IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポスコ カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-方向性電磁鋼板およびその製造方法 図1
  • 特許-方向性電磁鋼板およびその製造方法 図2
  • 特許-方向性電磁鋼板およびその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231012BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20231012BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20231012BHJP
   C22C 38/34 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C21D8/12 D
H01F1/147 175
C22C38/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021536313
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2019018025
(87)【国際公開番号】W WO2020130639
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165644
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン-テ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,オ-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウ-シン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508647(JP,A)
【文献】特表2016-532776(JP,A)
【文献】特開2013-036121(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0073306(KR,A)
【文献】特開2017-095745(JP,A)
【文献】米国特許第04904312(US,A)
【文献】特開2004-238734(JP,A)
【文献】特開2016-145419(JP,A)
【文献】特開2017-145506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, 9/46
C22C 38/00-38/60
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板の表面に位置するグルーブ、
前記グルーブ上に位置する金属酸化物層および
前記グルーブの下部に位置する不連続的に分散分布する金属酸化物系アイランドを含み、
方向性電磁鋼板を観測する断面が鋼板圧延方向(RD方向)および厚さ方向(ND方向)を含む断面(TD面)で、グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドの密度がグルーブ当たり5~15個であり、
前記グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドの密度は0.5個/μm以下であ
前記グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドのうち球形度が0.6~1.0である前記金属酸化物系アイランドの個数が60%以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項2】
圧延垂直方向に対して、グルーブが2~10個断続的に存在することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記グルーブの長手方向と鋼板の圧延方向は75~88°の角度をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項4】
冷延板を製造する段階、
前記冷延板にグルーブを形成する段階、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、および
前記1次再結晶された冷延板に焼鈍分離剤を塗布し、2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階の後、冷延板の表層部のSiO/FeSiOの重量比が0.3~3であり、
前記グルーブを形成する段階で、グルーブの下部に再凝固層が厚さ3μm以下に形成さ
前記グルーブ上に位置する金属酸化物層および前記グルーブの下部に位置する不連続的に分散分布する金属酸化物系アイランドを含み、
方向性電磁鋼板を観測する断面が鋼板圧延方向(RD方向)および厚さ方向(ND方向)を含む断面(TD面)で、
前記グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドの密度がグルーブ当たり5~15個であり、
前記グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドの密度は0.5個/μm 以下であり、
前記グルーブの下部に位置する前記金属酸化物系アイランドのうち球形度が0.6~1.0である前記金属酸化物系アイランドの個数が60%以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
ただし、xは1~2の整数であり、yは2~4の整数である。
【請求項5】
前記グルーブを形成する段階で、前記冷延板にレーザを照射してグルーブを形成し、
レーザ出力が1.5kW以上であり、レーザ走査速度が8m/s以上であり、レーザ走査距離が100mm以上であることを特徴とする請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階は、710~870℃の温度および40~70℃の露点温度で行われることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、1次再結晶焼鈍以降、SiO/FeSiOの重量比を制御してアイランドを適切に形成することによって、磁性を向上させた方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は変圧器などの電磁気製品の鉄心材料として使用されるので、電気機器の電力損失を減らすことによってエネルギ変換効率を向上させるためには鉄心素材の鉄損に優れ、積層および巻き取り時の占積率が高い鋼板が求められる。
方向性電磁鋼板は熱延、冷延および焼鈍工程によって2次再結晶された結晶粒が圧延方向に{110}<001>方向に配向された集合組織(別名「Goss Texture」ともいう)を有する機能性鋼板をいう。
方向性電磁鋼板の鉄損を下げる方法として、磁区微細化方法が知られている。すなわち、磁区をスクラッチやエネルギ的衝撃を与えて方向性電磁鋼板が有している大きな磁区の大きさを微細化させることである。この場合、磁区が磁化し、その方向が変わるときのエネルギ消耗量を磁区の大きさが大きかったときより減らすことができる。磁区微細化方法としては熱処理後にも磁気的特性が改善されてその効果が維持される永久磁区微細化とそうではない一時磁区微細化がある。
【0003】
回復(Recovery)が示される熱処理温度以上の応力緩和熱処理後にも鉄損改善効果を奏する永久磁区微細化方法はエッチング法、ロール法およびレーザ法に分けられる。エッチング法は溶液内の選択的な電気化学反応で鋼板表面に溝(グルーブ、groove)を形成させるので溝形状を制御することが難しく、最終製品の鉄損特性を幅方向に均一に確保することが難しい。さらに、溶媒として使用する酸溶液により環境汚染を誘発し得る短所を有している。
ロールによる永久磁区微細化方法はロールに突起形状を加工してロールや板を加圧することによって板の表面に一定の幅と深さを有する溝を形成した後焼鈍することによって溝の下部の再結晶を部分的に発生させる鉄損改善効果を示す磁区微細化技術である。ロール法は機械加工に対する安定性、厚さに応じた安定した鉄損確保が得られにくい信頼性およびプロセスが複雑で、溝形成直後(応力緩和焼鈍前)鉄損と磁束密度の特性が劣化する短所を有している。
【0004】
レーザによる永久磁区微細化方法は、高出力のレーザを高速で移動する電磁鋼板の表面部に照射してレーザ照射によって基地部の溶融を伴うグルーブ(groove)を形成させる方法を用いる。しかし、このような永久磁区微細化方法も磁区を最小の大きさに微細化させることは難しい。
一時磁区微細化の場合、コートした状態でレーザを加えた後にはコーティングをもう一度しない方向に研究をしているのでレーザを一定以上の強度で照射しようとしない。一定以上で加える場合、コーティングの損傷により張力効果を正しく発揮しにくいからである。
永久磁区微細化の場合、溝を掘り静磁エネルギを受け得る自由電荷の面積を広げることであるため最大限深い溝の深さが必要である。もちろん深い溝の深さによって磁束密度の低下などの副作用も生じる。そのために磁束密度の劣化を減らすために適正な溝の深さに管理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が目的とするところは、方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにあり、より具体的には、1次再結晶焼鈍した後、SiO/FeSiOの重量比を制御してアイランドを適切に形成することによって、磁性を向上させた方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方向性電磁鋼板は、電磁鋼板の表面に位置するグルーブ、グルーブ上に位置する金属酸化物層およびグルーブの下部に位置する不連続的に分散分布する金属酸化物系アイランドを含み、
グルーブの下部に位置するアイランドがグルーブ当たり15個以下であり、
アイランドの密度は0.5個/μm以下であり、
アイランドのうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドの個数が60%以上であることを特徴とする。。
【0007】
圧延垂直方向に対して、グルーブが2~10個断続的に存在し、
グルーブの長手方向と鋼板の圧延方向は75~88°の角度をなすことを特徴とする。
【0008】
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、冷延板を製造する段階、冷延板にグルーブを形成する段階、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、および1次再結晶された冷延板に焼鈍分離剤を塗布し、2次再結晶焼鈍する段階を含み、
冷延板を1次再結晶焼鈍する段階の後、冷延板の表層部のSiO/FeSiOの重量比が0.3~3であることを特徴とする。
ただし、xは1~2の整数であり、yは2~4の整数である。
【0009】
グルーブを形成する段階で、前記冷延板にレーザを照射してグルーブを形成し、レーザ出力が1.5kW以上であり、レーザ走査速度が8m/s以上であり、レーザ走査距離が100mm以上であり、
グルーブの下部に再凝固層が形成され、
グルーブの下部に再凝固層が厚さ3μm以下に形成されることを特徴とする。
【0010】
冷延板を1次再結晶焼鈍する段階は710~870℃の温度および40~70℃の露点温度で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1次再結晶焼鈍した後、SiO/FeSiOの重量比を制御してアイランドを適切に形成することによって、磁性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方向性電磁鋼板の圧延面(ND面)の模式図である。
図2】本発明のグルーブの模式図である。
図3】本発明のグルーブの断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1、第2および第3等の用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるがこれらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するために使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
別に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に合う意味を有するものとして追加解釈され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0014】
図1では本発明によって磁区微細化された方向性電磁鋼板10の模式図を示す。
図1に示すように、本発明による方向性電磁鋼板10は、電磁鋼板の一面または両面に、圧延方向(RD方向)と交差する方向に形成された線状のグルーブ20;が形成されている。
以下各段階別に具体的に説明する。
先ず冷延板を製造する。本発明では冷延板を製造した後、磁区微細化方法にその特徴があり、磁区微細化の対象となる冷延板は方向性電磁鋼板分野で使用する冷延板を制限なく使用することができる。特に、方向性電磁鋼板の合金組成とは関係なく本発明の効果が発現する。したがって、方向性電磁鋼板の合金組成に係る具体的な説明は省略する。一例として、冷延板は、重量%で、C:0.10%以下、Si:2.0~6.5%、Mn:0.005~1.0%、Nb+V+Ti:0.02%以下、Cr+Sn:0.8%以下、Al:3.0%以下、P+S:0.09%以下および希土類を含み、その他不純物の総和0.5%以下および残部Feからなる。
冷延板の製造方法についても方向性電磁鋼板分野で用いる冷延板の製造方法を制限なく用いることができ、これに係る具体的な説明は省略する。
【0015】
次に、冷延板にグルーブを形成する。
グルーブを形成する段階で、圧延垂直方向に対して、グルーブを2~10個断続的に形成する。図1には圧延垂直方向に対して、グルーブを4個断続的に形成した例を示す。ただし、これに限定されるものではなく、グルーブを連続的に形成することも可能である。
図1および図2に示すように、グルーブ20の長手方向(図1のRD方向、図2のX方向)と圧延方向(RD方向)は75~88°の角度をなす。前述した角度でグルーブ20を形成すると、方向性電磁鋼板の鉄損改善に寄与することができる。
グルーブの幅Wは10~200μmである。グルーブ20の幅が短いか大きいと、適切な磁区微細化効果が得られなくなる。
また、グルーブの深さHは30μm以下である。グルーブの深さHが過度に深いと、強いレーザ照射によって鋼板10の組織特性を大きく変化させ、多量のヒールアップおよびスパッタを形成して磁性を劣化させる。したがって、前述した範囲にグルーブ20の深さを制御する。より具体的にはグルーブの深さは3~30μmである。
【0016】
グルーブを形成する段階で、冷延板にレーザまたはプラズマを照射してグルーブを形成する。
レーザを用いる場合、レーザ出力が1.5kW以上であり、レーザ走査速度が8m/s以上であり、レーザ走査距離が100mm以上である。適切な出力、走査速度および走査距離を用いることによって、グルーブの下部に再凝固層を適切に形成することができる。これは1次再結晶焼鈍後、表層の成分含有量につながり、窮極的に鉄損改善を助ける。より具体的にはレーザ出力が1.5~10kWであり、レーザ走査速度が8~15m/sであり、レーザ走査距離が100~200mmである。
レーザの発振方式は制限なく用いることができる。すなわち、連続発振またはPulsed modeを用いることができる。このように表面ビーム吸収率が鋼板の溶融熱以上になるようにレーザを照射し、図1および図2に表示したグルーブ20を形成することになる。図2でX方向はグルーブ20の長手方向を示す。
このようにレーザまたはプラズマを用いる場合、レーザまたはプラズマから放出される熱によってグルーブの下部に再凝固層が形成される。再凝固層は製造中の電磁鋼板の全体組織と結晶粒粒径が相異するため区分される。再凝固層の厚さは3μm以下に形成される。再凝固層厚さが過度に厚い場合、後述する冷延板の表層部のSiO/FeSiOの重量比に影響を与え、磁性が低下する。より具体的には再凝固層の厚さは0.1~3μmである。グルーブを形成する段階の後、冷延板の表面に形成されたスパッタまたはヒールアップを除去する段階をさらに含む。
【0017】
次に、冷延板を1次再結晶焼鈍する。
1次再結晶焼鈍する段階は方向性電磁鋼板分野で広く知られているので、詳しい説明は省略する。1次再結晶焼鈍過程で脱炭または脱炭と窒化を含み、脱炭または脱炭と窒化のために湿潤雰囲気で焼鈍する。1次再結晶焼鈍する段階での均熱温度は710~870℃である。また、露点温度は40~70℃である。
本発明で冷延板の表層部のSiO/FeSiOの重量比の制御によって、鉄損を向上させることができる。具体的には冷延板の表層部のSiO/FeSiOの重量比が0.3~3である。前述した範囲を超える場合、2次再結晶焼鈍後、グルーブの下部にアイランドが多量発生し、これは磁性に悪影響を与える。
表層部は鋼板表面から1~2μmまでの厚さを意味する。
SiO/FeSiOの重量比はFT-IR方法で測定が可能である。
【0018】
次に、焼鈍分離剤を塗布し、2次再結晶焼鈍する。焼鈍分離剤については広く知られているので、詳しい説明は省略する。一例としてMgOを主成分とする焼鈍分離剤を使用する。
2次再結晶焼鈍の目的は、大きく見れば2次再結晶による{110}<001>集合組織の形成、1次再結晶焼鈍時形成された酸化層とMgOの反応による金属酸化物(ガラス質)の被膜形成により絶縁性の付与、磁気特性を損なう不純物の除去である。2次再結晶焼鈍の方法としては2次再結晶が起きる前の昇温区間では窒素と水素の混合ガスを維持して粒子成長抑制剤である窒化物を保護することによって2次再結晶がよく発達できるようにし、2次再結晶が完了した後均熱段階では100%水素の雰囲気で長時間維持して不純物を除去する。
2次再結晶焼鈍する段階は900~1210℃の均熱温度で行う。
2次再結晶焼鈍過程で焼鈍分離剤内のMgO成分が鋼板表面に形成された酸化層と反応して鋼板およびグルーブの表面に金属酸化物層(フォルステライト層)が形成される。図3では金属酸化物層30を概略的に表示した。本発明で2次再結晶焼鈍前にグルーブが形成されるので、鋼板だけでなくグルーブの表面にも金属酸化物層30が形成される。
【0019】
本発明で1次再結晶後、表層部のSiO/FeSiOの重量比を適宜制御したので、焼鈍分離剤内のMgOが鋼板の内部に浸透または通過して金属酸化物層30の下部にアイランド40が形成される。このアイランド40は金属酸化物を含む。より具体的にはフォルステライトを含む。
図3ではアイランド40を概略的に表示した。図3に示すように、金属酸化物層30と分離してアイランド40が形成される。
アイランド40が不連続的に適切に形成されることによって、磁性向上に寄与する。
より具体的には、アイランド40はグルーブ当たり密度が15個以下である。図3ではアイランド40がグルーブの下部に3個形成された例を示す。すなわち、グルーブ当たり密度が3個である。より具体的にはアイランド40はグルーブ当たり密度が3~15個である。より具体的には10~15個である。
グルーブの下部に位置するアイランドの密度は0.5個/μm以下である。
この時、基準は鋼板圧延方向(RD方向)および厚さ方向(ND方向)を含む断面(TD面)でグルーブの下部に5μm以内の面積に対するグルーブ当たりアイランドの密度を意味する。
【0020】
グルーブ20の下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドの個数が60%以上である。この時、基準は鋼板圧延方向(RD方向)および厚さ方向(ND方向)を含む断面(TD面)である。また、グルーブ20が形成されていない表面の下部に位置するアイランド40は前述した分布計算から除外する。言い換えれば、グルーブ20の下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6以下であるアイランドが30%未満である。より具体的にはグルーブ20の下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドが60~90%である。より具体的には下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)0.6~1.0であるアイランドが70~80%である。
2次再結晶焼鈍する段階の後、金属酸化物層上に絶縁コート層を形成する段階をさらに含む。
絶縁コート層を形成する方法は特に制限なく用いることができ、一例として、リン酸塩を含む絶縁コート液を塗布する方式で絶縁被膜層を形成することができる。このような絶縁コート液はコロイダルシリカと金属リン酸塩を含むコート液を使用することが好ましい。この時金属リン酸塩はAlリン酸塩、Mgリン酸塩、またはこれらの組み合わせであり、絶縁コート液の重量に対してAl、Mg、またはこれらの組み合わせの含有量は15重量%以上である。
【0021】
本発明の方向性電磁鋼板は、電磁鋼板10の表面に位置するグルーブ20、グルーブ20上に位置する金属酸化物層30およびグルーブの下部に位置するアイランド40を含む。
アイランド40はグルーブ当たり密度が15個以下である。より具体的にはアイランド40はグルーブ当たり密度が3~15個である。より具体的には10~15個である。グルーブ当たり密度が15個の超である場合は磁性が劣位になる。
グルーブの下部に位置するアイランド40のうちグルーブ20の下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドの個数が60%以上である。アイランド40の形成を適切に形成することによって、磁性を向上させることができる。より具体的にはグルーブ20の下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドが60~90%である。より具体的には下部に位置するアイランド40のうち球形度(短軸/長軸)が0.6~1.0であるアイランドが70~80%である。
【0022】
以下実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためであり、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例
冷間圧延した厚さ0.23mmの冷延板を準備した。この冷延板に2.0kWのGaussian modeの連続波レーザを走査速度10m/s、走査距離150mmで照射し、RD方向と85°角度のグルーブを形成した。その後、1次再結晶焼鈍し、MgO焼鈍分離剤を塗布後2次再結晶した。その後絶縁コート層を形成した。
1次再結晶焼鈍後表面部のSiO/FeSiOの重量比を測定して下記表1に示し、グルーブの下部のアイランド密度を測定して表1に示した。また、鉄損(W17/50)を測定して下記表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、SiO/FeSiOの重量比を適宜制御した場合、適正個数のアイランドが形成され、鉄損に優れることを確認することができる。反面、SiO/FeSiOの重量比が適宜制御されなかった比較例はアイランドが多量発生し、磁性が比較的劣位であることを確認することができる。
また、実施例1~10はグルーブの下部に位置するアイランドのうち球形度が0.6~1.0であるアイランドの個数がそれぞれ50%以上であり、グルーブの下部に位置するアイランドの密度が15個以下であることを確認した。
反面、比較例はグルーブの下部に位置するアイランドのうち球形度が0.6~1.0であるアイランドの個数が50%未満であることを確認し、また、グルーブの下部に位置するアイランドの密度が15個超えることを確認した。
【0025】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0026】
10 方向性電磁鋼板
20 グルーブ
30 金属酸化物層
40 アイランド
図1
図2
図3