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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】鉄道車両の着雪防止システム
(51)【国際特許分類】
   B61D 49/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B61D49/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020031542
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133817
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 佑介
(72)【発明者】
【氏名】榎本 年克
(72)【発明者】
【氏名】中尾 稔
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功
(72)【発明者】
【氏名】岡田 日貴
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-18616(JP,A)
【文献】特開2005-37174(JP,A)
【文献】特開2009-18648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車スカート部における車両進行方向の後方に位置する後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を融解させる融雪ヒータ装置を前記後壁部の外壁側に備えた鉄道車両の着雪防止システムであって、
前記台車スカート部には、前記後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を常時検出する着雪センサと、前記後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を強制的に脱落させる高圧エア吹付装置とを備え、
前記着雪センサが検出した着雪状況の画像情報に基づいて、前記融雪ヒータ装置と前記高圧エア吹付装置の何れか又は双方を稼働させることを特徴とする鉄道車両の着雪防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記着雪状況の画像情報は、前記鉄道車両に装備された乗務員用モニタ及び前記鉄道車両の指令所に装備された指令所用モニタに表示することを特徴とする鉄道車両の着雪防止システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記画像情報に基づいて着雪量をパターン化した上で、前記融雪ヒータ装置と前記高圧エア吹付装置の何れか又は双方を前記パターン化した着雪量に応じて稼働させることを特徴とする鉄道車両の着雪防止システム。
【請求項4】
請求項3に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記パターン化した着雪量を大中小の段階に区分して、前記着雪量が小の段階では、前記高圧エア吹付装置のみを走行中に稼働させ、前記着雪量が中の段階では、前記高圧エア吹付装置と前記融雪ヒータ装置とを走行中に稼働させ、前記着雪量が大の段階では、前記高圧エア吹付装置と前記融雪ヒータ装置とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御されていることを特徴とする鉄道車両の着雪防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の着雪防止システムに関し、詳しくは、鉄道車両の台車スカート部内壁の着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を除去する鉄道車両の着雪防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、冬季に車両走行時、台車スカート部の内壁側に着雪し、氷雪の塊に成長することがある。また、成長した氷雪が走行中に脱落すると、線路上のバラスト等を跳ね上げ、床下構造部等を損傷させる恐れがある。そのため、例えば、特許文献1には、図4に示すように、走行時に台車スカート部101の内壁側に付着された氷雪を融解する遠赤外線発生装置102を台車スカート部101の外壁側に設けた鉄道車両用の氷雪融解装置100が開示されている。豪雪地帯を走行する鉄道車両であれば、上記氷雪融解装置100を常時稼働させることによって、走行中の着雪を一定以下に抑制でき、成長した氷雪が走行中に脱落して、線路上のバラスト等を跳ね上げ、床下構造部等を損傷させる恐れを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-18616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、豪雪地帯以外を走行する鉄道車両(例えば、新幹線(登録商標))では、上記氷雪融解装置100を常時稼働させることは、電力等のエネルギーを無駄に使うことになる。そのため、豪雪地帯以外を走行する鉄道車両の氷雪融解装置は、通常、鉄道車両が駅に停車したときなど、限定的に稼働させることが多かった。
【0005】
ところが、鉄道車両が豪雪地帯以外を走行する場合であっても、その日の気象条件又は地理的条件等によって、車両走行時、台車スカート部の内壁側に付着する着雪量が急速に増加し、氷雪の塊に成長することがある。この着雪状況の変化を、停車駅で確認するのでは、成長した氷雪が走行中に脱落するのを未然に防止することはできない。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電力等のエネルギーを無駄に使うことなく、着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を簡単に除去することができる鉄道車両の着雪防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の着雪防止システムは、以下の構成を備えている。
(1)台車スカート部における車両進行方向の後方に位置する後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を融解させる融雪ヒータ装置を前記後壁部の外壁側に備えた鉄道車両の着雪防止システムであって、
前記台車スカート部には、前記後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を常時検出する着雪センサと、前記後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を強制的に脱落させる高圧エア吹付装置とを備え、
前記着雪センサが検出した着雪状況の画像情報に基づいて、前記融雪ヒータ装置と前記高圧エア吹付装置の何れか又は双方を稼働させることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、台車スカート部には、後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を常時検出する着雪センサと、後壁部の内壁側に付着する雪又は氷雪を強制的に脱落させる高圧エア吹付装置とを備え、着雪センサが検出した着雪状況の画像情報に基づいて、融雪ヒータ装置と高圧エア吹付装置の何れか又は双方を稼働させるので、着雪量の大小の判別が容易となり、走行中に変化する着雪量に応じて、必要な箇所で融雪ヒータ装置と高圧エア吹付装置とを使い分けることができ、電力等のエネルギーを無駄に使うことがない。また、気象条件又は地理的条件等によって、車両走行時、後壁部の内壁側に付着する着雪量が急速に増加しても、この着雪状況の変化を簡単に認識でき、成長した氷雪が走行中に脱落するのを未然に防止することができる。
【0009】
よって、本発明によれば、電力等のエネルギーを無駄に使うことなく、着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を簡単に除去することができる鉄道車両の着雪防止システムを提供することができる。
【0010】
(2)(1)に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記着雪状況の画像情報は、前記鉄道車両に装備された乗務員用モニタ及び前記鉄道車両の指令所に装備された指令所用モニタに表示することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、着雪状況の画像情報は、鉄道車両に装備された乗務員用モニタ及び鉄道車両の指令所に装備された指令所用モニタに表示するので、当該鉄道車両の乗務員(運転士を含む)又は指令所の監視員は、モニタ表示された着雪状況に応じて、必要な箇所の融雪ヒータ装置と高圧エア吹付装置の何れか又は双方の稼働を指示することができる。また、当該鉄道車両の乗務員(運転士)又は指令所の監視員は、モニタ表示された着雪状況に応じて、当該鉄道車両や後続の鉄道車両の走行速度を減速させるよう指示したり、停車駅での作業指示も可能となる。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記画像情報に基づいて着雪量をパターン化した上で、前記融雪ヒータ装置と前記高圧エア吹付装置の何れか又は双方を前記パターン化した着雪量に応じて稼働させることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、画像情報に基づいて着雪量をパターン化した上で、融雪ヒータ装置と高圧エア吹付装置の何れか又は双方をパターン化した着雪量に応じて稼働させるので、着雪量の大小の判別が更に容易となり、走行中に変化する着雪量に応じて、必要な箇所に迅速かつ簡単に融雪ヒータ装置と高圧エア吹付装置とを使い分けることができ、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れも迅速に回避して、鉄道車両の安全性を向上させることができる。
【0014】
(4)(3)に記載された鉄道車両の着雪防止システムにおいて、
前記パターン化した着雪量を大中小の段階に区分して、前記着雪量が小の段階では、前記高圧エア吹付装置のみを走行中に稼働させ、前記着雪量が中の段階では、前記高圧エア吹付装置と前記融雪ヒータ装置とを走行中に稼働させ、前記着雪量が大の段階では、前記高圧エア吹付装置と前記融雪ヒータ装置とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、パターン化した着雪量を大中小の段階に区分して、着雪量が小の段階では、高圧エア吹付装置のみを走行中に稼働させ、着雪量が中の段階では、高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置とを走行中に稼働させ、着雪量が大の段階では、高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御されているので、着雪量の大中小に応じて高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置とを使い分けて、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れも同時に回避して、鉄道車両の安全性を担保させることができる。
【0016】
すなわち、着雪量が小の段階では、後壁部の内壁側に付着する雪の量が少なく、氷化して後壁部の内壁に密着していないので、高圧エア吹付装置のみを走行中に稼働させることによって、簡単に強制除去することができる。また、着雪量が中の段階では、着雪した雪の一部が氷化して後壁部の内壁に密着しているので、高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置とを走行中に稼働させ、融雪と強制除去とを併用することによって、成長した氷雪の塊になる以前に除去することができる。また、着雪量が大の段階では、成長した氷雪の塊になっているので、走行中に強制除去するのは危険であり、高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御することによって、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れを回避して、鉄道車両の安全性を担保させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力等のエネルギーを無駄に使うことなく、着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を簡単に除去することができる鉄道車両の着雪防止システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システムのブロック図である。
図2図1に示す着雪防止システムに用いる装置の配置図である。
図3図1に示す着雪防止システムにおいて、着雪量パターン毎に高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置の稼働を制御する制御方法を表す制御要領図である。
図4】特許文献1に記載された鉄道車両用の氷雪融解装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システムの構成を詳細に説明した上で、着雪量パターンに基づいて高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置を稼働させる制御方法を説明する。
【0020】
<本鉄道車両の着雪防止システムの構成と制御方法>
まず、本鉄道車両の着雪防止システムの構成と制御方法について、図1図3を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システムのブロック図を示す。図2に、図1に示す着雪防止システムに用いる装置の配置図を示す。図3に、図1に示す着雪防止システムにおいて、着雪量パターン毎に高圧エア吹付装置と融雪ヒータ装置の稼働を自動制御する制御方法を表す制御要領図を示す。
【0021】
図1図2に示すように、本鉄道車両の着雪防止システム10は、台車スカート部1における車両進行方向の後方に位置する後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSを融解させる融雪ヒータ装置2を後壁部11の外壁側に備えている。台車スカート部1は、レール8上で進行方向前後に配置された車輪7と台車(不図示)とを収納するため、側面視で略台形状に形成されている。融雪ヒータ装置2は、台車スカート部1の後壁部11の外壁面に沿って配置されたパネル状ヒータ装置である。本鉄道車両の種類は、特に限定されないが、豪雪地帯以外の地域を走行する高速鉄道車両(例えば、新幹線)が好適である。鉄道車両では、上りと下りで車両進行方向が逆転するので、先頭車両(又はその接続車両等)として走行するときの車両進行方向を基準にして、上り又は下りにおいて先頭車両(又は先頭車両及びその接続車両等)と最後尾車両(又は最後尾車両及びその接続車両等)とにそれぞれ着雪防止システム10を装着し、先頭車両(又はその接続車両等)として走行する場合に、その車両の着雪防止システム10を稼働させることが好ましい。
【0022】
また、台車スカート部1には、融雪ヒータ装置2に対向して配置され、後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSを常時検出する着雪センサ3と、当該後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSを強制的に脱落させる高圧エア吹付装置4とを備えている。着雪センサ3は、後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSの大きさ(例えば、外形寸法、表面積又は輪郭長さ等)を検出できるものであれば、特に限定されないが、ここでは、監視カメラ3(暗いところでも撮影可能な赤外線カメラ等が好ましい)が装着されている。また、監視カメラ3は、台車スカート部1の上部に取り付け、監視カメラ3の周りには、着雪防止カバーを設けると良い。また、高圧エア吹付装置4は、台車スカート部1の上部に取り付け、上方から下方へ向けて後壁部11の内壁面に沿って高圧エアを吹き付けるように配置する。高圧エア吹付装置4は、加熱エア又は加熱蒸気を吹き付けるものであっても良い。
【0023】
また、本鉄道車両の着雪防止システム10には、車両用システム20と指令所システム30とを備えている。車両用システム20は、鉄道車両Sに装備され、監視カメラ3と融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4と乗務員用モニタ51と乗務員操作部52と、それらに接続された車両制御部5とを備えている。また、指令所システム30は、鉄道車両の走行を監視・指令する指令所に装備され、指令所用モニタ61と指令所操作部62と、それらに接続された指令所制御部6とを備えている。車両制御部5と指令所制御部6とは、有線又は無線で接続されている。なお、乗務員は、運転士を含む意味であり、乗務員用モニタ51を運転士が監視して乗務員操作部52を運転士が操作してもよい。
【0024】
また、車両制御部5は、予め定めた時間毎に監視カメラ3を作動させて、台車スカート部1における後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSの着雪状況を撮影させ、撮影した画像情報を乗務員用モニタ51に表示させる。乗務員用モニタ51に表示された雪又は氷雪TSの大きさから乗務員が必要と認めた場合には、乗務員操作部52における融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方の操作スイッチを乗務員が押して稼働させる。操作スイッチは、複数の車両における台車スカート部1に融雪ヒータ装置2及び高圧エア吹付装置4を設けた場合、各融雪ヒータ装置2毎及び各高圧エア吹付装置4毎に操作できる。
【0025】
また、台車スカート部1における後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSの着雪状況の画像情報は、指令所制御部6を介して指令所用モニタに表示するので、指令所の監視員は、モニタ表示された着雪状況に応じて、必要な箇所の融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方の稼働を指令所操作部62を操作して指示することができる。
【0026】
また、本鉄道車両の着雪防止システム10は、監視カメラ3が検出した着雪状況の画像情報に基づいて着雪量をパターン化した上で、融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方をパターン化した着雪量に応じて稼働させるように制御されている。なお、監視カメラ3が検出した着雪状況の画像情報に基づいて着雪量をパターン化する方法は、適宜設定することができる。また、パターン化するタイミングは、適宜設定した時間毎に行えばよい。
【0027】
例えば、図3に示すように、パターン化した着雪量を複数の段階(例えば、大中小の3段階)に区分して、着雪量がA(小)の段階では、高圧エア吹付装置4のみを走行中に稼働させ、着雪量がB(中)の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に稼働させ、着雪量がC(大)の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御することができる。
【0028】
具体的には、着雪量がA(小)の段階では、後壁部11の内壁側に付着する雪の量が少なく、氷化して後壁部11の内壁に密着していないので、高圧エア吹付装置4のみを走行中に稼働させることによって、簡単に強制除去することができる。また、着雪量がB(中)の段階では、着雪した雪の一部が氷化して後壁部11の内壁に密着しているので、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に稼働させ、融雪と強制除去とを併用することによって、成長した氷雪の塊になる前に除去することができる。また、着雪量がC(大)の段階では、着雪した雪が成長した氷雪の塊になっているので、走行中に強制除去すると、除去した氷雪の塊が車両床下に配置された機器等に衝突して当該機器等を損傷させる等の恐れがある。そのため、着雪量がC(大)の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御することによって、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れを回避して、鉄道車両の安全性を担保させることができる。なお、上記制御プログラムは、車両制御部5に記憶され、乗務員操作部52又は指令所操作部62からプログラム内容の変更又は追加、消去を行うことができる。
【0029】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システム10によれば、台車スカート部1には、後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSを常時検出する着雪センサ3と、後壁部11の内壁側に付着する雪又は氷雪TSを強制的に脱落させる高圧エア吹付装置4とを備え、着雪センサ3が検出した着雪状況の画像情報に基づいて、融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方を稼働させるので、着雪量の大小の判別が容易となり、走行中に変化する着雪量に応じて、必要な箇所で融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4とを使い分けることができ、電力等のエネルギーを無駄に使うことがない。また、気象条件又は地理的条件等によって、車両走行時、後壁部11の内壁側に付着する着雪量が急速に増加しても、この着雪状況の変化を簡単に認識でき、成長した氷雪が走行中に脱落するのを未然に防止することができる。
【0030】
よって、本実施形態によれば、電力等のエネルギーを無駄に使うことなく、着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を簡単に除去することができる鉄道車両の着雪防止システム10を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、着雪状況の画像情報は、鉄道車両Sに装備された乗務員用モニタ51及び鉄道車両Sの指令所に装備された指令所用モニタ61に表示するので、当該鉄道車両Sの乗務員(運転士を含む)又は指令所の監視員は、モニタ表示された着雪状況に応じて、必要な箇所の融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方の稼働を指示することができる。また、当該鉄道車両Sの乗務員(運転士)又は指令所の監視員は、モニタ表示された着雪状況に応じて、当該鉄道車両Sや後続の鉄道車両の走行速度を減速させるよう指示したり、停車駅での作業指示も可能となる。
【0032】
また、本実施形態によれば、画像情報に基づいて着雪量をパターン化した上で、融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4の何れか又は双方をパターン化した着雪量に応じて稼働させるので、着雪量の大小の判別が更に容易となり、走行中に変化する着雪量に応じて、必要な箇所に迅速かつ簡単に融雪ヒータ装置2と高圧エア吹付装置4とを使い分けることができ、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れも迅速に回避して、鉄道車両Sの安全性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、パターン化した着雪量を大中小の段階に区分して、着雪量が小の段階では、高圧エア吹付装置4のみを走行中に稼働させ、着雪量が中の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に稼働させ、着雪量が大の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御されているので、着雪量の大中小に応じて高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを使い分けて、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れも同時に回避して、鉄道車両Sの安全性を担保させることができる。
【0034】
すなわち、着雪量が小の段階では、後壁部11の内壁側に付着する雪の量が少なく、氷化して後壁部11の内壁に密着していないので、高圧エア吹付装置4のみを走行中に稼働させることによって、簡単に強制除去することができる。また、着雪量が中の段階では、着雪した雪の一部が氷化して後壁部11の内壁に密着しているので、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に稼働させ、融雪と強制除去とを併用することによって、成長した氷雪の塊になる以前に除去することができる。また、着雪量が大の段階では、成長した氷雪の塊になっているので、高速走行中に強制除去すると車両床下に配置された機器等の損傷などの恐れがあり、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御することによって、電力等の無駄を低減しつつ、成長した氷雪が走行中に脱落する恐れを回避して、鉄道車両Sの安全性を担保させることができる。
【0035】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両の着雪防止システム10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態の鉄道車両の着雪防止システム10は、パターン化した着雪量を複数の段階(例えば、大中小の3段階)に区分して、着雪量がA(小)の段階では、高圧エア吹付装置4のみを走行中に稼働させ、着雪量がB(中)の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に稼働させ、着雪量がC(大)の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを徐行中又は停車中に稼働させるように制御されている。
【0036】
しかし、これに限定する必要はなく、走行する地域の気象条件、地理的条件等に適した方法で制御すれば良い。例えば、パターン化した着雪量を2段階に区分して、着雪量が小の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを走行中に間欠的に稼働させ、着雪量が大の段階では、高圧エア吹付装置4と融雪ヒータ装置2とを所定速度(例えば、50km/h)以下で走行する低速走行時と停車中とで稼働させるように制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、鉄道車両の台車スカート部内壁の着雪状況を常時監視し、必要な箇所のみ着雪を除去する鉄道車両の着雪防止システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 台車スカート部
2 融雪ヒータ装置
3 監視カメラ(着雪センサ)
4 高圧エア吹付装置
5 車両制御部
6 指令所制御部
10 着雪防止システム
51 乗務員用モニタ
61 指令所用モニタ
S 鉄道車両
TS 雪又は氷雪
図1
図2
図3
図4