(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】バッテリーの健康状態の推定を伴う充電器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20231012BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20231012BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231012BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231012BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H02J7/04 A
A24F40/50
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2021529381
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085412
(87)【国際公開番号】W WO2020127091
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ゾミニー,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ボルネル,パスカル
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-222427(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163262(WO,A1)
【文献】特開2008-067523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
A24F 40/00 - 47/00
G01R 31/36 - 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子タバコの充電式バッテリーを充電する方法であって、
前記充電式バッテリーに関連する履歴データを取得するステップであって、前記履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係する、ステップと、
充電電圧が印加される充電期間中又はその後に、前記充電式バッテリーの前記充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定するステップと、
前記1つ又は複数の測定されたパラメータ及び前記履歴データに基づいて、前記充電式バッテリーの健康状態を決定するステップと、
前記決定された健康状態に基づいて、前記電子タバコに対してアクションを行うステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の測定されたパラメータは、充電電圧及び充電電流のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の測定されたパラメータは、前記充電式バッテリーの開回路電圧を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の測定されたパラメータを、新たな登録事項として前記履歴データに記録するステップを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電子タバコを識別するステップを更に含む、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクションは、前記健康状態が正常範囲外である場合に通知を表示することを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記充電式バッテリーの前記充電に関係する前記1つ又は複数のパラメータを測定する前記ステップは、所定の持続時間の予備充電期間、又は充電電圧が印加される所定の充電状態まで前記充電式バッテリーが充電される予備充電期間中若しくはその後に行われる、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記充電式バッテリーは、前記予備充電期間後に休止し、前記1つ又は複数のパラメータを測定する前記ステップは、前記充電式バッテリーが休止している間又はその後に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記充電式バッテリーは、前記予備充電期間の後に少なくとも部分的に放電され、前記1つ又は複数のパラメータを測定する前記ステップは、前記少なくとも部分的な放電中に行われる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記充電式バッテリーは、前記電子タバコ内の主電気加熱素子とは別の抵抗性負荷に前記充電式バッテリーを接続することによって放電される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アクションは、前記健康状態が正常範囲内である場合、前記予備充電期間の後に、前記充電式バッテリーを充電することを含む、請求項7~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アクションは、前記健康状態が正常範囲外である場合、前記予備充電期間の後に、前記充電式バッテリーを、通常の充電と比較して少なくとも1つの充電パラメータが変更された変更モードで充電することを含む、請求項7~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アクションは、前記健康状態が許容不可能な範囲にある場合、前記充電式バッテリーの前記充電を無効にすることを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
電子タバコの充電式バッテリーを充電するためのシステムであって、
メモリユニットから前記充電式バッテリーに関連する履歴データを取得し、前記履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係し、
充電電圧が印加される充電期間中又はその後に、前記充電式バッテリーの前記充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定し、
前記1つ又は複数の測定されたパラメータ及び前記履歴データに基づいて、前記充電式バッテリーの健康状態を決定し、
前記決定された健康状態に基づいて、前記電子タバコに対してアクションを行う、ように構成される少なくとも1つのプロセッサを含む、システム。
【請求項15】
実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリ媒体であって、前記実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサが、
電子タバコの充電式バッテリーに関連する履歴データを取得し、前記履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係し、
充電電圧が印加される充電期間中又はその後に、前記充電式バッテリーの前記充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定し、
前記1つ又は複数の測定されたパラメータ及び前記履歴データに基づいて、前記充電式バッテリーの健康状態を決定し、
前記決定された健康状態に基づいて、前記電子タバコに対してアクションを行う、ようにする、コンピュータ可読メモリ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タバコなどの装置内のバッテリーの健康状態を決定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコなどの装置では、充電式バッテリーが一般に使用される。特に電子タバコには、消費者にとって使い易いように、特に、喫煙中にユーザにとって快適であるような態様で、ユーザが電子タバコを容易にユーザの唇に接触させて装置等から蒸気を吸いこむことができるように、小型である(例えば、紙巻タバコ、又は葉巻若しくはパイプなどの従来の喫煙物品をある程度模倣することができるなら便利である)という要件がある。同時に、バッテリーは、十分な量及び質の蒸気を生成するために、気化器素子にかなりの量の電力を提供するように、十分に強力である必要がある。従って、電子タバコは、最新のリチウムイオン電池などの小型だが比較的に強力なバッテリーを使用する傾向があり、リチウムイオン電池は、バッテリー(できる限り小さく保つことが望ましい)の所与の体積及び重量に対して、供給できる電力量、保持できる電荷量、及び充電できる速度を最適化するように継続的に開発が続けられている。
【0003】
これらのバッテリーの安全性は、設計及び製造方法などの内部要因、及びバッテリーが使用され充電される態様に関連した外部要因によって、影響を受けることがある。使用方法及び充電方法は、ユーザ及び装置の種類によって広範に変わることがあり、このことは、バッテリーの安全性及び寿命に影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電式バッテリーの有効性は、多数の充放電サイクルの後で時間の経過と共に低下することがあり、性能の低下は、バッテリーが使用され充電される態様によって、悪化することがある。バッテリーの性能が低下しているときにバッテリーを使用し続けると、安全性上の問題が持ち上がることがある。本発明の目的は、充電式バッテリーの寿命を延ばし、充電式バッテリーの使用上の安全性を向上させるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、電子タバコの充電式バッテリーを充電する方法が提供され、この方法は、以下のステップを含む、即ち、充電式バッテリーに関連する履歴データを取得するステップであって、履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係する、ステップと、充電電圧が印加される充電期間中に、充電式バッテリーの充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定するステップと、その1つ又は複数の測定されたパラメータ及び履歴データに基づいて、充電式バッテリーの健康状態を決定するステップと、決定された健康状態に基づいて、電子タバコに対してアクションを行うステップと、を含む。
【0006】
このようにして、決定された健康状態に従って、装置の充電を制御することができる。特に、バッテリーの健康状態が良くないことが分かると、充電を変更するか又は一時停止することがある。これにより、バッテリーの寿命を延ばし、使用上の安全性を向上させることができる。
【0007】
デフォルトのデータセットは、製造業者によって提供されることがあり、製造業者による以前の試行で測定された複数の「健康な」バッテリーの分析、及び/又は、使用中の複数の装置から製造業者に送り返されたデータの結果、などに基づくことがある。
【0008】
健康状態は、1つ又は複数の測定されたパラメータ及び履歴データに基づいて決定される。健康状態は、履歴データの1つ又は複数の態様と測定されたパラメータのうちの1つ又は複数との関数であり得る。これらのパラメータを、多数の考え得る数学的モデルを使用して組み合わせて、バッテリーの使用上の安全性及び/又はバッテリーが故障を引き起こす可能性に関係する健康状態を決定することができる。
【0009】
履歴データは、メモリユニットから取得することができ、メモリユニットは、装置内、又は携帯電話若しくは遠隔サーバーなどの接続されたリソース内に配置されることがある。決定は、プロセッサによって行われることが好ましく、プロセッサは、装置内、又は充電装置内、又は携帯電話、コンピュータ、若しくは遠隔サーバーなどの接続されたリソース内に配置されることがある。
【0010】
本技術によって決定された健康状態は、バッテリーの健康の相対的な測定値を表すことがある。従って、健康状態は、バッテリーの初期の健康、又は少なくともバッテリーの以前の健康と比べたバッテリーの現在の健康を示すことがある。一例では、健康状態を分析して、経時的なバッテリー性能の低下を判断することがある。
【0011】
電子タバコは、1つ又は複数の充電式バッテリーを含むことがあり、充電は、無線で、又は電源との有線接続によって、行うことができる。
【0012】
1つ又は複数の測定されたパラメータは、充電電圧及び充電電流を含むことがある。充電電圧及び充電電流は、時間の関数として測定されることもある。従って、測定されたパラメータは、充電電圧の変化率、充電電流の変化率、及び高次微分を含むことがある。他の例では、測定されたパラメータは、充電サイクルの持続時間、開回路電圧、内部抵抗、及びバッテリー温度などの他のパラメータを含むことがある。
【0013】
この方法は好ましくは、1つ又は複数の測定されたパラメータを、新たな登録事項として履歴データに記録するステップを含む。このようにして、充電動作中に行われた新たな測定に基づいて、履歴データを継続的に更新することができる。
【0014】
この方法は、装置を識別するステップを含むことがある。履歴データは、特定の装置とリンクしていることが好ましい。各装置は、それ自体の独自の特性を有することがある。使用されている装置に応じて、健康状態について異なる決定方法が採用されることがある。
【0015】
健康状態が正常範囲外である場合、アクションには、通知を表示することが含まれることがある。このようにして、充電式バッテリーがその使用可能寿命の終わりに近づいている場合、ユーザに通知することができる。これにより、たとえ充電式バッテリーを変更された充電モードで使用し充電し続けることができるとしても、充電式バッテリーを交換するようにユーザに促すことができる。
【0016】
充電式バッテリーの充電に関係する1つ又は複数のパラメータを測定するステップは、所定の持続時間の予備充電期間、又は充電電圧が印加される所定の充電状態まで充電式バッテリーが充電される予備充電期間中に行われることが好ましい。充電電圧は、特に、1つ又は複数のパラメータを測定することができるように、予備充電期間中に印加されることがある。これは、長時間にわたる充電期間がバッテリーの健康状態によってサポートされない場合に、装置を長期間にわたる充電期間に供することなく、分析データを取得できることを意味する。装置に対して行われるアクションには、健康状態がこのアクションをサポートすることができることを示す場合、指定のない期間の間、充電式バッテリーを充電することが含まれることがある。
【0017】
充電式バッテリーは、予備充電期間後に休止することが好ましく、1つ又は複数のパラメータを測定するステップは、充電式バッテリーが休止した後に行われる。このようにして、測定が行われる前に、バッテリーの化学反応を落ち着かせることができる。これにより、測定の精度及びその後の健康状態の判断の精度を向上させることができる。
【0018】
予備充電期間及びオプションの休止期間の後、装置は、電子タバコの加熱素子とは別の負荷を使用して、部分的に放電されることがある。これにより、健康状態を判断するために、少なくとも部分的な放電中に指標を決定することができる。
【0019】
健康状態が正常範囲内にある場合、アクションは、予備充電期間後に充電式バッテリーを充電することを含むことがある。別の構成では、健康状態が正常範囲外であるが許容可能範囲内である場合、アクションは、予備充電期間後に、充電式バッテリーを変更モードで充電することを含むことがある。変更充電モードは、充電式バッテリーの寿命を延ばすために、低減された充電電流、パルス化充電電流、又は低減された充電電圧などの、通常の充電と比べて変更された少なくとも1つの充電パラメータを適用することを含むことがある。
【0020】
健康状態が許容不可能な範囲にある場合、アクションは、充電式バッテリーの充電を無効にすることを含むことが好ましい。これは、関連するバッテリーについて充電が無効であることを示すようにメモリユニット内のフラグを設定することにより、又は、一例では、ヒューズをとばすことにより充電を物理的に無効にすることにより、実現することができる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、電子タバコの充電式バッテリーを充電するためのシステムが提供され、このシステムは、メモリユニットから充電式バッテリーに関連する履歴データを取得し、履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係し、充電電圧が印加される充電期間中に、充電式バッテリーの充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定し、その1つ又は複数の測定されたパラメータ及び履歴データに基づいて、充電式バッテリーの健康状態を決定し、決定された健康状態に基づいて、電子タバコに対してアクションを行う、ように構成される少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0022】
この少なくとも1つのプロセッサは、マイクロコントローラ又はコンピュータであり得る。この少なくとも1つのプロセッサは、充電器、電子タバコ、又はコンピュータの中に設けられることがある。プロセッサの機能は、当然ながら、幾つかのプロセッサの間で分散させることができ、当業者であれば、プロセッサの位置に関わらず、プロセッサが動作を実施できることを理解するであろう。
【0023】
本発明の更に別の態様によれば、実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリ媒体が提供され、この実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサが、電子タバコの充電式バッテリーに関連する履歴データを取得し、履歴データは少なくとも1つの以前の充電動作及び/又はデフォルトのデータセットに関係し、充電電圧が印加される充電期間中に、充電式バッテリーの充電に関係した1つ又は複数のパラメータを測定し、その1つ又は複数の測定されたパラメータ及び履歴データに基づいて、充電式バッテリーの健康状態を決定し、決定された健康状態に基づいて、電子タバコに対してアクションを行う、ようにする。
【0024】
ここで、図面を参照しながら、本発明の実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本発明の一実施形態における電子タバコの正面斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における充電装置と共に電子タバコなどの装置を示す概略回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態における方法において行うことができるステップを示すフロー図である。
【
図4】本発明の一実施形態において充電状態が時間に対してプロットされている充電動作の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用する場合、「吸入器」又は「電子タバコ」という用語は、喫煙用のエアロゾルを含む、エアロゾルをユーザに送達するように構成された電子タバコを含むことがある。喫煙用のエアロゾルとは、0.5~7マイクロメートルの粒径のエアロゾルを指すことがある。粒径は、10又は7マイクロメートル未満であり得る。電子タバコは、携帯可能であり得る。
【0027】
図1A~
図1Cは、本発明の一実施形態における電子タバコ3を示す。電子タバコ3は、刻み煙草を含む従来のタバコの代替品として使用することができる。電子タバコ3は、細長い本体5、マウスピース部6、及びタバコのスティック(図示せず)を受け取るためのオーブン8を含む。オーブン8は、タバコのスティックを燃やすことなく加熱し、蒸気を生成することができる電気ヒーター10を含む。代替の実施形態では、電子タバコ3は、気化可能な液体を収容するためのタンクを含むことがある。
【0028】
蒸気チャネル12が設けられ、オーブン8とマウスピース部6との間に延びる。マウスピース部6は、ユーザの口に人間工学的に対応した先端形状になっている。電子タバコは、マウスピース部6及び蒸気チャネル12と流体連通している吸気口14を更に含み、それにより、マウスピース部6上でユーザが吸い込むことにより、空気が吸気口14に入って且つオーブン8及び蒸気チャネル12を通してマウスピース部6まで流れるようになる。ユーザが電気ヒーター10による蒸気の生成を制御することができる作動ボタン21が設けられている。
【0029】
電子タバコはバッテリー2を含み、バッテリー2は、PCB4内の制御回路の制御下で電気ヒーター10に電力を供給するように構成される。一例では、バッテリー2は、容量が1100mAhの円筒形の形状をしたLTO(チタン酸リチウム酸化物)バッテリーであり、完全に充電されたときに約2.4Vの動作電圧を提供する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態において使用することができる構成要素を示す概略回路図である。この実施形態では、コンピュータ30が充電器40を介して装置50に接続されている。充電器40は、コンピュータ30又は装置50の内部にあってもよく、又は独立した構成要素であってもよい。一実施形態では、装置50は、上述したように電子タバコ3であり得る。
【0031】
装置50は、充電式バッテリー2、メモリユニット52、マイクロコントローラ54、及びバッテリー2の温度を決定するための温度センサを含む1つ又は複数のセンサ56を含む。メモリユニット52は、フラッシュメモリストレージ、又は他の任意の種類の適切なメモリストレージデバイスとして構成されることがある。メモリユニット52は、装置の使用及び充放電サイクルに関する履歴データを保存するように構成される。履歴データは通常、装置50が電子タバコである場合にユーザが行ったパフの回数、バッテリー2及びオーブン8の温度プロファイル、バッテリー2の充電状態、使用された消耗品の種類、並びにオーブン8内のヒーターの抵抗の測定値、に関する情報を含む。履歴データは、発生した充電イベントの記録情報も含む。記録されるパラメータには、充電電圧、充電電流が、両方とも瞬時値として且つ時間の関数として、含まれることがある。このようにして、記録されるパラメータには、充電電圧の変化率、充電電流の変化率、及び高次微分が含まれることがある。他の例では、履歴データには、充電サイクルの持続時間及び開回路電圧が含まれることがある。更に、他の例では、履歴データには、負荷がかかったときの電圧が含まれることがある。これは、エアロゾルが全く生成されない、又はエアロゾルが有意な量では生成されない十分に短い期間(10ミリ秒未満であることが好ましい)の間、装置のヒーターに電力を供給することにより、又はその代わりに、ユーザがエアロゾルを生成するために装置を使用しているときにバッテリーの電圧を測定することにより、得ることができる。履歴データは、各充電イベントから引き出された新しいデータを追加することにより、時間の経過と共に拡張されることがある。
【0032】
この例示的な実施形態では、メモリユニット52は、装置50の一部として示されている。しかしながら、携帯電話などの、装置50に通信可能に接続されている連携装置の一部としてメモリユニット52を設けることも、同様に可能である。同様に、メモリユニット52は、コンピュータ30内に配置することも、又はネットワーク越しにアクセス可能であるサーバー内に遠隔的に配置することも可能である。
【0033】
充電器40は、装置50内の充電式バッテリー2を充電でき且つ充電及び予備充電イベント中に電気的パラメータを監視できる、構成要素を備える。この実施形態では、充電器40は、マイクロコントローラ42、充電集積回路(IC)44、及びタイマー46を含み、これらは組み合わさって、充電イベントを制御する。装置50内のバッテリー2と外部電源31との間には充電スイッチ48が設けられ、外部電源31は、コンピュータ30の一部として、又はそれとは別個に設けられることがある。電圧検出器41、電流検出器43、及び(環境)温度を測定するためのセンサ45を含む、複数のセンサが充電器40内部に設けられている。充電器40は抵抗性負荷47も含み、スイッチ48が、この抵抗性負荷47をバッテリー2と電源31との間に任意選択的に接続させることができる。接続されると、抵抗性負荷47は、バッテリー2と電源31との間に直列に設けられる。抵抗性負荷47は、バッテリー2の測定を行うために、電源31には接続しないで、バッテリー2に接続されることもある。装置が上述した電子タバコ3である場合、抵抗性負荷は装置のヒーターであることがあり、又は、ヒーター素子とは無関係であることがある。他の実施形態では、負荷は、純粋に抵抗性の負荷というよりはむしろ、インピーダンス負荷であり得る。
【0034】
電源31は、コンピュータ30内に、又はコンピュータ30と並列に設けられる。
図2に概略的に示されるように、コンピュータ30は、中央処理装置(CPU)32、内蔵で又は外付けで設けられることがあるメモリ34、及びオペレーティングシステム36も含む。コンピュータ30は、ソフトウェアで提供される複数の機能を含む。具体的には、コンピュータ30は、充電プロファイル計算機33、健康状態推定器35、並びに放電深度及び充電状態推定器37を含む。コンピュータ30内部に保存されているのは、異なる装置の充電プロファイルに関係する履歴データ39である。装置50に保存されている履歴データは、コンピュータ30に、これら2つが通信可能に接続されたときに転送されることがある。コンピュータ30は、多数の異なる装置と共に使用されることがあり、各装置の履歴データは、通信上の相互作用が確立されたときにコンピュータ30に転送されることがあり、この通信上の相互作用は、必ずしも排他するものではないが、通常は、充電イベント中に確立される。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態における方法において行うことができるステップを示すフロー図である。この方法は、充電イベントを開始することができるように、装置50がコンピュータ30及び充電器40に接続されたときに開始する。一例では、これは、ケーブルを使用して装置50をコンピュータ30に物理的に接続することを含むことがある。別の例では、これは、コンピュータ30に接続されている無線充電パッド上に装置50を置くことを含むことがある。ステップS1では、コンピュータ30内のCPU32が、接続された装置50及びその充電式バッテリー2を識別する。これは、装置50及びバッテリー2のシリアル番号を検出することにより、行われることがある。ステップS2では、CPU32は装置50内のメモリユニット52から履歴データをダウンロードし、関連する(識別された)装置50の保存された履歴データ39を更新する。ステップS3では、充電器40内のマイクロコントローラ42は、バッテリー2を抵抗性負荷47に接続し、その結果、電圧検出器41は、バッテリーセル電圧を測定し、この情報をCPU32に送ることができる。この時点で、CPU32は使用データと測定されたセル電圧との相関を取り、バッテリー2の放電深度を推定することができる。オプションのステップS4では、充電器40内のマイクロコントローラ42は、装置50から情報を収集し、この情報には、センサ56によって決定されたバッテリー2の温度が含まれる。ステップS5では、コンピュータ30内の充電プロファイル計算機33が、充電電流、到達されることになる最大充電容量、予備充電イベントの期間、を計算する。これらの計算は、使用された以前の充電電流、行われた充電サイクルの回数、及び関連するバッテリー2について決定された以前の健康状態、を含む履歴データに基づいていることがある。一例では、標準的な予備充電電圧は約4.2Vである。これは、履歴データに基づいて、安全上の理由から低減されることがある。一例では、履歴データがバッテリー性能の低下を示す場合には、約4.06Vの予備充電電圧(これは、標準的な予備充電電圧の約80%である)が選択されることがある。予備充電イベントの期間は、予備充電電圧に比例して調節されることもある。
【0036】
ステップS6では、充電器40内のマイクロコントローラ42が、予備充電イベントを開始する。充電パラメータを監視することができるように、ステップS5で決定された充電電流を、関連する期間の間、印加する。特に、充電電圧及び充電電流が、それぞれ電圧検出器41及び電流センサ43によって監視される。バッテリー2の充電状態も、監視される。更に、バッテリー2の温度及び環境温度を監視することができる。関連する期間の終了時に、予備充電が終了し、充電電流が停止される。
【0037】
一実施形態では、ステップS6で、バッテリー2を所定のSoCまで充電するように、予備充電が適用される。例えば、バッテリー2は、SoC_Fullの30~40%の所定のレベルまで充電されることがある。
図4は、充電動作におけるバッテリー2のSoCを、時間に対してプロットして示した概略グラフである。T0からT1までの第1の期間では、SoCは、SoC_Fullの30~40%であり得る所定の閾値、SoC
thresholdに達するまで、予備充電イベント中に増加する。この所定の閾値は、ステップS10に関連して以下で説明するように、放電イベントにおいてセル電圧を効果的に測定できるように、バッテリー2が十分に充電されていることを確実にするように、選択されることがある。
【0038】
ステップS7では、マイクロコントローラ42は、予備充電イベントが完了していることをチェックし、これは、予備充電が関連する期間の間正常に行われたことを意味する。予備充電が完了していない場合、マイクロコントローラは、ステップS8で、バッテリー2が充電器40から取り外されたかどうかをチェックする。バッテリー2が取り外されていない場合、ステップS6で予備充電が再試行される。バッテリーが取り外されている場合、充電イベントは終了し、予備充電イベント中に取得された関連データが、装置50及び/又はコンピュータ30内の履歴データに追加される。
【0039】
ステップS9aで、予備充電イベントが正常に完了すると、バッテリー2はT1からT2までの所定の休養期間の間休止して、バッテリーが安定するようにし、測定が行われる前に化学反応が完了できるようにする。実施形態では、所定の休養期間は、バッテリー又は設計上の考慮事項に応じて、10~15分、又は15~30分、又は別の値であり得る。
【0040】
ステップS9bでは、休止期間の後に、マイクロコントローラ42は、バッテリー2の開回路電圧及びバッテリー2の内部抵抗を、DCモード及びACモードで測定する。ステップS10では、負荷がかかったときのバッテリーセル電圧を測定するために、マイクロコントローラ42は、スイッチ48を動作させてバッテリー2を抵抗性負荷47に接続する。言い換えると、ステップS10では、バッテリーは、
図4を参照して、T2からT3までの第3の期間の間、抵抗性負荷47を介して部分的に放電される。バッテリー2の温度及び環境温度も、関連する温度センサ45、56を使用して、ステップS10でマイクロコントローラ42によって決定されることがある。温度を含む測定は、5℃~50℃の範囲で12ビットで動作するアナログ/デジタルコンバータを使用して、高分解能で行われるのが好ましい。当業者であれば、10ビット又は14ビットなどの他の分解能を使用できることを認識するであろう。高分解能で測定を行うことにより、より正確な情報を取得してSoHをより正確に決定し、充電性能の向上を達成することが可能になる。ステップS11では、マイクロコントローラ42は、取得したデータをコンピュータ30に送る。次いで、コンピュータ内の健康状態推定器35が、バッテリーの健康状態を推定する。健康状態は、予備充電イベントから測定されたパラメータ及び装置内のメモリ52から取得された履歴データに基づいて、決定される。異なる実施形態において、多数の数学的モデルを使用して健康状態を決定することができる。健康状態の決定値を、履歴データの1つ又は複数の態様と測定されたパラメータのうちの1つ又は複数との関数に基づいて計算して、バッテリーの使用上の安全性及び/又はバッテリーが故障を引き起こす可能性に関連した指標を決定する。健康状態推定器35で使用されるアルゴリズム及び/又はデータは、インターネットを介してウェブサーバーからダウンロードされるか、又はウェブサーバーによって更新されることがある。これにより、新たな改良されたアルゴリズム又はデータが利用可能になったときに、それらを採用できるように、充電器内のファームウェアを更新することが可能になる。一例では、健康状態推定器35は、実地で使用されている同様の装置内で使用される他のバッテリーからの実際のデータを利用することができる。これらのデータは、他の装置によってウェブサーバーにアップロードされることがあり、そこから、データにアクセスすることができる。このようにして、バッテリーの健康状態を、世界中で使用されている他の装置内の同様のバッテリーからの充放電サイクルから決定されたデータに関連して、評価することができる。
【0041】
バッテリーの健康状態の決定に関する1つの単純な例では、以下のステップが行われることがある。まず、健康状態に関連するパラメータの基礎値を決定する。これは、組み立て及び試験工程の一部として製造時に行われることがあり、又は、ユーザが最初に充電を行うときに行われることがある。これを行うために、システムはバッテリーの充電レベルを推定する(これは、バッテリーの負荷時の及び/又は開回路のバッテリー電圧を測定し、これを、異なるレベルの充電状態に関連した事前に規定された負荷時の及び/又は開回路のバッテリー電圧と比較することにより、或いは、特にそのバッテリー用にバッテリー製造業者によって提供される専用の方法によって、行うことができる)。バッテリーの充電状態を推定するこの方法を使用して、この方法は、一定の負荷を通じて一定の期間バッテリーを放電した後、負荷時のセル電圧の測定を続ける。続いて、電圧降下に基づいて比率が計算される。この比率は、異なるレベルの充電状態に対して計算される(例えば、25%の充電状態(SoC)、50%のSoC、75%のSoC、及び完全充電時(充電が停止したことによって決定される))。電圧降下測定値間のこれらの比率は、一組のベースライン測定値を形成する。その後の各充電イベント中に、その充電イベント中に新たな測定を行い、電圧降下比率を計算し、それらを(履歴上の)ベースライン比率と比較することにより、健康状態パラメータが計算される。健康状態の値は、この比較に基づいて決定される。例えば、一実施形態では、異なるSoC測定点の全てにおける平均比率が、異なるSoC測定点における平均(履歴)ベースライン比率よりも第1の所定の量(例えば、30%)を超えて上回った場合、又は、何れか1つのSoC測定点での比率がそのSoC測定点における対応する(履歴)ベースライン比率を、第2の所定の量(例えば、40%)を超えて上回った場合、健康状態の値は「悪い」に設定される。中間の健康状態の値は、増加ゼロと30%の増加という2つの極値の間の上記の平均比率の増加量に基づいて、計算することができる。
【0042】
例えば、第1の充電イベントについて、以下のベースライン比率を決定することができる。25%のSoCは、3.5V-3.2V/3.5V=0.085、50%のSoCは、3.8-3.7V/3.8V=0.026、75%のSoCは、4.15-4.14V/4.15V=0.002、100%のSoCは、4.2-4.18V/4.2V=0.004。平均ベースライン比率=(0.085+0.026+0.002+0.004)/4=0.029。
【0043】
バッテリーが寿命に近づいている場合、以下の測定が行われることがある。25%のSoCは、3.1-2.8V/3.1V=0.096、50%のSoCは、3.4-3.1V/3.4V=0.088、75%のSoCは、3.8-3.6V/3.8V=0.052、SoC100%は、4.2-3.9V/4.2V=0.071。平均比率=(0.096+0.088+0.0052+0.071)/4=0.076。
【0044】
異なる健康状態のバッテリーセルから生成されたデータを伴うルックアップテーブルが、所与の比率に対応するSoHを決定するのに役立ち、0.029は100%のSoHに対応し、0.076は37%のSoHに対応する。
【0045】
例示的な実施形態では、バッテリーを充電中の損傷から保護するために、40%未満と計算された健康状態(上記に記載した例など)が、一定電流充電段階中の充電電流を低減し、且つ一定電圧充電段階中の充電電圧を低減するなどの、アクションをトリガーするのに、十分であることがある。同時に、これにより、バッテリーが寿命に近づいており、ユーザが新しいバッテリー(又は、バッテリーを交換することができない場合には、新しい装置)を購入する時期であることを、ユーザに警告することができる。同様に、そのような例示的な実施形態においては、健康状態が0%以下であると、装置がバッテリーの更なる充電を無効にし、バッテリーの交換が必要であること、及びバッテリーが交換される(又は、バッテリー交換ができない場合には、装置が交換される)まで装置はこれ以上機能できないこと、をユーザに警告する。
【0046】
ステップS12では、CPU32は、健康状態の指標が正常範囲内であるかどうかを判断する。健康状態が正常である場合、ステップS13で、充電が開始される。従って、バッテリー2の通常の充電は、一旦予備充電が完了し、CPU32が、安全な充電のために健康状態が満足のいくものであると判断した後にのみ、開始される。
図4を参照して、通常の充電は、SoCが100%になるか又は100%の近くになるまで、T3からT4までの第4の期間の間に、適用される。ステップS14では、一旦充電動作が完了すると、装置データが再初期化される。ステップS15では、一旦バッテリー2が完全に充電されると、T4の後の期間、第5の期間中に、充電イベント中に取得した関連データが、装置50内のメモリユニット52に保存された履歴データに、登録事項として追加される。これにより、装置50の充電イベントが完了する。
【0047】
ステップS12で、健康状態が正常範囲外である(且つ許容不可能な範囲内である)ことが分かった場合、ステップS16で、コンピュータ30及び装置50に保存された履歴データが、関連する診断データを用いて更新される。ステップS17で、バッテリー充電が無効にされる。これは、装置50のメモリユニット52内の、将来の充電イベントを防止するフラグを設定することにより、実現することができる。或いは、充電イベントは、例えばヒューズをとばしたり、又はスイッチを作動させたりすることにより、物理的に無効にすることができる。
【0048】
別の構成では、ステップS12で、CPU32は、健康状態の指標が。正常範囲外であるが許容可能範囲内であるかどうかを判断することがある。この状況では、変更された充電段階を開始することができる。変更された充電段階では、通常の充電と比較して低減された充電電流を印加することが可能であることがある。これにより、充電を完了するのに必要な時間が長くなることがあるが、性能の低下したバッテリー2の使用寿命及び使用上の安全性を拡張することができる。絶対値に関して充電電流が低減されることがあるか、又は、パルス充電を、パルス間に選択された時間ギャップを伴って適用することがある。幾つかの構成では、充電電流が約20~30%低減されることがある。充電電流が低減される量は、SoH値に依存することがある。SoH値に基づいて、充電電流又は電圧の段階的な低減が適用されることがある。例えば、実施形態によっては、充電電流は、特に低いSoH値に対して最大で約50%まで低減されることがある。通常の充電電圧の約80%である、低減された充電電圧を印加することも可能であり得る。例えば、通常の充電電圧が4.2Vであるのに対して、低減された充電電圧が4.06Vであることがある。
【0049】
健康状態の指標についての情報を表示するためのディスプレイ(図示せず)が設けられることがある。一例では、変更された充電段階が開始された場合、ディスプレイが、充電式バッテリー2がその使用可能寿命に近づいているという通知を提供することがある。これにより、たとえ充電式バッテリーを変更された充電モードで使用し続けることができるとしても、充電式バッテリーを交換するようにユーザに促すことができる。健康状態が許容不可能な範囲内にあると判断された場合、ディスプレイは、充電式バッテリー2を交換しなければならないという通知を提供することがある。
【0050】
健康状態の判断は、計算資源を消費することがあるか、又は充電時間を延長することがあるので、健康状態の評価を、各充電イベント中ではなく、定期的に予定することが望ましいことがある。一例では、健康状態の評価は、毎週又は毎月をベースに予定されることがあるか、又は、ユーザからの特定の要求に応じて行われることがある。これにより、通常の使用を妨げることなく、バッテリーの安全な動作を保証することができる。