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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】布帛用難燃剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/14 20060101AFI20231012BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231012BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231012BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20231012BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231012BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231012BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20231012BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20231012BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20231012BHJP
   D06M 11/47 20060101ALI20231012BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20231012BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20231012BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20231012BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20231012BHJP
   D06M 15/244 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C09K21/14
C09D201/00
C09D5/02
C09D5/18
C09D7/65
C09D7/61
C09D127/06
C09D133/00
D06M15/227
D06M11/47
C08L25/18
C08K3/016
C08L27/06
C08L33/00
D06M15/244
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020555446
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019021807
(87)【国際公開番号】W WO2019199403
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】62/654,777
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイサー,ラジーブ・エス
(72)【発明者】
【氏名】リード,ジョン・シャノン
(72)【発明者】
【氏名】デ シュライバー,ダニエル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】チャヤ,ジョン・ランドール
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/014648(WO,A1)
【文献】米国特許第07632893(US,B2)
【文献】米国特許第07638583(US,B2)
【文献】国際公開第2017/176740(WO,A1)
【文献】米国特許第08420876(US,B2)
【文献】米国特許第08993684(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M
C09K 21/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性難燃剤分散液であって、
水、
平均粒度が約20μm以下の臭素化難燃剤であるとともに、芳香族結合した臭素を含み、a)重量平均分子量が約650~約950,000であり、臭素含量が約60重量%以上である臭素化スチレン系ポリマー、及び/またはb)約70重量%以上の臭素を含む臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーから選択される前記臭素化難燃剤、
少なくとも1つの分散剤、
少なくとも1つの湿潤剤、ならびに
少なくとも1つの増粘剤を含む前記水性難燃剤分散液であり、
前記分散液の総重量に対して、約25重量%以上の臭素化難燃剤を含む、前記難燃剤分散液。
【請求項2】
前記臭素化難燃剤が、
A)臭素化スチレン系ポリマーであり、これが、
i)重量平均分子量が約100,000~約950,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約71重量%の臭素化スチレン系ポリマー、
ii)重量平均分子量が約8,000~約50,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約72重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマー、及び/または
iii)重量平均分子量が約650~約4000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約77重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマーである、及び/または
B)重量平均分子量が約1000~約21,000の、及び/または臭素含量が約70重量%~約79重量%の臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーである、請求項1に記載の難燃剤分散液。
【請求項3】
前記臭素化難燃剤が、平均粒度約10μm以下を有するものである、及び/または前記臭素化難燃剤が、ジェットミルによる粒度縮小に供されたものである、及び/または前記難燃剤分散液が、前記分散液の総重量に対して、約50重量%以上の臭素化難燃剤を含む、請求項1または2に記載の難燃剤分散液。
【請求項4】
コーティング組成物であって、
水、
平均粒度が約20μm以下の臭素化難燃剤であるとともに、芳香族結合した臭素を含み、a)重量平均分子量が約650~約950,000であり、臭素含量が約60重量%以上である臭素化スチレン系ポリマー、及び/またはb)約70重量%以上の臭素を含む臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーから選択される前記臭素化難燃剤、
少なくとも1つの分散剤、
少なくとも1つの湿潤剤、
少なくとも1つの増粘剤、
少なくとも1つの難燃助剤、ならびに
少なくとも1つのコーティング樹脂を含む前記コーティング組成物であり、
前記コーティング組成物の総重量に対して、約4重量%以上の臭素化難燃剤を含む、前記コーティング組成物。
【請求項5】
前記臭素化難燃剤が、
A)臭素化スチレン系ポリマーであり、これが、
i)重量平均分子量が約100,000~約950,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約71重量%の臭素化スチレン系ポリマー、
ii)重量平均分子量が約8,000~約50,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約72重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマー、及び/または
iii)重量平均分子量が約650~約4000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約77重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマーである、及び/または
B)重量平均分子量が約1000~約21,000の、及び/または臭素含量が約70重量%~約79重量%の臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーである、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記臭素化難燃剤が、平均粒度約10μm以下を有するものである、及び/または前記臭素化難燃剤が、ジェットミルによる粒度縮小に供されたものである、請求項4または5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記コーティング組成物の総重量に対して、約10重量%以上の臭素化難燃剤を含む、請求項4~6のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれかに記載のコーティング組成物であって、前記助剤が、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、及びスズ酸亜鉛から選択され、
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して、約3重量%以上の難燃助剤を含む、及び/または
前記コーティング樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルのコポリマー、またはアクリルコポリマーである、前記コーティング組成物。
【請求項9】
布帛基材とコーティング組成物を接触させてコーティングされた布帛基材を形成することを含む、布帛基材のコーティング方法であって、前記コーティング組成物が、
水、
平均粒度が約20μm以下の臭素化難燃剤であるとともに、芳香族結合した臭素を含み、a)重量平均分子量が約650~約950,000であり、臭素含量が約60重量%以上である臭素化スチレン系ポリマー、及び/またはb)約70重量%以上の臭素を含む臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーから選択される前記臭素化難燃剤、
少なくとも1つの分散剤、
少なくとも1つの湿潤剤、
少なくとも1つの増粘剤、
少なくとも1つの難燃助剤、ならびに
少なくとも1つのコーティング樹脂を含み、
前記コーティング組成物の総重量に対して、約4重量%以上の臭素化難燃剤を含む、前記方法。
【請求項10】
前記臭素化難燃剤が、
A)臭素化スチレン系ポリマーであり、これが、
i)重量平均分子量が約100,000~約950,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約71重量%の臭素化スチレン系ポリマー、
ii)重量平均分子量が約8,000~約50,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約72重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマー、及び/または
iii)重量平均分子量が約650~約4000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約77重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマーである、及び/または
B)重量平均分子量が約1000~約21,000の、及び/または臭素含量が約70重量%~約79重量%の臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記臭素化難燃剤が、平均粒度約10μm以下を有するものである、及び/または前記臭素化難燃剤が、ジェットミルによる粒度縮小に供されたものである、請求項9または10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記助剤が、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、及びスズ酸亜鉛から選択される、請求項9または10~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して、約3重量%以上の難燃助剤を含む、請求項9または10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルのコポリマー、またはアクリルコポリマーである、請求項9または10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して、約10重量%以上の臭素化難燃剤を含む、請求項9または10~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記臭素化難燃剤が、重量平均分子量が約100,000~約950,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約71重量%の臭素化スチレン系ポリマーであるか、重量平均分子量が約8,000~約50,000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約72重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマーであるか、
重量平均分子量が約650~約4000の、及び/または臭素含量が約60重量%~約77重量%の臭素化アニオン性スチレン系ポリマーであるか、または
重量平均分子量が約1000~約21,000の、及び/または臭素含量が約70重量%~約79重量%の臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーである、請求項2に記載の難燃剤分散液、請求項5に記載のコーティング組成物または請求項10に記載の方法
【請求項17】
前記分散剤が、高分子界面活性剤、高分子アニオン界面活性剤またはナトリウムポリナフタレンスルホネートである、請求項1に記載の難燃剤分散液、請求項4に記載のコーティング組成物または請求項9に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性難燃剤分散液、布帛の難燃加工用水性コーティング組成物、及び該水性コーティング組成物で難燃加工された布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの布帛は、延焼を最小限に抑えるために難燃加工される。布帛を形成する繊維の難燃加工は当技術分野では既知である。布帛基材のコーティング及び裏面コーティングは当技術分野で既知である。しかしながら、当技術分野では、布帛の難燃性の改良を絶えず求めている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、難燃剤を含むコーティング組成物及び該コーティング組成物を布帛基材に塗布する方法を提供する。該難燃剤は、臭素化芳香族高分子難燃剤である。これら臭素化芳香族高分子難燃剤で難燃加工された布帛基材は、NFPA-701試験及びFMVSS-302試験の両方において極めて良好な難燃性能を示す。
【0004】
本発明の実施形態は、水、臭素化難燃剤、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの湿潤剤、及び少なくとも1つの増粘剤を含む水性難燃剤分散液である。該臭素化難燃剤は、芳香族結合した臭素を含み、平均粒度が約20μm以下である。該難燃剤分散液は、該分散液の総重量に対して、50重量%以上の該臭素化難燃剤を含む。
【0005】
本発明のこれら及び他の実施形態ならびに特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のさらに詳細な説明
本書を通して使用される、「布帛(textile)基材」という句は、合成及び天然の繊維、布帛(fabric)、糸(yarn)、糸(thread)、及び布帛(cloth)(製織及び不織)を指す。本発明の実施に際してコーティング組成物を塗布することができる布帛基材としては、羊毛、絹、綿、亜麻(linen)、亜麻(flax)、ジュート、レーヨン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、及び例えば、綿/ポリエステル混紡を含めたそれらの混紡が挙げられるがこれらに限定されない。
【0007】
該コーティング組成物を塗布することができる布帛基材は、家具、室内装飾、カーテン及び壁紙、輸送手段(例えば、自動車、鉄道、航空機、船舶)、建築、標識及び旗、ならびに衣服、特に、個人用保護具に使用される。
【0008】
該水性難燃剤分散液は、本書を通して多くの場合、「難燃剤分散液」と呼ばれる。本書を通して使用される、未修飾の用語「分散液」もまた、水性難燃剤分散液を指す。
【0009】
本発明の難燃剤分散液は、水、臭素化難燃剤、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの湿潤剤、及び少なくとも1つの増粘剤を含む水性分散液である。該湿潤剤は、水不溶性の該臭素化難燃剤を、水と相溶性にすると考えられており、該増粘剤は、該分散液を分離に対して安定化させる。
【0010】
本発明の実施に際し、該臭素化難燃剤は、芳香族結合した臭素を含み、いくつかの実施
形態では、臭素化スチレン系ポリマーと見なされる。該臭素化難燃剤は、重量平均分子量(M)が約650~約950,000であり、臭素含量が約60重量%以上である。好ましくは、該スチレン系ポリマーはポリスチレンである。2つ以上の臭素化難燃剤の混合物を本発明の実施に際して使用することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、該臭素化難燃剤は、臭素化スチレン系ポリマーであり、該スチレン系ポリマーは、フリーラジカル重合で形成されたものであり、これらの臭素化難燃剤は、通常、重量平均分子量(M)が約100,000以上、好ましくは、約300,000以上、より好ましくは、約500,000以上である。いくつかの実施形態では、該臭素化されたフリーラジカル重合で形成されたスチレン系ポリマーは、Mが約100,000~約950,000、好ましくは、約300,000~約800,000、より好ましくは、約500,000~約700,000の範囲である。
【0012】
該臭素化されたフリーラジカル重合で形成されたポリスチレンにおいて、臭素含量は、一般に約60重量%以上、好ましくは、約67重量%以上、より好ましくは、約68重量%以上である。該フリーラジカル重合臭素化スチレン系ポリマーの臭素含量の範囲は、好ましくは、約60重量%~約71重量%、より好ましくは、約67重量%~約71重量%臭素、さらにより好ましくは、約68重量%~約71重量%臭素である。好ましくは、該スチレン系ポリマーはポリスチレンである。好ましい実施形態では、該フリーラジカル重合臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、Mが約600,000~約650,000であり、臭素含量が約67重量%~約69重量%である。スチレン系ポリマーがフリーラジカル法で形成された場合の臭素化スチレン系ポリマーの調製に関する情報は、例えば、米国特許第6,235,831号及び第6,521,714号に見出される。
【0013】
他の実施形態では、該臭素化難燃剤は、臭素化アニオン性スチレン系ポリマーであり、この場合、該スチレン系ポリマーは、通常はアルキルリチウム開始剤を用いたアニオン重合で形成されたものであり、これら臭素化難燃剤は、一般に重量平均分子量(M)が約8000以上、好ましくは、約10,000以上である。いくつかの実施形態では、該臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、Mが約8000~約50,000、好ましくは、約10,000~約30,000、より好ましくは、約10,000~約20,000である。
【0014】
通常、該臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、約60重量%以上の臭素、好ましくは、約66重量%以上の臭素、より好ましくは、約67重量%以上の臭素を含む。いくつかの実施形態では、該臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、約60重量%~約72重量%の臭素、より好ましくは、約66重量%~約71重量%の臭素、さらにより好ましくは、約67重量%~約71重量%の臭素を含む。好ましくは、該臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、臭素化アニオン性ポリスチレンである。いくつかの実施形態では、該臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、臭素化アニオン性ポリスチレンであり、重量平均分子量が約10,000~約20,000であり、約67重量%~約69重量%の臭素を有する。臭素化アニオン性スチレン系ポリマーの調製に関する情報は、例えば、米国特許第7,632,893号及び第7,638,583号に見出される。
【0015】
別の実施形態では、該臭素化難燃剤は、低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーであり、重量平均分子量(M)が約650以上、好ましくは、約950以上、より好ましくは、約1000以上である。いくつかの実施形態では、これら臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、Mが約650~約4000、好ましくは、約950~約3500、より好ましくは、約1000~約3500の範囲である。
【0016】
通常、該低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、約60重量%以上の臭素、
好ましくは、約66重量%以上の臭素、より好ましくは、約73重量%以上の臭素を含む。いくつかの実施形態では、これら臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、約60重量%~約77重量%の臭素、好ましくは、約66重量%~約77重量%、より好ましくは、約73重量%~約77重量%の臭素を含む。
【0017】
好ましくは、該低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、臭素化アニオン性ポリスチレンである。いくつかの実施形態では、該低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、臭素化アニオン性ポリスチレンであり、重量平均分子量が約1000~約3000であり、約73重量%~約77重量%の臭素を有する。
【0018】
該低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーは、有機溶媒中、または臭素の海(この場合、臭素は臭素化剤と溶媒の両方である)中で臭素化することにより形成することができる。低分子量臭素化アニオン性スチレン系ポリマーの調製に関する情報は、例えば、国際特許公開第WO2017/176740号に見出され、これらのポリマーは、米国特許第7,632,893号及び第7,638,583号に記載の通りに製造することもできる。
【0019】
本発明の実施に際して使用することができる別の臭素化難燃剤は、これらの分子中の繰り返し単位が比較的少数であることから、スチレン系ポリマーとして分類されない場合がある。該臭素化スチレン系ポリマーと同様、これらの分子もまた、芳香族結合した臭素、及びスチレン系の繰り返し単位を含む。この臭素化難燃剤は、臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーであり、これは、約70重量%以上の臭素、好ましくは、約72重量%以上の臭素を含み、重量平均分子量が約1000以上、好ましくは、約1250以上である。いくつかの実施形態では、該臭素含量は、約70重量%~約79重量%、好ましくは、約72重量%~約78重量%の範囲であり、Mwは、約1000~約21,000、好ましくは、約1250~約14,000、より好ましくは、約2000~約10,000の範囲である。
【0020】
好ましくは、該臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーは、臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレンである。いくつかの実施形態では、該臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーは、臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレンであり、重量平均分子量が約2000~約10,000であり、約72重量%~約78重量%の臭素を有する。
【0021】
該臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーは、有機溶媒中、または臭素の海(この場合、臭素は臭素化剤と溶媒の両方である)中で臭素化することにより形成することができる。臭素化アニオン性連鎖移動ビニル芳香族ポリマーの調製に関する情報は、例えば、米国特許第8,420,876号、第8,796,388号、及び第8,993,684号に見出される。
【0022】
本発明の実施に際して、該臭素化難燃剤は、平均粒度が約20μm以下、好ましくは、約15μm以下、より好ましくは、約10μm以下である。いくつかの実施形態では、該臭素化難燃剤は、平均粒度が約0.1μmから約20μm、好ましくは、約0.5μmから約15μmの範囲であり、より好ましくは、該平均粒度は、約1μmから約10μmである。
【0023】
該臭素化難燃剤は、一般に、所望の平均粒度を得るために1つ以上の粒度縮小法に供する必要がある。かかる方法には、通常、該臭素化難燃剤粒子を粉砕すること(grindingまたはpulverizing)が含まれる。該臭素化難燃剤粒子の粒度の縮小には、ミリングが好ましい方法である。ボールミル、ハンマーミル、及びジェットミル、またはこれらの2つ以上の組み合わせを使用することができ、好ましくは、該粒度縮小は、
ジェットミルで達成される。
【0024】
該難燃剤分散液は、臭素化難燃剤を、該分散液の総重量に対して、約25重量%以上、好ましくは、約50重量%以上、より好ましくは、約60重量%以上の量含む。いくつかの実施形態では、該臭素化難燃剤は、該分散液の総重量に対して、約25重量%~約80重量%、好ましくは、50重量%~約80重量%、より好ましくは、約60重量%~約75重量%、さらにより好ましくは、約65重量%~約75重量%である。
【0025】
本発明の実施に際して、該分散剤は、高分子界面活性剤、好ましくは、高分子アニオン界面活性剤である。適切な分散剤としては、ナトリウムポリナフタレンスルホネート(sodium polynaphthalene sulfonate)が挙げられる。
【0026】
該分散剤は、該分散液の総重量に対して、約0.1重量%以上、好ましくは、約0.2重量%以上、より好ましくは、約0.3重量%以上である。いくつかの実施形態では、該分散剤は、該分散液の総重量に対して、約0.1重量%~約3重量%、好ましくは、約0.2重量%~約1重量%、より好ましくは、約0.3重量%~約0.7重量%である。
【0027】
湿潤剤は、界面活性剤、特に非高分子界面活性剤であり、好ましくは、非高分子アニオン界面活性剤である。本発明の実施に際して湿潤剤として使用することができる適切な界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウムアンモニウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。好ましい湿潤剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。
【0028】
該湿潤剤は、該分散液の総重量に対して、約0.1重量%以上、好ましくは、約0.3重量%以上、より好ましくは、約0.4重量%以上である。いくつかの実施形態では、該湿潤剤は、該分散液の総重量に対して、約0.1重量%~約3重量%、好ましくは、約0.3重量%~約1.5重量%、より好ましくは、約0.4重量%~約1重量%である。
【0029】
本発明の実施に際して使用することができる適切な増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エトキシセルロース、及びメトキシセルロースが挙げられる。好ましい増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。増粘剤は、通常は溶液、多くの場合、水溶液で提供される。
【0030】
該増粘剤は、該分散液の総重量に対して、約0.05重量%以上、好ましくは、約0.1重量%以上である。いくつかの実施形態では、該増粘剤は、該分散液の総重量に対して、約0.05重量%~約1.0重量%、好ましくは、約0.1重量%~約0.5重量%、より好ましくは、約0.15重量%~約0.4重量%である。
【0031】
該難燃剤分散液に含まれ得る任意成分としては、染料、防しわ剤、消泡剤、殺生剤、緩衝剤、pH安定剤、定着剤、フッ化炭素等の防汚剤(stain repellent)、汚れ遮断剤、防汚剤(soil repellent)、湿潤剤、柔軟剤、撥水剤、汚れ剥離剤、蛍光増白剤、可塑剤、及び乳化剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
該難燃剤分散液は、好ましくは、粘度が約2000cP~約6000cP、好ましくは、約3500cP~約4500cPの範囲である。
【0033】
該難燃剤分散液のpHは、好ましくは、約7~約10、より好ましくは、約7.5~約9.5である。
【0034】
本発明の水性難燃剤分散液を形成する方法は、水、臭素化難燃剤、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの湿潤剤、及び少なくとも1つの増粘剤を混合することを含む。該臭素化難燃剤は、平均粒度が約20μm以下である。該臭素化難燃剤は、該分散液の総重量に基づいて、該分散液の約50重量%以上である。
【0035】
該難燃剤分散液の成分は、任意の順序で水と混合することができる。例えば、水、該分散剤、及び該湿潤剤を混合した後、該臭素化難燃剤を混合することができ、その後該増粘剤が導入される。好ましくは、該難燃剤分散液の成分の少なくとも一部は、通常は高速高せん断混合機が与える強攪拌により一緒にされる。
【0036】
該難燃剤分散液の粘度が所望の値より低い場合、さらなる増粘剤が通常添加され、該難燃剤分散液の粘度が所望の値より高い場合、さらなる水が通常添加される。
【0037】
該臭素化難燃剤及びそれらの選好、ならびにそれらの量及び好ましい量は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。
【0038】
該分散剤、湿潤剤、及び増粘剤、ならびにそれらの選好、ならびに量及び好ましい量は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。
【0039】
該難燃剤分散液の調製の過程で導入することができる任意成分は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。
【0040】
これらの方法で調製される難燃剤分散液は、好ましくは、上記の粘度及びpH値を有する。本発明のコーティング組成物は、水性組成物であり、水、臭素化難燃剤、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの難燃助剤、及び少なくとも1つのコーティング樹脂を含む。該臭素化難燃剤は、芳香族結合した臭素を含み、該臭素化難燃剤は、平均粒度が約20μm以下である。該臭素化難燃剤は、該コーティング組成物の総重量に基づいて、該コーティング組成物の約2重量%以上である。
【0041】
本書を通して、「コーティング」という用語は、特に明記しない限り、集合的に、布帛基材の表面のコーティング、裏面コーティング、またはその両方を指すために使用される。
【0042】
1つ以上の難燃助剤が該コーティング組成物に含まれる。難燃助剤の例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、及びスズ酸亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。アンチモン含有助剤が好ましく、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモン、特に三酸化アンチモンが、好ましいアンチモン含有助剤である。
【0043】
該難燃助剤は、該コーティング組成物の総重量に対して、約3重量%以上、好ましくは、約5重量%以上、より好ましくは、約10重量%以上である。いくつかの実施形態では、該難燃助剤は、該コーティング組成物の総重量に対して、約3重量%~約30重量%、好ましくは、約5重量%~約25重量%、より好ましくは、約10重量%~約20重量%である。
【0044】
該コーティング樹脂は、周囲温度または高温で膜を形成する1つ以上のポリマーであり、結合、コーティング、含浸または関連する用途で知られ、使用される安定な高分子分散体から選択することができ、自己架橋する場合もあれば、外部的に架橋される場合もある。その高分子成分は、付加ポリマーであっても、縮合ポリマーであっても、セルロース誘
導体であってもよい。適切なポリマーの非限定的な例としては、発泡または非発泡オルガノゾル、プラスチゾル、ラテックス等が挙げられ、これらは、1つ以上の高分子成分を含み、それらとしては、ハロゲン化ビニル、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル-ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレン-ポリ塩化ビニル、ビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-ポリビニル及びポリアクリル-ポリ酢酸ビニルのポリマー及びコポリマー、アクリレートモノマー、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸ジメチルアミノエチルのポリマー及びコポリマー、メタクリレートモノマー、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル及びメタクリル酸ブチルのポリマー及びコポリマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びメタクリルアミドのポリマー及びコポリマー、ビニリデンポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン-ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン-ポリアクリル酸エチル及びポリ塩化ビニリデン-ポリ塩化ビニル-ポリアクリロニトリル、エチレン及びプロピレンを含めたオレフィンモノマーのポリマー及びコポリマー、ならびに1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン等のポリマー及びコポリマー、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、及び4-ブチルスチレンを含めたスチレンのポリマー及びコポリマー、フェノール性エマルション、アミノプラスト樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。布帛基材のコーティングにおけるかかるポリマーの使用は、当技術分野では周知である。例えば、米国特許第4,737,386号及び第4,304,812号を参照されたい。
【0045】
好ましいコーティング樹脂としては、ポリ塩化ビニル及びそのコポリマー、特に、ポリ塩化ビニルアクリレートコポリマー、アクリルコポリマー、及びEVA(エチレンと酢酸ビニルのコポリマー)が挙げられる。コーティング樹脂であるこれらポリマーは、好ましくは、水のエマルション(例えば、ラテックス)として使用される。
【0046】
該コーティング組成物は、コーティング樹脂をラテックスとして、該コーティング組成物の総重量に対して、約15重量%以上、好ましくは、約20重量%以上の量含む。いくつかの実施形態では、該コーティング樹脂は、該コーティング組成物の総重量に対して、約15重量%~約40重量%、好ましくは、約20重量%~約30重量%、より好ましくは、約22重量%~約27重量%である。
【0047】
該コーティング組成物は、一般に、粘度が約7000cP~約15,000cP、好ましくは、約7500cP~約12,000cP、より好ましくは、約8000cP~約10,000cPである。
【0048】
該コーティング組成物のpHは、好ましくは、約7~約10.5、より好ましくは、約9~約10である。
【0049】
該コーティング組成物において、該臭素化難燃剤及びそれらの選好は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。該分散剤、湿潤剤、及び増粘剤、ならびにそれらの選好は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。
【0050】
該コーティング組成物は、臭素化難燃剤を、該コーティング組成物の総重量に対して、約4重量%以上、好ましくは、約10重量%以上、より好ましくは、約15重量%以上の量含む。いくつかの実施形態では、該臭素化難燃剤は、該コーティング組成物の総重量に対して、約4重量%~約50重量%、好ましくは、約10重量%~約35重量%、より好
ましくは、約15重量%~約25重量%である。
【0051】
該コーティング組成物に含まれ得る任意成分は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。
【0052】
本発明のコーティング組成物を形成する方法は、水、臭素化難燃剤、少なくとも1つの難燃助剤、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つの増粘剤、及び少なくとも1つの樹脂を混合することを含む。該臭素化難燃剤は、平均粒度が約20μm以下である。該臭素化難燃剤は、該コーティング組成物の総重量に対して、約4重量%以上である。
【0053】
通常、該コーティング樹脂は、該コーティング組成物の他の成分との混合に先立って、ラテックスを形成するために水に懸濁される。このラテックスは、他の成分と任意の順序で混合することができる。例えば、水及びいずれかの所望の任意成分を該コーティング樹脂ラテックスと混合することができ、その後、該臭素化難燃剤、湿潤剤、分散剤、及び増粘剤、続いて該難燃助剤を添加することができる。該コーティング組成物の成分は、通常は高速高せん断混合機が与える強攪拌により一緒にされる。
【0054】
該コーティング組成物が難燃剤分散液から形成される場合、該難燃剤分散液は、該コーティング組成物の総重量に基づいて、該コーティング組成物の約15重量%以上、好ましくは、約20重量%以上、より好ましくは、約25重量%以上である。いくつかの実施形態では、該難燃剤分散液は、該コーティング組成物の総重量に対して、約15重量%~約50重量%、好ましくは、約20重量%~約45重量%、より好ましくは、約25重量%~約40重量%である。
【0055】
該コーティング組成物の粘度が所望の値より低い場合、さらなる増粘剤が通常添加され、該コーティング組成物の粘度が所望の値より高い場合、さらなる水が通常添加される。
【0056】
該臭素化難燃剤及びそれらの選好、ならびにそれらの量及び好ましい量は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。該臭素化難燃剤の量及び好ましい量は、該コーティング組成物に関して上記した通りである。
【0057】
該分散剤、湿潤剤、及び増粘剤、ならびにそれらの選好は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。これら成分の量及び好ましい量は、該コーティング組成物に関して上記した通りである。
【0058】
難燃助剤及びそれらの選好、ならびに量及び好ましい量は、該コーティング組成物に関して上記した通りである。該難燃助剤は、該コーティング組成物の調製の過程の任意の時点で含めることができる。
【0059】
コーティング樹脂及びそれらの選好、ならびに量及び好ましい量は、該コーティング組成物に関して上記した通りである。
【0060】
該コーティング組成物の調製の過程で導入することができる任意成分は、該水性難燃剤分散液に関して上記した通りである。難燃剤分散液に含まれない任意成分が該コーティング組成物に含まれる場合がある。
【0061】
これらの方法で調製されるコーティング組成物は、好ましくは、上記の粘度及びpH値を有する。
【0062】
布帛基材のコーティング方法は、布帛基材とコーティング組成物を接触させてコーティングされた布帛基材を形成することを含み、この場合、該コーティング組成物は、上記のものである。
【0063】
該コーティング組成物は、任意の便利な方法、例えば、ナイフコーティング、ディップコーティング、パディング、または発泡により該布帛基材に塗布される。これら方法の一部として、過剰のコーティング組成物が除去される。過剰なコーティング組成物を除去した後、該布帛基材に形成されたコーティングを、例えば、加熱により、または周囲温度もしくは高温での吹き飛ばしにより乾燥して、水及び任意の揮発性物質を除去する。加熱が、通常、約70℃~約175℃、好ましくは、約90℃~約150℃の範囲の1つ以上の温度で使用される。
【0064】
水及び他の揮発性物質の除去後の該コーティングされた布帛基材上の該コーティング組成物の負荷は、該コーティングされた布帛基材の総重量に対して、約5重量%以上、好ましくは、約15重量%以上である。いくつかの実施形態では、該コーティング組成物は、該コーティングされた布帛基材の総重量に対して、約5重量%~約80重量%、好ましくは、約15重量%~約50重量%、より好ましくは、約15重量%~約30重量%である。
【0065】
該コーティングされた布帛基材上の該コーティング組成物のこれら負荷により、該コーティングされた布帛基材上の臭素化難燃剤量は、該コーティングされた布帛基材の総重量に対して、約2重量%以上、好ましくは、約4重量%以上、より好ましくは、約6重量%以上となる。いくつかの実施形態では、該臭素化難燃剤は、該コーティングされた布帛基材の総重量に対して、約2重量%~約60重量%、好ましくは、約4重量%~約40重量%、より好ましくは、約10重量%~約30重量%である。一部の布帛に関しては、より大量の該臭素化難燃剤が必要な場合があり、該コーティング混合物の組成もまた、該布帛基材に対して有効な難燃性を与えるために必要な臭素化難燃剤の量に影響を及ぼす。
【0066】
該臭素化難燃剤は、該コーティングの一部として該布帛基材に残り、該臭素化難燃剤は、該布帛繊維の一部にはならない。
【0067】
以下の実施例は、例示の目的で提示するものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例
【0068】
実施例1
いくつかの臭素化難燃剤を、ジェットミル(Micron-Master(登録商標)02-506、Jet Pulverizer Co.)で粒度縮小に供した:臭素化アニオン性ポリスチレン(Br-aPS)、低分子量臭素化アニオン性ポリスチレン(低分子量Br-aPS)、及び臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレン(Br-actPS)。
【0069】
該高分子臭素化難燃剤の重量平均分子量(M)は、Waters,Inc.モデル510HPLCポンプを用いたGPC光散乱で特定し、カラムは、μStyragel、500、10,000、及び100,000(Waters Corporation)であった。オートサンプラーは、Model Sil 9A(Shimadzu Corporation)であった。検出器は、屈折率検出器(Model 410、Waters Corporation)、及び光散乱検出器、(Model PD 2000、Precision Detectors,Inc.)であった。ポリスチレン標準(M=185,000)は、光散乱データの精度を検証するために通常使用される。使用した
試験手順では、0.015~0.020gのサンプルを10mLのテトラヒドロフラン(HPLCグレード)に溶解した。この溶液のアリコートを濾過し、50μLをカラムに注入した。この分離を、Precision Detectors,Inc.が提供するPD 2000光散乱検出器用のソフトウェアを使用して分析した。
【0070】
粒度測定は、レーザー回折計(LS(商標)-13 320、Beckman Coulter,Inc.)を使用して行った。粒度縮小の結果を、以下の表1に要約する。
【表1】
平均値。
標準値、13,500~14,500の範囲。
【0071】
実施例2
各々が異なる臭素化難燃剤を含むいくつかの難燃剤分散液を調製した。各分散液を調製するため、オーバーヘッドスターラーを備えたフラスコ中で、水を、分散剤、続いて湿潤剤と混合した。その後、臭素化難燃剤をゆっくりと加え(5~10gずつ)、スターラーの速度を1500rpmに上げた。その混合物が乳状を示した後(2分または3分後)、増粘剤を加え、混合物の粘度を上げた。これらコーティング組成物の試薬及び量を表2に要約する。試薬は添加順に記載されている。
【0072】
これらの実験では、分散剤は、ポリナフタレンスルホン酸のナトリウム塩(DARVAN(登録商標)670、Vanderbilt Minerals,LLC)であり、湿潤剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(70%の水/プロピレングリコール溶液、COLA(登録商標)Wet DOSS PG、Colonial Chemical,Inc.)であり、増粘剤は、ポリアクリル酸ナトリウム(15重量%水溶液、TEXIGEL(登録商標)23-005、Scott Bader Company Ltd.)であった。臭素化難燃剤は、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(平均粒度5μm、比較実験、SAYTEX(登録商標)8010、Albemarle Corporation)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(平均粒度3μm、比較実験、SAYTEX(登録商標)BT-93、Albemarle Corporation)、重量平均分子量が約10,000~約20,000であり、約67重量%~約69重量%の臭素を有する臭素化アニオン性ポリスチレン(Br-aPS)、平均粒度4.8μmの臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレン(Br-actPS)、平均粒度3.8μmのBr-actPS、平均粒度2.8μmの低分子量臭素化アニオン性ポリスチレン(低分子量Br-aPS)、及び別の低分子量Br-aPSであった。
【0073】
この分散液に望ましい粘度は、2000~6000cPであった。この分散液に望まし
いpHは7.5~9.5であった。pHはpH試験紙で確認し、粘度はデジタル粘度計(型番DV-II Pro、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.)で測定した。pHが低過ぎた場合にはアンモニアを添加し、pHが高過ぎた場合には第一リン酸アンモニウムを添加した。添加する場合、pH調整物質は約1gであった。粘度が低過ぎた場合にはさらに増粘剤を添加し、粘度が高過ぎた場合にはさらに水を添加した。
【0074】
実施例3
コーティング組成物は、実施例2の難燃剤分散液から調製した。各コーティング組成物を調製するため、オーバーヘッドスターラーを備えたフラスコ中で、コーティング樹脂の水性混合物(水性、49重量%)を、可塑剤及び消泡剤と混合した。約2分間攪拌した後、さらなるコーティング樹脂(水性、30重量%)及び水、続いてアンモニア(25%)を添加した。約5分間攪拌した後、実施例2の通りに形成した難燃剤分散液の一部を、三酸化アンチモンと共に添加した。その後、スターラーの速度を1500~2000rpmに上げ、その混合物を約15分間攪拌した。15分間の攪拌期間の後、その混合物の粘度及びpHを、デジタル粘度計(型番DV-II Pro、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.)及びpH試験紙でそれぞれ測定した。これらコーティング組成物の試薬及び量を表2に要約する。試薬は添加順に記載されている。
【0075】
このコーティング組成物に望ましい粘度は、7000~9000cPであった。このコーティング組成物に望ましいpHは、9~10であった。pHが低過ぎた場合にはアンモニアを添加し、pHが高過ぎた場合には第一リン酸アンモニウムを添加した。添加する場合、pH調整物質は約1gであった。粘度が低過ぎた場合にはさらにさらなるコーティング樹脂を添加し、粘度が高過ぎた場合にはさらに水を添加した。
【0076】
これらの実験では、コーティング樹脂は、ポリ塩化ビニルアクリルラテックス(VYCAR(登録商標)460x46、Lubrizol Corporation)であり、可塑剤は、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル(SANTICIZER(登録商標)141、Valtris Specialty Chemicals)であり、消泡剤は、石油蒸留物(ANTIMUSSOL(登録商標)C1、Archroma Packaging&Paper Specialties)に基づいており、さらなるコーティング樹脂は、アクリルコポリマーエマルション(RHEOVIS(登録商標)AS 1130、BASF)であり、三酸化アンチモンは、PERFORMAX(登録商標)401(Lubrizol Corporation)であった。
【表2】
さらなるコーティング樹脂は、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの実験及びエチレ
ンビス(テトラブロモフタルイミド)の実験に関しては26gであり、これら難燃剤用のコーティング組成物には、さらに250gの水を含めた。
【0077】
実施例4
実施例3の通りに調製したコーティング組成物を、布帛基材にコーティングし、難燃性を試験した。すべての試験用の布帛基材は、目付110g/m(3.24oz/yd、Testfabrics,Inc.,no.1403001,style400)の綿織物であった。各コーティング組成物を、綿の未使用部分に、Labcoater(LTE-S(M)、Mathis AG)を用いたナイフコーティングにより塗布した。Labcoaterでは、綿(33×43cm)をその中のピンフレームに固定し、ナイフを綿の一端に配置し、コーティング組成物をナイフの近くに配置し、このナイフを前進させ、このコーティング組成物で綿をコーティングした。ナイフの移動の終了後、コーティングされた綿はオーブンに入り(プログラム通り)、水及び他の揮発性物質を除去した。綿のコーティングの均一性は、光学顕微鏡(光学ソフトウェアOptimas 5を備えた光学顕微鏡Optiphot K13530、Nikon,Inc.)で測定した。
【0078】
コーティングされた綿サンプルを、FMVSS-302(ASTM D5132-04としても知られる)に従う水平燃焼性試験及びNFPA-701に従う垂直燃焼性試験に供した。FMVSS-302試験に合格するには、材料は、燃焼等級4インチ/分(10.1cm/分)未満を有することが必要である。NFPA-701試験に合格するには、コーティングされた布帛は、重量減少が40重量%未満である必要がある。
【0079】
FMVSS-302試験の結果を表3に要約し、NFPA-701試験の結果を表4に要約する。表3及び4の臭素化難燃剤の一部に関しては、粒度が記載されていないが、これらコーティングを形成するのに使用した臭素化難燃剤はすべて、平均粒度が15μm以下であった。
【表3】
コーティング組成物の粘度。
AOWは、水及び他の揮発性物質を除去した後のコーティング組成物から綿への追加重量(またはさらなる重量)である。
水及び他の揮発性物質を除去した後の、綿布とコーティング組成物とを合わせた重量に対する綿上のコーティング組成物の量。
燃焼等級は、インチ/分で報告する。SEは、自己消火を表し、すなわち、火炎が取り除かれるとサンプルが消火したことを意味する。
この分子は、デカブロモジフェニルエタンまたはエチレンビス(ペンタブロモフェニル)とも呼ばれる。
Br-aPS=臭素化アニオン性ポリスチレン、Br-actPS=臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレン、低分子量Br-aPS=低分子量臭素化アニオン性ポリスチレン。
【表4】
コーティング組成物の粘度。
AOWは、水及び他の揮発性物質を除去した後のコーティング組成物から綿への追加重量(またはさらなる重量)である。
水及び他の揮発性物質を除去した後の、綿布とコーティング組成物とを合わせた重量に対する綿上のコーティング組成物の量。
この分子は、デカブロモジフェニルエタンまたはエチレンビス(ペンタブロモフェニル)とも呼ばれる。
Br-aPS=臭素化アニオン性ポリスチレン、Br-actPS=臭素化アニオン性連鎖移動ポリスチレン、低分子量Br-aPS=低分子量臭素化アニオン性ポリスチレン。
【0080】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかで化学名または化学式で言及される成分は、単数で言及されるか複数で言及されるかどうかにかかわらず、化学名または化学型で言及される別の物質(例えば、別の成分、溶媒等)と接触する前に存在するものとして識別される。得られる混合物または溶液中で、たとえあるとしても、どのような化学変化、変換及び/または反応が生じるかは問題ではない。これは、かかる変化、変換、及び/または反応が、特定の成分を本開示に従って求められる条件下で一緒にすることにより自然に生じる結果であるためである。従って、これらの成分は、所望の操作の実行または所望の組成物の形成に関連して一緒にされる成分として識別される。また、本明細書の特許請求の範囲は、物質、成分(component)及び/または成分(ingredient)に現在時制(「含む」、「である」等)で言及している場合でも、該言及は、それが、本開示に従う1つ以上の他の物質、成分(component)及び/または成分(ingredient)と最初に接触されるか、ブレンドされるかまたは混合される直前の時点でそれが存在したような該物質、成分(component)または成分(ingredient)に対するものである。従って、物質、成分(component)または成分(ingredient)は、本開示及び化学者の通常の技術に従って実施された場合、接触、ブレンドまたは混合の操作の過程で、化学反応または変換により元の同一性を失った可能性があるという事実には、実質上の懸念はない。
【0081】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含んでもよいし、それらからなってもよいし、またはそれらから本質的になってもよい。
【0082】
本明細書で使用される、本発明の組成物中のまたは本発明の方法(processes)もしくは方法(methods)で使用される、成分の量を修飾する「約」という用語は、数量の変動を指し、これは、例えば、現実世界での通常の測定及び濃縮物の作製または溶媒使用のために使用される液体の取扱手順によって、これらの手順の不注意による誤りによって、組成物の製造または方法(processes)もしくは方法(methods)の実行に使用される成分の製造、供給源、または純度の違い等によって生じ得る。約という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲にはそれらの量に対する均等物が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、本明細書で用いる場合、特に明示的に示される場合を除き、その説明または特許請求の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に対して限定するものではなく、限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、本明細書で用いる場合、本文で特に明示的に示されていない限り、1つ以上のかかる要素を網羅することを意図している。
【0084】
本発明は、その実施に際し、かなりの変動を受けやすい。従って、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、限定するもの
として解釈されるべきではない。