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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】チップ状電子部品用キャリアテープ台紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20231012BHJP
   D21H 15/00 20060101ALI20231012BHJP
   B65D 85/90 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
D21H27/00 E
D21H15/00
B65D85/90 200
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020204877
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092204
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227327(JP,A)
【文献】特開2012-136273(JP,A)
【文献】特開2011-213419(JP,A)
【文献】特開2005-179797(JP,A)
【文献】特開2005-088900(JP,A)
【文献】特開2017-133129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30-85/48
B65D 85/86
B65D 85/90
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主成分とする表面層、中間層および裏面層の順に配置された3層以上の基紙を有する多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、
1)密度が0.88g/cm以下であり、
2)針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)をパルプ中5質量%以上含有し、
3)ロジン系サイズ剤を含み、その含有量がパルプ100質量部に対して0.15%以下であり、
4)直鎖脂肪酸含有量が1600ppm以下
であることを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項2】
中間層に含まれるパルプの5質量%以上がNBKPであることを特徴とする請求項1に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項3】
前記直鎖脂肪酸が、炭素数が24、26及び28からなる群より選択される炭素数でありかつその含有量が1200ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項4】
全パルプ中、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を85~95質量%、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を5~15質量%とし、さらに、LBKPとして、アカシア材とユーカリ材を、質量比率を10:90~55:45で使用する、請求項1~3のいずれ一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙に関する。具体的には、低密度で柔軟性を有しつつ、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子機器の自動生産化を図るために、プリント基板に対してチップ状電子部品の自動装着がなされている。チップ状電子部品の自動装着工程では、チップ部品実装機などを用いて、プリント配線板にチップ状電子部品を1つずつ供給し、プリント配線板に自動装着している。この自動装着工程において、チップ状電子部品の取り扱いを容易に行うために、個々のチップ状電子部品をテープ状の搬送体で包装したテーピング包装体が使用されている。
【0003】
前記テーピング包装体は、キャリアテープ台紙に、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部(以下、単に「装填部」と記載することがある。)を一定間隔で形成し、前記装填部に所定のチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入することによって形成されている。なお、装填部は、一般的に角形に設けられ、プレスポケットやキャビティーなどと称されることもある。装填部は金型を用いて形成される(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【0004】
チップ状電子部品を装填したテーピング包装体は、リール状に搬送され、チップ状電子部品を装着する自動機械によって連続的にカバーテープが引き剥がされ、チップ状電子部品がキャリアテープ台紙から順次取り出されてプリント配線板の所定の位置に自動装着される。
【0005】
ここで使用されるキャリアテープ台紙は、プラスチック製と紙製とに大別される。製造コスト、非帯電性、使用後の廃棄容易性などの点で紙製が望ましいとされている。紙製のキャリアテープ台紙としては、単層又は多層抄きの板紙製のものが知られている(例えば、特許文献3~5を参照。)。
【0006】
特許文献3~5のような紙製のキャリアテープ台紙においては、その装填部の形状が正確に形成されることが要求される。ここで、装填部を形成するために金型を使用する。しかし金型は、摩耗し、それにより紙粉が増えるため、金型を研磨又は新調する必要がある。そのため、操業性を著しく悪化させるほか、コストがかかるなどの問題がある。金型の摩耗を最小限とし紙粉の発生を抑えるためには、より柔軟でかつ強度を有するキャリアテープ台紙が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-211507号公報
【文献】特開平10-218281号公報
【文献】特開平09-188385号公報
【文献】特開2005-313946号公報
【文献】特開2008-230651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような操業上の問題に鑑み、本開示は、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を提案する。更に詳しくは、密度が低く柔軟性を有し、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする3層以上の基紙を有する多層抄きで
1)密度が0.88g/cm以下であり、
2)針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)をパルプ中5質量%以上含有し、
3)ロジン系サイズ剤を含み、その含有量がパルプ100質量部に対して0.15%以下であり、
4)直鎖脂肪酸含有量が1600ppm以下
であることを特徴とする。このような構成とすることで、密度が低いにもかかわらず、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙とすることができる。
【0011】
前記基紙の層のうち、一方の表面に配置した層を表面層、他方の表面に配置した層を裏面層、前記表面層と前記裏面層との中間に配置した層を中間層とそれぞれ表記したとき、中間層に含まれるパルプの5質量%以上がNBKPとすることが好ましい。5質量%以上とすることで加速負荷試験の強度が高くなり、また抜けやすいNBKPが配合されてもロジン系サイズ剤が所望する含有量以下でありかつ直鎖脂肪酸が所望する含有量以下であればチップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくくなる。
【0012】
前記直鎖脂肪酸が、炭素数が24、26及び28からなる群より選択される炭素数でありかつその含有量が1200ppm以下であることが好ましい。この範囲であればチップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、密度が低いにもかかわらず、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本発明のキャリアテープ台紙は、層間剥離を生じさせないために、台紙の柔らかさが必要なため低密度化が求められている一方で、加速負荷に対する耐性も必要とする。そのような耐性の基準となる指標の一つとして本発明においては、ロールによる加速負荷試験を採用する。当該加速負荷試験においては、半径の小さいロールに1重に巻き、ロールを前後に大きく繰り返し動かすことで層間剥離を観察し層間剥離に対する強度を測定する。層間剥離を生じさせないためには台紙の柔らかさが必要なため低密度化が求められている。その一方で、低密度化すると諸強度が低下しやすいため、これを補うためにNBKPを配合する。ところが、多層のキャリアテープ台紙では装填部の形成の際に、層間の歪みが生じるためか、フィブリル化しにくく繊維長の大きいNBKPを配合すると、これが切断されずに引き抜かれることとなり、紙粉を発生させる原因となる。そこで、本発明では、密度が低いにもかかわらず、加速負荷試験に対する強度が十分で、紙粕の発生しにくいキャリアテープ台紙が必要となる。ここで加速負荷試験とはロールに巻き付けたキャリアテープ台紙を前後に動かすことでロールと台紙の間をしごく(扱く)ことにより、すなわち加速による摩擦を生じさせることにより、層間が口を開けるまでの回数であり、その回数は層間剥離に対する抵抗性の指標となる。なお、当該回数が多いほど層間剥離に対する抵抗性が強くなる。
【0016】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする表面層、中間層および裏面層の順に配置された3層以上の基紙を有する多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、
1)密度が0.88g/cm以下であり、
2)針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)をパルプ中5質量%以上含有し、
3)ロジン系サイズ剤を含み、その含有量がパルプ100質量部に対して0.15%以下であり、
4)直鎖脂肪酸含有量が1600ppm以下
である。本明細書において、ppmは、質量百万分率である。
【0017】
本実施形態のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする基紙を有する。ここで、主成分とは、基紙を構成する成分のうち質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本実施形態では、基紙を構成する成分のうちパルプが80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。基紙に使用する原料パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)が好ましい。広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)などの化学パルプ、砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ、脱墨パルプなどの古紙パルプはリグニン、夾雑物などが含まれるため使用の際は最小限、若しくは未使用とすることが好ましい。パルプとしては、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を主成分とすることが好ましく、全パルプ中、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を75質量%以上、好ましくは80質量%以上、または85質量%以上とすればよい。例えば、全パルプ中、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を85~95質量%、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を5~15質量%とすればよい。本発明においては、台紙の柔らかさが必要なため低密度化が求められている。その一方で、低密度化すると諸強度が低下しやすいため、これを補うためにNBKPを配合する。NBKPを各層におけるパルプ中5質量%以上配合するとよい。5質量%以上とすることで加速負荷試験に対する強度が高くなり、また紙から抜けやすいNBKPが配合されてもロジン系サイズ剤が所望する含有量以下であり、かつ直鎖脂肪酸が所望する含有量以下であればチップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくくなる。加速負荷試験に対する強度向上は中間層にNBKPを配合した方がより効果的である。さらに、中間層においてパルプ中5質量部以上配合することが好ましい。例えば、表面層、および裏面層にはNBKPを配合せず中間層においてパルプ中5質量部以上、例えば、5~25質量%配合することが好ましい。中間層にのみにNBKPを配合すると、台紙として使用する際に、テープの接着力がNBKPにより阻害されにくいという利点がある。
【0018】
ここで使用されるLBKPを作るための木材チップは主にアカシア材とユーカリ材が使用される。アカシア材としてアカシアマンギューム、アカシアアウリカルフォルミス、アカシアカテキュー、アカシアデカレンス、アカシアホロセリシア、アカシアレプトカルパ、アカシアマイデニアイ、アカシアメランシー、アカシアメラノキシロン、アカシアネリフォーラ、アカシアシリベストリス、又はアカシアペレグリナリス等やこれらの交雑種が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種の樹種を使用することが好ましい。アカシア材は、比重が低く入手が容易で安価である一方で、直鎖脂肪酸、特に、炭素数が24、26、及び28からなる群より選択される炭素数である直鎖脂肪酸を多く含むため、直鎖脂肪酸量を減らすためにはアカシア材をあまり多量に配合しないことが好ましい。日本の場合、比較的近い国、例えばベトナムなどの東南アジアやオーストラリアから輸入する場合、距離が短いことからシーズニング期間が短いため直鎖脂肪酸量が多くなりやすい。結果として産地による差が大きくなるため生産されたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙中の直鎖脂肪酸量を管理することが重要である。
【0019】
ユーカリ材としてはユーカリカマルドレンシス、ユーカリデグルプタ、ユーカリグロブラス、ユーカリグランディス、ユーカリマキュラータ、ユーカリパンクタータ、ユーカリサリグナ、ユーカリテレニコルニス、ユーカリユーロフィラ、アカシアアウラコカルパ、又はアカシアクラシカルパ等やこれらの交雑種が挙げられる。ユーカリ材は炭素数が24、26、及び28からなる群より選択される炭素数である直鎖脂肪酸が少ないため、直鎖脂肪酸量を減らすためにはユーカリ材を多く配合することが好ましい。本発明のキャリアテープ台紙においては、直鎖脂肪酸含有量が1600ppm以下とする必要があるが、アカシア材とユーカリ材の比率、産地等を適切に調整したり、パルプ原料の加工工程を適宜調整することにより直鎖脂肪酸含有量を調整することができる。例えば、アカシア材とユーカリ材の質量比率を10:90~55:45好ましくは20:80~40:60とすればよい。
【0020】
NBKPを作るための針葉樹材としては特に限定されないが、とうひ若しくはつが類樹木、もみ類樹木、まつ類樹木、杉類樹木等が好ましく使用される。これらの樹種より得られたNBKPにおいて、炭素数が24、26、及び28からなる群より選択される炭素数である直鎖脂肪酸は少なく、例えば、400ppm以下となる。
【0021】
直鎖脂肪酸が多いと繊維間の結合が阻害され、滑りやすくなるため、NBKPが引き抜かれやすくなる。よって、本発明のキャリアテープ台紙においては、直鎖脂肪酸の含有量を1600ppm以下とし、好ましくは1300ppm以下とする。色々な直鎖脂肪酸があるが、アカシアに多く含まれる炭素数が24、26及び28の直鎖脂肪酸が最も影響が大きく、これを少なくすることが好ましい。例えば、当該直鎖脂肪酸の含有量を直鎖脂肪酸の含有量を1200ppm以下とすることが好ましく、1000ppm以下がより好ましい。また、直鎖脂肪酸が多いと、サイズプレス液の浸透が阻害されムラになりやすいので液中に含まれる澱粉類やポリビニルアルコールなどの紙力剤による強度付与が難しくなる場合がある。
【0022】
前記原料パルプは、離解機及び叩解機を使用して適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。本発明においては、カナダ標準濾水度(JIS P 8121:1995 パルプのろ水度試験方法)でCSF300~800mlとすることが好ましい。より好ましくは、CSF350~650mlであり、更に好ましくはCSF500~580mlである。
【0023】
適切な叩解度に調整したパルプスラリーを原料スラリーとし、抄紙機で抄紙してキャリアテープ台紙の基紙を形成する。抄紙機は公知の抄紙機を用いることができる。すなわち、長網式抄紙機、円網式抄紙機、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等で抄紙することができる。基紙の構成は3層以上の多層抄きが好ましい。3層以上の多層とする場合には、各層間には、層間強度を向上させることを目的として、層間に澱粉やポリアクリルアマイド水溶液を噴霧して抄紙してもよい。
【0024】
上記原料スラリーにロジン系サイズ剤を0.15質量%以下で添加する。例えば、パルプ100質量部に対して、ロジン系サイズ剤を0.03~0.15質量%添加する。サイズ剤は入れない方がNBKPは引き抜かれにくいが、無添加とするとサイズプレス液が全て原紙に吸収され表面に残らず、結果として表面強度が足りずトップテープを剥がす際、毛羽立ちが発生し支障が出る。0.15質量%を超えると滑りが発生しNBKPは引き抜かれやすくなり紙粉となる。内添で使用するサイズ剤にはアルキルケテンダイマー(AKD)やアルケニル無水コハク酸(ASA)などがあるが、AKDは摩擦係数が下がり過ぎ加工時にスリップが発生し弊害となり、ASAはサイズ性の立ち上がりが遅くサイズプレス前でサイズ発現しないためサイズプレス液が全て原紙に吸収され表面に残らず、結果として表面強度が足りずトップテープを剥がす毛羽立ちが発生し問題がある。ロジン系サイズ剤は、例えば、ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤がある。特に少量でサイズ性を発現するエマルジョンサイズ剤が好ましく、使用pH領域によって酸性用、弱酸性用又は中性用があるが推奨のpH使用領域で使用することが好ましい。チップ状電子部品用キャリアテープ台紙はチップの腐食防止のため中性領域で抄造するため中性用ロジンエマルジョンサイズ剤を使用することが好ましい。
【0025】
原料スラリーには、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、填料、紙力剤、歩留まり向上剤、着色染料、着色顔料などの製紙用添加剤を適宜添加してもよいが、金型の摩耗を軽減するため填料、特に無機填料はキャリアテープ台紙中に1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。本明細書において、無機填料には、原料パルプに由来して意図せずに混入する灰分が含まれる。キャリアテープ台紙中に含まれる無機填料の含有量の下限値は、特に限定されないが、この非意図的に混入する灰分を考慮して、0.1質量%以上であってもよい。また、基紙の表面には、必要に応じて表面紙力増強剤を塗布することができる。基紙への塗布方法は限定するものではなく、2本ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、メタリングサイズプレス等の塗工機を用いて塗布することができる。これらの中でも、製造効率や加工適性、表面強度の向上、紙層強度の向上の観点から2本ロールサイズプレスを使用することが好ましい。表面紙力増強剤の塗布量は、基紙の両面当たり固形分換算で0.5~5g/mであることが好ましく、より好ましくは1~3.5g/mの範囲である。
【0026】
本実施形態においては、乾燥後の基紙を、必要に応じて平滑化処理してもよい。平滑化処理の方法は特に限定するものではなく、マシンキャンダー、ソフトキャレンダ-、スーパーキャレンダ-などを用いることができる。
【0027】
基紙の厚さは、装填されるチップ状電子部品の大きさによっても異なるが、400~1200μmとすることが好ましく、より好ましくは800~1100μmである。また、基紙全体の坪量は160~1000g/mとすることが好ましく、より好ましくは600~1000g/mである。基紙の密度は0.88cm/g以下であり、0.85cm/g以下が好ましい。0.88cm/g以下とすることで紙が柔らかくなることで加速負荷試験の強度が高くなり、また密度が低くてもロジン系サイズ剤が所望する含有量以下でありかつ直鎖脂肪酸が所望する含有量以下であればチップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくくなる。
【0028】
また、キャリアテープ台紙には、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていてもよい。例えば、基紙として表層(1層目)、中間層(2~4層目)、裏層(5層目)の5層抄きの紙を抄造したのち、酸化澱粉を2~10質量%およびポリビニルアルコールを2~10質量%含む混合サイズ液を基紙の両面に塗布することが好ましい。紙の強度が増強されるからである。
【0029】
本実施形態のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、チップ状電子部品を装填するための装填部を一定間隔で形成し、前記装填部にチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入し、チップ状電子部品用キャリアテープとして使用される。装填部は、エンボス加工によって形成される有底の凹部又は打ち抜き加工によって形成される貫通孔のいずれでもよい。貫通孔とする場合は、キャリアテープ台紙の一方の面にボトムテープを装着して貫通孔の一方の孔を塞ぎ、装填部を形成する。
【実施例
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0031】
<実施例1>
基紙として表層(1層目)、中間層(2~4層目)、裏層(5層目)の5層抄きの紙を次の通り抄造した。LBKP90部(アカシア材:ユーカリ材の質量比が30:70)、NBKP10部からなるパルプスラリーを叩解しカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)525mlに調整し、硫酸バンドを0.2部、カチオン性デンプン(商品名:ネオタック#30T/日本食品加工社製)0.7部、両性ポリアクリルアマイド(商品名:ハーマイドRB234/ハリマ化成社製)0.3部、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:CC-1404/星光PMC社製)0.1部を添加し原料スラリーを円網抄紙機によって表層、中間層、裏層からなる5層の湿紙を抄き合わせて抄紙し基紙を得た。その後、プレスパートで窄水し、乾燥後、2本ロールサイズプレスにて酸化澱粉(SK-20/日本コーンスターチ社製)5.3%、ポリビニルアルコール(ゴーセナールT-350/日本合成化学工業社製)4.0%の混合サイズ液を基紙の両面あたり3g/mとなるように塗布し、水分含有率が9%となるようにシリンダードライヤーで乾燥、多段キャレンダーにより平滑化処理をさせて目的とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。なお、各層の坪量は、表層を160g/m、中間層を160g/mを3層、裏層を160g/mとして、基紙全体の坪量を、800g/mとした。チップ状電子部品用キャリアテープ台紙中の灰分は、0.4質量%であった。
【0032】
<実施例2>
ロジンエマルジョンサイズ剤0.1部を0.05部に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0033】
<実施例3>
ロジンエマルジョンサイズ剤0.1部を0.15部に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0034】
<実施例4>
パルプ製造の際の木材チップを調整し、LBKPのアカシア材:ユーカリ材の質量比を15:85と変更し、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の直鎖脂肪酸量(炭素数24、26、28)1000ppmから700ppmとなった以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0035】
<実施例5>
パルプ製造の際の木材チップを調整し、LBKPのアカシア材:ユーカリ材の質量比を40:60と変更し、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の直鎖脂肪酸量(炭素数24、26、28)1000ppmから1200pmとなった以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0036】
<実施例6>
表層と裏層のパルプ配合をLBKP90部、NBKP10部からLBKP100部とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0037】
<実施例7>
表層と裏層のパルプ配合をLBKP90部、NBKP10部からLBKP100部とし、中間層のパルプ配合をLBKP90部、NBKP10部からLBKP80部、NBKP20部とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0038】
<比較例1>
ロジンエマルジョンサイズ剤0.1部を0.2部に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0039】
<比較例2>
パルプ製造の際の木材チップを調整し、LBKPのアカシア材:ユーカリ材の質量比を60:40と変更し、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の直鎖脂肪酸量(炭素数24、26、28)1000ppmから1500pmとなった以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0040】
<紙粉評価>
チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS C 0806-3:2014「自動実装部品の包装-第3部:表面実装部品の連続テープによる包装」に準拠し、プレスポケット形装填部成形機(TWA-6507:東京ウエルズ社製)を用いて、幅方向0.7mm×流れ方向0.4mmの凹状の装填部を2mm間隔で1000万ショット成形した。この成型工程出口で落下した紙粉量より評価した。評価基準は次のとおり。
◎:紙粉量0~0.5gであり、良好であり、合格(実用レベル)。
○:紙粉量0.5~1.0gであり、合格(実用レベル)。
△:紙粉量1.0~2.0gであり、合格下限(実用下限レベル)。
×:紙粉量3.0gであり、摩耗が大きい、不合格(実用不適レベル)。
【0041】
<加速負荷試験>
チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を8mm幅×1800mmのテープ状にスリットし、1580gの荷重を掛けてφ20mm径のロールに巻き付けて扱く。層間が剥離長5mmとなるまでの扱き回数で評価した。評価基準は次のとおりである。
◎:200回以上扱いても剥離せず。(実用レベル)
〇:150~200回で剥離発生。(実用レベル)
△:100~150回で剥離発生。(実用下限レベル)
×:100回未満で剥離発生。(実用不可レベル)
【0042】
<脂肪酸量定量>
チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を離解し再乾燥させたパルプをテトラメチルアンモニウム水和物(TMAH)でメチル化を行いGCMSへ供した。分析条件はICP590℃パイロフォイル、15秒間加熱、ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-QP2010ウルトラ(島津製作所製)を用い分析した。テトラコサン酸(C24)は保持時間24.32分、ヘキサコサン酸(C26)は保持時間25.73分、オクタコサン酸(C28)は保持時間27.07分のピーク面積より、あらかじめ求められた各標準物質の検量線より定量した。これ以外の炭素数の直鎖脂肪酸についても該当する保持時間から同様に定量した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すとおり、実施例1~7で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際の紙粉が発生しにくく、使用可能であった。一方で、比較例1で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、ロジン系サイズ剤の配合量が多いためNBKP繊維が脱落し紙粉として多く発生した。比較例2で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、直鎖脂肪酸が多く含まれたためNBKP繊維が脱落し紙粉として多く発生した。