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特許7365342改善されたフーピングプライを備えたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】改善されたフーピングプライを備えたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20231012BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20231012BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20231012BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20231012BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60C9/00 G
B60C9/20 Z
B60C9/22 G
B60C9/00 C
B60C9/00 D
D02G3/48
B60C9/08 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020533141
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2018053270
(87)【国際公開番号】W WO2019122620
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】1763127
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】リー サブリーナ
(72)【発明者】
【氏名】コルニイユ リシャール
(72)【発明者】
【氏名】フェリゴ エルヴェ
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533933(JP,A)
【文献】特表2018-514437(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166056(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0118499(US,A1)
【文献】実開平01-125377(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0146200(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04135599(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
D02G 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部(20)及びクラウン補強体(14)を含むクラウン(12)と、2つのサイドウォール部(22)と、2つのビード部(24)とを備えたタイヤ(10)であって、各サイドウォール部(22)は、各ビード部(24)を前記クラウン(12)につなぎ、前記クラウン補強体(14)は、前記クラウン(12)内で前記タイヤ(10)の円周方向(Z)に延び、前記タイヤ(10)は、前記ビード部(24)の各々に係止されて前記サイドウォール部(22)内及び前記クラウン(12)内に延びるカーカス補強体(32)を備え、前記クラウン補強体(14)は、前記カーカス補強体(32)と前記トレッド部(20)との間に半径方向に挿入され、
前記クラウン補強体(14)は、少なくとも1つの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)を含むフーピングプライを有するフープ補強体(17)と、ワイヤ状ワーキング補強体要素(46)を含む単一のワーキングプライ(18)を有するワーキング補強体(16)とを含み、
前記カーカス補強体(32)は、ワイヤ状カーカス補強体要素(44)を含む単一のカーカスプライ(34)を有し、
前記1つ又は複数の繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)、前記ワイヤ状ワーキング補強体要素(46)及び前記ワイヤ状カーカス補強体要素(44)は、赤道円周面(E)上への投影において三角形メッシュを定めるように配置され、
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)が、
- 少なくとも1つのモノフィラメントを含む第1のストランド(50)で構成されたコア(54)と、
- 少なくとも2つの第2のストランド(52)を含む層(58)と、
を有し、前記層(58)の各第2のストランド(52)は、少なくとも1つのモノフィラメントを含み、前記層(58)の各第2のストランド(52)は、前記コア(54)に螺旋状に巻き回され、
前記層の第2のストランド(52)はそれぞれ前記層の他の第2のストランド(52)の周りに巻き回されることなく、前記コア(54)の周りに巻き回され、
前記第1のストランド(50)の前記モノフィラメントは、脂肪族ポリアミドで形成される、ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、前記タイヤ(10)の前記円周方向(Z)との間に、厳密に10°未満の角度を成す、
請求項1に記載のタイヤ(10)。
【請求項3】
第2のストランド(52)のそれぞれの前記1又は複数のモノフィラメントは、芳香族ポリアミド、芳香族コポリアミド、ポリケトン及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で形成される、
請求項1又は2に記載のタイヤ(10)。
【請求項4】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、タイヤから取り除いた時点で、4%以上のあらゆる伸びに対して5cN/tex/%以上の、フーピングプライの製造ステップ前に測定された接線係数を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの結合繊維ワイヤ状補強体要素を組成物に埋め込んで、前記1又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)を有する前記フーピングプライ(19)を形成する、前記フーピングプライ(19)の製造ステップを含む方法によって得られる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【請求項6】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、前記フーピングプライ(19)の前記製造ステップ前に、2%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する、
請求項5に記載のタイヤ(10)。
【請求項7】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、前記フーピングプライ(19)の前記製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸びに対して5cN/tex/%以上の接線係数を有する、
請求項5又は6に記載のタイヤ(10)。
【請求項8】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、前記フーピングプライ(19)の前記製造ステップ前に、5%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する、
請求項5、6又は7に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
前記1つの又はそれぞれの繊維ワイヤ状フープ補強体要素(48)は、前記フーピングプライ(19)の前記製造ステップ前に、6%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する、
請求項5から8いずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに関し、優先的には自家用乗用車のタイヤに関するが、二輪車、重量積載物車、農業用車両、土木車両又は航空機などの他のいずれかのタイプの車両、或いはさらに一般には回転装置に使用することもできる。タイヤは、例えばリムなどの支持要素と協働することによって大気圧を上回る圧力まで加圧できる空洞を形成するように意図された外装品を意味するものであると理解される。本発明によるタイヤは、実質的にトロイダル形状の構造を有する。
【背景技術】
【0002】
最新技術からは、クラウン及び2つのサイドウォール部を有するタイヤが知られている。従来、これらのタイヤは、2つのビード部内に係止されてクラウン補強体によって半径方向に覆われたカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、それ自体がトレッド部によって半径方向に覆われて2つのサイドウォール部によって上記ビード部に結合される。カーカス補強体は、ワイヤ状カーカス補強体要素を含む単一のカーカスプライを有する。クラウン補強体は、ワイヤ状カーカス補強体要素を含む2つのワーキングプライを有するワーキング補強体を含み、2つのプライのワイヤ状カーカス補強体要素は、タイヤの円周方向との間にワーキングプライ毎に逆方向の角度を成す。クラウン補強体は、繊維ワイヤ状フープ補強体要素を含む単一のフーピングプライを有するフープ補強体も含む。
【0003】
ワイヤ状カーカス補強体要素及びワーキング補強体要素は、クラウン内で三角形メッシュを定めるように配置される。
【0004】
フープ補強体は、一方では、とりわけ高速走行時にタイヤの外形が維持されることを保証するために、好適な機械的強度のベーク特性(bake properties)によって、タイヤのクラウンに対して十分なフーピング力(掛け力)を発揮できなければならない。フープ補強体は、他方では、タイヤの製造工程において、特に例えばベーク型の表面に押し付けるために膨張膜を加圧することによってタイヤが半径方向及び円周方向に膨張するタイヤのベーク中にタイヤに課される半径方向及び円周方向の変形を妨げないように、好適な引張未加工弾性率特性(tension raw modulus properties)によって、タイヤのクラウンの半径方向膨張、従って円周方向伸長を可能にしなければならない。
【0005】
このようなタイヤは、特に米国特許第6799618号に記載されている。2つのワーキングプライが存在するため、繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前の未加工時にも、また一旦タイヤから取り出してベークする際にも、課される伸長とは無関係に比較的弱い機械的特性、とりわけ接線係数を有する。このように、米国特許第6799618号のフーピングプライは、タイヤの製造工程中にタイヤが半径方向及び円周方向に変形できることを保証するが、これはフーピングプライの、従ってクラウン補強体の機械的特性を犠牲にすることによって行われる。
【0006】
国際公開第2016/166056号からは、ワーキング補強体が単一のワーキングプライを有するタイヤが知られている。従って、タイヤのクラウン補強体が軽量化される。このタイヤでは、クラウンにおけるワイヤ状カーカス、ワーキング補強体及びフープ補強体要素の特定の配置によって三角形メッシュが確保される。国際公開第2016/166056号では、1つのワーキングプライが除去されているので、このワーキングプライの除去を補うために、フーピングプライが、その製造ステップ前の未加工時であるか、それともタイヤから一旦取り出したベーク時であるかにかかわらず、比較的高い接線係数を有する繊維ワイヤ状フープ補強材を含む。従って、このような繊維ワイヤ状フープ補強材は、クラウンの機械的強度特性は保証するものの、フーピング補強体に十分な耐久性をもたらすものではない。この耐久性は、クラウン補強体が単一のワーキングプライしか含んでいない場合に、1つのワーキングプライを除去することによって失われた耐久性の一部をフーピングプライがクラウン補強体にもたらすように想定されている時にはなおさら必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6799618号明細書
【文献】国際公開第2016/166056号
【文献】欧州特許第1623819号明細書
【文献】仏国特許第1413102号明細書
【文献】国際公開第2009/052844号
【文献】欧州特許第310171号明細書
【文献】欧州特許第456306号明細書
【文献】欧州特許第1925467号明細書
【文献】国際公開第2002/068738号
【文献】米国特許第6818728号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0017620号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0266462号明細書
【文献】国際公開第1985/05115号
【文献】国際公開第1997/06294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の目的は、単一のワーキングプライを含むワーキング補強体を有する、耐久性を強化したタイヤである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明の主題は、トレッド部及びクラウン補強体を含むクラウンと、2つのサイドウォール部と、2つのビード部とを備えたタイヤであって、各サイドウォール部が、各ビード部をクラウンにつなぎ、クラウン補強体が、クラウン内でタイヤの円周方向に延び、タイヤが、ビード部の各々に係止されてサイドウォール部内及びクラウン内に延びるカーカス補強体を備え、クラウン補強体が、カーカス補強体とトレッド部との間に半径方向に挿入され、
クラウン補強体が、少なくとも1つの繊維ワイヤ状フープ補強体要素を含むフーピングプライを有するフーピング補強体と、繊維ワイヤ状ワーキング補強体要素を含む単一のワーキングプライを有するワーキング補強体とを含み、
カーカス補強体が、繊維ワイヤ状カーカス補強体要素を含む単一のカーカスプライを有し、
1又は複数の繊維ワイヤ状フープ補強体要素、繊維ワイヤ状ワーキング補強体要素及び繊維ワイヤ状カーカス補強体要素が、赤道円周面上の投影において三角形メッシュを定めるように配置され、
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素が、
- 少なくとも1つのモノフィラメントを含む第1のストランドで構成されたコアと、
- 少なくとも2つの第2のストランドを含む層と、
を有し、層の各第2のストランドが少なくとも1つのモノフィラメントを含み、層の各第2のストランドがコアに螺旋状に巻き回されたタイヤである。
【0010】
このような繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、一般に「コア挿入体」と呼ばれる。従って、層の第2のストランドの中間に中心コアが挿入され、従って第2のストランドが周辺に存在して中心コアに隣接する。層の各第2のストランドは、層の他の1又は複数の第2のストランドに巻き回されることなくコアに巻き回される。
【0011】
このような繊維ワイヤ状フープ補強体要素の構造は、プライの製造ステップ前及びタイヤから取り出した時点で、繊維ワイヤ状フープ補強体要素の所望の機械的特性を取得することを可能にする。実際に、繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、低い伸び率まで応力を受けた時に、単一の第1のストランドで構成されたコアに制御される上記係数が比較的小さいままである。層の第2のストランドは、螺旋状に巻かれていて労力が螺旋の幾何変形によって吸収されるので、低い伸び率で係数の値を増加させることには寄与しない。繊維ワイヤ状フープ補強体要素がさらに大きな伸び率まで応力を受け、伸長によって層の第2のストランドの螺旋が失われると、この第2のストランドがコアの寄与に加えて係数の増加に大きく寄与する。
【0012】
また、このような繊維ワイヤ状フープ補強体要素の構造は、国際公開第2016/166056号に記載されているような従来のハイブリッド繊維ワイヤ状要素の耐久性よりもはるかに高い耐久性の取得を可能にする。実際に、上述したような「コア挿入」タイプの繊維ワイヤ状要素は優れた耐久性をもたらす。本発明者らは、国際公開第2016/166056号に記載されるような従来のハイブリッド繊維ワイヤ状要素が圧縮された時に、アラミド・モノフィラメントが損傷して破断力の減少を受けることにより、反復応力の影響下で、とりわけその後に張力が加わった場合に、その圧縮前と比べて破断のリスクが大幅に高まるという仮説を推進する。「コア挿入」タイプの繊維ワイヤ状要素が上述したように圧縮された場合、最大の圧縮を受ける1又は複数のモノフィラメントは、そつなく選択されている場合には良好な対圧縮応力性をもたらすほど配向性の低い分子構造を有するコアのモノフィラメントである。さらに、「コア挿入」タイプの繊維ワイヤ状要素が上述したように圧縮された場合、層ストランドの1又は複数のモノフィラメントは、国際公開第2016/166056号に記載されるような従来のハイブリッド繊維ワイヤ状要素と比べて多くの自由度を利用することができる。従って、層ストランドの1又は複数のモノフィラメントは、それほど損傷を受けずに高い破断力を保持するように機械的応力に適合して、繊維ワイヤ状要素の反復応力の影響下で破断しにくくなるように配置される。
【0013】
本発明によれば、1又は複数の繊維ワイヤ状フープ補強体要素、ワイヤ状ワーキング補強体要素及びワイヤ状カーカス補強体要素は、赤道円周面上の投影において三角形メッシュを定めるように配置される。このようなメッシュは、フーピングプライと2つのワーキングプライとカーカスプライとを含む最新技術の従来のタイヤと同様の特性の取得を可能にする。
【0014】
本発明によれば、カーカス補強体は、単一のカーカスプライを含む。従って、カーカス補強体は、カーカスプライとは別に、ワイヤ状補強体要素によって補強されたプライを有していない。カーカス補強体から排除されたこのような補強プライのワイヤ状補強体要素は、金属ワイヤ状補強体要素と繊維ワイヤ状補強体要素とを含む。カーカス補強体は、カーカスプライから成ることが非常に優先的である。
【0015】
本発明によれば、ワーキング補強体は、単一のワーキングプライを含む。従って、ワーキング補強体は、ワーキングプライとは別に、ワイヤ状補強体要素によって補強されたプライを有していない。タイヤのワーキング補強体から排除されたこのような補強プライのワイヤ状補強体要素は、金属ワイヤ状補強体要素と繊維ワイヤ状補強体要素とを含む。ワーキング補強体は、ワーキングプライから成ることが非常に優先的である。上述したフーピング補強体の機械的強度及び耐久力の特性は、ワーキング補強体からワーキングプライを排除することを可能にする。大幅に軽量化されたタイヤが取得される。
【0016】
本発明によれば、クラウンは、トレッド部とクラウン補強体とを含む。トレッド部は、
- 地面に接するように意図された表面によって半径方向外側を区切られ、
- クラウン補強体によって半径方向内側を区切られた、
高分子材料、好ましくはエラストマ材料の帯であると理解される。
【0017】
高分子材料の帯は、高分子材料、好ましくはエラストマ材料のプライで構成され、或いは各プライが高分子材料、好ましくはエラストマ材料から成る複数のプライの積層で構成される。
【0018】
非常に優先的な実施形態では、クラウン補強体が、単一のフーピング補強体と単一のワーキング補強体とを含む。従って、クラウン補強体は、フーピング補強体及びワーキング補強体とは別に、補強体要素で補強された補強体を有していない。タイヤのクラウン補強体から排除されたこのような補強体の補強体要素は、ワイヤ状補強体要素、編物又は織物を含む。クラウン補強体は、フーピング補強体及びワーキング補強体から成ることが非常に優先的である。
【0019】
非常に優先的な実施形態では、クラウンが、クラウン補強体とは別に、補強体要素で補強された補強体を有していない。タイヤのクラウンから排除されたこのような補強体の補強体要素は、ワイヤ状補強体要素、編物又は織物を含む。クラウンは、トレッド部及びクラウン補強体から成ることが非常に優先的である。
【0020】
非常に優先的な実施形態では、カーカス補強体が、クラウン補強体と半径方向に直接接触するように配置され、クラウン補強体が、トレッド部と半径方向に直接接触するように配置される。この非常に優先的な実施形態では、単一のフーピングプライ及び単一のワーキングプライが、互いに半径方向に直接接触するように配置される。
【0021】
半径方向に直接接触するとは、ここではプライ、補強体又はトレッド部である互いに半径方向に直接接触すると見なされる物体が、互いに半径方向に直接接触すると見なされる物体間に半径方向に介在するいずれかのプライ、補強体又は帯などのいずれかの物体によって半径方向に分離されていないことを意味するものであると理解される。
【0022】
ワイヤ状とは、主軸に沿って長手方向に延び、主軸に沿った寸法Lと比べて比較的小さな最大寸法Dの、主軸に対して直角な断面を有する補強要素を意味するものであると理解される。比較的小さいとは、L/Dが100以上、好ましくは1000以上であることを意味するものであると理解される。この定義は、円形断面のワイヤ状補強体要素、及び多角形又は長円形断面などの非円形断面のワイヤ状補強体要素にも等しく当てはまる。非円形断面のワイヤ状補強体要素の場合、断面の最大寸法Dと断面の最小寸法dとの比率は、20以上、好ましくは30以上、さらに優先的には50以上である。
【0023】
繊維は、ワイヤ状要素が金属でないことを意味するものであると理解される。換言すれば、ワイヤ状要素は、1又は2以上の非金属材料から成る。このような非金属材料の例は、有機材料、とりわけ高分子材料、及びカーボン又はガラスなどの無機材料である。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲では、「aとbとの間(between a and b)」という表現によって指定する値の間隔は、aよりも大きいものからbよりも小さいものに及ぶ(すなわち、境界a及びbを除外する)値の範囲を表すのに対し、「aからbまで(from a to b)」という表現によって指定する値の間隔は、境界「a」から境界「b」に及ぶ、すなわち厳密な境界「a」及び「b」を含む値の範囲を意味する。
【0025】
「エラストマ100重量部に対する重量部」(又はpce)という表現は、本発明の意味では、100重量部のエラストマに対する重量部を意味するものであると理解されたい。
【0026】
軸方向は、タイヤの回転軸に対して実質的に平行な方向を意味するものであると理解される。
【0027】
円周方向は、タイヤの軸方向及び半径の両方に対して実質的に垂直な(換言すれば、タイヤの軸上に中心を有する円に正接する)方向を意味するものであると理解される。
【0028】
半径方向は、タイヤの半径に沿った方向、すなわちタイヤの回転軸と交差し、この軸に対して実質的に垂直なあらゆる方向を意味するものであると理解される。
【0029】
(Mとして示す)正中面は、2つのビード部間の中間に位置してクラウン補強体の中間を通過する、タイヤの回転軸に対して直角な平面を意味するものであると理解される。
【0030】
(Eとして示す)赤道円周面は、正中面及び半径方向に対して直角にタイヤの赤道を通過する理論的平面を意味するものであると理解される。タイヤの赤道は、外周切断面(円周方向と垂直であって半径方向及び軸方向と平行な平面)において、タイヤの回転軸に平行であって地面に接するように意図されたトレッド部の半径方向最外点と、リムなどの支持体に接するように意図された半径方向最内点との間の等距離に位置する軸であり、これらの2点間の距離はHに等しい。
【0031】
ねじれN1、N1’及びN2の測定は、当業者に周知のあらゆる方法によって、例えばASTM規格D885/D885M-10a(2014)(第30項)に従って、例えばねじり動力計(torsiometer)を使用して行うことができる。
【0032】
各ストランドの番手(又は線密度)は、ASTM規格D885/D885M-10a(2014)に従って決定される。番手は、tex(1000mの製品のグラム単位重量-要約すると、0.111テックスは1デニールに等しい)で与えられる。
【0033】
cN/tex/%で表される接線係数は、ASTM規格D885/D885M-10a(2014)を適用することによって得られる力-伸び率曲線から計算される。接線係数は、この力-伸び率曲線から各点における曲線の微分係数を計算することによって導出される。結合繊維ワイヤ状補強体要素の場合、接線係数は、繊維ワイヤ状フープ補強体要素をフーピングプライに埋め込むステップの直前に、すなわち最後の熱処理ステップと埋め込みステップとの間に接線係数特性を修正する他のあらゆるステップが行われることなく測定される。従って、フーピングプライの製造ステップ前に測定される接線係数は、未加工ワイヤ状補強体要素を1又は2以上の熱架橋性粘着剤の1又は2以上の層で被覆する1又は2以上のステップの後、及び1又は2以上の層で被覆された未加工ワイヤ状補強体要素を熱処理して1又は複数の粘着剤を架橋させて結合繊維ワイヤ状補強体要素を取得する1又は2以上のステップの後に測定される。
【0034】
未加工繊維ワイヤ状要素は、繊維ワイヤ状要素を構成する1又は複数の繊維材料を覆う接着機能を有するコーティングを伴わない製造からこのような材料が得られたようなものである。従って、未加工繊維ワイヤ状要素は、むき出しのもの、すなわち繊維ワイヤ状要素を構成する1又は複数の繊維材料がコーティングで被覆されておらず、又は場合によってはバッチ加工されていないもの、すなわちとりわけその製造工程中に繊維ワイヤ状要素を構成する1又は複数の繊維材料の滑りを促して静電荷の蓄積を避ける機能を有するバッチ化合物(batching compound)で被覆されていないものとすることができる。
【0035】
従って、第1の実施形態では、コアの第1のストランドと層の第2のストランドとを編成して未加工繊維ワイヤ状補強体要素を形成し、この未加工繊維ワイヤ状補強体要素を熱架橋性粘着剤の外層で被覆し、外層で被覆された未加工繊維ワイヤ状補強体要素を熱処理して粘着剤を架橋させて結合繊維ワイヤ状補強体要素を取得する。
【0036】
第2の実施形態では、未加工繊維ワイヤ状補強体要素を第1の熱架橋性粘着剤の中間層で被覆し、この中間層で被覆された未加工繊維ワイヤ状補強体要素を熱処理して第1の粘着剤を架橋させて仮結合繊維ワイヤ状補強体要素を取得し、この仮結合繊維ワイヤ状補強体要素を第2の熱架橋性粘着剤の外層で被覆し、外層で被覆された仮結合繊維ワイヤ状補強体要素を熱処理して第2の粘着剤を架橋させて結合繊維ワイヤ状補強体要素を取得する。
【0037】
繊維ワイヤ状要素の破断時伸び率及び破断力は、ASTM規格D885/D885M-10a(2014)に従って測定される。プライの破断時伸び率は、プライが含む繊維ワイヤ状要素の破断時伸び率に等しい。
【0038】
プライは、一方では弾性体マトリックスに埋め込まれた1又は2以上のワイヤ状補強体要素の編成体を、他方では弾性体マトリックスの編成体を意味するものであると理解される。
【0039】
破断力の15%に等しい力に対するプライの引張割線係数(tensile secant modulus)はMA15と呼ばれ、daN/mmで表される。係数MA15は、プライの繊維ワイヤ状フープ補強体要素にASTM規格D885/D885M-10a(2014)を適用することによって取得される力-伸び率曲線から計算される。繊維ワイヤ状補強体要素の引張割線係数は、点(0,0)と破断力の15%に等しい縦座標を有する曲線の点との間にプロットされる直線の傾きを求めることによって計算される。係数MA15は、繊維ワイヤ状補強体要素の引張割線係数にプライ1mm当たりの繊維ワイヤ状フープ補強体要素の数を乗算することによって求められ、この数は、繊維ワイヤ状補強体要素がプライ内で延びる方向に対して直角な方向で求められる。
【0040】
プライの破断力は、プライの繊維ワイヤ状補強体要素にASTM規格D885/D885M-10a(2014)を適用することによって取得される力-伸び率曲線から計算される。プライの破断力は、繊維ワイヤ状補強体要素の破断力にプライ1mm当たりの繊維ワイヤ状補強体要素の数を乗算することによって求められ、この数は、繊維ワイヤ状補強体要素がプライ内で延びる方向に対して直角な方向で求められる。
【0041】
角度の向きは、時計回り又は反時計回りの方向であると理解され、この場合、その角度を定める基準直線、ここではタイヤの円周方向から回転して、その角度を定める他の直線に到達することが必要である。
【0042】
ストランドの1%伸長時引張剛性は、100ターン/メートルのねじれが加えられたストランドにASTM規格D885/D885M-10a(2014)を適用することによって取得される力-伸び率曲線から計算される。ストランドの引張剛性は、0.5cN/texの標準的な予張力に等しい力に対応する曲線の点と、1%の伸び率に等しい横座標を有する曲線の点との間にプロットされる直線の傾きを求めることによって計算される。
【0043】
フーピング補強体は、単一のフーピングプライを含むことが有利である。フーピング補強体は、単一のフーピングプライを含むことが有利である。従って、フーピング補強体は、フーピングプライとは別に、ワイヤ状補強体要素で補強されたプライを有していない。タイヤのフーピング補強体から排除されたこのような補強プライのワイヤ状補強体要素は、金属ワイヤ状補強体要素及び繊維ワイヤ状補強体要素を含む。フーピング補強体は、フーピングプライから成ることが非常に優先的である。
【0044】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤ10の円周方向との間に、厳密に10°未満の、好ましくは7°以下の、さらに優先的には5°以下の角度を成すことが有利である。
【0045】
第1の実施形態では、フーピングプライが、フーピングプライの破断力の15%に等しい力に対して、200daN/mm以上の引張割線係数を有することが有利である。第2の実施形態では、フーピングプライが、フーピングプライの破断力の15%に等しい力に対して、500daN/mm以上の引張割線係数を有することが有利である。
【0046】
第1の実施形態では、フーピングプライが、フーピングプライの破断力の15%に等しい力に対して、500daN/mm以下の引張割線係数を有することが有利である。第2の実施形態では、フーピングプライが、フーピングプライの破断力の15%に等しい力に対して、800daN/mm以下の引張割線係数を有することが有利である。
【0047】
フーピングプライの破断力は、35daN/mm以上、好ましくは45daN/mm以上、さらに優先的には55daN/mm以上であることが有利である。第2の実施形態では、フーピングプライの破断力が、60daN/mm以上、好ましくは70daN/mm以上であることが有利である。
【0048】
1つの実施形態では、フーピング補強体が、ワーキング補強体とトレッド部との間に半径方向に挿入される。変形例として、フーピング補強体は、ワーキング補強体とカーカス補強体との間に半径方向に挿入することもできる。
【0049】
1つの実施形態では、各ワイヤ状カーカス補強体要素が、タイヤの正中面内でタイヤの円周方向に対して、55°以上の、好ましくは55°~80°の、さらに優先的には60°~70°の範囲の角度AC1を成す。従って、ワイヤ状カーカス補強体要素は、円周方向との間の角度を通じて、タイヤのクラウンにおける三角形メッシュの形成に関与する。
【0050】
1つの実施形態では、各ワイヤ状カーカス補強体要素が、タイヤの赤道円周面内でタイヤの円周方向との間に85°以上の角度AC2を成す。ワイヤ状カーカス補強体要素は、各サイドウォール部では実質的に放射状であり、すなわち円周方向に対して実質的に直角であり、これによって放射状カーカスを含むタイヤの全ての利点を保持することができる。
【0051】
1つの実施形態では、各ワイヤ状ワーキング補強体要素が、タイヤの正中面内でタイヤの円周方向との間に10°以上の、好ましくは30°~50°の、さらに優先的には35°~45°の角度ATを成す。従って、ワイヤ状ワーキング補強体要素は、円周方向との間に成す角度を通じて、タイヤのクラウンにおける三角形メッシュの形成に関与する。
【0052】
考えられる最も有効な三角形メッシュを形成するために、角度ATの向き及び角度AC1の向きは、タイヤの円周方向に対して逆向きであることが優先される。
【0053】
各プライのワイヤ状補強体要素は、弾性体マトリックスに埋め込まれることが有利である。異なるプライは、同じ弾性体マトリックス又は異なる弾性体マトリックスを含むことができる。
【0054】
弾性体マトリックスは、架橋状態において弾性挙動を有する母材を意味するものであると理解される。このような母材は、少なくとも1つのエラストマと少なくとも1つの他の成分とを含む化合物との架橋によって得られることが有利である。少なくとも1つのエラストマと少なくとも1つの他の成分とを含む化合物は、エラストマ、架橋系及び充填材を含むことが好ましい。
【0055】
エラストマはジエン系エラストマであり、すなわち、要約すると、少なくとも部分的にジエン系モノマから、すなわち共役であるか否かにかかわらず2つの二重炭素-炭素結合を有するモノマから得られる(すなわち、ホモポリマ又はコポリマ)いずれかのエラストマ(単一のエラストマ又はエラストマの混合物)であることが好ましい。このジエン系エラストマは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン・コポリマ、イソプレン・コポリマ及びこれらのエラストマの混合物で構成された群から選択され、このようなコポリマは、とりわけスチレン-ブタジエン・コポリマ(SBR)、ブタジエン-イソプレン・コポリマ(BIR)、スチレン-イソプレン・コポリマ(SIR)及びスチレン-ブタジエン-イソプレン・コポリマ(SBIR)で構成された群から選択されることがさらに優先的である。特に優先的な実施形態は、「イソプレノイド」エラストマ、すなわちイソプレンのホモポリマ又はコポリマ、換言すれば天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、異なるイソプレン・コポリマ及びこれらのエラストマの混合物で構成された群から選択されたジエン系エラストマを使用するものである。
【0056】
各化合物の架橋系は、いわゆる加硫系、すなわち硫黄(又は硫黄供与剤)及び一次加硫促進剤に基づくものであることが好ましい。この基本加硫系には、様々な二次促進剤又は既知の加硫活性剤を添加することができる。硫黄は、0.5pce~10pceの優先的割合率で使用され、例えばスルフェンアミドなどの一次加硫促進剤は、0.5pce~10pceの優先的割合で使用される。例えばカーボンブラック及び/又はシリカなどの補強充填材の比率は、好ましくは30pceよりも高く、とりわけ30pce~100pceである。pceは、エラストマ100重量部当たりの重量部を意味するものであると理解される。
【0057】
カーボンブラックについては、全てのカーボンブラックが適しており、特にタイヤではHAF、ISAF及びSAFタイプのブラック(いわゆるタイヤグレードのブラック)が従来使用されている。後者の中でも、(ASTM)グレード300、600又は700のカーボンブラック(例えば、N326、N330、N347,N375、N683、N772)が特に挙げられる。シリカについては、450m2/gを上回る、好ましくは30m2/g~400m2/gのBET比表面積を有する沈降シリカ又は焼成シリカが特に適している。
【0058】
当業者であれば、本明細書に照らして、所望の特性レベル(特に弾性係数)を達成するために化合物の配合を調整し、その配合を想定される特定の用途に適合させることができるであろう。従って、各化合物は、1又は2以上のジエン系エラストマと、さらには、例えばカーボンブラック又はシリカのような補強充填材、結合剤、抗老化剤、抗酸化剤、可塑剤、或いは芳香性であるか、それとも非芳香性であるかにかかわらず伸展油(例えばナフテン型又はパラフィン型の高粘度の又は好ましくは低粘度のMES又はTDAE油などの、とりわけ非常に弱芳香性の又は非芳香性の油)、高ガラス転移温度の(30℃よりも高い)可塑化樹脂、未加工状態の化合物の実装(処理性)を促す薬剤、粘着性付与樹脂、復帰防止剤、例えばHMT(ヘキサメチレンテトラアミン)又はH3M(ヘキサメトキシメチルメラミン)などのメチレン受容体又は供与体、強化用樹脂、例えば特にコバルト、ニッケル又はランタノイド塩類などの金属塩類型の既知の接着促進系などの、タイヤの製造を意図された化合物において通常使用されている添加物の全部又は一部とを含むことができる。
【0059】
各弾性体マトリックスは、10%伸長時に4MPa~25MPaの、さらに優先的には4MPa~20MPaの伸長割線係数を有することが好ましく、とりわけ5MPa~15MPaの値が特に好適であることが分かっている。係数測定は、別途規定されていない限り、ASTM規格D412(1998)(試験片「C」)に従って引張モードで行われ、2回目の(すなわち、適応サイクル後の)伸長では、10%伸長時に「真の」割線係数を測定し、ここではMsとして示しMPaで表す(ASTM規格D1349(1999)による標準的温度及び相対湿度条件)。
【0060】
各ワイヤ状ワーキング補強体要素は、金属であることが有利である。定義によれば、金属ワイヤ状要素は、完全に(ワイヤの100%が)金属材料から成る1つのワイヤ又は複数のワイヤの集合体で形成されたワイヤ状要素を意味するものであると理解される。このような金属ワイヤ状要素は、鋼製の、さらに優先的には以下で「炭素鋼」として示すパーライト系(フェライト-パーライト系)炭素鋼の、或いはステンレス鋼(定義によれば、少なくとも11%のクロムと少なくとも50%の鉄とを含む鋼)のワイヤのうちの1つ又は2つ以上で優先的に実現される。しかしながら、言うまでもなく他の鋼又は他の合金を使用することも可能である。炭素鋼を有利に使用する場合、その炭素含有量(鋼の重量%)は、0.2%~1.2%、とりわけ0.5%~1.1%であることが好ましく、これらの含有値は、タイヤにとって必要な機械的特性とワイヤの実現可能性との間の良好なトレードオフを表す。使用される金属又は鋼は、具体的に炭素鋼であるか、それともステンレス鋼であるかにかかわらず、例えば、金属ケーブル及び/又はその構成要素の実装特性、或いはグリップ特性、耐腐食性又は耐老化性などのケーブル及び/又はタイヤ自体の使用特性を強化する金属層でそれ自体を被覆することができる。優先的な実施形態によれば、使用される鋼は、真鍮(Zn-Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。
【0061】
Scとして指定する第2のストランドの1%伸長時の引張剛性の総和は、Saとして示す第1のストランドの1%伸長時の引張剛性よりも大きく、好ましくはSc/Sa≧10であり、さらに優先的にはSc/Sa≧50であり、さらに優先的にはSc/Sa≧100であることが好ましい。繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、層の剛性が比較的高いので、小さな伸長時よりも大きな伸長時の方が大幅に高い剛性を有する。
【0062】
この及び以下の実施形態では、上述した「コア挿入」構造によってコアと層との間で剛性、従って係数の違いが悪化する第1の及び第2のストランドの剛性、従って係数の賢明な選択を通じて、繊維ワイヤ状補強体要素の力-伸び率曲線に適した二重係数挙動(bi-modulus behaviour)を得ることが可能である。
【0063】
第1のストランドは、1%の伸長時に、2500cN/tex以下の、好ましくは900cN/tex以下の、さらに優先的には500cN/tex以下の引張割線係数を有することが有利である。
【0064】
各第2のストランドは、1%の伸長時に、500cN/tex以上の、好ましくは1000cN/tex以上の、さらに優先的には2200cN/tex以上の引張割線係数を有することが有利である。
【0065】
従って、繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、第1及び第2のストランドの係数が相対的に異なることによって、小さな伸長時には比較的低い係数を、大きな伸長時には比較的高い係数を有する力-伸び率曲線を有する。
【0066】
1つの実施形態では、第1のストランドが、単一のモノフィラメントを含む。好ましい実施形態では、第1のストランドが、複数のモノフィラメントを含むマルチフィラメントストランドである。
【0067】
1つの実施形態では、各第2のストランドが、単一のモノフィラメントを含む。好ましい実施形態では、各第2のストランドが、複数のモノフィラメントを含むマルチフィラメントストランドである。
【0068】
モノフィラメントは所与の材料で製造され、例えばこの材料の溶融押し出し、溶液中押し出し又はゲル押し出しなどの押し出し加工から得られた一体構造フィラメントを示す。
【0069】
単一のモノフィラメントを含むストランドの場合、通常、モノフィラメントは、0.03mm~0.50mmの直径を有する。
【0070】
複数のモノフィラメントを含むマルチフィラメントストランドの場合、通常、モノフィラメントは、2μm~30μmの直径を有する。複数のモノフィラメントを含む各マルチフィラメントストランドは、通常は10本よりも多くの基本フィラメント(elementary filaments)、好ましくは100本よりも多くの基本フィラメント、さらに優先的には500本よりも多くの基本フィラメントである少なくとも2つの基本フィラメントを含む。
【0071】
上述した実施形態では、一体構造フィラメントを形成するために、各モノフィラメントを1又は2以上の材料から製造することができる。工業コスト上の理由で、各モノフィラメントは単一の繊維材料で製造されることが好ましい。
【0072】
有利な実施形態では、第1のストランドの1又は複数のモノフィラメントが、ポリエステル、脂肪族ポリアミド、セルロース及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは脂肪族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、さらに優先的にはナイロン6.6で製造される。脂肪族ポリアミド、及びとりわけナイロン6.6は、繊維ワイヤ状フープ補強要素のコアに、とりわけ耐久性を改善するために求められる品質である、良好な対圧縮応力性をもたらすそれほど配向性が高くない分子構造を有する。
【0073】
有利な実施形態では、各第2のストランドの1又は複数のモノフィラメントが、芳香族ポリアミド、芳香族コポリアミド、ポリケトン及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは芳香族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、さらに優先的にはパラアラミドで製造される。芳香族ポリアミド、及びとりわけパラアラミドは、繊維ワイヤ状フープ補強体要素の層に求められる品質である、ストランドに良好な破断力をもたらす優れた引っ張り強さ(tenacity)を提供する。
【0074】
上記の実施形態では、これらの材料のモノフィラメントの混合物が、異なる材料から製造されたモノフィラメントの混合物を含むマルチフィラメントストランドを意味する理解されたい。このようなマルチフィラメントストランドは、特に国際公開第2009/052844号に記載されている。
【0075】
要約すると、周知のように、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドは、互いにアミド結合によって結合した芳香族基によって形成された線状高分子(linear macromolecules)のモノフィラメントであり、その少なくとも85%が2つの芳香族核(aromatic kernels)に、具体的にはポリ(p-フェニレン・テレフタルアミド)(又はPPTA)の繊維の核に直接結合し、光学的異方性の押し出し化合物から非常に長い時間を掛けて製造される。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドとしては、ポリアリールアミド(又はPAA、特にSovay社のIxefという商品名で知られている)、ポリフタルアミド(又はPPA、特にSovay社のAmodelという商品名で知られている)、非晶性半芳香族ポリアミド(又はPA 6-3T、特にEvonik社のTrogamidという商品名で知られている)、パラアラミド(又はポリ(パラフェニレン・テレフタルアミド)又はPA PPD-T、特にDu Pont de Nemourss社のKevlarという商品名又はTeijin社のTwaronという商品名で知られている)を挙げることができる。
【0076】
ポリケトンのモノフィラメントは、エチレンと一酸化炭素との重縮合によって得られる熱可塑性ポリマのモノフィラメントであると理解される。一方で、ポリケトンのモノフィラメントは、例えば欧州特許第310171号、欧州特許第456306号、欧州特許第1925467号、国際公開第2002/068738号又は米国特許第6818728号、米国特許出願公開第2007/0017620号、米国特許出願公開第2009/0266462号などの非常に多くの公表文献にも記載されている。例としては、Hyosung社のKarilon、Akro-Plastic社のAkrotek又はSchulmans社のSchulaketonを挙げることができる。
【0077】
要約すると、ポリエステルのモノフィラメントは、互いにエステル結合によって結合された基によって形成された線状高分子のモノフィラメントである。ポリエステルは、カルボキシル二酸又はその誘導体とジオールとの重縮合を通じて製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸の重縮合及びエチレングリコールの重縮合によって製造することができる。既知のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、又はポリプロピレンナフタレート(PPN)を挙げることができる。
【0078】
脂肪族ポリアミドのモノフィラメントは、芳香族環を示さないアミド基を含むポリマ又はコポリマの線状高分子のモノフィラメントであると理解され、カルボン酸とアミンとの重縮合によって合成することができる。脂肪族ポリアミドとしては、ナイロンPA4.6、PA6、PA6.6、さらにはPA6.10、及びとりわけDupont社のZytel、Solvay社のTechnyl、又はArkema社のRilsamidを挙げることができる。
【0079】
セルロースのモノフィラメントは、セルロース系材料で形成された、すなわち当然ながら押し出し加工法にかかわらず、セルロース、セルロース誘導体、又はセルロース誘導体から再生されたセルロースに基づいて形成されたモノフィラメントであると理解される。「セルロース誘導体」は、化学反応に従ってセルロースの水酸基の置換によって形成されたいずれかの化合物であると理解すべきであり、この誘導体は置換誘導体とも呼ばれる。やはり周知のように、「再生セルロース」は、セルロース誘導体に対して行われる再生工程によって得られるセルロースであると理解される。セルロース繊維の例としては、例えばレ―ヨン、或いはCordenka社によって市販されている粘性繊維又はHyosung社によって市販されている「Lyocell」繊維を挙げることができる。ギ酸セルロース係数(cellulose formiate modulus)の高い繊維、或いは国際公開第85/05115号又は国際公開第97/06294号に記載されているような再生セルロースで形成された繊維を挙げることもできる。
【0080】
従って、好ましい実施形態では、コアの第1のストランドが、脂肪族ポリアミドで製造された、好ましくはナイロン6.6で製造された少なくとも1つのモノフィラメントを含む。第1のストランドは、脂肪族ポリアミドで製造された、好ましくはナイロン6.6で製造された複数のモノフィラメントを含むマルチフィラメントストランドであることが好ましい。本発明者らは、コアの構成材料が繊維ワイヤ状要素の圧縮耐久性に著しい影響を及ぼすことを発見した。実際に、コアの材料は、繊維ワイヤ状要素の中心に存在し、従って螺旋を含まないことにより、繊維ワイヤ要素を軸方向に圧縮した時に直接応力を受ける。本発明者らは、ポリエステルと比べて改善された圧縮耐久性を有する脂肪族ポリアミドを使用して、圧縮耐久性の高い繊維ワイヤ状補強体要素を取得した。
【0081】
好ましい実施形態では、層の各第2のストランドが、芳香族ポリアミドで製造された、好ましくはパラアラミドで製造された少なくとも1つのモノフィラメントを含む。層の各第2のストランドは、脂肪族ポリアミドで製造された、好ましくはパラアラミドで製造された複数のモノフィラメントを含むマルチフィラメントストランドであることが好ましい。本発明者らは、弱い応力、従って低伸長では、層ストランドのモノフィラメントの構成材料が応力を受けないので、層ストランドがその螺旋を通じて係数にほとんど影響を与えないことを発見した。強い応力、従って高伸長では、螺旋が耐える伸長が応力に取り込まれてしまい、層ストランドのモノフィラメントの構成材料が応力を受ける。優れた引っ張り強さを有する芳香族ポリアミドの選択により、補強体要素の係数は、より低い伸長に対して補強体要素の係数を過度に高めることなく、これらの強い応力に対して最大化される。
【0082】
1つの実施形態では、層が、3つ又は4つの第2のストランド、好ましくは3つの第2のストランドで構成される。従って、コアの外面が容易に完全に覆われる。3つのストランドは、上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素の直径を定めるように優先的に使用される。
【0083】
コアの第1のストランドの撚り係数は、60~80、好ましくは65~75に及ぶことが有利である。層の各第2のストランドの撚り係数は、90~120、好ましくは100~115に及ぶことが有利である。
【0084】
ストランドの撚り係数は、繊維ワイヤ状フープ補強体要素内で編成する前のストランドのターン/メートル単位での撚り数をRとし、ストランドのtex単位での番手をTとし、ストランドの1又は複数のモノフィラメントの構成材料の密度をρとする関係である、R×(T/(1000×ρ))^(1/2)に等しい。
【0085】
繊維ワイヤ状フープ補強材の撚り係数は、170~220、好ましくは180~210に及ぶことが有利である。
【0086】
繊維ワイヤ状フープ補強体要素の撚り係数は、繊維ワイヤ状フープ補強体要素のターン/メートル単位での撚り数をR’とし、繊維ワイヤ状フープ補強体要素のtex単位での番手をT’とし、繊維ワイヤ状フープ補強体要素の1又は複数のモノフィラメントの構成材料の密度をρ’とする関係である、R’×(T’/(1000×ρ’))^(1/2)に等しい。異なる材料の場合、番手は、ストランド数(number strands)によって重み付けされたストランドの番手の平均を取ることによって取得される。異なる材料の場合、密度は、ストランド数及び各ストランドの番手によって重み付けされた密度の平均を取ることによって取得される。
【0087】
コアの第1の変形例では、コアの第1のストランドが、少なくとも1つの、好ましくは複数のモノフィラメントを含む1つの紡績糸で構成される。この第1の変形例では、複数の紡績糸を編成してコアのストランドを製造する予備ステップが回避される。
【0088】
コアの第2の変形例では、コアの第1のストランドが、各紡績糸が少なくとも1つの、好ましくは複数のモノフィラメントを含む少なくとも2つの異なる紡績糸を含む。
【0089】
コアの第1のストランドの番手は、10tex~100tex、好ましくは40tex~60texに及ぶことが有利である。ストランドの番手は、コアの第1のストランドを構成する1又は複数の紡績糸の番手の総和であると理解される。従って、コアの第1の変形例では、紡績糸の番手が、10tex~100tex、好ましくは40tex~60texに及ぶ。コアの第2の変形例では、2つの紡績糸がコアの第1のストランドを形成する場合、各紡績糸の番手が、5tex~50tex、好ましくは20tex~30texに及ぶ。
【0090】
層の第1の変形例では、層の各第2のストランドが、少なくとも1つの、好ましくは複数のモノフィラメントを含む紡績糸で構成される。この第1の変形例では、複数の紡績糸を編成して層の各ストランドを製造する予備ステップが回避される。
【0091】
層の第2の変形例では、層の各第2のストランドが、各紡績糸が少なくとも1つの、好ましくは複数のモノフィラメントを含む少なくとも2つの異なる紡績糸を含む集合体を有する。
【0092】
層の各第2のストランドの番手は、50tex~350tex、好ましくは130tex~220texに及ぶことが有利である。ストランドの番手は、層の各第2のストランドを構成する1又は複数の紡績糸の番手の総和であると理解される。従って、層の第1の変形例では、紡績糸の番手が、50tex~350tex、好ましくは130tex~220texに及ぶ。層の第2の変形例では、2つの紡績糸が層の各第2のストランドを形成する場合、各紡績糸の番手が、25tex~175tex、好ましくは65tex~110texに及ぶ。
【0093】
層の第2のストランドの番手の総和に対するコアの第1のストランドの番手の比率は、0.05~0.15に及ぶことが有利である。このように、コアが層によって十分に覆われ、すなわち層によって定められる空間の内部にコアの第1のストランドが完全に含まれることが保証される。
【0094】
1つの実施形態では、上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素が、
- コアの第1のストランドを、1m当たりの撚り数N1に従って第1の撚り方向に撚るステップと、
- 層の各第2のストランドを、1m当たりの撚り数N1’に従って第1の撚り方向に撚るステップと、
- コアの第1のストランドと層の各第2のストランドとを、1m当たりの撚り数N2に従って第1の撚り方向とは逆の第2の撚り方向に撚ることによって編成するステップと、
を含む方法によって取得される。
【0095】
N1>N1’、かつN2=N1’であることが好ましい。繊維ワイヤ状フープ補強体要素の幾何学的形状に起因して、コアは、そのモノフィラメントの撚れ残り(residual twist)をゼロにするために第2の方向への解撚(untwisting)が少なくて済むのに対し、層は、撚れ残りをゼロにするために実質的に等しい第2の方向への解撚を必要とする。1.02≦N1/N1’≦1.15であり、好ましくは1.05≦N1/N1’≦1.10であることが有利である。
【0096】
上述した番手を有する繊維ワイヤ状補強体要素の破断力と耐久性との間の最良のトレードオフを獲得するために、
- N1は、300ターン/メートル~380ターン/メートル、好ましくは320ターン/メートル~360ターン/メートルに及び、
- N1’は、275ターン/メートル~355ターン/メートル、好ましくは295ターン/メートル~335ターン/メートルに及び、
- N2は、275ターン/メートル~355ターン/メートル、好ましくは295ターン/メートル~335ターン/メートルに及ぶ。
【0097】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤから取り出した時点で、4%以上の、好ましくは3.5%以上の、さらに優先的には3%以上の、さらに優先的には2%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。このようなタイヤは、ベーク時の、すなわちタイヤの製造後の1又は複数の繊維ワイヤ状フーピング要素の比較的高い接線係数により、機械的に十分に堅牢なフーピング補強体を取得し、従ってタイヤの性能を劣化させるリスクを伴わずにタイヤのクラウン補強体の計量化を可能にする。従って、フーピング補強体は、非常に小さな伸長に対して高い係数を有し、従って著しい負荷を非常に迅速に吸収することができる。これにより、とりわけ上述した手段を使用してタイヤのクラウン補強体の残部を一層軽量化することができる。
【0098】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤから取り出した時点で、6%以上の、好ましくは5%以上の、さらに優先的には4%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0099】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤから取り出した時点で、8%以上の、好ましくは7%以上の、さらに優先的には6%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0100】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤから取り出した時点で、8%以上のあらゆる伸び率について20cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0101】
同様に、フーピング補強体は、より大きな伸長に対しても比較的高い、と言うよりも非常に高い係数を有し、従ってタイヤの機械的特性を損なうリスクを伴わずにタイヤのクラウン補強体のスムーズな軽量化を可能にする。
【0102】
上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、タイヤから取り出した時点で、6%以上の、好ましくは7%以上の、さらに優先的には8%以上の破断時伸び率を有することが有利である。従って、上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素は、たとえ過酷な条件であっても、タイヤが転がっている間にクラウン補強体が受ける変形を吸収できるほど高い破断時伸び率を有する。同様に、フーピングプライは、タイヤから取り出した時点で、6%以上の、好ましくは7%以上の、さらに優先的には8%以上の破断時伸び率を有する。
【0103】
タイヤは、少なくとも1つの結合繊維ワイヤ状補強体要素を化合物に埋め込んで上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素が上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素を形成するフーピングプライを形成するフーピングプライの製造ステップを含む方法によって取得されることが有利である。
【0104】
上記又は各結合繊維ワイヤ状要素は、フーピングプライの製造ステップ前に6%以上の破断時伸び率を有することが有利である。
【0105】
以下、本発明の4つの好ましい実施形態について説明する。第1の実施形態では、結合繊維ワイヤ状要素の変形性を最大化し、従ってタイヤの半径方向及び円周方向の変形性を最大化する。第2の実施形態では、変形性と係数との間のトレードオフにおいて変形性を優先し、従ってタイヤの半径方向及び円周方向の変形性とクラウンの機械的強度との間のトレードオフにおいて、タイヤの製造方法におけるタイヤの半径方向及び円周方向の変形性を優先する。第3の実施形態では、変形性と係数との間のトレードオフにおいて係数を優先し、従ってタイヤの半径方向及び円周方向の変形性とクラウンの機械的強度との間のトレードオフにおいてクラウンの機械的強度を優先する。第4の実施形態では、結合繊維ワイヤ状要素の係数、従ってクラウンの機械的強度を最大化する。
【0106】
第1の及び第2の実施形態は、以下の有利な特徴を共通の特徴として有する。
【0107】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、2%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0108】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0109】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0110】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0111】
上述した特性により、上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、小さな伸長時に比較的小さな係数を有する力-伸び率曲線を有する。このような繊維ワイヤ状補強体要素は、1又は複数の未加工繊維ワイヤ状要素の、すなわちフーピングプライの製造ステップ前の比較的小さな接線係数により、タイヤの製造方法におけるタイヤの容易な半径方向及び円周方向の変形を可能にする。
【0112】
上記又は各結合繊維ワイヤ状要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以上の破断時伸び率を有することが有利である。
【0113】
本発明の第1の実施形態
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下のあらゆる伸び率について、好ましくは7%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には8%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には9%以下のあらゆる伸び率について、3cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0114】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以下のあらゆる伸び率について、好ましくは8.5%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には9.5%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には10.5%以下のあらゆる伸び率について、5cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0115】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以下のあらゆる伸び率について、好ましくは11%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には12%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には13%以下のあらゆる伸び率について、10cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0116】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、12%以下のあらゆる伸び率について、好ましくは13%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には14%以下のあらゆる伸び率について、さらに優先的には15%以下のあらゆる伸び率について、15cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0117】
結合繊維ワイヤ状補強体要素は、比較的広い範囲の伸び率にわたって、タイヤの製造方法においてタイヤの容易な半径方向及び円周方向変形を可能にする比較的低い接線係数を有する。従って、結合繊維ワイヤ状補強体要素、従ってフーピングプライは、比較的広い範囲の伸び率について比較的小さな労力を発揮することにより、繊維ワイヤ状フープ補強体要素に張力が加わった時に、上記又は各繊維ワイヤ状フープ補強体要素がフーピング補強体の半径方向内部のプライに入り込むリスク、及び取得されるタイヤの幾何学的形状が予想されるタイヤの幾何学的形状に比べて変動するリスクを抑える。従って、ベーク中にタイヤの内部に加わる圧力を必要に応じて低減できることが有利である。
【0118】
上記又は各繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、14%以上の、好ましくは15%以上の、さらに優先的には16%以上の、さらに優先的には17%以上の破断時伸び率を有することが有利である。
【0119】
本発明の第2の実施形態
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以上のあらゆる伸び率について、好ましくは5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には4%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には3%以上のあらゆる伸び率について、3cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0120】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以上のあらゆる伸び率について、好ましくは6.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には5.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には4.5%以上のあらゆる伸び率について、5cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0121】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以上のあらゆる伸び率について、好ましくは8.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には7.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には6.5%以上のあらゆる伸び率について、10cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0122】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、12%以上のあらゆる伸び率について、好ましくは10.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には9%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には7.5%以上のあらゆる伸び率について、15cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0123】
このタイヤ製造方法では、各結合繊維ワイヤ状補強体要素の係数が比較的高いので、操作時にタイヤのクラウンが潰れるリスクが制限される。実際に、この比較的高い係数は、未加工状態でクラウン自体の重量及びトレッド部の重量に耐えて余りある剛性をタイヤのクラウン補強体にもたらし、従ってクラウン自体が半径方向に潰れるリスクを抑える。それにもかかわらず、この剛性は、タイヤの半径方向及び円周方向の変形性を可能にするほど十分に低い。
【0124】
最後に、このタイヤ製造方法では、各結合繊維ワイヤ状補強体要素の伸長が部分的に吸収されるので、タイヤから取り出した時点の各繊維ワイヤ状フープ補強体要素の比較的小さな伸長に対する係数は、フーピングプライの製造ステップ前の各結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素のより大きな伸長に対する係数に対応する。この結果、タイヤから取り出した時点の各繊維ワイヤ状フープ補強体要素の係数が比較的高く、これによってフーピングプライの良好な機械的強度特性を保証するほどの比較的高い破断力も得られる。
【0125】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、14%以下の、好ましくは13%以下の、さらに優先的には12%以下の、さらに優先的には11%以下の破断時伸び率を有することが有利である。
【0126】
第3及び第4の実施形態は、以下の有利な特徴を共通の特徴として有する。
【0127】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、2%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0128】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0129】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0130】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0131】
上記又は各結合繊維ワイヤ状要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以下の破断時伸び率を有することが有利である。
【0132】
本発明の第3の実施形態
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、0.5%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0133】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、0.75%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0134】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0135】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、4.5%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有することが有利である。
【0136】
比較的高い係数、とりわけ小さな伸長に対する高い係数は、繊維ワイヤ状要素によって生じる優れた力の取得を可能にする。このような実施形態は、半径方向及び円周方向の高膨張を必要としないタイヤの場合に特に適する。
【0137】
上記又は各結合繊維ワイヤ状要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、8%~10%の破断時伸び率を有することが有利である。
【0138】
本発明の第4の実施形態
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、0.5%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0139】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、0.75%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0140】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0141】
上記及び各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、4.5%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有することが有利である。
【0142】
小さな伸長からの非常に高い係数により、弱い応力の場合に非常に効果的な負荷の吸収を可能にする非常に高く非常に急速に増大する力が得られる。さらに、これらの係数は、非常に急速に増加することによって、繊維ワイヤ状要素によって生じる極めて高い力の取得を可能にする。このような実施形態は、半径方向及び円周方向の高膨張を必要としないタイヤの場合に特に適する。
【0143】
上記又は各結合繊維ワイヤ状補強体要素は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%~8%の破断時伸び率を有することが有利である。
【0144】
ほんの非限定的な例として図面を参照しながら示す以下の説明を読めば、本発明がより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1】本発明によるタイヤの円周方向に対して直角な断面図である。
図2】繊維ワイヤ状フープ補強体要素、ワイヤ状ワーキング補強体要素及びワイヤ状カーカス補強体要素の赤道円周面E上の投影を示す、図1のタイヤの切り欠き図である。
図3図1のタイヤのサイドウォール部に配置されたワイヤ状カーカス補強体要素をタイヤの正中面Mに投影した図である。
図4】本発明の1つの実施形態による、図1のタイヤの(直線状で静止していると想定される)結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素の軸に対して直角な断面の写真である。
図5】本発明の別の実施形態による、図1のタイヤの(直線状で静止していると想定される)結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素の軸に対して直角な断面の写真である。
図6】本発明及び最新技術によるタイヤの結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素の接線係数の変化を表すグラフである。
図7】フーピングプライの製造ステップ前の本発明によるタイヤの結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素の接線係数の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0146】
本発明によるタイヤの例
図には、それぞれタイヤの軸方向(X)、半径方向(Y)及び円周方向である通常の方向に対応する基準座標系X、Y、Zを示す。
【0147】
図1に、一般参照符号10で指定する本発明によるタイヤを示す。タイヤ10は、実質的に軸方向Xと概ね平行な軸を中心に回転する。ここでのタイヤ10は、自家用乗用車のものを意図している。
【0148】
タイヤ10はクラウン12を有し、クラウン12は、トレッド部20と、クラウン12内を円周方向Zに延びるクラウン補強体14とを含む。ここでは、クラウン12が、トレッド部20及びクラウン補強体14から成る。
【0149】
クラウン補強体14は、単一のワーキングプライ18を含む単一のワーキング補強体16と、単一のフーピングプライ19を含む単一のフーピング補強体17とを有する。ここでは、クラウン補強体が、ワーキング補強体16及びフーピング補強体19から成る。ここでは、ワーキング補強体16がワーキングプライ18から成り、フーピング補強体17がフーピングプライ19から成る。
【0150】
クラウン補強体14は、トレッド部20で覆われる。ここでは、フーピング補強体17、ここではフーピングプライ19が、ワーキング補強体16とトレッド部20との間に半径方向に挿入される。
【0151】
タイヤ10は、クラウン12を半径方向内向きに延長した2つのサイドウォール部22を有する。タイヤ10は、サイドウォール部22の半径方向内側の、この特定の例では詰ゴム(packing rubber)30の塊で覆われたビードワイヤ28である環状補強構造26をそれぞれが含む2つのビード部24と、半径方向カーカス補強体32とをさらに有する。クラウン補強体14は、カーカス補強体32とトレッド部20との半径方向中間に位置する。各サイドウォール部22は、各ビード部24をクラウン12につなぐ。
【0152】
カーカス補強体32は、単一のカーカスプライ34を含む。カーカス補強体32は、各ビード部24において、ビード部24からサイドウォール部22及びクラウン12内に延びる往路ストランド(go strand)38と、環状補強構造26の半径方向外側に半径方向外端42を有する復路ストランド(return strand)40とを形成するように、ビードワイヤの周囲のターンアップ部によってビード部24の各々に係止される。従って、カーカス補強体32は、ビード部24からサイドウォール部22を通ってクラウン12に延びる。この実施形態では、カーカス補強体32が、クラウン12を軸方向にも貫いて延びる。クラウン補強体14は、カーカス補強体32とトレッド部20との間に半径方向に挿入される。
【0153】
変形例として、ワーキング補強体16とカーカス補強体32との間にフーピング補強体17を半径方向に挿入することもできる。
【0154】
各ワーキングプライ18、フーピングプライ19及びカーカスプライ34は、対応するプライの1又は2以上の補強体要素が埋め込まれた弾性体マトリックスを含む。
【0155】
図2を参照すると、単一のカーカスプライ34は、ワイヤ状カーカス補強体要素44を含む。各ワイヤ状カーカス補強体要素44は、タイヤ10の正中面M内で、すなわちクラウン12内で、タイヤ10の円周方向Zとの間に55°以上の、好ましくは55°~80°の、さらに優先的には60°~70°の角度AC1を成す。
【0156】
スケールを前提として全てのワイヤ状カーカス補強体要素44を互いに平行に示す簡略図である図3を参照すると、各ワイヤ状カーカス補強体要素44は、タイヤ10の赤道円周面E内で、すなわち各サイドウォール部22内で、タイヤ10の円周方向Zとの間に85°以上の角度AC2を成す。
【0157】
この例では、慣例として、ここでは円周方向Zである基準直線から反時計回り方向に向かう角度を正の符号とし、ここでは円周方向Zである基準直線から時計回り方向に向かう角度を負の符号とする。この特定の例では、AC1=+67°であり、AC2=+90°である。
【0158】
図2を参照すると、単一のワーキングプライ18は、ワイヤ状ワーキング補強体要素46を含む。各ワイヤ状ワーキング補強体要素46は、正中面M内で、タイヤ10の円周方向Zとの間に10°以上の、好ましくは30°~50°の、さらに優先的には35°~45°の角度ATを成す。上述した配向を考慮すると、AT=-40°である。
【0159】
単一のフーピングプライ19は、少なくとも1つの繊維ワイヤ状フープ補強体要素48を含む。この特定の例では、フーピングプライ19が、タイヤ10のクラウン12の軸方向幅LFにわたって連続的に巻き付けられた繊維ワイヤ状フープ補強体要素48を含む。軸方向幅LFは、ワーキングプライ18の幅LT未満であることが有利である。繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、タイヤ10の円周方向Zとの間に、厳密には10°未満の、好ましくは7°以下の、さらに優先的には5°以下の角度AFを成す。この特定の例では、AF=+5°である。
【0160】
フーピングプライは、フーピングプライの破断力の15%に等しい力に対し、261daN/mmに等しい引張割線係数を有する。フーピングプライの破断力は、59daN/mmに等しい。
【0161】
なお、ワイヤ状カーカス44、ワーキング補強体要素46及びフーピング補強体要素48は、赤道円周面E上の投影において三角形メッシュを定めるようにクラウン12内に配置される。ここでは、角度AFと、角度ATの向き及び角度AC1の向きがタイヤ10の円周方向Zに対して逆であるという事実とによって、この三角形メッシュを得ることができる。
【0162】
従来、各ワイヤ状カーカス補強体要素44は、2つのマルチフィラメントストランドを含み、各マルチフィラメントストランドは、ここではPETであるポリエステルモノフィラメントの紡績糸から成り、これらの2つのマルチフィラメントストランドは、個別に一方向に240ターン.m-1まで強く撚り合わされた後に、再び240ターン.m-1で逆方向に撚り合わされる。これらの2つのマルチフィラメントストランドは、互いに螺旋状に巻き回される。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220texに等しい番手を有する。
【0163】
各ワイヤ状ワーキング補強体要素46は、それぞれが0.30mmに等しい直径を有する、互いに14mmのピッチで巻かれた2つの鋼製モノフィラメントの集合体である。
【0164】
図4に示す繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、この特定の例では複数のモノフィラメントを含む第1のマルチフィラメントストランドである、少なくとも1つのモノフィラメントを含む少なくとも1つの第1のストランド50を有する。第1のストランドは、1%の伸長時に、2500cN/tex以下の、好ましくは900cN/tex以下の、さらに優先的には500cN/tex以下の引張割線係数を有する。この特定の例では、第1のストランド50のモノフィラメントが、ポリエステル、脂肪族ポリアミド、セルロース及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは脂肪族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、ここではさらに優先的にナイロン6.6で製造される。
【0165】
繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、この特定の例では複数のモノフィラメントを含む第2のマルチフィラメントストランドである、少なくとも1つのモノフィラメントを含む少なくとも1つの第2のストランド52も有する。第2のストランド52は、1%の伸長時に、500cN/tex以上の、好ましくは1000cN/tex以上の、さらに優先的には2200cN/tex以上の引張割線係数を有する。この特定の例では、各第2のストランド52のモノフィラメントが、芳香族ポリアミド、芳香族コポリアミド、ポリケトン及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは芳香族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、ここではさらに優先的にパラアラミドで製造される。
【0166】
上述したように、繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、第1のストランド50から成るコア54を有する。換言すれば、コア54は、2つではなく1つの第1のストランド50を含む。
【0167】
図示の実施形態では、コア54の第1のマルチフィラメントストランド50が、ここではナイロン6.6で形成された複数のモノフィラメントの単一の紡績糸56から成る。コア54の第1のストランド50の番手は、10tex~100texに及び、ここでは40tex~60texに及ぶ。この特定の例では、コア54の第1のストランド50が、PHP Fibers社製のEnka Nylon 4444HRTという商品名で知られている47texに等しい番手を有する紡績糸から成る。
【0168】
変形例として、ポリエステル、脂肪族ポリアミド、セルロース及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは脂肪族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、さらに優先的にはナイロン6.6で製造されたモノフィラメントとは異なり、複数の紡績糸、すなわち少なくとも2つの紡績糸を含む集合体を有するコアの第1のストランドを想定することも可能と思われる。
【0169】
上述したように、繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、少なくとも2つの第2のストランド52を含む層58も有する。層58の各第2のストランド52は、コア54に螺旋状に巻き回される。層58は、3つ又は4つの第2のストランド52から成り、ここでは3つの第2のストランド52から成る。
【0170】
図示の実施形態では、層58の各第2のマルチフィラメントストランド52が、ここではパラアラミド製のモノフィラメントの単一の紡績糸60から成る。層58の各第2のストランド52の番手は、50tex~350texに及び、ここでは130tex~220texに及ぶ。この特定の例では、層58の各第2のストランド52が、Teijin社製のTwaron 1000という商品名で知られている167texに等しい番手を有するパラアラミドのモノフィラメントの紡績糸から成る。
【0171】
変形例として、芳香族ポリアミド、芳香族コポリアミド、ポリケトン及びこれらの材料のモノフィラメントの混合物の中から選択された材料で製造され、好ましくは芳香族ポリアミドの中から選択された材料で製造され、さらに優先的にはパラアラミドで製造されたモノフィラメントとは異なり、複数の紡績糸、すなわち少なくとも2つの紡績糸を含む集合体を有する層の各第2のストランドを想定することも可能と思われる。
【0172】
第2のストランド52の1%伸長時における引張剛性Scの総和は、第1のストランド50の1%伸長時における引張剛性Saよりも大きい。この特定の例では、パラアラミド製の各第2のストランドの1%伸長時における引張剛性が621daNに等しく、ナイロン6.6製の第1のストランドの1%伸長時における引張剛性が15daNに等しい。これにより、Sc=3×621>Sa=15となり、好ましくはSc/Sa≧10となり、さらに優先的にはSc/Sa≧50となり、さらに優先的にはSc/Sa≧100となる。コアの第1のストランドの番手と層の第2のストランドの番手の総和との比率は0.05~0.15に及び、ここでは0.09に等しい。
【0173】
図5に示す第2の実施形態では、繊維ワイヤ状フープ補強体要素49が、やはり上述した構造的特徴を有する。繊維ワイヤ状フープ補強体要素49は、後述するような製造方法を通じて繊維ワイヤ状フープ補強体要素48とは異なる。
【0174】
繊維ワイヤ状フープ補強体要素の製造方法
結合繊維ワイヤ状フープ補強体要素48は、以下のステップを含む製造方法を実行することによって製造される。
【0175】
この方法は、最初に、コア54の第1のストランド50と層58の第2のストランド52とを編成して未加工の繊維ワイヤ状フープ補強体要素を形成する、未加工の繊維ワイヤ状フープ補強体要素の編成ステップを含む。
【0176】
コア54の第1のストランド50を撚るステップにおいて、例えば方向Zなどの第1の撚り方向における1m当たりの巻数N1に従って第1のストランド50に撚りを加える。コア52の各第2のストランド52を撚る別のステップにおいて、第1の撚り方向Zにおける1m当たりの巻数N1’に従って各第2のストランド52に撚りを加える。
【0177】
次に、コア54の第1のストランド50と層58の第2のストランドとを撚り合わせることによる編成ステップにおいて、ここでは方向Sである第1の撚り方向とは逆の第2の撚り方向における1m当たりの巻数N2に従って、コア及び層のストランド50、52の組に撚りを加える。
【0178】
N1、N1’、N2は、コア54の第1のストランド50のモノフィラメントの撚れ残り及び層58の各第2のストランド52のモノフィラメントの撚れ残りが10ターン.m-1以下になるように、好ましくは実質的にゼロになるように選択される。この時、N1、N1’、N2の選択は、各ストランドの番手、層の第2のストランドの数に依存するだけでなく、製造方法のパラメータ、とりわけ第1の及び第2のストランドのそれぞれの張力T1、T2、及び/又は第1の及び第2のストランドのそれぞれの速度V1、V2にも依存する。従って、N1>N1’及びN2=N1’である。1.02≦N1/N1’≦1.15であり、好ましくは1.05≦N1/N1’≦1.10であることが有利である。ここでは、N1/N1’=1.08である。
【0179】
N1は、300T/m~380T/m、好ましくは320T/m~360T/mに及び、ここではN1=340T/mである。N1’は、275T/m~355T/m、好ましくは295T/m~335T/mに及び、ここではN1’=315T/mである。N2は、275T/m~355T/m、好ましくは295T/m~335T/mに及び、ここではN2=315T/mである。
【0180】
従って、ナイロン6.6の密度は1.14に等しく、パラアラミドの密度は1.44に等しく、従ってコア54の第1のストランドの撚り係数は60~80、好ましくは65~75に及び、ここでは69に等しい。層58の各第2のストランド52の撚り係数は、90~120、好ましくは100~115に及び、ここでは107に等しい。
【0181】
繊維ワイヤ状フープ補強体要素48の重み付き密度は1.41に等しく、繊維ワイヤ状フープ補強体要素48の重み付き番手は548texに等しく、従って繊維ワイヤ状フープ補強体要素48の撚り係数は170~220、好ましくは180~220に及び、ここでは196に等しい。
【0182】
方法は、第1の及び第2のストランド50、52の編成前に、第1の及び第2のストランド50、52編成する編成点に第1のストランド50及び第2のストランド52を搬送するフェッチングステップを含む。方法は、ストランドの張力を閉ループモードでサーボ制御するステップを含むことが有利であり、このステップ中、
- 各ストランド50、52が編成点に到着した時に各ストランド50、52において得られることが望ましい長手方向張力の状態を表す「編成張力設定点」と呼ばれる張力設定点を定め、
- 各ストランド50、52に沿って各ストランド50、52の搬送方向に関して編成点の上流に位置する第1の張力測定点において、各ストランド50、52内で発揮される「実効編成張力」と呼ばれる張力を測定し、
- 張力フィードバックループを使用して、編成張力設定点と各ストランド50、52の実効編成張力との差分に対応する「張力誤差」と呼ばれる誤差を決定し、
- 上記張力誤差に基づいて、編成点の上流で各ストランド50、52に作用する張力調節部材を、各ストランド50、52内で実効編成張力を編成張力設定点に向かって自動的に収束させるように制御する。
【0183】
この方法の実行を可能にする設備は、とりわけ1又は複数の張力サーボ制御ユニットを追加して各ストランド50、52の張力を閉ループモードでサーボ制御することを可能にすることによって精緻化されるリング紡績機(ring spinning frame)に対応することができる。
【0184】
実際に、この設備は、各ストランド50、52が最初に貯蔵されている入力リールから各ストランド50、52を編成点に繰り出して搬送できるように構成されたフェッチング装置を含む。関連するフェッチング装置は、編成点の上流に位置して、駆動装置に適用される駆動設定点に応じて各ストランド50、52に「前進速度」と呼ばれる速度を付与するように構成された電動式駆動装置を含むことが有利である。従って、電動式駆動装置は、各ストランド50、52を入力リールから編成点に向けて「搬送方向」と呼ばれる方向に駆動することを可能にする。慣例により、各ストランド50、52が入力リールから編成点へ、その後そこから先へ移動する搬送方向は、上流-下流移動方向に対応すると見なされる。電動式駆動装置は、例えばキャプスタン(capstan)又は変形例としてテークアップトリオ(take-up trio)を含むことができる。このようなテークアップトリオは、好ましくは自由な1つの遊星ローラと、好ましくは電動式の同期した2つの衛星ローラとを含む3つのローラを含み、これらのローラは、各ストランド50、52がローラ間の摩擦によってΩ(大文字のオメガ)形の経路に沿って駆動されるように配置される。この各ストランド50、52を移動させるように意図された構成では、遊星ローラが2つの衛星ローラに接触することができ、衛星ローラによる遊星ローラの駆動を強化するために、遊星ローラの円筒面を滑り止めゴムの層で被覆できることが好ましい。当然ながら、フェッチング装置は、それぞれが異なるストランドに割り当てられた複数の異なる電動式駆動装置を含むことができる。
【0185】
「リング紡績機」型の設備においてそれ自体も知られている1つの配置の可能性によれば、設備が、ここでは編成点のすぐ下流である編成点の下流に繊維ワイヤ状要素を導くように意図されたセラミック製などの誘導アイレット(guiding eyelet)と、誘導アイレットの下流であって出力リールの上流に位置する繊維ワイヤ状要素の通過点を形成するカーソルが自由に滑動するように取り付けられた、出力リールと同軸のリングとを含むことができる。
【0186】
従って、出力リールが電動スピンドルによってその軸上で好ましくは垂直方向に回転させられ、従って繊維ワイヤ状要素に張力を与える一方で、ストランドの供給がフェッチング装置によって保証される場合、カーソルは、出力リールの周囲における相対的回転運動を採用することによって、繊維ワイヤ状要素の巻き上がり、従って編成点におけるストランドの撚りを誘発すると同時に出力リール上における繊維ワイヤ状要素の漸進的な巻きを導く。リングは、出力リールに沿った並進往復運動によって繊維ワイヤ状要素の巻きを出力リールの全長にわたって分散させるようにも駆動される。さらに、フェッチング装置は、ストランドを空間内で分散させるように構成された分配器であって、分配器の下流、ここではすぐ下流、さらに優先的にはその真下に位置する編成点に向けてストランドを集束させる幾何学的形状を指示する分配器を含むことが好ましい。分配器は、それぞれが入力リール及び/又は電動式駆動装置からのストランドを導くように意図された複数の通過点を定める支持プレートの形をとることができる。
【0187】
この方法は、ストランドの張力サーボ制御ステップを含む。各ストランド50、52の張力は、考慮される点において各ストランド50、52内で発揮される長手方向引張労力に対応し、従ってこの労力の適用によって生じる引張応力に対応する。各ストランド50、52の張力サーボ制御は、閉ループモードで適用される。各ストランド50、52の張力サーボ制御ステップ中には、
- 各ストランド50、52が編成点に到着した時に各ストランド50、52において得られることが望ましい長手方向張力の状態を表す「編成張力設定点」T_setと呼ばれる張力設定点を定め、
- 各ストランド50、52に沿って各ストランド50、52の搬送方向に関して編成点の上流に位置する第1の張力測定点PT1において、各ストランド50、52内で発揮される「実施の編成張力」T_actualと呼ばれる張力を測定し、
- 張力フィードバックループを使用して、編成張力設定点と各ストランド50、52の実際の編成張力との差分に対応する「張力誤差」ER_Tと呼ばれる誤差(すなわち、ER_T=T_set-T_actual)を決定し、
- 張力誤差ER_Tに基づいて、編成点の上流で各ストランド50、52に作用する張力調節部材を、各ストランド50、52内で実際の編成張力T_actualを編成張力設定点T_setに向かって自動的に収束させるように制御する。
【0188】
従って、設備は、関連するストランドの張力を「張力サーボ制御モード」と呼ばれる動作モードに従って閉ループモードでサーボ制御するように構成された張力サーボ制御ユニットを含み、張力サーボ制御ユニットは、この目的のために、
- ストランドが編成点に到着した時に各ストランド50、52において得られることが望ましい長手方向張力の状態を表す「編成張力設定点」T_setと呼ばれる設定点の設定を可能にする張力設定点設定部材と、
- 各ストランド50、52に沿って各ストランド50、52の搬送方向に関して編成点の上流に位置する第1の張力測定点PT1において、各ストランド50、52内で発揮される「実際の編成張力」T_actualと呼ばれる張力を測定する張力モニタリング部材と、
- 編成張力設定点T_setと各ストランド50、52の実際の編成張力T_actualとの差分に対応する「張力誤差」ER_Tと呼ばれる誤差を評価する張力フィードバック部材と、
- 張力フィードバック部材に依存して配置され、各ストランド50、52内で実際の編成張力T_actualを編成張力設定点T_setに向かって自動的に収束させるように編成点の上流で各ストランド50、52に作用する張力調節部材と、
を含む。
【0189】
言うまでもなく、各ストランド50、52のための異なる編成張力設定点を設定し、他方のストランドとは無関係な各ストランド50、52の個別の調節を確実にすることもできる。
【0190】
さらに、フェッチングステップ中、各ストランドは、既に上述したように、編成点の上流に位置して、自機に適用された駆動設定点に応答して各ストランド50、52に「前進速度」V_fwdと呼ばれる速度を付与するように構成されたキャプスタンなどの電動式駆動装置によって編成点に向かって移動されることが好ましい。実際の編成張力T_actualが測定される第1の張力測定点PT1は、電動式駆動装置から上流に延びて編成点から下流に延びる「アプローチ部分」と呼ばれる各ストランド50、52の部分に位置するように選択されることが好ましい。従って、実際の編成張力T_actualの測定は、(関連するストランドが取る経路に沿って検討される)電動式駆動装置の位置と、(関連するストランドが取る経路に沿って検討される)編成点の位置との間に存在する、従ってとりわけ編成点に近い測定点PT1において行われることが有利である。従って、さらに具体的に言えば、このように選択された張力測定点PT1は、編成点と、ここでは電動式駆動装置である最後のモータ要素との間の、関連するストランドの経路の上流-下流方向において編成点に先行する位置に存在することができる。従って、実際の編成張力T_actualは、関連するストランドが編成点に到着する前にストランドに能動的に作用してその張力を大幅に変更する可能性が高い最後の電動装置(ここでは電動式駆動装置)の下流で測定されることが好ましい。この結果、外力による擾乱がほとんど存在しないアプローチ部分においてできるだけ編成点に近接して行われる実際の編成張力T_actualの測定の信頼度が特に高くなり、ストランドが編成点に到達した瞬間に関連するストランド内で実際に発揮される張力を良好に表す。
【0191】
優先的な特徴によれば、ストランドの張力サーボ制御ステップ中、電動式駆動装置、具体的には関連するストランドに関連する電動式駆動装置は、電動式駆動装置に適用される駆動設定点を張力誤差ER_Tの関数として調整することによって張力調節部材として使用されることが好ましい。電動式駆動装置の使用は、測定された張力誤差ER_Tの関数として、電動装置を介して関連するストランドに十分に低下した前進速度V_fwdを適用することによって、関連するストランドを編成点の上流において減速させて関連するストランドが食い止められるようにして関連する張力を高めるか、或いはこれとは逆に、関連するストランドを編成点の上流で加速させ、すなわち関連するストランドの前進速度V_fwdを高めることにより、関連するストランドに「緩みを与える」ことによって関連するストランドの張力を低下させることを可能にすることが有利である。
【0192】
従って、存在するストランドと同数の互いに無関係な張力調節を各ストランド50、52に同時にかつ容易に適用できることが有利である。
【0193】
別の優先的な特徴によれば、フェッチングステップ中に、例えば第1のストランド50などの関連するストランドが、とりわけ上述したような編成点の上流に位置するキャプスタンなどの電動式駆動装置によって編成点に向かって移動される場合、方法は、例えばここでは第1のストランド50である関連するストランドが、電動式駆動装置の上流に位置する、関連するストランドの電動式駆動装置とは異なる繰り出し装置によって入力リールから繰り出される繰り出しステップを含むこともできる。繰り出し装置は、関連する入力リールを受け取って「入力リール速度」ω7と呼ばれる選択速度で回転させるように意図された電動リールホルダを含む。この場合、例えばここでは第1のストランド50である関連するストランドに沿って電動リールホルダと電動式駆動装置との間に位置する第2の張力測定点PT2において、関連するストランド内で発揮される「実際の繰り出し張力」T_unwind_actualを測定し、この「実際の繰り出し張力」T_unwind_actualを所定の繰り出し張力設定点T_unwind_setに向かって収束させるように入力リール速度ω7を適宜に調整できることが有利である。実際に、入力リール速度ω7、従ってストランドが放出される繰り出し速度を一方では上流で、他方では下流で制御することにより、上流の繰り出し装置と下流の電動式駆動装置との間に行き渡るストランドの繰り出し張力を有利に選択することができる。従って、電動式駆動装置の入力地点に現れる関連するストランドは、第1の予張力レベルを設定する良好に制御された実際の繰り出し張力T_unwind_actualを取得し、その後に、望ましい実際の編成張力T_actualをストランドに付与するために、この第1の予張力レベルから、電動式駆動装置の作用を通じて、電動式駆動装置の下流であって編成点の上流のアプローチ部分におけるストランドの張力状態を変更できることが有利である。この点、二重動力化(繰り出し装置の動力化及び電動式駆動装置の動力化)を通じて通常の良好に制御された値の実際の繰り出し張力T_unwind_actualの形で引張元応力(tension prestres)を生成して維持すると、関連するストランドの実際の編成張力T_actualをより正確かつ容易に調整できることが観察されている。特に、実際の繰り出し張力T_unwind_actualに等しい第1の張力レベルの存在により、この第1のレベルから電動式駆動装置によって及ぼされる加算的作用(ストランドを制動することによる張力の増加)を通じて、或いはこれとは逆に減算的作用(ストランドを加速させることによる張力の低下)を通じて、結果として得られる実際の編成張力T_actualに正確に到達して第2の張力レベルを形成し、この第2の張力レベルを、下限が第1の張力レベル、すなわち実際の繰り出し張力T_unwind_actualを(絶対値で)下回って上限が第1の張力レベルを上回る非常に幅広い実際の編成張力範囲から自由に選択することが可能になる。さらに具体的には、第1の張力レベルの存在により、ストランドに張力ジャーク(tension jerks)を形成するリスク、及び設備を通るストランドの経路を定めるガイド(プーリー、ローラなど)からストランドが離れてしまう潜在的付帯リスクを有するゼロ値を実際の編成張力T_actualに体験させるリスクを伴わずに、第2の張力レベルにおいて編成張力(設定点及び実際の編成張力の両方)T_set、T_actualを、ほぼ(数グラムの質量の重量に相当する)数センチニュートン又は(数十グラムの質量の重量に相当する)数十センチニュートンなどの非常に低いレベルに低下させることが可能になる。特に、編成点の上流において全く同一のストランド上に互いに離れて位置する2つの張力測定点PT1、PT2を用いた2つの張力レベルを有するこのような方法は、とりわけ第1の電圧レベルからの「減算」によって到達されるT_actual=5cN(5センチニュートン)とT_actual=100cN(100センチニュートン)との間の編成張力範囲内の実効的な調節を得ることを可能にする。一例として、第1の張力レベルでは、50cN(50センチニュートン)と600cNとの間に存在する、100cN、200cN又は400cNなどに等しい繰り出し張力T_unwind_setを選択(従って、実際の繰り出し張力T_unwind_actualを取得)し、第2の張力レベルでは、15cN(15センチニュートン、約15グラムの質量に相当)~100N(100ニュートン、約10キログラムの質量に相当)の、さらには5cN(5センチニュートン、約5グラムの質量に相当)~200N(200ニュートン、約20キログラムの質量に相当)の非常に幅広い可能な範囲から自由に選択された設定点T_setに完全に従う正確かつ安定した編成張力T_actualを取得することが可能になる。
【0194】
優先的な特徴によれば、設備は、各ストランドの前進速度V_fwdを「速度サーボ制御」と呼ばれる動作モードに従って閉ループモードでサーボ制御するように構成された前進速度サーボ制御ユニットを含み、速度サーボ制御ユニットは、この目的のために、
- 編成点の上流で各ストランドに付与されることが望ましい前進速度値に対応する「前進速度設定点」V_fwd_setと呼ばれる設定点の設定を可能にする速度設定点設定部材と、
- 各ストランドに沿って編成点の上流に位置する前進速度測定点PV1において、測定点PV1における関連する各ストランドの実際の前進速度を表す「実際の前進速度」V_fwd_actualと呼ばれる速度値を測定する速度モニタリング部材と、
- 前進速度設定点と各ストランドの実際の前進速度との差分に対応する「速度誤差」ER_Vと呼ばれる誤差:ER_V=V_fwd_set-Vfwd_actualを評価する速度フィードバック部材と、
- 速度フィードバック部材に依存して配置され、各ストランドの実際の前進速度V_fwd_actualを自動的に前進速度設定点V_fwd_setに向かって収束させるように編成点の上流で各ストランドに作用する速度調節部材と、
を含む。
【0195】
この場合、設備は、張力サーボ制御モード又は速度サーボ制御モードをストランド毎に選択的に作動させることを可能にする選択器を含むことが好ましい。換言すれば、張力に基づく各ストランドのサーボ制御モードと、前進速度に基づく各ストランドのサーボ制御モードとの間の選択オプションがストランド毎にユーザに提示される。従って、この方法は、対応する選択ステップを提供することができる。この特定の例では、各ストランド又は複数のストランドが張力調節される一方で、別のストランド又は他の複数のストランドが速度調節される複数の編成の組み合わせを生じることが可能である。
【0196】
また、速度サーボ制御、とりわけ関連するストランドの実際の前進速度F_fwd_actualの測定は、関連するサーボ制御された前進速度が、ストランドが編成点に到着した時点の前進速度を表すように、例えば編成点に先行する最後の動力化要素と編成点との間に存在するアプローチ部分などの編成点の近傍で行われることが好ましい。速度測定点PV1は、電動式駆動装置に存在できることが好ましい。
【0197】
所与の番手及び撚り数では、繊維ワイヤ状要素の製造方法の編成ステップ中にコアに適用される張力T1及び速度V1を変化させることによって、繊維ワイヤ状要素の力-伸び率曲線を、従ってとりわけその接線係数を変化させることができる。この特定の例では、張力T1をT2に対して増加させ、或いは速度V1を速度V2に対して低下させることにより、全ての伸長について接線係数が減少し、破断時伸び率が増加し、繊維ワイヤ状要素の破断力が低下する。これとは逆に、張力T1をT2に対して低下させ、或いは速度V1を速度V2に対して増加させることにより、全ての伸長について接線係数が増加し、破断時伸び率が低下し、繊維ワイヤ状要素の破断力が増加する。接線係数を変化させることに加えて、張力T1をT2に対して増加させ、或いは速度V1を速度V2に対して低下させると、後述する耐久試験において実証されるように繊維ワイヤ状要素の耐久性を改善することができる。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状補強体要素48の場合、コア54の第1のストランド50に適用される速度V1が9.3m/minに等しい。層58の各第2のストランド52に適用される速度V2は、10.55m/minに等しい。結合繊維ワイヤ状補強体要素49では、コア54の第1のストランド50に適用される速度V1が9.3m/minに等しい。層58の各第2のストランド52に適用される速度V2は、10.37m/minに等しい。編成ステップにおいて各未加工の繊維ワイヤ状要素48、49に適用される張力は、1200cNに等しい。
【0198】
上述した編成ステップ後に、未加工繊維ワイヤ状補強体要素が取得される。次に、この製造方法は、未加工繊維ワイヤ状補強体要素を第1の熱架橋性粘着剤の中間層で被覆するステップを含む。この特定の例では、主要接着機能を有し、例えばポリグリセロール・ポリグリシジル・エーテル系の水溶性エポキシ樹脂を含む、第1の粘着剤を使用する。次に、方法は、第1の粘着剤を架橋させるように、中間層で被覆された未加工繊維ワイヤ状補強体要素の第1の熱処理ステップを含む。この結果、仮結合繊維ワイヤ状補強体要素が取得される。
【0199】
次に、方法は、仮結合繊維ワイヤ状補強体要素を第2の熱架橋性粘着剤の外層で被覆する第2のステップを含む。この特定の例では、RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス・エラストマ)タイプの従来の水性粘着剤を使用する。次に、方法は、第2の粘着剤を架橋させるように、外層で被覆された仮接合繊維ワイヤ状補強体要素の第2の熱処理ステップを含む。この結果、フーピングプライの製造ステップ前に結合繊維ワイヤ状補強体要素が取得される。
【0200】
結合繊維ワイヤ状補強体要素48については、未加工補強体要素を中間層で被覆して熱処理する第1のステップ中に、中間層で被覆された未加工補強体要素に、ここでは0.2daNに等しい張力TT1を適用する。仮結合補強体要素を外層で被覆して熱処理する第2のステップ中には、外層で被覆された仮結合補強体要素に、ここでは0.2daNに等しい張力TT2を適用する。
【0201】
結合繊維ワイヤ状補強体要素49については、結合繊維ワイヤ状補強体要素48とは異なり、未加工補強体要素を中間層で被覆して熱処理する第1のステップ中に、中間層で被覆された未加工補強体要素に、ここでは3daNに等しい張力TT1を適用する。仮結合補強体要素を外層で被覆して熱処理する第2のステップ中には、外層で被覆された仮結合補強体要素に、ここでは1daNに等しい張力TT2を適用する。
【0202】
タイヤの製造方法
タイヤ10は、後述する方法に従って製造される。
【0203】
最初に、ワーキングプライ18及びカーカスプライ34の繊維ワイヤ状補強体要素を互いに平行に配置し、架橋した時点で弾性体マトリックスを形成するように意図された、少なくとも1つのエラストマを含む非網状化合物中に、例えばカレンダ成形(calendering)によってこれらを埋め込むことによってワーキングプライ18及びカーカスプライ34を製造する。プライの繊維ワイヤ状補強体要素が互いに及びプライの主方向と平行である、いわゆるストレートプライが取得される。次に、必要であれば、各ストレートプライの一部を切断角に従って切断し、プライの繊維ワイヤ状補強体要素が互いに平行であってプライの主方向との間に切断角に等しい角度を成すいわゆるアングルプライを取得するように、これらの部分を互いに当接させる。
【0204】
次に、欧州特許第1623819号又は仏国特許第1413102号に記載されている編成方法を実行する。
【0205】
この編成方法中、ワーキング補強体16の半径方向外側に、ここではフーピングプライ19であるフーピング補強体17を配置する。この特定の例では、第1の変形例において、LFよりも著しく小さな幅Bを有する小帯(bandlet)を製造し、軸方向幅LFを取得するように、結合繊維ワイヤ状補強体要素48を非網状化合物に埋め込んで小帯を螺旋状に複数回巻き付ける。第2の変形例では、カーカスプライ及びワーキングプライと同様の方法で幅LFのフーピングプライ19を製造し、フーピングプライ19をワーキング補強体16上に1回巻き付ける。第3の変形例では、ワーキングプライ18の半径方向外側に結合繊維ワイヤ状補強体要素48を巻き付けた後に、タイヤのベーク中に繊維ワイヤ状補強体要素48が埋め込まれる化合物の層上にこれを適用する。これらの3つの変形例では、結合繊維ワイヤ状補強体要素48を化合物に埋め込んで、タイヤ製造方法の最後に、繊維ワイヤ状フープ補強体要素48を含むフーピングプライ19を形成する。
【0206】
トレッド部20を配置するステップの後に取得されるタイヤは、弾性体マトリックスの化合物が未だ架橋していない未加工状態のタイヤである。この状態は、タイヤの未加工ブランクと呼ばれる。
【0207】
最後に、化合物が架橋状態を有するタイヤを取得するために、例えばベーキング又は加硫によって化合物を架橋させる。このベークステップ中には、弾性体マトリックスが未加工状態のタイヤをベーク型の表面に押し付けるように、例えば膨張膜の加圧によって半径方向、円周方向及び軸方向に膨張させる。ここでは、この半径方向及び円周方向の膨張を、第1及び第2の実施形態の結合繊維ワイヤ状補強体要素を使用して、より限定的には第3及び第4の実施形態の結合繊維ワイヤ状補強体要素を実装することによって実行することが有利である。
【0208】
比較試験
耐久試験
国際公開2016/166056号の従来のT2ハイブリッド繊維ワイヤ状要素、並びに全て本発明に準拠する、上述した繊維ワイヤ状要素48と同様の結合繊維ワイヤ状要素49及びI0~I7の圧縮疲労に対する耐性、すなわち圧縮耐久性を試験する。
【0209】
結合繊維ワイヤ状要素I0~I7は、結合繊維ワイヤ状要素48及び49と構造的に同一であるが、層58の各第2のストランド54の速度V2が各結合繊維ワイヤ状要素I0~I7についてそれぞれ10.34m.min-1、10.34m.min-1、10.36m.min-1、10.42m.min-1、10.49m.min-1、10.55m.min-1、10.62m.min-1、10.69m.min-1に等しく、コア54の第1のストランド50の速度V1が9.3m.min-1に等しい異なる製造方法を実行することによって得られたものである。全ての繊維ワイヤ状補強体要素I0~I7の張力TT1は、0.15daNに等しい。繊維ワイヤ状補強体要素I0の張力TT2は、1daNに等しい。全ての繊維ワイヤ状補強体要素I1~I7の張力TT2は、0.15daNに等しい。編成ステップ中に各未加工の繊維ワイヤ状要素I0~I7に適用される張力は、1200cNに等しい。
【0210】
これらの各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0~I7の接線係数をフーピングプライ19の製造ステップ前に測定し(点線の曲線)、これらの結合繊維ワイヤ状要素49及びI0~I7の接線係数の変化を図7に示す。
【0211】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有する。さらに、各結合繊維ワイヤ状要素I1~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、2%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有する。さらに、各結合繊維ワイヤ状要素I1~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有する。最後に、各結合繊維ワイヤ状要素I1~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0212】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I4は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I3は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I2は、フーピングプライの製造ステップ前に、4%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I1は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0213】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I4は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I3は、フーピングプライの製造ステップ前に、6.5%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1及びI2は、フーピングプライの製造ステップ前に、5.5%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I1は、フーピングプライの製造ステップ前に、4.5%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0214】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I4は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I3は、フーピングプライの製造ステップ前に、8.5%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1及びI2は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には6.5%以上のあらゆる伸び率について、10cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0215】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I4は、フーピングプライの製造ステップ前に、12%以上のあらゆる伸び率について、さらに優先的には10.5%以上のあらゆる伸び率について、15cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I3は、フーピングプライの製造ステップ前に、9%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1及びI2は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0216】
各結合繊維ワイヤ状要素I1~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以上の破断時伸び率を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1~I3は、フーピングプライの製造ステップ前に、14%以下の破断時伸び率を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I1及びI2は、フーピングプライの製造ステップ前に、13%以下の破断時伸び率を有する。
【0217】
各結合繊維ワイヤ状要素I5~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下のあらゆる伸び率について、好ましくは7%以下のあらゆる伸び率について、3cN/tex/%以下の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I6及びI7は、フーピングプライの製造ステップ前に、8%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、9%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0218】
各結合繊維ワイヤ状要素I5~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、7.5%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I6及びI7は、フーピングプライの製造ステップ前に、8.5%以下の、さらには9.5%以下のあらゆる伸び率について、5cN/tex/%以下の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、10.5%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0219】
各結合繊維ワイヤ状要素I5~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I6及びI7は、フーピングプライの製造ステップ前に、11%以下の、さらには12%以下のあらゆる伸び率について、10cN/tex/%以下の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、13%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0220】
各結合繊維ワイヤ状要素I5~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、12%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I6及びI7は、フーピングプライの製造ステップ前に、13%以下の、さらには14%以下のあらゆる伸び率について、15cN/tex/%以下の接線係数を有する。結合繊維ワイヤ状要素I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、15%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0221】
各結合繊維ワイヤ状要素I5~I7は、フーピングプライの製造ステップ前に、14%以上の、好ましくは15%以上の破断時伸び率を有する。各結合繊維ワイヤ状要素I6及びI7は、フーピングプライの製造ステップ前に、16%以上の、さらに優先的には17%以上の破断時伸び率を有する。
【0222】
各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0は、フーピングプライの製造ステップ前に、2%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素I0が、フーピングプライの製造ステップ前に、0.5%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有し、結合繊維ワイヤ状要素49が、フーピングプライの製造ステップ前に、0.5%以上のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0223】
各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素I0が、フーピングプライの製造ステップ前に、0.75%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有し、結合繊維ワイヤ状要素49gが、フーピングプライの製造ステップ前に、0.75%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0224】
各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素I0が、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有し、結合繊維ワイヤ状要素49が、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0225】
各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素I0が、フーピングプライの製造ステップ前に、4.5%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有し、結合繊維ワイヤ状要素49が、フーピングプライの製造ステップ前に、4.5%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する。
【0226】
各結合繊維ワイヤ状要素49及びI0は、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以下の破断時伸び率を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素I0が、フーピングプライの製造ステップ前に、8%~10%の破断時伸び率を有し、結合繊維ワイヤ状要素49が、フーピングプライの製造ステップ前に、6%~8%の破断時伸び率を有する。
【0227】
タイヤを補強するように意図された繊維ワイヤ状要素では、これらの繊維ワイヤ状要素に、様々な既知の実験室試験、とりわけ「ベルト」試験という名称で知られており「靴磨き試験」と呼ばれることもある、予め互いに接着させた繊維ワイヤ状要素をエラストマ物品に組み込んだ試験である疲労試験を行うことによって疲労耐性を分析することができる。「ベルト」試験の原則では、ベルトが2層のワイヤ状要素を含み、第1の層は、性能評価が望ましい繊維ワイヤ状要素を含んで、それぞれが0.4mmの2つの化合物膜(compound skims)に1.25mmのピッチで埋め込まれ、第2の固定化層は、第1の層の伸長を避けることを可能にし、この第2の層は、比較的硬質の繊維ワイヤ状要素を含み、それぞれが167texで315ターン/メートルの撚りの2つのアラミドストランドを含み、それぞれが0.3mmの2つの化合物膜に埋め込まれる。各繊維ワイヤ状要素の軸は、ベルトの長手方向に向けられる。
【0228】
次に、連結ロッド及びハンドルシステムを使用して、ここでは15mm及び20mmである所与の直径のローラの周囲でベルトを周期的に駆動することにより、性能評価が望ましい繊維ワイヤ状要素を含む第1の層がローラに接触し、ベルトの各基本部分が15daNの張力に曝されて、無限大の曲率半径から所与の曲率半径に及ぶ曲率変動のサイクルを7Hzの周波数で190,000サイクルにわたって受けるようにするという応力にこのベルトを曝す。このベルトの曲率変動は、選択されたローラ直径に従って、ローラに最も近い内層の繊維ワイヤ状要素を所与の幾何学的圧縮に曝す。これらの応力の最後に、繊維ワイヤ状要素を剥皮によって内層から取り出し、疲労した繊維ワイヤ状要素の残留破断力Frrを測定する。予め、新品の応力を受けていないベルトから取り出した繊維ワイヤ状要素の力に相当する初期破断力Friを測定しておく。その後、式D=100×(1-Frr/Fri)を使用して繊維ワイヤ状要素の劣化Dを計算する。従って、Dが100に近ければ近いほど、繊維ワイヤ状要素の圧縮耐久性は低い。これとは逆に、Dが0に近ければ近いほど、繊維ワイヤ状要素の圧縮耐久性は高い。
【0229】
以下の表1に結果をまとめる。
【表1】
【0230】
この表1を詳細に見ると、ローラの直径がどのようなものであれ、本発明による繊維ワイヤ状要素49及びI0~I7の劣化は、従来のハイブリッド繊維ワイヤ状要素T2よりも非常に小さいことが分かる。さらに、ローラの曲率半径が大きいことに起因して高い応力を加える15mmに等しい直径のローラを使用した試験でも、繊維ワイヤ状要素T2と比較した繊維ワイヤ状要素49及びI0~I7の耐久性の改善が示されている。
【0231】
最後に、編成ステップ後のステップの同一パラメータについては、曲線が低い接線係数を有して大きな伸び率にわたった時に、耐久性が一層強化されている。本発明に関与する発明者らは、他の点では全て等しい結合繊維ワイヤ状要素の製造方法のパラメータでは、繊維ワイヤ状要素のコアがその製造方法中に強く引っ張られれば引っ張られるほど(すなわち、T2に比べてT1が大きければ大きいほど、或いはV2に比べてV1が小さければ小さいほど)層のストランドがコアに対して大きく分離するという仮説を立てる。従って、この特定の例ではアラミドストランドである層のストランドは、繊維ワイヤ状要素の圧縮中に著しい幾何学的余裕を有する。従って、これらの層ストランドは、例えばコアの周囲の特定の位置を取ることによってさらに受けやすくなる圧縮にそれほど左右されない。
【0232】
力-伸び率曲線
参照符号T1によって示す米国特許第6799618号のハイブリッド繊維ワイヤ状要素と、国際公開第2016/166056号の従来のハイブリッド繊維ワイヤ状要素T2と、上述した繊維ワイヤ状要素48とを比較した。これらの各繊維ワイヤ状要素の接線係数を、フーピングプライの製造ステップ前(点線曲線)、及びタイヤから取り出した時点(実線曲線)で測定した。図6に、これらの繊維ワイヤ状要素の接線係数の変化を示す。
【0233】
点線曲線を参照すると、結合繊維ワイヤ状要素48は、繊維ワイヤ状要素T2とは異なり、フーピングプライの製造ステップ前に、2%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素48が、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下の、さらには7%以下のあらゆる伸び率について3cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0234】
また、結合繊維ワイヤ状要素48は、フーピングプライの製造ステップ前に、3%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素48が、フーピングプライの製造ステップ前に、8.5%以下のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0235】
さらに、結合繊維ワイヤ状要素48は、フーピングプライの製造ステップ前に、5%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素48が、フーピングプライの製造ステップ前に、10%以下の、さらには11%以下のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0236】
さらに、結合繊維ワイヤ状要素48は、フーピングプライの製造ステップ前に、6%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有する。この特定の例では、結合繊維ワイヤ状要素48が、フーピングプライの製造ステップ前に、12%以下のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以下の接線係数を有する。
【0237】
一方で、繊維ワイヤ状要素T2は、フーピングプライの製造ステップ前に、0.1%以下の伸び率についてしか5cN/tex/%以下の接線係数を有していない。0.1%の伸び率を超えると、繊維ワイヤ状要素T2の接線係数は、フーピングプライの製造ステップ前に5cN/tex/%よりも大きくなる。
【0238】
さらに、繊維ワイヤ状要素T2の接線係数は、0.2%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%を上回る場合には、繊維ワイヤ状要素T2の破断時伸び率の値である6%以上のあらゆる伸び率については無意味である。結合繊維ワイヤ状繊維48は、フーピングプライの製造ステップ前の破断時伸び率がはるかに高く、ここでは10%を上回り、この特定の例では14%を上回り、さらには15%を上回り、さらには16%を上回り、ここでは16.5%に等しい。
【0239】
実線曲線を参照すると、繊維ワイヤ状要素48は、タイヤから取り出した時点で、4%以上の、さらには3.5%以上の、さらには3%以上の、説明する例では2%以上のあらゆる伸び率について5cN/tex/%以上の接線係数を有する。繊維ワイヤ状要素T1は、タイヤから取り出した時点で、4.5%を上回る伸び率についてしか5cN/tex/%を上回る接線係数を有していない。
【0240】
また、繊維ワイヤ状要素48は、タイヤから取り出した時点で、6%以上の、さらには5%以上の、説明する例では4%以上のあらゆる伸び率について10cN/tex/%以上の接線係数を有する。対照的に、繊維ワイヤ状要素T1は、タイヤから取り出した時点で、6.3%を上回る伸び率についてしか10cN/tex/%を上回る接線係数を有していない。
【0241】
繊維ワイヤ状要素48は、タイヤから取り出した時点で、8%以上の、さらには7%以上の、説明する例では6%以上のあらゆる伸び率について15cN/tex/%以上の接線係数を有する。対照的に、繊維ワイヤ状要素T1は、タイヤから取り出した時点で、8.6%を上回る伸び率についてしか15cN/tex/%を上回る接線係数を有していない。
【0242】
繊維ワイヤ状要素48は、タイヤから取り出した時点で、8%以上のあらゆる伸び率について20cN/tex/%以上の接線係数を有する。繊維ワイヤ状要素T1は、タイヤから取り出した時点で、決して20cN/tex/%の値に到達していない。
【0243】
最後に、繊維ワイヤ状要素48は、タイヤから取り出した時点で、6%以上の、好ましくは7%以上の、さらに優先的には8%以上の破断時伸び率を有する。繊維ワイヤ状要素T2の破断時伸び率ははるかに低く、ここでは6%に等しい。
【0244】
これらの曲線から、繊維ワイヤ状要素48は、一方ではタイヤから取り出した時点で、特にT1の機械的強度よりも大幅に高く、比較的T2の機械的強度に近い高い機械的強度を有し、T2の破断時伸び率を上回る伸び率についてはさらに大きな接線係数を有することが分かる。他方では、結合繊維ワイヤ状要素48は、フーピングプライの製造ステップ前に、ここでは12%未満の伸び率まではT2の接線係数よりも大幅に低くT1の接線係数よりも低い、比較的低い接線係数を有することによって、タイヤの製造方法中にタイヤの容易な半径方向及び円周方向変形を可能にすることが分かる。
【0245】
言うまでもなく、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0246】
10 タイヤ
12 クラウン
14 クラウン補強体
16 ワーキング補強体
17 フーピング補強体
18 ワーキングプライ
19 フーピングプライ
20 トレッド部
22 サイドウォール部
24 ビード部
26 環状補強構造
28 ビードワイヤ
30 詰ゴム
32 カーカス補強体
34 カーカスプライ
40 復路ストランド
42 環状補強構造の半径方向外端
E 赤道円周面
H トレッド部の半径方向最外点と半径方向最内点との間の距離
LF クラウンの軸方向幅
LT ワーキングプライの幅
M 正中面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7