(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】六角形セグメント及びシールドトンネルの覆工体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20231012BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/08
(21)【出願番号】P 2020038274
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】橋口 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-236798(JP,A)
【文献】特開平07-054596(JP,A)
【文献】特開平09-032489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備え、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成させる、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントであって、
トンネルの軸方向に沿って配される軸方向中央線の両側それぞれに、前記切羽側接合面から前記坑口側斜め接合面に亘る
直線状の複数の斜ボルト挿通孔が形成されており、
前記複数の斜ボルト挿通孔が、六角形セグメントの厚み方向に並んだ状態に形成されて
おり、
前記切羽側接合面から前記坑口側接合面に亘る挿通孔を有していない、六角形セグメント。
【請求項2】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備え、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成させる、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントであって、
トンネルの軸方向に沿って配される軸方向中央線の両側それぞれに、前記切羽側接合面から前記坑口側斜め接合面に亘る複数の斜ボルト挿通孔が形成されており、
前記複数の斜ボルト挿通孔が、六角形セグメントの厚み方向に並んだ状態に形成されており、
前記複数の斜ボルト挿通孔として、前記六角形セグメントの内周面に近い位置に形成された内側の斜ボルト挿通孔と、前記六角形セグメントの外周面に近い位置に形成された外側の斜ボルト挿通孔とを有しており、
前記外側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置が、前記内側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置に対して、前記切羽側斜め接合面側にずれており、前記外側の斜ボルト挿通孔の長さと前記内側の斜ボルト挿通孔の長さが略同じとなっている
、六角形セグメント。
【請求項3】
前記坑口側斜め接合面に、他の六角形セグメントの切羽側斜め接合面に形成されたガイド凹部及びガイド凸部と係合するガイド凸部及びガイド凹部が形成されており、
前記複数の斜ボルト挿通孔の、前記坑口側斜め接合面側の開口が、該坑口側斜め接合面の長手方向における前記ガイド凸部と前記ガイド凹部との間の領域に位置する、請求項1又は2に記載の六角形セグメント。
【請求項4】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備える六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する、シールドトンネルの覆工体の構築方法であって、
前記六角形セグメントとして、請求項1~3の何れか1項に記載の六角形セグメントを用いるとともに、
先行して配置された複数の六角形セグメントによって形成された等脚台形状の凹部に、セグメントの搬送装置により、後続の六角形セグメントを移動させる第1工程、前記後続の六角形セグメントの前記切羽側接合面に、個々の六角形セグメントの前記切羽側接合面に押し当てその反力によりシールド掘進機を前進させるための複数のシールドジャッキのうちの一部のシールドジャッキを押し当てることによって、前記後続の六角形セグメントにおける坑口側の等脚台形状部分を前記凹部に密着させる第2工程、第2工程後に、前記後続の六角形セグメントにおける前記軸方向中央線の両側にそれぞれ複数設けられた前記斜ボルト挿通孔のそれぞれに連結用ボルトを挿通して、該後続の六角形セグメントを該前記先行して配置された六角形セグメントと緊結する第3工程を備える、シールドトンネルの覆工体の構築方法。
【請求項5】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備える六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する、シールドトンネルの覆工体の構築方法であって、
前記六角形セグメントとして、請求項2に記載の六角形セグメントを用いるとともに、
先行して配置された複数の六角形セグメントによって形成された等脚台形状の凹部に、セグメントの搬送装置により、後続の六角形セグメントを移動させる第1工程、前記後続の六角形セグメントの前記切羽側接合面に、個々の六角形セグメントの前記切羽側接合面に押し当てその反力によりシールド掘進機を前進させるための複数のシールドジャッキのうちの一部のシールドジャッキを押し当てることによって、前記後続の六角形セグメントにおける坑口側の等脚台形状部分を前記凹部に密着させる第2工程、第2工程後に、前記後続の六角形セグメントにおける前記軸方向中央線の両側にそれぞれ複数設けられた前記斜ボルト挿通孔のそれぞれに連結用ボルトを挿通して、該後続の六角形セグメントを該前記先行して配置された六角形セグメントと緊結する第3工程を備えており、
前記外側の斜ボルト挿通孔及び前記内側の斜ボルト挿通孔に挿入する連結用ボルトとして、長さが等しい共通の連結用ボルトを用いる、シールドトンネルの覆工体の構築方法。
【請求項6】
第2工程及び第3工程を、前記セグメントの搬送装置の保持部に前記後続の六角形セグメントを保持した状態で行い、第3工程後に、その六角形セグメントを前記保持部から分離する、請求項4
又は5に記載のシールドトンネルの覆工体の構築方法。
【請求項7】
第3工程におけ
る、前記六角形セグメントどうしの緊結を、前記搬送装置により搬送される自動締結装置により行う、請求項4
~6の何れか1項に記載のシールドトンネルの覆工体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造に関し、特に、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成するのに用いられる六角形セグメント、及び六角形セグメントを用いたシールドトンネルの覆工体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部や平野部において各種のトンネルを構築する方法として、シールド掘進機によるシールド工法が広く採用されている。シールド工法は、シールド掘進機の先端の切羽面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方に、トンネルの軸方向及び周方向に連設してセグメントを順次組み付けることによって、トンネルの内周面を覆う覆工体を形成し、組み付けられた覆工体の前端部に、シールドジャッキを押し付けることにより反力を得ながら、発進立坑から到達立坑に向けて、トンネルを地中に構築してゆく工法である。
【0003】
近年、工事の効率化等を図る観点から、トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、一般に用いられる矩形状の平面形状を備えるセグメントに換えて、六角形状の平面形状を備える六角形セグメントを用いたシールド工法が採用される場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。六角形セグメントは、平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えている(
図1(a)参照)。六角形セグメントは、トンネルの掘進方向後方側に先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側接合面及び切羽側斜め接合面に、トンネルの掘進方向前方側に後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側接合面及び坑口側斜め接合面を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメントにおける、トンネルの掘進方向前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、交互に突出させながら、トンネルの軸方向及び周方向にハニカム状に配置されて順次組み付けられてゆくことになる(例えば、特許文献3の
図4~
図6参照)。
【0004】
また、六角形セグメントを用いたシールド工法では、六角形セグメントの交互に突出する等脚台形状部分の切羽側接合面にシールドジャッキを押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキを押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメントを組み付ける作業を行うことができるので、矩形状の平面形状を備えるセグメントを用いたシールド工法のように、シールド掘進機を掘進させる工程を一リング毎に中断してセグメントを組み立てる作業を行うことなく、六角形セグメントを組み付けながら、シールド掘進機を連続して掘進させることで、効率良くシールド工事を行なうことが可能である。
【0005】
さらに、六角形セグメントを用いたシールド工法では、隣接する六角形セグメントの間の連結は、切羽側接合面や、坑口側接合面や、切羽側斜め接合面や、坑口側斜め接合面による端面の間を貫通して取り付けられる、連結用ボルトを用いて行なうになっているので(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、矩形状のセグメントによる覆工体の内周面に現れるような、連結用ボルトの締結作業を行うためのボルトボックス等による凹凸が、六角形セグメントによる覆工体の内周面には形成されないようにすることが可能になる。またこれによって、覆工体の内周面を平滑な状態に保持することができるので、好ましくは内側面に防食層を施した六角形セグメントによる覆工体の内側に、さらに二次覆工を施工する必要がなく、六角形セグメントによる覆工体の内周面をそのままトンネルの内周面として用いて、構築したシールドトンネルを、例えば水を流通させる、下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯留地用のトンネルとして、有効に活用することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2596666号公報
【文献】特開平9-273395号公報
【文献】特許第3253870号公報
【文献】特許第3235494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、大深度地下に構築するシールドトンネルや大口径のシールドトンネルにおいては、使用する六角形セグメントの厚みや重量が増大し、六角形セグメントどうしの接合部に、より大きな剪断力が加わるため、それに抗し得る強固な連結手段が必要となる。
斯かる連結手段としては、断面積の大きな連結用ボルトを用いることが考えられるが、連結用ボルトの重量が増大することによって、連結用ボルトを、人手で、搬送したり、ボルト挿通孔に挿入したりすることが困難となる等、連結作業の作業効率が低下する。
【0008】
また連結用ボルトを挿通するボルト挿通孔として、六角形セグメントに、切羽側接合面から坑口側斜め接合面に亘り、切羽側斜め接合面と略平行に連結用ボルトが挿通される斜ボルト挿通孔と、切羽側接合面と坑口側接合面とを連通し、トンネルの軸方向と略平行に連結用ボルトが挿通される軸方向ボルト挿通孔とを形成することが知られている(特許文献2の
図1参照)。
しかしながら、軸方向ボルト挿通孔は、同一構成の六角形セグメントをトンネルの軸方向に連結する際に、軸方向ボルト挿通孔の位置が重なるため、軸方向ボルト挿通孔を有する六角形セグメントを設置できる範囲が限られる。そのため、複数の六角形セグメントを貫く長尺なボルトを用いることも考えられるが、複数の六角形セグメントを貫通させて長尺なボルトを挿通する作業が容易ではない上に、個々の長尺なボルトも重量や長さが増大したものとなる。そのため、セグメントどうしの連結作業の作業効率が低下する。
【0009】
また、鋼又はダクタイル鋳鉄製のセグメントとして、セグメントどうしの継手部に配される継手板に、ボルト挿通孔を当該セグメントの厚み方向に複数設けたものが知られている(特許文献4)。しかし、鋼又はダクタイル鋳鉄製のセグメントである上に、平面視形状が六角形でもなく、特許文献4には、引用文献4の技術を、コンクリートを主体として構成される六角形セグメントに適用することについて何ら記載されていない。
【0010】
また本発明者らは、六角形セグメントにおける、トンネルの軸方向に沿う軸方向中央線の両側それぞれに、切羽側接合面から坑口側斜め接合面に亘るボルト挿通孔を、トンネルの周方向に所定の間隔で並べて複数形成することも考えたが、その場合、連結用ボルトを挿入する作業を行う際などの作業性が大きく低下することが判明した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、連結される六角形セグメントどうしの間に容易に高い接合強度が得られるとともに、連結に伴う各種作業の作業性にも優れる、六角形セグメント、及びそれを用いたシールドトンネルの覆工体の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備え、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成させる、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントであって、トンネルの軸方向に沿って配される軸方向中央線の両側それぞれに、前記切羽側接合面から前記坑口側斜め接合面に亘る複数の斜ボルト挿通孔が形成されており、前記複数の斜ボルト挿通孔が、六角形セグメントの厚み方向に並んだ状態に形成されている、六角形セグメントを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
本発明の六角形セグメントにおいては、前記複数の斜ボルト挿通孔として、前記六角形セグメントの外周面に近い位置に形成された外側の斜ボルト挿通孔と、前記六角形セグメントの内周面に近い位置に形成された内側の斜ボルト挿通孔とを有しており、前記外側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置が、前記内側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置に対して、前記切羽側斜め接合面側にずらしてあり、前記外側の斜ボルト挿通孔の長さと前記内側の斜ボルト挿通孔の長さが略同じとなっていることが好ましい。また本発明の六角形セグメントにおいては、前記坑口側斜め接合面に、他の六角形セグメントの切羽側斜め接合面に形成されたガイド凹部又はガイド凸部と係合するガイド凸部又はガイド凹部が形成されており、前記複数の斜ボルト挿通孔の、前記坑口側斜め接合面側の開口が、該坑口側斜め接合面の長手方向における前記ガイド凹部と前記ガイド凸部との間の領域に位置することが好ましい。
【0014】
また本発明は、互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備える六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する、シールドトンネルの覆工体の構築方法であって、前記六角形セグメントとして、請求項1~3の何れか1項に記載の六角形セグメントを用いるとともに、先行して配置された複数の六角形セグメントによって形成された等脚台形状の凹部に、セグメントの保持部を有するセグメントの搬送装置により、後続の六角形セグメントを移動させる第1工程、前記後続の六角形セグメントの前記切羽側接合面に、個々の六角形セグメントの前記切羽側接合面に押し当てその反力によりシールド掘進機を前進させるための複数のシールドジャッキのうちの一部のシールドジャッキを押し当てることによって、前記後続の六角形セグメントにおける坑口側の等脚台形状部分を前記凹部に密着させる第2工程、第2工程後に、前記後続の六角形セグメントにおける前記軸方向中央線の両側にそれぞれ複数設けられた前記斜ボルト挿通孔のそれぞれに連結用ボルトを挿通して、該後続の六角形セグメントを該前記先行して配置された六角形セグメントと緊結する第3工程を備える、シールドトンネルの覆工体の構築方法を提供するものである。
【0015】
また本発明のシールドトンネルの覆工体の構築方法は、前記セグメントの搬送装置の前記保持部に前記後続の六角形セグメントを保持した状態で行い、第3工程後に、その六角形セグメントを該保持部から分離する第4工程を備えることが好ましい。また本発明のシールドトンネルの覆工体の構築方法は、第3工程における、前記六角形セグメントどうしの緊結を、前記六角形セグメントと共に、前記搬送装置により搬送される自動締結装置により行うことが好ましい。また本発明のシールドトンネルの覆工体の構築方法は、前記六角形セグメントとして、前記外側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置が、前記内側の斜ボルト挿通孔における前記切羽側接合面側の開口の位置に対して、前記切羽側斜め接合面側にずらしてあり、前記外側の斜ボルト挿通孔の長さと前記内側の斜ボルト挿通孔の長さが略同じとなっているものを用い、前記外側の斜ボルト挿通孔及び前記内側の斜ボルト挿通孔に挿入する連結用ボルトとして、長さが等しい共通の連結用ボルトを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の六角形セグメント及びシールドトンネルの覆工体の構築方法によれば、連結される六角形セグメントどうし間に容易に高い接合強度が得られるとともに、連結に伴う各種作業の作業性にも優れており、例えば、シールドトンネルの覆工体として、厚みが厚い覆工体や大口径の覆工体を形成する場合であっても、効率的な連結作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る六角形セグメントの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)をE方向から見た側面図、(c)は(a)をF方向から見た側面図、(d)は(a)をG方向から見た図である。
【
図2】本発明の六角形セグメント及びシールドトンネルの覆工体の製造方法を用いて形成されるシールドトンネルの覆工体の一例を示す部分破断斜視図である。
【
図3】斜ボルト挿通孔の好ましい配置の説明図であり、(a)は、
図1(b)に示す切羽側接合面の下半部の一部分をその法線方向から視た拡大図、(b)は、
図1(d)に示す坑口側斜め接合面をその法線方向から視た拡大図である。
【
図4】
図1に示す六角形セグメントの斜ボルト挿通孔の説明図であり、(a)は、連結用ボルトを挿入する前の断面図、(b)は、連結用ボルトを挿入した状態の断面図である。
【
図5】(a)~(c)は、複数の六角形セグメントを組み付けて覆工体を形成する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメント12は、
図1(a)~(d)に示すように、互いに平行に配置された切羽側接合面13及び坑口側接合面14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える、六角形の平面視形状を有する鉄筋コンクリート製のセグメントである。鉄筋コンクリート製の六角形セグメントは、その全体が鉄筋コンクリート製であるものに限定されず、適宜の箇所に、鋼板製の補強板等による補強が施されていても良い。六角形セグメント12は、トンネルの半径方向の外側に配される六角形形状の外周面20及びトンネルの半径方向の内側に配される六角形形状の内周面22を有し、全域に亘って略一定の厚みを有する板状体であり、切羽側接合面13及び坑口側接合面14に沿った方向の断面が、トンネルの半径に相当する曲率半径を有する円弧状の形状を有している(
図1(b)、(c)参照)。六角形セグメント12は、任意の厚みや口径のシールドトンネルの覆工体11の構築に用いることができるが、特に大口径のトンネルの覆工体11の構築に適しており、切羽側接合面13及び坑口側接合面14に沿った方向の断面における外周面20の曲率半径は、例えば0.9~17.45mであり、好ましくは2.0~4.0mである。また大深度地下等、特に高い耐圧性が要求される場合にも適しており、六角形セグメント12の厚みT(外周面と内周面との間の距離)は、例えば、20~90cmであり、好ましくは30~60cmである。
【0019】
そして、六角形セグメント12は、その複数を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることによって、例えば、雨水を一時的に貯留する貯留地用のシールドトンネル等のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11(
図2参照)を形成させることができるようになっている。六角形セグメント12における各々のV字状周方向接合面17における、切羽側斜め接合面15と坑口側斜め接合面16との間の角度θは、120°となっている(
図1(a)参照)。これによって、複数の六角形セグメント12を、先行する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び切羽側接合面13に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16及び坑口側接合面14を、順次隙間なく重ね合わせた状態で、軸方向及び周方向にハニカム状に配置してゆくことができるようになっている(
図5参照)。
【0020】
本実施形態に係る六角形セグメント12には、
図1に示すように、トンネルの軸方向に沿って配される軸方向中央線L1の両側それぞれに、切羽側接合面13から前記坑口側斜め接合面16に亘る複数の斜ボルト挿通孔23が形成されている。また軸方向中央線L1の両側それぞれに設けられた複数の斜ボルト挿通孔23は、
図3に示すように、六角形セグメント12の厚み方向Zに並んだ状態に形成されている。軸方向中央線L1とは、六角形セグメント12における一対のV字状周方向接合面の先端どうし間の距離を2等分する仮想線であって、覆工体11を形成する際にトンネルの軸方向Xに沿って配される仮想線である。軸方向中央線L1の両側は、六角形セグメントの平面視における軸方向中央線L1の両側である(
図1(a)参照)。
【0021】
六角形セグメント12の軸方向中央線L1の両側それぞれに形成された複数の斜ボルト挿通孔23について、
図1に示す(a)の軸方向中央線L1より下側に形成された複数の斜ボルト挿通孔23を例にして説明する。以下、軸方向中央線L1に対して一方の側に形成された複数の斜ボルト挿通孔、及び軸方向中央線L1に対して他方の側に形成された複数の斜ボルト挿通孔を、包括して「複数の斜ボルト挿通孔」ともいう。
図1に示す六角形セグメント12は、軸方向中央線L1に対して線対称の形状を有している。
【0022】
本実施形態に係る六角形セグメント12は、
図1及び
図3(a)に示すように、複数の斜ボルト挿通孔23として、六角形セグメント12の厚み方向Zにおける異なる位置に形成された複数の斜ボルト挿通孔23を有している。より具体的には、厚み方向Zにおいて、内周面22に近い位置に形成された内側の斜ボルト挿通孔23aと、その斜ボルト挿通孔23aよりも外周面20に近い位置に形成された外側の斜ボルト挿通孔23
bとを有している。複数の斜ボルト挿通孔23が、六角形セグメント12の厚み方向Zに並んだ状態とは、少なくとも、複数の斜ボルト挿通孔23の切羽側接合面13側の開口が、六角形セグメントの厚み方向に並んでいることを意味するが、それに加えて、複数の斜ボルト挿通孔23の坑口側斜め接合面16側の開口が、六角形セグメントの厚み方向に並んでいることが好ましい。ここで、並ぶという表現には、本発明の効果が奏される範囲の多少のずれを有する場合も含まれる。
【0023】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る六角形セグメント12における複数の斜ボルト挿通孔23は、それぞれ、挿入される連結用ボルト24の外周面と略同径の内周面を有する本体部23mを有するとともに、斜ボルト挿通孔23における切羽側接合面13側の端部に、連結用ボルト24の頭部を締着させる締着凹部23cが、その開口部を切羽側接合面13に開口させて形成されている。本体部23mは、長尺円筒状のシース管23sを鉄筋コンクリートのコンクリート内に埋設して形成されている。また締着凹部23cの底部は、鋼板等からなる支圧板23hによって補強されている。
【0024】
本実施形態におけるように、斜ボルト挿通孔23が、切羽側接合面13側の端部に締着凹部23cを有する場合であっても、斜ボルト挿通孔23の開口の中心点Ca,Cbは、
図4(a)に示すように、本体部23mの軸中心線gと、切羽側接合面13に開口する締着凹部23cの開口面との交点である。しかし、前記交点と締着凹部23
cの開口面の中心点とのズレは僅かであることが多いので、そのズレが大きいことが明らかである場合を除き、締着凹部23
cの開口面の中心点を、斜ボルト挿通孔23の開口の中心点Ca,Cbとしても良い。
【0025】
本実施形態における斜ボルト挿通孔23は、坑口側斜め接合面16側の端部にも、本体部23mよりも横断面積が拡大した凹部23dを有している。斜ボルト挿通孔23が、坑口側斜め接合面16側の端部に、内周面が挿通される連結用ボルトの外周面に沿わない形状の凹部23dを有する場合においても、斜ボルト挿通孔23の開口の中心点Ca’,Cb’は、
図4(b)に示すように、本体部23mの軸中心線gと、坑口側斜め接合面16に開口する前記凹部23dの開口面との交点である。しかし、通常、前記交点と凹部23dの開口面の中心点とのズレは僅かであることが多いので、そのズレが大きいことが明らかである場合を除き、当該凹部23dの開口面の中心点を、斜ボルト挿通孔23の開口の中心点Ca’,Cb’としても良い。
【0026】
六角形セグメント12は、軸方向中央線L1の両側それぞれに形成する複数の斜ボルト挿通孔として、
図3(a)に示すように、六角形セグメントの内周面22に近い位置に形成された内側の斜ボルト挿通孔23aと、六角形セグメントの外周面20に近い位置に形成された外側の斜ボルト挿通孔23bとを有し、外側の斜ボルト挿通孔23bにおける切羽側接合面13側の開口の位置が、内側の斜ボルト挿通孔23aにおける切羽側接合面13側の開口の位置に対して、切羽側斜め接合面15側にずれており、外側の斜ボルト挿
通孔23bの長さと内側の斜ボルト挿
通孔23aの長さが略同じとなっている。
【0027】
これにより、斜ボルト挿通孔23aに挿通してセグメントどうしの緊結に用いる連結用ボルトとして、長さが共通の連結用ボルトを好適に使用することができる。また、複数の斜ボルト挿通孔23a,23bの形成に用いるシース管23s等も共通のものを使用することが容易となる。長さが共通の連結用ボルトを使用することは、本発明において必須ではないが、長さが共通の連結用ボルトを使用可能であることは、斜ボルト挿通孔毎に異なる連結用ボルトを用いる場合に比して、挿入作業、搬入作業、資材管理等の各種の負担を軽減可能である。
【0028】
外側の斜ボルト挿
通孔23bの長さと内側の斜ボルト挿
通孔23aの長さを略同じとする方法として、複数の連結用ボルトの坑口側斜め接合面16側の開口の位置をずらす方法も考えられるが、少なくとも切羽側接合面1
3側の開口の位置をずらして、坑口側斜め接合面16側の開口の位置をずらさないか又はずらす程度を抑制することが、複数の連結用ボルトを通す位置を、坑口側斜め接合面16の長手方向中央部付近に集中させ、六角形セグメント12をトンネルの周方向及び軸方向に組み付けて形成される覆工体に優れた強度を付与する観点から好ましい。
図3(a)に示すL2は、そのために必要な斜ボルト挿
通孔23bのずれの長さである。なお、連結用ボルト24の長さは、切羽側接合面13側の開口の中心点Ca,Cbと、坑口側斜め接合面16側の開口の中心点Ca’,Cb’との間の距離である。
【0029】
六角形セグメント12の一対の切羽側斜め接合面15には、これらの中央部に、複数の斜ボルト挿通孔23に対応する複数の雌ネジ孔15a,15bが設けられている。雌ネジ孔15a,15bは、例えば雌ネジアンカーを埋込むことによって設けられている。雌ネジ孔15a,15bは、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16が重ね合わされた際に、後続する六角形セグメント12に設けられた斜ボルト挿通孔23の、締着凹部23aとは反対側の端部側と直線状に連通するようになっている。これによって、連通した斜ボルト挿通孔23及び雌ネジ孔15a,15bに、連結用ボルト24を挿通して締着させることにより、ハニカム状に配置された各々の隣接する六角形セグメント12を、強固に一体として連結することが可能になる(
図2参照)。
【0030】
また本実施形態の六角形セグメント12においては、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16に、位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bが各々設けられている。これらの位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bは、先行して設置された六角形セグメント12に後続して、次の六角形セグメント12を設置する際に、先行して設置された六角形セグメント12による、周方向Yに隣接して掘進方向X前方側に突出する等脚台形状部分の間の、等脚台形状の間隔部分(凹部)に(
図5(a)参照)、後続する六角形セグメント12が配置されるように案内して、精度良く位置決めできるようにすると共に、組み付けられた六角形セグメント12に位置ずれが生じるのを、防止できるようにする機能を備えている。
【0031】
また本実施形態の六角形セグメント12には、これらの六角形セグメント12を組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔29が、例えば内側面の中央部分に設けられていると共に、六角形セグメント12を吊り上げ可能とする吊上げ用インサート金具27が、例えば坑口側接合面14の両側の側部領域に配置されて、一対設けられている。
【0032】
また本実施形態の六角形セグメント12は、その厚み方向に離間した2箇所に、平面視における六角形セグメント12の全周に亘って設けられた内側周溝21a及び外側周溝21bを備えている。本明細書において、六角形セグメントの平面は、六角形セグメントの内周面側の面である(
図1(a)参照)。六角形セグメント12の厚み方向Zにおいて、内側周溝21aは、外側周溝21bよりも内周面22に近い位置に形成されている。より詳細には、六角形セグメント1における、切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、
図1(a)~(d)に示すように、六角形セグメント12の外周面から60mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の外側周溝21bが、六角形セグメント12の全周に亘って連続するように形成されており、六角形セグメント12の内周面から60mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の内側周溝21aが、六角形セグメント12の全周に亘って連続するように形成されている。内側周溝21a及び外側周溝21bは、六角形セグメント12の全周に亘って、相互間の距離が略一定であり、互いに平行に形成されている。内側周溝21a内及び外側周溝21b内には、それぞれ、好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材18が、接着剤を介して、六角形セグメント12の全周に亘って連続するように設けられている。
上述した構成の六角形セグメント12は、内側周溝21a及び外側周溝21b内にシール材18が配されている状態として、その複数を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設して組み付けることによって、内側から外側及び外側から内側へ移行する水の流れを遮断する止水性能に優れたシールドトンネルの覆工体11(
図2参照)を形成させることができる。
【0033】
本実施形態に係る六角形セグメント12は、その複数を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに連設して、ハニカム状に組み付けることによって、シールドトンネルの覆工体11を形成することができる。複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けるには、例えば
図5(a)~(c)に示すように、トンネルの掘進方向Xの後方側に先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、トンネルの掘進方向Xの前方側に後続して組み付けられる六角形セグメント12の坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメント12における、トンネルの掘進方向Xの前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、交互に突出させながら、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置して順次組み付けてゆく。
【0034】
また、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに順次組み付けてゆく際に、先行して組み付けられた六角形セグメント12における、交互に突出する、前記等脚台形状部分における先端の切羽側接合面13に、シールドジャッキ26を押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ26を押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメント12を組み付ける作業を行うことが可能となっている。
【0035】
本発明のシールドトンネルの覆工体の構築方法の一実施態様として、上述した構成の六角形セグメント12を用いて覆工体11を構築する方法について説明すると、本実施態様の方法においては、
図5(a)に示すように、切羽側接合面13にシールドジャッキ26を押し当てた周方向Yにおいて隣り合う等脚台形状部分の間の領域において、当該間の領域のシールドジャッキ26を収縮した状態として、当該間の領域に、セグメントの搬送装置(エレクター装置等)により、後続して設置する六角形セグメント12を搬送し、更に、そのセグメントの搬送装置により、当該間の領域に、先に配置した複数の六角形セグメントによって形成された等脚台形状の凹部28に、後続の六角形セグメント12を移動させる(第1工程)。第1工程においては、等脚台形状の凹部28に、後続して組み付けられる六角形セグメント12の後側半分の等脚台形状の部分を差し込むようにして、その等脚台形状部分に存する坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を、先行して組み付けられた六角形セグメント12の、切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、各々近接又は当接させる(
図5(a)参照)。
【0036】
しかる後に、隣接する等脚台形状部分の間の領域に配置された、例えば3本のシールドジャッキ26のうち、中央の1本のシールドジャッキ26を伸長させ、そのシールドジャッキ26を、後続する六角形セグメント12の切羽側接合面に押し当てることによって、該六角形セグメント12の後側半分の等脚台形状の部分を、前記凹部28に密着させる(第2工程)。第2工程においては、後続して組み付けられる六角形セグメント12の、後側半分の等脚台形状の部分に存する坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16が、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に押し付けられて各々密着する。より具体的には、後続して組み付けられる六角形セグメント12を、好ましくは把持孔29を介したセグメントの搬送装置による保持を維持しながら、その六角形セグメント12の切羽側接合面13における両側の斜ボルト挿通孔どうし間に位置する領域に、前記1本の前記シールドジャッキ26を押し当てることによって、該後続の六角形セグメント12を、先行して組み付けられた六角形セグメント12に押し付けた状態において、その後続の六角形セグメント12の切羽側接合面13の両側にそれぞれ複数設けられた斜ボルト挿通孔23のそれぞれに連結用ボルト24を挿通し、各片側に複数本づつ挿入した合計4本以上の連結用ボルト24を用いて、先に配置されている六角形セグメント12と緊結させる(第3工程)。第3工程においては、互いに連通させた後続の六角形セグメント12の斜ボルト挿通孔23と先行して設置された六角形セグメント12の雌ネジ孔15aとに、連結用ボルト24を挿通して締着させることにより、相隣接する六角形セグメント12どうしを連結して一体化させる。この第3工程により、後続の六角形セグメント12は、片側に2本以上、合計4本以上挿通された連結用ボルト24を介して、先行して設置された六角形セグメント12に対して強固に緊結される。この際、六角形セグメント12の自重で切羽側の端部が下がることを防止するため、六角形セグメント12の上側に設置する連結用ボルト24を許容範囲内で強く締め付けてもよい。
【0037】
このような作業を、周方向に複数形成された、隣接する突出した等脚台形状部分の間の各々の領域において行うと共に、このようにして新たに設置された六角形セグメント12を、先行して組み付けられた既存の六角形セグメント12として、これらの切羽側接合面13にシールドジャッキ26を押し当てて反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ26を押し当てたこれらの六角形セグメント12の間の領域において、更に後続する六角形セグメントを組み付ける作業を繰り返してゆくことによって、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置された複数の六角形セグメント12による、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯留地用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を、容易に形成することが可能になる。
【0038】
本実施形態に係る六角形セグメント12及びそれを用いた上記のシールドトンネルの覆工体11の構築方法によれば、軸方向中央線L1の両側それぞれに厚み方向に並べた状態に設けた斜ボルト挿通孔23に挿通した合計4本以上の連結用ボルト24を挿通して、六角形セグメントどうしを緊結することができるため、互いに隣接させてハニカム状に組み付けられる六角形セグメントどうし間に高い接合強度が得られる。しかも、大断面の連結用ボルトを用いて接合強度を高める場合や複数の六角形セグメントを貫通する軸方向の連結用ボルトを用いる場合に比して、個々の連結用ボルトの重量を抑えることができるため、連結用ボルトの取り扱い性や作業効率を低下させることなく、六角形セグメントどうしが高い接合強度で結合した高耐力のシールドトンネル覆工体を容易に構築することができる。
そのため、例えば、大深度地下に構築するシールドトンネルや大口径のシールドトンネルを、厚みが厚い六角形セグメントや高重量の六角形セグメントを用いて構築することも容易となる。
【0039】
また六角形セグメントの軸方向中央線L1の両側それぞれに、複数の斜ボルト挿通孔を、トンネルの周方向に沿う湾曲方向(
図3(a)中の矢印Y1方向)に並べて形成する場合に比べて、両側の斜ボルト挿通孔どうし間に広い領域を確保しやすい。そのため、例えば、
図5(c)に示すように、シールド掘進機を前進させるために個々の六角形セグメントに当接させる複数のシールドジャッキのうちの一部のシールドジャッキ26を当接させたり押し当てたりした状態下に、軸方向中央線L1の両側にそれぞれ複数設けた斜ボルト挿通孔23a,23bに連結用ボルト24を挿通させることも容易となる。
【0040】
本発明のシールドトンネルの覆工体の構築方法の第3工程は、前記一部のシールドジャッキ26を、後続の六角形セグメント12から離した後に行っても良いが、その場合においても、六角形セグメントの厚み方向に複数のボルト挿通孔を並べてあることによって、両側の斜ボルト挿通孔どうし間に対向する部位に広い空間を確保できるため、例えば、その空間を利用して、連結用ボルトを斜ボルト挿通孔に挿入するための適正位置に搬送する作業や、連結用ボルトを斜ボルト挿通孔に挿入する作業、連結用ボルトを工具や自動緊締装置等により軸回りに回転させる作業等の各種作業を効率的に行うことができる。
【0041】
また軸方向中央線L1の両側それぞれに複数の斜ボルト挿通孔23を厚み方向に並べた状態に設けたことによって、坑口側斜め接合面16側に開口する斜ボルト挿通孔23の開口部の位置を、坑口側斜め接合面16の長手方向Eの中央部付近に集中させる設計も容易となる。隣接する六角形セグメント12どうしを、坑口側斜め接合面16と切羽側斜め接合面15とを重ねた連結部の中央部付近を通した複数の連結用ボルト24により緊結することによって、構築されるシールドトンネルの覆工体11におけるハニカム状に組み付けた六角形セグメントどうしの結合状態が力学的に優れたものとなる。これにより、各種作業の作業効率の悪化を抑制しながら、力学的に優れた特性を有する高耐力又は高強度の覆工体11を構築することが容易となる。
【0042】
本実施態様に用いた六角形セグメント12は、
図1及び
図3に示すように、坑口側斜め接合面16に、他の六角形セグメントの切羽側斜め接合面に形成されたガイド凹部及びガイド凸部と係合する位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bが形成されており、複数の斜ボルト挿通孔23a,23bの、坑口側斜め接合面16側の開口の全体が、該坑口側斜め接合面16の長手方向Eにおける、ガイド凸部25aとガイド凹部25bとの間の領域に位置している。斯かる構成は、力学的に優れた特性を有する高耐力又は高強度の覆工体11を得る観点から好ましい。
【0043】
上述した一又は二以上の効果がより確実に奏されるようにする観点から、上述した実施形態の六角形セグメント12のように、軸方向中央線L1の両側にそれぞれ2本のボルト挿通孔を設ける場合、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、内周面22側の斜ボルト挿通孔23aは、切羽側接合面13側の開口の中心点Ca及び坑口側斜め接合面16の開口の中心点Ca’が、いずれもセグメントの厚み方向中央線Z1より内周面22側に位置することが好ましく、外周面20側の斜ボルト挿通孔23bは、切羽側接合面13側の開口の中心点Ca及び坑口側斜め接合面16の開口の中心点Ca’が、いずれもセグメントの厚み方向中央線Z1より外周面20側に位置することが好ましい。
【0044】
本実施形態の六角形セグメント12を用いた覆工体11の構築方法においては、上述した第2工程及び第3工程を、セグメントの搬送装置の保持部に、後続の六角形セグメントを保持した状態で行い、第3工程後に、その六角形セグメントを該保持部から分離することも好ましい。セグメントの搬送装置の保持部としては、公知のエレクター装置が備える各種公知の保持部を用いることができる。厚み方向Aに複数のボルト挿通孔を並べて配置した六角形セグメントを用いることによって、両側の斜ボルト挿通孔どうし間に対向する部位に空間を確保できるため、セグメントの搬送装置の保持部によりセグメントを保持しつつ、第2工程及び第3工程を行うことも可能となる。これにより、より安定した精度の高い六角形セグメントの組み付けが可能となる。
【0045】
また第3工程における、六角形セグメントどうしの緊結を、搬送装置により搬送される自動締結装置により行うことも好ましい。厚み方向Aに複数のボルト挿通孔を並べて配置した六角形セグメントを用いることによって、両側の斜ボルト挿通孔どうし間に対向する部位に空間を確保できるため、その空間又はその空間を含む空間に、搬送装置により搬送される自動締結装置を配置し、その自動締結装置を用いて六角形セグメントどうしの緊結を行うことも容易である。特に、エレクター装置等のトンネル周方向にセグメントを移動させる機構を備えたセグメントの搬送装置におけるセグメントとともに移動する箇所に自動締結装置を設けることが、トンネルの周方向の複数箇所において行う、連結用ボルトを用いた緊結作業を一層効率的に行うことができるので一層好ましい。なお、自動締結装置は、少なくとも、斜ボルト挿通孔に挿入する又は挿入された連結用ボルトをその軸回りに回転させる機能を有するものであり、斜ボルト挿通孔内に連結用ボルトを挿入する機能を有するものでも有しないものであっても良い。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、
図5には、3本のシールドジャッキ26のうちの中央の1本のシールドジャッキ26を六角形セグメント12の切羽側接合面に当接させつつ、その六角形セグメント12のボルト挿
通孔に連結用ボルトを挿入したが、掘進時に個々の六角形セグメント12の切羽側接合面に当接させるシールドジャッキ26は2本又は4本以上であっても良く、第2工程で個々の切羽側接合面に当接させるシールドジャッキ26の本数も1本に代えて2本以上であっても良い。例えば、掘進時に個々の六角形セグメント12の切羽側接合面に当接させるシールドジャッキ26を4~20本(例えば4本)とし、第2工程で当接させるシールドジャッキ26の本数を2~10本(例えば2本)とすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
11 シールドトンネルの覆工体
12 六角形セグメント
13 切羽側接合面
14 坑口側接合面
15 切羽側斜め接合面
16 坑口側斜め接合面
17 V字状周方向接合面
23a,23b,23 斜ボルト挿通孔
24 連結用ボルト
15a,15b 雌ネジ孔
26 シールドジャッキ