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特許7365411マウスピース及びマウスピースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】マウスピース及びマウスピースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A61C7/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021526134
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023025
(87)【国際公開番号】W WO2020250976
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019109888
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美咲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲司
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159104(JP,A)
【文献】特表2017-537687(JP,A)
【文献】特開2013-081785(JP,A)
【文献】特開2015-229248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形装置で製造される、歯を覆うように口腔内に装着されるマウスピースの製造方法であって、
前記マウスピースと、前記マウスピースに接続する周縁部と、前記周縁部を支持するサポートと、を有する造形物を造形する積層造形工程と、
前記造形物から前記周縁部を除去する周縁部除去工程と、を含む
ことを特徴とする、マウスピースの製造方法。
【請求項2】
前記周縁部は、歯冠の根元に対応する、前記マウスピースの根元部に接続される
ことを特徴とする、請求項1に記載のマウスピースの製造方法。
【請求項3】
前記周縁部は、歯肉に沿った形状である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のマウスピースの製造方法。
【請求項4】
前記マウスピースは、歯を覆うように口腔内に装着されるマウスピースであって、
前記マウスピースは、積層痕を有し、
前記マウスピースは、サポート痕を有しない
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のマウスピースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置で製造される、歯を覆うように口腔内に装着されるマウスピース及びマウスピースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層造形装置を使用してマウスピースを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、患者の歯列データを基に、歯科矯正用アライナーを3Dプリンターで製作する構成が記載されている。これにより、アライナーを直接的に造形し、既存のアライナーのように、雄型を作製する必要がなく、工程が短縮され、コストも削減される。
【0004】
また、特許文献2には、患者の歯列データを基に、バイトスプリントを3Dプリンターで製作する構成が記載されている。これにより、顎変形症患者の上下顎骨切り手術後の上顎と下顎との正常な位置関係を正確に設定することのできるバイトスプリントを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-94245号公報
【文献】特開2006-81747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には、3Dプリンターによって製造された歯科矯正用アライナー及びバイトスプリントに付属するサポートに関する記載がない。そのため、特許文献1に記載のアライナー及び特許文献2に記載のバイトスプリントは、製造過程で形成される、アライナーやバイトスプリント等の造形対象物を支持するサポートを除去した際に、サポート痕が形成されてしまう、という問題がある。
【0007】
サポート痕とは、一般的には造形対象物を支持していたサポートを除去することで、造形対象物に形成される凹凸のことを指す。このようなサポート痕であれば、手間はかかるものの研磨することにより凹凸を削り取り平滑化できる。
【0008】
一方、発明者らは、特に透明なマウスピース類において、サポートの凹凸を削り取った後でも、サポートが形成されていた領域は、その他の部分と異なる見え方をしてしまうため、審美性を損なうことを見出した。本発明におけるサポート痕とは、特に、サポートが形成されていた領域であって、色ムラ等によりその他の部分と異なる見え方をする領域を含む。
【0009】
具体的には、3Dプリンターにより製造された、特に透明なマウスピース類は、表面に積層による段差が形成されるため、光を乱反射して白みがかって見える。しかしながら、サポート痕が形成されていた領域は、積層の段差が形成されていないため、光を乱反射せずに歯牙の色がそのまま反映される。一般的な歯牙の色は黄色味を帯びているため、サポート痕が形成されていた領域と、その他の部分とを比較すると、色ムラ等が生じ、対面した人間に違和感を与えてしまうため審美性が損なわれる。
【0010】
これに対して、サポート痕をなくして審美性を回復するために、マウスピース表面を全て研磨することができる。この場合、マウスピース類の表面からは積層段差が一切失われ、非常に透明性が高くなる。しかしながら、マウスピース類は、基本的に歯牙表面の凹凸に沿った形状をしているため、表面を完全に研磨して平滑にすることは困難である。特に、歯牙を受ける凹構造の領域を研磨しようとすると、大変多くの時間を要する。
【0011】
一方、サポート痕がなく、全面に積層段差が形成されているマウスピース類の場合には、表面を研磨しない段階であっても、目視での違和感は生じず、審美性はなんら損なわれないことを発明者らは見出した。むしろ、黄色がかった歯牙を有する患者においては、マウスピース類の表面で光を乱反射することで、歯牙の実際の色よりも白く美しく見せる効果を与えることさえもある。つまり、表面にサポート痕を形成せずに積層造形されたマウスピース類は、表面を研磨することなく、簡便に高い審美性を与えることができる。
【0012】
そこで、本発明は、サポート痕を形成しないマウスピース及びマウスピースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のマウスピースの製造方法は、積層造形装置で製造される、歯を覆うように口腔内に装着されるマウスピースの製造方法であって、前記マウスピースと、前記マウスピースに接続する周縁部と、前記周縁部を支持するサポートと、を有する造形物を造形する積層造形工程と、前記造形物から前記周縁部を除去する周縁部除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記目的を達成するために、本発明のマウスピースは、歯を覆うように口腔内に装着されるマウスピースであって、前記マウスピースは、積層痕を有し、前記マウスピースは、サポート痕を有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明のマウスピース及びマウスピースの製造方法は、サポート痕を形成しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の歯列矯正用アライナーと下顎を示す分解斜視図である。
図2】実施例1の歯列矯正用アライナーを、3次元データにおいて、矯正目標位置の歯モデルに装着した状態を示す臼歯の断面図である。
図3】実施例1の歯列矯正用アライナーの製造方法を説明するフローチャートである。
図4】実施例1の積層造形工程を説明する図である。
図5】実施例1の積層造形工程を説明する図である。
図6】実施例1の積層造形工程を説明する図である。
図7】実施例1の積層造形工程で作製された造形物を示す側面図である。
図8】実施例1の周縁部除去工程を説明する図である。
図9】別の実施例の周縁部除去工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるマウスピース及びマウスピースの製造方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1におけるマウスピースは、下顎の歯を覆うように口腔内に装着される歯列矯正用アライナーに適用される。
【0019】
[歯列矯正用アライナーの構成]
図1は、実施例1の歯列矯正用アライナーと下顎を示す分解斜視図である。図2は、実施例1の歯列矯正用アライナーを、3次元データにおいて、矯正目標位置の歯モデルに装着した状態を示す臼歯の断面図である。以下、実施例1の歯列矯正用アライナーの構成を説明する。なお、図中において、歯10は矯正前のものを示し、歯モデル10Aは矯正目標位置のものを示す。
【0020】
歯列矯正用アライナー20は、図2に示すように、矯正目標位置の歯モデル10Aに密着するように作成された3次元データに基づいて、積層造形装置によって形成される。歯列矯正用アライナー20は、矯正前の歯10に装着されて、矯正対象となる歯10を矯正目標位置に矯正する。
【0021】
(歯の構成)
歯10は、図1に示すように、咬合面11と、頬側面12と、舌側面13と、で構成される歯冠を有する。歯10は、歯10の根元を取り巻く歯肉15によって支持される。
【0022】
咬合面11とは、上下の歯の咬み合い側の端部であり、臼歯における咬合面のことをいう。
【0023】
(歯モデルの構成)
歯モデル10Aは、図2に示すように、臼歯部分においては、咬合面11に対応する咬合面モデル11Aと、頬側面12に対応する頬側面モデル12Aと、舌側面13に対応する舌側面モデル13Aと、で構成される。歯モデル10Aは、前歯部分においては、頬側面12に対応する頬側面モデル12Aと、舌側面13に対応する舌側面モデル13Aと、で構成される。
【0024】
(歯列矯正用アライナーの構成)
歯列矯正用アライナー20は、図1及び図2に示すように、臼歯部分においては、咬合部21と、頬側部22と、舌側部23とで凹溝状に形成される。歯列矯正用アライナー20は、前歯部分(切歯部分と犬歯部分)においては、頬側部22と、舌側部23とで凹溝状に形成される。歯列矯正用アライナー20は、下顎の歯冠に脱着可能になっている。歯列矯正用アライナー20は、下顎の全部の歯10の歯冠を覆うように、凹溝状に形成される。
【0025】
咬合部21は、図2に示すように、歯モデル10Aの咬合面モデル11Aに沿った形状に形成される。すなわち、咬合部21は、咬合面モデル11Aを覆う形状に形成される。
【0026】
頬側部22は、歯モデル10Aの頬側面モデル12Aに沿った形状に形成される。すなわち、頬側部22は、頬側面モデル12Aを覆う形状に形成される。
【0027】
舌側部23は、歯モデル10Aの舌側面モデル13Aに沿った形状に形成される。すなわち、舌側部23は、舌側面モデル13Aを覆うように形成される。
【0028】
歯列矯正用アライナー20は、例えば、無色透明とすることができる。なお、歯列矯正用アライナー20は、有色透明とすることもできるし、有色不透明とすることもできる。
【0029】
このように構成された歯列矯正用アライナー20は、下顎の全部の歯10の歯冠を覆うように装着される。歯列矯正用アライナー20が装着された歯10は、矯正目標位置に矯正される。
【0030】
歯列矯正用アライナー20は、複数用意され、歯10を段階的に、最終矯正目標位置に矯正する。1つの歯列矯正用アライナー20は、歯10を、例えば、0.25[mm]程移動して矯正することができる形状に形成される。
【0031】
[歯列矯正用アライナーの製造方法]
図3は、実施例1の歯列矯正用アライナー20の製造方法を説明するフローチャートである。図4~6は、実施例1の積層造形工程を説明する図である。図7は、実施例1の積層造形工程で作製された造形物を示す側面図である。図8は、実施例1の周縁部除去工程を説明する図である。以下、実施例1の歯列矯正用アライナー20の製造方法を説明する。
【0032】
(口腔内データ取得工程)
口腔内データ取得工程(ステップS10)では、3次元スキャナーを用いて、患者の口腔内をスキャンして、口腔内の歯10と歯肉15の3次元データを取得する。
【0033】
(デジタルセットアップ工程)
デジタルセットアップ工程(ステップS11)では、口腔内データ取得工程で取得した口腔内の3次元データをコンピュータで解析し、矯正目標位置の歯モデル10Aの3次元データを作成する。例えば、0.25[mm]刻みのように、段階的に最終矯正目標位置に矯正する場合は、複数の矯正目標位置の歯モデル10Aの3次元データを作成する。
【0034】
(3次元データ作成工程)
3次元データ作成工程(ステップS12)では、デジタルセットアップ工程で作成した矯正目標位置の歯モデル10Aの3次元データと、口腔内データ取得工程で取得した歯肉15の3次元データと、に基づいて、歯列矯正用アライナー20と、後述する周縁部28の3次元データを作成する。
【0035】
作成された歯列矯正用アライナー20と、後述する周縁部28の3次元データのうち、周縁部28のみにサポートを付与する。サポートの形状や太さ、密度、角度等は、3次元データの大きさ、角度、オーバーハング部に応じて適宜調整される。例えば、円錐状でもよいし、円柱状でもよいし、角柱状でもよいし、カーテン状の幅広な構造をしていてもよい。分岐構造を有していたり複数のサポートが途中で融合したりしてもよく、例えば網目状構造やハニカム構造を形成してもよい。サポートの下部には、ベース、ラフトと呼称されるようなサポートの土台部分があってもよい。
【0036】
(積層造形工程)
積層造形工程(ステップS13)では、3次元データ作成工程で作成した歯列矯正用アライナー20と周縁部28の3次元データに基づいて、積層造形装置によって、歯列矯正用アライナー20と周縁部28を含む造形物を造形する。
【0037】
積層造形装置30は、図4に示すように、液状の光硬化性樹脂Wを収容した容器32と、容器32内で、上下方向に移動可能に構成される可動ステージ33と、紫外線レーザ光31aを照射する紫外線レーザ装置31とを備える。なお、光硬化性樹脂Wは、例えば、(メタ)アクリル系モノマー等のラジカル重合性化合物と、エポキシ化合物等のカチオン重合化合物を含む重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有するものを使用することができる。
【0038】
このように構成された積層造形装置30は、まず、図4に示すように、可動ステージ33の上面が、光硬化性樹脂Wの液面から所定の距離(例えば、0.01[mm])だけ下方に位置するように配置される。
【0039】
次いで、紫外線レーザ装置31が、可動ステージ33上の光硬化性樹脂Wの薄層に、紫外線レーザ光31aを、歯列矯正用アライナー20と周縁部28の3次元データに基づいた所定のパターンで走査する。これにより、第1硬化層25a(硬化層25の一例)が形成される。
【0040】
次いで、図5に示すように、可動ステージ33が、所定の距離(例えば、0.01[mm])だけ下方に移動する。これにより、第1硬化層25aの上に光硬化性樹脂Wの薄層が形成される。
【0041】
次いで、図6に示すように、紫外線レーザ装置31が、第1硬化層25a上の光硬化性樹脂Wの薄層に、紫外線レーザ光31aを、歯列矯正用アライナー20と周縁部28の3次元データに基づいた所定のパターンで走査する。これにより、第2硬化層25b(硬化層25の一例)が形成される。
【0042】
以後、同様の動作を繰り返して、最終的に、図7に示すように、複数の硬化層25a、25b、・・・、25n(25)が所定の積層ピッチ(実施例1では、0.01[mm])で積層された造形物40が造形される。
【0043】
造形物40は、歯列矯正用アライナー20と、歯列矯正用アライナー20に接続した周縁部28と、周縁部28を支持するサポート26と、で構成される。
【0044】
造形物40は、歯列矯正用アライナー20の各歯10を覆う部分の並び方向の咬合平面S1に垂直方向D1に、硬化層25が、所定の積層ピッチ(実施例1では、0.01[mm])で積層されて製造される。
【0045】
ところで、例えば、複数の凸形状を有する歯冠の先端を先に造形しようとすると、各凸形状の硬化層25に対してサポートを付与しなければならい。この場合、歯列矯正用アライナー20の各歯10を覆う部分にサポート痕が形成されてしまう、という問題がある。したがって、このような問題を回避するため、各硬化層25が連続的な形状に造形されるように配置する。好ましくは、図7に示されるように、歯列矯正用アライナー20の構造が造形方向(実施例1では、垂直方向D1)に向かって凸になるようにする。すなわち、歯冠の根元から先端に向かって造形されるようにすることが造形の安定性の観点から好ましい。
【0046】
歯列矯正用アライナー20は、積層造形装置30によって、積層方向を咬合平面S1に垂直方向D1として、造形される。言い換えると、歯列矯正用アライナー20は、歯10の並び方向に平行な咬合平面S1に垂直方向D1に積層された積層痕を有する。
【0047】
周縁部28は、歯肉15に沿った形状に形成される。すなわち、周縁部28は、歯肉15を覆うように形成される。周縁部28は、頬側部22の下端と舌側部23の下端に接続される。すなわち、周縁部28は、歯冠の根元に対応する、歯列矯正用アライナー20の根元部に接続される。
【0048】
サポート26は、例えば、1[mm]程の円柱状に形成される。サポート26は、周縁部28の下端に接続されて、周縁部28を支持する。
【0049】
(後処理工程)
後処理工程(ステップS14)では、製造された歯列矯正用アライナー20から一部あるいは全部の未反応物、例えば未重合の単量体を除去する。後処理工程には、重力や遠心力を利用した未反応物の除去、有機溶剤による洗浄やエアブローによる未反応物の除去、乾燥、蛍光灯、ハロゲンランプ、LED光源などを用いた照射器による光重合や熱重合を施す工程を含んでもよい。
【0050】
(周縁部除去工程)
周縁部除去工程(ステップS15)では、図8に示すように、例えば、レーザ加工機50から照射されるレーザ光50aによって、周縁部28を歯列矯正用アライナー20から除去する。この際、周縁部28に付随するサポート26も、歯列矯正用アライナー20から除去される。
【0051】
なお、後処理工程と周縁部除去工程は、双方の効果を十分得られる場合においては前後を逆転しても良い。後処理中の造形物の変形を抑制する観点からすると、後処理工程を周縁部除去工程の後工程とする方が好ましい。
【0052】
以上の工程を経て、歯列矯正用アライナー20が製造される。このように製造された歯列矯正用アライナー20は、積層痕が形成されるが、サポート痕は形成されない。なお、垂直方向D1は、略1°程の誤差を含むものとする。
【0053】
[歯列矯正用アライナー及び歯列矯正用アライナーの製造方法の作用]
以下、実施例1の歯列矯正用アライナー及び歯列矯正用アライナーの製造方法の作用を説明する。実施例1のマウスピース(歯列矯正用アライナー20)の製造方法は、積層造形装置30で製造される、歯10を覆うように口腔内に装着されるマウスピース(歯列矯正用アライナー20)の製造方法であって、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)と、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)に接続する周縁部28と、周縁部28を支持するサポート26と、を有する造形物40を造形する積層造形工程と、造形物40から周縁部28を除去する周縁部除去工程と、を含む(図8)。
【0054】
これにより、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)にサポート痕を残さないようにすることができる。そのため、表面を研磨することなく、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を口腔内に装着した際の審美性を向上させることができる。また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)にサポート痕が形成されないため、サポート痕を研磨して平滑にする手間がかからない。
【0055】
また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)にサポート痕が形成されないため、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を口腔内に装着した際の異物感が低減され、装着感が向上する。
【0056】
また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)に直接にサポート26を形成しないため、サポート26の位置を容易に決定することができる。また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)に直接にサポート26を形成しないため、造形方向の変更にも容易に対応することができる。
【0057】
また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)の咬合部21にサポート痕が形成されないので、狙いの咬合にすることができ、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)の装着による咬合変化の副作用を低減することができる。また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を清掃する際に、作業性が向上する。
【0058】
また、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)の咬合部21にサポート痕が形成されないので、咬合の不調和を抑制し、不正咬合、顎関節疾患といった問題の発生を防ぐことができる。
【0059】
実施例1のマウスピース(歯列矯正用アライナー20)の製造方法において、周縁部28は、歯冠の根元に対応する、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)の根元部に接続される(図7)。
【0060】
これにより、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)の咬合部21に、周縁部28を除去した際に形成される周縁部痕を残さないようにすることができる。そのため、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を口腔内に装着した際に、狙いの咬合を実現することができる。
【0061】
実施例1のマウスピース(歯列矯正用アライナー20)の製造方法においては、周縁部28は、歯肉15に沿った形状である(図7)。
【0062】
これにより、周縁部28の形状を設計する手間が省ける。そのため、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を口腔内に装着した際の異物感を低減したマウスピース(歯列矯正用アライナー20)を簡単に作製することができる。
【0063】
実施例1のマウスピース(歯列矯正用アライナー20)は、歯10を覆うように口腔内に装着されるマウスピース(歯列矯正用アライナー20)であって、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)は、積層痕を有し、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)は、サポート痕を有しない(図1)。
【0064】
これにより、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)にサポート痕を形成しないようにすることができる。そのため、マウスピース(歯列矯正用アライナー20)を口腔内に装着した際の異物感が低減される。
【0065】
以上、本発明のマウスピース及びマウスピースの製造方法を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、追加等は許容される。
【0066】
実施例1では、周縁部28は、歯肉15に沿った形状に形成される例を示した。しかし、周縁部は、この態様に限定されない。例えば、図9に示すように、周縁部128は、頬側部22の下端と舌側部23の下端から、咬合平面S1に垂直方向D1に延在した形状とすることができる。これにより、周縁部128の検討を容易にすることができる。また、レーザ加工機50によって、周縁部128を歯列矯正用アライナー20から除去し易くなる。
【0067】
実施例1では、レーザ加工機50から照射されるレーザ光50aによって、周縁部28を歯列矯正用アライナー20から除去する例を示した。しかし、ニッパーやハサミ等の工具を使用して、周縁部を歯列矯正用アライナーから除去してもよい。
【0068】
実施例1では、積層造形装置30を、紫外線によって硬化する光硬化樹脂を使用した光造形装置を例として示した。しかし、積層造形装置としては、プロジェクターの光を利用して樹脂を硬化させ積層していくプロジェクション方式であってもよいし、液状の紫外線硬化樹脂を噴射して、紫外線を照らすことにより硬化させ積層させるインクジェット方式であってもよいし、熱に溶ける樹脂を1層ずつ積み上げていく熱溶解積層方式であってもよいし、粉末状の材料に高出力のレーザ光線をあて焼結させる粉末焼結方式であってもよい。
【0069】
実施例1では、歯列矯正用アライナー20を、歯冠を覆う凹溝状に形成される例を示した。しかし、歯列矯正用アライナーとしては、歯冠と歯肉、あるいは歯冠と床部分を覆う形状であってもよい。
【0070】
実施例1では、歯列矯正用アライナー20が、下顎の全部の歯10の歯冠を覆うように、凹溝状に形成される例を示した。しかし、歯列矯正用アライナーは、一部の歯の歯冠を覆うように、凹溝状に形成されてもよい。
【0071】
実施例1では、本発明を下顎の歯冠に装着する歯列矯正用アライナー20に適用する例を示した。しかし、本発明は、上顎の歯冠に装着する歯列矯正用アライナーに適用することができる。
【0072】
実施例1では、本発明を、歯10を覆うように口腔内に装着される歯列矯正用アライナー20に適用する例を示した。しかし、本発明は、歯列矯正用アライナーに限定されず、歯ぎしり防止用のマウスピース、睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピース、ホワイトニング用のマウスピース、スポーツ用マウスピースにも適用することができる。また、本発明のマウスピースは、歯を覆うようにして装着される装置を含むものとする。
【関連出願の相互参照】
【0073】
本出願は、2019年6月12日に日本国特許庁に出願された特願2019-109888に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9