(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】建物の内装ユニットのための雨養生構造
(51)【国際特許分類】
E04G 21/28 20060101AFI20231012BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
E04G21/28 B
E04B1/348 Z
(21)【出願番号】P 2020028622
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 慶太
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 孝一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-066031(JP,A)
【文献】特開平05-118090(JP,A)
【文献】特開平01-127762(JP,A)
【文献】米国特許第03758998(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/28
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の内部に設けられる建物の内装ユニットのための雨養生構造であって、
前記内装ユニットの上面を覆い且つ前記内装ユニットの側面の少なくとも上部を覆うように前記内装ユニットに被せられる非透水性を有する上部シートと、
前記内装ユニットの前記上面と前記上部シートとの間に設けられ、前記上部シートに前記内装ユニットの周縁部に向けて下り勾配を付与する気密性を有する袋体とを備え
、
前記内装ユニットは、平面視で略長方形をなし、
前記袋体が略円柱形状をなして前記内装ユニットの長手方向に沿って配置され、
前記内装ユニットの前記上面が、前記長手方向の一端側に位置する第1上面と、前記長手方向の他端側に位置し、前記第1上面よりも低い第2上面とを含み、
少なくとも1つの前記袋体が前記第1上面の上に配置され、
前記第1上面の上に配置された前記袋体の数よりも多くの前記袋体が束ねられて前記第2上面の上に配置されることを特徴とする雨養生構造。
【請求項2】
前記袋体が、袋本体と、前記袋本体に気体を注排するための注排口部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の雨養生構造。
【請求項3】
前記内装ユニットの前記側面を覆うように前記内装ユニットに設けられた非透水性を有する側部シートを更に備えることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の雨養生構造。
【請求項4】
前記上部シートが2重構造をなしており、
上側の前記上部シートと下側の前記上部シートとの間に前記袋体が収容されていることを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれかに記載の雨養生構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、躯体の内部に設けられる建物の内装ユニットのための雨養生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルや集合住宅等に利用される建物を構築する際に、建物を複数のユニット(建物ユニット)に分けて工場で予め製作しておき、これらの建物ユニットを建築現場で組み立てることで工期の短縮が可能なユニット工法が実施されている。そのような工法に用いられる建物ユニットとして、鋼管からなる柱、H形鋼からなる床梁及び天井梁を有し、床梁及び天井梁の周囲が耐火被覆材で予め被覆されたものが公知である(特許文献1)。
【0003】
この建物ユニットでは、床梁の上にALCからなる床版が敷設され、建物ユニットの内部にはトイレ、浴室、システムキッチン、空調機、ドア等が配置されている。また、柱間には、戸境壁となる壁パネルや、廊下側及びバルコニー側の外壁をなす外壁パネル等が固定されている。また、下階に配置される下階ユニットの天井梁の上面と上階に配置される上階ユニットの床梁の下面とが互いに離間していることで、その分だけ配管スペース及び配管スペースが増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載される建物ユニットは屋根を備えていない。そのため、上階ユニットが上方に配置されるまでは上面(天井ボードが固定されている場合には天井ボードの裏面)があらわしになっている。また、戸境壁となる壁ボードの裏面も、建物ユニットの側面にあらわしになっている。これらの内装ボードは雨に打たれると水を含み、灰汁が出るため、張り替える必要がある。したがって、内装材があらわしになっている建物ユニットは雨に打たれて濡れることがないように雨養生をする必要がある。
【0006】
特許文献1に記載されるような建物ユニットを雨養生する場合には、建物ユニットが直方体形状をなし、且つ頑丈であるため、例えば上面にコンパネを敷設してユニット上面を平坦にし、その上にブルーシート等の非透水性を有するシートを被せることが考えられる。
【0007】
一方、ユニットが躯体の内部に設けられる内装ユニットである場合、ユニットのつくりを建物ユニットのような頑丈なものにする必要はない。そのため、コンパネを敷設するために内装ユニットの上に人が乗ると、内装ユニットが破損又は変形する虞がある。しかしながら、内装ユニットの上面には凹凸があるため、シートを内装ユニットに直接被せると、シート上の水が内装ユニットの凹部を覆う部分に集まって貯まり、シートから水が滲み出す虞やシートが破れる虞がある。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑み、内装ユニットの上に人が乗らずとも配置、撤去が可能であり、且つ水が内装ユニットの凹部を覆う部分に集まることを抑制できる、内装ユニットのための雨養生構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、躯体(2)の内部に設けられる建物(1)の内装ユニット(12)のための雨養生構造(30)であって、前記内装ユニットの上面を覆い且つ前記内装ユニットの側面の少なくとも上部を覆うように前記内装ユニットに被せられる非透水性を有する上部シート(32)と、前記内装ユニットの前記上面と前記上部シートとの間に設けられ、前記上部シートに前記内装ユニットの周縁部に向けて下り勾配を付与する気密性を有する袋体(33)とを備える。なお、内装ユニットは、立体形状の枠体と、枠体の内側に配置されて枠体に組み付けられた内装材とを含む。
【0010】
この構成によれば、雨養生構造が上部シートと袋体とを備える構成であるため、内装ユニットの上に人が乗らずとも雨養生構造を配置、撤去することができる。また、袋体によって上部シートに内装ユニットの周縁部に向く下り勾配が設けられるため、内装ユニットの凹部を覆う上部シートの部分に水が集まることを抑制できる。
【0011】
好ましくは、前記袋体が、袋本体(34)と、前記袋本体に気体を注排するための注排口部(35)とを備えるとよい。
【0012】
この構成によれば、注排口部からの気体の注排によって袋本体を膨らませたり縮ませたりすることができる。これにより、上部シートに適切な下り勾配を付与することができる。また、雨水の排水が不要なときには袋本体を縮めることで雨養生構造の高さ寸法を小さくすることできる。これにより、内装ユニットを搭載した車両の高さを低くすることができる。
【0013】
好ましくは、前記内装ユニットは、平面視で略長方形をなし、前記袋体が略円柱形状をなして前記内装ユニットの長手方向に沿って配置されるとよい。
【0014】
この構成によれば、袋体によって高くなる上部シートの部分から内装ユニットの周縁までの距離が全ての位置で小さくなり、上部シートの下り勾配を大きくすることができる。
【0015】
好ましくは、前記内装ユニットの前記上面が、前記長手方向の一端側に位置する第1上面(20a)と、前記長手方向の他端側に位置し、前記第1上面よりも低い第2上面(21a)とを含み、前記袋体が前記第1上面及び前記第2上面に跨って配置されるとよい。
【0016】
この構成によれば、1つの袋体によって内装ユニットの第1上面を覆う上部シートの部分と第2上面を覆う上部シートの部分との両方に下り勾配を付与することができる。また袋体が1つで済むため、雨養生構造の配置及び撤去が容易である。
【0017】
好ましくは、前記内装ユニットの前記上面が、前記長手方向の一端側に位置する第1上面(20a)と、前記長手方向の他端側に位置し、前記第1上面よりも低い第2上面(21a)とを含み、少なくとも1つの前記袋体が前記第1上面の上に配置され、前記第1上面の上に配置された前記袋体の数よりも多くの前記袋体が束ねられて前記第2上面の上に配置されるとよい。
【0018】
この構成によれば、内装ユニットの第2上面を覆う上部シートの部分には大きな下り勾配を付与しつつ、第1上面を覆う上部シートの部分の高さの増大を抑制することができる。
【0019】
好ましくは、前記内装ユニットの側面を覆うように前記内装ユニットに設けられた非透水性を有する側部シート(31)を更に備えるとよい。
【0020】
この構成によれば、内装ユニットの側面の上部を覆う上部シートの部分が側部シートに重なる位置まで設けられることで、内装ユニットの側面が覆われるため、上部シートの大きさ(側面を覆う部分の高さ)を小さくすることができる。そのため、上部シートの配置や撤去が容易になる。
【0021】
好ましくは、前記上部シートが2重構造をなしており、上側の前記上部シートと下側の前記上部シートとの間に前記袋体が収容されているとよい。
【0022】
この構成によれば、袋体を上部シートと同時に配置、撤去することができ、雨養生構造の配置及び撤去が容易である。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明によれば、内装ユニットの上に人が乗らずとも配置、撤去が可能であり、且つ水が内装ユニットの凹部を覆う部分に集まることを抑制できる、内装ユニットのための雨養生構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】取付途中の内装ユニットの雨養生構造を示す斜視図
【
図6】実施形態及び変形例に係る雨養生構造を示す断面図
【
図8】
図7中の(A)VIIIA線に沿う断面図、(B)VIIIB線に沿う断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は実施形態に係る建物1の平面図である。
図1に示すように、建物1は、RCラーメン構造の躯体2を有する多層建物である。躯体2は、複数の柱3(3A、3B)と、柱3に剛接合される複数の梁4(4A、4B、
図2参照)と、梁4に支持されるスラブ5とを含んでいる。建物1は、ホテルや宿舎、オフィス、集合住宅等として利用される。建物1は、客室や部屋、住戸等として利用される複数の利用空間(以下、室6という)からなる専用部分と、廊下7や内階段、エレベーター、エントランス等の共用空間からなる共用部分とを画定している。
【0027】
本実施形態の建物1は、複数の室6が桁行方向に並べられた板状型をなしている。他の実施形態では、建物1が雁行型建物やタワー型建物であってもよい。複数の室6は廊下7の両側方に廊下7に面するように配置されている。廊下7は建物1の内部に設けられる内部廊下とされている。廊下7のスラブ5の上にはカーペットやフロアマット等の内装床材が敷設されている。柱3は梁間方向に4列に並べられ、且つ桁行方向に等間隔に複数列に並べられている。桁行方向に互いに隣接する柱3の間には、桁行方向に並んだ2つの室6が廊下7を挟んで対峙するように配置されている。各室6は平面視で梁間方向に長い略長方形とされ、桁行方向に並ぶ2つの室6は線対称の形状とされている。他の実施形態では、桁行方向に互いに隣接する柱3の間に1つや3つ以上の室6が配置されてもよい。また、廊下7の一側方にみに室6が配置されてもよい。この場合、廊下7は側面が開放された外廊下とされてよい。
【0028】
複数の柱3は、梁間方向について建物1の外周部分に配置される柱3(以下、外周柱3Aという)と、梁間方向について建物1の内部に配置される柱3(以下、内部柱3Bという)とを含んでいる。外周柱3Aは略正方形の断面形状とされている。内部柱3Bは梁間方向の寸法が桁行方向の寸法よりも大きい略長方形の断面形状とされている。本実施形態では、内部柱3Bは廊下7の両側方且つ廊下7から離れた位置、すなわち室6の長手方向の中間部に配置されている。他の実施形態では、内部柱3Bが廊下7に隣接して、或いは廊下7に突出するように配置されてもよい。室6が廊下7の一側方のみに配置された建物1の場合、外周柱3Aは建物1の室6側の外周部分のみに1列に配置される。またこの場合、内部柱3Bは室6と廊下7との境界近傍に配置される列を含むように少なくとも1列に配置されるとよい。
【0029】
桁行方向に隣接配置される各対の外周柱3A間の開口は、窓開口8が形成されたRC造の外壁9によって閉鎖されている。桁行方向の端部(建物1の妻部)に配置された柱3間の開口も外壁9によって閉鎖されている。1対の内部柱3B間に設けられる外壁9の廊下7に面する部分には非常扉10が設けられており、非常扉10の外側には外階段11が設けられている。外階段11は鉄骨造であってよい。
【0030】
各室6は、ユニットバス14や入口扉15、内装ボード、配管、配線等の内装品が工場にて予め一体に形成された内装ユニット12により画定されている。内装ユニット12は、工場から建物1の建築現場までトレーラーによって運搬される。そのため、内装ユニット12の大きさ(特に、幅及び高さ)は、トレーラーに積載された状態で、車載物を含めたトレーラーの大きさが道路交通法によって認められる大きさ(幅2.99m、長さ15.91m、高さ4.1m)を超えないように設定されている。室6の廊下7側にはPS13(パイプスペース)とトイレ一体型のユニットバス14とが長手方向に沿ってこの順に設けられ、これらの側方部分は入口扉15から奥側に設けられたベッドルーム等の部屋部に至る通路となっている。
【0031】
他の実施形態では、桁行方向に並べられた複数の内装ユニット12が協働して1つの室6を画定してもよい。この場合、少なくとも1つの内装ユニット12に入口扉15が設けられればよい。桁行方向に互いに隣接する2つの内装ユニット12は、互いに対向する位置に設けられる少なくとも1対の開口を介して人の行き来ができるように互いに連結される。開口には扉が設けられても設けられなくてもよい。このように複数の内装ユニット12が互いに連結され、協働して1つの室6を画定することにより、運搬のために制限される内装ユニット12の寸法よりも大きな室6を形成することが可能である。
【0032】
室6の平面積を大きくするために、各内装ユニット12は外壁9や隣接する内装ユニット12に沿う外輪郭を有しており、内装ユニット12の外周柱3A及び内部柱3Bに対応する部分には室6に突出する柱型が形成されている。外周柱3Aの柱型は室6の隅に形成されている。一方、内部柱3Bの柱型は、内部柱3Bが室6の長手方向の中間部に配置されていることから、室6の一側面の中間部に形成されている。本実施形態では、桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間は空間になっている。ただし、桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間に防音部材が設けられてもよい。また、内部柱3Bを挟んで桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間にはRC造の壁が設けられてもよい。
【0033】
図2は、構築中の建物1の要部斜視図である。
図2に示すように、桁行方向に互いに隣接する各対の外周柱3Aは、桁行方向に延在する第1梁4Aによって互いに連結される。桁行方向に互いに隣接する各対の内部柱3Bも桁行方向に延在する第1梁4Aによって互いに連結される。梁間方向に互いに隣接する外周柱3A及び内部柱3Bの各対は、梁間方向に延在する第2梁4Bによって互いに連結される。梁間方向に互いに隣接する各対の内部柱3B(
図2には一方のみが示される)も、梁間方向に延在する第2梁4Bによって互いに連結される。
【0034】
本実施形態では、外周柱3Aは、1階層の高さと略同じ長さを有するPCaコンクリート製の複数の外周柱部材16Aを鉛直方向に連結することによって構成される。内部柱3Bは、1階層の高さと略同じ長さを有するPCaコンクリート製の複数の内部柱部材16Bを鉛直方向に連結することによって構成される。ここで、略同じとは、目地の厚さ分だけ異なる程度を含むことを意味する。
【0035】
各対の外周柱3Aを連結する第1梁4Aは、外周柱3A間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第1外周梁部材17Aによって構成される。互いに隣接する1対の外周柱部材16Aとこれらを連結する第1外周梁部材17Aとにより、躯体2の外周部に門型の外周架構部18が構成される。各対の内部柱3Bを連結する第1梁4Aは、内部柱3B間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第1内部梁部材17Bによって構成される。
【0036】
外周柱3A及び内部柱3Bを連結する第2梁4Bは、外周柱3Aと内部柱3Bとの間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第2外側梁部材19Aによって構成される。内部柱3B同士を連結する第2梁4Bは、内部柱3B間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第2内側梁部材19Bによって構成される。
【0037】
他の実施形態では、外周柱3Aや内部柱3Bが共にPCaコンクリート製の1つの柱部材と仕口部材とによって構成されてもよい。また、第1梁4Aや第2梁4Bが、1つの梁部材とその両側に設けられる2つの仕口部材の梁部分とによって構成されてもよい。更に、第1梁部材17(17A、17B)は2つの仕口部材の梁部分のみによって構成されてもよい。
【0038】
これらのPCaコンクリート部材は、工場で予め製作され、トレーラーによって建築現場まで搬送されて建築現場にて組み立てられる。PCaコンクリート部材同士の連結は、一方の部材から突出する鉄筋(図示せず)が他方の部材に設けられた機械継手(図示せず)に継ぎ合わされることにより行われる。2つのPCaコンクリート部材の間に鉄筋挿通孔を備えた他のPCaコンクリート部材が配置されてもよい。PCaコンクリート部材同士の連結は、この工法に限られず、公知の他の工法によって行われてもよい。
【0039】
上記のように内装ユニット12の幅は運搬のために制限される。一方、桁行方向に隣接配置される各対の外周柱部材16A間に複数の内装ユニット12が配置されることにより、外周柱部材16Aの間隔は、内装ユニット12の大きさによって制限されることなく大きくすることが可能である。これにより、躯体2を、PCaコンクリート部材の運搬や組立が容易な合理的な構造にすることができる。
【0040】
図3は、建物1の内装ユニット12の斜視図である。
図2及び
図3に示されるように、内装ユニット12は、略直方体をなしており、室6の天井高さを高くして空間を大きくするために、一部において第1梁4Aの下面及び第2梁4Bの下面よりも上方に膨出する膨出部20を備えている。本実施形態では、内装ユニット12の入口扉15と相反する他端側の部屋部に1つの膨出部20が設けられている。
【0041】
膨出部20は、第1梁4A及び第2梁4Bを避けた位置、すなわち、梁間方向に互いに隣接する1対の第1梁部材17の間且つ桁行方向に互いに隣接する1対の第2梁部材19(より詳しくは、第2外側梁部材19A)の間に位置している。膨出部20の第1梁4A及び第2梁4Bに対応する2辺(一端部12a及び一側部12bの上部)には室6の部屋部に突出する梁型が形成されている。
【0042】
なお、内装ユニット12の入口扉15側の、膨出部20が設けられていない部分(以下、一般部21という)には梁型は形成されていない。膨出部20は一般部21の上面よりも高い上面を形成している。言い換えれば、内装ユニット12の上面は、長手方向の一端側に位置する膨出部20の第1上面20aと、長手方向の他端側に位置し、第1上面20aよりも低い一般部21の第2上面21aとを含んでいる。
【0043】
このように内装ユニット12が膨出部20を備えることにより、室6が上方に拡大され、室6の上方にデッドスペースが発生することが抑制される。また、膨出部20が1対の第1梁部材17及び1対の第2梁部材19によって囲まれるため、内装ユニット12が大きく水平方向にずれることもない。
【0044】
内装ユニット12は、下端部に配置された架台22と、架台22の上に組み立てられた立体形状の枠体23と、枠体23の内側に配置されて枠体23に組み付けられた内装ボード等の内装材24とを有している。架台22は、H形鋼やI形鋼、チャンネル等、枠体23に比べて剛性が高い鋼材によって形成されている。架台22に形成された支持部に冶具を取り付けることにより、揚重機による内装ユニット12の揚重が可能とされている。枠体23は、角パイプ25やLGS26(Light Gage Steel)等、架台22に比べて剛性が低く軽量な鋼材によって形成されている。枠体23の矩形の各面は、少なくとも4辺を角パイプ25によって構成され、角パイプ25の間隔が所定の値以上になる場合に、間隔が所定の値以下となるように少なくとも1本のLGS26が配置される。内装ユニット12の一端部12aの側面には、外壁9の窓開口8に整合する位置に開口部27が形成されている。
【0045】
なお、
図3では、1つの面に配置されたLGS26のみを示し、他の面に配置されるLGS26は図示省略している。LGS26は枠体23の側面だけでなく上面にも設けられる。ユニットバス14が設けられる部分には、LGS26や内装材24が設けられなくてもよい。ユニットバス14の上面には、点検扉によって開閉可能な点検口28が形成されている。電気配線や上水配管(図示せず)は、内装ユニット12の上面に載置される。図示しない下水配管(図示せず)は、内装ユニット12の下部、具体的には架台22の内部空間に収容される。
【0046】
建物1は以上のように構成されている。このように建物1の躯体2がRC造であるため、建物1の耐震性能を容易に確保することができる。
【0047】
一方、内装ユニット12は、建物1の構造部材として構成されているものではなく、構造部材に比べて剛性が低い。また、内装ユニット12の外面には内装ボード等の内装材24の裏面があらわしになっている。したがって、内装ユニット12は雨に打たれて濡れなることがないように雨養生をする必要がある。そこで、内装ユニット12は、工場で製作された後に雨養生構造30が設けられる。以下、雨養生構造30について詳しく説明する。
【0048】
図4は取付途中の内装ユニット12の雨養生構造30を示す斜視図である。
図4に示されるように、内装ユニット12には、内装ユニット12の側面を覆うように側部シート31が設けられる。側部シート31は、非透水性を有するものであればよく、材料を限定されるものではないが、例えば、ポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルムであってよい。側部シート31は、少なくとも上部を枠体23に接着されることにより内装ユニット12に取り付けられる。
【0049】
側部シート31は、側面の全周を覆うように展開される一枚のシートから構成されてもよく、周方向に分割された複数枚のシートを周方向にオーバーラップするように配置して構成されてもよい。また側部シート31は、樹脂フィルムと粘着テープとが予め一体に貼り付けられた養生フィルムであってもよい。側部シート31は、内装ユニット12の側面(梁型が設けられた部分以外の部分の側面)の上縁又は上縁近傍に上縁が位置するように内装ユニット12に粘着テープによって貼り付けられる。側部シート31は、下縁が架台22の上縁よりも低い位置に至る高さを有するとよい。一方、側部シート31の上縁は内装ユニット12の側面の上縁に至っていなくてもよい。
【0050】
図5は内装ユニット12の雨養生構造30を示す斜視図である。
図5に示されるように、内装ユニット12には、内装ユニット12の上面を覆うように上部シート32が設けられる。上部シート32は、内装ユニット12の上面の全体を覆い、且つ内装ユニット12の側面の少なくとも上部を覆うように内装ユニット12に被せられる。内装ユニット12の側面を覆う上部シート32の部分は、少なくとも側部シート31の上部にオーバーラップする高さを有する。
【0051】
上部シート32は、外部から内部への非透水性を有するものであればよく、内部から外部への水蒸気の透過を許容することが好ましい。また上部シート32は、可撓性を有し且つ形状保持性(保形性)を有する程度の剛性を有するとよい。上部シート32は、材料を限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂とポリエステル不織布との複合シートであってよい。このようなシートして、例えば、フクビ化学工業株式会社製のスーパーエアテックス(登録商標)を用いることができる。
【0052】
内装ユニット12の上面と上部シート32との間には、袋体33が設けられている。袋体33は、例えば、ポリ塩化ビニルにより形成され、気密性を有するものであればよい。袋体33は、袋本体34と、袋本体34に気体を注排するための注排口部35とを備えている。袋本体34は、如何なる形状であってもよいが、内装ユニット12の上面と上部シート32との間に配置されることにより、上部シート32に棟を形成し、内装ユニット12の周縁部に向けて下りの水勾配を付与する。水勾配は片流れであっても両流れであってもよい。
【0053】
このように雨養生構造30が上部シート32と袋体33とを備えることにより、内装ユニット12の上に人が乗らずとも雨養生構造30を配置、撤去することができる。また、袋体33によって上部シート32に内装ユニット12の周縁部に向く下り勾配が設けられるため、内装ユニット12の凹部を覆う上部シート32の部分に水が集まることが抑制される。
【0054】
本実施形態では、袋本体34は膨らんだ状態で長尺の略円柱形状をなし、内装ユニット12の短手方向の略中央に内装ユニット12の長手方向に沿って配置されている。これにより、袋体33によって高くなる上部シート32の部分から内装ユニット12の周縁までの距離が全ての位置で小さくなり、袋本体34が球形の場合に比べて大きな水勾配が上部シート32に付与されている。
【0055】
また袋本体34は、内装ユニット12の長手方向の寸法よりも若干小さい長さを有しており、内装ユニット12の膨出部20の第1上面20aと、第1上面20aよりも低い一般部21の第2上面21aとに跨って配置されている。これにより、1つの袋本体34によって内装ユニット12の第1上面20aを覆う上部シート32の部分と第2上面21aを覆う上部シート32の部分との両方に下り勾配が付与されている。このように袋体33が1つで済むことにより、雨養生構造30の配置及び撤去が容易になっている。
【0056】
注排口部35は、袋本体34に対する気体の注排を可能にするためのバルブとして機能するものである。注排口部35は、袋本体34から延びる管状とされ、管の先端にて気体の注排を行えることが好ましい。袋体33が袋本体34と注排口部35とを備えることにより、注排口部35からの気体の注排によって袋本体34を膨らませたり縮ませたりすることができる。これにより、上部シート32に適切な下り勾配を付与することが可能である。また、雨水の排水が不要なときには袋本体34を縮めることで雨養生構造30の高さ寸法を小さくすることできる。したがって、内装ユニット12が車両に搭載された状態において、内装ユニット12を搭載した車両の高さを低くすることが可能である。
【0057】
上部シート32は、袋本体34が膨らんだときの形状に適合する立体形状に加工されている。具体的には、上部シート32は、適切な大きさに裁断された複数のシートを、縫合、接着、溶着等によって互いに接合することによって立体形状を有するように製造される。上部シート32は可撓性を有するため、非使用時には折り畳むことができる。上部シート32は、展開状態では上記の立体形状をなし、内装ユニット12に上から被せられることによって内装ユニット12に取り付けられる。上部シート32は、クリップやロープ、フック等の固定部材によって内装ユニット12に固定されてもよい。
【0058】
他の実施形態では、内装ユニット12の側面を覆う上部シート32の部分の下縁が架台22の上縁よりも低い位置まで至り、上部シート32が内装ユニット12の側面の略全体を覆ってもよい。この場合は側部シート31を省略することができる。
【0059】
一方、本実施形態の雨養生構造30は側部シート31を備えており、これにより、内装ユニット12の側面の上部を覆う上部シート32の部分が側部シート31に重なる位置まで設けられることで内装ユニット12の側面が覆われる。そのため、上部シート32の大きさ(側面を覆う部分の高さ)を小さくすることが可能であり、これにより上部シート32の配置や撤去が容易になっている。
【0060】
図6は内装ユニット12の雨養生構造30を示す断面図である。
図5及び
図6(A)に示すように、注排口部35は内装ユニット12の点検口28を通るように配置され、注排口部35の先端は内装ユニット12の内部に配置される。このように注排口部35が内装ユニット12の内部に配置されることにより、袋本体34に対する気体の注排作業を内装ユニット12の内部で行うことができる。また、雨養生構造30の撤去時には、袋本体34を縮ませた後に注排口部35を内装ユニット12の内部から引っ張ることで袋体33を内装ユニット12の内部に回収することができる。
【0061】
図6(B)は、変形例に係る雨養生構造30を示す断面図である。この例では、上部シート32が上側上部シート32Uと下側上部シート32Lとを備える2重構造をなしており、上側上部シート32Uと下側上部シート32Lとの間に袋体33が収容されている。この場合でも、袋体33の注排口部35は、下側上部シート32Lに形成されたスリットや孔を通って先端が内装ユニット12の内部に位置するように配置されるとよい。
【0062】
このように上側上部シート32Uと下側上部シート32Lとの間に袋体33が収容されることにより、袋体33を上部シート32と同時に配置、撤去することができ、雨養生構造30の配置及び撤去が容易になる。
【0063】
図6(C)は、更なる変形例に係る雨養生構造30を示す断面図である。この例では、袋体33の袋本体34が異なる大きさの円柱形状部を幅方向に連結してなる形状をなしている。互いに隣接する円柱形状部の内部空間は互いに連通していることが好ましい。このような構成とされることにより、袋体33が1つの注排口部35を備え、この注排口部35を介する気体の注排により袋本体34を膨らませたり縮ませたりすることができる。また、上部シート32に適切な勾配を付与することができる。
【0064】
図7は他の実施形態に係る雨養生構造30を示す斜視図であり、
図8はその断面図、具体的には
図8(A)は
図7中のVIIIA線に沿う断面図であり、
図8(B)は
図7中のVIIIB線に沿う断面図である。
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、袋体33の構成が上記実施形態と異なっている。以下、具体的に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
本実施形態では、雨養生構造30が複数の袋体33を備えている。各袋体33は上記実施形態のものよりも小さな同一の断面寸法を有する略円柱形状とされている。各袋体33は同一の長さであってもよく、異なる長さであってもよい。図示の例では、内装ユニット12の膨出部20の第1上面20aの上に、3つの袋体33を結束部材36によって束ねてなる袋体ユニット37が配置されている。内装ユニット12の一般部21の第2上面21aの上に、10個の袋体33を結束部材36によって束ねてなる袋体ユニット37が配置されている。第1上面20aの上に配置された袋体ユニット37の頂部と第2上面21aの上に配置された袋体ユニット37の頂部とは略同じ高さとされている。
【0066】
このように本実施形態では、一般部21の第2上面21aの上に、これよりも高い膨出部20の第1上面20aの上に配置された袋体33の数よりも多くの袋体33が束ねられて配置される。これにより、内装ユニット12の第2上面21aを覆う上部シート32の部分には大きな下り勾配が付与され、第1上面20aを覆う上部シート32の部分は高さの増大を抑制される。なお、第1上面20aの上には少なくとも1つの袋体33が設けられればよく、袋体ユニット37が設けられる必要はない。
【0067】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、材料、配置や撤去の手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 建物
2 躯体
12 内装ユニット
20 膨出部
20a 第1上面
21 一般部
21a 第2上面
30 雨養生構造
31 側部シート
32 上部シート
33 袋体
34 袋本体
35 注排口部