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  • 特許-固体複合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】固体複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20231012BHJP
   C10J 3/00 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
C22B1/16 N
C10J3/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020558498
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 AU2019050325
(87)【国際公開番号】W WO2019200424
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】2018901270
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520401790
【氏名又は名称】レナジ・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン-ジュウ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ティンティン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-306925(JP,A)
【文献】特開2000-273552(JP,A)
【文献】特開昭57-104610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体複合体を製造する方法であって、
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱分解から形成される、高温で固化することができるバイオオイルを提供すること、
前記バイオオイルを固体又はペーストと混合して、グリーン複合体を形成すること、及び
前記グリーン複合体を加熱して、前記バイオオイル中の反応性化学種及び官能基を含む物理的プロセス及び化学的プロセスをうけて固化した固体複合体を製造すること、
を含み、
ここで、
前記固体又はペーストが鉄鉱石を含み、
前記固化した固体複合体が、高炉またはアーク炉へのフィードストックの一部を構成する、
方法。
【請求項2】
前記バイオオイルが、流動性液体又は非流動性ペーストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体又はペーストが炭素材料を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体が冶金コークス微粉を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体がバイオ炭を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
バイオマスを含む炭素質フィードストックの前記熱処理から形成されるバイオ炭を提供する工程、並びに前記バイオ炭を前記バイオオイル及び前記固体と混合してグリーン複合体を形成する工程をさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリーン複合体の前記加熱から放出される揮発性物質及び他のガスを回収する工程をさらに含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収された揮発性物質及び他のガスが、前記グリーン複合体を加熱するためのエネルギーを供給するために燃焼される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記回収された揮発性物質及び他のガスが、発電するために用いられる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記グリーン複合体を加熱する前記工程が、段階的に行われる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記グリーン複合体を加熱する前記工程が、前記グリーン複合体を少なくとも部分的に溶融、又は焼結、及び/又は炭化するために行われる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記グリーン複合体を加熱する前記工程が、前記グリーン複合体を加熱して前記グリーン複合体中の有機構成成分を燃焼することによって行われる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記グリーン複合体の前記固化の速度を増加させるために触媒を提供する工程をさらに含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体複合体、特に鉱物を含有する複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業的プロセスは、エネルギー及び炭素の両方を大量に必要とする。そのようなプロセスの例としては、鉄鉱石鉱物からの鉄鋼の製造、並びにシリカ鉱物からのシリコンの製造が挙げられる。多くの場合、石炭などの化石燃料が、主要なエネルギー源及び炭素源である。例えば、高品質の瀝青粘結炭(bituminous caking coal)のコーキングからの冶金コークスは、鉄鋼産業で、特に高炉へのフィードストックに用いられる炭素の主要な形態である。これらの産業セクターは、温室効果ガス(特にCO)の主要な排出者であり、プロセスで必要とされるエネルギー及び炭素を供給する代替的な低排出量の手段を積極的に求めている。
【0003】
多くの再生可能エネルギー源が、そのような工業プロセスのエネルギー需要を満たしてそのCO排出量を削減するために用いられ得る一方で、これらの工業プロセスの炭素需要を満たすために直接用いることのできる再生可能エネルギー源は、バイオマスだけである。
【0004】
選鉱は、鉄鉱石などの原料鉱物の品質(純度)を向上させるために一般的に用いられるプロセスである。それは、通常、微粉砕を含み、したがって、微細な鉱物が生成される。この微粉は、次に、微粉を意図するプロセスに適する、例えば高炉へのフィードとして適するペレット及びブリケットなどの大粒子の形態のフィードとするために、例えばペレット化又はブリケッティングを通して大粒子とされる必要がある。ベントナイトなどのクレイが、バインダーとして一般的に用いられる。しかし、無機バインダーは、望ましくない無機不純物をこのプロセスに持ち込む傾向にあり、それは、主要なプロセスに負の影響を及ぼす場合があり、最終的にはスラグとしてプロセスから排出される場合があり、廃棄が必要となる。有機バインダーは、特に、物理的及び/又は化学的相互作用を介して有機バインダーと処理されるべき鉱物とが複合体を形成することもでき、プロセスに必要とされる炭素の一部となることができる場合に、望ましい。バインダーと鉱物との間の化学反応は、機械的強度の高い複合体の製造において有利となる。
【0005】
上述の産業セクターによって必要とされる「炭素」は、通常、反応体であり、例えば、鉄鉱石を鉄に還元するための、又はシリカをシリコンに還元するための還元剤であるが、炭素は、エネルギー源でもあり得る。本明細書で用いられる場合、「炭素」は、必ずしも純粋な炭素である必要はなく、主として、炭素が豊富な炭素質材料を意味する。
【0006】
冶金コークス及び木炭は、これらの「炭素」材料の典型例である。複合体中での炭素質材料と反応(還元)されるべき鉱物との間の密接な接触は、プロセスの加速及びプロセス効率の向上において多くの有益な効果を有することになる。
【0007】
炭素材料を製造する過程において、及び/又は必要とされる粒子サイズ範囲内の炭素材料を高炉又は電気アーク炉を例とする意図する工業プロセスへ供給することができるように、炭素材料を調製するその後の過程において、多くの微粉が発生し得る。例えば、必要とされる粒子サイズ範囲内のコークスを製造し、高炉へ供給することができるように冶金コークスが粉砕される際に、多くの冶金コークス微粉が発生し得る。これらのコークス微粉は、高炉へ直接供給することはできず、コークス塊よりも市場的価値は低い。別の例は、シリコン製造のために電気アーク炉へ供給することができるフィードストックとしてのバイオ炭の製造及び調製の過程における、バイオ炭微粉の発生である。ここでも、バイオ炭微粉は、アーク炉へ供給することができず、バイオ炭塊よりも市場的価値は低い。対応する微粉を用いて塊炭素材料を製造することは、重要な商業的成果となるであろう。特に、微粉から製造された塊炭素材料は、意図する使用における品質要件を満たすべきであり、例えば、コークス塊は、鉄鋼を製造するための高炉での使用において必要とされる充分な機械的強度を有するべきであり、又はバイオ炭塊は、シリコンを製造するための電気アーク炉での使用において必要とされる充分な機械的強度を有するべきである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の範囲は、上記で引用した例によって限定されるべきではまったくない。大粒子の方が微粉よりも高い商業的価値を有することから微粉を大粒子とするべきである他の例を引用することができる。
【0009】
バイオマスの高温での熱処理から、バイオクルード(bio-crude)を製造することができ、バインダーとして、又はバインダー中の成分として使用することができる。バイオクルードの典型的な種類は、バイオマスの熱分解からのバイオオイルであり、バイオ炭と称する固体の副産物も同時に生成する。加熱すると、バイオオイルは、揮発性物質が除去されて固化し得る。バイオオイルは、反応性構造及び官能基を豊富に含有しており、これらは、鉱物と反応して、鉱物とバイオクルードから誘導される構成成分との間に非常に強い結合をもたらす結果となり得る。バイオマスの水熱液化も、反応性バイオクルードを生成し得る。バイオクルードは、冶金コークス微粉及び/又はバイオ炭微粉などの他の材料のためのバインダーとしても作用し得る。
【0010】
有機バインダーは、高い温度で分解して、可燃性の揮発性物質を放出し得る。還元体として炭素を使用することは、有用な発熱量のガスであるCOなどのガスも生成し得る。これらの揮発性物質及びガスのエネルギー価の回収は、プロセス全体のエネルギー効率にとって重要である。
【0011】
有機バインダー中の炭素は、高炉中又は類似のプロセスで鉄鉱石を還元して鉄とするための還元体の場合を例とする、鉱物を改質するプロセスで必要とされる炭素の一部にもなり得る。
【0012】
したがって、バイオマスから有機バインダーを開発すること及び/又は例えば鉄鉱石を鉄に還元する場合に、複合体中で鉱石(又は結合されるべき他の材料)と密接に接触した炭素を高温プロセスへ送ることが求められている。
【0013】
本発明の第一の態様によると、固体複合体を製造する方法が提供され、この方法は:
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成された、高温で固化することができるバイオクルードを提供すること;
バイオクルードを固体又はペーストと混合して、グリーン複合体を形成すること;及び
グリーン複合体を加熱して、固化した固体複合体を製造すること、
を含む。
【0014】
本発明の実施形態は、著しい利点を有する。特に、製造された固体複合体は、比較的高い密度及び強度を有することができる。さらに、製造された固体複合体は、比較的低い硫黄含有量を有することができ、及びバイオクルードは、望ましくない不純物を複合体へ持ち込み得ない。さらに、バイオクルードは、例えばその後の製鋼プロセスにおいて、フラックス剤として作用することができる有用な化学種を含有し得る。
【0015】
「バイオマス」の用語は、本明細書で用いられる場合、生きている有機体又は最近まで生きていた有機体から得られたいかなる物質をも意味する。バイオマスは、バイオマスの潜在的なカーボンニュートラル性及びバイオマスの他の特性のために、有機バインダー製造のための好ましいフィードストックであるが、他の炭素質フィードストックも、フィードストックとして用いられてよく、それには、様々な炭素含有再生可能フィードストック及び非再生可能フィードストックが含まれ、限定されないが、石炭、固形廃棄物、又はこれらの混合物が挙げられる。固形廃棄物としては、限定されないが、農業廃棄物、林業廃棄物、及び家庭/都市固形廃棄物、又は炭素質フィードストックの処理からの残渣が挙げられ得る。実際、多くの固形廃棄物は、広い意味でのバイマスと見なされる。あるいは、バイオマスは、多くの固形廃棄物において少なくともかなりの量を占める構成成分である。
【0016】
「熱処理」の用語は、本明細書で用いられる場合、その範囲内に、追加の物質の存在下又は非存在下における高温でのいかなるプロセスも含むことを意図している。例えば、不活性、酸化性、又は還元性の雰囲気下でのバイオマスの熱分解は、熱処理プロセスである。亜臨界水、臨界水、又は超臨界水中でのバイオマスの水熱処理は、別の熱処理プロセスである。
【0017】
「バイオクルード」の用語は、本明細書で用いられる場合、バイオマス又は他の炭素質フィードストックの熱処理からのいかなる液体又はペースト生成物をも含むことを意図している。バイオマスの熱分解からのバイオオイルは、典型的なバイオクルードである。
【0018】
「バイオ炭」(又は「炭」)の用語は、本明細書で用いられる場合、バイオマス又は他の炭素質フィードストックの熱処理からの固体生成物を含むことを意図している。
「複合体」の用語は、本明細書で用いられる場合、その範囲内に、特性の異なる2つ以上の成分材料から成るいずれの材料をも含むことを意図している。「グリーン複合体」は、最終固体複合体を製造するための前駆体の混合物を意味する。グリーン複合体は、ペレット及び球の形状、又は他のいかなる規則的若しくは不規則的形状であってもよく、並びにいかなるサイズであってもよい。
【0019】
本発明の方法は、広く様々な組成及び特性を有する固体複合体を製造するために、バイオクルードと固体との広範な相対比にわたって行われてよい。
一つの実施形態では、固体は、鉄鉱石又はシリカなどの鉱物を含む。例えば、固体は、マグネタイト鉄鉱石であってよい。
【0020】
別の実施形態では、固体は、固体炭素材料を含む。例えば、固体は、冶金コークス、バイオ炭、又は炭であってよい。
1つの実施形態では、固体は、広範囲の粒子サイズを有してよい。例えば、選鉱されたマグネタイト鉄鉱石微粉が、単独で、又はマグネタイト鉱石塊と一緒に、バイオオイルと混合されて、グリーン複合体が製造されてよい。固体は、水が挙げられるがこれに限定されない不純物を含有していてよい。
【0021】
さらなる実施形態では、固体は、水又は他の化学物質を含むスラリーの形態であってもよい。
実施形態では、固体は、混合された固体を含む。例えば、固体は、マグネタイト鉄鉱石とヘマタイト鉄鉱石との混合物に他の不純物が一緒に含まれているものであってよい。別の選択肢として、固体は、鉱石とバイオ炭との混合物、又は鉱石と冶金コークスとの混合物であってもよい。
【0022】
さらなる実施形態では、グリーン複合体は、複合体のその後の処理の補助とするために、石灰などのフラックス剤を含んでいてよい。
なおさらなる実施形態では、グリーン複合体は、複合体の固化を加速するために、触媒を含むさらなる化学物質を含んでいてもよい。
【0023】
グリーン複合体を加熱する工程は、100~600℃、好ましくは150~450℃、さらにより好ましくは200~350℃の温度までグリーン複合体を加熱することによって行われてよい。加熱は、不活性、又は還元性、又は酸化性の雰囲気下で行われてよい。
【0024】
別の実施形態では、グリーン複合体を加熱する工程は、不活性、又は還元性、又は酸化性の雰囲気下で、グリーン複合体を600℃を超える温度まで加熱することによって行われてよい。
【0025】
実施形態では、グリーン複合体を加熱する工程は、段階的に行われる。例えば、温度は、異なる加熱速度で、及び選択された温度レベルでの様々な保持時間で、次第に上昇されてよい。
【0026】
方法は、特に複合体中のバイオクルード由来の炭素質構成成分を炭化するためであるが、これに限定されない目的で、高い温度で、好ましくは600℃超、より好ましくは800℃超、さらにより好ましくは1000℃超で、複合体を炭化するさらなる工程を含んでよい。
【0027】
方法は、複合体中の固体を少なくとも部分的に溶融又は再結晶させて、より良好な機械的強度を実現するために、空気を例とする酸化剤との反応を通して複合体を燃焼するさらなる工程を含んでよい。
【0028】
本発明の第二の態様によると、固体複合体を製造する方法が提供され、この方法は:
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成された、高温で固化することができるバイオクルードを提供すること;
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成されたバイオ炭を提供すること;
バイオクルード及びバイオ炭を固体又はペーストと混合して、グリーン複合体を形成すること;及び
グリーン複合体を加熱して、固化した固体複合体を製造すること、
を含む。
【0029】
グリーン複合体中にバイオ炭を含めることによって、複合体の炭素含有量を有利に増加させることができる。バイオ炭及びバイオクルードは、同一又は異なる炭素質フィードストックの熱処理から製造されてよい。
【0030】
本発明の第三の態様によると、固体複合体を製造する方法が提供され、この方法は:
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成された、高温で固化することができるバイオクルードを提供すること;
バイオクルードを固体又はペーストと混合して、グリーン複合体を形成すること;
グリーン複合体を加熱して、固化した固体複合体を製造すること;及び
グリーン複合体の加熱から放出された揮発性物質を回収すること、
を含む。
【0031】
本発明の第四の態様によると、固体複合体を製造する方法が提供され、この方法は:
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成された、高温で固化することができるバイオクルードを提供すること;
バイオマスを含む炭素質フィードストックの熱処理から形成されたバイオ炭を提供すること;
バイオクルード及びバイオ炭を固体又はペーストと混合して、グリーン複合体を形成すること;
グリーン複合体を加熱して、固化した固体複合体を製造すること;及び
グリーン複合体の加熱から放出された揮発性物質を回収すること、
を含む。
【0032】
バイオ炭及びバイオクルードは、同一又は異なる炭素質フィードストックの熱処理から製造されてよい。
本発明の第三又は第四の態様の実施形態では、揮発性物質を回収する工程は、揮発性物質を燃焼装置に供給して、グリーン複合体を加熱するための熱エネルギーを提供することを含む。
【0033】
本発明の第三又は第四の態様のさらなる実施形態では、揮発性物質を回収する工程は、揮発性物質を冷却して、液体と非凝縮性ガス混合物とを形成することを含む。液体又は非凝縮性ガス混合物は、個別に又は一緒に、グリーン複合体の加熱のために又は他の目的のために必要とされる熱エネルギーを供給する燃料として用いられてよい。
【0034】
本発明の第三又は第四の態様の具体的な実施形態では、回収された揮発性物質は、発電のための燃料として用いられる。この目的のために、ガスエンジン又はガスタービンの使用を例とする、現時点で又は将来的に知られる適切ないかなる発電方法が用いられてもよい。
【0035】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら、単なる例として以降で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態に従う固体複合体を製造する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態は、固体複合体を製造する方法に関する。固体複合体を製造するために、バイオマス又は他の炭素質フィードストック又はこれらの混合物の熱処理を通して形成されたバイオクルードが提供され、バイオクルードは、加熱によって固化することができる。必ずしも特定のいかなる理論にも同意するものではないが、固化プロセスは、バイオクルードからの水及び軽質化学種の蒸発に加えて、バイオクルード中の反応性化学種及び官能基が関与し、グリーン複合体の一部を形成する固体も関与する複雑な化学反応を含む。本明細書における実施形態の記載は、バイオマスの熱分解からのバイオオイルに焦点を当てているが、本発明のバイオクルードは、バイオオイルだけに限定されない。現時点で知られている又は将来的に発明されることになる様々なバイオマス熱分解技術が、バイオオイルの製造に用いられてよい。例えば、破砕熱分解技術(PCT/AU2011/000741)は、本発明の方法を用いた複合体の製造のためのバイオオイルの製造に、非常に良好に働く。熱分解プロセスは、一般的に、固体副産物のバイオ炭、及び非凝縮性ガスを含む気体副産物も生成する。バイオ炭も、本発明の固体複合体の製造のためのフィードストックとして用いることができる。
【0038】
バイオオイルは、ほぼ液体であるが、当業者であれば、バイオオイルがコロイド及びさらには固体(バイオ炭を含む)さえ含有する場合があることは認識するであろう。水に加えて、バイオオイルは、広く様々な化学官能基、特に酸素含有官能基を有する数多くの有機化合物を含有し得る。バイオオイルは、溶解した無機物及び無機固体も含有する場合があり、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウムの塩などである。それらは、複合体をフィードストックとして用いるその後のプロセスにおいて、有益な効果を有し得る。例えば、それらは、鉄鋼産業における高炉でのフラックス剤として作用し得る。いくつかの熱分解プロセスでは、バイオオイルは、ペースト又はスラリーの形態で製造される。バイオオイル及びバイオ炭のスラリーは、いくつかの熱分解プロセスで直接製造される。
【0039】
バイオオイルが固体と混合されて、グリーン複合体が製造される。実施形態では、バイオオイルがマグネタイト鉄鉱石と混合されて、バイオオイル及びマグネタイトを含むグリーン複合体が製造される。別の実施形態では、バイオオイル及びバイオ炭がマグネタイト鉱石と混合されて、グリーン複合体が製造される。さらなる実施形態では、様々な追加の化学種も混合物に添加されて、異なる特性を有するグリーン複合体が製造される。
【0040】
さらなる実施形態では、バイオオイルが炭素材料と混合されて、グリーン複合体が製造される。炭素材料は、冶金コークス又はバイオ炭又は炭素質フィードストックの熱処理からのいかなる固体であってもよい。触媒を含む追加の化学物質も、グリーン複合体の成分であってよい。
【0041】
混合プロセスは、様々な方法で行われてよく、グリーン複合体は、様々な形状で製造されてよい。バイオオイル及び固体は、必要とされる形状のグリーン複合体へプレス加工されてよい。実施形態では、ディスクペレタイザーが用いられて、バイオ炭又は他のいずれかの成分化学物質も含んでいてよいバイオオイル及び鉄鉱石が混合、回転されて、球形状とされる。さらなる実施形態では、ドラムペレタイザーが用いられる
バイオオイルと、鉄鉱石と、バイオ炭及び追加の化学物質を含む他の成分との複合体中での相対比は、複合体を用いるその後のプロセスの必要性に合うように、広い範囲にわたって様々であってよい。
【0042】
グリーン複合体は、次に、加熱されて、最終固体複合体品が製造される。加熱は、不活性、還元性、又は酸化性の雰囲気下、複合体を固化させる様々な方法で行われてよい。
加熱の過程では、数多くの物理的プロセス及び化学的反応が起こり得る。水分、例えばバイオオイル中又は鉄鉱石中の水分は、蒸発することになる。バイオオイル中の軽質構成成分の一部も、蒸発することになる。温度に応じて、バイオオイル中の反応性官能基も様々な反応を、特にクラッキング反応及び重合反応を受けて、さらなるより軽質な構成成分及びより重質な構成成分が生成されることになる。重質構成成分は、固体(例:鉱石)粒子を一緒に結合するために特に重要である。
【0043】
必ずしも特定のいかなる理論にも同意するものではないが、バイオオイル中の構成成分は、固体(例:鉄鉱石、バイオ炭、又は他の炭素材料)とも反応して、バイオオイル構成成分と鉄鉱石との間にいくつかの新しい化学結合を形成する可能性がある。この種類の化学結合は、物理的な相互作用/力よりも非常に強く、複合体品の機械的強度に大きく寄与している。
【0044】
グリーン複合体の加熱は、様々な方法で行われてよい。実施形態では、グリーン複合体は、少なくとも一部のバイオオイル構成成分を燃焼させるために、酸化性雰囲気下で加熱される。燃焼は、グリーン複合体を高い温度まで加熱して、鉄鉱石のある程度の溶融/焼結を引き起こすことになり、その場合、再結晶化又は他の物理化学的プロセスが発生して、高い機械的強度の複合体が得られる結果となり得る。燃焼と同時に、一部の鉄鉱石は、少なくとも部分的に還元もされ得る。燃焼プロセスは、グリーン複合体上、又は最終複合体品上で行われてよい。
【0045】
バイオオイル及び鉄鉱石から誘導された複合体、並びに/又はバイオオイル及び冶金コークスから誘導された複合体は、鉄鋼産業における高炉へのフィードストックの一部として用いることができる。バイオオイル及び固体バイオ炭(又は他の種類の炭)から誘導された複合体は、シリコンを製造するための電気アーク炉へ供給することができる。
【0046】
グリーン複合体の加熱から放出される揮発性物質は、数多くの燃焼性構成成分を含有し得る。加熱が比較的低い温度(例:約600℃未満)で行われる場合、これらの揮発性構成成分の一部は、凝縮されて、液体燃料及び非凝縮性ガス燃料が製造され得る。
【0047】
鉄鉱石は、放出された揮発性物質を改質して軽質ガスとするための非常に優れた触媒であり得る。したがって、具体的な実施形態では、本発明における複合体製造が用いられて、発電プロセスと一体化され、この場合、グリーン複合体の加熱から放出される揮発性物質及びガスが、発電装置を用いた発電のために用いられる。これらの発電装置の例としては、限定されないが、ガスエンジン、ガスタービン、及び燃料電池が挙げられる。
【0048】
ここで図1を参照すると、本発明の具体的な実施形態に従う方法100を説明するフローチャートが示される。
第一の工程102では、バイオマスの熱処理を通して形成され、固化することができるバイオクルードが提供される。この特定の実施形態では、バイオクルードは、バイオマスの熱分解から得られたバイオオイルである。
【0049】
工程104では、バイオ炭が提供される。バイオオイル及びバイオ炭は、一般的に、同じバイオマスの熱分解から同時に製造されるが、バイオオイル及びバイオ炭は、異なるバイオマスから、異なる熱処理プロセスを用いて製造されてもよい。
【0050】
熱分解プロセスの特定の例は、PCT国際特許出願PCT/AU2011/000741にさらに詳細に記載されている。
次の工程106では、バイオオイル及びバイオ炭は、固体と一緒に混合されて、グリーン複合体が形成される。この特定の実施形態では、固体は、マグネタイト鉄鉱石、特に、選鉱後のマグネタイト鉄鉱石微粉である。バイオ炭及び鉄鉱石の代わりに、固体は、シリコン製造プロセスにおけるバイオ炭の製造及び調製の過程で生成されるバイオ炭微粉であってもよい。さらなる実施形態では、シリカが添加されてグリーン複合体が形成されてよく、それによって、最終複合体品中のシリカは、炭素と密接に接触した状態となって、電気アーク炉中でシリカが還元されてシリコンが形成されることが促進される。混合は、室温で行われてよい。この特定の例では、混合を行って所望される形状が形成される。グリーン複合体は、プレス加工を通して形成されてもよい。
【0051】
次に、グリーン複合体は、工程108で、バイオオイルが複雑な物理的及び化学的プロセスを受けて固化する温度まで加熱される。バイオオイルからの反応生成物を含むC含有構成成分とマグネタイト鉱石との間の結合は、物理的な力及び化学的な結合を含む。
【0052】
工程110では、バイオオイルが関与する反応から放出された揮発性物質が、そのエネルギー価を抽出するために回収される。それらはまた、他の化学プロセスのための化学的フィードストックとしても用いられ得る。
【0053】
以下の特許請求の範囲において、及び本発明の上述の記載において、明示された言語又は必要な暗示に起因して文脈上他の解釈が必要である場合を除き、「含む(comprise)」の語、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」などの変化形は、包括的な意味で用いられるものであり、すなわち、記載された特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態において、さらなる特徴の存在又は付与を除外するものではない。
図1