(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】溶解性単位用量膜構造物を製造するための分配方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20231012BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231012BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20231012BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/70
A61K31/485
A61K31/437
(21)【出願番号】P 2021521743
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 US2019039231
(87)【国際公開番号】W WO2020006073
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521001386
【氏名又は名称】エイアールエックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】バーンハート,スコット・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ラカトシュ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,ウィリアム・シー
(72)【発明者】
【氏名】アノヌエボ,アブラハム
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/116770(WO,A1)
【文献】特開2017-001956(JP,A)
【文献】特表2013-540161(JP,A)
【文献】特表2008-538782(JP,A)
【文献】特表2013-537200(JP,A)
【文献】特表2006-528192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性単位用量膜構造物を形成する方法であって、
粘膜付着性ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップであり、粘膜付着性ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む、ステップ、
粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除くことにより、粘膜付着性膜基材を形成するステップ、
第1の活性層用の組成物を形成するステップであり、組成物がポリマーマトリックスを含み、ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、活性成分、および液体キャリアを含み、第1の活性層用の組成物は、せん断速度1秒
-1での粘度が1cpsから300cpsの間である、ステップ、
第1の活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、個々の体積を有する複数の堆積物として堆積させるステップ、ならびに
堆積させた個々の体積を有する複数の堆積物から液体キャリアを取り除いて、粘膜付着性基材上に複数の第1の溶解性膜活性層を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
第1の活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、複数の、0.1μLから5,000μLの間の範囲の個々の体積を有する堆積物として堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の活性層用の組成物を、複数の、0.1μLから50μLの間の範囲の個々の体積を有する堆積物として堆積させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粘膜付着性基材上に堆積させる第1の活性層用の組成物の粘度が、せん断速度1秒
-1で25cpsから50cpsの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の活性層用の組成物は、堆積させる時点で、固形分が少なくとも5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
粘膜付着性ポリマーマトリックスが、活性成分を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
粘膜付着性ポリマーマトリックスの活性成分が、第1の活性層用の組成物の活性成分とは組成的に異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2の活性層用の組成物を形成するステップであり、第2の活性層用の組成物が:
ポリマーマトリックスであって、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせを含むポリマーマトリックス;活性成分;および液体キャリアを含む、ステップ、
第2の活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、個々の体積を有する複数の堆積物として堆積させるステップ、ならびに
第2の活性層用の組成物の、堆積させた個々の体積を有する複数の堆積物から、液体キャリアの少なくとも一部を取り除いて、粘膜付着性基材を覆う複数の第2の溶解性膜活性層を形成するステップ
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の第2の溶解性膜活性層が、粘膜付着性膜基材の、複数の第1の溶解性膜活性層と同じ面に形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数の第2の溶解性膜活性層が、粘膜付着性膜基材上で、複数の第1の溶解性膜活性層から空間的に離れている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の第2の溶解性膜活性層が、粘膜付着性膜基材の、複数の第1の溶解性膜活性層とは反対の面に形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
複数の第2の溶解性膜活性層の活性成分が、複数の第1の溶解性膜活性層の活性成分とは組成的に異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
粘膜付着性膜基材および複数の第1の溶解性膜活性層のポリマーマトリックスが、少なくとも1種の
共通の水溶性ポリマー、少なくとも1種の水分散性ポリマー、少なくとも1種の水膨潤性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第3の活性層用の組成物を形成するステップであり、第3の活性層用の組成物が、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、活性成分、および液体キャリアを含む、ポリマーマトリックスを含む、ステップ、
第3の活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、個々の体積を有する第3の複数の堆積物として堆積させるステップ、ならびに
第3の活性層の組成物の、堆積させた個々の体積を有する複数の堆積物から、液体キャリアの少なくとも一部を取り除いて、粘膜付着性膜基材を覆う複数の第3の溶解性膜活性層を形成するステップ
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
粘膜付着性組成物が、チキソトロピー性ペーストである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
粘膜付着性膜基材が、膜の連続ウェブとして形成され、次いで、粘膜付着性膜基材上に複数の第1の溶解性膜活性層を形成した後、より小さな個々の膜に分けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1の活性層用の組成物を堆積させるステップが、噴射システムを用いて堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の活性層用の組成物を堆積させるステップが、圧電型または空気作動型のバルブによって堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
活性成分が、ブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
溶解性単位用量膜構造物を形成する方法であって、
粘膜付着性ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップであり、粘膜付着性ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む、ステップ、
粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除くことにより、粘膜付着性膜基材を形成するステップ、
活性層用の組成物を形成するステップであり、組成物は、固体分が少なくとも5重量%であり、せん断速度1秒
-1での粘度が1cpsから300cpsの間であり、活性層用の組成物が、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、活性成分、および液体キャリアを含む、ステップ、
活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、圧電型または空気作動型のバルブを有する噴射システムによって、それぞれ0.1μLから50μLの間の個々の体積を有する複数の堆積物として分配するステップ、
堆積させた個々の体積を有する複数の堆積物から液体キャリアを取り除いて、粘膜付着性基材上に複数の溶解性膜活性層を形成するステップ、ならびに
粘膜付着性膜基材を切断して、複数の溶解性膜活性層の少なくとも一部を分離し、それによって個々の単位用量を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項21】
活性成分が、アポモルヒネを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
粘膜付着性膜基材を切断して、複数の第1の溶解性膜活性層の少なくとも一部を分離し、それによって個々の単位用量を形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2018年7月29日に発明の名称「溶解性単位用量膜構造物を製造するための分配方法(Dispensing Method for Producing Dissolvable Unit Dose Film Constructs)」で出願された米国特許仮出願第62/692003号および2018年7月28日に発明の名称「溶解性単位用量膜構造物を製造するための分配方法(Dispensing Method for Producing Dissolvable Unit Dose Film Constructs)」で出願された米国特許仮出願第62/691327号に基づく利益および優先権を主張するものであり、それらの全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本出願は、薄膜の分野を対象とし、より詳細には、薬物送達で用いられる溶解性単位用量膜構造物を製造する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
[0003]速溶性薬物送達システムは、1970年代後半に、従来の経口固体剤形を飲み込むのが困難な小児科の患者、高齢の患者および他の患者に対して、錠剤、カプセルおよびシロップの代替品として初めて開発された。この必要性に応じて、様々な口腔内崩壊錠(ODT)方式が市販化された。大部分のODT製品は、唾液に曝されると、1分未満で溶解して、より容易に飲み込むことが可能な溶液を形成するように配合された。
【0004】
[0004]より最近では、溶解性経口薄膜(OTF)が、糖剤および口腔ケアの市場において、ブレスストリップの形態で出現した。これらの製品は、ビタミンおよびパーソナルケア製品を送達するために、後には、薬剤を含む他の活性成分も送達するために、消費者によって広く許容される形態となった。
【0005】
[0005]製薬会社および消費者は、同様に、従来の医薬品形態、例えば、液体、錠剤およびカプセルの、実用的でかつ許容される代替品として、OTFを採用した。OTFは、水または計測器を必要とせず、便利でかつ携帯可能な、安全で有効な方式の、速く正確な投薬をもたらす。OTFは、典型的には郵便切手のサイズであり、1種または複数種の活性薬剤成分(API)の急速な放出のために、わずか数秒のうちに患者の舌の上で崩壊する。より広くは、薄膜の使用は、口腔内でのおよび他の粘膜界面を介した、広範囲の経粘膜薬物送達のために製造され使用される様々な製品を含むように発展した。
【0006】
[0006]薄膜による薬物送達に対する動向にもかかわらず、多くの欠点および不利な点が、こうした製品に依然として存在し、当分野において未だ満たされていない様々な市場の要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]例示的な実施形態は、現在存在するが満たされていない要求に対処する、経口および経粘膜の薬物送達用の膜ならびにその製造を対象とし、膜としては、限定されるものではないが、溶解性経口薄膜、溶解性経粘膜薄膜が挙げられる。より詳細には、例示的な実施形態は、溶解性単位用量膜構造物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]例示的な一実施形態において、溶解性単位用量膜構造物は、粘膜付着性ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップであり、粘膜付着性ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む、ステップによって製造される。この方法は、粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除くことにより、粘膜付着性膜基材を形成するステップ;活性層用の組成物を形成するステップであり、組成物がポリマーマトリックスを含み、活性層組成物用のポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、活性成分、および液体キャリアを含み、活性層用の組成物は、せん断速度1秒-1での粘度が少なくとも25cpsである、ステップを更に含む。この方法は、活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、複数の個々の体積として堆積させるステップ、および堆積させた複数の個々の体積から液体キャリアを取り除いて、粘膜付着性基材上に複数の溶解性膜活性層を形成するステップを更に含む。
【0009】
[0009]別の例示的な実施形態において、溶解性単位用量膜構造物を形成する方法は、粘膜付着性ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップを含む。粘膜付着性ポリマーマトリックスは、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む。この方法は、粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除くことにより、粘膜付着性膜基材を形成するステップ;活性層用の組成物を形成するステップであり、組成物は、固形分が少なくとも5重量%であり、せん断速度1秒-1での粘度が300cpsから2,000cpsの間である、ステップを更に含む。活性層用の組成物は、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせならびに活性成分および液体キャリアを含む。この方法は、活性層用の組成物を、粘膜付着性基材上に、圧電型または空気作動型のバルブを有する噴射システムによって、それぞれ0.1μLから50μLの間の体積を有する複数の個々の体積として分配するステップ;堆積させた複数の個々の体積から液体キャリアを取り除いて、粘膜付着性基材上に複数の溶解性膜活性層を形成するステップ;および粘膜付着性膜基材を切断して、複数の溶解性膜活性層の少なくとも一部を分離し、それによって個々の単位用量を形成するステップを更に含む。
【0010】
[0010]一部の例示的な実施形態において、活性層用の組成物は、粘膜付着性基材上に、複数の、0.1μLから5,000μLの間の範囲の個々の体積として、例えば、複数の、0.1μLから50μLの間の範囲の個々の体積として堆積させ;粘膜付着性基材上に堆積させる活性層用の組成物は、せん断速度1秒-1での粘度が25cpsから5,000cpsの間、例えば、せん断速度1秒-1での粘度が300cpsから2,000cpsの間であり;および/または、活性層用の組成物は、堆積させる時点で、固形分が少なくとも5重量%である。
【0011】
[0011]ある実施形態において、同じ活性成分を含有する2種の層または異なる活性成分を含有する2種の層などの活性層は、粘膜付着性基材の相対する両面に施される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]本開示の一実施形態による溶解性単位用量膜構造物を製造するための、例示的なシステムを示す図である。
【
図2】[0013]本開示の一実施形態による、ウィンドウフレーム効果を有する溶解性単位用量膜構造物を示す図である。
【
図3】[0014]本開示の一実施形態による、異なるサイズの溶解性活性層を有する溶解性単位用量膜構造物を示す図である。
【
図4】[0015]
図4aは、本開示の一実施形態による、粘膜付着性基材の第1の面に第1の溶解性活性層を有する溶解性単位用量膜構造物を示す図である。[0016]
図4bは、本開示の一実施形態による、粘膜付着性基材の第2の面に第2の溶解性活性層を有する溶解性単位用量膜構造物を示す図である。
【
図5】[0017]本開示の一実施形態による、粘膜付着性基材に複数の別個の活性層を有する溶解性単位用量膜構造物を示す図である。
【
図6】[0018]実施例の比較による、時間に対してプロットされた累積バルデナフィル濃度のグラフである。
【
図7】[0019]実施例の比較による、時間に対してプロットされた累積ブプレノルフィン濃度のグラフである。
【
図8】[0020]実施例の比較による、時間に対してプロットされた累積ブプレノルフィン濃度のグラフである。
【
図9】[0021]細いチップを通す容積式を用いた粘膜付着性基材への堆積を模式的に示す図である。
【
図10】[0022]噴射システムを用いた粘膜付着性基材への堆積を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0023]可能な場合、同じ部分を示すために、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。
[0024]薬物送達に用いられる溶解性単位用量膜構造物を製造する方法が提供される。本開示の実施形態は、本明細書で開示された特徴の1つまたは複数を含まない方法と比較して、多数の活性成分が、本来なら互いに非両立性であったとしても、共通のキャリアマトリックス上の離れた位置にそれらの活性成分を別個に堆積させることによって、それらの活性成分を単一の溶解性単位用量膜構造物に組み込む機能、活性成分が、本来なら溶解性膜キャリアと非両立性であったとしても、共通のキャリアマトリックス上の離れた位置に活性成分を別個に堆積させることによって、高濃度の活性成分を単一の溶解性単位用量膜構造物に堆積させる機能、またはそれらの組み合わせを含む。
【0014】
[0025]
図1~
図5を参照すると、一実施形態において、溶解性単位用量膜構造物10を形成する方法は、ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップであり、ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む、ステップを含む。粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除くことにより、溶解性粘膜付着性基材20を形成する。
【0015】
[0026]基材20上に溶解性活性層12をもたらすための、ポリマーマトリックス、活性成分および液体キャリアを含む、溶解性組成物が形成される。基材20と同様に、溶解性活性層12用のポリマーマトリックスは、膜形成マトリックスであり、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせを含む、生物学的に適合した液体ベースの膜形成マトリックスである。活性層12を形成する組成物用のポリマーは、粘膜付着性基材20を形成するのに用いられるものと、同じであってもよく、または異なってもよい。活性層12を形成するための溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上に、複数の個々の投与量単位として堆積させ、液体キャリアの少なくとも一部を取り除いて、複数の溶解性活性層12が形成される。
【0016】
[0027]一部の実施形態において、基材20の粘膜付着性組成物はまた、活性成分を含むこともできる。粘膜付着性組成物の活性成分は、活性層12を形成する溶解性組成物の活性成分と同じであってもよく、またはその層の活性成分と組成的に異なってもよい。
【0017】
[0028]一実施形態において、粘膜付着性基材20は、複数の活性層12が施される連続ウェブとして形成され、その後、後のパッケージングのために、個々の単位10に切断される。別の実施形態において、粘膜付着性基材20は、活性層12を粘膜付着性基材20に施す前に個々の単位10に切断される連続ウェブとして形成される。更に別の実施形態において、粘膜付着性組成物は、チキソトロピー性ペーストをキャリア上にステンシルするなどして、粘膜付着性基材20を個々の単位として直接もたらすように形成される。
【0018】
[0029]溶解性膜製造の公知の方法は、液体製剤を、連続した基材(例えば、剥離剤コーティングを有しても有さなくてもよい、紙またはポリエステルライナー)上に、幅広く長いロール形態の連続した膜、シートまたはウェブとしてキャストして、マスターロールと称されることもあるものを形成するステップを伴う。この製造プロセスは、液体製剤を乾燥させて、溶媒(水性および/または非水性)を取り除いて、基材上に薄膜を生じさせるステップを含む。こうして形成されたマスターロールは、次いで、ロールスリッティングと個々の単位用量へのダイカットとの組み合わせによって、より小さな単位用量に変換され、それらの用量は、製造基材から製品の最初のパッケージングへ移される。
【0019】
[0030]より小さな単位用量へと後に切断されるキャストシートとして溶解性薄膜を形成する従来の方法とは異なり、本発明の溶解性単位用量膜構造物10は、活性液体製剤を、連続したポリマー膜マトリックス上にまたは別個の膜単位上に直接堆積させ、いずれの場合も個々の単一の単位用量膜を形成することによって、製造することができる。数ある利点の中でも、個々に形成された用量の使用によって、従来のマスターロール形成においてコーティング厚さのばらつきの結果としてウェブ全体にわたって起こり得る、各溶解性単位用量膜構造物10の間の活性成分のばらつきを制限することができる。これは、相対的により正確でかつ一貫した体積の製剤および活性成分を堆積させ、より小さな規模の単一の単位用量を直接形成することを確実にするのに役立つことができる。
【0020】
[0031]ある実施形態において、活性成分を膜に単位用量形態で堆積させるステップは、本明細書により詳細に記載するように、直接分配によって実現される。
[0032]大まかには、活性成分を含む溶解性組成物を粘膜付着性基材20上に単位用量形態で堆積させる方法は、活性層12を形成するのに用いる溶解性組成物の、少なくとも0.1μLから約5,000μLまで、一部の実施形態では約500μLまで、例えば約100μLまで、約50μLまでなどの小さな体積を、粘膜付着性基材20の表面に直接分配するステップを採用することができる。一部の実施形態において、分配される量は、0.1μLから約10μLの間、例えば、約0.1μL、0.5μL、1μL、2μL、3μL、4μL、5μLまたは任意の他の量から、約10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、100μLまで、更に多く約500μLまで、または一層多く5,000μLまで、ならびにこれらのうちの任意のあらゆる範囲または部分範囲である。一部の実施形態において、体積全体は、単一のステップで分配されるが、全体積が10μLよりも多い場合は、より小さな体積を、隣接しておよび/または互いに重ねて多数繰り返して順次分配して、活性層12を形成することが望ましい場合がある。一部の実施形態において、それぞれの分配体積の量を減らして、全体としてより多くの分配動作で同じ単位用量を達成することにより、より大きな体積でのより少ない分配動作と比較して、単位用量の量の正確性および繰り返し精度が増す。理論に捉われるものではないが、より多数の分配動作により、それぞれの分配体積におけるランダムなばらつきを平均することができると考えられる。
【0021】
[0033]対照的に、従来の印刷技術で用いられる従来のインクジェット印刷は、2~20pL程度の液滴体積を分配し、したがって、こうした小さな液滴サイズを作るために極めて低い粘度を要する。本明細書に記載するような膜形成におけるこうした従来技術の使用は、商業生産には非実用的であり、更に、用いることができる活性成分および他の固形含有物の量を制限することがある。例示的な実施形態に従って施される組成物は、典型的には、固形分が5重量%以上である高粘度ブレンド、例えば、固形分10重量%以上、例えば、固形分15重量%以上である。
【0022】
[0034]活性成分を含む溶解性組成物は、ディスペンサーヘッドの貯蔵槽またはディスペンサーヘッドに連結された貯蔵槽から基材の表面へ液体を動かす力によって、ディスペンサーヘッドから分配することができる。これは、有利なことに、基材の上方に設置された分配ヘッドを通して噴射することによって実現することができる。基材は、連続のポリマー膜シート、単一の単位ポリマー膜、または、活性成分を含む溶解性組成物が堆積する表面と、最終の溶解性単位用量膜構造物10の一部を形成し転写シートの必要性を省く表面の、両方の役割を果たす他の材料であってもよい。ディスペンサーヘッドは、必須ではないが典型的には、針状チップである。
【0023】
[0035]噴射装置は、Aguilar等の米国特許第9,789,511号に記載されており、その全体は、本明細書に完全に再記載されるかのごとく参照によって援用する。一般に、「噴射装置」は、ディスペンサーノズルから材料の液滴を放出、すなわち「噴射」して、基材に着地させる装置であり、このとき、液滴は、基材に接触する前に、ディスペンサーノズルから離れる。したがって、噴射プロセスにおいて、分配された液滴は、ディスペンサーと基材との間を「飛行」し、ディスペンサーと基材との間の距離の少なくとも一部では、ディスペンサーおよび基材のいずれにも接触していない。米国特許第9,789,511号、第1欄、12~21行。噴射装置および噴射プロセスは、Abernathy等の米国特許第8,257,779号に更に記載されており、その全体は、本明細書に完全に再記載されるかのごとく参照によって援用する。
【0024】
[0036]活性成分を含む溶解性組成物は、圧電型または空気作動型のバルブを用いた噴射システムによって分配することもできる。圧電型システムは、拡張および収縮する圧電材料に電荷を加えて、活性成分を含む溶解性組成物の流れを制御することを伴うのに対し、空気作動型システムは、空気圧を用いてバルブを制御する。この非接触型の分配は、ディスペンサーヘッドがZ軸に動いて基材に接触することを必要とせずに活性成分を含む溶解性組成物を分配し、それによって、より速くより正確なプロセスが可能になるという機能によって定義される。周波数1~3,000Hzが、必須ではないが典型的な、堆積プロセスで用いられるバルブの操作範囲である。圧電作動型バルブは、MacIndoe等の米国特許第10,022,744号に記載されており、その全体は、本明細書に完全に再記載されるかのごとく参照によって援用する。
【0025】
[0037]直接分配することによって形成された、活性成分を含む溶解性組成物の堆積物の外形は、いかなる種類のものであってもよい。一部の実施形態において、外形は円い形状であってよく、これは、基材表面の表面エネルギーが均一である場合に、円柱状チップから製剤を発することによって生じる。他の実施形態によれば、正方形、長方形、または更に複雑な多角形形状を採用することができる。これは、製剤がヘッドから出てヘッドと標的の表面との間で留められて所望の形状を作り上げる、ディスペンサーヘッドを用意することによって実現することができる。このように、液体は、基材とディスペンサーヘッドとの間の隙間(典型的には、高さ約1mm)をふさぐ。したがって、基材に最も近い分配ヘッドの表面の外形が長方形である場合、長方形の堆積物が生じる。
【0026】
[0038]あるいは、単一の単位用量は、1種または複数種の分配ユニットからの、より少量での繰り返しの分配サイクルによって形成することができる。各ディスペンサーヘッドは、活性成分を含む溶解性組成物を基材に堆積させる場所を制御するロボットアームに取り付けることができる。あるいは、基材が載置されるプラットフォームは、製剤が固定のディスペンサーヘッドから分配されるときに基材を動かすために、モーターを備えることができる。これらの構成により、用量のサイズおよび形状を、必要に応じて変えることが可能になる。
【0027】
[0039]マイクロ堆積用の噴射システムのモジュール設計により、堆積の要求事項を満たすための装置の容易なカスタマイズが可能になる。分配ノズルおよび液体貯蔵槽は、様々なサイズまたは様々な外形の物と交換することができる。このモジュール設計はまた、作動装置が、活性成分と接触する部分から離れており、より容易な装置の洗浄、浄化および整備も可能にする。
【0028】
[0040]他の方法を採用して、様々な外形の溶解性組成物を分配することができることも理解される。例として、基材の表面エネルギーを調整して、分配された製剤による、より良好な湿潤をもたらすことができる。一実施形態において、得られる外形の開口部を持つマスクを用いてコロナ処理またはプラズマ処理することによって、基材表面上に、増加した表面エネルギーを持つ明確に画定された領域がもたらされ、これは、処理された範囲を覆うように流体移動を促す。別の実施形態において、分配された製剤の表面エネルギーを変更または調整して、分配中および分配後に所望の流れ特性を得ることができる。更に別の実施形態において、所望の外形のダムまたはフレームが基材表面に設けられ、続いて、溶解性組成物を、分配ヘッドから、画定された範囲内へ分配して、特定の外形および均一性を有する堆積物を生じさせる。
【0029】
[0041]噴射システムはまた、ナノリットル範囲の、繰り返し可能な小さな堆積物体積を分配する機能も有し、多数のドットを分配して、より大きな堆積物体積を得ることができる。一部の実施形態において、個々の溶解性単位用量膜構造物10を連続して製造するための、全体としての最大分配体積の、実質的な限界は、約0.5mLである。
【0030】
[0042]分配される製剤の流れ特性が、均一な膜分配を一貫して得る機能に影響を及ぼし得ることが理解される。粘膜付着性基材20上に分配される、活性層12および任意の他の層を形成するために用いられる製剤の流体粘度は、せん断速度1秒-1で、25~100,000cpsの範囲であり、ノズル外形を変えることおよび流体を加熱することによって、より高い粘度がより良好に得られ、より低い粘度は、室温での噴射技術で好まれる。この範囲内での活性製剤の特定の粘度は、生じさせる堆積物の特性に依存する様々な因子によって変動し得て、因子としては、製剤が基材に分配された後にどのように挙動することが望まれるかが挙げられ、このこと自体は、どのような特定の外形が得られるかに相関関係がある場合がある。例えば、意図された範囲を超えて広がらないように製剤を留めることは、製剤の粘度およびその表面張力ならびに基材の表面エネルギーによって影響され得る。一般に、活性層12を形成するために施される組成物の粘度は、せん断速度1秒-1で、25cpsから5,000cpsの間、例えば、せん断速度1秒-1で、約30cps、約40cps、約50cps、約75cps、約100cps、約200cps、約300cps、約400cps、約500cps、約600cps、約700cps、約800cps、約900cps、約1,000cps、約2,000cps、約3,000cps、または約4,000cps、およびこれらのうちの任意のあらゆる範囲または部分範囲、例えば、せん断速度1秒-1で500cpsから800cpsの間である。一部の実施形態において、活性層12を形成するために施される組成物の粘度は、せん断速度1秒-1で1cpsという低さであってもよいと理解される。
【0031】
[0043]パデュー研究財団(パデュー)に譲渡されたPCT/US2016/046217に、活性成分を基材上に堆積させる方法およびシステムが記載されている。活性成分は、基材上での堆積のための1種または複数種の液滴の生成のために、例えばマイクロ用量の生成のために、流体として流体分配装置へ送達される。パデューは、活性成分を含む流体を基材上に分配するための様々な方法および器具を記載しているが、含量均一性などの医薬品規格を満たす液体を、繰り返して再現性よく堆積させるために要求される、重要なプロセス制御を開示しておらず、こうしたプロセス制御を開発するためのガイダンスを示していない。パデューは、段落[0045]において、液滴の動力学が、表面張力および粘度によって影響を及ぼされることを確認しており、粘度が約20mPas未満であることが好ましいことを教示しており、液滴放出を補助するため容積式ポンプを利用している。
【0032】
[0044]製剤の粘度は、温度によって増加または減少することがあり、これは、堆積の品質に影響を及ぼし得る。製剤の分配前に保持容器で製剤を加熱することまたは加熱されたノズルを通して分配することによって、通常、液体粘度を下げ、堆積物品質を改善することができる。製剤の温度は、活性成分の分解温度を超えて加熱されてはならず、または温度は、製剤の溶媒を沸騰させるのを避けるのに十分な低さであるべきである。一実施形態において、製剤がノズルを出るときに製剤を昇温することができ、これは、製剤に加えられる加熱の継続時間を減らすことができる。
【0033】
[0045]
図1は、直接分配を実施するための例示的なシステムを示しており、ここでは、本明細書に記載の型のディスペンサーヘッドを備えるデポジッター100が、活性成分を含む溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上に直接分配して、溶解性単位用量膜構造物10を形成している。例えば、
図9および
図10は、それぞれ、圧電作動装置によって体積を分配するための細いチップを有するディスペンサーヘッド、および粘膜付着性基材上に噴射するための制御可能なバルブを有するディスペンサーヘッドの使用を模式的に示している。粘膜付着性基材20は、コンベヤー200に沿ってデポジッター100から出現することができる。
【0034】
[0046]溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上または堆積させる他の表面上に堆積させたら、溶媒(例えば、水)を、熱的乾燥プロセスによって取り除いて、自立性であり、その後に施用することができる形態の、溶解性単位用量膜構造物10を残すことができる。強制の周囲空気、冷却空気および不活性ガスを含めた、任意の好適な乾燥プロセスを用いることができる。例示的な方法としては、限定されるものではないが、熱風を高速で堆積物に吹き落として境界層を最小にし物質移動を容易にするガス-強制空気乾燥、箱型オーブンでの乾燥、IR乾燥、およびそれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、窒素ガスまたはアルゴンガスを堆積物に吹き落とすことができる。一部の実施形態において、小さな体積と、高揮発性の薬学的に許容される溶媒(例えば、エタノール、アセトンなど)の使用との組み合わせにより、乾燥時間が短くなり、それはまた、例えば、
図4aおよび
図4bについて説明するように粘膜付着性基材20の相対する両面に活性層を施すときに役立つことができ、それにより、最初の堆積の後に迅速に裏返して、基材上に複数の活性層を形成することができる。
【0035】
[0047]一実施形態において、個々の薄膜単位用量は、
図1に記載されるように、基材20としての、静止しているが連続したポリマー膜のウェブ上に、配列して直接分配される。直接分配によるその配列の堆積に続いて、ウェブは、所定の距離を進み、その上に、別の配列が、異なる位置でウェブに直接分配されることによって形成される。第2の配列を堆積させながら、真空が施される囲いの底部としてポリマー膜を用いて、真空カプセル設備を第1の配列の上に下げる。必要であればまたは所望であれば、ある程度の熱を加えることもできる。第2の配列を堆積させ、第1の配列を乾燥させた後、真空を緩和し、カプセル設備を上げるか、または取り除く。ウェブを進め、プロセスをステップ・アンド・リピート方式で進行し、第2の配列が、カプセル設備による真空乾燥を施される一方で、第3の配列が直接分配される。
【0036】
[0048]ポリマー膜は、カプセルプロセスの間、真空が施されるときの崩壊に対してポリマー膜を補強するため、所定位置で保持されることができると理解される。例えば、真空の適用は、膜の反対側の下の面(すなわち、活性製剤を堆積させた面とは反対)に施すことができる。結果として施される吸引は、例えば、平坦な金属板の穴の配列を用いて実施することができ、真空設備の位置決めおよび真空適用の前に、膜をしっかりと所定位置で固定する。
【0037】
[0049]薄膜の製造の改善に加えて、別個の活性製剤量を堆積させるための直接分配の使用は、それによって形成される膜構造の改善を実現する機能をもたらすこともできる。
[0050]従来のいくつかの薬物送達膜は、第1の層が活性成分を含む製剤を含み、第2の層が不活性バッキング層または異なる活性成分もしくは同じ活性成分を異なる濃度で含む層として機能する、2層設計を採用している。第2の層またはバッキング層は、第1の層にある同じ活性成分を同じ活性成分濃度で含まないことを除けば、第1の層と同じ製剤であっても、または異なる製剤であってもよい。バッキング層は、例えば、口腔および胃腸管への活性成分の流れに対するバリアとして機能することができる。従来の膜およびそれに関連する幅広のウェブ製造プロセスの重大な欠点は、第1の層および第2の層が同じ面積のものである必要があることである。層は、ウェブを覆うものとして形成され、このとき、一方の層が、第2の別個のキャストまたは積層ステップによって、他方の層の上にコーティングされる。同じ面積の第1の層および第2の層を必要とすることに加えて、このプロセスはまた、均一なコーティング層厚さの無欠陥のスリットロールを得るためにロールの始めと終わりを取り除くことと共に、より狭い幅のロールに切り込むことを必要とする、マスターロールをもたらす。これらと同じ考察は、2層よりも多くを要求する状況にも当てはまる。
【0038】
[0051]直接分配による単位用量の堆積を採用した本発明の実施形態は、バッキング層で画定される、より大きな面積内に、活性層のより小さな面積を直接分配することを含む2層膜を提供することによって、これらの欠点を克服することができる。これは、
図2に示されるウィンドウフレーム効果を作り出すために用いることができ、
図2においては、溶解性単位用量膜構造物10が、粘膜付着性基材20、およびより小さな第1の溶解性活性層12を含む多層膜である。したがって、粘膜付着性基材20は、溶解性単位用量膜構造物10が粘膜に施されるとき、第1の溶解性活性層12の周りに周辺部シールを提供する。これにより、第1の溶解性活性層12の周辺部から口腔内への活性成分の漏れを防ぐことができ、薬物または他の活性成分の全てを、所望の粘膜経路を介して送達する可能性を更に高めることができる。
【0039】
[0052]更に、ウィンドウフレームの使用を用いて、第1の溶解性活性層12を有効に密封し、それによって、活性成分による不快な味を遮蔽することができる。粘膜付着性基材20は、第1の溶解性活性層12からの、認知可能な味が生じ得る口腔内への薬物の漏れを防ぐことができる。
【0040】
[0053]従来の2層膜と比較した本発明の実施形態のさらなる利点は、第1の溶解性活性層12を、別個の単位用量で、粘膜付着性基材20上に直接分配することによって、溶解性単位用量膜構造物10の間の用量の正確性および均一性が高まることであり、なぜなら、一貫した正確な体積の溶解性組成物を、バッキング層の面積または厚さとは無関係に施すからである。分配された流体の温度制御および噴射システム作動装置の温度制御により、分配用量の繰り返し精度がもたらされ得る。逆に、従来の幅広いウェブ膜の製造において、堆積厚さのキャラクタリゼーションは、典型的には、単位面積当たりの堆積重量を調べること(すなわち、「コーティング重量」サンプリング)によって行われる。プロセスパラメーターが、典型的には、コーティング作業のフロントエンドで調節され、所望の目標が実現された後でその後維持されるものの、活性層のコーティング重量の正確性は、下層のバッキング層の厚さのばらつきによって影響される。例えば、バッキング層の窪みまたは薄化は、より大きな厚さの活性層の局所的領域をもたらすことになる。この懸念は、本発明の実施形態のある部分において、克服することができ、なぜなら、それぞれの溶解性活性層12は、それが施される粘膜付着性基材20のいかなるばらつきとも無関係に、一貫した体積として個別に測定され分配することができるからである。製造において、ある種のトリミングステップおよび他の変換ステップを再導入するという結果になるかもしれないとはいえ、例示的な実施形態を用いて、別個の活性層を、連続的なウェブであるバッキング層に堆積させることができることが更に理解される。しかし、活性成分含有製剤を不活性バッキング層に堆積させることによって製造される単位については、トリミングされた材料は高価な活性成分を含まないので、活性成分の損失は、はるかに少ないと考えられる。
【0041】
[0054]
図3を参照すると、ある実施形態において、より小さなまたはより大きな第1の溶解性活性層12を、粘膜付着性基材20上に形成することによって、様々な投与量強度を実現することができる。したがって、多数の投与量強度にわたって同じサイズの膜を送達するために、同じサイズの粘膜付着性基材20を用いることができる。同様に、同じサイズの第1の溶解性活性層12を、溶解性単位用量膜構造物10を取り扱う具体的な使用者のクラスの能力に合うように変更可能な、異なるサイズの粘膜付着性基材と共に用いることができ、それは、送達される活性成分の量とは無関係であってもよい(すなわち、より大きな膜が、小児科の患者または高齢の患者で望まれることがある)。これは、低い投与量および/または特定の効力のある薬にとって、特別な利益となるものでもあり、これらは、バッキング層なしで単独で用いると、結果としての膜が、扱うには難しすぎるほど小さな単位用量面積を必要とすることがあるからである。
【0042】
[0055]
図3に示すように、2種の溶解性単位用量膜構造物10を、均一なサイズの粘膜付着性基材20を用いて形成することができる。第1の溶解性単位用量膜構造物10において、例えば、小児科用サイズの用量での活性成分の使用のために、小さな溶解性活性層12aを、粘膜付着性基材20に堆積させ、これは、粘膜付着性基材20のサイズ故に、容易に扱える十分に大きな溶解性単位用量膜構造物10を提供する。成人サイズの用量については、同じ粘膜付着性基材20を、そこに堆積させた、より大きな溶解性活性層12bと共に用いて、同じサイズの溶解性単位用量膜構造物10によって、より多い活性成分量を送達することができる。第1の溶解性活性層12の面積は、堆積物体積によって調節可能であるので、同じ活性製剤を、小児科の用量と成人の用量との両方で使用することができる。
【0043】
[0056]同じサイズの粘膜付着性基材20を異なるサイズの小さな溶解性活性層12aおよび大きな溶解性活性層12bに使用する、例示的な実施形態によって実現されるさらなる利点は、多数の投与量強度にわたる、全体の膜サイズの標準化である。結果として、器具設備およびパッケージングを、粘膜付着性基材20の面積によって画定された、同じ全体の膜サイズにより標準化することもできる。
【0044】
[0057]一部の実施形態において、特に、小さな溶解性活性層12aおよび大きな溶解性活性層12bを含む用量の全体サイズは、視覚的に同様であり得るので、それらをより容易に識別するために、異なる投与量強度の小さな溶解性活性層12aおよび大きな溶解性活性層12bを製造するのに用いられる活性層製剤に、追加の成分を組み込むことが望ましいことが理解される。識別は、例えば、異なる強度の活性層に異なる色を使用することによって行うことができる。着色剤を用いて、投与量のサイズまたは強度が同じであっても、異なる活性成分を含む溶解性単位用量膜構造物10を区別することもできる。着色剤はまた、視覚システムカメラと関連したソフトウェアアルゴリズムに基づいて、分配物の表面積を測定し、合否基準を適用する、視覚システムへの視覚認識ももたらす。
【0045】
[0058]一部の場合において、2種の活性成分が、受容者に同時に運ばれねばならない。これは、活性層製剤において、2種の異なる活性成分を組み合わせることによって実現することができる。しかし、それらの組み合わせは、多くの状況で、例えば活性成分が非両立性である(例えば、それらが互いに接触すると、反応または分解する)場合などで、可能ではないことがある。あるいは、2種の異なるpH緩衝剤が必要となることがあり、これは、溶解度に影響を及ぼすために、またはバイオアベイラビリティを改善するために、各活性成分が異なる緩衝系を要求するからである。しかし、2種の異なる緩衝剤を同じ製剤に組み込んで2つの異なるpH値を生じさせることは不可能である。
【0046】
[0059]
図4aおよび
図4bに示すように、溶解性単位用量膜構造物10は、粘膜付着性基材20の第1の面2に形成された第1の溶解性活性層12(
図4a)、および粘膜付着性基材20の第2の面4に形成された第2の溶解性活性層14(
図4b)を備えて形成され得る。第1の溶解性活性層12および第2の溶解性活性層14は、同じ組成物もしくは異なる組成物、同じ活性成分もしくは異なる活性成分、同じサイズ/投与量もしくは異なるサイズ/投与量、またはそれらの様々な組み合わせを含むことができる。
【0047】
[0060]この実施形態において、第1の活性層12が基材20に施された後、第2の活性層14を、ポリマーマトリックスを含む第2の溶解性組成物として施すために、基材を裏返すことができ、ポリマーマトリックスは、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせを含み、第2の溶解性組成物は、活性成分および液体キャリアを更に含む。第2の溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上に、複数の個々の投与量単位として、粘膜付着性基材20の、第1の溶解性組成物とは反対の面(第1の面2と反対側の、第2の面4)に堆積させる。個々の投与量単位を乾燥させて、第2の溶解性組成物から、液体キャリアの少なくとも一部を取り除き、第2の溶解性活性層14を形成する。第2の溶解性組成物の活性成分は、第1の溶解性組成物の活性成分と同じであってもよく、または第2の溶解性組成物の活性成分は、第1の溶解性組成物の活性成分と組成的に異なってもよい。
【0048】
[0061]更に別の実施形態において、
図5に示されるように、溶解性単位用量膜構造物10を形成する方法は、第2の溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上に、第1の溶解性組成物から空間的に離れた複数の個々の投与量単位として堆積させるステップを含む。液体キャリアの少なくとも一部が、第2の溶解性組成物から取り除かれて、第2の溶解性活性層16が、粘膜付着性基材20の、第1の溶解性活性層12と同じ面に形成される。
【0049】
[0062]さらなる一実施形態において、溶解性単位用量膜構造物10を形成する方法は、ポリマーマトリックスを含む、第3の溶解性組成物を形成するステップであり、ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせを含み、第3の溶解性組成物が、活性成分および液体キャリアを更に含む、ステップを含む。第3の溶解性組成物は、粘膜付着性基材20上に、第1の溶解性組成物および第2の溶解性組成物から空間的に離れた複数の個々の体積として堆積させる。個々の投与量単位を乾燥させて、第3の溶解性組成物から液体キャリアの少なくとも一部を取り除き、第3の溶解性活性層を形成する。第3の溶解性組成物の活性成分は、第1の溶解性組成物、第2の溶解性組成物、もしくはその両方の活性成分と同じであってもよく、または第3の溶解性組成物の活性成分は、第1の溶解性組成物、第2の溶解性組成物、もしくはその両方の活性成分と組成的に異なって、第3の組成的に異なる溶解性活性層18を形成してもよい。任意の好適な数の追加の溶解性組成物を、同様にして形成し堆積させて、任意の好適な数の追加の溶解性活性層を生じさせることができる。
【0050】
[0063]別の実施形態において、溶解性単位用量膜構造物10を形成する方法は、ポリマーマトリックスを含む粘膜付着性組成物を用意するステップであり、ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、および液体キャリアを含む、ステップを含む。粘膜付着性組成物を乾燥させて、液体キャリアの少なくとも一部を取り除き、粘膜付着性基材20を形成する。ポリマーマトリックスを含む、第1の溶解性組成物が形成され、ここで、ポリマーマトリックスは、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水膨潤性ポリマーまたはそれらの組み合わせ、活性成分、および液体キャリアを含む。第1の溶解性組成物を、粘膜付着性基材20上に、複数の個々の投与量単位として堆積させ、複数の個々の投与量単位は、更に積極的に乾燥させることなく、複数の個々の投与量単位が、複数の第1の溶解性活性層12であるように維持される。粘膜付着性組成物は、活性成分を更に含むことができる。粘膜付着性組成物の活性成分は、第1の溶解性組成物の活性成分と同じであってもよく、または第1の溶解性組成物の活性成分と組成的に異なってもよい。
【0051】
[0064]粘膜付着性基材20と、第1の面2または第2の面4に堆積させた任意の好適な数の溶解性活性層との、任意の好適な組み合わせは、任意の好適な組み合わせにおける任意の好適な数の活性成分、ならびに粘膜付着性基材20および溶解性活性層における分布を含めて、前述の実施形態の適切な組み合わせによって形成することができる。
【0052】
[0065]粘膜付着性基材20を、膜の連続ウェブとして形成し、続いて、溶解性単位用量膜構造物10の形成後、粘膜付着性基材20をより小さな個々の膜に分けることができる。
【0053】
[0066]溶解性組成物は、大まかには、任意選択で活性成分を含む、生物学的に適合した液体ベースの膜形成ポリマーマトリックスとして特徴づけることができ、これは、乾燥させると、浸食可能な膜、崩壊可能な膜、および/または溶解性の膜を形成し、限定されるものではないが、Meathrel等の米国特許第7,470,397号に記載された溶解性組成物を挙げることができる。この文献は、その全体が、本明細書に完全に再記載されるかのごとく参照によって援用する。得られる膜は、取り扱いを補助するための膜強度をもたらすのに十分な固形分と、所定の速度での崩壊をもたらすバランスのとれた固形分との組み合わせを有することが理解される。溶解性組成物は、大まかには、高濃度の活性成分を含む、生物学的に適合した液体ベースの膜形成ポリマーマトリックスとして、更に特徴づけることができ、これは、乾燥させると、活性分含有層を形成する。
【0054】
[0067]任意の好適なポリマーを、ポリマーマトリックスとして使用することができる。任意の特定の実施形態のために選択される1種または複数種のポリマーは、組み込まれるまたは堆積させる1種または複数種の活性成分、所望の崩壊速度(界面活性剤の使用の有無に関わらず調整することができる)、および粘膜付着性基材20または溶解性活性層を形成するのに用いる液体製剤のレオロジーを含む様々な因子、ならびに従来の薄膜構造物を製造する技術分野の当業者に公知の他の因子に依存し得ると理解される。
【0055】
[0068]1種または複数種のポリマーは、水溶性、水分散性、水膨潤性、水不溶性またはそれらの組み合わせであってもよく、セルロースまたはセルロース誘導体を含むことができる。水膨潤性ポリマーおよび水不溶性ポリマーの使用が考えられるものの、製剤は、その後形成される膜の最終的な崩壊を確実なものにするために、十分な量の水溶性ポリマーおよび/または水分散性ポリマーを含むことになる。
【0056】
[0069]例示的なポリマーには、限定されるものではないが、水溶性の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、キトサン、キサンタンガム、トラガカント(tragacantha)、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、カラギーナン、プルラン、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、および様々なコポリマー、または上記の組み合わせ、ならびに他の公知の水溶性ポリマー、とりわけ、セルロース誘導体および/またはガムが挙げられる。用いることができる他のポリマーには、限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
[0070]一部の実施形態において、ポリマーマトリックスは、溶解速度を調節するために界面活性剤を含むことができる。他の実施形態において、溶解の速度は、界面活性剤の使用の有無に関わらず、高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーの組み合わせの使用によって調節することができる。例えば、水溶性成分が、低分子量ポリマー(例えば、約5kDa未満から60kDaまでのもの)および高分子量ポリマー(例えば、60kDaより高いものから約150kDaまで、約900kDaまで、またはそれ以上のもの)の組み合わせを含む場合、膜強度および崩壊プロファイル(すなわち、膜が、口腔または他の粘膜と接触して崩壊する速度)の特別に有利な特性が得られる。
【0058】
[0071]様々な他のポリマーは、本明細書の教示を受けた当業者によって選択することができ、好ましくは、適度な膜強度を与えるのに十分な量の高分子量成分、および所望の膜特性である崩壊プロファイルを容易にするのに十分な量の低分子量成分を含む。更に、膜強度および崩壊を助ける他の成分、例えば界面活性剤、充填剤および可塑剤を含む、1種の水溶性ポリマーを、膜マトリックス形成成分として選択することができる。膜を加工処理するのに有用な他の構成成分、例えば、レオロジー調整剤を使用することができると理解される。アクリルポリマーカリウム塩、例えば、ジビニルグリコールと架橋結合したアクリル酸ポリマー(LubrizolによってNOVEONとして市販されている)を含む、任意の好適な調整剤を使用することができる。任意の特定の不活性製剤成分の組み合わせの選択は、1種または複数種の活性成分とのその相互作用、および1種または複数種の活性成分の特性へのその影響に、ある程度依存する場合もある。
【0059】
[0072]水溶性低分子量成分は、水溶性ポリマーである必要はない。代わりに、低分子量成分は、他の低分子量の分子、モノマー、オリゴマー、またはそれらの組み合わせ(例えば、キシリトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)であってもよい。低分子量成分は、崩壊を促進するのに役立つが、膜強度が加工処理および分配のために適度であるような量で存在する。様々な濃度の低分子量成分を使用することができる。
【0060】
[0073]高分子量成分および低分子量成分の量は、数秒から数分までの、または更に数時間までの範囲であり得る、所望の崩壊プロファイルを得るように調節することができる。よりゆっくりとした崩壊が望まれる場合、高分子量成分の濃度を、低分子量成分の濃度に対して増加させてもよい。より速い崩壊が望まれる場合、低分子量成分の濃度を、高分子量成分の濃度に対して増加させてもよい。更に、溶解性単位用量膜構造物10の厚さは、所望の崩壊プロファイルを得るように調節することができる。崩壊時間を長くするためには、厚さを増加させる。膜の取り扱いを可能にするために、適度な膜強度が維持されるべきである。
【0061】
[0074]任意の活性成分に加えて組み込むことができる他の成分としては、限定されるものではないが、可塑剤、甘味剤、増粘剤、緩衝剤、安定剤、香味料、および/または他の添加剤を挙げることができ、必須ではないが好ましくは水溶性である。こうした成分の種類および量は、従来の溶解性薄膜を配合する技術分野の当業者に知られている。しかし、例示的な実施形態は、個々の別個の単位用量の堆積物を採用しているので、製剤中に、従来の方法で使用されるよりも少ない全固形分または不揮発分を含むことがあるものの、有意に少ない体積が堆積され、その結果、乾燥時間が必要であったとしても、いかなるものであれ、より少ない乾燥時間を必要とすることが理解される。したがって、本明細書において、個々の単位用量膜を形成するために採用される液体製剤と称される一方で、その用語は、任意の湿潤した非固体の流動性物質を包含すると理解される。一部の実施形態において、緩衝剤を、粘膜付着性基材20用の製剤に導入し、1種または複数種の活性層の製剤(複数可)には導入しない。他の実施形態において、緩衝剤を、1種または複数種の活性層用の製剤(複数可)に導入するが、粘膜付着性基材20用の製剤には導入しない。更に他の実施形態において、緩衝剤を、粘膜付着性基材20と活性層(複数可)との両方のための製剤において採用するが、他において緩衝剤を採用しない。一部の実施形態において、ネオテームおよび/またはスクラロースを、甘味剤として使用することができる。一部の実施形態において、活性層用の組成物における添加剤は、成分を、基材に存在する成分から分離するために用いることもできることが更に理解される。例えば、活性層を形成するために使用される、活性成分と非両立性の(例えば、活性分の沈殿を引き起こし得る)甘味剤または他の成分を、代わりに、粘膜付着性基材20を形成するのに使用される組成物に組み込むことができる。
【0062】
[0075]溶解性単位用量膜構造物10は、1種または複数種の活性成分、必須ではないが典型的には医薬製剤を含むことができる。広範囲の活性成分を、ポリマーマトリックスに組み込むことができ、またはポリマーマトリックスに適用することができる。活性成分は、膜形成の前または膜形成の後で堆積させることができ、溶液、エマルジョン、懸濁液または分散液などの任意の形態で組み込むことができる。具体的な形態は、使用される活性成分とポリマーとの特定の組み合わせに依存する場合がある。すなわち、膜に堆積させる活性成分含有液体製剤は、任意の薬物物質を含む全ての成分が、バルク液体に完全に溶解され可溶である溶液の形態;油溶性成分、例えば香味料が添加された水性製剤に典型的に使用される、エマルジョンの形態;その後に堆積させた層および形成された溶解性単位用量膜構造物10における分布の均一性を実現しながら、不溶性活性成分または他の賦形剤をバルク液体製剤に添加することができる、懸濁液または分散液の形態であってもよい。
【0063】
[0076]活性成分には、限定されるものではないが、ace阻害剤、抗狭心症薬、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗コレステロール薬、精神安定剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、下痢止め調合薬、解毒剤、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗炎症剤、抗脂質剤、抗躁薬、制嘔吐剤、抗卒中剤、抗甲状腺調合薬、抗腫瘍薬、抗ウイルス剤、ニキビ薬、アルカロイド、アミノ酸調合薬、咳止め、抗尿酸血症薬、抗ウイルス薬、同化調合薬、全身的抗感染症薬および非全身的抗感染症薬、抗新生物薬、抗パーキンソン薬、抗リウマチ剤、食欲促進剤、生物学的反応修飾物質、血液修飾物質、骨代謝調節剤、心血管作動薬、中枢神経系刺激剤、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去剤、栄養補助食品、ドーパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症管理用薬剤、酵素、勃起不全治療薬、妊娠促進剤、消化器作用剤、ホメオパシー治療薬、ホルモン剤、高カルシウム血症および低カルシウム血症の管理用薬剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、片頭痛調合薬、乗り物酔い薬、筋弛緩剤、肥満症管理用薬剤、骨粗鬆症調合薬、分娩促進剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神治療薬、呼吸器作用薬、鎮静剤、禁煙補助剤、交感神経遮断薬、振戦調合薬、尿路作用薬、血管拡張剤、便秘薬、制酸剤、イオン交換樹脂、解熱剤、食欲抑制剤、去痰剤、抗不安剤、抗潰瘍薬、抗炎症物質、冠動脈拡張剤、脳拡張剤、末梢血管拡張薬、向精神薬、刺激剤、降圧剤、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗生物質、精神安定剤、抗精神病剤、抗腫瘍薬、抗凝血剤、抗血栓剤、睡眠薬、制吐剤、制嘔吐剤、抗けいれん剤、神経筋作用薬、高血糖剤および低血糖剤、甲状腺調合薬および抗甲状腺調合薬、利尿剤、抗ひきつけ剤、子宮弛緩剤、抗肥満薬、赤血球生成薬、抗喘息薬、咳止め薬、粘液溶解薬、DNA、および遺伝子修飾薬、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。用いられる活性成分の種類および量は、従来の溶解性薄膜を配合する技術分野の当業者に知られている。
【0064】
[0077]一部の実施形態において、活性成分は、ブプレノルフィンを含む。ブプレノルフィンを含む組成物において甘味剤が用いられる場合。
[0078]以下の実施例を参照して実施形態について更に説明し例証するが、実施例は、限定のためではなく、説明のために示されるものである。
【実施例】
【0065】
実施例1
[0079]成分を組み合わせ、好適な混合機でボルテックスすることによって共に混合して、表1に記載の均一な流体を形成した。
【0066】
【0067】
実施例2
[0080]実施例1の製剤154μLを、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびリン酸緩衝剤で構成される22mm×22mmのダイカット膜の表面にマイクロ堆積させて、各単位用量膜に対してアポモルヒネHCl0.5水和物23mg当量とした。
【0068】
実施例3
[0081]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表2に記載の溶液を形成した。
【0069】
【0070】
[0082]実施例3の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで70℃にて40分間乾燥させることによって、モノリシック膜を製造した。乾燥膜重量は422.4mm2当たり70mgと測定され、バルデナフィル遊離塩基0.024mg/mm2を含んでいた。単位は、拡散性に関する研究に用いるために23.6mm2にダイカットされ、バルデナフィル塩基0.56mgを含んでいた。
【0071】
実施例4
[0083]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表3に記載の溶液を形成した。
【0072】
【0073】
[0084]実施例4の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで70℃にて50分間乾燥させることによって、膜を製造した。乾燥膜重量は、422.4mm2当たり55mgと測定された。
【0074】
実施例5
[0085]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表4に記載の溶液を形成した。
【0075】
【0076】
[0086]実施例5の溶液22μLを、容積式ピペットで、実施例4の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて30分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は12.56mm2であり、バルデナフィル遊離塩基0.559mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積物12.56mm2を含んでいた。
【0077】
実施例6
[0087]実施例3の23.6mm
2の単位の浸透性を、実施例5の52.65mm
2の単位の浸透性と比較して、拡散性に関する研究を実施した。口腔細胞組織培養物を含むORL-200 24-ウェルプレート(MatTek Corp.、Ashland、MA)を、拡散膜として利用した。組織を、37℃および相対湿度95%に設定したCO
25%チャンバーで平衡化した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)受容培地300μLを24-ウェルプレート内のそれぞれのウェルに添加し、CO
2チャンバー内に終夜置いた。翌朝、組織インサートを、ORL-200-ASYアッセイ培地から取り出し、経上皮電気抵抗(TEER)を、各組織インサートで測定して、終夜の平衡化の後の生存性を確かめた。次いで、組織を、事前に平衡化されたDPBS受容培地300μLを含む24-ウェルプレートに置いた。それぞれの実施例の膜を組織インサートのドナー側に施す前に、各インサートをDPBS25μLで事前に湿潤させ、続いて、追加のDPBS25μLを、各プロトタイプの上面に湿潤させた。各組織インサートを含んだ24-ウェルプレートを、特定の時間枠で培養器に戻し、その後、ある経過時間後に培養器から取り出した。組織インサートを、受容培地300μLを含む、新しい24-ウェルプレートに移し、追加の特定の時間、培養器に戻した。24-ウェルプレートの各ウェルから受容培地300μLをHPLCバイアルへ移し、UPLCによって分析した。この実験手順を、全ての時点(すなわち、5分、15分、30分、45分、60分、および120分)で繰り返した。
図6に示すように、累積バルデナフィル濃度を時間に対してプロットする。累積バルデナフィル濃度(ng/cm
2/時)の表に詳しく説明するように、活性表面積に正規化すると、マイクロ堆積させたプロトタイプ実施例5は、モノリシックプロトタイプ実施例3よりも性能が優れていた。
【0078】
【0079】
実施例7
[0088]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表5に記載の溶液を形成した。
【0080】
【0081】
[0089]実施例7の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで40℃にて30分間乾燥させ、続いて70℃にて15分間乾燥させることによって、モノリシック膜を製造した。乾燥膜重量は、281.6mm2当たり50mgと測定され、ブプレノルフィンHCl0.031mg/mm2を含んでいた。単位は、拡散性に関する研究に用いるため26.4mm2にダイカットされ、ブプレノルフィンHCl0.81mgを含んでいた。
【0082】
実施例8
[0090]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表6に記載の溶液を形成した。
【0083】
【0084】
[0091]実施例8から得られた溶液の粘度は、Brookfield DV-2T LV粘度計で、25℃にてスピンドルSC4-27およびせん断速度1.02秒-1を用いて測定した。得られた粘度は、602cpsであった。実施例8の溶液24μLを、容積式ピペットで、実施例4の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて30分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積の表面積は、12.56mm2であり、ブプレノルフィンHCl0.813mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積12.56mm2を含んでいた。
【0085】
実施例9
[0092]実施例7の26.4mm
2の単位の浸透性を、実施例8の52.65mm
2の単位の浸透性と比較して、拡散性に関する研究を実施した。実施例6の浸透性の手順に従った。
図7に示すように、累積ブプレノルフィン濃度を時間に対してプロットする。累積ブプレノルフィン濃度(ng/cm
2/時)の表に詳しく説明するように、表面積に正規化すると、マイクロ堆積させたプロトタイプ実施例8は、モノリシックプロトタイプ実施例7よりも性能が優れていた。
【0086】
【0087】
実施例10
[0093]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表7に記載の溶液を形成した。
【0088】
【0089】
[0094]実施例10の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで70℃にて50分間乾燥させることによって、膜を製造した。乾燥膜重量は、422.4mm2当たり55mgと測定された。
【0090】
実施例11
[0095]実施例8の溶液24μLを、容積式ピペットで、実施例10の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70にて30分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は12.56mm2であり、ブプレノルフィンHCl0.813mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積物12.56mm2を含んでいた。
【0091】
実施例12
[0096]実施例11の52.65mm
2の単位の浸透性を、実施例8の52.65mm
2の単位の浸透性と比較して、拡散性に関する研究を実施した。実施例6の浸透性の手順に従った。
図8に示すように、累積ブプレノルフィン濃度を時間に対してプロットする。累積ブプレノルフィン濃度(ng/cm
2/時)の表に詳しく説明するように、表面積に正規化すると、マイクロ堆積させたプロトタイプ実施例11は、マイクロ堆積させたプロトタイプ実施例8よりも性能が優れており、基材膜が緩衝剤を含んでいた実施例12は、薬物拡散に関してさらなる利点をもたらした。
【0092】
【0093】
[0097]上記の説明は、本発明の目的、特徴および利点を達成する好ましい実施形態を単に例証するものである。本発明が例証した実施形態に限定されることは意図していない。
実施例13
[0098]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表8に記載の溶液を形成した。
【0094】
【0095】
[0099]実施例13の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで70℃にて50分間乾燥させることによって、膜を製造した。乾燥膜重量は、422.4mm2当たり55mgと測定された。
【0096】
実施例14
[00100]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表9に記載の溶液を形成した。
【0097】
【0098】
実施例15
[00101]実施例14の溶液6μLを、容積式ピペットで、実施例13の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて20分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は7.0mm2であり、ブプレノルフィンHCl0.182mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積物7.0mm2を含んでいた。
【0099】
実施例16
[00102]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表10に記載の溶液を形成した。
【0100】
【0101】
実施例17
[00103]実施例16の溶液28μLを、容積式ピペットで、実施例13の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて40分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は19.6mm2であり、ブプレノルフィンHCl2.15mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積19.6mm2を含んでいた。
【0102】
実施例18
[00104]実施例15の52.65mm2の単位の浸透性を、実施例17の52.65mm2の単位の浸透性と比較して、拡散性に関する研究を実施した。実施例6の浸透性の手順に従った。累積ブプレノルフィン濃度(ng/cm2/時)の表に示すように、実施例17の累積ブプレノルフィン濃度は、実施例15と比較してより高い。
【0103】
【0104】
実施例19
[00105]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表11に記載の溶液を形成した。
【0105】
【0106】
[00106]実施例19の液体をポリエステル基材に塗布し、湿潤膜を実験室の対流式オーブンで70℃にて20分間乾燥させることによって、膜を製造した。乾燥膜重量は、10cm2当たり53mgと測定された。
【0107】
実施例20
[00107]成分を、オーバーヘッド撹拌機で共にブレンドして、表12に記載の溶液を形成した。
【0108】
【0109】
[00108]実施例20から得られる溶液の粘度を、Brookfield DV-2T LV粘度計で、25℃にてスピンドルSC4-27およびせん断速度1.02秒-1を用いて測定した。得られた粘度は、2,289cpsであった。
【0110】
実施例21
[00109]実施例20の溶液22μLを、容積式ピペットで、実施例19の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて20分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は20.0mm2であり、アポモルヒネHCl2.8mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積物20.0mm2を含んだ。
【0111】
実施例22
[00110]実施例20の溶液11μLを、容積式ピペットで、実施例19の乾燥膜にマイクロ堆積させた。分配された液体を、実験室の対流式オーブンで70℃にて20分間乾燥させた。乾燥させたマイクロ堆積物の表面積は12.6mm2であり、アポモルヒネHCl1.4mgを含んでいた。全ての単位は、52.65mm2にダイカットされ、活性堆積物12.6mm2を含んだ。
【0112】
実施例23
[00111]実施例21の52.65mm2の単位の浸透性を、実施例22の52.65mm2の単位の浸透性と比較して、拡散性に関する研究を実施した。実施例6の浸透性の手順に従った。累積アポモルヒネ濃度(ng/cm2/時)の表に示すように、実施例21の累積アポモルヒネ濃度は、実施例22と比較してより高い。
【0113】
【0114】
[00112]好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な改変を行うことができ、本発明の要素を均等物に置き換えることができることが、当業者によって理解される。更に、特定の状況または材料を本発明の教示に適応させるために、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく、多くの変更を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内にある全ての実施形態を含むことが意図される。