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特許7365276路面電車に対する自動車の追従走行システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】路面電車に対する自動車の追従走行システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/165 20200101AFI20231012BHJP
   B60W 30/17 20200101ALI20231012BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20231012BHJP
   B61D 13/00 20060101ALI20231012BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60W30/165
B60W30/17
B60W40/04
B61D13/00
G08G1/09 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020049540
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021146922
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】濱口 裕
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-016911(JP,A)
【文献】特開2001-266286(JP,A)
【文献】特表2008-502538(JP,A)
【文献】特開2000-285373(JP,A)
【文献】特開2014-120133(JP,A)
【文献】特開2007-137116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 40/13
B61D 13/00
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面電車の加減速情報を含む走行情報を無線通信を介して送信する路面電車通信部と、
前記路面電車通信部から無線通信を介して送信された前記走行情報を受信する自動車通信部と、
前記路面電車と前記自動車との距離を検出する距離検出部と、
前記路面電車が走行する線路を認識する線路認識部と、
前記自動車通信部により受信された前記走行情報と、前記距離検出部により検出された前記距離と、前記線路認識部により認識された前記線路とに基づいて、前記線路に沿って前記路面電車に対して前記自動車を追従走行させる追従走行制御部と、
を備えた路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【請求項2】
前記路面電車の運行スケジュールが記録された記録部と、
前記自動車の位置を検出する位置検出部と、
前記記録部に記録された前記路面電車の前記運行スケジュールと、前記位置検出部により検出された前記自動車の位置とに基づいて、路面電車停留所に停車する前記路面電車に対する前記自動車の追従走行の可否を判断する追従走行可否判断部と、
をさらに備えた、請求項1に記載の路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【請求項3】
前記自動車は、前記路面電車の路面電車停留所と共通のバス停留所に停車する路線バスである、請求項1に記載の路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【請求項4】
前記自動車通信部は、前記路面電車に対する前記自動車の追従走行を要求する追従走行要求を前記路面電車通信部に送信し、
前記路面電車通信部は、前記自動車通信部から送信された前記追従走行要求を受信し、前記追従走行要求に対して、前記路面電車に対する前記自動車の追従走行を許可する追従走行許可及び前記路面電車に対する前記自動車の追従走行を許可しない追従走行不許可のいずれかを前記自動車通信部に送信する、請求項1~3のいずれか1項に記載の路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【請求項5】
前記自動車の速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記追従走行制御部は、前記速度検出部により検出された前記自動車の速度が速いほど、前記距離検出部により検出される前記距離が長くなるように、前記線路に沿って前記路面電車に対して前記自動車を追従走行させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面電車に対する自動車の追従走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道を利用して自動車の利便性を高める技術が提案されている。例えば、特許文献1には、鉄道の線路とバスの運行路とが合流する区間において、走行中の鉄道とバスとが長手方向に連結され、乗客は連結された鉄道とバスとの間を移動することにより、鉄道及びバスが駅及び停留所に停車することなく、鉄道とバスとの間の乗り換えを可能にしたシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018‐94955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路面電車に対して自動車が追従走行することが可能であれば、自動車のドライバーの運転操作によらずに、路面電車が走行する線路に沿って自動車が走行することができるため、自動車の利便性は向上する。しかし、一般に路面電車のような車両に対して自動車が追従走行するためには、自動車が前方の状況を認識するための複雑な装置を備える必要がある。
【0005】
そこで本発明は、単純な装置により路面電車に対する自動車の追従走行システムを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、路面電車の加減速情報を含む走行情報を無線通信を介して送信する路面電車通信部と、路面電車通信部から無線通信を介して送信された走行情報を受信する自動車通信部と、路面電車と自動車との距離を検出する距離検出部と、路面電車が走行する線路を認識する線路認識部と、自動車通信部により受信された走行情報と、距離検出部により検出された距離と、線路認識部により認識された線路とに基づいて、線路に沿って路面電車に対して自動車を追従走行させる追従走行制御部とを備えた路面電車に対する自動車の追従走行システム。
【0007】
この構成によれば、路面電車に対する自動車の追従走行システムにおいて、路面電車通信部により、路面電車の加減速情報を含む走行情報が無線通信を介して送信され、自動車通信部により、路面電車通信部から無線通信を介して送信された走行情報が受信され、距離検出部により、路面電車と自動車との距離が検出され、線路認識部により、路面電車が走行する線路が認識され、追従走行制御部により、自動車通信部により受信された走行情報と、距離検出部により検出された距離と、線路認識部により認識された線路とに基づいて、線路に沿って路面電車に対して自動車が追従走行させられる。これにより、自動車が前方の状況を認識するための複雑な装置を備えなくても、単純な装置により路面電車に対する自動車の追従走行システムを構成できる。
【0008】
この場合、路面電車の運行スケジュールが記録された記録部と、自動車の位置を検出する位置検出部と、記録部に記録された路面電車の運行スケジュールと、位置検出部により検出された自動車の位置とに基づいて、路面電車停留所に停車する路面電車に対する自動車の追従走行の可否を判断する追従走行可否判断部とをさらに備えることが好適である。
【0009】
この構成によれば、記録部に記録された路面電車の運行スケジュールと、位置検出部により検出された自動車の位置とに基づいて、追従走行可否判断部により、路面電車停留所に停車する路面電車に対する自動車の追従走行の可否が判断されるため、路面電車に対して自動車が追従走行を開始することがより容易となる。
【0010】
また、自動車は、路面電車の路面電車停留所と共通のバス停留所に停車する路線バスであることが好適である。
【0011】
この構成によれば、自動車は、路面電車の路面電車停留所と共通のバス停留所に停車する路線バスであるため、路面電車が走行する線路に沿って路線バスが走行し、路面電車と停留所を共通にすることにより、路線バスが走行する路線の交通流をより円滑にできる。
【0012】
また、自動車通信部は、路面電車に対する自動車の追従走行を要求する追従走行要求を路面電車通信部に送信し、路面電車通信部は、自動車通信部から送信された追従走行要求を受信し、追従走行要求に対して、路面電車に対する自動車の追従走行を許可する追従走行許可及び路面電車に対する自動車の追従走行を許可しない追従走行不許可のいずれかを自動車通信部に送信することが好適である。
【0013】
この構成によれば、自動車通信部は、路面電車に対する自動車の追従走行を要求する追従走行要求を路面電車通信部に送信し、路面電車通信部は、自動車通信部から送信された追従走行要求を受信し、追従走行要求に対して、路面電車に対する自動車の追従走行を許可する追従走行許可及び路面電車に対する自動車の追従走行を許可しない追従走行不許可のいずれかを自動車通信部に送信するため、路面電車と自動車との間でより円滑に路面電車に対する自動車の追従走行の可否を決定できる。
【0014】
また、自動車の速度を検出する速度検出部をさらに備え、追従走行制御部は、速度検出部により検出された自動車の速度が速いほど、距離検出部により検出される距離が長くなるように、線路に沿って路面電車に対して自動車を追従走行させることが好適である。
【0015】
この構成によれば、自動車の速度を検出する速度検出部をさらに備え、追従走行制御部は、速度検出部により検出された自動車の速度が速いほど、距離検出部により検出される距離が長くなるように、線路に沿って路面電車に対して自動車を追従走行させるため、自動車の速度に応じて路面電車との距離を保ちつつ路面電車に対して自動車を追従走行させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の路面電車に対する自動車の追従走行システムによれば、単純な装置により路面電車に対する自動車の追従走行システムを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る路面電車に対する自動車の追従走行システムの構成を示すブロック図である。
図2】路面電車停留所と共通のバス停留所を示す平面図である。
図3】実施形態に係る路面電車に対する自動車の追従走行システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る路面電車に対する自動車の追従走行システムについて、図面を用いて詳細に説明する。図1に示される路面電車10に対する自動車20の追従走行システム1は、既存の路面電車10及び自動車20に適用可能である。追従走行システム1は、路面電車10に、路面電車通信部11、路面電車操作部12及び路面電車入出力部13を備える。
【0019】
路面電車通信部11は、具体的には無線通信機である。路面電車通信部11は、路面電車10の運転士により行われた路面電車10に対する加速及び減速等の運転操作を路面電車操作部12から受信しつつ、路面電車10の加減速情報を含む走行情報を無線通信を介して送信する。加減速情報には、路面電車10の発車及び停車のタイミングが含まれる。走行情報には、路面電車10の速度、加速度、減速度及び位置に関する情報が含まれてもよい。
【0020】
路面電車操作部12は、路面電車10の運転士により行われた路面電車10に対する加速及び減速等の運転操作を受け付け、当該運転操作に関する情報を路面電車通信部11に送信する。路面電車入出力部13は、具体的には、物理スイッチあるいはタッチパネル(入力できれば形状は限定しない)、ディスプレイ及びスピーカを有する。路面電車入出力部13は、後述するように、自動車20からの追従走行要求を路面電車10の運転士に表示し、路面電車10の運転士による追従走行許可又は追従走行不許可を送信するための操作を受け付ける。
【0021】
追従走行システム1は、自動車20に、自動車通信部21、距離検出部22、線路認識部23、速度検出部24、追従走行制御部25、記録部26、位置検出部27、追従走行可否判断部28及び自動車入出力部29を備える。自動車20は、例えば、路面電車10の路面電車停留所と共通のバス停留所に停車する路線バスである。自動車通信部21は、具体的には無線通信機である。自動車通信部21は、路面電車通信部11から無線通信を介して送信された走行情報を受信する。
【0022】
距離検出部22は、例えば、自動車20の前部に設置されたレーダ、カメラ及びソナー等により、路面電車10と自動車20との距離を検出する。なお、距離検出部22は、路面電車10の後部に設置され、検出された路面電車10と自動車20との距離に関する情報を路面電車通信部11により自動車通信部21に送信してもよい。本実施形態では、距離検出部22は、前方の物体の種別を認識する必要はなく、例えば、乗用車のアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC:Adaptive CruiseControl)のシステムにおける前方の物体との距離を検出する手段を適用できる。
【0023】
線路認識部23は、路面電車10が走行する線路を認識する。線路認識部23は、例えば、カメラの撮像画像に対して、レンズによる歪みの補正、エッジの検出及びHough変換による直線の検出を行うことにより、撮像画像から路面電車10の線路を検出することができる。なお、線路認識部23は、路面電車10の線路に設置されたマーカを認識すること及び路面電車10の線路に設置された発信機から送信された信号を受信することにより、路面電車10の線路を認識してもよい。あるいは、線路に沿って路面にペイントを施し、線路認識部23はそのペイントによる線を検出してトレースするようにすれば、一般的なレーン・キープ・アシスト(LKA:Lane Keeping Assist)システムを適用できる。速度検出部24は、自動車20の速度を検出する。速度検出部24は、自動車20の既存の速度センサを適用することができる。
【0024】
追従走行制御部25及び後述する追従走行可否判断部28は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。追従走行制御部25は、自動車通信部21により受信された走行情報と、距離検出部22により検出された距離と、線路認識部23により認識された線路とに基づいて、線路に沿って路面電車10に対して自動車20を追従走行させる。追従走行とは、自動車20のドライバーの操舵操作、加速操作及び減速操作等の運転操作によらずに、自動車20が線路に沿って路面電車10の後方を間隔を空けつつ走行及び停止することを意味する。追従走行制御部25は、速度検出部24により検出された自動車20の速度が速いほど、距離検出部22により検出される距離が長くなるように、線路に沿って路面電車10に対して自動車20を追従走行させる。例えば、このような追従走行の制御は、一定車間時間制御とすることが望ましい。追従走行制御部25は、乗用車のアダプティブクルーズコントロールの技術を応用することができる。
【0025】
記録部26は、路面電車10の運行スケジュールが記録されたRAM及びハードディスク等の記憶装置である。なお、記録部26は、路面電車10に設置され、記録部26に記録された路面電車10の運行スケジュールに関する情報を路面電車通信部11により自動車通信部21に送信してもよい。あるいは、記録部26は、運行管理システムとして地上に設置され、一般のインターネット回線を介して記録部26に記録された路面電車10の運行スケジュールに関する情報を自動車20に送信してもよい。位置検出部27は、全地球衛星航法システム(GNSS:GlobalNavigation Satellite System)により、自動車20の位置を検出する。
【0026】
追従走行可否判断部28は、記録部26に記録された路面電車10の運行スケジュールと、位置検出部27により検出された自動車20の位置とに基づいて、路面電車停留所に停車する前記路面電車に対する前記自動車の追従走行の可否を判断する。追従走行可否判断部28は、例えば、路面電車10の運行スケジュールに基づいた路面電車10が路面電車停留所に停車する時間帯に、位置検出部27により検出された位置から自動車20が路面電車停留所に到達できるときに追従走行が可能と判断する。なお、追従走行可否判断部28は、速度検出部24により検出された自動車20の速度及び位置検出部27により検出された位置から路面電車停留所に到る道路の混雑の状況に応じて、追従走行の可否を判断してもよい。また、追従走行可否判断部28は、路面電車通信部11から自動車通信部21を介して受信した路面電車10の位置に基づいて、追従走行の可否を判断してもよい。あるいは、追従走行可否判断部28は、地上に設置され、一般のインターネット回線を介して、追従走行の可否の情報を自動車20に配信してもよい。
【0027】
自動車入出力部29は、具体的には、物理スイッチあるいはタッチパネル(入力できれば形状は限定しない)、ディスプレイ及びスピーカを有する。自動車入出力部29は、後述するように、自動車20のドライバーによる追従走行要求を送信するための操作を受け付ける。
【0028】
以下、本実施形態に係る路面電車10に対する自動車20の追従走行システム1の動作について説明する。図2に示されるように、自動車20は、路面電車10の路面電車停留所100と共通のバス停留所200に停車する路線バスである。路面電車10の線路101の近傍の車線201を走行している。自動車20は、路面電車停留所100と共通のバス停留所200に接近している。
【0029】
図3に示されるように、自動車20の追従走行可否判断部28により、自動車20の記録部26に記録された路面電車10の運行スケジュールと、自動車20の位置検出部27により検出された自動車20の位置とに基づいて、図3に示されるような路面電車停留所100に停車する路面電車10に対する自動車20の追従走行の可否が判断される(S1)。
【0030】
追従走行可否判断部28により、追従走行が可能と判断された場合は(S2)、自動車20の自動車通信部21は、路面電車10の路面電車通信部11との通信を確立する(S3)。自動車20の自動車入出力部29は、自動車20のドライバーに追従走行が可能な旨を表示する(S4)。一方、追従走行可否判断部28により、追従走行が不可能と判断された場合は(S2)、自動車20の自動車入出力部29は、自動車20のドライバーに追従走行が不可能な旨を表示する(S5)。自動車20は、ドライバーの運転操作による走行を続行する。
【0031】
自動車20のドライバーの自動車入出力部29への入力操作により、自動車通信部21が路面電車10に対する自動車20の追従走行を要求する追従走行要求を路面電車通信部11に送信した場合は(S6)、路面電車通信部11は、自動車通信部21から送信された追従走行要求を受信し、路面電車10の路面電車入出力部13は、路面電車10の運転士に自動車20から追従走行要求を受信した旨を表示する(S7)。
【0032】
一方、自動車20のドライバーの自動車入出力部29への入力操作により、自動車通信部21が路面電車10に対する自動車20の追従走行を要求する追従走行要求を路面電車通信部11に送信しなかった場合は(S6)、自動車20は、ドライバーの運転操作による走行を続行する。
【0033】
路面電車10の運転士の路面電車入出力部13への入力操作により、路面電車通信部11が、追従走行要求に対して路面電車10に対する自動車20の追従走行を許可する追従走行許可を自動車通信部21に送信した場合は(S8)、自動車通信部21は、路面電車通信部11から送信された追従走行許可を受信し、自動車20の自動車入出力部29は、自動車20のドライバーに路面電車10から追従走行許可を受信した旨を表示する(S9)。
【0034】
一方、路面電車10の運転士の路面電車入出力部13への入力操作により、路面電車通信部11が、追従走行要求に対して路面電車10に対する自動車20の追従走行を許可しない追従走行不許可を自動車通信部21に送信した場合は(S8)、自動車通信部21は、路面電車通信部11から送信された追従走行不許可を受信し、自動車20の自動車入出力部29は、自動車20のドライバーに路面電車10から追従走行不許可を受信した旨を表示する(S10)。自動車20は、ドライバーの運転操作による走行を続行する。
【0035】
図2及び図3に示されるように、自動車20がバス停留所200に到着しているにもかかわらず、路面電車10が路面電車停留所100に到着しない場合は(S11)、自動車20は、ドライバーの運転操作により、既定の待機場所で停車させられ、路面電車10の到着まで待機する(S12)。路面電車10が路面電車停留所100に到着した場合は(S11)、自動車20の自動車入出力部29は、自動車20のドライバーに追従走行の開始を促す開始指示表示を表示する(S13)。自動車20の追従走行制御部25は、自動車通信部21により受信された走行情報と、距離検出部22により検出された距離と、線路認識部23により認識された線路とに基づいて、線路101に沿って路面電車10に対して自動車20を追従走行させる(S14)。
【0036】
一般に路面電車10よりも路線バス等の自動車20の方が加速度及び減速度が大きいため、路面電車10と自動車20との接触の可能性は少ない。路面電車10と自動車20とは、比較的に短い距離を維持したまま線路101を走行する。追従走行制御部25は、速度検出部24により検出された自動車20の速度が速いほど、距離検出部22により検出される距離が長くなるように、線路に沿って路面電車10に対して自動車20を追従走行させる。自動車20の運転操作は、実質的に路面電車10の運転士により行われる。自動車20のドライバーは、車内の監視と異常事態に対する対応を行い、通常は自動車20の運転操作を行わない。
【0037】
線路101の既定の区間において、路面電車10に対して自動車20は上記の追従走行を行う。既定の区間の終端である路面電車停留所100及びバス停留所200に路面電車10及び自動車20が到着した場合は、自動車20のドライバーの自動車入出力部29への入力操作により、自動車通信部21が路面電車10に対する自動車20の追従走行を終了する旨の追従走行終了通知を路面電車通信部11に送信する。路面電車通信部11は、自動車通信部21から送信された追従走行終了通知を受信し、路面電車10の路面電車入出力部13は、路面電車10の運転士に自動車20から追従走行終了通知を受信した旨を表示する。自動車20は、ドライバーの運転操作により、線路101から車線201に戻り、車線201を走行する。
【0038】
本実施形態によれば、路面電車10に対する自動車20の追従走行システム1において、路面電車通信部11により、路面電車10の加減速情報を含む走行情報が無線通信を介して送信され、自動車通信部21により、路面電車通信部11から無線通信を介して送信された走行情報が受信され、距離検出部22により、路面電車10と自動車20との距離が検出され、線路認識部23により、路面電車10が走行する線路101が認識され、追従走行制御部25により、自動車通信部21により受信された走行情報と、距離検出部22により検出された距離と、線路認識部23により認識された線路101とに基づいて、線路101に沿って路面電車10に対して自動車20が追従走行させられる。これにより、自動車20が前方の状況を認識するためのLIDARのような複雑な装置を備えなくても、単純な装置により路面電車10に対する自動車20の追従走行システム1を構成できる。また、本実施形態では、乗用車のアダプティブクルーズコントロールの技術を応用することができるため、追従走行システム1を容易に実現できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、記録部26に記録された路面電車10の運行スケジュールと、位置検出部27により検出された自動車20の位置とに基づいて、追従走行可否判断部28により、路面電車停留所100に停車する路面電車10に対する自動車20の追従走行の可否が判断されるため、路面電車10に対して自動車20が追従走行を開始することがより容易となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、自動車20は、路面電車10の路面電車停留所100と共通のバス停留所200に停車する路線バスであるため、路面電車10が走行する線路101に沿って路線バスが走行し、路面電車10と停留所を共通にすることにより、路線バスが走行する路線の交通流をより円滑にできる。
【0041】
また、本実施形態によれば、自動車通信部21は、路面電車10に対する自動車20の追従走行を要求する追従走行要求を路面電車通信部11に送信し、路面電車通信部11は、自動車通信部21から送信された追従走行要求を受信し、追従走行要求に対して、路面電車10に対する自動車20の追従走行を許可する追従走行許可及び路面電車10に対する自動車20の追従走行を許可しない追従走行不許可のいずれかを自動車通信部21に送信するため、路面電車10と自動車20との間でより円滑に路面電車10に対する自動車20の追従走行の可否を決定できる。
【0042】
自動車20の速度を検出する速度検出部24をさらに備え、追従走行制御部25は、速度検出部24により検出された自動車20の速度が速いほど、距離検出部22により検出される距離が長くなるように、線路101に沿って路面電車10に対して自動車20を追従走行させるため、自動車20の速度に応じて路面電車10との距離を保ちつつ路面電車10に対して自動車20を追従走行させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態では、自動車20が路面電車10の路面電車停留所100と共通のバス停留所200に停車する路線バスである態様を中心に説明したが、自動車20は路面電車10の路面電車停留所100と共通の貨物の積み降ろし場所に停車する貨物自動車でもよい。また、自動車20は、一般の乗用車でもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、路面電車停留所100に停車している路面電車10に対して自動車20が追従走行を開始する態様を中心に説明したが、自動車20は、路面電車停留所100以外の場所に停車している路面電車10及び走行中の路面電車10に対して追従走行を開始してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…追従走行システム、10…路面電車、11…路面電車通信部、12…路面電車操作部、13…路面電車入出力部、20…自動車、21…自動車通信部、22…距離検出部、23…線路認識部、24…速度検出部、25…追従走行制御部、26…記録部、27…位置検出部、28…追従走行可否判断部、29…自動車入出力部、100…路面電車停留所、101…線路、200…バス停留所、201…車線。
図1
図2
図3