(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231012BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20231012BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20231012BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20231012BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20231012BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20231012BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231012BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20231012BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231012BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20231012BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/88 Z
A61K47/62
A61K47/54
A61K47/56
A61K47/69
A61P21/00
A61P21/04
A61K48/00
A61K31/711
C07H21/04 Z CSP
(21)【出願番号】P 2020524657
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 CA2018050881
(87)【国際公開番号】W WO2019014772
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-16
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509014803
【氏名又は名称】ザ ガヴァナーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アルバータ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】横田 俊文
(72)【発明者】
【氏名】越後谷 裕介
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521555(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078797(WO,A2)
【文献】特表2013-510561(JP,A)
【文献】特表2015-522275(JP,A)
【文献】国際公開第03/071872(WO,A1)
【文献】特表2011-502118(JP,A)
【文献】脳と発達,2010年,42,p. 117-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合
してエクソンスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログであって、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログが、配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)又は配列番号5(Ac48)からな
り、
かつ
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログが、モルホリノオリゴヌクレオチドである、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログおよび担体を含むコンジュゲートであって、
担体が、アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログにコンジュゲートされている、
前記コンジュゲート。
【請求項3】
担体が、アンチセンスオリゴヌクレオチド
アナログを標的細胞に輸送する、請求項
2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
担体が、ペプチド、ポリマー、ナノ粒子、脂質、リポソーム、細胞透過性ペプチドまたはエクソソームから選択される、請求項
2または
3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
請求項
1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ、および/または請求項
2から
4のいずれか1項に記載のコンジュゲート、および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
対象の筋障害を治療するための薬剤を製造するための、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合
してエクソンスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログの使用であって、
前記筋障害が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーであり
、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログが、配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)又は配列番号5(Ac48)からな
り、
かつ
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログが、モルホリノオリゴヌクレオチドである、
前記使用。
【請求項7】
筋障害がデュシェンヌ型筋ジストロフィーである、請求項
6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2017年7月21日に提出された英国特許出願第1711809.2号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合してエクソンスキッピングを誘導する治療用アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにそのコンジュゲートおよび組成物に関する。本発明はさらに、筋障害、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための方法およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的スプライシングの破壊が多くの疾患の根底にあり、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたスプライシングの調節は治療的な意味を有しうる。スプライススイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(SSO)は、アンチセンス媒介エクソンスキッピングがオープンリーディングフレームを回復させ、非機能的タンパク質の代わりに部分的または完全に機能的なタンパク質の合成を可能にしうる、神経筋疾患の新進の治療法であり、現在、脊髄性筋萎縮症(SMA)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの状態について、いくつかのSSOで臨床試験が行われている。
【0003】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、世界中の男児において最も一般的な致死的遺伝性障害の1つであり、その発生率は、男性の出生数3,600~9,337人中、約1人である。DMDは、ジストロフィン(DMD)遺伝子の変異によるジストロフィンタンパク質の欠如によって引き起こされる。タンパク質をコードする遺伝子は、200万ヌクレオチド以上のDNAにまたがる79個のエクソンを含有する。エクソンのリーディングフレームを変更する、または終止コドンを導入する、または1つまたは複数のエクソンまたは1つ以上のエクソンの重複全てのフレームからの除去を特徴とする任意のエクソン変異が、機能的なジストロフィンの産生を破壊し、DMDを生じさせる可能性を持つ。より軽度の筋ジストロフィーであるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、通常1つ以上のエクソンの欠失などの変異が、ジストロフィン転写産物全体にわたって正しいリーディングフレームを生じ、mRNAのタンパク質への翻訳が早まって終結しない場合に生じることが見出されている。変異したジストロフィンプレmRNAのプロセッシングにおける上流と下流のエクソンの結合が、遺伝子の正しいリーディングフレームを維持する場合、その結果は、ベッカー表現型をもたらす、活性をいくらか保持した短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAである。ジストロフィンタンパク質のリーディングフレームを変えない1つまたは複数のエクソンの欠失は、BMD表現型を引き起こす一方、フレームシフトを引き起こすエクソンの欠失は、DMDを引き起こすであろう(Monaco, Bertelson et al. 1988)。一般に、リーディングフレームを変更し、適切なタンパク質の翻訳を妨げる点変異やエクソン欠失を含むジストロフィン変異は、DMDをもたらす。
【0004】
現在、最も有望な治療手段の1つは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)を用いたエクソンスキッピングである。エクソンスキッピングは、変異エクソンおよび/またはその隣接エクソンをDMDプレmRNAから除去することでリーディングフレームを回復させ、短縮型であるが部分的に機能的なジストロフィンタンパク質の生産を可能にする。DMD患者の大多数は欠失変異を抱えており、これらの20%はエクソン51のスキッピングに適している。
2016年9月、米国食品医薬品局(FDA)は、変異DMDからエクソン51を排除するために開発された、最初のDMDアンチセンス薬であるエテプリルセン(エクソンディス51)を条件付きで承認した。エテプリルセンは、その安全性と有効性の観点から定評のあるアンチセンス化学であるホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(モルホリノまたはPMO)で修飾されたAOである。しかしながら、エテプリルセンは、ジストロフィンタンパク質を治療的に有益なレベルにまで回復すること、および臨床転帰を改善することの両方に関して、薬物の有効性を支持する弱い証拠しかないため、依然として議論の的となっている。FDAは以前に、DMDエクソン51スキッピングに関する別の候補薬である2’-O-メチル-ホスホロチオエートベースのAO「ドリサペルセン」を拒絶している。治療薬は、最小限のリスクで最大限の利益を保証する必要があるが、ドリサペルセンによる治療では、筋機能の有意な改善が実証されず、その使用は安全性に対する懸念を導いた。
したがって、多くの動物試験において有意な治療効果が実証されているという事実にもかかわらず、エクソンスキッピング療法は現在、患者において観察される有効性が非常に低いという大きな課題に直面している。
【0005】
エクソンスキッピングの効率は、AO標的配列に大きく依存する。しかしながら、エテプリルセンとドリサペルセンにより標的とされる配列が、エクソンスキッピング療法のための最適な選択肢ではないかもしれないという議論や考察はほとんどなかった。いくつかのグループが、効果的なAO配列を計算的および経験的に決定するために、大規模なAOスクリーニングの取り組みを行ってきた。しかしながら、設計されたAOのエクソンスキッピング有効性は、定量的および統計的の両方で評価されていない。ジストロフィンタンパク質の発現を回復させることは、ジストロフィーの筋機能を改善するために必要であるが、ジストロフィンタンパク質の発現をレスキューするAOの能力は、以前のAOスクリーニング研究では十分な定量方法により報告されていない。他の研究は、初代DMD筋細胞からのRT-PCRに大きく依存していた。エテプリルセンとドリサペルセンのAO配列が、この状況でしか決定されていないことは注目に値する。
したがって、エクソン51スキッピング療法の有効性は、より最適なAO配列を選択することにより、また臨床試験において進められるベストなアンチセンスオリゴヌクレオチドを検証するために、DMDにおいてレスキューされたジストロフィンタンパク質など、より信頼性が高く直接的な生物学的測定を使用して、より厳密なAOスクリーニングを実施することにより、改善されうる。
【0006】
本発明の1つ以上の態様の目的は、当該技術分野における1つ以上のそのような課題に対処することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドが提供され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が(entirely)起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび担体を含むコンジュゲートが提供され、ここで、担体はアンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされている。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様のコンジュゲートを負荷された細胞が提供される。
本発明の第4の態様によれば、第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または第2の態様によるコンジュゲート、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明の第5の態様によれば、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができる有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを対象に投与することを含む、対象における筋障害を治療する方法が提供され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む。
本発明の第6の態様によれば、対象の筋障害の治療における使用のためのヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドが提供され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む。
本発明の第7の態様によれば、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量と細胞を接触させることを含む、細胞におけるヒトジストロフィンタンパク質発現を増加させる方法が提供され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む。
本発明の特定の実施形態が、以下の図および表を参照して、これから説明される:
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エクソン52欠失DMD骨格筋細胞不死化クローン(KM571)における、10μMのアンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)ならびにエテプリルセン(aEte)およびドリサペルセン(aDri)のアナログAOのin vitroスクリーニングを示す図である。分化した筋管をトランスフェクション後5日目に回収した。(A)ワンステップRT-PCRで測定したエクソン51スキッピングの効率。代表的な画像が示される。M、100bpマーカー;ブランク、RNAテンプレートなし。(B)抗ジストロフィンC末端抗体を用いた定量的ウエスタンブロッティングで測定した短縮型ジストロフィンタンパク質の誘導効率。健常な8220細胞の検量線を使用して、レスキューされたジストロフィンタンパク質のレベルを計算する。データは3~4回の独立した実験の平均±SDを表す。
**aEteに対しp<0.01、†aDriに対しp<0.05および††p<0.01、§§(A)の全てのAOおよび(B)のAc0に対しp<0.01。
【
図2】5μMのAc0、Ac48、ならびにエテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログAOをトランスフェクトしたエクソン52欠失DMD-KM571細胞株におけるジストロフィンのエクソン51スキッピングおよびタンパク質の経時変化分析を示す図である。サンプルをトランスフェクション後2日目および11日目に回収した。(A)エクソン51スキッピングのRT-PCR分析。M、100bpマーカー;R、複製番号;ブランク、RNAテンプレートなし。(B)抗ジストロフィンC末端抗体を用いたウエスタンブロッティングによる誘導ジストロフィンタンパク質の定量。3回の独立した実験の代表的な複製が示される。
【
図3】ワンステップRT-PCRおよび定量的ウエスタンブロッティングで測定した、不死化DMD骨格筋細胞におけるAc0、Ac48、ならびにエテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログAOの用量依存効果を示す図である。DMD骨格筋細胞に1、3、および10μMのAOをトランスフェクトし、トランスフェクション後5日目に回収した。(A)および(B)は、エクソン52欠失変異を有するDMD筋細胞(ID KM571)におけるエクソン51のスキッピング効率と、レスキューされたジストロフィンタンパク質の発現レベルをそれぞれ示す。エクソン48~50の欠失変異を有するDMD筋細胞(ID 6594)においてエクソン51をスキップし、ジストロフィンタンパク質の発現をレスキューする効率が(C)および(D)にそれぞれ示される。データは、KM571細胞株での3~7回の独立した実験、および6594細胞株での3~4回の独立した実験の平均±SDを表す。
*aEteに対しp<0.05、
**p<0.01;†Ac48に対しp<0.05および††p<0.01;§同じ濃度のaDriに対しp<0.05、§§p<0.01、NS、次の投与でのAc0に対し有意性なし;ns、10μMでのAc0に対し有意性なし。(E)回帰モデルによって分析されたAOに対する用量反応性。スキッピングとジストロフィンタンパク質の産生における回帰式の統計的妥当性は、それぞれp<0.008およびp<0.014であった。プロットは、回帰分析で予測されたエクソンスキッピングまたはジストロフィンタンパク質レベルの値を示す。回帰スロープと95%信頼区間(CI)が個々のAOにおいて示される。
【
図4】エクソン52(ID KM571)およびエクソン48~50の欠失変異(ID 6594)を含む不死化DMD患者由来骨格筋細胞の免疫細胞化学を示す図である。10μMのAc0、Ac48、およびアナログエテプリルセン(aEte)によるトランスフェクション後5日目の細胞を抗ジストロフィンC末端抗体で染色した。灰色の線は、ジストロフィン陽性の筋管を示す。白い点は、DAPIで対比染色された核を示す。*は、収縮または培養プレートからの剥離による代表的な偽陽性筋管を示す。示される代表的な画像は、3回の独立した実験からのものである。スケールバー:100μm。
【
図5】Ac0モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さの最適化を示す図である。不死化DMD筋細胞に25-、26-、27-、28-、29-、および30-merの長さからなるAc0モルホリノをトランスフェクトした。エクソン52が欠失したDMD筋細胞(KM571)において1μM(AおよびB)および3μM(CおよびD)のAc0モルホリノによって誘導されたエクソン51のスキッピングの代表的な画像と定量がRT-PCRにより表されるように示される。(E~H)は、エクソン48~50が欠失した不死化DMD細胞の結果を示す。データは3回の独立した実験をもとに示される。
【
図6】初代DMD骨格筋細胞と健常な骨格筋細胞においてAc0、Ac48、エテプリルセン(aEte)およびドリサペルセン(aDri)のアナログAOによって誘導されたエクソン51のスキッピング効率を示す図である。分化した筋管に10μMのAc0、Ac48、ならびにアナログエテプリルセンおよびドリサペルセンをトランスフェクトし、3日後に回収した。ワンステップRT-PCRにより表されるエクソン51のスキッピング効率が、エクソン45~50(ID 4546)(AおよびB)またはエクソン49~50(ID 4555)(CおよびD)の欠失変異を有する初代DMD細胞、および健常な初代筋細胞(EおよびF)において示された。データは、各条件における少なくとも3連のウェルからの平均値±SDを表す。M、100bpマーカー。
*Ac48に対しp<0.05および
**p<0.01、††aEteに対しp<0.01、§§aDriに対し<0.01。
【
図7】hDMD/Dmd-nullマウスモデルにおける30-merのAc0アンチセンスモルホリノオリゴヌクレオチドのin vivoでの有効性を示す図である。エクソンスキッピングの効率をAc0モルホリノまたはアナログエテプリルセン、aEte(生理食塩水30μL中50μg)の筋肉内注射の2週間後に、前脛骨筋を用いたRT-PCRによって分析した。(A)マイクロチップベースのキャピラリー電気泳動システムで表されるエクソン51スキッピングのデンシトメトリー分析。(B)エクソン51スキッピング効率の平均割合(平均±SE)。各グループにおいてN=7。M、マーカー;NT、未処置の筋肉、UM、上部マーカー色素;LM、下部マーカー色素。
【
図8】hDMD/Dmd-nullマウスモデルにおける30-merのAc48アンチセンスモルホリノオリゴヌクレオチドのin vivoでの有効性を示す図である。エクソンスキッピングの効率をAc48モルホリノまたはアナログドリサペルセンaDri(生理食塩水30μL中50μg)の筋肉内注射の2週間後に、前脛骨筋を用いたRT-PCRによって分析した。マイクロチップベースのキャピラリー電気泳動システムで表されるエクソン51スキッピングのデンシトメトリー分析。M、マーカー;NT、未処置の筋肉、UM、上部マーカー色素;LM、下部マーカー色素。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、ジストロフィンプレmRNA配列のエクソン51の0~+89の初期領域内に結合し、少なくとも27塩基の通常の長さよりも長い、それぞれが顕著な効率と有効性を有する一連のアンチセンスオリゴヌクレオチドを開発した。
アンチセンスオリゴヌクレオチドを生成するために、本発明者らはin silico、in vitro、およびin vivo試験を含む体系的なスクリーニング方法を使用して、エクソン51スキッピングに対するモルホリノベースのアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性を定量的に評価する研究を行った。
本発明者らは、設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド配列のエクソンスキッピング効率を予測するための計算分析と、その後の不死化DMD患者由来筋細胞株におけるモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドのin vitro試験を使用した、組み合わせスクリーニングを実施した。この研究は、ヒトジストロフィンエクソン51配列の冒頭、特に配列の0~+89の領域が、エクソンスキッピングを誘導するための非常に有望な標的領域であることを明らかにした。これは、公知のエテプリルセンおよびドリサペルセンアンチセンス療法により標的とされる内部領域とは著しく異なる。
【0011】
この領域から同定されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、筋細胞におけるジストロフィン産生の最も効果的な回復のために最適化された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さを含む、さまざまな因子が調査された。驚くべきことに、本発明者らは、この初期領域に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドが、エクソン51に対する公知のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の多くよりも長い場合に、より効果的であることを発見した。具体的には、本発明者らは、27塩基以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さと有効性を相関させる上昇傾向を同定した。本発明者らは、ほんの数塩基の違いが、アンチセンスオリゴヌクレオチドが有意に異なる効率を有することを意味することを示した。本明細書において実証されるように、30-merのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、25-merの同じ配列よりも最大1.5倍良好に機能する(42%対65%のスキッピング効率)。理論に縛られることを望まないが、これは、より長い配列は標的配列により特異的であり、オフターゲット効果を引き起こす可能性がより低いためでありうる。
【0012】
本明細書では、これらの同定されたアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の本発明者らの最適化が、業界標準の「エテプリルセン」配列と比較して、エクソン51スキッピングおよびジストロフィンタンパク質レスキューの効率をそれぞれ最大12倍および7倍以上増加させることを可能したことが実証される。さらに、これらのin vitroスクリーニングを通して同定された最も効果的なアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、統計的に有意なin vivoでのエクソン51スキッピングが、エテプリルセンまたはドリサペルセンのアンチセンスオリゴヌクレオチドでは示されたことのないヒトDMD遺伝子を有するトランスジェニックマウスを使用して確認された。したがって、本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、筋障害、特にDMDの治療に効果的な療法および治療を提供することが示される。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、そのような薬剤が1つしか市場に承認されていない医学の分野に代替的な療法を提供するだけではない。それらはまた、ジストロフィンタンパク質発現の増加において、数倍より効果的な治療のための改善された選択肢も提供する。これは、療法の有効性を支持する強力な証拠と共に、DMDおよび他の筋障害を患う人々のために、治療のための実行可能な選択肢を提供することが期待される。
疑念を避けるために、また、本開示が解釈される方法を明確化するために、本発明に従って使用される特定の用語がここでさらに定義されるであろう。
本発明は、そのような組み合わせが明らかに許されない場合または明示的に回避される場合を除き、記載された態様および特徴の任意の組み合わせを含む。
【0013】
本発明の態様がアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む方法または使用に言及する場合、これは、本明細書で定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートまたは医薬組成物も含みうることに留意されたい。
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけのものであり、説明される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0014】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明は、筋障害を治療するために用いられうる0~+89の領域内のヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合する少なくとも27塩基の長さを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
適当には、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書では「AO」または「オリゴ」または「オリゴマー」と呼ばれる場合がある。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン51のスキッピングを誘導する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン51のスキッピングを増加させる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、機能的なヒトジストロフィンタンパク質の発現を可能にする。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、機能的なヒトジストロフィンタンパク質の発現を増加させる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも28塩基、適当には少なくとも29塩基、適当には少なくとも30塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは27~30塩基を含む。
【0015】
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは30塩基を含む。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは30塩基からなる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+88、0~+87、0~+86、0~+85、0~+84、0~+83、0~+82、0~+81、0~+80、0~+79、0~+78の間の領域内でその全体が起こる。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+78の間の領域内でその全体が起こる。
【0016】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも27塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも28塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも29塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも27個の連続する塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも28個の連続する塩基を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも29個の連続する塩基を含む。
【0017】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つと90%~100%の間の同一性を有する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を有する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つと90%~100%の間の相同性を有する。
【0018】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10塩基異なるバリアントアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つとは最大3塩基異なるバリアントアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つとは最大2塩基異なるバリアントアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0019】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つとは1塩基異なるバリアントアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0020】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つを含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つからなる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1(Ac0)または配列番号5(Ac48)を含む。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号1(Ac0)を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1(Ac0)または配列番号5(Ac48)からなる。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1(Ac0)からなる。
【0021】
本発明は、表3に列挙される個々のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列のそれぞれ、すなわち、表3に列挙される配列のいずれかを含む、またはいずれかからなるアンチセンスオリゴヌクレオチドのそれぞれに向けられた態様をさらに含みうることが理解されよう。さらに、本発明の第2の態様によれば、表3に列挙されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートが想定される。さらに、表3に列挙されるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートを含む、本発明の第4の態様による医薬組成物が想定される。さらに、筋障害の治療のための表3に列挙されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、本発明の第5の態様による医学的使用が想定される。さらに、表3に列挙されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、第6の態様による治療方法が想定される。さらに、表3に列挙されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、第7の態様による細胞におけるヒトジストロフィンタンパク質発現を増加させる方法が想定される。
【0022】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは合成的であり、非天然である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、固相合成の周知技術により日常的に作製されうる。そのような合成のための機器は、例えば、Applied Biosystems(フォスターシティ、カリフォルニア州)を含む、いくつかのメーカーによって販売されている。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。当該分野で公知のそのような合成のための任意の他の手段が、追加的または代替的に使用されうる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログである。
適当には、「オリゴヌクレオチドアナログ」および「ヌクレオチドアナログ」という用語は、それぞれ当該技術分野で公知のオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドの任意の修飾合成アナログを指す。
オリゴヌクレオチドアナログの適当な例は、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、ホスホロジチオエートオリゴヌクレオチド、アルキルホスホネートオリゴヌクレオチド、アシルホスホネートオリゴヌクレオチドおよびホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドを含む。
【0023】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノサブユニットを含む。したがって、適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リン含有結合によって一緒に連結されたモルホリノサブユニットを含む。したがって、適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホルアミデートまたはホスホロジアミデートモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0024】
「モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチド」または「PMO」(ホスホルアミデートまたはホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド)という用語は、モルホリノサブユニット構造で構成されるアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログを指し、ここで、(i)前記構造は、適当には1~3原子長、適当には2原子長、そして適当には非荷電またはカチオン性であり、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリン含有結合により一緒に連結されており、そして(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的な水素結合により、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに効果的なプリンまたはピリミジン塩基対合部分を有する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリン含有サブユニット間結合を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造(I)に従うリン含有サブユニット間結合を含む:
【0025】
【化1】
式中:
Y1は-O-、-S-、-NH-、または-CH2-であり;
ZはOまたはSであり;
Pjは、塩基特異的な水素結合によりポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに効果的なプリンまたはピリミジン塩基対合部分であり;そして
Xは、フルオロ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいチオアルコキシ、アミノ、置換されていてもよいアルキルアミノ、または置換されていてもよいヘテロシクリルである。
【0026】
バリエーションが結合または活性を妨げない限り、サブユニット間結合にバリエーションが設けられてもよい。例えば、リンに結合した酸素は、硫黄で置換されてもよい(チオホスホロジアミデート)。5’酸素は、アミノまたは低級アルキル置換アミノで置換されていてもよい。リンに結合したペンダント窒素は、非置換であるか、(置換されていてもよい)低級アルキルにより一置換または二置換されていてもよい。
適当には、モルホリノオリゴヌクレオチドの合成、構造、および結合特性は、米国特許第5,698,685号、第5,217,866号、第5,142,047号、第5,034,506号、第5,166,315号、第5,521,063号、および第5,506,337号、ならびにPCT出願第PCT/US07/11435号に詳述されている。
【0027】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合
本発明は、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+89の領域内に結合可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
「結合可能」により、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、指定された領域でヒトジストロフィンプレmRNAに結合できる配列を含むことが意味される。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、指定された領域のヒトジストロフィンプレmRNAの配列に相補的である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、指定された領域のヒトジストロフィンプレmRNAの配列に相補的な配列を含む。
【0028】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+89の領域内の配列は、各分子中の十分な数の対応する位置が互いに水素結合でき、それによりエクソンスキッピング、適当にはエクソン51のエクソンスキッピングを引き起こすヌクレオチドにより占められている場合、互いに相補的である。したがって、「ハイブリダイズ可能」および「相補的」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドとヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の領域0~+89内の配列との間に安定した特異的結合が生じるような十分な程度の相補性または対合を示すために使用される用語である。適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソンスキッピング、適当にはエクソン51のエクソンスキッピングを誘導するのに十分に、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の領域0~+89内の配列にハイブリダイズ可能であり、かつ/または相補的である。
【0029】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+89の領域内の配列に100%相補的ではない場合がある。しかしながら、適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非特異的な結合を回避するのに十分に相補的である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の領域0~+89内の配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%相補的である。
【0030】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが結合できるためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドの全長が、ヒトジストロフィンプレmRNAに結合することを必要としないことが理解される。アンチセンスオリゴヌクレオチドの一部、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドの5’または3’末端は、ヒトジストロフィンプレmRNAに結合しない場合があることが理解されよう。しかしながら、第1の態様によれば、ヒトジストロフィンプレmRNAに結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドの部分は、エクソン51の0~+89の領域内になければならない。
したがって、適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+89の領域内の配列にハイブリダイズ可能である。適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン51のエクソンスキッピングを引き起こすのに十分に、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+89の領域内の配列にハイブリダイズ可能である。
【0031】
ヒトジストロフィン
本発明は、筋障害、特にDMDなどのジストロフィン障害の治療における使用のための治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
ジストロフィンは、ロッド状の細胞質タンパク質であり、筋繊維の細胞骨格を細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに連結するタンパク質複合体の重要な部分である。
ジストロフィンタンパク質は、複数の機能ドメインを含有する。ジストロフィンタンパク質をコードするDMD遺伝子は、遺伝子座Xp21にある2.3メガベース(ヒトゲノムの0.08%)をカバーする最も長い公知のヒト遺伝子の1つである。筋肉における一次転写産物の長さは約2,100キロベースであり、転写するのに16時間を要する;成熟mRNAの長さは14.0キロベースである。エクソン79個の筋転写産物は、3685アミノ酸残基のタンパク質をコードする。ジストロフィンタンパク質は、アクチン結合ドメインと中央ロッドドメインを含有する。この大きな中央ドメインは、アルファ-アクチニンおよびスペクトリンに対して相同性を有する約109アミノ酸の24個のスペクトリン様三重らせん要素により形成される。リピートは通常、ヒンジ領域とも呼ばれる4つのプロリンリッチな非リピートセグメントによって中断される。各リピートは2つのエクソンによってコードされ、通常、アルファヘリックス2の最初の部分のアミノ酸47と48の間のイントロンによって中断される。もう1つのイントロンは、リピート中のさまざまな位置に見出され、通常はヘリックス3上に散在する。また、ジストロフィンは、システインリッチなセグメント(つまり、280アミノ酸中に15個のシステイン)を含むシステインリッチドメインも含有する。
【0032】
正常な場合、ジストロフィンのアミノ末端がF-アクチンに結合し、カルボキシ末端が筋細胞膜のジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCは、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン、およびカベオリンを含んでおり、これらの成分のいずれかにおける変異は、常染色体遺伝性の筋ジストロフィーを引き起こす。正常な骨格筋組織は、わずかな量のジストロフィン(総筋肉タンパク質の約0.002%)のみを含有するが、その非存在(または異常な発現)は、いくつかの異常な細胞内シグナル伝達経路によって最も容易に特徴付けられ、最終的に顕著な筋線維壊死ならびに進行性の筋力低下および疲労性をもたらす重度で現在不治の症状の発症につながる。ジストロフィンが存在しない場合、DAPCは不安定化され、その結果、構成要素のタンパク質量が低下し、ひいては進行性の繊維の損傷と膜の漏出へとつながる。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)やベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などのさまざまな形態の筋ジストロフィーにおいては、主に正しくないスプライシングを導く遺伝子配列の変異のため、筋細胞は、変化した機能的に欠陥のある形態のジストロフィンを産生するか、またはジストロフィンをまったく産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優勢な発現、またはジストロフィンもしくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠如は、筋変性の急速な進行をもたらす。
【0033】
筋ジストロフィー患者のジストロフィンをコードするmRNAは通常、フレームがずれる変異(例えば、欠失、挿入、またはスプライス部位の変異)を含有し、その結果、フレームシフトまたは翻訳プロセスの早期終結が生じるため、ほとんどの筋線維において機能的なジストロフィンが産生されない。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソンスキッピングを誘発して、ジストロフィンmRNAのリーディングフレームを回復させる。適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン51のエクソンスキッピングを誘発して、ジストロフィンmRNAのリーディングフレームを回復させる。適当には、リーディングフレームの回復は、部分的に機能的なジストロフィンタンパク質の生産を回復させる。
適当には、部分的に機能的なジストロフィンは、短縮型ジストロフィンタンパク質である。
適当には、短縮型ジストロフィンタンパク質は、重症度がより低い筋障害;BMDを患っている患者で生産されるのと同じジストロフィンタンパク質である。
【0034】
筋障害
本発明は、筋障害の治療における治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に関する。
適当には、筋障害は、遺伝的変異に起因する任意の筋障害から選択される。
適当には、筋障害は、筋機能に関連する遺伝子の遺伝的変異に起因する任意の筋障害から選択される。
適当には、筋障害は、ヒトジストロフィン遺伝子の遺伝的変異に起因する任意の筋障害から選択される。
適当には、筋障害は、任意の筋ジストロフィー障害から選択される。
適当には、筋障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリー・ドライフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィーから選択される。
適当には、筋障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)またはベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である。
一実施形態では、筋障害はDMDである。
【0035】
担体およびコンジュゲート
本発明はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドと担体とのコンジュゲートにも関する。
適当には、担体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的細胞に、適当には筋細胞に輸送するように作動可能な任意の分子を含みうる。
適当な担体は、ペプチド、低分子化学物質、ポリマー、ナノ粒子、脂質、リポソーム、エクソソームなどを含みうる。
適当には、担体はペプチドである。ペプチドは、例えば、VP22(ヘルペスウイルステグメントタンパク質由来)などのウイルスタンパク質、CyLOP-1(クロタミン由来)などのヘビ毒タンパク質、pVEC(マウス血管内皮カドヘリンタンパク質由来)などの細胞接着糖タンパク質、ペネトラチン(アンテナペディアホメオドメイン)、Tat(ヒト免疫不全ウイルスのトランス活性化調節タンパク質)またはリバースTatから選択されうる。
適当には、ペプチドは、細胞透過性ペプチドである。
適当には、ペプチドは、アルギニンリッチな細胞透過性ペプチドである。
【0036】
アルギニンリッチなペプチド担体の使用は、特に有用である。特定のアルギニンベースのペプチド担体は、筋細胞を含む初代細胞へのアンチセンス化合物の送達に非常に効果的であることが示されている(Marshall, Oda et al. 2007; Jearawiriyapaisarn, Moulton et al. 2008; Wu, Moulton et al. 2008)。さらに、アルギニンペプチド担体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートした場合、他のペプチドに比べて、いくつかの遺伝子転写産物のスプライシングを変更する能力の増大を示す(Marshall, Oda et al. 2007)。
適当には、アルギニンリッチな細胞透過性ペプチドは、例えば、国際公開パンフレット第2015075747号、国際公開パンフレット第2013030569号、国際公開パンフレット第2009147368号、米国特許出願公開第20120289457号、または米国特許出願公開第20160237426号に記載される担体ペプチドから選択されうる。
一実施形態では、アルギニンリッチな細胞透過性ペプチドは、国際公開パンフレット第2013030569号または国際公開パンフレット第2009147368号に記載されるものから選択される。
適当には、担体は、所与の細胞培養集団の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%以内においてアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞浸透を誘導する能力を有する。適当には、担体は、筋細胞培養物中の筋細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%以内においてアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞浸透を誘導する能力を有する。
【0037】
適当には、担体のアンチセンスオリゴヌクレオチドとのコンジュゲーションは、担体とアンチセンスオリゴヌクレオチド間またはリンカー部分とアンチセンスオリゴヌクレオチド間の共有結合を形成するのに適した任意の位置においてでありうる。例えば、担体のコンジュゲーションは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端においてでありうる。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドへの担体のコンジュゲーションは、オリゴヌクレオチドの5’末端においてでありうる。あるいは、担体は、サブユニット間結合のいずれかを介して、アンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされていてもよい。
【0038】
適当には、担体は、そのN末端またはC末端の残基でアンチセンスオリゴヌクレオチドの3’または5’末端に共有結合している。
適当には、担体は、そのC末端の残基でアンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に結合している。
アンチセンスオリゴヌクレオチドがリン含有サブユニット間結合を含み、担体がペプチドである場合には、ペプチドは任意に、末端結合基のリンへの共有結合を介してアンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされていてもよい。
あるいは、担体がペプチドであり、アンチセンスオリゴヌクレオチドがモルホリノである場合には、ペプチドは、オリゴマーの3’末端モルホリノ基の窒素原子にコンジュゲートされていてもよい。
【0039】
担体は任意に、リンカー部分を介してアンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされてもよい。リンカー部分は任意に、置換されていてもよいピペラジニル部分、ベータアラニン、グリシン、プロリン、および/または6-アミノヘキサン酸残基の1つ以上を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
あるいは、担体は、リンカー部分を伴わずにアンチセンスオリゴヌクレオチドに直接コンジュゲートされていてもよい。
適当には、コンジュゲートは、ホーミング部分をさらに含んでいてもよい。
適当には、ホーミング部分は、選択された哺乳類組織、すなわちアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的となる同組織に対して選択的である。適当には、ホーミング部分は筋組織に対して選択的である。
適当には、ホーミング部分はホーミングペプチドである。
【0040】
適当なホーミングペプチドは、例えば、「Effective Dystrophin Restoration by a Novel Muscle-Homing Peptide-Morpholino Conjugate in Dystrophin-Deficient mdx Mice」 Gao et al. Mol Ther. 2014 Jul; 22(7): 1333-1341に開示されている。
適当には、担体ペプチドおよびホーミングペプチドは、キメラ融合タンパク質として形成されうる。
適当には、コンジュゲートは、細胞透過性ペプチドおよび筋特異的ホーミングペプチドから形成されるキメラペプチドを含みうる。
コンジュゲートは任意に、担体ペプチド-ホーミングペプチド-アンチセンスオリゴヌクレオチドの形態、またはホーミングペプチド-担体ペプチド-アンチセンスオリゴヌクレオチドの形態であってもよい。適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの溶解性を高める担体にコンジュゲートされうる。適当には、水性媒体への溶解性である。適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドを輸送するように作動可能な担体に加えて、溶解性を高める担体が、アンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされてもよい。適当には、溶解性を高める担体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを輸送する担体は、キメラ融合タンパク質として形成されうる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの溶解性を高める適切な担体は、ポリエチレングリコールまたはトリエチレングリコールなどといったポリマーである。
【0041】
薬学的に許容される賦形剤
本発明はさらに、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートを含み、さらに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
適当には、医薬組成物は、薬学的に不活性な無機および/または有機賦形剤を用いて、(Remingtons Pharmaceutical Sciences, Mack Publ. Co., Easton, PA (1985)に記載されるような)当技術分野で公知の方法で調製される。「薬学的に許容される」という用語は、生理学的に耐容性があり、患者に投与されたときに典型的にアレルギー反応または同様に有害な反応を引き起こさない分子および組成物を指す。
適当には、医薬組成物は、丸剤、錠剤、被覆錠剤、硬ゼラチンカプセル、軟ゼラチンカプセルおよび/または坐剤、液剤および/またはシロップ、注射液、マイクロカプセル、インプラントおよび/またはロッドなどとして製剤化されうる。
一実施形態では、医薬組成物は、注射液として製剤化されうる。
適当には、丸剤、錠剤、被覆錠剤、および硬ゼラチンカプセルを調製するための薬学的に許容される賦形剤は、乳糖、コーンスターチおよび/またはその誘導体、タルク、ステアリン酸および/またはその塩などのいずれかから選択されうる。
【0042】
適当には、軟ゼラチンカプセルおよび/または坐剤を調製するための薬学的に許容される賦形剤は、脂肪、ワックス、半固体および液体ポリオール、天然および/または硬化油などから選択されうる。
適当には、液剤および/またはシロップを調製するための薬学的に許容される賦形剤は、水、スクロース、転化糖、グルコース、ポリオールなどから選択されうる。
適当には、注射液を調製するための薬学的に許容される賦形剤は、水、生理食塩水、アルコール、グリセロール、ポリオール、植物油などから選択されうる。
適当には、マイクロカプセル、インプラントおよび/またはロッドを調製するための薬学的に許容される賦形剤は、グリコール酸および乳酸などの混合ポリマーから選択されうる。
さらに、医薬組成物は、N.Weiner(Drug Develop Ind Pharm 15(1989)1523)、「Liposome Dermatics」(Springer Verlag 1992)、およびHayashi(Gene Therapy 3(1996)878)に記載されるリポソーム製剤を含んでいてもよい。
【0043】
医薬組成物は任意に、2つ以上の異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートを含んでいてもよい。医薬組成物は任意に、異なるエクソン、適当にはヒトジストロフィンプレmRNAの異なるエクソンを標的とする1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートをさらに含んでいてもよい。1つ以上のさらなるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは任意に、エクソン51に隣接するエクソン、例えば、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン50またはエクソン52を標的としてもよい。適当には、ヒトジストロフィンプレmRNAの異なるエクソンを標的とする1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に、ジストロフィンmRNAのリーディングフレームを回復するように作動可能である。
【0044】
医薬組成物は任意に、異なる遺伝子を標的とする1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートをさらに含んでいてもよい。例えば、1つ以上のさらなるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは、ミオスタチンを標的としうる。このような二重標的化は、「Dual exon skipping in myostatin and dystrophin for Duchenne muscular dystrophy」 Kemaladewi et al. BMC Med Genomics. 2011 Apr 20;4:36に記載されている。
1つ以上のさらなるアンチセンスオリゴヌクレオチドは任意に、共に結合されていてもよく、および/または第1の態様のアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合されていてもよい。
【0045】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/またはコンジュゲートは任意に、生理学的に許容される塩として医薬組成物中に存在してもよい。適当には、生理学的に許容される塩は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/またはそのコンジュゲートの所望の生物活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を与えない。アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、薬学的に許容される塩の適当な例は、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどといったカチオン、スペルミンやスペルミジンなどといったポリアミンなどと形成される塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などと形成される酸付加塩;(c)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸と形成される塩;ならびに(d)塩素、臭素、およびヨウ素などの元素アニオンから形成される塩を含む。
【0046】
医薬組成物は任意に、少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/またはコンジュゲートに加えて、1つ以上の異なる治療活性成分を含んでいてもよい。1つ以上の治療活性成分は、例えば、コルチコステロイド、ユートロフィンアップレギュレーター、TGF-ベータ阻害剤、およびミオスタチン阻害剤から選択されうる。
適当には、活性成分および賦形剤に加えて、医薬組成物は、充填剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、防腐剤、甘味料、色素、香料または芳香剤、増粘剤、希釈剤または緩衝物質などといった添加剤、さらに、溶媒および/または可溶化剤および/または徐放効果を達成するための薬剤、ならびに浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤および/または酸化防止剤も含みうる。適当な添加剤は、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩、ツイーン80、ポリソルベート80、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、チメルソール、ベンジルアルコール、乳糖、マンニトールなどを含みうる。
【0047】
投与
本発明は、治療用アンチセンスオリゴヌクレオチド、および対象への投与用である治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物に関する。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、局所投与、経腸投与または非経口投与用でありうる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、経口、経皮、静脈内、くも膜下腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、経粘膜などの投与用でありうる。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、筋肉内投与用である。
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、注射による筋肉内投与用である。
【0048】
「有効量」または「治療有効量」は、所望の生理学的反応または治療効果を対象において生じるのに効果的な、単回投与または一連の投与の一部として対象に投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの量を指す。
適当には、所望の生理学的反応は、適当には欠陥のあるジストロフィンタンパク質を含有する、またはジストロフィンを含有しない筋組織または筋細胞における、ジストロフィンタンパク質の比較的機能的または生物学的に活性な形態の発現の増加を含む。
適当には、所望の治療効果は、筋障害の症状または病状の改善、筋障害の症状または病状の進行の緩和、および筋障害の症状または病状の発症の遅延を含む。そのような症状の例は、疲労、精神遅滞、筋力低下、運動能力(例えば、ランニング、ホッピング、ジャンプ)の障害、頻繁な転倒、および歩行困難を含む。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは、体重1キログラム/日あたり約0.0001~約100mgの範囲の用量で投与される。
【0049】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは毎日、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日ごとに1回、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間ごとに1回、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月ごとに1回投与される。
適当には、投与の用量および頻度は、機能的ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、医師によって必要に応じて決定されうる。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートは、2、3、4、5、6またはそれ以上の部分用量として、任意に単位剤形において、1日を通して適切な間隔で別々に投与されてもよい。
【0050】
対象
本発明はまた、治療有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートをそれを必要とする対象に投与することによる筋障害の治療にも関する。
適当には、対象は上で定義された筋障害を有する。
適当には、対象は哺乳類である。適当には、対象はヒトである。
適当には、対象は男性または女性でありうる。しかしながら、適当には、対象は男性である。
適当には、対象は任意の年齢である。しかしながら、適当には、対象は、生後1か月から50歳、適当には1歳から30歳、適当には2歳から27歳、適当には4歳から25歳の間である。
【0051】
エクソンスキッピングとジストロフィン発現の増加
本発明は、機能的ジストロフィンタンパク質発現を回復させるためにヒトジストロフィンプレmRNAにおいてエクソンスキッピングを誘導することによる、筋障害の治療に使用するための治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
適当には、「機能的」ジストロフィンタンパク質は、DMDなどの筋障害を有する対象に存在するジストロフィンタンパク質の欠陥のある形態と比較した場合に、他の状況では筋ジストロフィーに特徴的な筋組織の進行性の分解を低減するのに十分な生物活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。
適当には、機能的なジストロフィンタンパク質は、野生型ジストロフィンの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のin vitroまたはin vivoでの生物活性を有しうる。
適当には、機能的なジストロフィンタンパク質は、野生型ジストロフィンの少なくとも10%~20%のin vitroまたはin vivoでの生物活性を有する。
適当には、in vitroでの筋肉培養におけるジストロフィンの活性は、筋管のサイズ、筋原線維の組織、収縮活性、およびアセチルコリン受容体の自発的なクラスタリングに従って測定されうる(例えば、Brown et al., Journal of Cell Science. 112:209-216, 1999を参照)。
【0052】
動物モデルもまた、疾患の病因を研究するための貴重なリソースであり、ジストロフィン関連の活性を試験する手段を提供する。DMD研究のために最も広く使用される2つの動物モデルは、mdxマウスとゴールデンレトリバー筋ジストロフィー(GRMD)犬であり、どちらもジストロフィン陰性である(例えば、Collins & Morgan, Int J Exp Pathol 84: 165-172, 2003を参照)。これらおよび他の動物モデルを使用して、さまざまなジストロフィンタンパク質の機能的活性が測定されうる。
適当には、「エクソンスキッピング」は、エクソン全体またはその一部が所与のプロセッシング前のRNA(プレmRNA)から除去され、それによってタンパク質へと翻訳される成熟RNAから排除されるプロセスを指す。
適当には、他の状況ではスキップされたエクソンによってコードされるタンパク質の部分は、タンパク質の発現形態には存在しない。
【0053】
したがって、適当には、エクソンスキッピングは、上で定義されたように、短縮型であるがそれでもなお機能性を有するタンパク質を作り出す。
適当には、スキップされるエクソンは、他の状況で異常なスプライシングを引き起こす、その配列中の変異または他の変化を含有しうるヒトジストロフィン遺伝子のエクソンである。
適当には、スキップされるエクソンは、ジストロフィン遺伝子のエクソン51である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAのエクソンスキッピングを誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAにおけるエクソン51のエクソンスキッピングを誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、筋組織におけるジストロフィンタンパク質の機能的形態の発現を増加させるように作動可能であり、筋組織における筋機能を増加させるように作動可能である。
【0054】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与されていないDMDなどの筋障害を有する対象の筋機能と比較して、筋機能を少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%増加させるように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与されていないDMDなどの筋障害を有する対象と比較して、機能的なジストロフィンタンパク質を発現する筋線維の割合の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の筋線維の増加がもたらされるように作動可能である。
【0055】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、野生型の細胞および/または対象におけるジストロフィンタンパク質の発現の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、25、40、45、または50%のレベルにまで、ジストロフィンタンパク質の機能的形態の発現を誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、野生型の細胞および/または対象におけるジストロフィンタンパク質の発現の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20%のレベルにまで、ジストロフィンタンパク質の機能的形態の発現を誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、野生型の細胞および/または対象におけるジストロフィンタンパク質の発現の少なくとも10、15、または20%のレベルにまで、ジストロフィンタンパク質の機能的形態の発現を誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のレベルにまで、ジストロフィンプレmRNAにおけるエクソン51のスキッピングを誘導するように作動可能である。
【0056】
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%のレベルにまで、ジストロフィンプレmRNAにおけるエクソン51のスキッピングを誘導するように作動可能である。
適当には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51スキッピングを60%~80%のレベルにまで誘導するように作動可能である。
「増加」または「強化」された量は、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物なし(薬剤の非存在)または対照化合物が同じ状況下で投与される場合に生産される量の1.1、1.2、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍またはそれ以上の増加を含みうる。
適当には、「増加」または「強化」された量は、統計的に有意な量である。
【0057】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む」および「含有する」という語およびそれらの変形は「含むが、それらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数または工程を除外することを意図しない(除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、文脈がそうでないことを要求しない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈がそうでないことを要求しない限り、明細書は複数性と単数性を意図していると理解されるべきである。
【0058】
本発明の特定の態様、実施形態または例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または化学基は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されている全ての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法または27プロセスの全ての工程は、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられうる。
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法またはプロセスの工程の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。読者の注意は、本願に関連して本明細書と同時にまたは以前に提出され、本明細書と共に公の閲覧に供される全ての論文および文献に向けられ、そのような全ての論文および文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0059】
1.材料および方法
1.1 AOの設計およびin silicoスクリーニング。
最近開発されたAO予測アルゴリズムを使用して、エクソン51を標的とする413個の30-merおよび25-merのAOを設計および分析した(表3を参照)。表3は列中、左から右に、エクソンの番号、アクセプタースプライス部位からの距離、AOの配列(5’から3’)、予測されるスキッピング%、およびスクリーニング内のランキングを示す。左側のAOは30mer、右側のAOは25-merである。予測されたエクソンスキッピング効率に基づき、少なくとも4塩基離れた8つのAOをin vitroスクリーニング用に選択した(表2)。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California,Santa Cruz)ゲノムブラウザ(http://genome.ucsc.edu/index.html)を使用して、選択したAO、エテプリルセン、およびドリサペルセンの標的配列特異性を分析し、AO配列が理論上、標的でないRNA配列には100%の同一性で結合しないことを確認した。
【0060】
1.2 アンチセンスモルホリノ。
エテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログAOを含む全てのアンチセンス配列は、Gene Tools(フィロマス、オレゴン州)によりモルホリノの化学反応で合成された。
【0061】
1.3 細胞。
3人の健常な対象(ID 8220、CHQ、およびKM155)と、DMD遺伝子のエクソン52(ID KM571)およびエクソン48~50(ID 6594)の欠失変異を有する2人のDMD患者に由来する不死化ヒト骨格筋細胞をそれぞれ、Institute of Myologyヒト細胞不死化プラットフォームのヒトテロメラーゼ発現ベクターとサイクリン依存性キナーゼ4発現ベクターによる形質導入によって、以前に記載されたようにして生成した33。3つの不死化された健常筋細胞株を特徴付け、最高のジストロフィン発現を示したクローン株8220を、不死化されたDMD細胞においてレスキューされたジストロフィン発現の過大評価を防ぐための陽性対照として選択した。ex45-50(ID 4546)およびex49-50(ID 4555)の欠失変異を有するDMD患者および健常な対象に由来する初代骨格筋細胞は、骨格筋、神経組織、DNAおよび細胞株のバイオバンクによって用意された。
【0062】
1.4 AOのトランスフェクション。
AO媒介エクソンスキッピング療法のin vivo効果を可能な限り模倣するために、十分なレベルのDMD mRNAを発現する成熟した分化筋管をin vitroスクリーニングのために使用した。細胞を増殖培地(GM)により増殖条件で培養した:骨格筋サプリメントミックスを含むDMEM/F12(Promocell、ハイデルベルク、ドイツ)、20%ウシ胎児血清(Life Technologies、ウォルサム、マサチューセッツ州)、および抗生物質(50単位のペニシリンおよび50μg/mlのストレプトマイシン、Life Technologies、ウォルサム、マサチューセッツ州)。不死化および初代DMD骨格筋細胞を、I型コラーゲンでコーティングされた12または24ウェル培養プレートにそれぞれ1.7x104/cm2および2.2x104/cm2で播種した。播種の2日後、約80~90%のコンフルエンスで、GMを分化培地(DM)に置き換えた:2%ウマ血清を含むDMEM/F12(GE Healthcare、シカゴ、イリノイ州)、1×ITS溶液(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)、および抗生物質。DM中で3日後、6μMのEndo-porterトランスフェクション試薬(Gene Tools、フィロマス、オレゴン州)を含有する1、3、5または10μMのAOを細胞にトランスフェクトした(DMで希釈する直前に1mMの濃縮AOを65℃で10分間インキュベートした)。AOトランスフェクションの2日後、AO含有DMを通常のDMに置き換えた。AOトランスフェクション後、2、5、または11日目(分化後5、8、または14日目)に細胞を回収した。
【0063】
1.5 マウス。
動物試験は、アルバータ大学、チルドレンズ・ナショナル・メディカルセンター、および国立精神神経センター(NCNP)の動物実験委員会によって承認された。C57BL/6Jバックグラウンドを有する雄および雌のDmdエクソン52欠失mdx5242および野生型マウス(Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)を4~8週齢で用意した。罹患したマウスのDmd変異は、PCRによるジェノタイピングによって確認した。ヒトのDMD遺伝子を有し、マウスのDmd遺伝子を持たないトランスジェニックマウスモデル(hDMD/Dmd-nullマウス)を、雄のhDMDマウス(Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)と雌のDmd-nullマウスを交配することによって作製した。
【0064】
1.6 筋肉内注射。
40μLの生理食塩水中5または20μgのAc0、Ac48、エテプリルセンまたはドリサペルセンのマウス版モルホリノを、以前に記載されたようにして、イソフルランによる吸入麻酔の下、前脛骨筋(TA)筋肉に筋肉内注射した43。30μLの生理食塩水中50μgのAc0モルホリノおよびアナログエテプリルセンをhDMD/Dmd-nullマウスのTA筋肉に注射した。筋サンプルは全て、筋肉内注射の2週間後に回収した。
【0065】
1.7 RT-PCRによるエクソンスキッピングの分析。
以前に記載されたようにして、トリゾール(Invitrogen、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いてトータルRNAを抽出した。ジストロフィンmRNAを検出するためのRT-PCRは、不死化骨格筋細胞と初代骨格筋細胞において、それぞれ200ngおよび320ngのトータルRNAについて、SuperScript III One-Step RT-PCR System(Invitrogen、ウォルサム、マサチューセッツ州)と0.2μMのフォワードおよびリバースプライマー(表1を参照)を使用して行った。プライマーはPrimer3Plusソフトウェアを使用して設計し、その特異性は健常なヒト骨格筋細胞(8220株)で確認した。RT-PCRの条件は以下のとおりである:50℃で5分間;94℃で2分間;94℃で15秒間、60℃で30秒間、および68℃で35秒間を35サイクル;そして68℃で5分間。PCR産物を1.5%アガロースゲルで分離し、SYBR Safe DNA Gel Stain(Invitrogen、ウォルサム、マサチューセッツ州)で可視化した。ImageJソフトウェア(NIH)またはMCE-202 MultiNAシステム(島津、京都、日本)を使用し、次の式を用いてエクソン51スキッピングの効率を計算した:
〔式1〕
おそらく予期しないスプライシング事象に起因する天然バンドの上の未知のトップバンドは、スキッピング効率の定量から除外した。PCR産物の配列は、Big Dye Terminator v3.1(Applied Biosystems、ウォルサム、マサチューセッツ州)で確認した。GAPDHまたは18SリボソームRNAを内部対照として使用した。
【0066】
【0067】
1.8 ウエスタンブロッティング
細胞をcOmplete、Mini、EDTA非含有プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、バーゼル、スイス)を含有するRIPAバッファー(Thermo Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて回収し、それから、21ゲージの針に10回通してホモジナイズした。ローディングサンプルとして、上清を4℃で15分間、14,000gで遠心分離することにより調製した。筋組織からのタンパク質を以前に記載されたようにして調製した。ブラッドフォードアッセイを用いて、蒸留水で100倍に希釈した上清によりタンパク質濃度を調整した。10%のSDS、70mMのTris-HCl、pH6.8、5 mMのEDTA、20%のグリセロール、0.004%のブロモフェノールブルー、および5%の2-メルカプトエタノールを含有するサンプルバッファー中のタンパク質を70℃で10分間加熱した。次に、以前に記載されたようにして、ウエスタンブロッティングを行った32,43,44。細胞および組織からそれぞれ12μgおよび30μgをドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動のために使用した。ブロットは、ブロッキング溶液中、ジストロフィンC末端に対するウサギポリクローナル抗体(1:2500、ab15278、Abcam、ケンブリッジ、イギリス)またはジストロフィンロッドドメインに対するDYS1抗体(1:400、Leica Biosystems、バッファローグローブ、イリノイ州)と共に室温で1時間インキュベートした。一次抗体をHRPコンジュゲート抗ウサギまたはマウスIgG H+L抗体(1:10,000、Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)と反応させた。AOによって誘導されたジストロフィンタンパク質の発現レベルは、未処置のDMD細胞または野生型マウスのタンパク質で希釈した健常8220骨格筋細胞のジストロフィンタンパク質の検量線(R2=0.93~0.99)を用いて、ImageJ(NIH)を使用して定量した。ローディング対照として、α-チューブリンを同じメンブレン上で検出した。ローディング対照/分化マーカーとして、転写後のゲル上のミオシン重鎖(MyHC)をクーマシーブリリアントブルー(Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)で染色した。
【0068】
1.9 免疫細胞化学。
細胞を室温で5分間、4%パラホルムアルデヒドで固定した。0.01%のTriton X-100を含有するPBSで洗浄した後、0.05%のTriton X-100を含むPBS中の10%ヤギ血清(Life Technologies、ウォルサム、マサチューセッツ州)で20分間細胞をブロックし、それから、ブロッキング溶液中で1:50希釈した抗ジストロフィンC末端(ab15278)またはロッドドメイン(DYS1)抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。ジストロフィンのシグナルは、Alexa 488または594コンジュゲート二次抗体(1:500)で検出した。デスミン(1:80、Abcam、ケンブリッジ、イギリス)および速筋型MyHC(1:30、Leica Biosystems、バッファローグローブ、イリノイ州)が検出され、細胞の筋原性分化が確認された。細胞は、分析まで4℃でDAPIを含むSlowFade Gold Antifade Mountant(Invitrogen、ウォルサム、マサチューセッツ州)中で保存した。
【0069】
1.10 免疫組織化学。
未処置および処置mdx52マウスのTA筋の凍結切片において、以前に記載されたようにして、ab15278抗体でジストロフィン陽性筋線維を検出した。ニュートラルデンシティフィルター(Eclipse TE 2000-U、ニコン、東京、日本)を使用して、処置マウスのジストロフィンのシグナル強度を野生型のシグナル強度と比較した。
【0070】
1.11 統計分析。
エクソンスキッピングの効率とジストロフィンタンパク質のレスキューの有意性を決定するために、不死化細胞での少なくとも3回の独立した実験、初代細胞での3連のウェル、および3~7匹のマウスからデータセットを用意した。AO処置群間の統計分析は、一元配置ANOVAと、それに続く事後テューキー-クレーマー多重比較検定によって行った。AOに対する用量反応性については、単回帰分析を実施した。統計的有意性は全ての分析でp<0.05に設定した。
【0071】
2. 結果
2.1 エクソン51スキッピングのためのAOのin silicoスクリーニング。
本発明者らは、DMDエクソン51の全ての可能な標的部位をカバーする、それぞれ30-merおよび25-merの長さの204個および209個のAO、合計413個のAOを設計した(表3を参照)。本発明者らのエクソンスキッピング効率アルゴリズム(「In Silico Screening Based on Predictive Algorithms as a Design Tool for Exon Skipping Oligonucleotides in Duchenne Muscular Dystrophy」 Echigoya et al. PLOS ONE March 2015)は、30-merのAOについては、エクソン51の最初の5’部位におけるエクソン51スキッピングの最高効率が80.5%であり、25-merのAOについては、41.2%であると予測した。In silicoスクリーニングは、エテプリルセンにより標的とされる30塩基の領域のエクソンスキッピング効率が非常に低いこと(23.7%)を示し、これは、試験した413個の全AO候補の中で92位にランクされた。ドリサペルセンの標的部位は、30-merのエテプリルセンのものに完全に包含されることが留意される。
【0072】
2.2 健常およびDMD骨格筋細胞株の不死化クローンの特徴付け。
初代DMD筋細胞を用いた前臨床試験における重要な課題は、筋細胞の純度が低いこと、および変異ジストロフィンmRNAの量が不十分であることを含み、これらはAOの有効性を試験しようとする際に問題を呈する。これらのハードルを克服するために、3人の健常な対象と、エクソン52(ex52)およびex48-50の欠失(del.)変異(それぞれID KM571および6594)を有する2人のDMD患者の骨格筋細胞の不死化クローンを作製した。試験した全ての不死化骨格筋細胞株は、分化誘導後3日目から容易に検出可能なジストロフィンmRNAを発現した。DMD細胞においてAOによって誘導されるジストロフィンタンパク質レベルの過大評価を回避するために、本発明者らは、ウエスタンブロッティングにより陽性対照として働くと決定された3つの不死化健常骨格筋細胞株のうち、最高レベルのジストロフィンタンパク質を含む細胞株(ID 8220)を選択した。8220細胞株におけるジストロフィンタンパク質の発現は、免疫細胞化学によっても確認された。
【0073】
2.3 エクソン51スキッピングAOのin vitroスクリーニング。
本発明者らはin silicoスクリーニングの結果に基づき、少なくとも互いに4塩基離れた高ランクと低ランクの両方の配列を含む30-merのAOを8個、in vitroスクリーニングのために選択した(表2)。本試験においては、エテプリルセンおよびドリサペルセンの配列を含む、試験したAOは全て、臨床試験に登録された患者での耐容性が実証されているモルホリノ化学を使用して合成した。ここで、本発明者らは、エテプリルセンおよびドリサペルセンと同じ配列を持つ対照のモルホリノオリゴヌクレオチド(Gene Toolsで生成)を「アナログエテプリルセン」および「アナログドリサペルセン」と名付けた。RT-PCRにおいては10μMの本発明者らのモルホリノAO(Ac0、Ac5、Ac26、Ac30、およびAc48)のうち5つが、ex52del.を有する不死化DMD骨格筋細胞において、アナログエテプリルセンおよびドリサペルセンと比較して、有意に高いスキッピング効率を示した(
図1A)。試験したAOのうち、特にAc0は最高のスキッピング効率を有し、72%にまで達したが、これは、エテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログよりもそれぞれ4倍および25倍高い効率であった。ウエスタンブロッティングにおいて、Ac0は最高レベルのジストロフィンタンパク質も誘導して、健常対照細胞株のレベルの16%までに達し、その後に13%のAc48が続いた(
図1B)。興味深いことに、試験時に最高のスキッピング効率を示した2つのAO、Ac0およびAc48は、アルゴリズムから最良と予測されたものではなかった。
【0074】
【0075】
2.4 Ac0、Ac48、ならびにエテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログAOを用いた経時変化分析。
5μMのAc0、Ac48、ならびにエテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログの持続的な影響をex52del.KM571細胞で調べた。エクソンスキッピングの効率およびジストロフィンタンパク質のレスキューに関して、本発明のオリゴヌクレオチドAc0およびAc48の優位性が、エテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログAOと比較して、トランスフェクション後2日目および11日目に観察された(
図2)。
【0076】
2.5 Ac0、Ac48、ならびにアナログエテプリルセンおよびドリサペルセンの用量依存効果。
RT-PCRは、最高濃度の10μMにおいてAc0が、DMD KM571(ex52del.)および6594細胞(ex48-50del.)において、エテプリルセンおよびドリサペルセンのアナログよりも有意に高い、それぞれ最大74%および64%のエクソン51スキッピングを誘導することを示した(
図3)。最低濃度(1μM)では、Ac0はKM571および6594細胞において、それぞれアナログエテプリルセンと比較して12倍および10倍高いエクソンスキッピング効率を示した。興味深いことに、1μMの濃度でさえも、Ac0は10μMのアナログエテプリルセンよりも高いレベルのエクソン51スキッピングを誘導した(それぞれ、KM571で24%と15%の効率、6594で24%と21%の効率)。定量的ウエスタンブロッティングは、10μMのAc0が、DMD細胞株のジストロフィンタンパク質発現を健常細胞株レベルの21%にまでレスキューすることを明らかにした(
図3A~D)。1μMでさえ、Ac0のアナログエテプリルセンに対する相対比は、KM571および6594細胞株でジストロフィンタンパク質の生産効率がそれぞれ7.1倍および3.3倍高いことを示した。1μMのAc0は、10μMのアナログエテプリルセンよりも高い、または同等のレベルでのレスキューされたジストロフィンタンパク質の生産を可能にし(それぞれ、KM571で10%と6%、6594で11%と10%)、これは、Ac0が濃度に関してアナログエテプリルセンと比較して、ジストロフィンタンパク質の生産において10倍以上効果的であることを確認している。アナログドリサペルセンは、DMD筋細胞株でのエクソンスキッピングまたはジストロフィン産生のいずれに対しても効果的に働かなかった。Ac0およびAc48に対するエクソンスキッピング反応は、アナログエテプリルセンおよびアナログドリサペルセンのいずれよりも大きく用量依存的に生じていた(
図3AおよびC)。また、ジストロフィンタンパク質の生産に関するAc0の用量反応性は、いずれのDMD細胞株においても対照アナログよりも高かった(
図3E)。
【0077】
2.6 ジストロフィンタンパク質のレスキューの免疫細胞化学的評価。
免疫細胞化学は、10μMのAc0およびAc48が、ex52およびex48-50del.変異を有するDMD骨格筋細胞株において、アナログエテプリルセンと比較して、より多くのジストロフィン陽性筋管を産生し、より強いシグナル強度を示すことを明らかにした(
図4)。
【0078】
2.7 Ac0モルホリノの長さの最適化。
In silicoおよびin vitroのスクリーニングは、0~+89の間にあるエクソン51の最初の5’領域が、エクソン51のスキッピングに影響を与える重要な領域であることを明らかにした。この領域を標的とするAc0の配列長を最適化するために、本発明者らは、5’部位のヌクレオチドを1つずつ系統的に除去して、異なる長さ(25~30-mer)のAc0モルホリノのスキッピング効率を比較した(表2を参照)。1μMのこれらのAOで処置した不死化DMD筋細胞におけるin vitro試験は、25~30-merのAc0モルホリノが効率的なエクソンスキッピング(>20%)を生じることを示したが(
図5)、これは同じ用量のアナログエテプリルセンおよびアナログドリサペルセンでは観察されなかった効果である(
図3)。しかしながら、AOの長さが長くなると、エクソンスキッピングの効率が向上した。30-merのAc0の統計的に有意な有効性が、両方の細胞株において、より短いAc0モルホリノと比較して、1または2塩基だけ短いAOに対してさえも、1および3μMの用量で確認された。
【0079】
2.8 初代DMD患者由来骨格筋細胞に対するAc0、Ac48、ならびにアナログエテプリルセンおよびドリサペルセンの効果。
本発明者らはまた、エクソン45~50(ID 4546)またはエクソン49~50del.変異(ID 4555)を有する初代DMD骨格筋細胞においてもAOを試験して、30-merのAc0の優れた有効性が他の筋細胞種と欠失変異パターンでも一貫しているかどうかを検証した。RT-PCRは、Ac0がアナログエテプリルセンまたはアナログドリサペルセンと比較して、両方の初代DMD筋細胞において有意に高いエクソンスキッピング効率を達成することを示した(
図6A~D):アナログエテプリルセンおよびドリサペルセンと比較して、それぞれ最大5倍および7倍の効率が観察された。Ac0媒介エクソン51スキッピングの著しい効率は、初代健常骨格筋細胞においても確認された(
図6EおよびF)。興味深いことに、エクソン51スキッピング効率の増加に伴い、リーディングフレームを乱さない自発的なエクソン52のスキッピングが、初代健常およびDMD筋細胞、およびex48-50del.(6594)の不死化DMD筋細胞株において観察された。
【0080】
2.10 hDMD/Dmd-nullマウスにおけるAc0モルホリノおよびアナログエテプリルセンのin vivoでの有効性。
エクソンスキッピング療法の開発における主要なハードルは、適切な動物モデルでヒト特異的なAOを常に試験できるとは限らないことである。これは、患者のために設計されたAOのin vivo効果の評価を制限する。ここで、本発明者らは、ヒトAOのin vivoでの有効性を試験するために、完全長のヒトDMD遺伝子を有し、マウスのDmd遺伝子全体を欠いた新しいマウスモデル(hDMD/Dmd-null)を開発した。このマウスモデルは、ヒト配列とマウス配列の間の交差反応を避けるために採用され(従来のmdxマウスはマウスのジストロフィンmRNAをまだ有しており、これはヒトを標的とするAOと交差反応しうる点に留意)、hDMDマウス34とDmd-nullマウスの間の交配によって得られた35。Ac0、Ac48、アナログエテプリルセンまたはアナログドリサペルセンをこれらのマウスのTA筋に注射し、注射の2週間後にin vivoでのエクソン51スキッピングの有効性を分析した。結果は、アナログエテプリルセンと比較して、Ac0で処置したマウスのエクソンスキッピング効率が有意に高いことを示した(
図7)。目に見えるエクソン51スキップバンドがAc48処置マウスにおいて見られ、平均エクソンスキッピング効率は1.11%(±0.46%、SE)であった。一方、アナログドリサペルセンで処置したマウスでは、定量可能なエクソン51スキップバンドは観察されなかった(
図8)。
【0081】
配列
GTGTCACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG Ac0(配列番号1)
AGGTTGTGTCACCAGAGTAACAGTCTGAGT Ac5(配列番号2)
GGCAGTTTCCTTAGTAACCACAGGTTGTGT Ac26(配列番号3)
AGATGGCAGTTTCCTTAGTAACCACAGGTT Ac30(配列番号4)
ATGGCATTTCTAGTTTGGAGATGGCAGTTT Ac48(配列番号5)
CTCCAACATCAAGGAAGATGGCATTTCTAG エテプリルセン(配列番号6)
TCAAGGAAGATGGCATTTCT ドリサペルセン(配列番号7)
TGTCACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG hEx51_Ac0-29mer(配列番号8)
GTCACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG hEx51_Ac0-28mer(配列番号9)
TCACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG hEx51_Ac0-27mer(配列番号10)
CACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG hEx51_Ac0-26mer(配列番号11)
ACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG hEx51_Ac0-25mer(配列番号12)
CCACAGGTTGTGTCACCAGAGTAACAGTCT Ac9(配列番号13)
TTATAACTTGATCAAGCAGAGAAAGCCAGT Ac141(配列番号14)
atacCTTCTGCTTGATGATCATCTCGTTGA Ac207(配列番号15)
CAGCCAGTGAAGAGGAAGTTAG Ex49/50_94-10_hDMD_Fwd(配列番号16)
CCAGCCATTGTGTTGAATCC Ex53_80-99_hDMD_Rv(配列番号17)
AGGACCCGTGCTTGTAAGTG Ex47_60-79_hDMD_Fwd(配列番号18)
GATTGTTCTAGCCTCTTGATTGC Ex52_83-105_hDMD_Rv(配列番号19)
GACAAGGGCGATTTGACAG Ex43/44_167-12_hDMD_Fwd(配列番号20)
CAAGCACTCAGCCAGTGAAG mDmd_ex49_83-102_Fwd(配列番号21)
TCCAGCCATTGTGTTGAATC 欠失 mDmd_ex53_81-100_Rv(配列番号22)
TCCCTGAGCTGAACGGGAAG hGAPDH_662-81_Fwd(配列番号23)
TCCAGCCATTGTGTTGAATC 対照 hGAPDH_860-79_Rv(配列番号24)
TCGATGCTCTTAGCTGAGTGTCC h18S_760-82_Fwd(配列番号25)
TGATCGTCTTCGAACCTCCG 対照 h18S_1039-58_Rv(配列番号26)
【0082】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔2〕少なくとも28塩基、少なくとも29塩基、または少なくとも30塩基を含む、前記〔1〕に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔3〕30塩基からなる、前記〔1〕または〔2〕に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔4〕アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合が、ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の0~+88、0~+87、0~+86、0~+85、0~+84、0~+83、0~+82、0~+81、0~+80、0~+79、または0~+78の間の領域内でその全体が起こる、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔5〕アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合が、プレmRNA配列の0~+78の間の領域内でその全体が起こる、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔6〕前記領域内にあるヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の配列に少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%相補的である、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔7〕前記領域内にあるヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51の配列とハイブリダイズ可能である、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔8〕以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つの少なくとも27塩基を含む、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔9〕以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性および/または相同性を有する、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔10〕以下の配列:配列番号1(Ac0)、配列番号2(Ac5)、配列番号3(Ac26)、配列番号4(Ac30)、または配列番号5(Ac48)のうちの1つを含む、前記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔11〕配列番号1(Ac0)または配列番号5(Ac48)を含む、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔12〕前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび担体を含むコンジュゲートであって、担体が、アンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされている、コンジュゲート。
〔13〕担体が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的細胞に輸送するように作動可能である、前記〔12〕に記載のコンジュゲート。
〔14〕担体が、ペプチド、低分子化学物質、ポリマー、ナノ粒子、脂質、リポソームまたはエクソソームから選択される、前記〔12〕または〔13〕に記載のコンジュゲート。
〔15〕担体が、細胞透過性ペプチドである、前記〔12〕から〔14〕のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
〔16〕担体が、アルギニンリッチな細胞透過性ペプチドである、前記〔12〕から〔15〕のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
〔17〕前記〔13〕から〔16〕のいずれか1項に記載のコンジュゲートが負荷された細胞。
〔18〕前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または前記〔12〕から〔16〕のいずれか1項に記載のコンジュゲート、および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
〔19〕対象の筋障害の治療における使用のためのヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔20〕前記〔1〕から〔11〕において定義される特徴のいずれかを含む、前記〔19〕に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔21〕筋障害が、筋機能に関連する遺伝子の遺伝子変異に起因する障害である、前記〔19〕または〔20〕に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔22〕筋障害が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーである、前記〔19〕から〔21〕のいずれか1項に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
〔23〕ヒトジストロフィンプレmRNAのエクソン51に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量と細胞を接触させることを含む、前記細胞におけるヒトジストロフィンタンパク質発現を増加させる方法であって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合は、プレmRNA配列の0~+89の間の領域内でその全体が起こり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも27塩基を含む、方法。
〔24〕アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記〔1〕から〔11〕において定義される特徴のいずれかを含む、前記〔23〕に記載の方法。