、インナーライナ20のジョイント部J1において空気不透過性を確保しつつ内側層21から割れが発生することを抑制することができる。また、インナーライナ20は、内側層21より接着性に優れたゴム材料から形成される外側層22を有するので、インナーライナ20のジョイント部J1における割れの発生をさらに抑制することができる。
【0057】
また、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bはそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に直線状に傾斜して形成される。これにより、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bがそれぞれ直線状に傾斜して形成されるので、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bを比較的容易に形成することができ、比較的容易にインナーライナ20のジョイント部J1において割れが発生することを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法は、タイヤ内面1aを構成する内側層21と内側層21のタイヤ外面側に配置される外側層22とを有するインナーライナ20を準備する。そして、インナーライナ20を円筒状に巻回すると共に内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面21a,21b及び22a,22bがそれぞれ突き合わせて接合されたジョイント部J1を形成し、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜している。
【0059】
これにより、インナーライナ20のジョイント部J1において、内側層21が外側層22より大きく傾斜して突き合わせられるので、内側層21が外側層22と同様に傾斜して突き合わせられる場合に比して内側層21のタイヤ周方向両端面の接触面積を大きくして接合強度を高めることができる。したがって、インナーライナ20のジョイント部J1において内側層21から割れが発生することを抑制することができる。
【0060】
図4は、インナーライナのジョイント部の第1変形例の断面図である。
図4では、インナーライナのジョイント部の変形例を、
図3に対応する断面で示している。
図4に示すインナーライナ30のように、内側層21及び外側層22についてそれぞれ、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面31a,31b及び32a,32bをそれぞれ曲線状に傾斜して形成するようにしてもよい。
【0061】
インナーライナ30についても、内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bがインナーライナ30の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されると共に、外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bがインナーライナ30の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成される。
【0062】
内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bはそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に曲線状に傾斜して形成され、インナーライナ30の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の内端P1aからタイヤ外面側の外端P1bに延びる二点鎖線で示す平面が傾斜角度θ1で傾斜して形成される。内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bはそれぞれ、タイヤ内面側からタイヤ外面側に向かうにつれてタイヤ周方向他方側に延びる曲線状に形成されている。
【0063】
外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bもそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に曲線状に傾斜して形成され、インナーライナ30の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の端点P2aからタイヤ外面側の外端P2bに延びる二点鎖線で示す平面が傾斜角度θ2で傾斜して形成される。外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bもそれぞれ、タイヤ内面側からタイヤ外面側に向かうにつれてタイヤ周方向他方側に延びる曲線状に形成されている。
【0064】
インナーライナ30についても、内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bは、外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bよりインナーライナ30の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜され、内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bの傾斜角度θ1は、外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bの傾斜角度θ2より大きい角度に設定される。
【0065】
タイヤ周方向両端部30a,30bを突き合わせて接合したジョイント部J1では、内側層21のタイヤ周方向両端面31a,31bが突き合わせて接合されると共に外側層22のタイヤ周方向両端面32a,32bが突き合わせて接合される。
【0066】
このように、インナーライナ30の内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面31a,32a,31b,32bが曲線状に傾斜して形成される場合についても、インナーライナ30のジョイント部J1において、内側層21が外側層22より大きく傾斜して突き合わせられるので、インナーライナ30のジョイント部J1において内側層21から割れが発生することを抑制することができる。
【0067】
また、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面31a,32a,31b,32bがそれぞれ曲線状に傾斜して形成されるので、直線状に傾斜して形成される場合に比して、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面31a,32a,31b,32bのそれぞれの接触面積を大きくして接合強度を高め、インナーライナ30のジョイント部J1において割れが発生することを抑制することができる。
【0068】
図5は、インナーライナのジョイント部の第2変形例の断面図である。
図5では、インナーライナのジョイント部の変形例を、
図3に対応する断面で示している。
図5に示すインナーライナ40のように、内側層21及び外側層22についてそれぞれ、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面41a,41b及び42a,42bをそれぞれ波状に曲線状に傾斜して形成するようにしてもよい。
【0069】
インナーライナ40についても、内側層21のタイヤ周方向両端面41a,41bがインナーライナ40の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成されると共に、外側層22のタイヤ周方向両端面42a,42bがインナーライナ40の厚さ方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成される。
【0070】
内側層21のタイヤ周方向両端面41a,41bはそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に波状に曲線状に傾斜して形成され、インナーライナ40の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の内端P1aからタイヤ外面側の外端P1bに延びる二点鎖線で示す平面が傾斜角度θ1で傾斜して形成される。内側層21のタイヤ周方向両端面41a,41bはそれぞれ、タイヤ内面側からタイヤ外面側に向かうにつれてタイヤ周方向他方側に延びる波状に曲線状に形成されている。
【0071】
外側層22のタイヤ周方向両端面42a,42bもそれぞれ、インナーライナ20の厚さ方向に対してタイヤ周方向に波状に曲線状に傾斜して形成され、インナーライナ40の厚さ方向に対してタイヤ周方向にタイヤ内面側の端点P2aからタイヤ外面側の外端P2bに延びる二点鎖線で示す平面が傾斜角度θ2で傾斜して形成される。外側層22のタイヤ周方向両端面42a,42bもそれぞれ、タイヤ内面側からタイヤ外面側に向かうにつれてタイヤ周方向他方側に延びる波状に曲線状に形成されている。
【0072】
インナーライナ40についても、内側層21のタイヤ周方向両端面41a,41bは、外側層22のタイヤ周方向両端面42a,42bよりインナーライナ40の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜され、内側層21のタイヤ周方向両端面41a,41bの傾斜角度θ1は、外側層22のタイヤ周方向両端面42a,42bの傾斜角度θ2より大きい角度に設定される。
【0073】
タイヤ周方向両端部40a,40bを突き合わせて接合したジョイント部J1では、内側層21のタイヤ周方向両端面41a及び他端面41bが突き合わせて接合されると共に外側層22のタイヤ周方向両端面42a及び他端面42bが突き合わせて接合される。
【0074】
このように、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面41a,42a,41b,42bがそれぞれ波状に曲線状に傾斜して形成される場合についても、インナーライナ30のジョイント部J1において、内側層21が外側層22より大きく傾斜して突き合わせられるので、インナーライナ30のジョイント部J1において内側層21から割れが発生することを抑制することができる。
【0075】
図6は、インナーライナのジョイント部の第3変形例の断面図である。
図6では、インナーライナのジョイント部の変形例を、
図3に対応する断面で示している。
図6に示すインナーライナ50のように、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bとをタイヤ周方向TCに離間して設けることも可能である。
【0076】
インナーライナ50のように、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bとをタイヤ周方向TCに離間して設け、内側層21のタイヤ周方向両端面21a、21bの外端P1bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bの内端P2aとをタイヤ周方向TCに離間して形成することも可能である。
【0077】
インナーライナ50についても、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bよりインナーライナ50の厚さ方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜され、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bは、外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bより傾斜角度が大きく形成される。
【0078】
タイヤ周方向両端部50a,50bを突き合わせて接合したジョイント部J1では、内側層21のタイヤ周方向両端面41a及び他端面41bが突き合わせて接合されると共に外側層22のタイヤ周方向両端面42a及び他端面42bが突き合わせて接合される。
【0079】
このように、内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bとがタイヤ周方向TCに離間して設けられる場合、タイヤ周方向TCに内側層21のタイヤ周方向両端面21a,21bと外側層22のタイヤ周方向両端面22a,22bとの間において内側層21の外面21cと外側層22の内面22cとを接触させることができるので、ジョイント部J1における接触面積を大きくして接合強度を高め、割れの発生をさらに抑制することができる。
【0080】
図6に示す第3変形例では、直線状に傾斜している内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面がタイヤ周方向TCに離間して設けられているが、
図4に示す第1変形例や
図5に示す第2変形例のように、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面が曲線状に傾斜している場合についても、内側層21及び外側層22のタイヤ周方向両端面をタイヤ周方向TCに離間して設けることも可能である。
【0081】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 空気入りタイヤ
1a タイヤ内面
20,30,40,50 インナーライナ
21 内側層
21a,31a,41a 内側層のタイヤ周方向一端面
21b,31b,41b 内側層のタイヤ周方向他端面
22 外側層
22a,32a,42a 外側層のタイヤ周方向一端面
22b,32b,42b 外側層のタイヤ周方向他端面
J1 ジョイント部