(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】点眼補助具
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A61J1/05 313F
(21)【出願番号】P 2020506535
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019009883
(87)【国際公開番号】W WO2019176902
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018045884
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山方 智子
(72)【発明者】
【氏名】大下 善弘
(72)【発明者】
【氏名】草桶 大輝
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248157(JP,A)
【文献】特開2006-020908(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145394(JP,U)
【文献】米国特許第04733802(US,A)
【文献】実開昭53-062094(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0020589(KR,A)
【文献】米国特許第05030214(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点眼液を収容した点眼容器を着脱自在に装着し、点眼対象者の眼の周囲に当接し当該眼への点眼液の滴下位置を決める位置決め部を備えた点眼補助具であって、
上記位置決め部に接続され、上記点眼容器を着脱自在に装着する装着部を備え、
上記装着部は、
上記点眼容器の容器本体を着脱するための第1開口部と、上記第1開口部に対向する位置に、装着された上記点眼容器の容器本体の一部を露出させる第2開口部とが形成され、さらに上記第2開口部に隣接して第3開口部が形成されており、
上記装着部の上記第1開口部と上記第2開口部が形成されていない側面が切り欠かれており、
上記装着部の内面には、点眼容器を装着した際に、点眼液収容部を底面に接触する第1リブ、上記点眼液収容部の側面に接触する第2リブ、上記点眼液収容部の上面側部に接触する第3リブが形成されており、
上記位置決め部は、
当該位置決め部を上記眼の周囲に当接したときに、上記眼の目尻に当接する部分と、目頭に当接する部分とが、他の部分よりも上記点眼対象者の顔面へ向かう方向に突出して形成されており、
当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態で、上記点眼容器の点眼液の液滴が、上記眼の表面の中心位置から所定距離だけ上瞼側にずれた位置に滴下するように設計されて
おり、上記所定距離は、2mm~3mmの範囲であり、
点眼対象者が仰向けになった状態の傾斜角を0°とし、座位あるいは立位で上を向いた状態の傾斜角を0°超とした場合において、上記傾斜角が0~40°となる点眼姿勢で正確に点眼できることを特徴とする点眼補助具。
【請求項2】
上記位置決め部は、
眼の周囲に当接したときの下瞼に対向する位置が切り欠かれていることを特徴とする請求項1に記載の点眼補助具。
【請求項3】
点眼液を収容した点眼容器を着脱自在に装着し、点眼対象者の眼の周囲に当接し当該眼への点眼液の滴下位置を決める位置決め部を備えた点眼補助具であって、
上記位置決め部に接続され、上記点眼容器を着脱自在に装着する装着部を備え、
上記装着部は、
上記点眼容器の容器本体を着脱するための第1開口部と、上記第1開口部に対向する位置に、装着された上記点眼容器の容器本体の一部を露出させる第2開口部とが形成され、
さらに上記第2開口部に隣接して第3開口部が形成されており、
上記装着部の上記第1開口部と上記第2開口部が形成されていない側面が切り欠かれており、
上記装着部の内面には、点眼容器を装着した際に、点眼液収容部を底面に接触する第1リブ、上記点眼液収容部の側面に接触する第2リブ、上記点眼液収容部の上面側部に接触する第3リブが形成されており、
上記位置決め部は、
当該位置決め部を上記眼の周囲に当接したときに、上記眼の目尻に当接する部分と、目頭に当接する部分とが、他の部分よりも上記点眼対象者の顔面へ向かう方向に突出して形成されており、
点眼対象者
が当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態のとき、上瞼に当接する、当該位置決め部の位置を上側としたとき、
上記位置決め部を投影した第1領域内に、上記装着部に装着された上記点眼容器の点眼液を吐出する吐出口を投影した点を、当該装着部の底面に投影した第1の点が、上記第1領域の中心を上記底面に投影した第2の点から上記上側に所定距離ずれた位置になるように設計されて
おり、上記所定距離は、2mm~3mmの範囲であり、点眼対象者が仰向けになった状態の傾斜角を0°とし、座位あるいは立位で上を向いた状態の上記傾斜角を0°超とした場合において、上記傾斜角が0~40°となる点眼姿勢で正確に点眼できることを特徴とする点眼補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼の補助を行うための点眼補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、患者の点眼は、患者の顔を上向きにした状態で、患者の眼に点眼液を滴下することで行われる。しかしながら、患者の眼に正確に点眼液を投与するのは難しい。そこで、例えば特許文献1には、瞼を開いた状態で維持させる位置調整部を設けることで、患者の眼に正確に点眼液を投与する点眼薬容器瓶用誘導器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特表2016-508054号公報(2016年3月17日公表)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された点眼薬容器瓶用誘導器具では、位置調整部を、使用位置(点眼位置)と収納位置との間を回動させるためのヒンジを必須の構成要素としている。このようなヒンジを備えている場合、使用頻度が多ければ、ヒンジ部分が破損するなどの不具合が生じやすくなり、誘導器具としての信頼性が低下する。しかも、誘導器具自体が複雑な構造となるため、誘導器具の製造に係るコストが増加するという問題が生じる。また、点眼液を正確に点眼できないと、薬剤の効果が十分に発揮されないため、眼疾患の治癒期間が長期に亘り、治癒しないといった状況が生じることがあり、その結果、患者の精神的な負担の増加や医療費の大幅な増加という問題も生じる。
【0005】
本発明の一態様は、シンプルな構造で、点眼対象者の眼に正確に点眼液を投与することのできる点眼補助具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る点眼補助具は、点眼液を収容した点眼容器を着脱自在に装着し、点眼対象者の眼の周囲に当接し当該眼への点眼液の滴下位置を決める位置決め部を備えた点眼補助具であって、上記位置決め部は、点眼対象者が仰向けの姿勢で当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態で、上記点眼容器の点眼液の液滴が、上記眼の表面の中心位置から所定距離だけ上瞼側にずれた位置に滴下するように形成されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、位置決め部が、点眼対象者が仰向けの姿勢で当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態で、上記点眼容器の点眼液の液滴が、上記眼の表面の中心位置から所定距離だけ上瞼側にずれた位置に滴下するように形成されていることで、点眼対象者が仰向けの姿勢では、点眼液の滴下位置は眼の中心よりも上瞼側になるが、点眼対象者が仰向けの姿勢から徐々に起き上がれば、点眼液の滴下位置も眼の下瞼側に徐々に移動する。従って、点眼姿勢が座位あるいは立位の姿勢であっても、点眼液を眼に適切に滴下することが可能となる。
【0008】
しかも、位置決め部を、点眼対象者が仰向けの姿勢で当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態で、上記点眼容器の点眼液の液滴が、上記眼の表面の中心位置から所定距離だけ上瞼側にずれた位置に滴下するように形成するというシンプルな構造で、点眼対象者の眼に適切に点眼液を投与することができる。また、点眼液を正確に点眼できることで、薬剤の効果が十分に発揮される。その結果、眼疾患の治癒期間の短縮、患者の精神的な負担の軽減や医療費の大幅な抑制効果が期待される。
【0009】
上記位置決め部は、眼の周囲に当接したときの下瞼に対向する位置が切り欠かれていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、位置決め部の、眼の周囲に当接したときの下瞼に対向する位置が切り欠かれていることで、この切り欠かれた部分に指を入れて下瞼を下側に引っ張ることが可能となる。これにより、さらに、正確に点眼液を投与することが可能となる。
【0011】
しかも、指を切り欠き部分に入れることで、位置決め部が不用意に回転するのを抑制することができるので、位置決め部を所望する位置に当接させやすい。
【0012】
上記位置決め部は、当該位置決め部を上記眼の周囲に当接したときに、上記眼の目尻に当接する部分と、目頭に当接する部分とが、他の部分よりも上記点眼対象者の顔面へ向かう方向に突出して形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、位置決め部は、当該位置決め部を上記眼の周囲に当接したときに、上記眼の目尻に当接する部分と、目頭に当接する部分とが、他の部分よりも上記点眼対象者の顔面へ向かう方向に突出して形成されていることで、眼の周囲で他の部分よりも窪んでいる目尻、目頭に合わせて位置決め部を容易に当接することが可能となるため、位置決め部を適切な位置に当接させやすい。
【0014】
上記位置決め部に接続され、上記点眼容器を着脱自在に装着する装着部を備え、上記装着部は、上記点眼容器の容器本体を着脱するための開口部と、当該開口部に対向する位置に、装着された上記点眼容器の容器本体の一部を露出させる開口部とが形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、位置決め部と一体化した装着部に点眼容器を装着した状態で、当該装着部の2つの開口部から露出している点眼容器本体を押さえることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、シンプルな構造で、点眼対象者の眼に正確に点眼液を投与することができる。また、点眼液を正確に点眼できることで、薬剤の効果が十分に発揮される。その結果、眼疾患の治癒期間の短縮、患者の精神的な負担の軽減や医療費の大幅な抑制効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る点眼補助具の概略斜視図である。
【
図2】
図1の点眼補助具を別の角度か見た概略斜視図である。
【
図3】
図1の点眼補助具を用いた点眼動作を説明する図である。
【
図4】
図1の点眼補助具に装着した点眼容器の点眼用のノズルの位置を説明するための図である。
【
図5】
図1の点眼補助具を用いた点眼実験を行う際の条件を説明するための図である。
【
図6】
図1の点眼補助具を用いた点眼実験を行う際の、点眼距離、点眼角度による点眼の成功率を説明するための図である。
【
図10】投薬管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
<点眼補助具の概要>
点眼補助具の概要について、
図3を参照しながら以下に説明する。
図3は、本実施形態に係る点眼補助具1の使用例を示す。
【0020】
点眼補助具1は、
図3に示すように、患者100(ユーザ、点眼対象者、被投与者)に対する点眼液の投与を補助する補助具である。点眼補助具1は、補助具本体(装着部)10および接眼ガイド(位置決め部)20を含んでいる。なお、本実施形態では、患者100自身が点眼補助具1を使用して点眼容器(容器本体)30から点眼する例を説明する。すなわち、患者100は、点眼補助具1のユーザであり、かつ、点眼液の被投与者である。一方、点眼補助具1のユーザと、被投与者が別の人間であってもよい。
【0021】
以下に、点眼補助具1の詳細な構造について、
図1および
図2を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る点眼補助具1の概略斜視図を示し、
図2は、
図1の点眼補助具1を別の角度から見た概略斜視図を示す。なお、点眼補助具1に装着して使用する点眼容器30は、点眼液を吐出させる点眼吐出部30a、点眼液を収容する点眼液収容部30bで構成されているものとする。
【0022】
<補助具本体10>
補助具本体10は、
図1に示すように、略円筒状であり、点眼液を収容した点眼容器30を着脱自在とする装着部である。補助具本体10の周囲には、点眼容器30を出し入れするための第1開口部10aと、第1開口部10aに対向する位置に、当該第1開口部10aよりも小さな第2開口部10bとが形成されている。これにより、この補助具本体10に、点眼容器30の点眼吐出部30aを接眼ガイド20側に向けて、当該点眼容器30の点眼液収容部30bを装着すれば、当該点眼液収容部30bの一部が第1開口部10aと第2開口部10bとから露出する。ユーザは、補助具本体10から露出した点眼容器30の点眼液収容部30bを指で直接押さえることで、当該点眼液収容部30bに収容された点眼液を点眼吐出部30aから吐出させることができる。
【0023】
また、補助具本体10の第1開口部10aと第2開口部10bが形成されていない側面が切り欠かれている。これにより、補助具本体10に装着された点眼容器30の点眼液収容部30bの露出部分が多くなり、当該点眼液収容部30bをさらに押さえやすくできる。
【0024】
さらに、補助具本体10の内面には、点眼容器30を装着した際に、点眼液収容部30bを底面に接触する第1リブ11、当該点眼液収容部30bの側面に接触する第2リブ12、当該点眼液収容部30bの上面側部に接触する第3リブ13が形成されている。これら第1リブ11,第2リブ12,第3リブ13によって、補助具本体10に装着された点眼容器30の点眼液収容部30bを確実にホールドするようになっている。ただし、点眼液収容部30bおよび補助具本体10は、弾性を有する必要がある。つまり、点眼液収容部30bと補助具本体10の弾性を利用して、当該点眼液収容部30bを補助具本体10にホールドしている。
【0025】
また、補助具本体10は、接眼ガイド20とは反対側の端部を平面形状にすることで、この平面を下にして机などの平面に載置することで、点眼補助具1を自立させることも可能である。
【0026】
<接眼ガイド20>
接眼ガイド20は、補助具本体10に連接され、
図3に示すように、患者1の眼101の周囲に接触する部分である。接眼ガイド20と補助具本体10は一体的に形成されていてもよいし、別々に形成されていてもよい。
【0027】
接眼ガイド20は、
図1に示すように、患者1の眼101の周囲に直接接触する第1開口部20a、補助具本体10の第1開口部10aに連通した第2開口部20b、当該補助具本体10の第2開口部10bに隣接して形成された第3開口部20cが形成されている。
【0028】
接眼ガイド20の第2開口部20bと第3開口部20cは、補助具本体10に点眼容器30が装着されたときに、当該点眼容器30の点眼吐出部30aが露出するように形成されている。これにより、ユーザは、補助具本体10に点眼容器30を装着した状態で、当該点眼容器30の点眼吐出部30aに嵌められたキャップ(図示せず)を第2開口部20bと第3開口部20cに指を入れて着脱することが可能となる。
【0029】
点眼補助具1を使用する際には、
図3に示すように、接眼ガイド20の第1開口部20aにおける第2開口部20b形成側の上端20dを患者100の眼101の上瞼101a側に当接させる。そして、当該第1開口部20aにおける第3開口部20c形成側の下端20eを患者100の眼101の下瞼101b側に当接させる。
【0030】
第1開口部20aの下端20eは、第3開口部20c側に向かって湾曲した湾曲部20fが形成されている。この湾曲部20fは、患者100が右手102で点眼補助具1を操作する際に、当該患者100の左手103の指が入り込む大きさに形成されている。これにより、接眼ガイド20を眼101の周囲に接触させた状態で、湾曲部20fから指を入れて、下瞼101bを下げることが可能となる。なお、
図3は、右手102で点眼補助具1を操作し、左手103の指を接眼ガイド20の湾曲部20fに入れて当該点眼補助具1を使用する例を示しているが、左手103で点眼補助具1を操作し、右手102の指を接眼ガイド20の湾曲部20fに入れて当該点眼補助具1を使用してもよい。このように、点眼補助具1は左右対称構造であってもよい。また、下瞼101bを下げる手と、点眼液収容部30bを押さえる手が、左右の手のそれぞれに決められた、左右非対称構造、すなわち、右利き用または左利き用の構造であってもよい。
【0031】
このように、接眼ガイド20において湾曲部20fを設ければ、当該接眼ガイド20の眼101周囲に当接したときに、湾曲部20fに指を入れることで、所定の位置に導くことが可能となる。つまり、接眼ガイド20の位置決めを適切に行うことが可能となる。
【0032】
また、位置決めを適切に行うために、接眼ガイド20の眼101の周囲への当接部分のうち、眼101の目尻、目頭の対応する部分を他の箇所よりも突出させている。これにより、接眼ガイド20を眼101の周囲に当接する際に、突出した部分がガイドとなり、接眼ガイド20を所定の位置に導くことが可能となる。
【0033】
なお、点眼補助具1において、弾性を有する素材としてポリプロピレンによって補助具本体10および接眼ガイド20を形成している。
【0034】
しかしながら、点眼補助具1の素材としては、ポリプロピレンに限定されるものではなく、水耐性・薬耐性を有し、且つ弾性を有する素材であれば、どのような素材であってもよい。
【0035】
また、点眼補助具1において使用する点眼容器30においても、点眼補助具1と同様に、弾性を有し、且つ水耐性・薬耐性の優れた素材で形成されていることが好ましい。
【0036】
<接眼ガイド20による位置決め>
点眼補助具1の接眼ガイド20による位置決めについて、
図1,
図3および
図4を参照しながら以下に説明する。
【0037】
点眼補助具1の補助具本体10に点眼容器30を装着した状態で、且つ、点眼対象者の眼の周囲に当接された状態のとき、
図1に示すように、接眼ガイド20が眼の周囲に当接する部分を補助具本体10側から床面に水平な面に投影して、各当接部分を繋げて得られた仮想領域(第1領域)(図中の点線の円:以下、仮想円Zと称する)の中心をXとする。また、上記仮想円Zにおいて、接眼ガイド20の上端20dが投影された点をYとする。ここで、中心Xから点Yまでの距離は、上記仮想円Zの半径に相当する。つまり、中心Xから点Yまでの距離は、
図3に示すように、接眼ガイド20を患者の眼101の周囲に当接した場合の当該接眼ガイド20の中心から上瞼101a側の上端20dまでの距離に相当する。上記仮想円Zの中心Xから点Yまでの距離は、10mm~30mmが好ましく、12.5mm~25mmがより好ましく、15mm~20mmが特に好ましい。さらに、上記点眼容器30の点眼吐出部30aの吐出孔30cを直線上に仮想円Zに向かって延ばして、当該仮想円Zに到達したときの到達点をAとする。このとき、接眼ガイド20は、到達点Aが中心Xよりも接眼ガイド20の上端20d側(眼101の上瞼101a側)に所定距離だけずれるように設計されている。なお、上記所定距離は、接眼ガイド20の上端20dから、上記吐出孔30cから上記仮想円Zに向かう垂線に向かって延びる線が交差した点までの距離に相当する。
【0038】
具体的には、接眼ガイド20は、
図3に示すように、患者100の眼101の周囲に当接する際に、少なくとも目尻、目頭の外側近傍に当接する。この際、接眼ガイド20を点眼液の吐出方向に向かって投影した投影面に形成される仮想円Zには、眼101の目尻および目頭の外側近傍で接着した部分が含まれる。この投影面に形成される仮想円Zの中心Xから所定距離だけ上瞼101a側にずれた位置に、補助具本体10に装着された点眼容器30の点眼吐出部30aに形成された点眼液の吐出孔30cがくるように形成されている。
【0039】
言い換えれば、接眼ガイド20は、点眼対象者が仰向けの姿勢で当該接眼ガイド20を眼101の周囲に当接した状態で、点眼容器30の点眼液の液滴が、眼101の表面(瞳101c)の中心位置から所定距離だけ上瞼101a側にずれた位置に滴下するように形成されていればよい。
【0040】
なお、仮想円Zにおける到達点Aと中心Xとの関係は、以下のようにしても定義できる。すなわち、患者100が仰向けの姿勢で接眼ガイド20を眼101の周囲に当接した状態のとき、上瞼に当接する、当該接眼ガイド20の位置を上側(
図1のY方向)としたとき、接眼ガイド20を床面に投影した仮想円Z内の到達点Aを、当該補助本体10の底面10cに投影した投影点(第1の点)A’が、仮想円Zの中心Xを底面10cに投影した投影点(第2の点)X’から上記上側に所定距離ずれた位置になるように点眼補助具1を設計する。
【0041】
また、所定距離は、2mm~4mmの範囲であることが好ましく、所定距離が3mmの場合が特に好ましい。また、所定距離が2mmよりも短い場合や所定距離が4mmよりも長い場合には、点眼成功の確率が低下するとの問題が生じる。
【0042】
上記構成の点眼補助具1を用いて点眼する際、点眼容器30から吐出される点眼液を眼の中心よりも上瞼101a側に滴下することが可能となる。これにより、患者100が座位あるいは立位で上を向いた状態では、点眼液の滴下位置が下瞼101b側にずれる。しかしながら、点眼容器30から吐出される点眼液を眼の中心よりも上瞼101a側に滴下するように接眼ガイド20が設計されているので、点眼液は眼101から下瞼101b側にはみ出さずに滴下することが可能となる。従って、点眼液の滴下位置を眼101の中心に重なるように点眼ガイドを設計した場合に比べて、点眼対象面が傾いても点眼液を正確に滴下することができる。
【0043】
しかも、接眼ガイド20を、点眼対象者が仰向けの姿勢で当該位置決め部を上記眼の周囲に当接した状態で、上記点眼容器30の点眼液の液滴が、上記眼101の表面の中心位置から所定距離だけ上瞼101a側にずれた位置に滴下するように形成するというシンプルな構造で、患者の眼に正確に点眼液を投与することができる。
【0044】
点眼液の吐出孔30cは、仮想円Zの中心Xから接眼ガイド20の上端20d側の点Yに向かって所定距離だけずれた位置にくるようにすればよい。このため、接眼ガイド20の外形に関係無く、
図4の(a)に示すように、横長の楕円形状であってもよく、また、
図4の(b)に示すように、縦長の楕円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。また、仮想円Zとしているため、外周の一部が欠けている接眼ガイド20であってもよい。なお、仮想円Zに限定されるものではなく、接眼ガイド20の投影によって形成される形状であればどのような形状であってもよい。
【0045】
また、接眼ガイド20は、補助具本体10と別体で設けられ、当該補助具本体10に装着された点眼容器30の点眼吐出部30aに直接接続するようにしてもよい。この場合、接続形態は特に制限されないが、例えば、点眼容器30の点眼吐出部30aに嵌められたキャップを外し、このキャップの代わりに接眼ガイド20を嵌め込むようにする。これにより、点眼補助具1は、接眼ガイド20だけで済み、補助具本体10が不要となるので、構成がさらにシンプルになる。
【0046】
以下に、上記構成の点眼補助具1を用いた点眼の成功率について、
図5~
図9を参照しながら以下に説明する。
【0047】
<点眼実験>
図5は、点眼補助具1を用いた点眼実験を行う際の各種条件を説明するための図である。
図6は、点眼補助具1を用いた点眼実験を行う際の、点眼距離、点眼角度による点眼の成功率を説明するための図である。
【0048】
点眼実験を行う際には、
図5の(a)に示すように、点眼対象となる人の眼の高さd1、
図5の(b)に示すように、点眼液の液滴径d2、
図5の(c)に示すように、点眼距離d3が必要である。
【0049】
人の眼の高さd1は、
図5の(a)に示すように、眼101の上瞼101aと下瞼101bとの間に存在する瞳(黒目)101cの幅とする。ここで、d1は約10mmとする。この約10mmは、一般的な日本人の眼101の瞳101cの直径は約12mmであり、上瞼101aと下瞼101bとによって覆われている部分がそれぞれ1mmとしたと仮定した場合の値である。
【0050】
液滴径d2は、
図5の(b)に示すように、点眼吐出部30aから滴下した液が完全に球体になったときの直径とする。ここで、d2は約4mmとする。この約4mmは、1滴の液量が0.040mlのときに、当該液が完全な球体となったときの直径である。
【0051】
点眼距離d3は、
図5の(c)に示すように、点眼吐出部30aの吐出孔30cから眼101の瞳101c表面までの距離とする。
【0052】
図6の(a)は、投薬対象者が仰向けになった状態(傾斜角θ=0)を想定したときの点眼液の滴下状態を示し、
図6の(b)は、投薬対象者が座位あるいは立位で上を向いた状態(傾斜角θ>0)を想定したときの点眼液の滴下状態を示している。ここで、
図6に示す瞳101cを
図1に示した仮想円Zと想定し、当該瞳101cの中心をX、点眼吐出部30aの吐出孔30cを直線上に延ばして瞳101cの表面に到達したときの到達点Aとする。従って、
図6の(a)に示すように、傾斜角θ=0の場合には、瞳101cの到達点Aは液滴が滴下される滴下位置Bと重なる。しかしながら、
図6の(b)に示すように、傾斜角θ>0の場合には、瞳101cの到達点Aと、液滴が滴下される滴下位置Bとがずれている。つまり、液滴が滴下される滴下位置Bは、瞳101cにおける下瞼101b側にずれる。傾斜角θは、瞳101cの表面が鉛直方向に直交する面に対して傾く角度とする。
【0053】
ここで、
図6の(b)において、点眼距離d3、ずれ量h、上記傾斜角をθとしたとき、
ベクトルOX=d1/2(cosθ、sinθ)
ベクトルXQ=d3(cos(θ+π/2)、sin(θ+π/2))
ベクトルQR=h(cosθ、sinθ)
となり、瞳101cにおける下眼瞼から液滴端の距離H1は(1)で表すことができる。
【0054】
H1=((d1/2)+h)cosθ-d3sinθ-d2/2・・・(1)
すなわち、H1は、ベクトルORのX成分から液滴半径のd2/2を引いた値となる。
【0055】
また、点眼距離d3、ずれ量h、上記傾斜角をθとしたとき、瞳101cにおける上眼瞼から液滴端の距離H2は(2)で表すことができる。
【0056】
H2=((d1/2)-h)cosθ+d3sinθ-d2/2・・・(2)
すなわち、H2は、ベクトルORのX成分と液滴半径のd2/2を、d1cosθから引いた値となる。
【0057】
式(1)、(2)を用いて、得られる値から点眼が成功したか否かを知ることができる。
【0058】
以下、人の眼の高さd1を約10mm、液滴径d2を約4mmとしたときに、到達点Aと中心Xのずれ量h毎に、点眼距離をd3と傾斜角θの値を変えて(1)、(2)の値を求めた実験を行った。実験結果を
図7~
図9に示す。
【0059】
<実験結果>
図7は、ずれ量hを2mmとしたときに、式(1)、(2)を用いて傾斜角θ、点眼距離d3を変えて求めた値を示す表である。図中の(1)(2)は、それぞれ式(1)(2)に対応する。
【0060】
図8は、ずれ量hを3mmとしたときに、式(1)、(2)を用いて傾斜角θ、点眼距離d3を変えて求めた値を示す表である。図中の(1)(2)は、それぞれ式(1)(2)に対応する。
【0061】
図9は、ずれ量hを4mmとしたときに、式(1)、(2)を用いて傾斜角θ、点眼距離d3を変えて求めた値を示す表である。図中の(1)(2)は、それぞれ式(1)(2)に対応する。
【0062】
ずれ量hが2mmの場合、すなわち、点眼吐出部30aの吐出孔を上瞼101a側に、瞳101cの中心から2mm上げた時、
図7に示す表中の特定の傾斜角θにおける(1)、(2)の値が互いに正であることが点眼成功を示す。表中の斜線部分を除く箇所が点眼成功を示している。
【0063】
この結果から、仰臥位(傾斜角θ=0°)で点眼しても液滴は上瞼101aやまつ毛101dに接触することなく点眼が成功していることが分かる。しかも、点眼距離d3が5mmであれば、傾斜角θが0°~40°まで成功している。
【0064】
ずれ量hが3mmの場合、すなわち、点眼吐出部30aの吐出孔を上瞼101a側に、瞳101cの中心から3mm上げた時、
図8に示す表中の特定の傾斜角θにおける(1)、(2)の値が互いに正であることが点眼成功を示す。表中の斜線部分を除く箇所が点眼成功を示している。
【0065】
この結果から、仰臥位(傾斜角θ=0°)で点眼しても液滴は上瞼101aやまつ毛101dに接触することなく点眼が成功していることが分かる。しかも、点眼距離d3が5mmであれば、傾斜角θが0°~45°まで成功している。
【0066】
ずれ量hが4mmの場合、すなわち、点眼吐出部30aの吐出孔を上瞼101a側に、瞳101cの中心から4mm上げた時、
図9に示す表中の特定の傾斜角θにおける(1)、(2)の値が互いに正であることが点眼成功を示す。表中の斜線部分を除く箇所が点眼成功を示している。
【0067】
この結果から、仰臥位(傾斜角θ=0°)では、液滴が上瞼101aやまつ毛101dに接触するため、点眼は不成功である。従って、h=4mmの場合には、傾斜角θ=5°のときに、点眼距離d3を12mm以上にすれば点眼が成功することが分かる。
【0068】
以上のことから、人の眼の高さd1を約10mm、液滴径d2を約4mmとしたときに、好ましいずれ量hは2mm、3mmといえる。なお、ずれ量hが4mmの場合、投与対象者が仰向けになった状態(傾斜角θ=0)では、点眼液が上瞼101aやまつ毛101cに付着するため、好ましくない。
【0069】
また、特に好ましいずれ量hは、3mmである。これは、ずれ量hが2mmの場合よりも、大きな傾斜角θで点眼成功しているためである。
【0070】
なお、好ましいずれ量hは、3mmに限定されない。これは、人の眼の高さd1、液滴径d2が変更されれば、好ましいずれ量hも変わるためである。
【0071】
<効果>
以上のように、上記構成の点眼補助具1によれば、点眼対象者が座位あるいは立位姿勢であっても、適切に点眼することができる。このように、点眼液を正確に点眼できることで、薬剤の効果が十分に発揮される。その結果、眼疾患の治癒期間の短縮、患者の精神的な負担の軽減や医療費の大幅な抑制効果が期待される。しかも、点眼補助具1の構造がシンプルなため、製造コストを抑え、しかも、壊れにくいという効果も奏する。
【0072】
上記構成の点眼補助具1を使用した投薬管理について以下に説明する。
【0073】
<投薬管理>
点眼補助具1等の点眼デバイスに、カメラ、LED(light emitting diode:発光ダイオード)ライトやセンサを組み込むことで、患者の投薬実態を把握することが出来る。
【0074】
例えば、点眼補助具1の接眼ガイド20内に、LEDライト、カメラを備えた場合、患者が点眼補助具1を握ると、LEDライトが点灯する。患者は、それを見て点眼することで眼を閉じないように誘導することができる。また、点眼液を吐出する時、カメラにより眼の撮影を行う。この場合におけるカメラにより眼の撮影を行うとは、カメラにより、点眼液が吐出された時の眼を含む領域を撮影することである。例えば吐出された点眼液が眼に点眼された直後の状態や、吐出された点眼液が眼に点眼されるまでの状態等を撮影できる。このカメラによって撮影された画像を蓄積することにより、患者の点眼状態を管理することもできる。
【0075】
また、点眼補助具1に装着するセンサとして、赤外線温度センサを用いることで、点眼の成否を客観的に検出することができる。具体的にはOcular Surface Thermographer(トーメイ)などに装着されているような赤外線センサを点眼補助具1の接眼ガイド20内側に組込み、点眼後数秒間の眼表面温度変化を測定する。点眼液は通常室温であり眼表面は37℃付近であることから、点眼の瞬間は眼表面で急激な温度低下が検出される。この現象を利用して、点眼の成否を赤外線温度センサにより検出できるようにしている。
【0076】
なお、超小型サイズのセンサとアンプからなる非接触温度計を用いて眼表面の温度を測定するようにしてもよい。この場合、応答速度が30msecと早く、液滴が入った際の眼表面の温度変化を瞬時に検知できるため、点眼の成否をより早く検出することが可能となる。
【0077】
点眼補助具1によって点眼されたことによって得られるデータ、例えば点眼量を示すデータ、カメラによる撮影画像データ、点眼の成否を示すデータ等を、点眼した日付と対応付けて管理することで、患者の投薬実態を把握することが出来る。
【0078】
例えば、点眼によって得られる上述したようなデータは、点眼デバイスである点眼補助具200に保存されると共にスマートフォンやパソコンと同期される。またスマートフォンやパソコンと同期されたデータは、電話回線やインターネットを通じてクラウドサーバに自動的に保管される。以下に、具体的な投薬管理システムについて説明する。
【0079】
<投薬管理システム>
図10は、点眼デバイスとして点眼補助具1を用いた患者の点眼管理を行うための投薬管理システムの概略ブロック図を示している。
【0080】
点眼補助具1を用いた投薬管理システムは、
図10に示すように、点眼補助具1を用いるユーザ(患者)の点眼管理を行う管理者(保護者)が操作するスマートフォン(携帯端末)401、上記ユーザ(患者:被投与者)の点眼管理を行う管理者(医者)が操作するパーソナルコンピュータ402、インターネット接続されたルータ403、クラウドコンピュータ404、管理サーバ405を含んでいる。
【0081】
<点眼補助具1の機能>
点眼補助具1には、専用の製剤を装着して投薬管理を行うために、時計、カウンタ、カメラ、メモリ、LEDライト、バッテリー、バッテリーインジケータ、通信機能(Bluetooth(登録商標)4.0、WiFi(登録商標))、バーコード読取り機能、ICタグ読取り機能、アラーム鳴動機能が搭載されている。これにより、点眼補助具1を用いて、以下に示す基本的な投薬管理を行うことが可能となる。
【0082】
(1)製剤の種類の判定:専用の製剤を含んだ点眼容器30に添付されたバーコードを、カメラ及びバーコード読取り機能を用いて読取り、専用の製剤の種類を判定し、製剤の種類を、当該点眼容器30の点眼補助具1へ挿入時に自動記録する。
【0083】
(2)点眼する時間のお知らせ(アラーム):予め設定された投薬時間になると、点眼補助具1のアラーム鳴動機能を用いて、アラームを鳴らす。この場合、点眼補助具1を管理するスマートフォン401からアラームを鳴らすようにしてもよい。
【0084】
(3)点眼した時間の記録:点眼補助具1を用いて点眼した際に、カメラによる撮像画像データ、センサによる点眼の成否を示すデータを、点眼した日付と共に記録する。
【0085】
(4)点眼する時の補助ライト:点眼補助具1に設けられたスイッチにて接眼ガイド20内に設置されたLEDライトを点灯させる。患者は、LEDライトの光を見て点眼することで目を開けることを意識する。
【0086】
(5)デバイスのID管理:データ管理のための識別情報を設定し、取得したデータに対応付けてメモリに記録する。
【0087】
(6)点眼カレンダー:既に記録したデータから、時系列の点眼の記録を、点眼した日時・製剤の種類・画像データ・メモなどを記した表にしたデータ(点眼カレンダー)を作成する。
【0088】
(7)投薬履歴データ:処方した製剤の種類・履歴(投与した日時、投与量等)
(8)残滴量管理:容器内の残液量と使用可能な期間を示すことで、点眼液の残滴量管理を行う。
【0089】
(9)点眼補助具1のバッテリー残量管理:バッテリーインジケータにバッテリーの残量を表示する。例えばバッテリーが1年程度もつと考えた場合、バッテリー残量がなくなる1ヶ月前に警告する。
【0090】
(10)通信機能を用いて、スマートフォン401やパーソナルコンピュータ402とデータ通信(Bluetooth(登録商標)又はWiFi(登録商標))を行う。
【0091】
<スマートフォン401ができる機能>
スマートフォン401として搭載している機能を用いて以下示す基本的な投薬管理を行うことが可能となる。
【0092】
(1)点眼デバイスとデータ通信(Bluetooth(登録商標)又はWiFi(登録商標))を行う。
【0093】
(2)クラウドコンピュータ404からクラウドデータ(投薬管理データ)のダウンロードと、ダウンロードした投薬管理データの表示を行う。
【0094】
(3)カレンダー上にて投薬管理データを表示する。
【0095】
(4)使用している製剤の種類や残液量、残り使用可能な日数等を表示する。
【0096】
(5)複数種類の製剤毎に投薬時間のアラームの鳴動を行う。
【0097】
(6)点眼補助具200が取得した画像データ等のクラウドへの自動アップロードを行う。
【0098】
<パーソナルコンピュータ402の機能>
基本的に、パーソナルコンピュータ402では、スマートフォン401ができる機能を実行することができる。パーソナルコンピュータ402において、スマートフォン401ができる機能以外でできる機能として、少なくとも以下のような機能を実行することができる。
【0099】
(1)クラウドコンピュータ404に格納されている複数患者の情報確認を行う。
【0100】
(2)点眼補助具1の使用患者の製剤別の累積処方量の把握を行う。
【0101】
<投薬管理システムを用いた投薬管理の実例>
(点眼補助具1の操作)
点眼補助具1による製剤認識の方法として、ソフトウェアによる製剤認識を行う方法と、ハードウェアによる製剤認識を行う方法がある。なお、点眼補助具1には、電源スイッチは存在しなく、電池が装着し、電源が有る限り駆動し続けるものとする。
【0102】
(1)ソフトウェアによる製剤認識の方法
点眼補助具1は、搭載したカメラを製剤のバーコード表示部分に向け。そして、バーコードの読取り完了すると「ピピッ」と鳴る。これで製剤の種類の登録が完了する。登録完了した製剤のノズルの向きを合わせて点眼補助具1にセットする。
【0103】
(2)ハードウェアによる製剤認識の方法
製剤には、製剤の種類により製剤を入れた点眼容器30の点眼吐出部30aに突起があり、それぞれの製剤により突起の位置が異なる。この製剤を点眼吐出部30aのノズルの向きを合わせて点眼補助具1にセットする。これにより、点眼吐出部30aに形成された突起の位置により点眼補助具1にセットされた製剤の種類が認識され、当該点眼補助具1に登録される。
【0104】
ユーザは、上記(1)または(2)の方法により、製剤の種類が認識された点眼容器30がセットされた点眼補助具1を軽く握り、接眼ガイド20で目の位置へあてがう。点眼補助具1には、瞼を指で押し下げるために当該指を入れる湾曲部20fが設けられている。この湾曲部20fから入れた指によって瞼を下方向に引っ張る。この状態で、点眼補助具1の補助具本体10を持つとLEDライトが光る。患者はその光を見ながら当該補助具本体10に装着された点眼容器30を押さえることで、点眼吐出部30aのノズルの先端部から点眼剤の1滴が吐出される。
【0105】
ここで、液滴が発射されると同時に、接眼ガイド20内に設置されたカメラのシャッターが切れ写真が撮られる。このとき、瞬間的に複数回シャッターが切られ、複数枚の写真が撮られる。若しくは、センサが液滴の通過を検知するか、液滴が目の中に入った時の眼表面温度の変化を検知することで、点眼の成否を観察することが出来る。
【0106】
点眼が終わると製剤を含んだ点眼容器30を点眼補助具1から取り外し、次の製剤を装着できるように次の製剤のバーコードを読み取り、上述した要領で、点眼する。そして、全ての製剤の点眼が終了すれば、点眼操作は完了する。
【0107】
次に、点眼補助具1は、Bluetooth(登録商標)又はWiFi(登録商標)によって、保護者または患者本人が操作するスマートフォン401とデータの同期を行う。
【0108】
(スマートフォン401の操作)
スマートフォン401には、投薬管理システムで用いるための点眼補助具1専用のアプリケーションがインストールされているものとする。
【0109】
このアプリケーションを用いることで、スマートフォン401と点眼補助具200とが通信することが可能となる。通信の際には、点眼補助具1に割り振れたID番号をスマートフォンのアプリケーションが取得し、点眼補助具1を認識できるようになっている。
【0110】
また、上記アプリケーションを用いることで、点眼補助具1に割り振れたID番号とパスワードを使うことで電話回線により、投薬管理システム内の管理サーバ405とクラウドコンピュータ404を介して通信できるようになっている。
【0111】
上記アプリケーションには、カレンダー機能が設定されており処方された製剤の登録と点眼タイミングを設定することが出来るようになっている。また、点眼補助具1と同期させることで点眼タイミングを当該点眼補助具1にも設定できるようになっている。
【0112】
上記アプリケーションを用いることで、点眼補助具1と通信し、点眼を実施した時間や製剤の種類、カメラやセンサで捉えた画像などのデータを取り込む事ができる。このようにして取り込んだデータは、点眼補助具1もスマートフォン401にも約3ヶ月分以上を保存することができ、万が一通信できなくてもそれぞれのデータが保存されていくようになっている。
【0113】
アプリケーション実行時のスマートフォン401の表示画面には、カレンダー上でそれぞれの製剤が点眼できているかがマークで表示される。また、必要に応じカメラやセンサで捉えた画像や記録を確認することもできる。
【0114】
(クラウドサーバ)
クラウドサーバは、インターネット上でクラウドコンピュータ404と管理サーバ405とで構築されており、データベース機能と解析表示機能とを有している。クラウドサーバには、スマートフォン401を通して、日々若しくは一定の期間のデータがロードされる。ロードは、スマートフォン401上に蓄積されたデータを当該スマートフォンの表示画面に表示された「保存」をクリックすることで実行される。
【0115】
クラウドサーバへのアクセスは、スマートフォン401若しくはパーソナルコンピュータ402から点眼補助具200のID番号とパスワードでアクセスすることが出来る。
【0116】
クラウドサーバへスマートフォン401からアクセスする場合は、登録されているID番号からその個人のデータのみにアクセス可能となる。医者が複数の患者のデータを閲覧したい場合は、別途アクセス権を設定しそれぞれ個人の情報を閲覧のみ可能な状況にする。例えば、医者は、パーソナルコンピュータ402において、クラウドデータの閲覧として、個人の点眼履歴が分かるカレンダーと画像データを表示することで確認出来る。さらに、医者は、パーソナルコンピュータ402において、付加情報として、各製剤の点眼回数や残液量が確認でき、製剤の残量が少なくなると処方を促す表示を確認することができる。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1 点眼補助具
10 補助具本体
10a 第1開口部
10b 第2開口部
11 第1リブ
12 第2リブ
13 第3リブ
20 接眼ガイド
20a 第1開口部
20b 第2開口部
20c 第3開口部
20d 上端
20e 下端
20f 湾曲部
30 点眼容器(容器本体)
30a 点眼吐出部
30b 点眼液収容部
100 患者(点眼対象者)
101 眼
101a 上瞼
101b 下瞼
101c 瞳
101d まつ毛
102 右手
103 左手
200 点眼補助具
401 スマートフォン
402 パーソナルコンピュータ
403 ルータ
404 クラウドコンピュータ
405 管理サーバ