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特許7365320運転パターン選択装置及び運転パターン選択方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】運転パターン選択装置及び運転パターン選択方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/60 20220101AFI20231012BHJP
   B61L 27/12 20220101ALI20231012BHJP
【FI】
B61L27/60
B61L27/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020195940
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084219
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】小川 知行
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142292(JP,A)
【文献】国際公開第2013/057969(WO,A1)
【文献】特開平02-023003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/60
B61L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択する運転パターン選択装置であって、
前記列車の走行位置及び走行速度の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段の取得情報に基づいて、定速運転と惰行運転とのどちらか又は組み合わせにより、前記走行位置からN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出する算出手段と、
前記運転パターン候補それぞれの前記N駅先までの各通過駅の通過予測時刻を予測し、当該通過予測時刻を用いて前記運転パターン候補それぞれを評価することで、前記複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択する選択手段と、
を備え、前記取得手段による情報取得に応じて、前記複数の運転パターン候補の算出及び前記推奨運転パターンの選択を随時行う運転パターン選択装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記選択手段により前回選択された前記推奨運転パターンを、前記複数の運転パターン候補に含めて算出する、
請求項1に記載の運転パターン選択装置。
【請求項3】
前記算出手段は、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、定速運転から惰行運転への移行位置を、信号建植位置として当該運転パターン候補を算出する、
請求項1又は2に記載の運転パターン選択装置。
【請求項4】
前記算出手段は、1回の惰行運転に複数の信号建植位置が含まれるように当該惰行運転の区間を定めて前記運転パターン候補を算出する、
請求項1~3の何れか一項に記載の運転パターン選択装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記N駅先の通過駅を当該通過駅に定められた所与の基準通過時刻に定速運転で通過する運転パターンを、前記複数の運転パターン候補に含めて算出する、
請求項1~4の何れか一項に記載の運転パターン選択装置。
【請求項6】
前記算出手段は、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、運転の移行回数が所定の最大回数以下となる運転パターン候補を算出する、
請求項1~5の何れか一項に記載の運転パターン選択装置。
【請求項7】
前記選択手段は、定速運転の区間に含まれる下り勾配の割合を用いて、前記運転パターン候補それぞれを評価する、
請求項1~6の何れか一項に記載の運転パターン選択装置。
【請求項8】
複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択する運転パターン選択方法であって、
前記列車の走行位置及び走行速度の情報を取得することと、
前記取得された情報に基づいて、定速運転と惰行運転とのどちらか又は組み合わせにより、前記走行位置からN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出することと、
前記運転パターン候補それぞれの前記N駅先までの各通過駅の通過予測時刻を予測し、当該通過予測時刻を用いて前記運転パターン候補それぞれを評価することで、前記複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択することと、
を含み、前記情報の取得に応じて、前記複数の運転パターン候補の算出及び前記推奨運転パターンの選択を随時行う運転パターン選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択する運転パターン選択装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、列車の運転士に対する運転支援の技術が知られている。運転支援の1つとして、例えば、現在の列車の走行位置や走行速度等から、残りの走行区間の走行のシミュレーションを複数の走行モードにより行い、駅の到着時刻やエネルギー消費量等の評価により選択した最適なシミュレーション結果の走行パターンとともに、どのような運転操作を行えばよいかを示す運転指令(例えば、7ノッチで力行運転)を、表示する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-23003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援の代表的な技術は、ある出発駅から出発する前に次の停車駅までの最適な運転パターンを走行シミュレーションにより算出し、その運転パターンに従って走行するように運転士の運転操縦を支援するものである。出発駅から予定時刻で出発し、定められた着時刻及び停車位置に停車駅で停車させる厳密且つ最適な運転パターンを算出する出発駅から到着駅までの1駅分の速度制御である。
【0005】
しかし、列車には、特急や快速、貨物列車など、複数の通過駅を連続して通過する列車がある。このような列車を対象として、上述した出発駅から次の停車駅までの1駅分の運転パターンを算出して運転支援を行おうとした場合、出発駅から次の停車駅までの間の区間が長いため、運転パターンの算出に要する演算量の増加が避けられない。
【0006】
また、出発駅から次の停車駅まで複数の通過駅を通過する長い区間を走行する間に、出発駅を出発する前に算出した運転パターンを変更する必要が生じる場合も起こり得た。
【0007】
一方、列車の走行位置や走行速度が時々刻々と変化する運転操作中に、走行状況・運転状況に応じて可変且つリアルタイムに運転支援を行う技術を実現する場合に、上述した出発駅から次の停車駅までの1駅分の速度制御と同じような厳密且つ最適な運転パターンを算出するには多大な演算量を高速で処理する必要があった。だからといって適時・適切なリアルタイムな運転支援でなければ運転士がその支援を受け容れることは困難である。リアルタイムな運転支援のためには、次の停車駅までの厳密且つ最適な運転パターンを算出せずに、運転士が受け容れ易い何らかの合理的な手法で運転支援を実現する技術が求められる。
【0008】
また、運転支援について説明したが、運転士の運転を補助(半自動制御)或いは自動制御する場合にも適用可能な技術であれば、一層好適な技術となり得る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の通過駅を連続して通過する列車を対象としたリアルタイムな運転パターンの選択を実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明は、
複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択する運転パターン選択装置であって、
前記列車の走行位置及び走行速度の情報を取得する取得手段(例えば、図6の取得部202)と、
前記取得手段の取得情報に基づいて、定速運転と惰行運転とのどちらか又は組み合わせにより、前記走行位置からN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出する算出手段(例えば、図6の算出部204)と、
前記運転パターン候補それぞれの前記N駅先までの各通過駅の通過予測時刻を予測し、当該通過予測時刻を用いて前記運転パターン候補それぞれを評価することで、前記複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択する選択手段(例えば、図6の選択部206)と、
を備え、前記取得手段による情報取得に応じて、前記複数の運転パターン候補の算出及び前記推奨運転パターンの選択を随時行う運転パターン選択装置である。
【0011】
他の発明として、
複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択する運転パターン選択方法であって、
前記列車の走行位置及び走行速度の情報を取得することと(例えば、図7のステップS1)、
前記取得された情報に基づいて、定速運転と惰行運転とのどちらか又は組み合わせにより、前記走行位置からN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出することと(例えば、図7のステップS5)、
前記運転パターン候補それぞれの前記N駅先までの各通過駅の通過予測時刻を予測し、当該通過予測時刻を用いて前記運転パターン候補それぞれを評価することで、前記複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択することと(例えば、図7のステップS7~S11)、
を含み、前記情報の取得に応じて、前記複数の運転パターン候補の算出及び前記推奨運転パターンの選択を随時行う運転パターン選択方法を構成してもよい。
【0012】
第1の発明によれば、複数の通過駅を連続して通過する列車を対象としたリアルタイムな運転パターンの選択を実現することができる。つまり、運転パターン候補を、次の停車駅ではなく途中の通過駅までとするとともに、定速運転と惰行運転との一方又は双方の組み合わせといった限られた運転操縦方法の組み合わせとすることで、算出する運転パターン候補の数を少なくして演算量を低減し、リアルタイムな運転パターンの選択を実現することが可能となる。
【0013】
また、本発明を運転支援に適用する場合には、限られた運転操縦方法の組み合わせとすることで、列車の運転士が受け容れ易い運転パターンを選択することができる。また、定速運転と惰行運転との組み合わせとすることで、省エネ運転を実現可能な運転パターンの選択を実現することができる。また、通過駅の通過予測時刻を用いて複数の運転パターン候補それぞれを評価することで、通過駅の定時通過を確保して定時性という安定輸送の観点を満たす運転パターンの選択を実現することができる。また、2駅以上先の通過駅を通過する運転パターン候補とすることで、1駅先の通過駅の通過前後の運転操縦方法の変更を回避し、運転士にとって円滑な運転操縦が可能な運転パターンの選択を実現することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記算出手段は、前記選択手段により前回選択された前記推奨運転パターンを、前記複数の運転パターン候補に含めて算出する、
運転パターン選択装置である。
【0015】
第2の発明によれば、前回選択された推奨運転パターンを運転パターン候補に含めて算出することで、前回の推奨運転パターンをそのまま引き継ぐことが可能となり、推奨運転パターンの変更を少なくして運転士にとって運転し易い運転パターンの選択を実現することができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記算出手段は、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、定速運転から惰行運転への移行位置を、信号建植位置として当該運転パターン候補を算出する、
運転パターン選択装置である。
【0017】
第3の発明によれば、運転士にとって信号建植位置は分かり易い目印であるため、定速運転から惰行運転への移行タイミングを把握し易く運転し易い運転パターンの選択を実現することができる。
【0018】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記算出手段は、1回の惰行運転に複数の信号建植位置が含まれるように当該惰行運転の区間を定めて前記運転パターン候補を算出する、
運転パターン選択装置である。
【0019】
第4の発明によれば、1回の惰行運転に複数の信号建植位置が含まれるように運転パターン候補を算出することで、一定長以上の惰行運転の区間を確保することができ、短時間での運転操縦の変更を回避し、運転士にとって運転し易い運転パターンの選択を実現することができる。
【0020】
第5の発明は、第1~第4の何れかの発明において、
前記算出手段は、前記N駅先の通過駅を当該通過駅に定められた所与の基準通過時刻に定速運転で通過する運転パターンを、前記複数の運転パターン候補に含めて算出する、
運転パターン選択装置である。
【0021】
第5の発明によれば、通過駅に定められた基準通過時刻に定速運転で通過する運転パターンを運転パターン候補に含めて算出することができる。
【0022】
第6の発明は、第1~第5の何れかの発明において、
前記算出手段は、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、運転の移行回数が所定の最大回数以下となる運転パターン候補を算出する、
運転パターン選択装置である。
【0023】
第6の発明によれば、運転の移行回数が最大回数以下となる運転パターン候補を算出することで、頻繁な運転操縦方法の変更を回避し、運転士にとって運転し易い運転パターンの選択を実現することができる。
【0024】
第7の発明は、第1~第6の何れかの発明において、
前記選択手段は、定速運転の区間に含まれる下り勾配の割合を用いて、前記運転パターン候補それぞれを評価する、
運転パターン選択装置である。
【0025】
第7の発明によれば、定速運転の区間に含まれる下り勾配の割合を用いて運転パターン候補それぞれを評価することで、例えば、本発明を運転支援に適用するならば、運転士にとって運転し易い運転パターンの選択を実現することができる。つまり、下り勾配では定速運転の出力を0に絞り込んでも列車が加速してしまうことから、下り勾配を含む区間で列車を定速運転させるような運転操縦は、平坦な区間での運転操縦と比較して複雑になり易い。このため、例えば、定速運転の区間に含まれる下り勾配の割合が高い(大きい)運転パターン候補については、推奨運転パターンとして選択され難いような評価をすることで、運転士にとって運転し易いか否かを推奨運転パターンの選択基準に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】運転パターン候補の一例。
図2】運転パターンの種類の一例。
図3】算出条件テーブルの一例。
図4】惰行運転から定速運転への移行位置の算出の説明図。
図5】評価係数テーブルの一例。
図6】運転パターン選択装置の機能構成図。
図7】運転パターン選択処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0028】
[概要]
本実施形態の運転パターン選択装置1は、複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターンを選択するための装置である。具体的には、運転パターン選択装置1は、当該装置が搭載される列車の現在の走行位置及び走行速度の情報を取得し、取得情報に基づきN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出し、N駅先の通過駅の通過予測時刻を用いて運転パターン候補それぞれを評価することでこれらの複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択し、選択した推奨運転パターンを列車の運転士に対して提示することを随時行う。従って、本実施形態の運転パターン選択装置1は、運転士の運転を支援する運転支援装置ということもできる。本実施形態ではN=2の例を説明するが、Nは3以上であってもよい。
【0029】
図1は、運転パターン候補の一例を示す図である。図1では、横軸(右方向)を列車の走行方向に沿った位置、縦軸(上方向)を列車の走行速度として、列車の現在の走行位置(列車位置)から2駅(N=2)先の通過駅である次々駅を通過する複数の運転パターン候補の例を示している。運転パターン候補は、定速運転と惰行運転とのどちらか一方又は双方を組み合わせた運転パターンであって、定速運転と惰行運転との間の移行回数が所定の最大回数以下となる運転パターンである。また、運転パターン候補における定速運転から惰行運転の移行位置は、信号建植位置である。本実施形態では、定速運転と惰行運転との間を移行する最大回数を2回として説明するが、3回以上であってもよい。
【0030】
図1では、定速運転と惰行運転との間を移行する最大回数を2回としたことによる5つの運転パターン候補を示している。つまり、列車の走行位置から次々駅までには2箇所の信号建植位置(第1信号建植位置及び第2信号建植位置)があり、定速運転のみの運転パターン候補(a)と、定速運転から2つ目の信号建植位置(第2信号建植位置)で惰行運転に移行する運転パターン候補(b)と、1つ目の信号建植位置(第1信号建植位置)で惰行運転に移行した後、次駅と2つ目の信号建植位置(第2信号建植位置)との間の位置で定速運転に移行する運転パターン候補(c)と、惰行運転から、2つ目の信号建植位置(第2信号建植位置)と次々駅との間で定速運転に移行する運転パターン候補(d)と、惰行運転のみの運転パターン候補(e)とを示している。
【0031】
また、運転パターン候補それぞれについて、各駅の基準通過時刻(時刻表で定められる通過時刻のこと)に対する、当該運転パターン候補に従って走行した場合の当該駅の通過予測時刻の遅延時分を併せて示している。そして、これらの運転パターン候補の中から、次駅を5秒早く通過し(5s早通)、次々駅を10秒遅れて通過する(10s延通)運転パターン候補(b)が、推奨運転パターンとして選択されている。図1では、推奨運転パターンであることを示す破線を、運転パターン候補(b)に沿って示している。
【0032】
図2は、運転パターン候補として算出する運転パターンの種類を示す図である。運転パターンは、定速運転と惰行運転との一方又は双方の組み合わせであり、定速運転と惰行運転との間の移行回数は2回以下である。本実施形態では、運転パターンの種類を、図2に示す5種類としている。図2では、5種類の運転パターンそれぞれについて、列車の走行位置から次々駅までの区間における走行速度の推移を、平地を走行する場合の概念図として示している。本実施形態における運転パターンは、図2において上から順に、定速運転のみの運転パターン(1)、惰行運転のみの運転パターン(2)、定速運転から惰行運転に移行する運転パターン(3)、惰行運転から定速運転に移行する運転パターン(4)、定速運転から惰行運転に移行した後、再度定速運転に移行する運転パターン(5)の5種類である。定速運転と惰行運転との間の移行回数は、運転パターン(1),(2)は0回、運転パターン(3),(4)は1回、運転パターン(5)は2回である。
【0033】
運転パターン選択装置1は、運転パターンの種類それぞれについて、定速運転と惰行運転との間の移行位置として所定の条件を満たす位置を求めることで、同じ種類の運転パターンであったとしても複数の運転パターン候補を算出する。
【0034】
図3は、運転パターン候補の算出条件を定めた算出条件テーブル350の一例を示す図である。図3によれば、算出条件テーブル350は、算出条件の条件番号に対応付けて、運転パターンの種類と、定速運転から惰行運転への移行位置の条件と、惰行運転から定速運転への移行位置の条件とを定めている。なお、定速運転から惰行運転に移行する運転パターン(3)については、運転パターン(5)に含める。運転パターン(5)において惰行運転から定速運転への移行位置が次々駅の先となった場合に、次々駅までの区間でみれば運転パターン(3)に相当するからである。
【0035】
運転パターンの種類及び運転パターン候補には、図2に示した5種類の運転パターンによる運転パターン候補に加えて、現在の運転パターン(つまり、前回の推奨運転パターン)を含める。現在の運転パターンを含めるのは、推奨運転パターンが頻繁に変更されることは運転士にとって望ましくないためである。
【0036】
運転パターン選択装置1は、現在の列車の走行位置及び走行速度に基づく運転曲線予測シミュレーションを行って、算出条件それぞれを満たす運転パターン候補を算出する。列車の走行位置や走行速度、信号建植位置や制限速度等により、算出条件を満たす運転パターン候補が存在しない場合もあることから、本実施形態では、最大14個の運転パターン候補が算出されることになる。
【0037】
定速運転から惰行運転への移行位置を算出する条件は、運転パターン(5)にのみ適用される(より正確には運転パターン(3)にも適用される)条件であり、信号建植位置であること、である。列車の走行位置から次々駅までには複数の信号建植位置があることから、これらの複数の信号建植位置それぞれを移行位置(より正確には移行の候補位置)として運転パターン候補を算出する。信号建植位置は、運転士にとって分かり易い位置であり、また、概ね所定距離以上の間隔があるので移行位置として適切だからである。なお、図3に示す移行位置の条件とする信号建植位置は一例であり、これより多くてもよいし少なくてもよい。
【0038】
図3に示す「1つ先の信号建植位置」とは、現在の走行位置から1つ先に位置する信号建植位置という意味である。運転パターン選択装置1は、運転パターン候補の算出及び推奨運転パターンの選択を随時行う(つまり、推奨運転パターンを随時更新する)ことから、走行位置に近い信号建植位置についてはそれぞれを移行位置とし、遠い信号建植位置については適当に間引いて移行位置としている。図3の例では、6つ先までの信号建植位置については各位置を移行位置とし、それより先の信号建植位置については1つおきの位置を移行位置としている。
【0039】
惰行運転から定速運転への移行位置を算出する条件は、運転パターン(4)と運転パターン(5)とに適用され、別々に定められる。運転パターン(4)に適用される条件には2つある。1つは、現在の走行位置から先であることである。この条件は惰行運転を継続しているケースを想定した場合の条件であり、現在の走行位置から先の位置であれば、定速運転への移行を可としている。もう1つの条件は、現在の走行位置から2つ先の信号建植位置よりも更に先であることである。この条件は、移行前の惰行運転の区間に複数(本実施形態では「2」)の信号建植位置が必ず含まれる位置であること、と言い換えることもできる。これは、頻繁な運転操縦方法の変更を回避するためである。
【0040】
惰行運転から定速運転への移行位置を算出する条件のうち、運転パターン(5)に適用される条件は、定速運転から惰行運転へ移行した移行位置から2つ先の信号建植位置よりも更に先であること、である。
【0041】
運転パターン(4)及び運転パターン(5)ともに、惰行運転から定速運転への移行位置は、定速運転への移行位置とされる範囲内であって、移行後の定速運転における走行速度が、次々駅を通過するときの定時通過速度となるような位置として算出される。ある駅の定時通過速度とは、当該駅を所定の基準通過時刻に通過するための速度であり、現在の走行位置から当該駅までの距離を、現在時刻から当該駅の基準通過時刻までの残り時間で除算して算出される。
【0042】
図4は、惰行運転から定速運転への移行位置の算出方法を説明する図である。図4では、横軸(右方向)を列車の進行方向に沿った位置、縦軸(上方向)を列車の走行速度としている。また、図4の例は、図3における条件番号「4」の条件に該当する移行位置を算出する場合の算出方法についての例を示しているが、条件番号「3」や「5」~「13」についても同様である。図4に示す例では、走行位置から2つ先の信号建植位置(第2信号建植位置)P2から先の位置(範囲)が、定速運転への移行位置となる。
【0043】
図4の上側に示すように、先ず定速運転への移行位置(範囲)の始点位置(第2信号建植位置)P2を最初の予測位置とし、現在の列車の走行位置(列車位置)から予測位置まで惰行運転を行ったときの予測運転曲線を、算出する。次いで、その予測運転曲線に従って惰行運転で走行した場合の予測位置での走行速度V2及び到達時刻T2(図示せず)を求める。そして、予測位置における次々駅の定時通過速度Vtを求める。予測位置における次々駅の定時通過速度Vtは、予測位置から次々駅までの距離ΔLを、予測位置の到達時刻T2から次々駅の基準通過時刻までの残り時間ΔTで除算して算出する。予測位置での走行速度V2がこの定時通過速度Vtに一致する(正確には、定時通過速度Vtを含む所定の速度範囲内である)ならば、その予測位置を、定速運転への移行位置とする。予測位置での走行速度V2が定時通過速度Vtに一致しないならば、図4の中央及び下側に示すように、その予測位置での走行速度がその予測位置における次々駅の定時通過速度に一致するまで、予測位置を次々駅に向かう方向に少しずつ移動させてゆく。予測位置を次々駅まで移動させても走行速度Vと定時通過速度Vtとが一致しないならば、条件番号「4」の算出条件を満たさないとして、条件番号「4」に該当する運転パターン候補については算出しない。或いは、走行速度Vが定時通過速度Vtに最も近づいた位置を定速運転への移行位置とした運転パターンを、条件番号「4」に該当する運転パターン候補として算出することとしてもよい。
【0044】
運転パターン選択装置1は、各算出条件(1)~(14)に対応する運転パターン候補を算出すると、算出した運転パターン候補それぞれについて評価値を算出し、算出した評価値が最小の運転候補パターンを、推奨運転パターンとして選択する。評価値は、次式(1)によって算出する。
評価値=a1×(次駅の遅延時分の絶対値)+a2×(次々駅の遅延時分の絶対値)
+a3×(定速無効時間割合)
+a4×(運転パターン変更フラグ) ・・・(1)
【0045】
式(1)において、次駅の遅延時分とは、次駅の基準通過時刻に対する、運転パターン候補に従って走行した場合の次駅の通過予測時刻の遅延時分である。次々駅の遅延時分も同様に、次々駅の基準通過時刻に対する、運転パターン候補に従って走行した場合の次々駅の通過予測時刻の遅延時分である。運行の定時性の確保のために、各駅の遅延時分の影響を、運転パターン候補の評価に含めている。次駅及び次々駅の基準通過時刻は、予め設定されていることとし、例えば、列車ダイヤで定められる。
【0046】
定速無効時間割合とは、当該運転パターン候補に含まれる定速運転の区間に含まれる下り勾配により定速運転が無効になる時間の割合である。例えば、定速運転の区間の走行時分に対する、当該定速運転の区間のうち下り勾配により定速運転が無効になる走行時分の割合である。走行距離の割合としてもよい。下り勾配では定速運転の出力を0に絞り込んでも列車が加速してしまうことから、下り勾配を含む区間で列車を定速運転させるような運転操縦は、平坦な区間での運転操縦と比較して複雑になり易い。このため、下り勾配での定速運転の影響を、運転パターン候補の評価に含めている。
【0047】
運転パターン変更フラグとは、当該運転パターン候補が現在の運転パターン(つまり、前回の推奨運転パターン)と異なるか否か(つまり、推奨運転パターンが変更されることになるか否か)を示すフラグであり、異なるならば「1」、同じならば「0」となる。運転パターンの頻繁な変更は列車の運転士にとって煩わしく望ましくないことから、運転パターン候補が現在の運転パターンと異なるか否かを運転パターン候補の評価に含めている。
【0048】
a1~a4は係数であり、例えば、図5に示すように定められる。図5は、評価係数テーブル360の一例を示す図である。図5によれば、評価係数テーブル360は、式(1)における係数a1~a4それぞれについての値を定めている。図5の例では、次駅遅延係数a1と次々駅遅延係数a2とを同じ値としている。しかし、評価値が最小の運転候補パターンを推奨運転パターンとして選択することから、次駅遅延係数a1より次々駅遅延係数a2を小さい値として、列車の走行位置に近いほうの次駅での遅延の影響を優先して評価するようにしてもよい。
【0049】
[機能構成]
図6は、運転パターン選択装置1の機能構成の一例である。図6によれば、運転パターン選択装置1は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成され、一種のコンピュータシステムとして実現される。なお、運転パターン選択装置1は、1台のコンピュータで実現してもよいし、複数台のコンピュータを接続して構成することとしてもよい。
【0050】
操作部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等の音出力装置で実現され、処理部200からの音信号に基づく各種音出力を行う。通信部108は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される通信装置であり、所与の通信ネットワークに接続して外部装置とのデータ通信を行う。
【0051】
処理部200は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置や演算回路で実現されるプロセッサーであり、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、操作部102や通信部108からの入力データ等に基づいて、運転パターン選択装置1の全体制御を行う。
【0052】
また、処理部200は、機能的な処理ブロックとして、取得部202と、算出部204と、選択部206と、提示部208とを有する。処理部200が有するこれらの各機能部は、処理部200がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現することも、専用の演算回路で実現することも可能である。本実施形態では、前者のソフトウェア的に実現することとして説明する。
【0053】
取得部202は、列車の走行位置及び走行速度の情報を取得する。取得する走行位置は、キロ程で表現される走行位置である。例えば、運転パターン選択装置1がGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えることとし、そのGNSS受信機の測位演算により列車の走行位置及び走行速度を取得することができる。GNSS受信機の測位演算により得られる位置は緯度経度(又は緯度経度高度)で表される位置であるので、これを、予め用意された変換テーブルに従ってキロ程に変換することで、キロ程で表現された走行位置を取得する。取得した走行位置及び走行速度の情報は、位置速度データ370として蓄積記憶される。
【0054】
算出部204は、取得部202の取得情報に基づいて、定速運転と惰行運転とのどちらか又は組み合わせにより、走行位置からN駅(N≧2)先の通過駅を通過する複数の運転パターン候補を算出する。また、選択部206により前回選択された推奨運転パターンを、複数の運転パターン候補に含めて算出する。また、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、定速運転から惰行運転への移行位置を、信号建植位置として当該運転パターン候補を算出する。また、1回の惰行運転に複数の信号建植位置が含まれるように当該惰行運転の区間を定めて運転パターン候補を算出する。また、N駅先の通過駅を当該通過駅に定められた所与の基準通過時刻に定速運転で通過する運転パターンを、複数の運転パターン候補に含めて算出する。また、定速運転と惰行運転とを組み合わせた運転パターン候補を算出する際に、運転の移行回数が所定の最大回数以下となる運転パターン候補を算出する。
【0055】
具体的には、算出部204は、現在の列車の走行位置をもとに、駅データ320を参照して、次駅及び次々駅を判定する。そして、時刻表データ330を参照して、次駅及び次々駅それぞれの基準通過時刻を判定する。駅データ320は、対象線区の各駅の駅名やキロ程で表現された位置等を格納したデータである。時刻表データ330は、対象線区の各駅について、停車駅であれば上り・下りの進行方向別の到着時刻及び出発時刻等が格納され、通過駅であれば上り・下りの進行方向別の通過時刻等が格納されたデータである。
【0056】
そして、路線データ310や列車諸元データ340を用いた運転曲線予測シミュレーションを行って、現在の走行位置及び走行速度から次々駅を通過する運転パターンであって、算出条件テーブル350(図3参照)で定められる各算出条件に対応する複数の運転パターン候補を算出する。路線データ310は、対象線区における勾配や曲線、制限速度、信号建植位置等を、キロ程で表現された位置に対応付けて格納したデータである。列車諸元データ340は、運転パターンの選択の対象となる列車の加速力や減速力、最高速度、走行抵抗等の走行性能、編成両数、車両質量等の車両諸元を格納したデータである。算出した運転パターン候補は、運転パターン候補データ390として更新記憶される。
【0057】
選択部206は、運転パターン候補それぞれのN駅先までの各通過駅の通過予測時刻を予測し、当該通過予測時刻を用いて運転パターン候補それぞれを評価することで、複数の運転パターン候補の中から推奨運転パターンを選択する。また、定速運転の区間に含まれる下り勾配の割合を用いて、運転パターン候補それぞれを評価する。
【0058】
具体的には、算出部204が算出した複数の運転パターン候補それぞれについて、式(1)及び評価係数テーブル360(図5参照)に従って評価値を算出し、評価値が最小となる運転パターン候補を、推奨運転パターンとして選択する。選択した推奨運転パターンは、推奨運転パターンデータ380として更新記憶される。
【0059】
提示部208は、選択部206が選択した推奨運転パターンを、列車の運転士に提示する。具体的には、推奨運転パターンに従って走行するために、現在の推奨する運転操縦方法(惰行運転又は定速運転)や、次の運転操縦方法への移行位置、定速運転をする場合の走行速度、次駅や次々駅の通過予測時刻や予測される遅延時分、定時通過速度等を、表示部104におけるテキスト表示や音出力部106からの音声出力によって運転士に提示する。更に、表示部104において、推奨運転パターンをグラフ表示した表示画面を表示するようにしてもよい。
【0060】
記憶部300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のIC(Integrated Circuit)メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置で実現され、処理部200が運転パターン選択装置1を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が実行した演算結果や、操作部102や通信部108からの入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、運転パターン選択プログラム302と、路線データ310と、駅データ320と、時刻表データ330と、列車諸元データ340と、算出条件テーブル350と、評価係数テーブル360と、位置速度データ370と、推奨運転パターンデータ380と、運転パターン候補データ390とが記憶される。
【0061】
運転パターン選択プログラム302は、運転パターン選択装置1が読み出して実行することで、複数の通過駅を連続して通過する列車の運転パターン選択方法の処理である運転パターン選択処理(図7参照)を運転パターン選択装置1に実現させるためのプログラムである。
【0062】
[処理の流れ]
図7は、運転パターン選択処理の流れを説明するフローチャートである。図7によれば、先ず、取得部202が、現在の列車の走行位置及び走行速度を取得する(ステップS1)。次いで、算出部204が、取得された列車の走行位置から次駅及び次々駅を判定し、判定した次駅及び次々駅の各駅の基準通過時刻を取得する(ステップS3)。
【0063】
続いて、運転曲線予測シミュレーションを行って、走行位置及び走行速度から次々駅を通過する運転パターンであって、算出条件テーブル350で定められる各算出条件に対応する運転パターン候補を算出する(ステップS5)。次いで、選択部206が、算出された複数の運転パターン候補それぞれについて、当該運転パターン候補に従って走行した場合の次駅及び次々駅の各駅の通過予測時刻を算出する(ステップS7)。
【0064】
続いて、複数の運転パターン候補それぞれの評価値を算出し(ステップS9)、複数の運転パターン候補の中から、評価値が最小の運転パターン候補を、推奨運転パターンとして選択する(ステップS11)。そして、提示部208が、選択された推奨運転パターンを運転士に対して提示する(ステップS13)。
【0065】
その後、処理部200は、例えば停車駅への到着といった運転パターンの選択の終了条件を満たすかを判定し、満たさないならば(ステップS15:YES)、ステップS1に戻る。終了条件を満たすならば(ステップS15:NO)、本処理を終了する。本処理は、選択した推奨運転パターンを運転士に提示することから、運転パターン選択方法の処理であるとともに、運転支援方法の処理であるともいえる。
【0066】
[作用効果]
このように、本実施形態の運転パターン選択装置1によれば、複数の通過駅を連続して通過する列車を対象としたリアルタイムな運転パターンの選択を実現することができる。つまり、運転パターン候補を定速運転と惰行運転との一方又は双方の組み合わせといった限られた運転操縦方法の組み合わせとすることで、算出する運転パターン候補の数を少なくして演算量を低減し、リアルタイムな運転パターンの選択を実現することができる。
【0067】
また、限られた運転操縦方法の組み合わせとすることで、列車の運転士が受け容れ易い運転パターンを選択することができる。また、定速運転と惰行運転との組み合わせとすることで、省エネ運転を実現可能な運転パターンを選択することができる。また、通過駅の通過予測時刻を用いて複数の運転パターン候補それぞれを評価することで、通過駅の定時通過を確保して定時性という安定輸送の観点を満たす運転パターンの選択を実現することができる。また、2駅以上先の通過駅を通過する運転パターン候補とすることで、1駅先の通過駅の通過前後の運転操縦方法の変更を回避し、運転士にとって円滑な運転操縦が可能な運転パターンの選択を実現することができる。
【0068】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0069】
(A)N駅先の通過駅
上述の実施形態では、N駅(N≧2)先の通過駅として、2駅(N=2)先である次々駅までの運転パターン候補を算出するとしたが、3駅先、4駅先といったように、3駅以上(N≧3)先の通過駅までの運転パターン候補を算出するとしてもよい。
【0070】
(B)惰行運転の区間に含まれる信号建植位置の数
上述の実施形態では、1回の惰行運転の区間に含まれる信号建植位置の数を「2」としたが、「3」以上としてもよい。
【0071】
(C)運転の移行回数
上述の実施形態では、運転パターン候補における運転の移行回数の最大回数を「2」としたが、「3」以上としてもよい。
【0072】
(D)信号建植位置
上述の実施形態では、定速運転から惰行運転への移行位置を信号建植位置としたが、標識等、運転士が視認可能な何らかの建造物の設置位置としてもよい。更には、何らかの建造物の設置位置に限らず、適当な距離間隔で定めた位置そのものとしてもよい。また、惰行運転の区間に含まれる信号建植位置の数についても、何らかの建造物の設置位置の数としてもよいし、更には、設置位置の数ではなく所定距離以上としてもよい。
【0073】
(E)自動列車運転
上述の実施形態では、選択した推奨運転パターンを列車の運転士に提示して運転士に対する運転支援を行うものとしたが、列車の自動運転に対する運転支援を行うようにしてもよい。つまり、運転パターン選択装置が、推奨運転パターンに従った列車の自動運転を行う自動運転装置を構成するようにしてもよいし、推奨運転パターンを自動列車運転装置に入力するようにしてもよい。自動運転の場合、推奨運転パターンに従った運転が行われることから、推奨運転パターンの更新間隔を長く(例えば、駅通過毎)することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…運転パターン選択装置
200…処理部
202…取得部
204…算出部
206…選択部
208…提示部
300…記憶部
302…運転パターン選択プログラム
310…路線データ
320…駅データ
330…時刻表データ
340…列車諸元データ
350…算出条件テーブル
360…評価係数テーブル
370…位置速度データ
380…推奨運転パターンデータ
390…運転パターン候補データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7