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特許7365329感染症治療用ラクトフェリシン及びラクトフェランピン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】感染症治療用ラクトフェリシン及びラクトフェランピン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/40 20060101AFI20231012BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231012BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231012BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231012BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20231012BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20231012BHJP
【FI】
A61K38/40
A61P43/00 121
A61P31/04
A61P31/10
A23L33/17 ZNA
A23K20/147
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020503691
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018055496
(87)【国際公開番号】W WO2019021175
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】102017000085409
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520023514
【氏名又は名称】ビイチティ エッセ エッレ エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラパシオリ,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルガ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】マゼイ,エマ
(72)【発明者】
【氏名】ズッキナーリ,ステファノ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】XU, G. et al.,J Appl Microbiol,2010年,Vol. 109、No. 4,pp. 1311-1318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 36/00
A23L 33/00
A23K 20/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体に起因する感染症の治療用組成物であって、ラクトフェリシン及びラクトフェランピンを含み、ラクトフェリシンがラクトフェランピンよりも少ないモル量で含まれる、病原体に起因する感染症の治療用組成物。
【請求項2】
ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比が少なくとも1:1.5である、請求項1に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物。
【請求項3】
ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比が1:100以下である、請求項1又は2に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物。
【請求項4】
ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比が1:2~1:50である、請求項3に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物。
【請求項5】
組成物重量に基づいて、0.01重量%~1重量%のラクトフェリシン及び0.02重量%~10重量%のラクトフェランピンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物。
【請求項6】
ラクトフェリシン及びラクトフェランピンを含み、ラクトフェリシンがラクトフェランピンよりも少ないモル量で含まれる、ヒト又は動物の摂食用の製品におけるプレバイオティクス剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物及び少なくとも植物抽出物を含む、病原体に起因する感染症の治療用製剤。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の病原体に起因する感染症の治療用組成物及び少なくとも1つのさらなる天然抗菌ペプチドを含む、病原体に起因する感染症の治療用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、真菌又は酵母等の病原体に起因する感染症の治療用組成物に関する。特に、本発明の組成物は、2つのペプチド、すなわちラクトフェリシン及びラクトフェランピンの相乗的関連性を有し、前記病原体に対して有意に活性であることが示されている。
【背景技術】
【0002】
抗生物質耐性は、現在世界中で認識され広まっている現象である。
【0003】
薬剤耐性の発達は、通常の進化過程である。通常、特定の薬剤に感受性の強い微生物のコロニー内には、自然に耐性のある微生物がいくつか存在する。この現象は「初期非感受性(primary insensitivity)」として知られている。抗生物質が感受性の強い細菌を破壊した場合、その瞬間まで休眠状態にあったその薬剤に非感受性の細菌が増殖し始める。又は、細菌の遺伝物質中の変異の結果として、もしくは細菌間の耐性を付与する遺伝子の交換において、耐性が発生することがある。
【0004】
この現象は自然の過程によるが、抗生物質の誤った使用により加速され、さらに悪化する。耐性に寄与する主な要因の1つは、集約農場の過密環境内で成長を促進し、病気を予防するために、低用量の抗生物質で家畜を治療するという慣行である。この慣行は2006年以降ヨーロッパでは禁止されているが、現在米国で使用されている抗生物質の約80%は動物に使用されている。
【0005】
最も有害と考えられる慣行の1つは、それらが全く役に立たない場合に、抗生物質を使用してウイルス感染症を治療する習慣である。抗生物質を服用するときに、例えば低用量での服用又は推奨される時間とは異なる時間での服用など、指示に従わなかったとしても、耐性の発生に役立つと考えられている。近年非難されている別の慣行は、多くの病院で遭遇する、予防目的で一連の抗生物質を処方する傾向である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、耐性現象を引き起こすことなく、細菌、真菌又は酵母に起因する感染症を効果的に治療することができる、抗生物質の使用に代わる解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は、請求項1に記載されているラクトフェリシン及びラクトフェランピンを含む組成物によって達成された。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、病原体に起因する感染症の治療のための前記組成物の使用に関する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、ヒトの食物又は動物の飼料用の製品におけるプレバイオティクス剤としての前記組成物の使用に関する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、前記組成物及び少なくとも1つの植物抽出物を含む製剤に関する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、前記組成物及び少なくとも1つの別の天然抗菌ペプチドを含む製剤に関する。
【0012】
本発明の特徴及び利点は、非限定的な例として提供される以下の詳細な説明及び実施形態から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明は、ラクトフェリシン及びラクトフェランピンを含む組成物であって、ラクトフェリシンがラクトフェランピンよりも少ない量で含まれる組成物に関する。
【0014】
ラクトフェリシンは、ラクトフェリンペプシンが媒介する消化により生成されるカチオン性ペプチドである。完全なラクトフェリシンの配列は、ラクトフェリンのフラグメント17~41(FKCRRWQWRM KKLGAPSITCVRRAF;LFB0084)に対応している。ヒトでは、ラクトフェリシンはラクトフェリンのフラグメント1~47に対応するが、ジスルフィド架橋で結合した2つのサブユニット(すなわち、フラグメント1~11及び12~47)で構成されている。
【0015】
ラクトフェランピンは、高い正電荷と疎水性ドメインを特徴とするカチオン性ペプチドであり、したがって両親媒性の特性を有する。それは、268~284残基を含み、ラクトフェリシンに近接したラクトフェリンのN1ドメインに位置している。
【0016】
ラクトフェランピンとラクトフェリシンは両者とも両親媒性とカチオン性の特性を有するが、アミノ酸組成が異なり、したがって構造も異なるため、抗菌活性は相当に異なる。
【0017】
「よりも少ない量」なる用語は、ラクトフェリシンがラクトフェランピンよりも低いモル量であることを意味する。「モル」とは、国際単位(IS)に基づく物質の量の測定単位である。化学物質の1モルには、6.02214076×1023の構成粒子が含まれている。構成粒子は、原子、分子、イオン、電子又はその他の物理的粒子である。
【0018】
驚くべきことに、ラクトフェリシンがラクトフェランピンよりも少ない量で存在する組成物において、以下に提供される実施例に見られるように、有意な抗菌相乗効果が達成されることが見出された。
【0019】
したがって、本発明の組成物では、ラクトフェリシンとラクトフェランピンは少なくとも1:1.5の重量比である。
【0020】
最も好ましくは、ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比は1:100以下である。
【0021】
好ましい実施形態では、ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比は1:2~1:50である。
【0022】
さらなる実施形態において、ラクトフェリシンとラクトフェランピンの重量比は1:1.5~1:50、好ましくは1:1.5~1:20、より好ましくは1:1.5~1:10である。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、組成物重量に基づいて、0.0005重量%~15重量%のラクトフェリシンとラクトフェランピンを含む。好ましくは、本発明の組成物は、0.005重量%~5重量%のラクトフェリシンとラクトフェランピンを含む。より好ましくは、本発明の組成物は、0.01重量%~1重量%のラクトフェリシンとラクトフェランピンを含む。
【0024】
特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、0.01重量%~1重量%のラクトフェリシン及び0.02重量%~10重量%のラクトフェランピンを含む。さらにより好ましいのは、本発明の組成物が0.03重量%~0.1重量%のラクトフェリシン及び1重量%~8重量%のラクトフェランピンを含む実施形態である。
【0025】
特定の実施形態において、ラクトフェリンの酵素加水分解、好ましくは固定化酵素を使用する酵素加水分解によりラクトフェリシンとラクトフェランピンが得られる。そのため、ラクトフェリシンを含むラクトフェリン加水分解物及びラクトフェランピンを含むラクトフェリン加水分解物がそれぞれ得られる。
【0026】
適切な酵素は、問題となっているタンパク質(この場合はラクトフェリン)の2つの連続したアミノ酸の間のペプチド結合の切断を触媒する加水分解酵素の分類に属する。これらの酵素は、存在する種々のアミノ酸に対して異なる選択性を示すため、個々のアミノ酸成分のタンパク質の完全な分解は行われず、使用される加水分解酵素が認識するアミノ酸の位置に応じて様々な長さのペプチド断片が生成される。加水分解に使用される酵素は生成物中の不純物に相当する可能性があるため、当該プロセスは前記酵素の不活性基質への共有結合による固定化に基づくことが好ましい。固定化は、物理的方法(例えば、ろ過)を使用することにより反応の終了時に生体触媒の除去を可能にし、したがって、遊離酵素の不活性化に必要であるが製品の活性に悪影響を及ぼすpHの変化と温度の上昇を阻止する。
【0027】
好ましい酵素はプロテアーゼであり、特に、好ましくはペプシン、クロストリパイン、プロテアーゼXVII型、ASP-Nエンドペプチダーゼ、ARG-Cプロテイナーゼ、グルタミルエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼ、トリプシン、サーモリシン、サブチリシン、キモトリプシン及びそれらの混合物を含むエンドプロテアーゼである。
【0028】
好ましい実施形態では、前記酵素は、豚肉のペプシン、クロストリパイン、プロテアーゼXVII型、ASP-Nエンドプロテアーゼ、ARG-Cエンドプロテアーゼ又はそれらの混合物である。
【0029】
好ましくは、酵素加水分解が実施されるpHは3以下であり、より好ましくは約2である。
【0030】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。「賦形剤」なる用語は、細菌、真菌又は酵母に起因する感染症の治療用製剤における使用に適した化合物又はその混合物をいう。例えば、医薬製剤に使用する賦形剤は、一般に患者に有害反応を引き起こすべきではなく、組成物の有効性を著しく阻害すべきでもない。
【0031】
適切な賦形剤には、酸性化剤、pH調整剤、固化防止剤、抗酸化剤、増量剤、耐性剤、ゲル化剤、コーティング剤、加工デンプン、金属イオン封鎖剤、増粘剤、甘味料、希釈剤、凝集阻害剤(disaggregating agent)、流動促進剤(glidant)、着色剤、バインダー、潤滑剤(lubricant)、安定剤、吸着剤、防腐剤、保湿剤、香料、フィルム化剤(filmogenic agent)、乳化剤、湿潤剤、放出阻害剤(release retardant)及びそれらの混合物が含まれる。
【0032】
賦形剤の添加は、当該分野で公知の方法を使用することにより実施することができる。実際、例えば成分はそのまま混合することもできるし、1もしくは複数の賦形剤(ソフトゲルカプセルに密封された賦形剤又は錠剤、ミニタブレット、マイクロタブレット、顆粒、マイクロ顆粒、ペレット、多粒子(multiparticulate)、微粒子化された粒子、粉末等の固体形態の賦形剤又は溶液、エマルジョン、ゲル、バイアル、ドロップもしくはスプレーの形態の賦形剤)と混合することもできる。
【0033】
本発明の組成物は、経口、経鼻、鼻腔内、舌下、口腔内、筋肉内、静脈内、経皮、皮下、外用、内用、直腸又は眼経路(ocular route)を介して投与することができる。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、細菌、真菌又は酵母等の病原体に起因する感染症の治療のための上記組成物の使用に関する。
【0035】
「治療」なる用語は、本発明の組成物の効果を指し、例えば、患者の容態の改善又は疾患の進行の遅延など、感染症を患う患者に利益をもたらすことができる。本明細書では、「感染」なる用語又はその同義語である「感染性病理」は、別の宿主生物内又は別の宿主生物上への微生物の侵入、定着及び/又は増殖を意味する。「感染症」なる用語は、病原体、例えば細菌、寄生虫、原虫、ウイルス又は酵母を含む真菌に起因する感染性の疾病をいう。
【0036】
病原細菌は、下記の細菌種の1つに由来することができる:ブドウ球菌属、例えば黄色ブドウ球菌(例えば黄色ブドウ球菌 ATCC 25923)又はS.インターメディウス ATCC 29663、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;プロピオニバクテリウム・アクネス;ポルフィロモナス・ジンジバリス;腸球菌属、例えばエンテロコッカス・フェカリス ATCC 29212;シュードモナス属、例えば緑膿菌 ATCC 27853;マイコバクテリウム属、例えば結核菌;エンテロバクター属;カンピロバクター属;サルモネラ属(例えばサルモネラ・エンテリティディス ATCC 13076);ストレプトコッカス属、例えばA群もしくはB群連鎖球菌、肺炎連鎖球菌;ヘリコバクター属、例えばヘリコバクター・ピロリ;ナイセリア属、例えば淋菌、髄膜炎菌;ボレリア・ブルグドルフェリ;赤痢菌属、例えば赤痢菌;大腸菌(ATCC 25922);ヘモフィルス属、例えばインフルエンザ菌;フランシセラ・ツラレンシス;バチルス属、例えば炭疽菌;クロストリジウム属、ボツリヌス菌;エルシニア属、例えばペスト菌;トレポネマ属;バークホルデリア属、例えばバークホルデリア・セパシア ATCC 17759、B.マレイ及びB.シュードマレー;ステノトロフォモナス属、例えばステノトロフォモナス・マルトフィリア ATCC 13637。
【0037】
真菌病原体は、下記の真菌種(酵母を含む)の1つに由来することができる:カンジダ属(例えばC.アルビカンス);表皮菌属;エキソフィラ属;ミクロスポラム属;トリコフィトン属(例えば、紅色白癬菌及びT.インテルジキターレ);白癬属;アスペルギルス属;ブラストミセス属;ブラストシゾミセス属;コクシジオイデス属;クリプトコッカス属(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス);ヒストプラズマ属;パラコクシジオミセス属;スポロトリクス属;アブシディア属;クラドフィアロフォラ属;フォンセケア属;フィアロフォラ属;ラカジア属;アルスログラフィス属;アクレモニウム属;アクティノマドゥラ属;アポフィソミセス属;エモンシア属;バシディオボラス属;ボーベリア属;クリソスポリウム属;コニディオボラス属;カニングハメラ属;フザリウム属;ゲオトリクム属;グラフィウム属;レプトスフェリア属;マラセジア属(例えばマラセジア・フルフル又はM.パキデルマティス DSM 6172);ムコール属;ネオテスツジナ属;ノカルジア属;ノカルディオプシス属;パエシロマイセス属;フォーマ属;ピエドライア属;プネウモキスチス属;シュードアレシェリア属;ピレノケータ属;リゾムコール属;リゾプス属;ロドトルラ属;サッカロミセス属;スケドスポリウム属;スコプラリオプシス属;スポロボロミセス属;ハリサシカビモドキ属;トリコデルマ属;トリコスポロン属;ウロクラジウム属;ウスティラゴ属;バーティシリウム属;ワンギエラ属。
【0038】
好ましくは、治療は、シュードモナス属、エスケリキア属、ブドウ球菌属、カンジダ属及びマラセジア属から選択される病原体に対するものである。
【0039】
以下の実施例に見られるように、本発明の組成物は、上記のラクトフェリシンとラクトフェランピンの関連性により、前記病原体に対して驚くべき相乗効果を示した。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、ヒト又は動物の摂食用の製品におけるプレバイオティクス剤としての前記組成物の使用に関する。実際、本発明の組成物は、上記の病原体に対して相乗的に有効であるだけでなく、一般的に使用されるプレバイオティクス、すなわちFOS(フルクトオリゴ糖)やGOS(ガラクトオリゴ糖)について得られるものよりも高いプレバイオティクス指数を有することが予想外に発見された。実際、当該組成物は、有益なプロバイオティクス細菌(E.フェシウム、L.プランタルム、L.ラムノサスを含む)の増殖とその代謝活性をもたらし、同時に腐敗性微生物又は上記のような潜在的病原性微生物の減少をもたらす。
【0041】
プレバイオティクス指数は、下記式を使用して計算した。
【0042】
【数1】
【0043】
結果として、指数が高いほど、試験された化合物のプレバイオティクス特性が大きくなる。
【0044】
以下の実施例において、本発明の組成物のプレバイオティクス特性は、FOSのそれと比較して示されている。
【0045】
本発明は、本明細書に記載の組成物及び適切な食品グレードの成分を含む食品又は飼料製品に関する。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、前記組成物及び少なくとも1つの植物抽出物を含む製剤に関する。
【0047】
好ましい植物抽出物は、クマコケモモ、緑茶、クランベリー、ブルーベリー、ユーカリ、マンサク、大豆及びそれらの混合物の抽出物である。
【0048】
驚くべきことに、本発明の組成物は、少なくとも1つの植物抽出物と混合すると、さらなる相乗効果を示すことが観察された。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、前記組成物と少なくとも1つの別の天然抗菌ペプチドとを含む製剤に関する。
【0050】
好ましくは、前記天然抗菌ペプチドは、ナイシン、ベータデフェンシン、LL-37、テンポリンA、テンポリンB、テンポリンL、インドリシジン、メリチン、プロテグリン-1、プロテグリン-2、プロテグリン-3、プロテグリン-4、プロテグリン-5、マガイニン2、RTD-1、RTD-2、RTD-3、RTD-4、RTD-5、アレニシン-1、アレニシン-2、アレニシン-3、ダームシジン、セクロピン、アンドロピン、モリシン、セラトトキシン、デルマセプチン、ボンビニンであり、好ましくはマキシミンH1、マキシミンH2、マキシミンH3、マキシミンH4又はマキシミンH5、エスクレンチン、ラナレキシン、ブフォリンII、ヒトCAP18、アバエシン、アピダエシン、プロフェニン、バクテネシン、ブレビニン-1、ブレビニン-2、タチプレシン、ドロソマイシン又はそれらの混合物である。
【0051】
好ましい実施形態では、前記天然抗菌ペプチドはナイシンである。
【0052】
実際、本発明の組成物は、少なくとも1つの別の天然抗菌ペプチドと混合されたとき、さらなる相乗効果を示すことが観察された。
【0053】
上記に報告したように、組成物の成分の好ましい態様の全ての可能な組み合わせは、本明細書に開示されているとみなされると理解されるべきである。
【0054】
組成物及びその成分にとって好ましく、有利であると特定された全ての態様は、その調製及び使用についても同様に好ましく、有利であるとみなされることも理解されるべきである。
【0055】
以下は、例示目的で提供される本発明の実施例である。
【実施例
【0056】
実施例1
以下に、目的の組成物を含むラクトフェリン加水分解物の生産に使用される生体触媒を得るために実施できる酵素固定化の手順の実施例を示す。
【0057】
a)酵素固定化#1(塩酸)
10mMの濃度のHCl水溶液を作製する。
粉末にしたポークペプシンを25mg/mLの濃度で加え、完全に溶解するまで攪拌下に置く。
pHを測定し、塩酸又は水酸化ナトリウムの水溶液を使用して2.00±0.20に調整する。
酵素懸濁液に、エポキシ樹脂を250mg/mLの濃度で添加し、4時間攪拌する。
HCl 10mM+NaCl 1Mの等量溶液を用いて少なくとも3回洗浄する手段によって、未結合の酵素溶液を除去する。
最後の洗浄後、真空ポンプを使用して、樹脂に固定された酵素から液体画分を除去し、当該樹脂を4℃で保存する。
基質として2%(w/v)ヘモグロビンを用いる標準プロトコル(Yoshida,F.(1956),Bull.Agri.Chem.Soc Japan 20,252-256)を使用して、酵素活性を滴定する。
【0058】
b)酵素固定化#2(リン酸)
1.25%(v/v)の濃度の85%(w/w)リン酸水溶液を作製する。
粉末にしたポークペプシンを25mg/mLの濃度で加え、完全に溶解するまで攪拌下に置く。
pHを測定し、リン酸又は水酸化カリウムの水溶液を使用して2.00±0.20に調整する。
酵素懸濁液に、エポキシ樹脂を250mg/mLの濃度で添加し、4時間攪拌する。
1.25%(v/v)リン酸+NaCl 1Mの等量溶液を用いて少なくとも3回洗浄する手段によって、未結合の酵素溶液を除去する。
最後の洗浄後、真空ポンプを使用して、樹脂に固定された酵素から液体画分を除去し、当該樹脂を4℃で保存する。
基質として2%(w/v)ヘモグロビンを用いる標準プロトコル(Yoshida,F.(1956),Bull.Agri.Chem.Soc Japan 20,252-256)を使用して、酵素活性を滴定する。
【0059】
実施例2
固定化酵素#1(HCl/グリシン)を使用したラクトフェリン加水分解プロセス
3g/Lの濃度のグリシン水溶液を作製する。
溶液を攪拌し続けて、ラクトフェリン粉末を130g/Lの濃度までゆっくりと加え、それが完全に溶解するまで待つ。
塩酸の水溶液を使用して、懸濁液のpHを2.1±0.10に調整する。
固定化ペプシンを添加して、32.5~65U/mLの濃度にする(標準2%(w/w)ヘモグロビン基質における滴定により測定)。
2時間以内に、20~30℃の温度で反応させ、液体画分(ラクトフェリンの加水分解物)を固体画分(使用済み固定化酵素)から効率的に分離する校正ふるいを使用して、固定化酵素を除去する。
HPLCを用いて生成物の加水分解プロファイルを分析し、ラクトフェリシンの存在を測定する。
【0060】
実施例3
固定化酵素#2(リン酸)を使用したラクトフェリン加水分解プロセス
130g/Lの濃度のラクトフェリン水溶液を調製し、溶液を攪拌し続けて、それが完全に溶解するまで待つ。
85%(w/v)リン酸水溶液を使用して、懸濁液のpHを2.1±0.10に調整する。
固定化ペプシンを添加して、65~130U/mLの濃度にする(標準2%(w/w)ヘモグロビン基質における滴定により測定)。
2時間以内に、20~30℃の温度で反応させ、液体画分(ラクトフェリンの加水分解物)を固体画分(使用済み固定化酵素)から効率的に分離する校正ふるいを使用して、固定化酵素を除去する。
HPLCを用いて生成物の加水分解プロファイルを分析し、ラクトフェリシンの存在を測定する。
【0061】
実施例4
固定化酵素#3(乳酸/リン酸)を使用したラクトフェリン加水分解プロセス
2%(v/v)の濃度の80%(w/w)乳酸水溶液を作製する。
溶液を攪拌し続けて、ラクトフェリン粉末を130g/Lの濃度までゆっくりと加え、それが完全に溶解するまで待つ。
85%(w/v)リン酸水溶液を使用して、懸濁液のpHを2.1±0.10に調整する。
固定化ペプシンを添加して、65~130U/mLの濃度にする(標準2%(w/w)ヘモグロビン基質における滴定により測定)。
2時間以内に、20~30℃の温度で反応させ、液体画分(ラクトフェリンの加水分解物)を固体画分(使用済み固定化酵素)から効率的に分離する校正ふるいを使用して、固定化酵素を除去する。
HPLCを用いて生成物の加水分解プロファイルを分析し、ラクトフェリシンの存在を測定する。
【0062】
実施例5
固定化酵素#4(乳酸)を使用したラクトフェリン加水分解プロセス
130g/Lの濃度のラクトフェリン水溶液を調製し、溶液を攪拌し続けて、それが完全に溶解するまで待つ。
80%(w/w)乳酸を2%(v/v)の最終濃度まで加える。
固定化ペプシンを添加して、32.5~65U/mLの濃度にする(標準2%(w/w)ヘモグロビン基質における滴定により測定)。
20~30℃の温度で2時間反応させた後、液体画分(ラクトフェリンの加水分解物)を固体画分(使用済み固定化酵素)から効率的に分離する校正ふるいを使用して、固定化酵素を除去する。
HPLCを用いて生成物の加水分解プロファイルを分析し、ラクトフェリシンの存在を測定する。
【0063】
実施例6
固定化酵素#4を使用したラクトフェリン加水分解プロセス(ラクトフェランピンの生産用)
130g/Lの濃度のラクトフェリン水溶液を調製し、溶液を攪拌し続けて、それが完全に溶解するまで待つ。
10mM~100mMの濃度のトリス-Cl又は重炭酸アンモニウム緩衝液を使用して、溶液をpH7.0~9.0に緩衝する。
【0064】
0.01%~10%(w/v)の濃度で、以下の遊離又は固定化酵素のペアを添加する:
-クロストリパイン及びXVII型プロテアーゼ(エンドプロテイナーゼGLU-C);
-クロストリパイン及びエンドプロテアーゼASP-N;
-エンドプロテイナーゼARG-C及びXVII型プロテアーゼ(エンドプロテイナーゼGLU-C)
-エンドプロテイナーゼARG-C及びエンドプロテアーゼASP-N。
【0065】
使用前に、クロストリパイン酵素は2.5mM DTT及び1mM CaClの存在下で4時間の活性化段階を必要とする。
HPLCを用いてラクトフェランピンの産生をモニターしながら、25~37℃の温度で反応物をインキュベートする。加水分解が完了したら、固定化酵素を除去するか(固体基板上の生体触媒の場合)、3M HClを使用してpHを4.00に下げる(遊離酵素の場合)ことにより、反応を抑制する。
【0066】
実施例7
本発明の組成物の抗菌活性は、抗菌剤希釈法(antimicrobial dilution method)(CLSIプロトコル-Clinical and Laboratory Standards Institute)を用いたin vitro感受性試験により、グラム陽性及びグラム陰性細菌、並びに真菌及び酵母に関して評価された。その結果、問題となっている微生物の各々について、MIC(最小発育阻止濃度)が測定された。
【0067】
実施された全ての試験で、フルコナゾール(真菌及び酵母用)及びセフトリアキソン(細菌株用)を使用して抗菌活性の陽性コントロールを実施し、そして、微生物の正しい増殖が評価される陰性コントロール(化合物なし)を実施した。
【0068】
最初に、2つのペプチド(ラクトフェリシンとラクトフェランピン)の個々の抗菌活性を測定した:
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
次いで、組み合わせた(2つの)ペプチドの抗菌活性を測定した。
【0072】
【表3】
【0073】
FIC指数は、下記式を用いて決定される。
【0074】
【数2】
【0075】
式中、Aはラクトフェリシン、Bはラクトフェランピンである。
FIC指数<1=>は相乗効果を示した。すなわち、2つの成分を一緒にした活性は、別々に測定した場合の活性の合計よりも大きくなる。
FIC指数>1=>相乗効果なし
上記表で示された得られた実験データから、組み合わせた(2つの)ペプチドの相乗効果は明らかである。
【0076】
実施例8
実施例2で得られたラクトフェリシンを含むラクトフェリン加水分解物と、実施例6で得られたラクトフェランピンを含むラクトフェリン加水分解物を混合することにより、ラクトフェリシンとラクトフェランピンが1:1.5の重量比である本発明の組成物を調製した。
【0077】
実施例9
実施例8の組成物及びフルクトオリゴ糖(FOS,チコリ由来のフルクトオリゴ糖,Sigma Aldrichが販売)を含む製品を(様々な濃度で)プロバイオティック微生物又は病原体と接触させた。
24時間のインキュベーション後、CFU/mlで表した細菌数(最適な寒天培地におけるプレーティング)を算定して、増殖を評価した。このパラメータをグルコースの存在下における増殖と比較した。
プレバイオティクス指数の取得に使用される式は以下である。
【0078】
【数3】
【0079】
以下は、特定の濃度のFOSと実施例8の組成物におけるプレバイオティクス指数である。
説明に記載の通り、指数が高いほど、試験された化合物のプレバイオティクス特性が大きくなる。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
上記のデータは、本発明の組成物のプレバイオティクス特性を明確に示す。
【0084】
実施例10
この実施例では、最初に個々の天然抽出物の抗菌活性を以下の通り評価した:
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
次いで、個々の天然抽出物の抗菌活性を、実施例8における本発明の組成物と組み合わせて評価した:
【0090】
【表11】
【0091】
またこの場合、本発明の組成物と植物抽出物との間に、さらなる予想外の相乗効果が観察された。
【0092】
実施例11
実施例8の組成物とナイシン等の別の天然抗菌ペプチドとの相互作用を評価した。
得られたデータは、以下に示す通り、2つの化合物が互いに相乗的な相互作用を確立することを示す。
【0093】
【表12】
【0094】
ナイシン単独の抗菌活性を測定した後、ナイシンの抗菌活性を、本発明の組成物と組み合わせて評価した:
【0095】
【表13】
【0096】
またこの場合、本発明の組成物と天然の抗菌ペプチドとの間に、さらなる予想外の相乗効果が観察された。