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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】端部セグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20231012BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038276
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139178
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】杉村 晋之介
(72)【発明者】
【氏名】川内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大川 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】橋口 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 良二
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-082292(JP,A)
【文献】特開2004-353393(JP,A)
【文献】特開2005-083074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された一対の軸方向接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、一対のV字状周方向接合面とを備えるコンクリート製の六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによって構成されるシールドトンネルのセグメント覆工体において、該セグメント覆工体の端部に等脚台形状に形成される凹部に嵌め込むようにして取り付けられて、該セグメント覆工体の端部接合面を面一に揃えるための端部セグメントであって、
両側の前記V字状周方向接合面の頂部を結んだ分割線によって前記六角形セグメントを2分割した、等脚台形状の平面形状を備えていると共に、該等脚台形状の平面形状における長辺部接合面の両側の端部の鋭角部分には、頂部を挟んだ両側の長辺部接合面及び斜辺部接合面に沿って、V字断面形状を備える合成樹脂製の角部補強材が、内側辺部をトンネル内周面側の縁部分に沿わせて埋め込まれるようにして一体として取り付けられており、
前記等脚台形状の平面形状における長辺部接合面、一対の斜辺部接合面、及び短辺部接合面からなる周辺部の接合端面の全周に亘って、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝が、前記角部補強材の部分も含めて連続して形成されており、
前記等脚台形状の平面形状における長辺部接合面、一対の斜辺部接合面、及び短辺部接合面からなる周辺部の接合端面の外周面側の部分に、該接合端面の全周に亘って連続して、シール材を挟み込んで保持するための外側シール溝が形成されており、前記角部補強材は、該外側シール溝よりもトンネル内周面側に取り付けられている端部セグメント。
【請求項2】
前記周辺部の接合端面における前記セグメント覆工体のトンネル内周面側の縁部分に沿って、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝が、前記角部補強材の部分も含めて全周に亘って連続して形成されている請求項1記載の端部セグメント。
【請求項3】
V字断面形状を備える前記角部補強材の頂部を挟んだ両側の表面に、0.1~0.5mmの深さの応力緩和面領域が形成されている請求項1又は2記載の端部セグメント。
【請求項4】
前記角部補強材は、FRPからなる請求項1~3のいずれか1項記載の端部セグメント。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の端部セグメントに用いる合成樹脂製の角部補強材であって、
等脚台形状の平面形状を備える前記端部セグメントにおける前記長辺部接合面の両側の端部の鋭角部分において、前記長辺部接合面に沿って配置される矩形形状の長辺部接合片と、前記斜辺部接合面に沿って配置される矩形形状の斜辺部接合片とからなるV字断面形状を備えており、
前記長辺部接合片と前記斜辺部接合片に亘って連続して、前記シール溝及びコーキング溝が表面側に形成されている角部補強材。
【請求項6】
V字断面形状を備える前記角部補強材の頂部を挟んだ両側の表面に、0.1~0.5mmの深さで応力緩和面領域が形成されている請求項5記載の角部補強材。
【請求項7】
前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の裏面側に、コンクリートとの付着力を高める凹凸溝が形成されている請求項5又は6記載の角部補強材。
【請求項8】
前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の裏面側に、型枠への固定用の袋ナットが取り付けられており、前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の前記袋ナットの雌ネジ孔と対応する部分には、ボルト挿入孔が形成されている請求項5~7のいずれか1項記載の角部補強材。
【請求項9】
前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片は、10~15mmの厚さを備えている請求項5~8のいずれか1項記載の角部補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部セグメント及び角部補強材に関し、特に、六角形セグメントによるセグメント覆工体の端部に等脚台形状に形成される凹部に、嵌め込むようにして取り付けられる端部セグメント及び該端部セグメントに用いる角部補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部や平野部において各種のトンネルを構築する方法として、シールド掘進機によるシールド工法が広く採用されている。シールド工法は、シールド掘進機の先端の切羽面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方に、トンネルの軸方向及び周方向に連設してセグメントを順次組み付けることによって、トンネルの内周面を覆う覆工体を形成し、組み付けられた覆工体の前端部に、シールドジャッキを押し付けることにより反力を得ながら、発進立坑から到達立坑に向けて、トンネルを地中に構築してゆく工法である。
【0003】
近年、工事の効率化等を図る観点から、トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、一般に用いられる矩形状の平面形状を備えるセグメントに換えて、六角形状の平面形状を備える鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法が採用される場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。六角形セグメントは、平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えている(図1参照)。六角形セグメントは、トンネルの掘進方向後方側に先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側接合面及び切羽側斜め接合面に、トンネルの掘進方向前方側に後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側接合面及び坑口側斜め接合面を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメントにおける、トンネルの掘進方向前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、周方向に間隔をおいて交互に突出させながら、トンネルの軸方向及び周方向にハニカム状に配置されて順次組み付けられてゆくことになる(例えば、特許文献3の図4図6参照)。
【0004】
また、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法では、六角形セグメントの交互に突出する等脚台形状部分の切羽側接合面にシールドジャッキを押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキを押し当てた周方向に隣接する各一対の等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメントを組み付ける作業を行うことができるので(例えば、図7(a)~(c)参照)、矩形状の平面形状のセグメントを用いたシールド工法のように、シールド掘進機を掘進させる工程を一リング毎に中断してセグメントを組み立てる作業を行うことなく、六角形セグメントを組み付けながら、シールド掘進機を連続して掘進させることで、効率良くシールド工事を行うことが可能になる。
【0005】
さらに、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法では、隣接する六角形セグメントの間の連結は、切羽側接合面や、坑口側接合面や、切羽側斜め接合面や、坑口側斜め接合面による周辺部の接合端面の間を貫通して取り付けられる、連結ボルトを用いて行うようになっているので(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、矩形状の平面形状のセグメンによる覆工体の内周面に現れるような、連結ボルトの締結作業を行うためのボルトボックス等による凹凸が、六角形セグメントによる覆工体の内周面には形成されないようにすることが可能になる。これによって、覆工体の内周面を平滑な状態に保持することができるので、好ましくは内側面に防食層を施した六角形セグメントによる覆工体の内側に、さらに二次覆工を施工する必要がなく、六角形セグメントによる覆工体の内周面をそのままトンネルの内周面として用いて、構築したシールドトンネルを、例えば水を流通させる、下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯水池用のトンネルとして、有効に活用することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2596666号公報
【文献】特開平9-273395号公報
【文献】特許第3253870号公報
【文献】特許第3529560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いてシールドトンネルの覆工体を形成する場合、トンネルの曲線部分においては、特に曲率半径が小さくなると、同一形状の六角セグメントをハニカム状に隙間なく組み付けて覆工体を形成することが困難なことから、例えばトンネルの曲線部分では、鋼製の矩形状の平面形状を備えるセグメントを用いて覆工体を形成し、直線部分では、鉄筋コンクリート製の六角セグメントを用いて覆工体を形成することになる。このため、鋼製の矩形状の平面形状を備えるセグメントによる覆工体との接続部となる、六角セグメントによる覆工体の端部の接合面は、面一に揃える必要があることから、覆工体の端部に形成された、トンネルの掘進方向前方側に突出する各一対の等脚台形状部分の間の等脚台形状の凹部には、六角セグメントを2等分割した同様の等脚台形状の平面形状を備える端部セグメントが、各々嵌め込むようにして取り付けられることになる。また、六角セグメントによる覆工体のトンネルの発進側の端部や、トンネルの到達側の端部においても、これらの端部の接合端面を面一に揃える必要があることから、六角セグメントを2等分割した、等脚台形状の平面形状を備える端部セグメントが取り付けられることになる。
【0008】
このような端部セグメントは、上述のように、六角形セグメントを、両側のV字状周方向接合面の頂部を結んだ分割線によって2分割した等脚台形状の平面形状を備えており、当該等脚台形状の平面形状における長辺部接合面の両側の端部の角部分は、鋭角部分となっていることから、搬送時や組立時に、これらの両側の鋭角部分に割れや欠け等の破損が生じ易い。このため、このような長辺部接合面の両側の端部の鋭角部分に、V字断面形状を有する補強用の鋼板を、鋭角に沿って貼設することにより当該鋭角部分を補強した端部セグメントも開発されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、等脚台形状の平面形状における鋭角部分を鋼板によって補強した特許文献4の端部セグメントでは、補強用の鋼板は、地下水や酸性土壌等の影響を受けることで腐食し易く、特にセグメントによる覆工体が、二次覆工を不要として内周面をそのままトンネルの内周面として用いることによって、例えば水を流通させる下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯水池用のトンネルを構成するものである場合には、内部に流通する水や貯留される水の影響によってさらに腐食し易くなる。また端部セグメントの周辺部の接合端面に、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝や、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝を連続して設ける場合、補強用の鋼板にもこれらのシール溝やコーキング溝を設ける必要があることから、補強用の鋼板にこれらの溝部分を加工するのに多くの手間がかかることになる。
【0010】
本発明は、地下水や酸性土壌等による影響や、内部に流通する水や貯留される水による影響によって補強部分が腐食するのを回避して、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面の両側の鋭角部分を安定した状態で効果的に補強できると共に、周辺部の接合端面に、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝や、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝を、連続させて容易に設けることのできる端部セグメント及び角部補強材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平行に配置された一対の軸方向接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、一対のV字状周方向接合面とを備えるコンクリート製の六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによって構成されるシールドトンネルのセグメント覆工体において、該セグメント覆工体の端部に等脚台形状に形成される凹部に嵌め込むようにして取り付けられて、該セグメント覆工体の端部接合面を面一に揃えるための端部セグメントであって、両側の前記V字状周方向接合面の頂部を結んだ分割線によって前記六角形セグメントを2分割した、等脚台形状の平面形状を備えていると共に、該等脚台形状の平面形状における長辺部接合面の両側の端部の鋭角部分には、頂部を挟んだ両側の長辺部接合面及び斜辺部接合面に沿って、V字断面形状を備える合成樹脂製の角部補強材が、内側辺部をトンネル内周面側の縁部分に沿わせて埋め込まれるようにして一体として取り付けられており、前記等脚台形状の平面形状における長辺部接合面、一対の斜辺部接合面、及び短辺部接合面からなる周辺部の接合端面の全周に亘って、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝が、前記角部補強材の部分も含めて連続して形成されており、前記等脚台形状の平面形状における長辺部接合面、一対の斜辺部接合面、及び短辺部接合面からなる周辺部の接合端面の外周面側の部分に、該接合端面の全周に亘って連続して、シール材を挟み込んで保持するための外側シール溝が形成されており、前記角部補強材は、該外側シール溝よりもトンネル内周面側に取り付けられている端部セグメントを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
そして、本発明の端部セグメントは、前記周辺部の接合端面における前記セグメント覆工体のトンネル内周面側の縁部分に沿って、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝が、前記角部補強材の部分も含めて全周に亘って連続して形成されていることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の端部セグメントは、V字断面形状を備える前記角部補強材の頂部を挟んだ両側の表面に、0.1~0.5mmの深さの応力緩和面領域が形成されていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の端部セグメントは、前記角部補強材が、FRP(繊維強化プラスチック)からなっていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記の端部セグメントに用いる合成樹脂製の角部補強材であって、等脚台形状の平面形状を備える前記端部セグメントにおける前記長辺部接合面の両側の端部の鋭角部分において、前記長辺部接合面に沿って配置される矩形形状の長辺部接合片と、前記斜辺部接合面に沿って配置される矩形形状の斜辺部接合片とからなるV字断面形状を備えており、前記長辺部接合片と前記斜辺部接合片に亘って連続して、前記シール溝及び前記コーキング溝が表面側に形成されている角部補強材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0017】
そして、本発明の角部補強材は、V字断面形状を備える前記角部補強材の頂部を挟んだ両側の表面に、0.1~0.5mmの深さで前記応力緩和面領域が形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の角部補強材は、前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の裏面側に、コンクリートとの付着力を高める凹凸溝が形成されていることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の角部補強材は、前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の裏面側に、型枠への固定用の袋ナットが取り付けられており、前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片の前記袋ナットの雌ネジ孔と対応する部分には、ボルト挿入孔が形成されていることが好ましい。
【0020】
さらにまた、本発明の角部補強材は、前記長辺部接合片及び前記斜辺部接合片が、10~15mmの厚さを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の端部セグメント又は角部補強材によれば、地下水や酸性土壌等による影響や、内部に流通する水や貯留される水による影響によって補強部分が腐食するのを回避して、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面の両側の鋭角部分を安定した状態で効果的に補強できると共に、周辺部の接合端面に、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝や、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝を、連続させて容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る端部セグメントを用いて端部接合面が面一に揃えられる前の状態の、六角形セグメントによるセグメント覆工体を説明する部分破断側面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る端部セグメントを用いて端部接合面が面一に揃えられた、鋼製のセグメントによる覆工体と接続される六角形セグメントによるセグメント覆工体の端部の部分断面図である。
図3】六角形セグメントの構成を説明する、図3(a)は正面図、図3(b)は(a)をA-A方向から見た側面図、図3(c)は(a)をB-B方向から見た側面図、図3(d)は(a)をC-C方向から見た周方向端面図である。
図4】端部セグメントの構成を説明する、図4(a)は正面図、図4(b)は(a)をD-D方向から見た側面図、図4(c)は(a)をE-E方向から見た側面図、図4(d)は(a)をF-F方向から見た周方向端面図である。
図5図5(a)は、端部セグメントの等脚台形状の平面形状の鋭角部分に角部補強材を取り付けた状態を説明する略示断面図、図5(b)は(a)をG-G方向から見た側面図、図5(c)は(a)をH-H方向から見た側面図である。
図6図6(a)は、角部補強材の斜辺部接合片の正面図及び上面図、図6(b)は、長辺部接合片の正面図及び上面図である。
図7】(a)~(c)は、複数の六角形セグメントを組み付けてセグメント覆工体を形成する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい一実施形態に係る端部セグメント30(図4(a)~(d)参照)は、例えば図1及び図2に示すように、六角形状の平面形状を備える鉄筋コンクリート製の複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることにより形成された覆工体である、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆うセグメント覆工体11を、例えば矩形状の平面形状を備える鋼製セグメント50を用いて形成された鋼製覆工体11’の端部の接合端面11a’(図2参照)に接合する際に、当該六角形セグメント12によるハニカム状に組み付けられたセグメント覆工体11の端部接合面11aを、面一に揃えるためのセグメントとして用いられる。
【0024】
すなわち、六角形セグメント12は、トンネルの掘進方向Xの後方側に先行して組み付けられた当該六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、トンネルの掘進方向Xの前方側に後続して組み付けられる六角形セグメント12の坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を重ね合わせつつ、各々の六角形セグメント12における、トンネルの掘進方向Xの前方側の半分の部分である等脚台形状部分12aを、周方向Yに間隔をおいて前方側に交互に突出させながら(図1参照)、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置されて順次組み付けられるようになっている。このため、六角形セグメント12を組み付けることよって形成される覆工体11の端部を、例えば矩形状の平面形状を備える鋼製セグメント50を用いて形成された鋼製覆工体11’の端部の接合端面11a’(図2参照)に接合するには、トンネルの掘進方向Xの前方側に突出する等脚台形状部分12a(図1参照)による凹凸を解消して、面一に揃った端面接合面11a(図2参照)を端部に形成する必要がある。本実施形態では、端部セグメント30を、セグメント覆工体11の端部における、トンネルの掘進方向Xの前方側に突出する各一対の等脚台形状部分12aの間の等脚台形状の凹部12b(図1参照)に、嵌め込むようにして取り付けることによって(図2参照)、六角形セグメント12を組み付けてなるセグメント覆工体11の端部に、面一に揃った端部接合面11aを形成できるようになっている。
【0025】
また。本実施形態の端部セグメント30は、地下水や酸性土壌等の影響や、内部に流通する水や貯留される水の影響によって、角部補強材40(図4図6参照)による補強部分が腐食するのを回避して、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の鋭角部分31aを安定した状態で効果的に補強できるようになっていると共に、周辺部の接合端面34に、シール材18を挟み込んで保持するためのシール溝21bや、コーキング材19を挟み込んで保持するためのコーキング溝22を、連続させて容易に設けることができるようになっている。
【0026】
そして、本実施形態の端部セグメント30は、図1及び図2に示すように、平行に配置された一対の軸方向接合面13,14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、一対のV字状周方向接合面17,17とを備えるコンクリート製の六角形セグメント12(図3(a)~(D)参照)を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに連設して組み付けることによって構成されるシールドトンネルのセグメント覆工体11において、該セグメント覆工体11の端部に等脚台形状に形成される凹部12b(図1参照)に嵌め込むようにして取り付けられて、セグメント覆工体11の端部接合面11a(図2参照)を面一に揃えるためのセグメントであって、図3(a)~(d)及び図4(a)~(d)に示すように、両側のV字状周方向接合面17の頂部17a(図3(a)参照)を結んだ分割線によって六角形セグメント12を2分割した、等脚台形状の平面形状を備えている(図4(a)参照)。この等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の端部の鋭角部分31aには、当該鋭角部分31aの頂部を挟んだ両側の長辺部接合面31及び斜辺部接合面32に沿って、V字断面形状を備える合成樹脂製の角部補強材40(図5(a)~(c)参照)が、内側辺部40aをトンネル内周面側の縁部分に沿わせて埋め込まれるようにして一体として取り付けられており(図4(a)~(d)参照)、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31、一対の斜辺部接合面32、及び短辺部接合面33からなる周辺部の接合端面34の全周に亘って、シール材を挟み込んで保持するためのシール溝35bが、内側シール溝として角部補強材40の部分35b’も含めて連続して形成されている。
【0027】
また、本実施形態の端部セグメント30には、周辺部の接合端面34におけるセグメント覆工体11のトンネル内周面側の縁部分に沿って、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝36が、角部補強材40の部分36’も含めて全周に亘って連続して形成されている(図4(a)~(d)参照)。
【0028】
さらに、本実施形態の端部セグメント30には、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31、一対の斜辺部接合面32、及び短辺部接合面33からなる周辺部の接合端面34の外周面側の部分に、この接合端面34の全周に亘って連続して、シール材を挟み込んで保持するための外側シール溝35aが形成されており、角部補強材40は、この外側シール溝35aよりもトンネル内周面側に取り付けられている(図4(a)~(d)参照)。
【0029】
本実施形態では、図1に示す六角形セグメント12によるセグメント覆工体11は、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルとして、例えば内径が4900mm程度の大きさのトンネルを形成するものとなっている。またセグメント覆工体11は、後述する六角形セグメント12が、好ましくは内側面に防食層を施した、二次覆工一体型のコンクリート製のセグメントとなっていることで、内周面を平滑な状態に保持して、内周面をそのまま、雨水を流通させるトンネルの内周面として用いることができるようになっている。
【0030】
セグメント覆工体11を形成する各々の六角形セグメント12は、図3(a)~(d)に示すように、平行に配置された一対の軸方向接合面である切羽側接合面13及び坑口側接合面14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える、六角形の平面形状を有する鉄筋コンクリート製のセグメントとなっている(図3(a)参照)。六角形セグメント12は、例えば300mm程度の厚さを有すると共に、切羽側接合面13及び坑口側接合面14に沿った方向の断面が、覆工体11の例えば4900mmの内径に対応する曲率半径で、円弧状に湾曲する形状を備えている(図3(b)、(c)参照)。六角形セグメント12は、切羽側接合面13及び坑口側接合面14の間の幅が1500mm程度、一対のV字状周方向接合面17の先端部の間の長さが3116mm程度の大さとなるように形成されている。各々のV字状周方向接合面17における、切羽側斜め接合面15と坑口側斜め接合面16との間の角度θ2は、120°となっている(図3(a)参照)。これによって、複数の六角形セグメント12を、先行する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び切羽側接合面13に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16及び坑口側接合面14を順次ビッタリと重ね合わせた状態で、軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置できるようになっている(図1参照)。
【0031】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、図3(a)~(d)に示すように、外周面から50mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の外側シール溝21aが、全周に亘って連続して形成されており、内周面から70mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の内側シール溝21bが、全周に亘って連続して形成されている。外側シール溝21aには、好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。内側シール溝21bには、同様に好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。本実施形態では、外側シール溝21a及び内側シール溝21bが、各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続して2段に設けられている。
【0032】
さらに、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、トンネル内周面側の縁部分に沿って、40mm程度の幅のコーキング溝22が、全周に亘って連続して形成されている。これらのコーキング溝22には、公知の帯状コーキング材が、例えば接着剤を介して連続して取り付けられる。帯状コーキング材としては、例えば特許第4646501号公報に記載のシールドセグメント用コーキング材と、同様の構成を備えるものを使用することができる。より具体的には、好ましくは商品名「シーコーク」(積水化学工業株式会社製)を用いることができる。
【0033】
このような帯状コーキング材は、複数の六角形セグメント12が組み付けられてセグメント覆工体11が形成された際に、隣接する六角形セグメント12の接合部において対向する一対のコーキング溝22による目地部に、圧縮された状態で挟み込まれたり、水分を吸収して膨潤可能な状態で挟み込まれたりすることで、当該目地部に隙間なく充填されて、トンネルの内部の水が、接合部からトンネルの外部に漏出するのを、強固に防止することが可能になる。
【0034】
本実施形態では、各々の六角形セグメント12には、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側接合面13の両側の側部領域から両側の各坑口側斜め接合面16の中央部に向けて、切羽側斜め接合面15と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔23が設けられている。各々の斜めボルト挿通孔23の切羽側接合面13側の端部には、連結ボルト部材24(図7(c)参照)の頭部を締着させる締着凹部23aが、開口面を切羽側接合面13に開口させて形成されている。切羽側接合面13における各々の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部13aが設けられている。これらの位置決め用の凹部13aには、トンネルの掘進方向Xに後続して設置される六角形セグメント12の坑口側接合面14に設けられた一対の位置決め用の凸部14aが、嵌め込まれるようにして装着される。これによって、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側接合面14の全体が、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側接合面13の全体に、精度良く重ね合わされるように、トンネルの掘進方向Xに隣接する六角形セグメント12を、位置決めできるようになっている。各々の六角形セグメント12の坑口側接合面14には、これの両側の側部領域に、上述の位置決め用の凸部14aが、各々設けられている。
【0035】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の一対の切羽側斜め接合面15には、これらの中央部に、雌ネジ孔15aが、例えば雌ネジアンカーを埋込むことによって設けられている。雌ネジ孔15aは、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16が重ね合わされた際に、後続する六角形セグメント12に設けられたボルト挿通孔23の、締着凹部23aとは反対側の端部と直線状に連通するようになっている。これによって、連通したボルト挿通孔23及び雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、ハニカム状に配置された各々の隣接する六角形セグメント12を、強固に一体として連結することが可能になる(図7(c)参照)。
【0036】
さらに、本実施形態では、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、各々の六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bが各々設けられている。これらの位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bは、先行して設置された六角形セグメント12に後続して、次の六角形セグメント12を設置する際に、先行して設置された六角形セグメント12による、周方向Yに間隔をおいて掘進方向X前方側に突出する各一対の等脚台形状部分12aの間の、各々の等脚台形状の凹部12b(図7(a)参照)に、後続する六角形セグメント12が配置されるように案内して、精度良く位置決めできるようにすると共に、組み付けられた六角形セグメント12に位置ずれが生じるのを、防止できるようにする機能を備えている。
【0037】
さらにまた、本実施形態では、各々の六角形セグメント12には、これらの六角形セグメント12を、組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔26(図3(a)参照)が、例えば内側面の中央部分に設けられていると共に、六角形セグメント12を吊り上げ可能とする吊上げ用インサート金具27が、例えば坑口側接合面14の両側の側部領域に配置されて、一対設けられている。
【0038】
上述の構成を備える複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設して、ハニカム状に組み付けることによって、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆うセグメント覆工体11を形成するには、例えば図7(a)~(c)に示すように、トンネルの掘進方向Xの後方側に先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、トンネルの掘進方向Xの前方側に後続して組み付けられる六角形セグメント12の坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメント12における、トンネルの掘進方向Xの前方側の半分の部分である等脚台形状部分12aを、交互に突出させながら、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置して順次組み付けてゆく。
【0039】
また、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに順次組み付けてゆく際に、先行して組み付けられた六角形セグメント12による、交互に突出する、当該六角形セグメント12を掘進方向Xに二等分割した形状の等脚台形状部分12aにおける先端の切羽側接合面13に、シールドジャッキ60を押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ60を押し当てた隣接する等脚台形状部分12aの間の領域である等脚台形状の凹部12bにおいて(図7(a)参照)、後続する六角形セグメント12を組み付ける作業を行うようになっている。
【0040】
すなわち、切羽側接合面13にシールドジャッキ60を押し当てた隣設する等脚台形状部分12aの間の等脚台形状の凹部12bにおいて、図7(a)に示すように、当該等脚台形状の凹部12bの領域のシールドジャッキ60を収縮した状態として、当該等脚台形状の凹部12bに、後続して組み付けられる六角形セグメント12の後側半分の等脚台形状部分を差し込むようにして、これの坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、各々密着させる(図7(b)参照)。しかる後に、後続して組み付けられる六角形セグメント12の領域に配置された、例えば3本のシールドジャッキ60のうち、中央の1本のシールドジャッキ60を伸長させて、後続する六角形セグメント12を先行して組み付けられた六角形セグメント12に押し付けた状態で、図7(c)に示すように、連通した後続する六角形セグメント12のボルト挿通孔23及び先行して設置された六角形セグメント12の雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、これらの六角形セグメント12を一体として連結する。
【0041】
これらの作業を、周方向に複数形成された、隣設する突出した等脚台形状部分12aの間の各々の等脚台形状の凹部12bにおいて行うと共に、このようにして新たに設置された六角形セグメント12を、先行して組み付けられた既存の六角形セグメント12として、これらの切羽側接合面13にシールドジャッキ60を押し当てて反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ60を押し当てたこれらの六角形セグメント12の間の等脚台形状の凹部12bにおいて、さらに後続する六角形セグメントを組み付ける作業を繰り返して行ってゆくことができる。これによって、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置された複数の六角形セグメント12による、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆うセグメント覆工体11を、容易に形成することが可能になる。
【0042】
そして、本実施形態では、矩形状の平面形状を備える鋼製セグメント50による鋼製覆工体11’と接続される部分である、六角形セグメント12によるセグメント覆工体11の端部において、等脚台形状の凹部12bに嵌め込むようにして、本実施形態の端部セグメント30が取り付けられることによって、図2に示すように、面一に揃った端部接合面11aが形成されるようになっている。
【0043】
本実施形態では、端部セグメント30は、上述のように、六角形セグメント12を、両側のV字状周方向接合面17の頂部17aを結んだ分割線によって2分割した、等脚台形状の平面形状を備えている。すなわち、端部セグメント30は、図4(a)~(d)に示すように、平行に配置された長辺部接合面31及び短辺部接合面33と、これらの接合面31,33の両側の端部を各々連結するようにして斜めに配置された、一対の斜辺部接合面32とを備える、等脚台形状の正面形状を有する鉄筋コンクリート製のセグメントとなっている(図4(a)参照)。端部セグメント30は、六角形セグメント12と同様に、例えば300mm程度の厚さを有すると共に、長辺部接合面31及び短辺部接合面33に沿った方向の断面が、覆工体11の例えば4900mmの内径に対応する曲率半径で、円弧状に湾曲する形状を備えている(図4(b)、(c)参照)。端部セグメント30は、長辺部接合面31及び短辺部接合面33の間の幅が750mm程度、長辺部接合面31の長さが3116mm程度の大さとなるように形成されている。
【0044】
また、本実施形態では、端部セグメント30の等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の端部は、当該長辺部接合面31と斜辺部接合面32との間の角度θ1が60°となっていて、鋭角部分31aを形成している(図4(a)参照)。この鋭角部分31aには、当該鋭角部分31a頂部を挟んだ両側の長辺部接合面31及び斜辺部接合面32に沿って、後述するV字断面形状を備える合成樹脂製の角部補強材40が、内側辺部40aをトンネル内周面側の縁部分に沿わせて、埋め込まれるようにして一体として取り付けられている(図5(a)参照)。
【0045】
さらに、本実施形態では、各々の端部セグメント30の、長辺部接合面31、一対の斜辺部接合面32、及び短辺部接合面33からなる周辺部の接合端面34には、外周面から50mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の外側シール溝35aが、全周に亘って連続して形成されている。角部補強材40は、外側シール溝21aよりもトンネル内周面側に取り付けられている。また周辺部の接合端面34には、内周面から70mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の内側シール溝(シール溝)35bが、角部補強材40の部分35b’も含めて連続して形成されている。外側シール溝35aには、好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。内側シール溝35bにもまた、同様に好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。
【0046】
さらにまた、本実施形態では、各々の端部セグメント30の、長辺部接合面31、一対の斜辺部接合面32、及び短辺部接合面33からなる周辺部の接合端面34には、トンネル内周面側の縁部分に沿って、40mm程度の幅のコーキング溝36が、角部補強材40の部分36’も含めて全周に亘って連続して形成されている。これらのコーキング溝36には、公知の帯状コーキング材が、例えば接着剤を介して連続して取り付けられる。帯状コーキング材としては、例えば特許第4646501号公報に記載のシールドセグメント用コーキング材と、同様の構成を備えるものを使用することができる。より具体的には、好ましくは商品名「シーコーク」(積水化学工業株式会社製)を用いることができる。
【0047】
このような帯状コーキング材は、端部セグメント30がセグメント覆工体11の端部に取り付けられて面一な端部接合面11aが形成された際や、端部接合面11aが鋼製セグメント50による鋼製覆工体11’の接合端面11a’に接合された際に、コーキング溝36の部分で隣接する六角形セグメント12や鋼製セグメント50との間の目地部に、圧縮された状態で挟み込まれたり、水分を吸収して膨潤可能な状態で挟み込まれたりすることで、当該目地部に隙間なく充填されて、トンネルの内部の水が、目地部からトンネルの外部に漏出するのを、強固に防止することが可能になる。
【0048】
本実施形態では、端部セグメント30には、長辺部接合面31の両側の側端部領域から、両側の斜辺部接合面32の中央部に向けて各々貫通する、斜めボルト挿通孔37が設けられている。これらの斜めボルト挿通孔37の長辺部接合面31側の端部には、連結ボルト部材(図示せず)の頭部を締着させる締着凹部37aが、開口面を長辺部接合面31に開口させた状態で形成されている。斜めボルト挿通孔37の締着凹部37aとは反対側の端部は、隣接する六角形セグメント12の、切羽側斜め接合面15に設けられた雌ネジ孔15a(図3(a)参照)と連通するようになっている。長辺部接合面31には、さらに、当該長辺部接合面31を鋼製セグメント50による鋼製覆工体11’の接合端面11a’に接合する際に用いる、接合用インサート38aが、周方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0049】
また、端部セグメント30の一対の斜辺部接合面32には、各々、これの中央部に、斜めボルト挿通孔37の締着凹部37aとは反対側の端部が開口していると共に、斜めボルト挿通孔37の端部を挟んだ長辺部接合面31側の部分に、隣接する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に設けられたガイド凹部25b(図3(a)参照)に係止される、ガイド凸部38bが形成されていると共に、短辺部接合面33側の部分に、隣接する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に設けられたガイド凸部25a(図3(a)参照)に係止される、ガイド凹部38cが形成されている。斜辺部接合面32の長辺部接合面31側の端部の、鋭角部分31aとなっている角部には、後述するV字断面形状を備える合成樹脂製の角部補強材40が、一体として取り付けられている。
【0050】
端部セグメント30の短辺部接合面33には、これの両側の側部領域における、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側接合面13に設けられた位置決め用の凹部13a(図3(a)参照)と対応する位置に、位置決め用の凸部33aが一対形成されている。これらの位置決め用の凸部33aが、先行して設置された六角形セグメント12の位置決め用の凹部13aに嵌め込まれるようにして装着されることで、端部セグメント30の短辺部接合面33の全体が、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側接合面13の全体に精度良く重ね合わされるように、端部セグメント30を、等脚台形状の凹部12bに位置決めできるようになっている。
【0051】
さらに、本実施形態では、各々の端部セグメント30には、これらの端部セグメント30を、組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔39aが、例えば内側面の中央部分に設けられていると共に、端部セグメント30を吊り上げ可能とする吊上げ用インサート金具39bが、例えば短辺部接合面33の両側の側部領域に配置されて、一対設けられている。
【0052】
本実施形態では、長辺部接合面31と斜辺部接合面32との間の両側の鋭角部分31aに取り付けられて、端部セグメント30の補強用の部材として用いられる角部補強材40は、好ましくはFRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂による射出成型品となっている。角部補強材40は、等脚台形状の平面形状を備える端部セグメント30における長辺部接合面31の両側の端部の鋭角部分31a(図4(a)参照)において、図5(a)~(c)及び図6(a)、(b)に示すように、長辺部接合面31に沿って配置される矩形形状の長辺部接合片41と、斜辺部接合面32に沿って配置される矩形形状の斜辺部接合片42とからなるV字断面形状を備えており(図5(a)参照)、長辺部接合片41と斜辺部接合片42に亘って連続して、シール溝(内側シール溝)35b’及びコーキング溝36’が表面側に形成されている。
【0053】
長辺部接合片41は、図5(c)及び図6(b)に示すように、横幅が150mm程度、縦幅が200mm程度の大きさの矩形状の平面形状を有する、好ましくは10~15mm程度(本実施形態では、12mm程度)の厚さのプレート状の成形品であって、横幅方向の一方の端部に、斜めに切り欠かれた斜め接合面41aを備えている。この斜め接合面41aを、斜辺部接合片42に形成された斜め接合面42aと接合させた状態で、長辺部接合片41が、斜辺部接合片42と共に端部セグメント30の鋭角部分31aに、V字断面形状を有する角部補強材40として取り付けられることになる。
【0054】
また、長辺部接合片41には、トンネル内周面側の縁部分に沿って配置される角部補強材40の内側辺部40aとなる下辺部から、70mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅のシール溝35b’が、好ましくは3mm程度の深さで、端部セグメント30の接合端面34の全周に亘って連続する内側シール溝35bの一部を形成できるように設けられており、角部補強材40のトンネル内周面側の縁部分となる下辺部に沿って、40mm程度の幅のコーキング溝36’が、好ましくは3mm程度の深さで、端部セグメント30の接合端面34の全周に亘って連続するコーキング溝36の一部を形成できるように設けられている。
【0055】
さらに、長辺部接合片41の表面には、シール溝35b’とコーキング溝36’との間に配設されて、斜め接合面41a側の端部から横幅方向100mm程度の部分に、好ましくは0.1~0.5mm、より好ましくは0.2~0.3mmの深さで応力緩和面領域43が形成されており、シール溝35b’よりもトンネル内周面側とは反対側に配設されて、斜め接合面42a側の端部から横幅方向50mm程度の部分に、同様に好ましくは0.1~0.5mm、より好ましくは0.2~0.3mmの深さで応力緩和面領域43が形成されている。これらの応力緩和面領域43は、斜辺部接合片42に形成された応力緩和面領域43と共に、トンネルの掘進が進んでセグメント覆工体11や鋼製覆工体11’が安定するまでの間、端部セグメント30の鋭角部分31aに生じる偏荷重を、効果的に緩和できるようにする機能を備えている。
【0056】
さらにまた、長辺部接合片41の裏面側には、例えば深さが5mm程度の縦長矩形形状の凹溝を縦横に並べて形成したことによる、凹凸溝41b(図5(c)の点線部参照)が形成されている。これらの凹凸溝41bは、斜辺部接合片42の裏面側に形成された凹凸溝42bと共に、角部補強材40が埋め込まれるようにして一体として取り付けられる端部セグメント30を形成する、コンクリートとの付着力を高めることが可能になる。
【0057】
また、長辺部接合片41の裏面側には、型枠への固定用の袋ナット44が取り付けられており、長辺部接合片41の袋ナット44の雌ネジ孔と対応する部分には、ボルト挿入孔41cが形成されている。
【0058】
斜辺部接合片42は、図5(b)及び図6(a)に示すように、横幅が150mm程度、縦幅が200mm程度の大きさの矩形状の平面形状を有する、好ましくは10~15mm程度(本実施形態では、12mm程度)の厚さの、長辺部接合片41と略同様のプレート状の成形品であって、横幅方向の一方の端部に、斜めに切り欠かれた斜め接合面42aを備えている。
【0059】
また、斜辺部接合片42には、長辺部接合片41と略同様に、トンネル内周面側の縁部分に沿って配置される角部補強材40の内側辺部40aとなる下辺部から、70mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅のシール溝35b’が、好ましくは3mm程度の深さで、端部セグメント30の接合端面34の全周に亘って連続する内側シール溝35bの一部を形成できるように設けられており、角部補強材40のトンネル内周面側の縁部分となる下辺部に沿って、40mm程度の幅のコーキング溝36’が、好ましくは3mm程度の深さで、端部セグメント30の接合端面34の全周に亘って連続するコーキング溝36の一部を形成できるように設けられている。
【0060】
さらに、斜辺部接合片42の表面には、長辺部接合片41と略同様に、シール溝35b’とコーキング溝36’との間に配設されて、斜め接合面42a側の端部から横幅方向100mm程度の部分に、好ましくは0.5mm程度の深さで応力緩和面領域43が形成されており、シール溝35b’よりもトンネル内周面側とは反対側に配置されて、斜め接合面42a側の端部から横幅方向50mm程度の部分に、同様に好ましくは0.5mm程度の深さで応力緩和面領域43が形成されている。
【0061】
さらにまた、斜辺部接合片42の裏面側には、長辺部接合片41と略同様に、例えば深さが5mm程度の縦長矩形形状の凹溝を縦横に並べて形成したことによる、コンクリートとの付着力を高める凹凸溝42b(図5(b)の点線部参照)が形成されている。
【0062】
また、斜辺部接合片42の裏面側には、長辺部接合片41と略同様に、型枠への固定用の袋ナット44が取り付けられており、長辺部接合片41の袋ナット44の雌ネジ孔と対応する部分には、ボルト挿入孔42cが形成されている。
【0063】
これらの長辺部接合片41及び斜辺部接合片42からなる角部補強材40は、型枠(図示せず)を用いて鉄筋コンクリート製の端部セグメント30を製造する際に、ボルト挿入孔41c,42c及び袋ナット44を介して、長辺部接合片41及び斜辺部接合片42を、固定ボルトを用いて固定することにより、内側辺部40aをトンネル内周面側の縁部分に沿わせた状態で、型枠の鋭角部分31aに相当する部分の内側面に取り付けられる。しかる後に、型枠内に所定の鉄筋を配筋してコンクリートを打設し、硬化させることにより、図4(a)~(d)に示すような、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の端部の鋭角部分31aに、合成樹脂製の角部補強材40が、内側辺部40aをトンネル内周面側の縁部分に沿わせて埋め込まれるようにして一体として取り付けられた、本実施形態の端部セグメント30を容易に形成することができる。
【0064】
そして、上述の構成を備える本実施形態の端部セグメント30によれば、地下水や酸性土壌等による影響や、内部に流通する水や貯留される水による影響によって補強部分が腐食するのを回避して、等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の鋭角部分31aを、安定した状態で効果的に補強することが可能になると共に、周辺部の接合端面34に、シール材を挟み込んで保持するための内側シール溝35bや、コーキング材を挟み込んで保持するためのコーキング溝36を、連続させて容易に設けることが可能になる。
【0065】
すなわち、本実施形態によれば、端部セグメント30の等脚台形状の平面形状における長辺部接合面31の両側の端部の鋭角部分31aには、当該鋭角部分31aの頂部を挟んだ両側の長辺部接合面31及び斜辺部接合面32に沿って、V字断面形状を備える好ましくはFRPからなる合成樹脂製の角部補強材40が、内側辺部40aをトンネル内周面側の縁部分に沿わせて一体として取り付けられており、このようなFRP等の合成樹脂製の角部補強材40は、地下水や酸性土壌等による影響や、内部に流通する水や貯留される水による影響によってほとんど腐食することがないので、このような角部補強材40による補強部分である鋭角部分31aを、長期に亘って安定した状態で補強することが可能になる。
【0066】
また、FRP等の合成樹脂製の角部補強材40は、例えば金型を用いた射出成形によって、シール溝35b’やコーキング溝36’を備える所望の形状となるように容易に加工できるので、角部補強材40を用いて補強する場合でも、端部セグメント30の周辺部の接合端面34に、内側シール溝35bやコーキング溝36を、全周に亘って連続させて容易に設けることが可能になる。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、角部補強材は、FRPからなるものである必要は必ずしもなく、地下水や酸性土壌等による影響を受けることのない物性を備える、その他の種々の合成樹脂製の角部補強材を用いることもできる。またV字断面形状を備える角部補強材の頂部を挟んだ両側の表面に、応力緩和面領域が形成されている必要は必ずしも無い。
【符号の説明】
【0068】
11 セグメント覆工体
11a 端部接合面
11’ 鋼製覆工体
11a’ 接合端面
12 六角形セグメント
13 切羽側接合面
14 坑口側接合面
15 切羽側斜め接合面
16 坑口側斜め接合面
17 V字状周方向接合面
17a 頂部
21a 外側シール溝
21b 内側シール溝(シール溝)
22 コーキング溝
23 斜めボルト挿通孔
23a 締着凹部
24 連結ボルト部材
26 把持孔
30 端部セグメント
31 長辺部接合面
31a 鋭角部分
32 斜辺部接合面
33 短辺部接合面
34 周辺部の接合端面
35a 外側シール溝
35b 内側シール溝(シール溝)
35b’ 角部補強材の部分のシール溝
36 コーキング溝
36’ 角部補強材の部分のコーキング溝
37 斜めボルト挿通孔
37a 締着凹部
40 角部補強材
40a 内側辺部
41 長辺部接合片
41a 斜め接合面
41b 凹凸溝
41c ボルト挿入孔
42 斜辺部接合片
42a 斜め接合面
42b 凹凸溝
42c ボルト挿入孔
43 応力緩和面領域
44 袋ナット
50 鋼製セグメント
60 シールドジャッキ
X トンネルの掘進方向(軸方向)
Y トンネルの周方向
θ1 長辺部接合面と斜辺部接合面との間の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7