(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】子供用育児器具の幌
(51)【国際特許分類】
B62B 9/14 20060101AFI20231012BHJP
B62B 7/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B62B9/14
B62B7/08
(21)【出願番号】P 2020016247
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薮内 仁志
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065449(JP,A)
【文献】特開2008-105509(JP,A)
【文献】米国特許第06155628(US,A)
【文献】特開2006-117056(JP,A)
【文献】特開2004-203354(JP,A)
【文献】特開2013-123413(JP,A)
【文献】実開昭59-167766(JP,U)
【文献】特開2012-192755(JP,A)
【文献】特公昭46-023410(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/14
B62B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児用座席に取付けられる子供
用育児器具の幌であって、
複数の幌骨と、
前記複数の幌骨の間に掛け渡される幌布と、
前記複数の幌骨のうちいずれか一方の幌骨が位置する部分に取り付けられ、逆U字状の形態の受け入れ開口を含む保持具とを備え、
前記保持具は、前記複数の幌骨のうちいずれか他方の幌骨を上方から保持することにより、前記幌布の開き具合を変更させる、子供用育児器具の幌。
【請求項2】
前記複数の幌骨は、互いの角度が可変となるよう、その下端部が回動軸に連結されている幌骨と、前記回動軸に連結されていない補助幌骨とを含み、
前記保持具は、前記幌骨が位置する部分に取り付けられ、前記補助幌骨を保持する、請求項1に記載の子供用育児器具の幌。
【請求項3】
前記幌骨は、前方幌骨および後方幌骨を含み、
前記補助幌骨は、前記前方幌骨と前記後方幌骨の間に位置する、請求項2に記載の子供用育児器具の幌。
【請求項4】
前記受け入れ開口は、奥側に位置する半円形の半円形溝部と、前記半円形溝部から開口縁にまで延びる案内溝部とを含む、請求項1~3のいずれかに記載の子供
用育児器具の幌。
【請求項5】
前記保持具は、合成樹脂により形成されており、帯状部材を介して前記幌布に取り付けられている、請求項1~4のいずれかに記載の子供
用育児器具の幌。
【請求項6】
前記保持具は、前記前方幌骨の上部に位置する幌布部分、または、前記後方幌骨の上部に位置する幌布部分に取り付けられている、請求項3に記載の子供
用育児器具の幌。
【請求項7】
前記補助幌骨は、複数設けられ、
前記保持具は、前記後方幌骨の位置に対応する前記幌布に取り付けられ、前記複数の補助幌骨のうち、前記後方幌骨に隣接する前記補助幌骨を保持する、請求項6に記載の子供
用育児器具の幌。
【請求項8】
前記幌布は、前記後方幌骨の後方に延びており、前記後方幌骨の後方に設けられる他の補助幌骨に掛け渡されている、請求項3、6、7のいずれかに記載の子供用育児器具の幌。
【請求項9】
前記前方幌骨の前方において、前記回動軸に連結されておらず、前記前方幌骨から前方に向かって突出するバイザー部が設けられている、請求項3、6~8のいずれかに記載の子供用育児器具の幌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幌に関し、特に子供用育児器具に取り付けられた幌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば乳母車、チャイルドシートなどの子供用育児器具には、座席部に着座した乳幼児へ直接日光が当たらないようにするために、座席部の上方空間を覆う幌が設けられている。
【0003】
特開2012-192755号公報(特許文献1)には、最も後方に位置する幌骨を保持部で保持することで、全展開状態から半展開状態にできることが開示されている。特許文献1の保持部は、下方に開口を有するポケットである。保持部の後方に設けられる幌骨を湾曲させて保持部に挿入することで半展開状態になり、その幌骨が取り付けられている幌布を引っ張ることで、簡単に展開状態になることが開示されている。
【0004】
特開2004-203354号公報(特許文献2)には、幌布のうち一つの幌骨に対応する位置と、その幌骨に近接する位置にそれぞれ連結可能な一対の連結具が設けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-192755号公報
【文献】特開2004-203354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された幌は、幌骨の上部分を全て挿入することができる保持部を設ける必要があり、構造が複雑である。さらに、幌展開状態から半展開状態にする際に、両手が必要である。また、上記特許文献2に開示された幌は、前後の幌に対応する幌布にバックルが設けられているため、幌を畳む場合に両手が必要となる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、片手で簡単に取り扱うことが可能な子供用育児器具用の幌を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一態様に係る子供育児器具の幌は、乳幼児用座席に取付けられる子供育児器具の幌であって、複数の幌骨と、複数の幌骨の間に掛け渡される幌布と、複数の幌骨のうちいずれか一方の幌骨が位置する部分に取り付けられ、逆U字状の形態の受け入れ開口を含む保持具とを備え、保持具は、複数の幌骨のうちいずれか他方の幌骨を上方から保持することにより、幌布の開き具合を変更させる。
【0009】
好ましくは、複数の幌骨は、互いの角度が可変となるよう、その下端部が回動軸に連結されている幌骨と、回動軸に連結されていない補助幌骨とを含み、保持具は、幌骨が位置する部分に取り付けられ、補助幌骨を保持する。
【0010】
好ましくは、幌骨は、前方幌骨および後方幌骨を含み、補助幌骨は、前方幌骨と後方幌骨の間に位置する。
【0011】
好ましくは、受け入れ開口は、奥側に位置する半円形の半円形溝部と、半円形溝部から開口縁にまで延びる案内溝部とを含む。
【0012】
好ましくは、保持具は、前方幌骨の上部に位置する幌布部分、または、後方幌骨の上部に位置する幌布部分に取り付けられている。
【0013】
好ましくは、保持具は、合成樹脂により形成されており、帯状部材を介して幌布に取り付けられている。
【0014】
好ましくは、補助幌骨は、複数設けられ、保持具は、後方幌骨の位置に対応する幌布に取り付けられ、複数の補助幌骨のうち、後方幌骨に隣接する補助幌骨を保持する。
【0015】
好ましくは、幌布は、後方幌骨の後方に延びており、後方幌骨の後方に設けられる他の補助幌骨に掛け渡されている。
【0016】
好ましくは、前方幌骨の前方において、回動軸に連結されておらず、前方幌骨から前方に向かって突出するバイザー部が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、片手で簡単に取り扱うことが可能な子供用育児器具用の幌を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る乳母車を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る乳母車を示す右側面図であり、(a)は対面押しの状態を示し、(b)は背面押しの状態を示している。
【
図4】同実施形態に係る乳母車を折り畳んだ状態示す右側面図である。
【
図5】同実施形態に係る乳母車の幌骨の回動軸周辺を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】同実施形態に係る乳母車の幌骨の回動軸周辺を示す断面図である。
【
図7】同実施形態に係る乳母車を示す右側面図であり、(a)は幌を全て開いた状態であり、(b)は幌の一部を畳んだ状態であり、(c)は幌の一部をさらに畳んだ状態を示す。
【
図8】
図7(b)の保持具を拡大して示す斜視図である。
【
図9】保持具および後方幌骨を示す断面図であり、(a)は
図7(a)の保持具が補助幌骨を保持していない状態を示し、(b)は
図7(b)の保持具が補助幌骨を保持した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
(乳母車の概要について)
図1~
図6を参照して、本実施の形態に係る乳母車1の概要について説明する。
図1、
図2(a)および
図3は、押し棒が対面押し位置にされた状態を示す。
図2(b)は、押し棒が背面押し位置にされた状態を示す。発明の理解を容易にするため、図面には背対面切替式乳母車の車体フレームを主に示し、幼児用座席などの図示を省略する。特に、
図1~
図6では、幌骨のみ示し、幌布および補助幌骨の図示を省略している。なお、以下の説明において、前後方向は、乳母車の前後方向に対応し、左右方向は、乳母車の前方から見た左右方向に対応している。
【0021】
本実施形態の乳母車1は、車体フレーム10として、一対の前脚11、一対の後脚13、アームレスト15、アームレスト支持部材17、座席支持部材18、および背もたれ支持部材19を備える。座席支持部材18および背もたれ支持部材19を除く車体フレーム10は、幅方向(車幅方向)に離隔して左右に設けられ、対をなす。
【0022】
上下方向に延びる各前脚11の下端には、前輪12が設けられる。各前脚11よりも後方で上下方向に延びる各後脚13の下端には、後輪14が設けられる。一対の前脚11の下端は、幅方向に延びる前脚結合部材21により連結されている。前脚結合部材21は、幼児の足置き台としても機能する。一対の後脚13の下端は、幅方向に延びる後脚結合部材22により連結されている。
【0023】
図2(b)に特に示すように、前脚11の上端は、乳母車1の前後方向に延びるアームレスト15の前端部と回動可能に連結する。後脚13の上端は、前脚11の上端よりも後方でアームレスト15の前端領域と回動可能に連結する。さらに、前脚11の幅方向厚みと後脚13の幅方向厚みは、略一致する。したがって、
図3に示すように、前後方向から車体フレーム10を観察すると、前脚11および後脚13は幅方向位置が一致するよう整列し、重なって見える。
【0024】
図2(a)に特に示すように、アームレスト15の後端部は、上下方向に延びるアームレスト支持部材17の上端部と回動軸33を介して回動可能に連結する。具体的には、アームレスト15の後端部とアームレスト支持部材17の上端部とは、回動軸33を介して幌30とも連結されている。また、アームレスト15の幅方向厚みと、アームレスト支持部材17の幅方向厚みも、略一致する。したがって、
図3に示すように、前後方向から車体フレーム10を観察すると、前脚11、後脚13、アームレスト15、およびアームレスト支持部材17が一致するように整列し、重なって見える。
【0025】
図2(a)に特に示すように、アームレスト15よりも下方には、座席支持部材18が配置される。座席支持部材18の前端部は、一対の前脚11の中央部と連結する。座席支持部材18の後端部は、押し棒20の下端部と、反転ブラケット23の上端部と、アームレスト支持部材17の下端部と揺動軸24を介して回動可能に連結する。
図3に示すように、座席支持部材18の後端部と、アームレスト支持部材17の下端部(アームレスト15と前脚11の上部に重なって視認できず)とは、連結部17aを介して連結されている。連結部17aは、幅方向に延びて厚みを有する部材であればよく、座席支持部材18およびアームレスト支持部材17とは別の部材であってもよいし、座席支持部材18またはアームレスト支持部材17の一部であってもよい。
【0026】
座席支持部材18の後端部は、揺動軸24とは異なる位置で、背もたれ支持部材19の下端部と回動可能に連結する。座席支持部材18は、乳幼児の座部を下方から支持し、背もたれ支持部材19は、乳幼児の背もたれ部を下方から支持する。図示はしていないが、座席支持部材18および背もたれ支持部材19には、ハンモックが掛け渡され、ハンモック上には、クッションが取り付けられている。これにより、座席支持部材18上には、座席部を形成する座面が形成され、座席支持部材18は、座面を下方から支持する。
【0027】
押し棒20は、車体フレーム10に対して前後方向に揺動可能に設けられ、対面押し位置(
図1,
図2(a),
図3)および背面押し位置(
図2(b))の間で切り換え可能である。具体的には、後脚13に隣り合う位置に揺動軸24が配置される。
【0028】
アームレスト支持部材17は、上下に延びる部材である。アームレスト支持部材17の上端部は、アームレスト15の後端部に回動可能に連結する。アームレスト支持部材17の下端部は、押し棒20の下端部、反転ブラケット23の上端部、および座席支持部材18の後端部と揺動軸24を介して回動可能に連結する。
【0029】
アームレスト支持部材17の下端部は、後脚13に対してロックされる位置とロック解除される位置との間を切り換え可能に設けられている。アームレスト支持部材17が後脚13に対してロックされる位置は、
図1に示す走行状態であり、アームレスト支持部材17の下端部と後脚13の中央部とが当接する位置である。アームレスト支持部材17が後脚13に対してロック解除される位置は、
図4に示す折り畳み状態であり、アームレスト支持部材17の下端部と後脚13の下端部が当接する位置である。具体的には、アームレスト支持部材17の下端部には、後脚13に対してロック可能なロック部(図示せず)が設けられ、ロック部のロックを解除することで、後脚13とアームレスト支持部材17のロックが解除される。このような構成により、乳母車1を折り畳むことが可能となる。なお、反転ブラケット23の上端に後脚13に対してロック可能なロック部が設けられていてもよい。
【0030】
(前ガードについて)
図1,
図3に示すように、前ガード16は、座席部の前方に設けられ、座席部を幅方向に横切る。前ガード16の幅方向両端部は、アームレスト15から内方に離れた位置に設けられる。特に
図3に示すように、前ガード16の幅方向両端部は、アームレスト15から空間領域Sだけ離れて位置する。空間領域Sは、一対のアームレスト15と前ガード16の両端部との間を上下方向に延びる領域であり、特に、座席支持部材18よりも上方の領域である。空間領域Sは、後述する内側幌骨31を前方に回転させた場合に、位置させることができる領域である。すなわち、空間領域Sの幅方向寸法は、少なくとも内側幌骨31の幅方向寸法である。
【0031】
上述のように、前ガード16の幅方向両端部は、座席支持部材18の後端部、かつ、幅方向両端部に連結部17aを介して連結される。これにより、空間領域Sの幅方向寸法は、アームレスト支持部材17の下端部と座席支持部材18の後端部とを連結する連結部17aの幅方向寸法と一致する。つまり、前ガード16の幅方向両端部は、アームレスト15から連結部17aの幅方向寸法だけ離れて位置する。なお、前ガード16は、座席支持部材18の後端部に連結されるとして説明したが、車体フレーム10に連結されていればよく、たとえば、座席支持部材8の前端部、後脚13、またはアームレスト支持部材17などに連結されていてもよい。
【0032】
(折り畳み構造について)
次に、乳母車1の折り畳み構造について説明する。上述のように、座席支持部材18の後端部、アームレスト支持部材17の下端部、押し棒20の下端部、および反転ブラケット23の上端部は、揺動軸24を介して互いに連結されている。また、アームレスト支持部材17の下端部は、後脚13に対してロックされる位置とロック解除される位置との間を切り換え可能に設けられている。
【0033】
図1に示す展開状態(背面押し位置)から
図4に示す折り畳み状態にするには、アームレスト支持部材17の下端部のロック部と後脚13とのロックを解除し、反転ブラケット23を上下に反転させ、後脚13の上方に当接していた押し棒20の下端部を、後脚13の下方に当接させる。このような折り畳み状態では、
図4に示すように、前脚11および後脚13の前後方向の間隔が近づき、前ガード16は押し棒20に沿って上方に立ち上がる。これにより、上方に立ち上がった前ガード16を、持ち歩き用の取っ手とすることができる。
【0034】
また、前ガードがアームレストの前端部に設けられている従来の乳母車を折り畳み状態にすると、前ガードがアームレストよりさらに上方で立ち上がってしまうため、前ガードが邪魔になっていた。本実施の形態では、折り畳み状態で、前ガード16がアームレスト15よりも下方に位置するため、前ガード16が邪魔になることがない。
【0035】
図4に示す折り畳み状態から
図1に示す展開状態(背面押し位置)にするには、反転ブラケット23を上下に反転させ、後脚13の下方に当接していた押し棒20の下端部を、後脚13の上方に当接させる。この状態で、アームレスト支持部材17の下端部のロック部と後脚13とをロックする。このように、車体フレーム10は、
図1に示す展開状態(背面押し位置)から
図4に示す折り畳み状態へ、あるいはその逆へ、形態が変化する。
【0036】
(幌について)
幌30は、座席部の上方領域を覆うものである。幌30は、内側幌骨31、外側幌骨32、幌布34、および補助幌骨35,36,37を備える。なお、
図1~
図6では、幌布34および補助幌骨35,36,37の図示を省略している。まず、内側幌骨31と外側幌骨32について説明する。
【0037】
内側幌骨31および外側幌骨32は、互いの角度が可変となるよう、その下端部分が回動軸33に連結されている。内側幌骨31および外側幌骨32は、その下端部がラチェット機構により回転可能に連結されており、任意の角度で固定可能である。
図7(a)は、幌30が完全に開いた状態を示す図あり、
図7(b)は、幌骨の一部が畳まれた状態を示す図であり、
図7(c)は幌骨がさらに畳まれた状態を示す図である。内側幌骨31および外側幌骨32は、それぞれが前後方向に回動可能に取り付けられる。内側幌骨31は、一対のアームレスト15よりも幅方向内方に位置し、座席部の前方に位置する前方幌骨である。外側幌骨32は、一対のアームレスト15よりも幅方向外方に位置し、座席部の後方に位置する後方幌骨である。したがって、以下の説明では、内側幌骨31のことを前方幌骨といい、外側幌骨32を後方幌骨という。
【0038】
前方幌骨31および後方幌骨32は、回動軸33から後方に向かって延び、その後上方に立ち上がる屈曲形状を有している。具体的には、
図5に示すように、前方幌骨31および後方幌骨32は、回動軸33に取り付けられる支持部31a,32aと、支持部31a,32aに連結され、正面視において本体部31b,32bとを有する。
【0039】
支持部31a,32aは、側面視逆L字形状であり、回動軸33に近い第1部分と、第1部分から延びる第2部分とを有する。第1部分と第2部分とがなす角度は、略90度である。これにより、従来の直線に延びる形状の幌骨と比較して、幌骨の全長を長くすることができ、幅広い領域を覆うことができる。さらに、乳幼児の指挟みを防止することができる。
【0040】
支持部31a,32aの上端部には開口が設けられており、開口に本体部31b,32bの端部が差し込まれる。特に
図6に示すように、支持部31a,32aの開口が設けられる部分は、向かい合う部分が凸の形状となっているが、いずれも幅方向外方に向かって凸の形状であってもよい。本体部31b,32bは、たとえば合成樹脂などで形成されており、ある程度の可撓性を有している。さらに、本体部31b,32bは、長尺状であり、逆U字状を形成する。また、
図9に示すように、前方,後方幌骨31,32の本体部31b,32bは、たとえば断面視略矩形形状などである。
【0041】
図3に示すように、前方幌骨31は、一対のアームレスト15と前ガード16の両端部との間の空間領域Sに位置するように設けられている。後方幌骨32は、一対のアームレスト15の幅方向外方に位置するように設けられている。つまり、前方幌骨31は、幅方向においてアームレスト15および前ガード16の両端部と重ならない位置に設けられる。また、後方幌骨32は、幅方向においてアームレスト15と重ならない位置に設けられる。
【0042】
図5,6に示すように、回動軸33は、前方幌骨31と、後方幌骨32と、アームレスト15の後端部と、アームレスト支持部材17の上端部とを連結する。
図6に特に示すように、前方幌骨31と後方幌骨32は、アームレスト15の後端部を挟んでいる。同様に、前方幌骨31と後方幌骨32は、アームレスト支持部材17の上端部を挟んでいる。これにより、前方幌骨31と、後方幌骨32と、アームレスト15およびアームレスト支持部材17とは幅方向の位置がずれている。
【0043】
次に、
図7~
図9を参照して、幌布34および補助幌骨35,36,37について説明する。
【0044】
幌布34は、前方幌骨31および後方幌骨32に掛け渡され、ドーム型の立体形状を形成する。
図9に示すように、幌布34は、典型的には2層構造であり、前方,後方幌骨31,32の外側および内側をそれぞれ覆う外布34aおよび内布34bを含む。外布34aおよび内布34bは、たとえば、それぞれの外周端縁において縫い付けられている。
【0045】
前方幌骨31および後方幌骨32の間には、回動軸33に連結されていない複数の第1,2補助幌骨35,36が設けられる。第1補助幌骨35は、前方幌骨31側に位置し、第2補助幌骨36は後方幌骨32側に位置する。前方,後方幌骨31,32および第1,2補助幌骨35,36の間隔は、略同一である。第1,2補助幌骨35,36は、前方,後方幌骨31,32と同様に、幌布34の外布34aおよび内布34bでその外側および内側が覆われている。第1,2補助幌骨35,36は、たとえば合成樹脂などで形成されており、ある程度の可撓性を有しているが、前方,後方幌骨31,32よりも可撓性は高い。第1,2補助幌骨35,36は、略同一形状であり、直線的に延びる長尺形状であるが、上述した幌布34の外布34aおよび内布34bの間に挟まれているため、前方,後方幌骨31,32と同様の逆U字形状となる。
【0046】
後方幌骨32の後方には、第3補助幌骨37が設けられ、幌布34は、第3補助幌骨37にも掛け渡されている。第3補助幌骨37は、第1,2補助幌骨37と略同一形状であるが、それよりも長手方向の長さが短く形成されている。これにより、第3補助幌骨37は、背もたれ部にフィットした形状となり、背もたれ部の後方まで幌布34で覆うことができる。
【0047】
前方幌骨31の前方には、バイザー部38が設けられている。バイザー部38は、回動軸33に連結されておらず、前方幌骨31から前方に向かって突出する。バイザー部38も、幌布34の外布34aおよび内布34bでその外側および内側が覆われている。バイザー部38は板状の合成樹脂で形成されており、前方幌骨31の形状に沿った湾曲形状である。バイザー部38が設けられることで、より日差しを遮ることが可能となる。
【0048】
路面からのホコリや射熱の影響を低減させるために、近年の乳母車は、従来の乳母車と比較して座面の高さが高くなっている。一方で、押し棒の高さは人間の手の位置に合わせた高さであるため、従来の押し棒の高さのままである。そのため、アームレストに幌を取り付けると、幌骨の長さが短くなってしまい、幌が覆う座席面積が小さくなってしまうため、幌を開いた状態では乳幼児に圧迫感を与えてしまう。本実施の形態の乳母車1は、幌30の構造を工夫することで、座面を高くしながらも、押し棒20の高さは変えないままで、幌30が覆う空間を大きくしたことに特徴がある。
【0049】
従来の乳母車は、前ガードが設けられているため、幌を前方に開こうとしても、幌が前ガードに干渉するため、幌を前ガードの前方にまで開くことができない。本実施の形態では、アームレスト15と前ガード16との間に空間領域Sが設けられているため、その空間領域Sに内側幌骨31を位置することができる。これにより、
図7(a)に示すように、前方幌骨31と前ガード16が干渉しないため、幌30で座席部の前方を覆うことができる。さらに、後方幌骨32がアームレスト15よりも幅方向外方に位置するため、幌30により覆われる後方の空間を前方の空間よりも広くすることができる。以上より、幌30が覆う座席部の上方領域全体を密閉空間とすることができるとともに、幌30が覆う座席部の上方領域全体を大きくすることができ、乳幼児への圧迫感を軽減することができる。
【0050】
また、従来の乳母車は、アームレストに連結されたアームレスト支持部材の上端に幌を取り付ける形状であり、幌の回動軸がアームレスの後方および上方に位置するため、幌骨の長さが短くなっていた。本実施の形態では、アームレスト15とアームレスト支持部材17とを連結する回動軸33を介して前方,後方幌骨31,32を回動可能に設けているため、幌骨の位置を従来の乳母車よりも前方および下方にすることができる。これによっても、幌30が覆う空間を大きくすることができ、座席部の上方領域全体を幌30で覆うことができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、内側幌骨31がアームレスト15よりも幅方向内側に設けられており、幌30に押し棒20が干渉しないため、幌30を開いた状態でも、押し棒20を対面押し状態および背面押し状態に切り換えることが可能である。
【0052】
上述のように、幌30は、互いの角度が可変となるように、折り畳み可能である。本実施の形態では、幌30の開き具合を変更させるために保持具40が用いられる。以下、保持具40について説明する。
【0053】
(保持具について)
次に、
図7~
図9を参照して、保持具40について説明する。保持具40は、後方幌骨32が位置する部分に取り付けられ、第2補助幌骨36または第1補助幌骨35を上方から保持する。
図7(b)では、保持具40が第2補助幌骨36を保持した状態を示している。
図7(c)では、保持具40が第1補助幌骨35を保持した状態を示している。保持具40が第1補助幌骨35を保持すると、第2補助幌骨36を保持するよりも、より幌30を閉じることが可能となる。
【0054】
図7,
図9(a)に示すように、本実施の形態の保持具40は、後方幌骨32の上部に位置する部分、すなわち後方幌骨32の近傍に位置する幌布34の外布34aに縫い付けてあるが、後方幌骨32に直接取り付けられていてもよい。なお、保持具40は、後方幌骨32ではなく、前方幌骨31の上部に位置する部分に取り付けられていてもよい。
【0055】
図9(a)に示すように、保持具40は、保持具本体41と、逆U字状の形態の受け入れ開口42を有する。保持具本体41は、たとえば合成樹脂などにより形成されている。保持具本体41は、受け入れ開口42を有する第1部分41aと、平坦な形状の第2部分41bとを含む。本実施の形態の第1部分41aは、外形も逆U字状の形態であるが、受け入れ開口42が逆U字形状であれば、外形の形状は限定されない。第2部分41bは板状であり、貫通孔46が形成される。貫通孔46には、帯状部材47が貫通している。これにより、保持具40は、帯状部材47を介して後方幌骨32の上部に位置する幌布34に取り付けられている。
【0056】
受け入れ開口42は、奥側に位置する半円形の半円形溝部43と、半円形溝部43から開口縁にまで延びる案内溝部44とを含む。案内溝部44の開口幅は、半円形溝部43の直径(開口幅)よりもわずかに小さい。さらに、半円形溝部43の開口幅は、幌布34によって覆われた第2補助幌骨36の幅よりも小さい。案内溝部44の開口幅は、幌布34によって覆われた第2補助幌骨36の幅と略同一である。これにより、
図9(b)に示すように、幌布34によって覆われた第2補助幌骨36は、保持具40の開口縁から案内溝部44を通り、その上方に位置する半円形溝部43内に保持される。
【0057】
このような構成により、保持具40を用いることで、前方幌骨31および後方幌骨32の開き角度を狭くして使用する場合であっても、回動軸33に連結されていない第1補助幌骨35または第2補助幌骨36と前方幌骨31との間に掛け渡される幌布34を緊張状態にすることができ、幌布34が弛むことを防止することができる。さらに、第2補助幌骨36を保持具40で上方から保持するだけで足りるため、幌30を開く際に、片手で保持具40から第2補助幌骨36を外すことができる。そのため、簡易な構成で、幌30の開き具合の調整を簡単に行うことが可能となる。
【0058】
なお、本実施の形態の保持具40は、前方幌骨31または後方幌骨32が位置する部分に取り付けられるとして説明したが、補助幌骨35,36,37が位置する部分に取り付けられていてもよい。すなわち、保持具40が取り付けられる箇所は、回動軸に連結されている幌骨、または、回動軸に連結されていない補助幌骨のいずれでも構わない。たとえば、補助幌骨が位置する部分に保持具40が設けられ、保持具40で幌骨または補助幌骨を保持してもよい。この場合であっても、保持具40を用いることで、幌布が弛むことを防止することができ、簡易な構成で、幌30の開き具合の調整を簡単に行うことが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態の幌30は、回転軸33に連結されている前方,後方幌骨31,32、および、回動軸33に連結されていない補助幌骨35,36,37を備えるとした。しかし、幌30の幌骨は、回動軸33に連結されているか問わず、2本以上設けられていればよい。
【0060】
さらに、本実施の形態では、幅方向内側に位置する内側幌骨31が前方幌骨であり、幅方向外側に位置する外側幌骨32が後方幌骨であるとしたが、内側幌骨31が後方幌骨であり、外側幌骨32が前方幌骨であってもよい。すなわち、アームレスト15の幅方向内方に位置する幌骨が後方に位置する幌骨であってもよい。
【0061】
また、回動軸33に回動可能に連結される幌骨は、前方幌骨31と後方幌骨32の2つ設けられるとして説明したが、少なくともいずれか1つ設けられていればよい。この場合、回動軸33に回動可能に連結される幌骨は、幅方向内側に位置する幌骨であることが好ましい。また、前方幌骨31と後方幌骨32との間に回動軸33に連結される中間幌骨が設けられるなど、幌骨が2本以上設けられてもよい。
【0062】
さらに、前方幌骨31および後方幌骨32は、回動軸33から後方に向かって延び、その後上方に立ち上がる屈曲形状を有しているとして説明したが、一般的な直線形状であってもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、乳母車1は折り畳み式乳母車であるとして説明したが、折り畳むことができない乳母車であってもよい。この場合、アームレスト支持部材17の下端部は、車体フレーム10のいずれかに連結されていればよく、たとえば後脚13に連結されていてもよい。さらに、乳母車1の押し棒20は、背対面切替式であるとしたが、背面式または対面式のいずれかに固定されていてもよい。
【0064】
さらに、上記実施の形態では、幌が取り付けられる子供用育児器具が乳母車であるとして説明したが、これに限定されず、たとえばチャイルドシート、ベビーラック、育児椅子などの育児器具であればよい。
【0065】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 乳母車、10 車体フレーム、11 前脚、13 後脚、15 アームレスト、16 前ガード、17 アームレスト支持部材、17a 連結部、18 座席支持部材、20 押し棒、30 幌、31 前方幌骨(内側幌骨)、32 後方幌骨(外側幌骨)、33 回動軸、34 幌布、35 第1補助幌骨、36 第2補助幌骨、37 第3補助幌骨、38 バイザー部、40 保持具、42 受け入れ開口、43 半円形溝部、44 案内溝部、S 空間領域。