(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】変流器、変流器用の鉄心
(51)【国際特許分類】
H01F 38/32 20060101AFI20231012BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20231012BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H01F38/32
H01F27/24 E
H01F27/24 H
H01F30/10 A
H01F30/10 C
(21)【出願番号】P 2020051692
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-87649(JP,A)
【文献】特開2005-285844(JP,A)
【文献】特開平8-45743(JP,A)
【文献】特開昭58-162013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/20-38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状またはC字状の4つの半環状部を有する鉄心と、
前記鉄心に設けられ、内周側を前記鉄心が貫通している複数の二次コイルと、を備え、
前記鉄心は、互いに平行に配置されている1組の前記半環状部において同じ側に位置する端部間に他の前記半環状部がそれぞれ接続され、4つの前記半環状部が直列的に接続された1つの磁気回路を構成している変流器。
【請求項2】
環状の環状部、および、U字状またはC字状の4つの半環状部を有する鉄心と、
前記鉄心に設けられ、内周側を前記鉄心が貫通している複数の二次コイルと、を備え、
前記鉄心は、前記環状部の一方の面側に、平行に配置されている1組の前記半環状部の端部がそれぞれ接続され、前記環状部の他方の面側に、平行に配置されている他の1組の前記半環状部の端部が配置方向を異ならせた状態でそれぞれ接続され、4つの前記半環状部が含まれた磁気回路を構成している変流器。
【請求項3】
前記二次コイルは、前記半環状部に設けられている請求項1または2記載の変流器。
【請求項4】
前記二次コイルは、前記環状部に設けられている請求項2記載の変流器。
【請求項5】
前記二次コイルは、前記半環状部が互いに接続されている部位に設けられている請求項1または2記載の変流器。
【請求項6】
前記半環状部の端部間に配置され、端部間にギャップを形成するギャップ材を備える請求項1から5のいずれか一項記載の変流器。
【請求項7】
前記半環状部の端部間に配置され、端部間の距離を延長する延長部材を備える請求項1から6のいずれか一項記載の変流器。
【請求項8】
U字状またはC字状の4つの半環状部を有し、互いに平行に配置されている1組の前記半環状部において同じ側に位置する端部間を他の前記半環状部で直接的または間接的にそれぞれ接続し、4つの前記半環状部が含まれた磁気回路を構成する変流器用の鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変流器、変流器用の鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、円環状または矩形環状の鉄心にトロイダル状の二次コイルを設け、測定対象となるケーブルを鉄心に貫通させて使用する変流器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の変流器の場合、鉄心を貫通させるようにケーブルを配置するためには、一旦ケーブルの接続を外したり、ケーブルを切断したりする必要がある。
【0005】
しかしながら、実際のケーブルの設置現場では、例えば数百mや数kmといった長距離ケーブルが存在しているなど、接続を外すことが困難な場合や、ケーブルを切断できない場合が想定される。つまり、ケーブルに加工を施すことが困難な場合が想定される。
【0006】
そこで、ケーブルに加工を施すことが困難な場合であってもケーブルに流れる電流を測定することができる変流器、変流器用の鉄心を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の変流器は、U字状またはC字状の4つの半環状部を有する鉄心と、鉄心に設けられ、内周側を鉄心が貫通している複数の二次コイルと、を備え、鉄心は、互いに平行に配置されている1組の半環状部において同じ側に位置する端部間に他の半環状部がそれぞれ接続され、4つの半環状部が直列的に接続された1つの磁気回路を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による変流器の構成を模式的に示す図
【
図7】第2実施形態による変流器の構成を模式的に示す図
【
図9】第3実施形態による変流器の構成を模式的に示す図その1
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、説明の簡略化のために、各実施形態において実質的に同一あるいは機能が共通する部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、変流器1は、鉄心2と、その鉄心2が貫通する4つの二次コイル3とを備えている。鉄心2は、例えばフェライトや鉄ニッケル合金系などの高透磁率の磁性材料で形成されており、本実施形態ではU字状に形成されている4つの半環状部4を有している。そして、鉄心2は、互いに平行に配置されている1組の半環状部4の端部間が、配置方向が90度異なった状態で互いに平行に配置されている1組の半環状部4の端部にそれぞれ接続され、4つの半環状部4を直列的に接続することで、いわゆる閉回路となっている1つの磁気回路を構成している。
【0011】
以下、説明のために、個別の半環状部4を説明する場合には、第1半環状部4a、第2半環状部4b、第3半環状部4cおよび第4半環状部4dのように示すものとする。なお、本実施形態では、4つの半環状部4は、後述するように、例えば溶接や接着などにより接合され、互いに分離不能に接続されている。
【0012】
より具体的には、鉄心2の場合、1組の第1半環状部4aと第2半環状部4bが所定の間隔を存して互いに平行に配置され、1組の第3半環状部4cと第4半環状部4dが、所定の間隔を存して互いに平行となるように、且つ、第1半環状部4aと第2半環状部4bに対して配置方向が90度異なった状態で配置されている。
【0013】
そして、鉄心2は、第1半環状部4aと第2半環状部4bの同じ側に位置する一方の端部間を第3半環状部4cで接続し、他方の端部間を第4半環状部4dで接続することにより、4つの半環状部4が直列的に接続されて連続した1つの磁気回路を構成している。つまり、鉄心2は、直方体を構成する12本の辺のうち一筆書きでなぞれる8辺を繋いだような概ね枠状であって、平行に配置されている半環状部4間に、磁気回路の内側までアクセス可能な空間を有する形状に形成されている。なお、磁気回路の内側とは、磁気回路を構成する鉄心2の谷間に位置する空間部分に相当する。
【0014】
二次コイル3は、内周側を鉄心2が貫通しており、本実施形態では半環状部4のそれぞれに設けられている。つまり、鉄心2には、4つの二次コイル3が設けられている。これら4つの二次コイル3は、鉄心2の長手方向において4等分された位置にそれぞれ設けられており、図示しない配線や抵抗が接続されるる。
【0015】
このような構成の変流器1は、次のようにして製造される。
図2に示すように、まず、概ね長方形状であって角部が曲線状に形成され、断面が正方形に形成されている2つの環状鉄心5を用意し、それぞれを2分割することで、4つのU字状の鉄心片6を形成する。続いて、各鉄心片6の向きを90度異ならせながら端部間を接合することにより、上記したように各半環状部4が一筆書きのように連続していて、各半環状部4が互いに接続された1つの磁気回路を構成する鉄心2が形成される。
【0016】
このとき、各半環状部4は、互いの端部が接合、つまりは、互いに分離不能に繋がれている。ただし、鉄心2は、微小電流を検出する場合のように接合部分を設けることができない場合には、半環状部4を組み合わせるのではなく、半環状部4が予め形成される構造として一体成型することもできる。そのため、本実施形態では、半環状部4が鉄心片6を接合して形成される構成と、半環状部4を含めて一体成型する構成とを含むものとして、半環状部4が接続されているという記載を採用している。
【0017】
次に上記した構成の作用について説明する。
例えば
図3に示すように、装置7Aと装置7Bとの間を接続しているケーブル8が変流器1の測定対象であったとする。ただし、ケーブル8は、装置に限らず、端子台に接続されているものであってもよい。また、参考例として、
図4に斜視図として示すように、枠状の従来型鉄心100と二次側コイル101とを備える従来型変流器102を想定する。この従来型変流器102は、いわゆる零相CTとも称されるものである。
【0018】
さて、従来型変流器102で測定するためには、従来型鉄心100に三相ケーブル103を貫通させる必要があり、その場合には、三相ケーブル103の接続を一旦外して末端を挿入したり、三相ケーブル103を切断したりする必要がある。しかし、実際の設置現場では、例えば数百mや数kmといった長距離ケーブルのように接続を外すことが困難な場合や、切断できない、あるいは、切断が許されない場合が想定される。つまり、三相ケーブル103に加工を施すことが困難な場合がある。
【0019】
その場合、分割鉄心型変流器を用いて測定することが考えられる。なお、ここで言う分割鉄心型変流器とは、複数の鉄心を分解可能な状態で環状に組み合わせて測定するものを意味している。しかし、分割鉄心型変流器の場合、測定を繰り返す度に鉄心を組み合わせた部位の接触状態が変わったり、各鉄心を環状に保持するための機構部の劣化などによって組み合わせ精度が低下したりすることにより、測定に誤差が生じるおそれがある。また、大電流の測定が必要になる場合には、機構部を含めて大型化してしまい、取り扱いが難しくなるという現場において切実な問題もある。
【0020】
そこで、本実施形態では、以下のようにしてそこで、測定対象となるケーブル8に加工を施すことが困難な場合であっても測定することができるようにしている。
【0021】
まず、本実施形態の変流器1の測定原理についてまず説明する。本実施形態の変流器1は、従来型鉄心100を備えた従来型変流器102にとって誤差の原因となっていた残留電圧を逆に利用することにより、ケーブル8に流れる電流を検知している。この残留電圧は、零相CTを貫通するケーブル8の位置のずれにより発生する事象である。
【0022】
例えば、
図4に正面図として示すように、残留電圧は、3相のケーブル8の位置が従来型鉄心100の中心からずれたり、1本の線の位置が離れてしまったりした場合に生じる。これは、ケーブル8が中心に位置していれば従来型鉄心100に鎖交する磁界が3相で平衡して相殺されるべきところ、例えば1相が強調されたり減退したりすることで二次側コイル101に電圧が誘起され、あたかも零相が流れているように検知されるためである。
【0023】
換言すると、この残留電圧に着目すれば、必ずしも従来型変流器102のようにケーブル8を従来型鉄心100に貫通させなくても、磁気回路の内側にケーブル8を配置することができれば、ケーブル8を流れる電流の影響を測定できると考えられる。このように、従来では誤差の原因になっていた残留電圧を利用して測定するのは、本実施形態の変流器1の測定原理である。
【0024】
さて、ケーブル8は、一般的に、
図3に模式的に示しているように、装置7Aと装置7Bとの間を最短距離で接続しているのではなく、ある程度の余裕がある長さで配設されている。そのため、ケーブル8は、多少の曲げや取り回しが可能な状態で配置されていると考えられる。なお、説明のためにケーブル8と上記した三相ケーブル103とを別の符号で示しているが、ケーブル8も三相用のものを想定している。
【0025】
そして、鉄心2は、
図1に示したように、第1半環状部4aと第2半環状部4bとの間には第3半環状部4c側および第4半環状部4d側まで遮るものがなく、また、第3半環状部4cと第4半環状部4d側との間には、第1半環状部4a側および第2半環状部4b側まで遮るものがない構造となっている。換言すると、鉄心2は、第1半環状部4aと第2半環状部4bとの間、および、第3半環状部4cと第4半環状部4dとの間から、磁気回路の内側までアクセス可能な構造となっている。
【0026】
そのため、例えば
図5の配線例その1において斜視図として示すように、鉄心2に絡めるような態様でケーブル8を磁気回路の内側に配置することが可能になる。なお、この斜視図では簡略化のためにケーブル8の断面を示しているが、ケーブル8は切断されているわけではない。つまり、図示されているケーブル8の断面を便宜的にA端面8aおよびB端面8bとすると、A端面8aとB端面8bで切断されているわけではなく、設置態様として示すように、ケーブル8は繋がった状態になっている。換言すると、変流器1は、その形状によって、繋がったままのケーブル8を、鉄心2が形成する磁気回路の内側に配置することを可能にしている。
【0027】
具体的には、ケーブル8は、A端面8a側において、第1半環状部4aと第2半環状部4bとの間から鉄心2の中央付近に配置されている。そして、ケーブル8は、第1半環状部4aと第3半環状部4cとの接続部分に引っ掛けられるように取り回され、B端面8b側において、第3半環状部4cと第4半環状部4d側との間から鉄心2の中央付近に配置されている。つまり、ケーブル8は、その余剰の長さを利用して、変流器1に絡めるように配置されている。
【0028】
これにより、設置態様に示すように、例えばケーブル8の配線経路の側方に変流器1を設置した場合などにおいて、ケーブル8の接続を外したりケーブル8を切断したりすることなく、ケーブル8が磁気回路の内側に配置され、変流器1による測定を行うことができるようになる。すなわち、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であっても、変流器1による測定が可能になる。また、既設のケーブル8に対しても変流器1を容易に取り付けることができる。
【0029】
また、例えば
図5の配線例その2において斜視図として示すように、ケーブル8は、A端面8a側において、第1半環状部4aと第2半環状部4b側との間から鉄心2の中央付近に配置することもできる。そして、ケーブル8は、第1半環状部4aと第3半環状部4cとの接続部分に引っ掛けられるように取り回された後、第3半環状部4cと第4半環状部4dとの間から鉄心2の中央付近に配置され、A端面8aとが逆側に引き出されている。
【0030】
これにより、配線例その2の設置態様として示すように、例えばケーブル8の配線経路上に変流器1を設置した場合において、ケーブル8の接続を外したりケーブル8を切断したりすることなくケーブル8を磁気回路の内側に配置することが可能となり、変流器1による測定を行うことができる。また、既設のケーブル8に対しても変流器1を容易に取り付けることができる。
【0031】
そして、配線例その1の配置態様にて測定を行ったところ、例えば
図6に示すように正弦波状の対象電流がケーブル8に流れている場合、変流器1によって、対象電流の周期(T1)と一致する周期(T10)であって、対象電流の振幅(W1)に比例した振幅(W10)となる測定電流を測定できることが確認された。また、
図5に示す配線例その2で示した配置態様にて測定を行った結果についても同様に、測定電流は、周期や振幅が対象電流に追従した状態で測定できることが確認された。
【0032】
このように、本実施形態の変流器1は、鉄心2の特徴的な形状によって、ケーブル8に加工を施す必要なく、電流を測定可能な磁気回路の内側にケーブル8を配置することを可能にしている。ただし、ケーブル8は、上記した配線例その1や配線例その2と異なる配置とすることもできる。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
変流器1は、U字状の4つの半環状部4を有する鉄心2と、鉄心2に設けられ、内周側を鉄心2が貫通している複数の二次コイル3と、を備えている。そして、鉄心2は、互いに平行に配置されている1組の半環状部4において同じ側に位置する端部間を、互いに平行に配置されている他の1組の半環状部4でそれぞれ接続し、4つの半環状部4が直列的に接続されて連続した1つの磁気回路を構成している。
【0034】
これにより、鉄心2には、平行に配置された半環状部4間に、鉄心2の中央側までアクセス可能な空間部分がそれぞれ形成される。その結果、ケーブル8の接続を外したり切断したりすることなく、繋がったままのケーブル8を鉄心2の中心側すなわち磁気回路の内側になる空間部分に配置することができる。
【0035】
そして、磁気回路の内側にケーブル8を配置できれば、上記したように残留電圧によってケーブル8を流れる対象電流を測定することが可能になる。したがって、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であってもケーブル8に流れる対象電流を測定することができる。
【0036】
また、二次コイル3は、4つの半環状部4にそれぞれ設けられている。これにより、磁気回路における相対的な位置関係が均等になるように各二次コイル3を配置することが可能になり、測定精度に悪影響を与えるおそれを低減することができる。
また、環状鉄心5を分割した鉄心片6を組み合わせて接合することにより各半環状部4を接続することができるため、鉄心2を容易に形成することができる。
【0037】
また、U字状の4つの半環状部4を有し、平行に配置されている1組の半環状部4の端部と、配置方向が90度異なった状態で平行に配置されている他の1組の半環状部4の端部とが直接的に接続され、4つの半環状部4が含まれた磁気回路を構成する変流器1用の鉄心2によっても、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であってもケーブル8に流れる対象電流を測定することができる。
【0038】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、各半環状部4の端部間に環状の部位を備えている点において第1実施形態と異なっている。また、変流器1による測定原理は第1実施形態と共通している。
【0039】
図7に分解斜視図および斜視図として示すように、本実施形態の変流器1は、環状の環状部10およびU字状の4つの半環状部4を有する鉄心2と、鉄心2に設けられ、内周側を鉄心2が貫通している複数の二次コイル3とを備えている。このうち、半環状部4の構成は第1実施形態と共通する。また、二次コイル3は、環状部10の4辺にそれぞれ設けられている。
【0040】
環状部10は、半環状部4と同一材料で、半環状部4の端部における幅と概ね等しい四角枠状に形成されており、その4隅に、各半環状部4の端部が直交した状態でそれぞれ接続されている。このとき、環状部10には、その一方の面側に、平行に配置されている1組の半環状部4の端部がそれぞれ接続されており、他方の面側に、配置方向が90度異なった状態で平行に配置されている他の1組の半環状部4の端部がそれぞれ接続されている。つまり、第2実施形態による鉄心2は、第1実施形態の鉄心2の端部間に環状部10を配置した態様であって、環状部10および半環状部4によって磁気回路が形成された構成となっている。
【0041】
つまり、本実施形態の変流器1は、ケーブル8を貫通させる従来の貫通型の特性と、ケーブル8を貫通させない言わば非貫通型の特性とが両立されているハイブリッド型とも言える構成となっており、その特徴的な鉄心2の形状によって、繋がったままのケーブル8を、鉄心2が形成する磁気回路の内側に配置することを可能にしている。また、二次コイル3を環状部10に設けたことにより、鉄心2においてケーブル8を設置可能な領域が拡大し、大径ケーブルへの適用が可能になり、また、ケーブル8を鉄心2に複数回巻くことが可能になって微小電流の測定に対応できるようになる。
【0042】
具体的には、例えば
図8に示すように、ケーブル8は、第1実施形態の
図5の配線例その1と同様に、A端面8a側において第1半環状部4aと第2半環状部4bとの間から鉄心2の中央付近であって環状部10よりも第1半環状部4a側に配置し、第1半環状部4aと第3半環状部4cとの接続部分に引っ掛けられるように取り回された後、B端面8b側において第3半環状部4cと第4半環状部4d側との間から鉄心2の中央付近であって環状部10よりも第3半環状部4c側に配置することができる。もちろん、ケーブル8は、第1実施形態の
図5の配線例その2と同様の配置や他の配置とすることもできる。
【0043】
そして、この変流器1により測定を行ったところ、第1実施形態の
図6に示した測定結果と同様に、測定電流の周期や振幅が対象電流に追従した状態で測定できること、すなわち、変流器1によって対象電流を測定できることが確認された。すなわち、本実施形態の変流器1は、その鉄心2の形状によって、ケーブル8に加工を施す必要なくケーブル8に流れる対象電流の測定が可能であることが確認された。
【0044】
このように、本実施形態の変流器1は、環状の環状部10およびU字状の4つの半環状部4を有する鉄心2と、鉄心2に設けられ、内周側を鉄心2が貫通している複数の二次コイル3と、を備えている。そして、鉄心2は、環状部10の一方の面側に、平行に配置されている1組の半環状部4の端部がそれぞれ接続され、環状部10の他方の面側に、平行に配置されている他の1組の半環状部4の端部を配置方向が本実施形態では90度異なった状態で接続され、4つの半環状部4を含んだ磁気回路を構成している。
【0045】
これにより、鉄心2には、平行に配置された半環状部4間に、鉄心2の中央側までアクセス可能な空間部分がそれぞれ形成される。その結果、ケーブル8の接続を外したり切断したりすることなく、繋がったままのケーブル8を鉄心2の中心側すなわち磁気回路の内側になる空間部分に配置することができる。したがって、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であってもケーブル8に流れる対象電流を測定することができる。
【0046】
また、二次コイル3は、環状部10に設けられている。これにより、鉄心2に対してケーブル8を設置可能な領域が拡大され、大径ケーブルへの適用やケーブル8を複数回巻くことが可能とし、検出電流を増加させることができる。
【0047】
また、U字状の4つの半環状部4を有し、平行に配置されている1組の半環状部4の端部と、配置方向が90度異なった状態で平行に配置されている他の1組の半環状部4の端部とが環状部10を介して間接的に接続され、4つの半環状部4が含まれた磁気回路を構成する変流器1用の鉄心2によっても、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であってもケーブル8に流れる対象電流を測定することができる。
【0048】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、第1実施形態および第2実施形態で説明した変流器1の変形例、拡張例について、いくつかの態様に区分けして説明する。
【0049】
<端部間にギャップを形成する態様>
例えば
図9に示すように、変流器1は、半環状部4の端部間に配置され、端部間にギャップを形成するギャップ材20を備える構成とすることができる。
図9の場合、第1実施形態で説明した鉄心2において、半環状部4の端部間に、それぞれギャップ材20が設けられている。
【0050】
このギャップ材20は、半環状部4の端部間、すなわち、磁束密度が集中して磁気飽和する可能性のある接合部分にギャップを形成することにより、磁気飽和を緩和している。また、ギャップ材20は、端部に接合されている。これにより、測定対象となる電流領域をより広くすることができる。もちろん、第1実施形態で説明したように、ケーブル8に加工を施すことなく変流器1にケーブル8を配置することもできる。
【0051】
あるいは、
図10に示すように、第2実施形態で説明した鉄心2において、半環状部4と環状部10との接合部分に、それぞれギャップ材20を設ける構成とすることができる。この場合も同様に、磁束密度が集中して磁気飽和する可能性のある接合部分にギャップを形成することにより、磁気飽和が緩和され、より広い電流領域まで検出することができる。もちろん、第2実施形態で説明したように、ケーブル8に加工を施すことなく変流器1にケーブル8を配置することもできる。
【0052】
そして、
図9あるいは
図10に示した変流器1によりケーブル8を流れる対象電流を測定したところ、
図11に示すように、矩形波状の対象電流がケーブル8に流れた場合において、対象電流の周期(T2)と一致する周期(T20)であって、磁気飽和が緩和されて対象電流の振幅(W2)に比例したピーク値となる振幅(W20)の測定電流が検出され、対象電流に対する追従性が大きく改善された状態で測定できることが確認された。
【0053】
<端部間の距離を延長する態様>
例えば
図12に分解斜視図および分解図として示すように、変流器1は、半環状部4の端部間に配置され、端部間の距離を延長する延長部材30を備える構成とすることができる。鉄心2は、分解斜視図として示すように、環状鉄心5を2分割した鉄心片6の端部間に、各鉄心片6の断面形状に等しく、所定の長さに形成した延長部材30を挿入してそれらを接合することにより形成されている。
【0054】
この延長部材30は、半環状部4と同一の材料により形成されており、半環状部4の端部間の距離を延長する。これにより、斜視図として示すように、第1実施形態で説明した鉄心2と類似した構造であって、第1半環状部4aおよび第2半環状部4bの端部と、第3半環状部4cおよび第4半環状部4dの端部との間がそれぞれ延長部材30により延長された鉄心を製造することができる。
【0055】
この場合、ケーブル8を配置可能な領域が拡大することから、大径ケーブルへの適用やケーブル8を複数回巻くことが可能になり、微小電流の測定に対応できるようになる。もちろん、第1実施形態で説明したように、ケーブル8に加工を施すことなく変流器1にケーブル8を配置することもできる。
【0056】
あるいは、
図13に示すように、第2実施形態で説明した鉄心2において、それぞれの半環状部4の端部間に、より厳密に言えば、各半環状部4と環状部10との接合箇所に、延長部材30を設ける構成とすることができる。これにより、ケーブル8を配置可能な領域を拡大することができ、大径ケーブルへの適用やケーブル8を複数回巻くことが可能になり、微小電流の測定に対応できるようになる。もちろん、第2実施形態で説明したように、ケーブル8に加工を施すことなく変流器1にケーブル8を配置することもできる。
【0057】
ただし、延長部材30は、必ずしも全ての端部間に設ける必要はない。例えば、
図13の場合であれば、環状部10の一方の面側には延長部材30を設け、他方の面側には延長部材30を設けない構成とすることができる。
【0058】
また、変流器は、前述したギャップ材20と延長部材30とを設ける構成とすることができる。その場合、全ての端部間にギャップ材20と延長部材30とを設けたり、一部の端部間にギャップ材20と延長部材30とを設けたり、ギャップ材20のみを設ける端部間と延長部材30のみを設ける端部間とを混在させたりすることができる。
【0059】
<二次コイル3を端部間に対応する位置に配置する態様>
変流器1は、二次コイル3を、半環状部4以外の場所に設ける構成とすることができる。例えば、
図14に示すように、第1半環状部4aと第2半環状部4bの同じ側に位置する一方の端部間を第3半環状部4cと接続し、他方の端部間を第4半環状部4dと接続することにより形成されている鉄心2において、半環状部4が互いに接続されている部位に二次コイル3を設ける構成とすることができる。
【0060】
つまり、二次コイル3を端部間に対応する位置に配置する構成とすることができる。このような構成によっても、半環状部4間に鉄心2の中央側までアクセス可能な空間部分を形成することができ、ケーブル8の接続を外したり切断したりすることなく、繋がったままのケーブル8を鉄心2の中心側すなわち磁気回路の内側になる空間部分に配置することができる。
【0061】
あるいは、
図15に分解斜視図として示すように、環状鉄心5を2分割した鉄心片6の端部間に、各鉄心片6の断面形状に等しく、所定の長さに形成した延長部材30を挿入してそれらを接合する構成において、その延長部材30に二次コイル3を設ける構成とすることができる。
【0062】
これにより、分解図として示すように、第1半環状部4aおよび第2半環状部4bの端部と、第3半環状部4cおよび第4半環状部4dの端部との間が延長された鉄心2において、延長部材30にそれぞれ二次コイル3が設けられた変流器1を形成することができる。
【0063】
このような構成によっても、半環状部4間に鉄心2の中央側までアクセス可能な空間部分を形成することができ、ケーブル8の接続を外したり切断したりすることなく、繋がったままのケーブル8を鉄心2の中心側すなわち磁気回路の内側になる空間部分に配置することができる。また、ケーブル8を配置可能な領域を拡大することができ、大径ケーブルへの適用やケーブル8を複数回巻くことが可能になり、微小電流の測定に対応できるようになる。
【0064】
また、二次コイル3を端部間に配置する態様において、端部間にギャップ材20を設ける構成とすることもできる。さらには、全ての端部間にギャップ材20と延長部材30とを設けたり、一部の端部間にギャップ材20と延長部材30とを設けたり、ギャップ材20のみを設ける端部間と延長部材30のみを設ける端部間とを混在させたりすることができる。
【0065】
さらに、図示は省略するが、変流器1は、以下のような変形あるいは拡張をすることができる。例えば、各実施形態では断面が正方形に形成されている鉄心2を例示したが、断面が円形に形成されている鉄心2を用いることができる。また、鉄心2を一体成型する場合には、断面が長方形や扁平状に形成されている鉄心2を用いることができる。
【0066】
各実施形態ではU字状の半環状部4を有する鉄心2を例示したが、C字状の半環状部4を有する構成とすることができる。この場合、円環状の環状鉄心5を周方向に2分割することによりC字状の半環状部4を形成し、それらを直接的に、あるいは、端部間を延長したり環状部10を介したりして接合することにより、C字状の半環状部4を有する鉄心2を形成することができる。また、微小電流の検出が必要な場合には、C字状の半環状部4を有する鉄心2を一体成型することもできる。
【0067】
また、実施形態のように、環状に形成された2つの鉄心2をそれぞれ周方向に分割し、U字状またはC字状の4つの半環状部4となる鉄心片6を形成する工程と、形成された4つの鉄心片6を、1組の鉄心片6を平行に配置し、それぞれ端部を平行に配置されている他の鉄心片6の端部と直接的に、あるいは、延長部やギャップ材20を介して間接的に接合する工程とを含む製造方法によって製造された鉄心2を用いる変流器1によっても、ケーブル8に加工を施すことが困難な場合であってもケーブル8に流れる対象電流を測定することができるなど、実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、実施形態で説明した変流器1の製造方法や鉄心2の製造方法、ならびに、一体成型により鉄心2を製造する製造方法も本発明の均等の範囲に含まれる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
図面中、1は変流器、2は鉄心、3は二次コイル、4は半環状部、8はケーブル、10は環状部、20はギャップ材、30は延長部材を示す。