(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】小型無人航空機
(51)【国際特許分類】
B64U 60/55 20230101AFI20231012BHJP
B64C 25/38 20060101ALI20231012BHJP
B64C 25/58 20060101ALI20231012BHJP
B64C 37/00 20060101ALI20231012BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20231012BHJP
【FI】
B64U60/55
B64C25/38
B64C25/58
B64C37/00
B64U101:26
(21)【出願番号】P 2020162383
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上半 文昭
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118525(JP,A)
【文献】特許第6363632(JP,B2)
【文献】特許第6178949(JP,B1)
【文献】特許第6199418(JP,B2)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】国際公開第2016/069169(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051732(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206367593(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0130000(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110871857(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109398009(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/00-80/86
B64C 25/32-25/66
B64C 27/00-27/82
B64C 37/00
B64C 39/02
B62D 55/00-55/32
B60F 5/02
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限軌道とプロペラとを有する小型無人航空機であって、
本体部と、
前記本体部に固定された横架部に複数のプロペラが取り付けられる飛行手段部と、
前記本体部に対して
平面視で回転可能に取り付けられるシャフト部の両端にそれぞれ無限軌道が支持される移動手段部とを備え、
前記飛行手段部は前記本体部が回転する力に対して姿勢を制御する飛行制御部を有しており、
前記シャフト部は、飛行中に作用する慣性回転力によっては回転せず、前記飛行制御部による回転防止制御力が作用した際には回転が生じるように設定された抵抗部を介して回転可能に支持されている
ものであって、
前記抵抗部は、前記シャフト部の支持軸の両方向の回転に対して作用するバネ材であるとともに、
前記支持軸を挟んだ前記シャフト部の下面からは、それぞれ下方に長さが異なる長突起部と短突起部とが突出されており、
前記長突起部は前記本体部側の上面に設けられた平面視円弧状の溝部に挿入され、前記短突起部の下端面は前記上面に接触することを特徴とする小型無人航空機。
【請求項2】
無限軌道とプロペラとを有する小型無人航空機であって、
本体部と、
前記本体部に固定された横架部に複数のプロペラが取り付けられる飛行手段部と、
前記本体部に対して平面視で回転可能に取り付けられるシャフト部の両端にそれぞれ無限軌道が支持される移動手段部とを備え、
前記飛行手段部は前記本体部が回転する力に対して姿勢を制御する飛行制御部を有しており、
前記シャフト部は、飛行中に作用する慣性回転力によっては回転せず、前記飛行制御部による回転防止制御力が作用した際には回転が生じるように設定された抵抗部を介して回転可能に支持されているものであって、
前記抵抗部は、前記シャフト部の支持軸と前記本体部側の軸受部との間に介在される摩擦材であるとともに、
前記支持軸を挟んだ前記シャフト部の下面からは、それぞれ下方に長さが異なる長突起部と短突起部とが突出されており、
前記長突起部は前記本体部側の上面に設けられた平面視円弧状の溝部に挿入され、前記短突起部の下端面は前記上面に接触することを特徴とす
る小型無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無限軌道とプロペラとを有する小型無人航空機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、高所などに位置する構造物に接近して各種の検査を実施することが可能なドローンを活用した検査システムが開発されている。このドローンには、カメラ、打音検査装置、鉄筋探査装置などが搭載されて、各種の検査を行うことができる。
【0003】
特に特許文献1に開示された検査システムのドローンには、構造物面を安定して走行することができるように、プロペラの他に構造物面の走行用の無限軌道(クローラ)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6363632号公報
【文献】特許第6199418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無限軌道を設けることで構造物面を安定して走行することができるようになるが、面上を走行しながら機体の進行方向を変える際には、クローラを左右逆方向に回転させることで機体の旋回が行われる。一方、ドローンのフライトコントローラ(飛行制御部)は、想定外の旋回を防止するような制御を行うので両者の制御に齟齬が生じ、機体の安定性が低下して操縦が難しくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、操縦が容易で、旋回時も安定した飛行を行うことが可能な小型無人航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の小型無人航空機は、無限軌道とプロペラとを有する小型無人航空機であって、本体部と、前記本体部に固定された横架部に複数のプロペラが取り付けられる飛行手段部と、前記本体部に対して回転可能に取り付けられるシャフト部の両端にそれぞれ無限軌道が支持される移動手段部とを備え、前記飛行手段部は前記本体部が回転する力に対して姿勢を制御する飛行制御部を有しており、前記シャフト部は、飛行中に作用する慣性回転力によっては回転せず、前記飛行制御部による回転防止制御力が作用した際には回転が生じるように設定された抵抗部を介して回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記抵抗部は、前記シャフト部の支持軸の両方向の回転に対して作用するバネ材である構成とすることができる。また、前記抵抗部は、前記シャフト部の支持軸と前記本体部側の軸受部との間に介在される摩擦材という構成であってもよい。
【0009】
さらに、前記支持軸を挟んだ前記シャフト部の下面からは、それぞれ下方に長さが異なる長突起部と短突起部とが突出されており、前記長突起部は前記本体部側の上面に設けられた平面視円弧状の溝部に挿入され、前記短突起部の下端面は前記上面に接触する構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明の小型無人航空機は、本体部に対して回転可能に取り付けられるシャフト部の両端にそれぞれ無限軌道が支持される構成となっている。そして、シャフト部は、飛行中に作用する慣性回転力によっては回転せず、飛行制御部による回転防止制御力が作用した際には回転が生じるように設定された抵抗部を介して回転可能に支持されている。
【0011】
このため、プロペラのみによる飛行中は、慣性回転力によるシャフト部のふらつきが抑えられるうえに、無限軌道が構造物面などに密着して旋回をするときに回転防止制御力が作用した際には、シャフト部が回転して飛行制御部による制御とは切り離されるので、操縦が容易で、旋回時も安定した飛行を行うことができる。
【0012】
また、シャフト部の回転を制御するための抵抗部を、支持軸の両方向の回転に対して作用するバネ材とすることで、シャフト部が回転した後に、自動的に正位置に戻すことができるようになる。
【0013】
一方、シャフト部の回転を制御するための抵抗部が、シャフト部の支持軸と本体部側の軸受部との間に介在される摩擦材であれば、簡単な構成で、無限軌道による旋回時の飛行を安定させることができる。
【0014】
さらに、シャフト部の下面に長突起部を設けて平面視円弧状の溝部に挿入しておくことで、回転範囲を限られた角度に制限して、回りすぎを防ぐことができる。また、支持軸を挟んで突起部(長突起部、短突起部)を設けることで、シャフト部の回転を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態の小型無人航空機の構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態の小型無人航空機の概略構成を模式的に説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図3】従来の小型無人航空機の概略構成を模式的に説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】従来の小型無人航空機の無限軌道による旋回時の動作を示した説明図である。
【
図5】本実施の形態の小型無人航空機の無限軌道による旋回時の動作を示した説明図である。
【
図6】実施例1の小型無人航空機の支持軸周辺の構成を模式的に説明する図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図7】実施例1の小型無人航空機の動作を模式的に説明する図であって、(a)は全体平面図、(b)は支持軸周辺の拡大平面図である。
【
図8】実施例2の小型無人航空機の支持軸周辺の構成を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の小型無人航空機1の構成を説明するための斜視図、
図2は小型無人航空機1の概略構成を模式的に説明する平面図と正面図である。
【0017】
本実施の形態の小型無人航空機1を利用すれば、足場のない高所箇所や作業員が近付きにくい箇所の検査などが行えるようになる。例えば橋梁、建築物又は擁壁等の構造物の下面や側面などの表面に対して、打音検査や鉄筋探査などの検査を行うことができるようになる。
【0018】
小型無人航空機1は、本体部11と、複数のプロペラ12が取り付けられる飛行手段部120と、本体部11に対して回転可能に取り付けられるシャフト部32の両端にそれぞれ無限軌道が支持される移動手段部2とを備えている。
【0019】
本実施の形態の本体部11は、長尺状の胴体部11bと、胴体部11bに略直交する方向に向けて張り出された一対の横架部11aと、胴体部11bの下部に連結された脚部11cとを有する。
【0020】
一対の横架部11aは、胴体部11bの長手方向となる前後方向に間隔をおいて取り付けられる。そして、プロペラ12は、一対の横架部11aの左右にそれぞれ一対、合計4箇所に設けられる。プロペラ12はモータ部121の駆動によって回転し、モータ部121には、駆動電源部(図示省略)から電力が供給される。駆動電源部は、バッテリーの他にコンバータなどを備えている。
【0021】
飛行制御部13は、個々のプロペラ12の回転数を制御することで、この小型無人航空機1の浮上や進行や旋回などの飛行を制御する。飛行制御部13はジャイロ等の飛行用センサを有しており、このジャイロ等により小型無人航空機1の姿勢を検出して飛行制御に利用する。
【0022】
また、本実施の形態で説明する小型無人航空機1は、GPSアンテナ14を有しており、このGPSアンテナ14を介して受信したGPS通信衛星からの情報に基づいて、飛行制御部13が小型無人航空機1の姿勢制御及び飛行制御を行う。
【0023】
さらに、飛行制御部13は無線通信部を有しており、地上側の操縦機(図示省略)などとの間で無線通信を行い、種々の信号や情報の送受信を行う。飛行制御部13には予め航路などの飛行データを記憶させておくこともできるが、操縦機などを介して地上から操作することもできる。
【0024】
小型無人航空機1の前端部には、例えば構造物の表面を観察するためのカメラ15を取り付けることができる。カメラ15により撮像された画像は、飛行制御部13を介して操縦機に送信される。また図示していないが、検査の目的に応じて、打音検査装置や鉄筋探査装置などの検査装置を、小型無人航空機1に搭載することができる。
【0025】
移動手段部2を支持するシャフト部32は、胴体部11bの長手方向の中央に設けられた基台部3に軸受された支持軸31によって回転可能に支持される。要するに、シャフト部32の長手方向の中心に支持軸31の上端が接続される。すなわち上下方向に延伸される支持軸31は、本体部11側に設けられる基台部3に対して平面視で回転自在の回転軸であり、支持軸31の回転に伴って上端に固定されたシャフト部32も回転する。
【0026】
そして、シャフト部32の両端には、移動手段部2を構成する無限軌道となる一対のクローラ21がそれぞれ設けられる。無限軌道は、クローラ21と、このクローラ21が架け回された複数個のプーリ22と、これらプーリ22のうちの一つに接続して回転駆動させるためのモータ及びギアボックス(いずれも図示省略)とを有する。
【0027】
そして、クローラ21の表面が構造物などの表面に接触した状態でプーリ22が回転駆動されることで、このプーリ22に架け回されているクローラ21が移動し、これにより小型無人航空機1をクローラ21の長さ方向に沿って移動させることができる。
【0028】
この移動手段部2の制御は、例えば飛行制御部13とは別に設けられた制御部(図示省略)によって行われる。また、回転センサ等によってプーリ22の回転量を計測することで、小型無人航空機1の移動手段部2による移動距離のデータを得ることができる。
【0029】
クローラ21の表面は、摩擦係数が高くなるように形成されている。すなわち、浮力で構造物面に押し付けられた小型無人航空機1を、クローラ21の回転駆動で走行させようとすれば、ある程度の摩擦抵抗が必要になる。クローラ21の表面は、ゴム、微細な吸盤構造、超微細毛構造(ファンデルワールス力利用)など、吸着性能の高い構造にすることができる。
【0030】
ここで、本実施の形態の小型無人航空機1の構成を理解しやすくするために、
図3及び
図4を参照しながら、従来の小型無人航空機a1の無限軌道部a14とプロペラa12による飛行制御との関係について説明する。従来の小型無人航空機a1は、
図3(a),(b)に示すように、本体部a11と、複数のプロペラa12と、クローラなどの無限軌道部a14とを備えている。
【0031】
従来の本体部a11は、長尺状の胴体部に略直交する方向に向けて張り出された一対の横架部a13と、胴体部の下部に連結された脚部a15とを有する。一対の横架部a13には、胴体部を挟んで左右にそれぞれ一対、合計4箇所にプロペラa12が設けられている。
【0032】
このプロペラa12は、飛行制御部によって回転数が制御され、小型無人航空機a1の浮上や進行や旋回などの飛行が制御される。そして、従来の小型無人航空機a1では、このプロペラa12が取り付けられた横架部a13の両側の端部に、それぞれ一対の無限軌道部a14が取り付けられる。
【0033】
このような構成の従来の小型無人航空機a1の一対の無限軌道部a14を構造物面に付着させて、一対の無限軌道部a14により旋回動作を行う場合について、
図4を参照しながら説明する。
【0034】
例えば、一対の無限軌道部a14が構造物面に付着した状態で、
図4の左半分に示したように、左側の無限軌道部a14を前進させて右側の無限軌道部a14を後退させると、小型無人航空機a1は、右半分に示したように時計回りに旋回し始める。
【0035】
この小型無人航空機a1の旋回は、無限軌道部a14と同じ横架部a13に取り付けられたプロペラa12を制御する飛行制御部のジャイロなどによっても検知される。飛行制御部は、飛行時の小型無人航空機a1の姿勢を制御するための制御部であるが、無限軌道部a14による旋回動作によって飛行制御部が想定外の旋回力を検知した場合でも、姿勢を制御しようとする。
【0036】
要するに旋回力を検知した飛行制御部は、図示した右下のプロペラa12から反時計回りに回転数を「速い→遅い→速い→遅い」と設定して、反時計回りの回転防止制御力を付与することで、検知された時計回りの旋回を相殺しようとする。この無限軌道部a14による時計回りの旋回と、それを防ごうとする飛行制御部の制御によって、小型無人航空機a1の姿勢が不安定な状態になる。一方、転回時に飛行制御部のジャイロ制御をオフにしてしまうと、構造物面から外れたときに姿勢が保てず飛行できなくなるという問題が生じる。
【0037】
そこで、本実施の形態の小型無人航空機1では、上述したようにプロペラ12を取り付ける横架部11aと、移動手段部2を設けるシャフト部32とを別々にして、それぞれ本体部11に接続させた。
【0038】
すなわち、プロペラ12を取り付ける横架部11aは本体部11に固定することで、本体部11と一体に挙動するようにした。一方、移動手段部2は、本体部11に対して回転可能となるように支持軸31にシャフト部32を取り付け、その両端に一対のクローラ21を設けた。要するに、本体部11の向きとクローラ21の向きとを可変とした。
【0039】
例えば
図5の左半分に示したように、移動手段部2の向きの正位置は、一対のクローラ21と胴体部11bとが平行となる向きとする。この向きでクローラ21が構造物面に付着した状態で、左側のクローラ21を前進させて右側のクローラ21を後退させると、小型無人航空機1は時計回りに旋回し始める。
【0040】
このとき支持軸31に対して設けられた抵抗部に作用する力が所定以上になると、
図5の右半分に示したように、本体部11に対してシャフト部32及びクローラ21のみが時計回りに旋回することになる。
【0041】
このようにプロペラ12が取り付けられた本体部11が向きを変えず、シャフト部32及びクローラ21のみが旋回するのであれば、飛行制御部13の回転防止制御力による時計回りの旋回との相殺動作は起きず、小型無人航空機1を安定した姿勢に維持させることができる。
【0042】
さらに、打音検査装置や鉄筋探査装置などの検査用のセンサをシャフト部32に取り付けた場合は、本体部11の向きに関わらず、進行方向となるクローラ21の向きに合わせてセンサの向きを変えて、所望する方向の測定を行うことができるようになる。
【0043】
ここで、支持軸31に対して設けられる抵抗部は、クローラ21が構造物面から離れてフリーな状態になる飛行中において、シャフト部32及び一対のクローラ21によって作用する慣性回転力では回転が起きない大きさ以上の抵抗に設定される。
【0044】
一方、飛行制御部13による回転防止制御力が作用した際には、本体部11に対するシャフト部32の回転が生じて、本体部11の向きとクローラ21の向きとがそれぞれ異なる方向を向けるような抵抗の大きさに設定される。なお、抵抗部の詳細については、別途、実施例で後述する。
【0045】
次に、本実施の形態の小型無人航空機1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の小型無人航空機1は、本体部11に対して回転可能に取り付けられるシャフト部32の両端にそれぞれ無限軌道となるクローラ21が支持される構成となっている。
【0046】
そして、シャフト部32は、飛行中に作用する慣性回転力によっては回転せず、飛行制御部13による回転防止制御力が作用した際には回転が生じるように設定された抵抗部を介して回転可能に支持されている。
【0047】
このため、プロペラ12のみによる飛行中は、慣性回転力によるシャフト部32のふらつきが抑えられるうえに、クローラ21が構造物面などに密着して旋回をするときに回転防止制御力が作用した際には、シャフト部32が回転して飛行制御部13による制御とは切り離されるので、操縦が容易で、転回時も安定した飛行を行うことができる。
【0048】
この結果、小型無人航空機1が打音検査や鉄筋探査などを行う検査装置である場合は、検査効率を高めることができる。また、このように移動手段部2を支持するシャフト部32を回転可能にする変更であれば、飛行制御部13自体に変更を加える必要がなく、汎用性が高い。
【実施例1】
【0049】
以下、前記した実施の形態の小型無人航空機1の抵抗部の構成について、
図6,
図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0050】
本実施例1で説明する抵抗部は、シャフト部32の支持軸31の両方向の回転に対して作用するバネ材によって構成される。このバネ材は、
図6(a)に模式的に示したように、支持軸31が平面視で時計回りに回転したときも反時計回りに回転したときも、ほぼ同じ大きさの復元力を支持軸31に対して作用させる渦巻バネ4である。
【0051】
要するに、支持軸31に回転力が作用しても、渦巻バネ4を伸縮させることができる大きさ未満の力であれば、回転はほとんど起きない。すなわち、渦巻バネ4のバネ剛性は、飛行中に作用するシャフト部32及びクローラ21の慣性回転力では回転がほとんど生じない程度の大きさに設定される。
【0052】
そして、構造物面にクローラ21が付着した状態で回転防止制御力のような大きな力が作用した際には、シャフト部32に時計回り又は反時計回りの回転が生じて、渦巻バネ4が伸長したり収縮したりするが、クローラ21が構造物面から離れると、渦巻バネ4の復元力によって、シャフト部32は正位置に戻ることができる。
【0053】
さらに、本実施例1の支持軸31が設けられる基台部3Aには、
図6(a)に示すように、上面に平面視円弧状の溝部5が設けられる。この溝部5は、中心角が180度の円弧、すなわち半円の大きさに設けられる。
【0054】
また、
図6(b)に示すように、支持軸31を挟んだシャフト部32の下面からは、それぞれ下方に異なる長さの長突起部51と短突起部52とが突出される。支持軸31と長突起部51との距離は、溝部5の半径とほぼ同じで、長突起部51の下端が溝部5に挿入される。
【0055】
一方、支持軸31と短突起部52との距離は、溝部5の半径より少し長い距離に設定される。そして、短突起部52の下端面は、基台部3Aの上面と接触した状態になる。ここで、支持軸31は、基台部3Aに設けられた軸受部33に下部が挿入されて回転自在に支持されている。
【0056】
また、この支持軸31には、渦巻バネ4が接続されており、上述したように所定の大きさ以上の回転力が作用した際に回転するように設定されている。さらに、支持軸31から両側に張り出された長尺状のシャフト部32は、長突起部51と短突起部52とによって支持軸31の両側が支えられた状態で、安定して回転することができる。
【0057】
図7(a)は、実施例1の小型無人航空機1が、移動手段部2による転回によって正位置から90度回転して、本体部11の胴体部11bとシャフト部32とが重なった状態を示している。換言すると、胴体部11bの長手方向に対して、クローラ21の長手方向が直交する方向を向いている。
【0058】
図7(b)は、この状態の支持軸31周辺の拡大平面図である。この図を見るとわかるように、長突起部51が溝部5の端面に接触して、これ以上の旋回が制限された状態になっている。
【0059】
このように構成された実施例1の小型無人航空機1は、シャフト部32の回転を制御するための抵抗部を、支持軸31の両方向の回転に対して作用するように接続された渦巻バネ4によって形成しているので、シャフト部32が回転した後に、自動的に正位置に戻すことができる。
【0060】
さらに、シャフト部32の下面に長突起部51を設けて平面視円弧状の溝部5に挿入しておくことで、回転範囲を限られた角度に制限して、回りすぎを防ぐことができる。また、支持軸31を挟んで長突起部51と短突起部52を設けてシャフト部32を下から支えることで、シャフト部32を基台部3Aの上面に対して平行に安定して回転させることができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0061】
以下、前記した実施の形態の小型無人航空機1の実施例1とは異なる抵抗部の構成について、
図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0062】
本実施例2で説明する抵抗部は、シャフト部32の支持軸31と本体部11側となる基台部3Bの軸受部33との間に介在される摩擦材である。すなわち、軸受部33と支持軸31との隙間に、円環状の摩擦ゴム6などを摩擦材として介在させることで、支持軸31の自由な回転は制限されることになる。
【0063】
摩擦ゴム6は、飛行中に作用するシャフト部32及びクローラ21の慣性回転力では回転がほとんど生じない程度の大きさの抵抗に設定される。そして、構造物面にクローラ21が付着した状態で回転防止制御力のような大きな力が作用した際には、摩擦ゴム6と支持軸31との間に滑りが生じて、シャフト部32が時計回り又は反時計回りに回転することになる。
【0064】
このように構成された実施例2の小型無人航空機1は、シャフト部32の回転を制御するための抵抗部が、シャフト部32の支持軸31と本体部11側となる基台部3Bの軸受部33との間に介在される摩擦ゴム6であるため、簡単に製作することができ、クローラ21による転回時においても飛行を安定させることができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0065】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0066】
例えば、前記実施の形態では、橋梁や高層建築物などの構造物面の検査を行う小型無人航空機1を例に説明したが、これに限定されるものではなく、検査以外の目的にも本発明の小型無人航空機1を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :小型無人航空機
11 :本体部
11a :横架部
120 :飛行手段部
12 :プロペラ
13 :飛行制御部
2 :移動手段部
21 :クローラ(無限軌道)
31 :支持軸
32 :シャフト部
33 :軸受部
4 :渦巻バネ(抵抗部、バネ材)
5 :溝部
51 :長突起部
52 :短突起部
6 :摩擦ゴム(抵抗部、摩擦材)