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特許7365419治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続システム及びバイオプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続システム及びバイオプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/12 20060101AFI20231012BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20231012BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/32
C12P21/02 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021543253
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2019052654
(87)【国際公開番号】W WO2020152509
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】201921003147
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519139365
【氏名又は名称】エンゼン・バイオサイエンシズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ENZENE BIOSCIENCES LIMITED
【住所又は居所原語表記】PLOT NO. 165/1/26, BLOCK T, BHOSARI MIDC, PUNE, MAHARASHTRA 411 026, INDIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーテイク フリシケシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガドギル ヒマンシュ
(72)【発明者】
【氏名】バネルジー アビル
(72)【発明者】
【氏名】ロンデ ハルシタ
(72)【発明者】
【氏名】ボーリ アビジャル
(72)【発明者】
【氏名】ブッティ アビジット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルマ サミール
(72)【発明者】
【氏名】ゴドセ ローハン
(72)【発明者】
【氏名】レディ ヴィーレンドラ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセス用システム(100)であって、
治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培地で培養するためのバイオリアクター(103)であって、培地に分泌されたタンパク質を含む産物を回収するための交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルター(109)を機能的に備えるバイオリアクター(103)と、
中間保持容器を介さずに前記バイオリアクター(103)のATF濾過システム(109)に接続された1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを備え、収集された組換え治療用タンパク質を精製してプロテインA溶出液を得るための第1のクロマトグラフィーシステム(119)と、
前記第1のクロマトグラフィーシステム(119)に接続されており、プロテインA溶出液を回収し、前記溶出液中に存在し得るウイルスを不活性化すると共に、前記プロテインA溶出液のpHを自動的に調整するように構成されたウイルス不活性化容器(128)を備えるウイルス不活性化システム(126)と、
1個以上のフィルターを介して前記ウイルス不活性化容器(128)に接続されており、ウイルスの不活性化、中和及び濾過された前記プロテインA溶出液を受け取るための回収容器(136)であって、前記1個以上のフィルター(224)及び(226)は、ウイルス不活性化容器から受け取った中和後の前記プロテインA溶出液から沈殿様の不純物を除去するように構成されている回収容器(136)と、
前記回収容器(136)に接続された1個以上のマルチモーダル陰イオン交換カラムと1個以上の陽イオン交換カラムを備え、濾過後の前記プロテインA溶出液を前記回収容器(136)から受け取り、更に精製したタンパク質を得るための第2のクロマトグラフィーシステム(137)と、
クロマトグラフィーシステム、ウイルス不活性化容器、回収容器、及びチューブを定期的に洗浄するための定置洗浄(CIP)システム(120)と、
フィードバックループを作成してシステムの様々な構成要素間の流体の流れを維持し、気泡の形成を回避し、液体の流れを調節するための流量計、気泡センサ、圧力センサ及びロードセルを備える、1個以上のソレノイド又は空気圧ピンチバルブ(114)と、
監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)、プログラマブル論理回路(PLC)、産業用PC(IPC)、分散制御システム(DCS)、前記クロマトグラフィーシステム1(119)、前記ウイルス不活性化システム(126)、前記回収容器(136)、前記クロマトグラフィーシステム2(137)を含む個々のシステムと作動可能に接続された入出力モジュール又はIOボックス(130)及び(132)、並びにメッセージ中継システムから選択される1個以上の制御システムと
を備える自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項2】
バルブ(114)を介してバイオリアクターに接続されたサージバッグ(116)を更に備える、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項3】
前記ウイルス不活性化システム(200)は、ウイルス不活性化(VI)容器(201)と、プロテインA溶出液のpHを測定するためにトランスミッタに接続されたpHプローブ(220)及び自動滴定装置(122)と、各ロードセル内の液体のレベルをモニターするためのロードセルセンサ(248-1)~(248-6)と、VI容器内の流体のレベルをチェックするためのレベルセンサと、連続操作中にフィルターの1個が詰まった場合に2個のフィルター間で自動切り替えを行うために流体経路内に設けられた圧力センサ(256-1)及び(256-2)と、リアルタイム比濁法濁度単位(NTU)を測定するためのインライン濁度測定センサ(254)と、気泡がクロマトグラフィーシステムに入るのを防止するための気泡センサ(252)とを備える、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項4】
前記ウイルス不活性化容器と前記回収容器との間のフィルターの各々は0.2~0.45ミクロンのフィルターである、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項5】
前記ウイルス不活性化容器及び前記回収容器はガラス製又はステンレス鋼製である、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項6】
クロマトグラフィーシステムを定期的に洗浄するための前記定置洗浄(CIP)システム(120)は、クロマトグラフィーカラム、入口、チューブ及び容器を含む構成要素の洗浄用である、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項7】
バイオリアクターからの産物の細胞数及び栄養素分析のための自動サンプリング機と、連続バイオプロセス中のオンラインクロマトグラフィー分析用に様々な場所に置かれた自動サンプリング機とを更に備える、請求項1に記載の自動化統合連続バイオプロセス用システム。
【請求項8】
治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセスであって、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)、プログラマブル論理回路(PLC)、産業用PC(IPC)、分散制御システム(DCS)、及びメッセージ中継システムから選択される1個以上の制御システムで制御されるプロセスであって、次の各工程:
(a)交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルター(109)によって機能するバイオリアクター(103)内の液体培地で治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培養し、培地に分泌されたタンパク質を含む流出産物を回収する工程と、
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養産物を前記バイオリアクター(103)から1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを備える第1のクロマトグラフィーシステム(119)に供給してプロテインA溶出液を得る工程と、
(c)プロテインA溶出液を前記第1のクロマトグラフィーシステム(119)からウイルス不活性化容器(128)に供給し、プロテインA溶出液中のウイルスを不活性化させる工程と、
(d)ウイルスの不活性化及び中和後のプロテインA溶出液を1個以上のフィルターに通してウイルスの不活性化及び中和工程中に形成された沈殿様の不純物を除去し、濾過したプロテインA溶出液を回収容器(136)に回収する工程と、
(e)中和及び濾過したプロテインA溶出液を、1個以上のマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーカラムと1個以上の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを備える第2のクロマトグラフィーシステム(137)に供給して精製タンパク質を得る工程と
含み、
前記プロセスは、オンライン検査用の自動化サンプリングと、クロマトグラフィーシステム入口を定期的に洗浄して中断無しの操作継続のための(CIP)システム(120)を用いる定置洗浄とを含む、プロセス。
【請求項9】
交互タンジェンシャルフロー(ATF)技術によって作動される灌流バイオリアクターである前記バイオリアクター(103)内で哺乳動物細胞を培養する、請求項8に記載の自動化統合連続バイオプロセス。
【請求項10】
第1のクロマトグラフィーシステムポンプを用いて前記バイオリアクター(103)から前記第1のクロマトグラフィーシステム(119)に液体培地を直接供給する、請求項8に記載の自動化統合連続バイオプロセス。
【請求項11】
前記ウイルスの不活性化の際のプロテインA溶出液のpHを、PID制御装置、プログラマブル論理制御装置(PLC)又は産業用パーソナルコンピュータ(IPC)制御装置によって自動的に調整する、請求項8に記載の自動化統合連続バイオプロセス。
【請求項12】
前記治療用タンパク質は、抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、酵素、組換えタンパク質、改変タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、免疫グロブリン又はこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8に記載の自動化統合連続バイオプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、治療用タンパク質を生産するための連続バイオプロセス用システムに関する。本発明は詳細には、治療用タンパク質を連続的に生産することができ、実験室規模から製造規模まで拡張可能な自動化統合連続バイオプロセス用システム及びバイオプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景説明には本発明を理解する上で有用となり得る情報が含まれる。当該記載は、本明細書に記載の情報のいずれかが先行技術である又は本請求発明に関連していること、或いは具体的又は暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
治療用タンパク質の重要性が明らにされたことにより、バイオ医薬品業界に新たな革命がもたらされた。しかし、治療用タンパク質の生産では通常、荷電アイソフォームが観察され、このアイソフォームは、生成物の収率と品質を高めるために必要な単離及び精製プロセスに大きく影響を及ぼす。
【0004】
従来、治療用タンパク質はバイオ医薬品企業によりバッチ処理を用いて製造されているが、バッチ処理では、ユニット操作を行って終了した後に、プロセスの流れが次の工程に進む。最近では、バイオ医薬品企業は連続バイオプロセスに従って治療用タンパク質を製造している。連続バイオ処理では、各ユニットプロセスが終了すると、処理された生成物は次の工程に移動する。連続バイオ処理は、定常状態操作、小型設備、高い体積生産性、合理化されたプロセスフロー、低サイクル時間、及び資本コストの削減等の様々な利点によって大きな関心を集めている。
【0005】
連続バイオプロセス法を用いて治療用タンパク質を製造するため、既存の技術において様々なアプローチが試みられてきた。しかし、このような既存の連続バイオプロセスは、独立した個々のユニットを含み、各ユニットがその機能を担う疑似的な連続プロセスである。このようなシステムでは、各ユニット操作は個々のシステムパラメータ間の通信が制限されており、殆どが単独で行われる。更に、現在の連続プロセスでは、進行中のプロセスへのフィードバックが制限されているか又は全くないオフラインクロマトグラフィー分析が主に行われる。バイオ医薬品企業が成長し続けるにつれ、実験室から製造規模まで拡張可能な、治療用タンパク質を製造するための自動化統合バイオプロセス及びシステムの提供に対しての要求は満たされていない。
【0006】
本発明の目的は、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、主制御装置によってプロセスパラメータ全体を調節するための通信及びプログラマブル制御機能を備えた制御システムを用いて治療用タンパク質を生産するための、自動化統合連続バイオプロセスを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、連続して中断することなく行うことができる、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明はその様相の幾つかにおいて、主制御装置によってプロセスパラメータ全体を調節するための通信及びプログラマブル制御機能を備えた制御システムを用いて、中断することなく、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセス用システムに関する。
【0010】
一様相において、本発明は、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセス用システムであって、
治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培地で培養するためのバイオリアクター(103)であって、培地に分泌されたタンパク質を含む産物を回収するための交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルター(109)を機能的に備えるバイオリアクター(103)と、
中間保持容器を介さずにバイオリアクター(103)のATF濾過システム(109)に接続されており、収集された組換え治療用タンパク質を精製してプロテインA溶出液を得るための第1のクロマトグラフィーシステム(119)と、
第1のクロマトグラフィーシステム(119)に接続されており、プロテインA溶出液を回収し、溶出液中に存在し得るウイルスを不活性化すると共に、プロテインA溶出液のpHを自動的に調整するように構成されたウイルス不活性化容器(128)を備えるウイルス不活性化システム(126)と、
1個以上のフィルターを介してウイルス不活性化容器(128)に接続されており、ウイルスの不活性化、中和及び濾過されたプロテインA溶出液を受け取るための回収容器(136)であって、前記1個以上のフィルター(224)及び(226)は、ウイルス不活性化容器から受け取った中和後のプロテインA溶出液から沈殿様の不純物を除去するように構成されている回収容器(136)と、
回収容器(136)に接続されており、濾過後のプロテインA溶出液を回収容器(136)から受け取り、更に精製したタンパク質を得るための第2のクロマトグラフィーシステム(137)とを備える自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0011】
一様相において、本発明は、第2のクロマトグラフィーシステム(137)に接続されており、必要に応じて1個以上のフィルター(142)を用いた更なる精製を行って更に精製した治療用タンパク質を得ることができる、精製タンパク質を受け取って保存するための追加の回収容器(140)を必要に応じて更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0012】
一様相において、本発明は、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)[図示せず]、プログラマブル論理回路(PLC)(112)、産業用PC、分散制御システム(DCS)[図示せず]、クロマトグラフィーシステム1(119)、ウイルス不活性化システム(128)、回収容器(136)、クロマトグラフィーシステム2(137)等の個々のシステムと作動可能に接続された入出力モジュール又はIOボックス(130)及び(132)、並びにメッセージ中継システム[図示せず]から選択される1個以上の制御システムを更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0013】
一様相において、本発明は、1個以上のソレノイド又は空気圧ピンチバルブ(114)を更に備え、必要に応じて、フィードバックループを作成してシステムの様々な構成要素間の流体の流れを維持し、気泡の形成を回避し、液体の流れを調節するための流量計、気泡センサ、圧力センサ及びロードセルを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0014】
一様相において、本発明は、1個のピンチバルブ(114)を介してバイオリアクターに接続されたサージバッグ(116)を更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0015】
一様相において、本発明は、ウイルス不活性化容器(128)と、プロテインA溶出液のpH測定に用いられるpHトランスミッタに接続された1個以上のpHプローブと、滴定に使用される酸と塩基を保持する容器(124)に順番に接続されたポンプ(122)とPLCを備える自動滴定装置と、不活性化容器中の流体のレベルをチェックするためのレベルセンサと、リアルタイム比濁法濁度単位(NTU)を測定するためのインライン濁度測定センサとを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0016】
一様相において、本発明は、ウイルス不活性化容器と回収容器との間のフィルターの各々が0.2~0.45ミクロンのフィルターである、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0017】
一様相において、本発明は、ウイルス不活性化容器、回収容器及び追加の回収容器がガラス製又はステンレス鋼製である、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0018】
一様相において、本発明は、第1のクロマトグラフィーシステムが1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを備え、第2のクロマトグラフィーシステムが1個以上のマルチモーダル陰イオン交換カラムと1個以上の陽イオン交換カラムを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0019】
一様相において、本発明は、クロマトグラフィーシステム入口、ウイルス不活性化容器、回収容器及び液体フローチューブを定期的に洗浄するための定置洗浄(CIP)システム(120)を更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0020】
一様相において、本発明は、バイオリアクターからの産物の細胞数及び栄養素分析のための用自動サンプリング機(sampling)と、連続バイオプロセス中のオンラインクロマトグラフィー分析用に様々な場所に置かれた自動サンプリング機とを更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0021】
本発明は幾つかの他の様相において、実験室から製造規模まで拡張可能であり、且つ中断することなく治療用タンパク質を生産するための連続バイオプロセスに関する。
【0022】
一様相において、本発明は、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセスであって、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)、プログラマブル論理回路(PLC)、産業用PC(IPC)、分散制御システム(DCS)、及びメッセージ中継システムから選択される1個以上の制御システムで制御されるプロセスであって、次の各工程:
(a)交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルター(109)によって機能するバイオリアクター(103)内の液体培地で治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培養し、培地に分泌されたタンパク質を含む流出産物を回収する工程と、
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養産物をバイオリアクター(103)から第1のクロマトグラフィーシステム(119)に供給してプロテインA溶出液を得る工程と、
(c)プロテインA溶出液を第1のクロマトグラフィーシステム(119)からウイルス不活性化容器(128)に供給し、ウイルスを不活性化させ、プロテインA溶出液を中和させる工程と、
(d)ウイルスの不活性化及び中和後のプロテインA溶出液を1個以上のフィルターに通してウイルスの不活性化及び中和工程中に形成された沈殿様の不純物を除去し、濾過したプロテインA溶出液を回収容器(136)に回収する工程と、
(e)濾過したプロテインA溶出液を第2のクロマトグラフィーシステム(137)に供給して精製タンパク質を得る工程とを含むプロセスを提供する。
【0023】
一様相において、本発明は、第2のクロマトグラフィーシステム(137)から受け取った精製タンパク質を追加の容器(140)に保存することを必要に応じて更に含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。一様相において、本発明は、精製タンパク質を1個以上のフィルター(142)に通して治療用タンパク質を更に精製する1以上の工程を必要に応じて更に含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0024】
一様相において、本発明は、交互タンジェンシャルフロー(ATF)技術によって作動する灌流バイオリアクターであるバイオリアクター(103)内で哺乳動物細胞を培養する、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0025】
一様相において、本発明は、清澄化した細胞培養産物を、第1のクロマトグラフィーシステムポンプを用いてバイオリアクター(103)から第1のクロマトグラフィーシステム(119)に直接供給する、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0026】
一様相において、本発明は、1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて第1のクロマトグラフィーを行って、バイオリアクターからの治療用タンパク質を含む細胞培養産物を精製し、プロテインA溶出液を得る、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0027】
一様相において、本発明は、ウイルス不活性化工程におけるプロテインA溶出液のpHの調整を、PID制御装置、プログラマブル論理制御装置(PLC)又は産業用コンピュータ(IPC)制御装置の1個以上によって自動的に制御して行う、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0028】
一様相において、本発明は、1個以上のマルチモーダル陰イオン交換カラムと1個以上の陽イオン交換カラムをそれぞれ用いて第2のクロマトグラフィー工程を行って精製タンパク質を得る、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0029】
一様相において、本発明は、オンライン検査用の自動化サンプリングと、クロマトグラフィーシステム、チューブ及び容器を定期的に洗浄して中断無しの操作継続のための(CIP)システム(120)を用いる定置洗浄とを含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0030】
一様相において、本発明は、生産する治療用タンパク質が、抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、酵素、組換えタンパク質、改変タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、免疫グロブリン又はこれらの任意の組み合わせから選択される、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0031】
本発明の主題の様々な目的、特徴、様相及び利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0032】
添付の図面は、本開示の更なる理解を得るために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成している。図面は、本開示の例示的な実施形態を示し、以下の記載と共に本開示の原理の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】上流プロセスの例示的なプロセスフローを示す。
図2】下流プロセスの例示的なプロセスフローを示す。
図3】治療用タンパク質を製造するための自動化統合連続バイオプロセス用システムの概要を示す概略図である。
図4】治療用タンパク質を製造するための自動化統合連続バイオプロセス用システムのウイルス不活性化システムの概要を示す概略図である。
図5】治療用タンパク質を製造するための自動化統合連続バイオプロセス用システムのクロマトグラフィー1のCIPシステムの概要を示す概略図である。
図6】様々な日数での細胞増殖における乳酸対グルコースの効果を示すグラフである。
図7】pHピーク、溶出ピーク及び導電率ピークを示すクロマトグラフィーシステム1のクロマトグラムプロファイルである。
図8】溶出ピーク、フロースルーピーク及び導電率ピークを示すクロマトグラフィーシステム2のクロマトグラムプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。実施形態は、本開示を明確に理解するための詳細説明である。しかし、ここに記載する詳細説明の趣旨は、実施形態の予想され得る変形例を限定することを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲に包含されるあらゆる改変物、均等物及び代替物を網羅することにある。
【0035】
本明細書内の全ての刊行物は、個々の刊行物又は特許出願を援用することが具体的且つ個別に示された場合と同程度に、本明細書の一部を構成するものとして援用する。援用された参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書に記載のその用語の定義と矛盾するか又は反している場合、本明細書に記載のその用語の定義を適用し、参考文献におけるその用語の定義は適用しない。
【0036】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な箇所での「一実施形態において」又は「実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するとは限らない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、一以上の実施形態において適切に組み合わせることができる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、本発明の特定の実施形態を説明及び請求するために使用される、成分の量、濃度等の特性、反応条件等を表す数字は、場合によっては「約」という用語で修飾されると理解すべきである。従って、幾つかの実施形態では、明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。幾つかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字に照らし、通常の端数の繰り上げ法を適用して解釈すべきである。本発明の幾つかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体例で示される数値は実行可能な限り正確に報告する。本発明の幾つかの実施形態で示す数値は、各検査測定値で見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を含み得る。
【0038】
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲全体で使用される「a」、「an」及び「the」の意味は、文脈で特に明記されない限り、複数形の言及を包含する。また、本明細書の説明で使用される「中/内(in)」の意味は、文脈で特に明記されない限り、「中/内(in)」及び「上(on)」を包含する。
【0039】
文脈で特に明記されない限り、以下の明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変形、例えば、「含む(comprises)」や「含んでいる(comprising)」は、「~を含んでいるが、それに限定されない」というオープン且つ包括的な意味で解釈すべきである。
【0040】
本明細書での値の範囲の列挙は、その範囲内にある個々の値に個別に言及する簡便な方法として機能することを単に意図している。本明細書で特に明記しない限り、個々の値は、個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で特に明記しない限り、或いは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書の特定の実施形態に関して記載される全ての例又は例示的な文言(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、それ以外で請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のどの文言も、本発明の実施に不可欠な非請求要素を示すものとして解釈すべきではない。
【0042】
本明細書に開示される本発明の代替的な要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈すべきではない。各グループメンバーは個別に、又はグループの他のメンバー又は本明細書に記載の他の要素と任意の組み合わせで定義及び請求することができる。グループの1個以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、グループに含めるか、又はグループから削除することができる。このような包含又は削除が生じた場合、本明細書はグループを変更されたものとして含むと見なされるため、明細書の記載要件を満たす。
【0043】
以下の記載及び本明細書に記載の実施形態は、本開示の原理及び様相の特定の実施形態の1個以上の例の説明として示す。このような例は上述の原理及び本開示の説明の目的で示されており、これらに限定されない。
【0044】
本開示は、システムや方法、装置を含む多くの手段で実施できることも理解されたい。本明細書では、このような実施又は本発明がとり得る他の任意の形態をプロセスと称することができる。一般に、開示されたプロセスの工程の順序は本発明の範囲内で変更することができる。
【0045】
本明細書で示す本発明の表題及び要約書は便宜上のものであり、実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0046】
以下の考察では、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を示す。各実施形態では本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素の全ての可能な組み合わせを包含すると見なす。従って、一実施形態が要素A、B及びCを含み、第2の実施形態が要素B及びDを含む場合、本発明の主題は、仮に明確に開示されていなくても、A、B、C又はDの他の残りの組み合わせを包含すると見なす。
【0047】
本明細書で使用される各種用語を以下に示す。特許請求の範囲で使用される用語が以下に定義されていない限り、出願時における印刷刊行物及び発行特許に反映されているその用語の最も広い定義が当業者に与えられるべきである。
【0048】
本明細書で使用される「連続バイオプロセス」という用語は、一連の2個以上の処理工程を有する任意のプロセスを意味し、上流工程(ユニット操作)からの生産物は、最終クロマトグラフィー工程まで連続的に下流工程(ユニット操作)に移され、上流の処理工程は、次の処理工程が開始する前に終了させる必要はない。連続プロセスでは、対象生成物の一部が常に処理システム内を移動する。理想的には、連続プロセスは可能な限り、連続プロセスのあらゆる工程又はユニット操作が同時に且つ実質的に同じ生産速度で実施されるように調節する。このようにして、サイクル時間を最大限に圧縮し、終了時間を可能な限り最短にする。
【0049】
「連続移動」という用語は、上流のユニット操作から下流のユニット操作に移動する生成物流を意味し、2個のユニット操作間の関係又は関連性が次のようになっている、即ち、上流のユニット操作が生成物流を(直接又は他の構成要素を介して)第2の(下流の)ユニット操作に移し、上流のユニット操作が終了する前に下流のユニット操作が開始する(即ち、2個の連続するユニット操作は、2個のユニット操作が一部を構成するプロセス全体の少なくとも一部について、これらに流入する生成物流を同時に処理している)ことを意味する。
【0050】
本明細書で使用される「灌流細胞培養プロセス」という用語は、新鮮な培地をバイオリアクターに連続的に供給し、細胞をリアクター内に保持しながら無細胞使用済み培地を絶えず除去することによって行う灌流培養を意味する。従って、細胞保持装置によってリアクター内に細胞が保持されるため、連続培養と比較して、灌流培養ではより高い細胞密度を得ることができる。灌流速度は細胞株、必要量、フィード中の栄養素の濃度及び被毒のレベルに依存する。
【0051】
「細胞培地」という用語は、細胞を培養する文脈で使用される全ての種類の培地を意味する。通常、細胞培地は、アミノ酸、エネルギー源としての少なくとも1種の炭水化物、微量元素、ビタミン、塩、及び場合によっては追加の成分(例えば、細胞増殖及び/又は生産性及び/又は産物の品質に影響を調整するための成分)を含む。
【0052】
「治療用タンパク質」という用語は、液体培地に存在する汚染タンパク質、脂質及び核酸から、又は宿主細胞(例えば、哺乳動物、酵母又は細菌宿主細胞)及び生物学的汚染物質(例えば、ウイルス及び細菌汚染物質)から十分に精製又は単離された組換えタンパク質を意味し、様々な疾患又は障害を治療又は予防するための医薬品に処方することができる。治療用タンパク質の代表例としては、抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、酵素、改変タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質断片、及び免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「抗体」という用語は、血清の機能的成分を意味し、分子の一群(抗体又は免疫グロブリン、断片等)又は分子と称されることが多い。抗体分子は特定の抗原決定基に結合又は反応することができ、これによって、特定の免疫学的効果又は機序がもたらされることがある。
【0054】
「モノクローナル抗体」という用語は、細胞又は細胞株の単一のクローンによって産生され、同一の抗体分子で構成される抗体を意味する。
【0055】
本明細書で使用される「保持時間」という用語は、溶質の半量がクロマトグラフィーシステムから溶出する時間を意味する。これはカラム長と溶質の移動速度によって決まり、1~30分の範囲となり得る。
【0056】
本明細書で使用される「溶出液」という用語は、検出可能な量の組換え治療用タンパク質を含むクロマトグラフィーカラム又はクロマトグラフィー膜から溶出する流体を意味する。
【0057】
本開示では様々な略語を使用しているが、その完全形を以下に示す。
ATF:交互タンジェンシャルフロー
CV:カラム体積
CEX:陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー
CIP:定置洗浄
DO:溶存酸素
DCS:分散制御システム
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IPC:産業用PC
min:分
mM:ミリモル
mAU:ミリ吸光度単位
mL:ミリリットル
mS/cm:ミリジーメンス/センチメートル
mA:ミリアンペア
NTU:比濁法濁度単位
NaOH:水酸化ナトリウム
PLC:プログラマブル論理回路
PCC:周期的向流
PID:PID
RV:リアクター体積
TTL:トランジスタ-トランジスタ論理
UV:紫外線
UPLC:超高速液体クロマトグラフィー
VI:ウイルスの不活性化
V:ボルト
VCC:生細胞数
【0058】
本発明はその実施形態の幾つかにおいて、主制御装置を用いてプロセスパラメータ全体を調節するための通信及びプログラマブル制御機能を備えた制御システムで制御され、中断することなく治療用タンパク質を連続生産するための自動化統合バイオプロセス用システムに関する。
【0059】
治療用タンパク質を連続製造するための統合自動化システムを参照し、以下の実施形態によって本発明をより具体的に説明する。
【0060】
図3は、以下に開示する本発明の実施形態に係る、中断することなく治療用タンパク質を連続生産するための自動化統合システムの例を示す。
【0061】
治療用タンパク質を連続生産するため自動化統合システム(100)は、
治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培地で培養するためのバイオリアクター(103)であって、羽根(105)が取り付けられた攪拌機(102)と供給入口(104)を備え、バイオリアクター内の培地に分泌されたタンパク質を含む産物を回収するための交互タンジェンシャルフロー(ATF)灌流フィルター(109)を機能的に備えるバイオリアクター(103)と、
中間保持容器を介さずにバイオリアクター(103)のATF濾過システムに接続されており、培養哺乳動物細胞によって産生した組換え治療用タンパク質を培地から精製してプロテインA溶出液を得るための第1のクロマトグラフィーシステム(119)と、
第1のクロマトグラフィーシステム(119)に接続されており、プロテインA溶出液を回収し、プロテインA溶出液中に存在し得るウイルスを不活性化すると共に、プロテインA溶出液のpHを自動的に調整するように構成されたウイルス不活性化容器(128)を備えるウイルス不活性化システム(126)と、
1個以上のフィルターを介してウイルス不活性化容器(128)に接続されており、中和したプロテインA溶出液を1個以上のフィルターに通してプロテインA溶出液から沈殿様の不純物を除去しつつ中和プロテインA溶出液をウイルス不活性化容器(128)から受け取るための回収容器(136)と、
回収容器(136)に接続されており、中和及び濾過後のプロテインA溶出液を回収容器(136)から受け取り、精製タンパク質を得るための第2のクロマトグラフィーシステム(137)とを備える。
【0062】
一実施形態では、本発明は、第2のクロマトグラフィーシステム(137)に接続されており、必要に応じて1個以上のフィルター(142)を用いた更なる精製を行って更に精製した治療用タンパク質を得ることができる、精製タンパク質を受け取って保存するための追加の回収容器(140)を必要に応じて更に備える自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0063】
一実施形態では、本発明は、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)[図示せず]、プログラマブル論理回路(PLC)、産業用PC(IPC)、分散制御システム(DCS)[図示せず]、クロマトグラフィーシステム1(119)、ウイルス不活性化システム(126)、回収容器(136)、クロマトグラフィーシステム2(137)を含む個々のシステムと作動可能に接続された入出力モジュール又はIOボックス(130)及び(132)、及びメッセージ中継システム[図示せず]から選択される1個以上の制御システムを更に備える自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0064】
一実施形態では、本発明は、1個以上のソレノイド又は空気圧ピンチバルブ(114)を更に備え、必要に応じて、フィードバックループを作成してシステムの様々な構成要素間の流体の流れを維持し、気泡の形成を回避し、液体の流れを調節するための流量計、気泡センサ、圧力センサ及びロードセルを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0065】
一実施形態では、本発明は、1個のピンチバルブ(114)を介してバイオリアクターに接続されたサージバッグ(116)を更に備える自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0066】
一実施形態では、本発明は、ウイルス不活性化容器(128)を備えるウイルス不活性化システム(126)と、pHトランスミッタに接続されており、プロテインA溶出液のpH測定に用いられる1個以上のpHプローブと、滴定に使用される酸と塩基を保持する容器(124)に順番に接続されたポンプ(122)とPLCで構成された自動滴定装置とを備え、必要に応じて、不活性化容器中の流体のレベルをチェックするためのレベルセンサと、リアルタイム比濁法濁度単位(NTU)を測定するためのインライン濁度測定センサとを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、ウイルス不活性化容器と回収容器との間のフィルターの各々が0.2~0.45ミクロンのフィルターである、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0068】
一実施形態では、本発明は、第1のクロマトグラフィーシステムが1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを備え、第2のクロマトグラフィーシステムが1個以上のマルチモーダル陰イオン交換カラムと1個以上の陽イオン交換カラムを備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0069】
一実施形態では、本発明は、ウイルス不活性化容器、回収容器及び追加の回収容器がガラス製又はステンレス鋼製である、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0070】
一実施形態では、本発明は、適切な材料、例えば、シリコーン及びバイオプレンで形成されたチューブを使用して流体の流れを維持する、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。一実施形態では、使用するコネクタはシステムのバイオバーデン(汚染微生物数)を抑制するための無菌コネクタである。
【0071】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーシステム、ウイルス不活性化容器、回収容器及びチューブを定期的に洗浄するための定置洗浄(CIP)システム(120)を更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、バイオリアクターからの産物の細胞数及び栄養素分析のための自動サンプリング機と、連続バイオプロセス中のオンラインクロマトグラフィー分析用に様々な場所に置かれた自動サンプリング機とを更に備える、自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0073】
一実施形態では、自動化統合連続バイオプロセス用システムは、必要に応じて超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システム(108)及び(138)を備える。幾つかの実施形態では、本発明で用いる第1及び第2のクロマトグラフィーシステムは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)とすることができる。他の実施形態では、このシステムは、自動化サンプリングシステムを用いてシステムを統合/分析する設備を提供する。制御装置はHPLCシステムを始動させ、オープンプラットフォームコミュニケーション(OPC)、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス、及び産業用イーサネットインターフェースから選択された(但し、これらに限定されない)適切な1個以上のデジタルインターフェースを用いて分析を開始する。
【0074】
一実施形態では、制御装置はマルチポート電気回転バルブ又は流れ選択バルブを調節して液体の流れを調節する。制御装置は精密ポンプを調整して始動させ、バイオリアクターのサンプリングポートバルブを開く。プログラムされた量の流体を回収し、HPLCシステムが分析を実施する。HPLCシステムは設定されたプログラムに基づいて分析を終了させる。HPLCシステムは分析データをSCADAシステムに送信する。
【0075】
他の実施形態では、SCADAソフトウェアを備えたIPCで構成された主制御装置はデータの可視化、モニタリング、及びプロセスパラメータの履歴(historian)の制御を行う。主制御装置は、OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィネット、プロフィバス又は産業用イーサネットから選択された(但し、これらに限定されない)1個以上のデジタルインターフェースを用いてバイオリアクター、第1のクロマトグラフィーシステム、第2のクロマトグラフィーシステム及びウイルス不活性化システム等の個々のシステムに接続される。
【0076】
図4は、本発明の実施形態に係るウイルス不活性化システムの概要を示す。ウイルス不活性化システム(200)は、ガラス製又はステンレス鋼製のウイルスの不活性化(VI)容器(201)を備え、第1のクロマトグラフィーシステムからのプロテインA溶出液を回収する。VI容器(201)は、溶出液の添加と除去を行うための複数のポートと共にオーバーヘッドスターラー/マグネチックスターラー(216)を備える。ウイルス不活性化システムは、第1のクロマトグラフィーシステムから受け取ったプロテインA溶出液のpHを測定するためにトランスミッタに接続されたpHプローブ(220)を備える。このシステムは、必要に応じて、酸、塩基、NaOH、水及び緩衝液等の様々な液体を保持するためのロードセル(202)、(206)、(208)、(210)、(212)及び(214)を更に備える。このシステムは、中和工程中に形成され得る沈殿物を除去するために0.2~0.45ミクロンのフィルター(224)及び(226)を更に備える。このシステムは、必要に応じて、VI容器(201)及び回収容器(230)への様々な液体の流れをモニターするためのフローセンサ(250-1)~(250-3)を備えることができる。このシステムは、VI容器内の流体のレベルをチェックするためのレベルセンサ、及び各ロードセル内の液体のレベルをモニターするためのロードセルセンサ(248-1)~(248-6)を備えることもできる。連続操作中にフィルターの1個が詰まった場合に2個のフィルター間の流体経路を自動的に切り替える設備を制御システムに設けるが、これは圧力センサ(256-1)及び(256-2)をベースにするか又はトグルスイッチの使用とすることができる。このシステムは、フィルターの目詰まりや切り替え時に警報を発してオペレーターを介入させる場合がある。このシステムは、必要に応じて、比濁法濁度単位(NTU)を測定するための濁度センサ(254)を不活性化容器の後に備えることもできる。閾値を超えると、このシステムは警報を発してオペレーターを介入させる。ウイルス不活性化容器の後の流体経路に取り付けられた任意の気泡センサ(252)は流体経路の切り替えを開始させ、気泡がクロマトグラフィーシステムに入るのを防止することができる。気泡トラップ(図示せず)は気泡がクロマトグラフィーシステムに入るのを防止する。ウイルス不活性化(VI)容器は、水、溶出液、酸、塩基及び緩衝液を徐々に添加して流体の泡立ちや飛沫を回避するように具体的に設計されている。このシステムは回収容器(230)、即ち、ウイルスの不活性化後の溶出液を回収するための容器で構成されている。回収容器(230)は、様々な液体及び溶出液の添加と除去を行うための複数のポートと共にオーバーヘッドスターラー/マグネチックスターラー(236)を備える。
【0077】
一実施形態では、ウイルス不活性化システムは、中断することなく連続及び自動モードでウイルス不活性化システムをモニター及び調節するための様々なセンサを備える。
【0078】
一実施形態では、ウイルス不活性化システムは必要に応じて、酸のレベルのモニター用(248-1)、塩基のレベルのモニター用(248-2)、NaOHのレベルのモニター用(248-3)、水のレベルのモニター用(248-4)、緩衝液のレベルのモニター用(248-5)及び(248-6)から選択される(但し、これらに限定されない)レベルセンサ又はロードセルセンサを備える。
【0079】
一実施形態では、ウイルス不活性化システムは必要に応じて、VI容器(201)及び回収容器(230)への様々な液体の流れをモニターするためのフローセンサを備え、フローセンサは、酸の流れのモニター用(250-1)、塩基の流れのモニター用(250-2)、及びNaOH、水及び緩衝液の流れのモニター用(250-3)から選択されるが、これらに限定されない。
【0080】
一実施形態では、ウイルス不活性化システムは、pHのリアルタイム測定及び制御のためのPID、PLC又はIPC等の主制御装置に作動可能に接続されている。制御ユニットは、複数のパラメータ、例えば、pH設定値、保持時間、撹拌機rpm、酸及び塩基ポンプ速度制御、CIPサイクル制御に関してプログラム可能である。ウイルス不活性化システムは、様々な設定用手段(238)、主電源用手段(240)、自動又は手動モード選択用手段(242)、警報用手段(244)、較正用手段(258)及びシステムのシャットダウン用手段(246)から選択される(但し、これらに限定されない)様々な手段によって制御される。制御装置は、システム内のバルブ(222-1)~(222-10)やポンプ(204-1)~(204-5)等の様々なアクチュエータに信号を送り、液体の流れを調節すると共に、プロテインA溶出液への酸と塩基の添加を制御してpH調整を行う。
【0081】
一実施形態では、制御装置は、クロマトグラフィーシステムからの信号(例えば、0~10Vや4~20mA等のアナログ信号)又はTTL論理又はより高度な1個以上のインターフェース(OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス及び産業用イーサネットから選択されるが、これらに限定されない)からのデジタル信号を送受信する。第1のクロマトグラフィーシステムからの信号によりウイルスの不活性化プログラムが開始する。トランスミッタはpHプローブ(220)によって生成された信号を測定し、その値を主制御装置に伝達する。このシステムは制御装置内の設定値に基づいて溶出液のpHを自動的に調整し、酸(202)又は塩基(206)の添加が開始され、その後ウイルスの不活性化工程の保持時間が続く。ウイルスの不活性化保持時間と設定値2へのpHの調整が終了すると、このシステムは、ウイルスの不活性化後の溶出液をウイルス不活性化容器(201)から回収容器(230)にポンプで送る。必要に応じて流体の流れを遮断及び迂回させる、通常は閉じているソレノイド/空気圧ピンチバルブ(222-1)~(222-3)を用いて流体経路をデジタル制御する。
【0082】
一実施形態では、プロテインA溶出液をウイルス不活性化容器から回収容器に移すと、制御装置は、信号(例えば、0~10Vや4~20mA等のアナログ信号)又はTTL論理又はより高度な1個以上のデジタルインターフェース(OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス及び産業用イーサネットから選択されるが、これらに限定されない)からのデジタル信号を第2のクロマトグラフィーシステムに送信する。これによって、回収容器から第2のクロマトグラフィーシステムへの溶出液のローディングが開始され、プロテインA溶出液が更に精製されて精製タンパク質が得られる。
【0083】
一実施形態では、制御装置はウイルス不活性化容器内でCIPサイクルを開始する。CIPサイクル中のVI容器内では、制御装置がポンプ(204-4)へ信号を送って始動させ、ロードセル(208)からのNaOHの流れに対してバルブ(222-5)を開く。VI容器へのNaOHの流れは、フローセンサ(250-3)によってモニターされ、ポンプ(204-4)によって制御される。VI容器内にNaOHを保持させるための保持時間設定手段(218)で調整した設定時間が経過した後、制御装置は廃液ポンプ(204-3)に信号を送ってVI容器からNaOHを除去し、排液口(228)用廃液バルブ(222-4)の開放を始動させる。VI容器からNaOHを除去して空にすると、気泡センサ(252)が始動し、制御装置に信号が送られ、廃液ポンプ(204-3)とそのバルブ(222-4)が停止する。或いは、気泡センサが利用できない場合には、制御装置をプログラムして容器が空になるまで設定時間に亘ってポンプを動かすこともできる。次に、制御装置はポンプ(204-4)に信号を送って始動させ、バルブ(222-6)を開いてロードセル(210)からVI容器(201)に水が流れるようにし、水の流れをバルブ(222-6)によって調節し、水センサ(250-3)によってモニターし、ポンプ(204-4)によって制御する。VI容器内に水を保持させるための設定時間が経過した後、制御装置は廃液ポンプ(204-3)に信号を送ってVI容器から水を除去し、廃液バルブ(222-4)の開放を始動させる。VI容器から水を除去して空にすると、気泡センサ(252)が始動し、制御装置に信号が送られ、廃液ポンプ(204-3)とそのバルブ(222-4)が停止する。或いは、気泡センサが利用できない場合には、制御装置をプログラムして容器が空になるまで設定時間に亘ってポンプを動かすこともできる。次に、制御装置はポンプに信号を送って始動させ、バルブ(222-7)を開いてロードセル(212)からの緩衝液の流れを開始する。一旦プロテインA溶出液をVI容器内にロードする準備ができたら、VI容器から緩衝液を除去して空にする信号が第1のクロマトグラフィーシステムによって引き起こされる。制御装置はこの信号を受け取り、廃液ポンプを始動させてVI容器から緩衝液を除去し、廃液バルブ(222-4)の開放を始動させる。VI容器から緩衝液を除去して空にすると、気泡センサ(252)が始動し、制御装置に信号が送られ、廃液ポンプ(204-3)とそのバルブ(222-4)が停止する。或いは、気泡センサが利用できない場合には、制御装置をプログラムして容器が空になるまで設定時間に亘ってポンプを動かすこともできる。
【0084】
ウイルスの不活性化保持時間と設定値2へのpHの調整が終了すると、このシステムは、ウイルスの不活性化後の溶出液をウイルス不活性化容器(201)から回収容器(230)にポンプで送る。必要に応じて流体の流れを遮断及び迂回させる、通常は閉じているソレノイド/空気圧ピンチバルブ(222-1)~(222-3)を用いて流体経路をデジタル制御する。
【0085】
一実施形態では、ウイルスの不活性化後、VI容器(201)からのプロテインA溶出液をデジタル制御ソレノイド/空気圧ピンチバルブ(222-1)を経由させた後に他のデジタル制御ソレノイド/空気圧ピンチバルブ(222-2)及び/又は(222-3)を経由させ、0.2~0.45ミクロンフィルター(224)及び/又は(226)を通し、ウイルスの不活性化工程中に形成された可能性のある沈殿物を除去する。必要に応じて、流体経路内に圧力センサ(256-1)及び(256-2)を設けることができ、連続操作中にフィルターの1個が詰まった場合に、2個のフィルター間の自動切り替えを行うことができる。このシステムは、フィルターの目詰まりや切り替え時に警報を発してオペレーターを介入させる。必要に応じて、NTUを測定するための濁度センサ(254)を不活性化容器の後に設けることができ、閾値を超えると、このシステムは警報を発してオペレーターを介入させる。必要に応じて、ウイルス不活性化容器の後に気泡センサ(252)を設けることができ、これによって流体経路の遮断を誘起して気泡がクロマトグラフィーシステムに入るのを防止し、気泡トラップは気泡がクロマトグラフィーシステムに入るのを防止する。フィルター(224)及び(226)による清澄化の後、ウイルスの不活性化及び中和後のプロテイン溶出液をVI容器(201)から回収容器(230)に移すと、制御装置は、信号(例えば、0~10Vや4~20mA等のアナログ信号)又はTTL論理又はより高度な1個以上のデジタルインターフェース(OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス又は産業用イーサネットから選択されるが、これらに限定されない)からのデジタル信号を第2のクロマトグラフィーシステムに送信する。これにより、回収容器からポート(232)を介した第2のクロマトグラフィーシステムへのプロテイン溶出液のローディングが開始される。
【0086】
図5は、本発明の一実施形態に係る、第1のクロマトグラフィーシステム用の定置洗浄(CIP)システムの概要を示す。クロマトグラフィーシステム用CIPシステム(300)は、流体の流れを調節するためにシステム内のバルブやポンプ等の様々なアクチュエータに信号を送る制御装置に作動可能に接続されている。制御装置は、クロマトグラフィーシステムから信号(例えば、0~10Vや4~20mA等のアナログ信号)又はTTL論理又はより高度な1個以上のデジタルインターフェース(OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス及び産業用イーサネットから選択されるが、これらに限定されない)からのデジタル信号を送受信する。第1のクロマトグラフィーシステム(314)からの信号によって試料入口CIPプログラムが開始する。制御装置はブリードバルブ(306-2)を開いて液体/産物をサージバッグ(308)に移動させ、ブリードポンプ(310)を始動させる。制御装置はCIP NaOHバルブ(306-3)を開き、ポンプ(312)を始動させると同時にバルブ(306-1)を閉める。第1のクロマトグラフィーシステムを経由するNaOH流の設定時間が経過した後、制御装置はNaOHバルブ(306-3)に信号を送って閉めると同時に水バルブ(306-4)を開く。第1のクロマトグラフィーシステムを経由する水流の設定時間が経過した後、制御装置は水バルブ(306-4)に信号を送って閉めると同時に緩衝液バルブ(306-5)を開く。第1のクロマトグラフィーシステムを経由する緩衝液流の設定時間が経過した後、制御装置は緩衝液バルブ(306-5)に信号を送って閉め、同時にブリードバルブ(306-2)、ポンプ(310)及びバルブ(306-1)を開くことによって、プロセス中に第1のクロマトグラフィーシステムの定置洗浄を行う。
【0087】
本開示の更なる実施形態は、治療用タンパク質の連続生産を可能にする自動化統合バイオ製造プロセスに関し、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システム(110)、PID制御(PID)、プログラマブル論理回路(PLC)、産業用PC(IPC)、分散制御システム(DCS)、及びメッセージ中継システムから選択される1個以上の制御システムによってプロセスを制御し、プロセスを中断することなく実行する。
【0088】
一実施形態では、本発明は、治療用タンパク質を中断することなく生産するための自動化統合連続バイオプロセスであって、実験室から本発明の製造規模まで拡張可能なプロセスに関し、次の各工程:
(a)交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルター(109)によって機能するバイオリアクター(103)内の液体培地で治療用タンパク質を産生可能な哺乳動物細胞を培養し、培地に分泌されたタンパク質を含む流出産物を回収する工程と、
(b)治療用タンパク質を含む細胞培養産物をバイオリアクター(103)から第1のクロマトグラフィーシステム(119)に供給してプロテインA溶出液を得る工程と、
(c)プロテインA溶出液を第1のクロマトグラフィーシステム(119)からウイルス不活性化容器(128)に供給し、プロテインA溶出液中に存在し得るウイルスを不活性化させる工程と、
(d)ウイルスの不活性化且つ中和したプロテインA溶出液を1個以上のフィルターに通してウイルスの不活性化及び中和工程中に形成された沈殿様の不純物を除去し、濾過したプロテインA溶出液を回収容器(136)に回収する工程と、
(e)中和及び濾過後のプロテインA溶出液を第2のクロマトグラフィーシステム(137)に供給して更に精製したタンパク質を得る工程とを含む。
【0089】
一実施形態では、本発明は、交互タンジェンシャルフロー(ATF)技術によって作動される灌流バイオリアクターであるバイオリアクター(103)内で哺乳動物細胞を培養する、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0090】
一実施形態では、本発明は、清澄化した細胞培養産物を、第1のクロマトグラフィーシステムポンプを用いてバイオリアクター(103)から第1のクロマトグラフィーシステム(119)に直接供給する、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0091】
一実施形態では、本発明は、1個以上のアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて第1のクロマトグラフィー工程を行って、バイオリアクターからの治療用タンパク質を含む細胞培養産物を精製し、プロテインA溶出液を得る、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0092】
一実施形態では、本発明は、ウイルスの不活性化工程におけるプロテインA溶出液のpHの調整を、PID制御装置、プログラマブル論理制御装置(PLC)又は産業用コンピュータ(IPC)制御装置によって自動的に行う、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0093】
一実施形態では、本発明は、1個以上のマルチモーダル陰イオン交換カラムと1個以上の陽イオン交換カラムを用いて第2のクロマトグラフィー工程を行って精製タンパク質を得る、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0094】
一実施形態では、本発明は、第2のクロマトグラフィーシステム(137)から受け取った精製タンパク質を追加の回収容器(140)に保存することを必要に応じて更に含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。一実施形態では、本発明は、精製タンパク質を1個以上のフィルター(142)に通して治療用タンパク質を更に精製する1以上の工程を必要に応じて更に含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。フィルターはナノフィルター、ウルトラフィルター及びダイアフィルターから選択することができる。
【0095】
一実施形態では、本発明は、オンライン検査用の自動化サンプリングと、中断無しの操作継続のための、クロマトグラフィーシステム及びその構成要素(例えば、クロマトグラフィーカラム、チューブ及び容器)の定期的な洗浄である(CIP)システム(120)を用いる定置洗浄とを含む、自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
【0096】
一実施形態では、バイオプロセスは必要に応じて、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システムを用いたオンライン検査プロセスパラメータ用の自動化HPLCサンプリング、定置洗浄(CIP)システム、及び中断無しのシステム操作の継続のための液体流路の切り替えを含む。一実施形態では、バイオプロセスは必要に応じて、監視制御及びデータ取得(SCADA)制御システムを用いたオンライン検査プロセスパラメータ用の自動化UPLCサンプリング、定置洗浄(CIP)システム、及び中断無しの操作継続のための液体流路の切り替えを更に含む。
【0097】
一実施形態では、本発明の統合連続バイオプロセスは、データの可視化、モニタリング、及びプロセスパラメータの履歴を制御するためのSCADAソフトウェアを備えたIPCで構成された主制御装置によって制御することができる。主制御装置は、OPC、モドバスTCP/IP、イーサCAT、プロフィバス、プロフィネット、プロフィバス又は産業用イーサネットから選択された(但し、これらに限定されない)1個以上のデジタルインターフェースを用いてバイオリアクター、第1のクロマトグラフィーシステム、第2のクロマトグラフィーシステム及びウイルス不活性化システム等の個々のシステムを制御することができる。
【0098】
他の実施形態では、本発明の自動化バイオプロセスは、上流プロセスから下流プロセスへの生成物流の連続移動をもたらす。
【0099】
一実施形態では、哺乳動物細胞の培養に適した制御システムを備えた自動化統合連続バイオプロセス用システムのバイオリアクターで上流プロセスを行う。一実施形態では、ATF技術によって機能するバイオリアクターで上流プロセスを行い、産生した治療用タンパク質を含む産物は、ATFからHPLCシステムポンプを用いて回収する。上流プロセスのプロセスフローの例を図1に示す。
【0100】
一実施形態では、バイオリアクターで哺乳動物細胞を培養する上流プロセスでは灌流細胞培養プロセスが採用され、哺乳動物細胞のバッチ培養期間は3日間~16日間から選択される。更に、当業者に知られている様々な細胞培地で細胞を培養して上流プロセスを行って、バイオリアクター内での哺乳動物細胞の増殖を増強することができる。
【0101】
一実施形態では、下流プロセスは、連続自動化統合バイオプロセス用システムにおける上流プロセス中に産生する治療用タンパク質の精製工程を含み、清澄化した細胞培養液を1個以上のアフィニティーカラムを含む第1のクロマトグラフィーシステムに供給してプロテインA溶出液を得、ウイルス不活性化システムでプロテインA溶出液を不活性化及び中和し、1個以上のマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーカラムと1個以上の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを含む第2のクロマトグラフィーシステムに供給して精製タンパク質を得る。下流プロセスのプロセスフローの例を図2に示す。
【0102】
目的のタンパク質を生産するための本開示のシステムの上流及び下流のプロセス及び操作に係る様々な実施形態では、目的の所望のタンパク質を産生することができる天然細胞、野生細胞、変異細胞又は遺伝子改変細胞から選択される細胞、使用する細胞に適した栄養素又は培地、様々な化学物質、試薬、クロマトグラフィー工程中に使用する樹脂、及び任意の適切な材料を使用することができる。幾つかの実施形態では、使用する様々な緩衝液又は緩衝系としては、洗浄緩衝液、チェイス緩衝液、平衡化緩衝液、溶出緩衝液等として適切な化学物質が挙げられる。
【0103】
自動化統合連続システム及びバイオプロセスは、抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、酵素、改変タンパク質、免疫原性タンパク質、タンパク質断片、免疫グロブリン又はこれらの任意の組み合わせから選択される治療用タンパク質を生産することができる。
【0104】
本発明に係る自動化統合連続バイオプロセスによって調製される治療用タンパク質は、パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アチヌマブ、トシリズマブ、バシリジマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベシレソマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ブリナツモマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シクスツムマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、フィギツムマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、モキセツモマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、ツコツズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ザルツムマブ、ザツキシマブ、酵素、タンパク質、免疫原性又は抗原性タンパク質又はタンパク質断片、アルグルコシダーゼα、ラロニダーゼ、アバタセプト、ガルスルファーゼ、ルトロピンα、抗血友病因子、アガルシダーゼβ、インターフェロンβ1a、ダルベポエチンα、テネクテプラーゼ、エタネルセプト、凝固第IX因子、卵胞刺激ホルモン、インターフェロンβ1a、イミグルセラーゼ、ドルナーゼα、エポエチンα、インスリン又はインスリン類似体、メカセルミン、第VIII因子、第VIIa因子、アンチトロンビンIII、プロテインC、ヒトアルブミン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン11、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、ガルスルファーぜ、α1プロテイナーゼ阻害剤、ラクターゼ、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、サイロトロピンα、酸性βガラクトシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、ヘキソサミニダーゼA及びヘキソサミニダーゼBから成る群から選択される。
【0105】
上述では本開示の様々な実施形態について説明したが、本開示の他の更なる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができる。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定まる。本発明は、当業者が利用可能な情報及び知識と組み合わせて本発明を実施及び使用できるように含まれる、記載の実施形態、変形例又は実施例に限定されない。
【0106】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。しかし、以下の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0107】
自動化統合連続システム及びバイオプロセスによるセツキシマブの産生と精製
上流プロセス-タンパク質の産生
目的のタンパク質を産生するために自動化連続プロセスで使用した細胞株は、INVITROGEN社(米国)から入手したカタログ番号11619012のCHO-S細胞株であった。
【0108】
CHO哺乳動物細胞を播種する前に、0.5LPMの空気を注入して溶存酸素(DO)校正を行う。一旦DO値が安定すれば、DOプローブは100%に校正される。
【0109】
連続プロセスではATFを使用したが、これは濾過及び灌流システムであり、フィルターカートリッジ経由の交互タンジェンシャルフローを用いて非常に効率的な濾過を行う。これによって、生存率が90%を超え、1ミリリットル当たり8000万~1億個の細胞密度までの細胞増殖が可能となり、その結果、タンパク質の収量が非常に多くなる。
【0110】
バイオリアクターをActiPro等の培地で作業体積まで満たし、0.3~0.5×10個(生細胞)/mLの哺乳動物細胞(即ち、CHO細胞)を播種した。培養は3日間行った。次に、交互タンジェンシャルフロー(ATF)システムを始動させ、5~10分以内でリアクターとATFは高速平衡になった。フィルターカートリッジ経由の交互タンジェンシャルフローを用いて非常に効率的な濾過を行う。これによって、生存率が90%を超え、1ミリリットル当たり8000万~1億個の細胞密度までの細胞増殖が可能となり、その結果、タンパク質の収量が非常に多くなった。細胞濃度に応じて1.5~6L/分の再循環速度で細胞を中空繊維にポンプで出し入れしてリアクターに注入した。次に、AKTA(商標)周期的向流クロマトグラフィー(PCC)に接続された濾液ポンプを始動させた。3~16日目に灌流に使用した培地は、PM-基本培地+細胞ブースト7a(1g/L)及び細胞ブースト(1g/L)+8g/Lグルコース及び8mMグルタミンであった。
【0111】
濾液割合は3日目に0.25リアクター体積(RV)で開始し、4日目には0.5RV、5~7日目には1RV、8~9日目には1.25RV、10~16日目には1.5RVとした。確実にポンプを十分に密閉し、濾液側の真空度(膜間圧力)が維持されていることを確認した。これは、各サイクルでATFがバックフラッシュし、濾液から少量の液体がフィルターを越えてリアクターに戻るためである。ATFシステムはポンプ流量を制御しないため、HPLCシステムポンプの流量を制御することによってユーザーが手動で制御した。
【0112】
細胞増殖と細胞生存率を培養期間中に亘って毎日モニターした。細胞増殖プロファイルを表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
上述の表のデータは、確立された培養条件での培養期間中に亘って細胞生存率が許容値(>90%)に維持されたことを明確に示している。
【0115】
細胞増殖に対する細胞培地の効果についても検討した。細胞培地としてグルコースと乳酸を使用した細胞増殖の結果を図6に示す。
【0116】
下流プロセス:産生したタンパク質の精製
A.クロマトグラフィーの第1工程は、4個のカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーシステムによって行った。以下の表2(a)に示す下流処理のプロセスパラメータを使用して行った。
【0117】
【表2(a)】
【0118】
第1のクロマトグラフィーシステムをAKTA PCCシステムの4個の異なるカラム位置に4個のカラムで接続し、約3CVのMilliQ水をカラムに通して保存溶液を除去した。
【0119】
カラム平衡化:第1のクロマトグラフィーシステム平衡化緩衝液容器をシステムに接続し、「平衡化」の設定マークを付した。3CVの緩衝液を通して全てのカラムを平衡化した。
【0120】
ローディング:第1のクロマトグラフィーシステム(AKTA PCC)のS1ラインをATF出口に接続し、そこからローディングを開始した。「ローディング」と「オートゼロUV」コマンドの設定マークを付した。第1のカラムへの第1サイクルのローディングを219分間行った。
【0121】
ロード後の平衡化緩衝液洗浄:219分間(1サイクル)のローディング後、AKTA PCCシステムの別のポンプによって流れをクロマトグラフィー-1緩衝液に迂回させてプロセスをローディング工程から洗浄工程に切り替えた。「ロード後の平衡化緩衝液洗浄」の設定マークを付し、3CVの緩衝液をカラムに通した。
【0122】
このサイクルでプロセス工程をローディング工程から洗浄工程に切り替えた際、別のサイクルとして同時に他のカラムでローディング工程を開始した。
【0123】
中間洗浄2:ロード後の洗浄後、2CVの洗浄2緩衝液をカラムに通した。
【0124】
洗浄3:洗浄2緩衝液洗浄後、2CVの洗浄2緩衝液をカラムに通した。
【0125】
溶出:所望のタンパク質をクロマトグラフィー-1溶出緩衝液で溶出した。溶出ピークの回収は上昇側の50mAUから3CVの総溶出体積まで行った。
【0126】
再生:溶出後、3CVの再生緩衝液を通してカラムを再生した。
【0127】
MilliQ水洗浄:3CVのMilliQ水を通して浄化溶液を除去した。
【0128】
平衡化緩衝液:再生後にカラムを再平衡化するために3CVのEQBを通した。
【0129】
カラムの保存:カラムの保存用に2CVのクロマトグラフィー-1保存溶液を通した(全サイクルの終了後)。
【0130】
B.別のプロセスでは、バッチ当たりの樹脂利用を抑えるために、2個のカラムを備えたアフィニティークロマトグラフィーシステムを用いて下流処理を行った。よってプロセスパラメータは表2(b)の通りであった。
【0131】
【表2(b)】
【0132】
こうして、目的のタンパク質を捕捉するMab Select Sure LX樹脂を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって行ったクロマトグラフィー第1工程の結果として、目的のタンパク質が樹脂に結合し、不純物がフロースルーとして除去された。この工程で得られたクロマトグラムを図7に示す。これは低pH緩衝液(pH:2.8)を使用して溶出させた目的の含有タンパク質に対応する溶出ピークを示しており、溶出ピークは全てのサイクルで予想通り一貫して観察された。
【0133】
低pHウイルス不活性化処理及び中和
ウイルスの不活性化及び中和は以下の表3に示すパラメータを用いて行った。
【0134】
【表3】
【0135】
各サイクルのプロテインA溶出液のpHは、混合後に予想範囲の3.5±0.2で維持された(制御システムはフィードバック機構によってこの範囲を保証する)。pHを考慮した後、タンパク質溶液を室温(23±2℃)で45±5分間完全に混合し、インキュベーション開始時間、終了時間、インキュベーション継続時間及び温度を記録した。
【0136】
45±5分間のインキュベーション後、フィードバック機構に基づく制御システムによってタンパク質溶液のpHを2MのTris塩基溶液で5.5±0.2に調整した。中和後の導電率は約6mS/cmと予想される。中和後、制御システムで駆動される蠕動ポンプによってタンパク質溶液をSartopore(登録商標)カプセル0.2μmフィルターに通し、濾液を第2の回収容器に回収してマルチモーダル及び陽イオン交換クロマトグラフィー工程の更なる処理に備えた。
【0137】
マルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィー
マルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する第2のクロマトグラフィーシステムを用い、以下の表4に示すパラメータによってタンパク質を精製した。
【0138】
【表4】
【0139】
第2のクロマトグラフィーシステムの陰イオン交換カラムである第1のカラムをAKTA純システムの多用途バルブ位置2及び4に接続し、第2のクロマトグラフィーシステムの陽イオン交換カラムである第2のカラムをカラム位置1に接続した。3CVのMilliQ水をカラムに通して保存溶液を除去した。
【0140】
高塩洗浄緩衝液:2CVの高塩洗浄緩衝液を第2のクロマトグラフィーシステムの陰イオン交換カラムと陽イオン交換カラムに通し、カラムのpHと導電率が確実に高塩洗浄緩衝液の範囲内になるようにした。
【0141】
カラム平衡化:5CVの平衡化緩衝液を通して両方のカラムを平衡化した。
【0142】
ローディングと緩衝液チェイス:回収容器に回収した中和及び濾過したプロテインA溶出試料を直列に接続したカラムにロードしたが、目的のタンパク質は第2のクロマトグラフィーシステムの陰イオン交換カラムには結合せずにフロースルーとして通過し、第2のクロマトグラフィーシステムの陽イオン交換カラムに結合した。ローディングが終了した後、100mLの平衡化緩衝液をロード容器に分注し、カラムに通して、中和したタンパク質溶出液試料が確実に完全にロードされるようにした。
【0143】
ロード後の平衡化緩衝液洗浄:平衡化緩衝液チェイス後、第2のクロマトグラフィーシステムの陰イオン交換カラムのフロースルーのピークが着実に安定すると、更に2CVの平衡化緩衝液を通して第2のクロマトグラフィーシステムの陽イオン交換カラムに緩く結合したタンパク質及び未結合のタンパク質を除去した。次に、第2のクロマトグラフィーシステムの陽イオン交換カラムに結合した目的のタンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィー溶出緩衝液によって溶出させた。フローセル路長2mmについてUV280nmでピークの上昇側50mAUからピークの下降側50mAUまで溶出ピークを回収した。各サイクルの溶出画分を更に処理を行うまで2~8℃で保存した。
【0144】
再生:2CVの陰イオン交換及び陽イオン交換クロマトグラフィー再生緩衝液を両方のカラムに通した。
【0145】
MilliQ水洗浄:2CVのMilliQ水を通して再生溶液を除去した。
【0146】
カラムの保存:2CVの陰イオン交換及び陽イオン交換保存溶液を通してカラムを保存した(全サイクル終了時)。
【0147】
このように、クロマトグラフィー工程2は2個の工程、即ち、Capto Adhere Impres樹脂を使用したマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィー(第1工程)と、SPセファロースFF樹脂を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー(第2工程)とから成る。マルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーの後、不純物はカラムに結合し、目的のタンパク質はフロースルーとして通過した。陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにタンデムに接続し、目的のタンパク質を結合させた。次に、高塩緩衝液によって陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからタンパク質を溶出させた。この工程で得られたクロマトグラムを図8に示すが、予想通りに全てのサイクルで溶出ピークを一貫して観察することができる。
【0148】
タンジェンシャルフロー濾過(限外濾過及び透析濾過)
陽イオン交換クロマトグラフィーからの溶出液をプールし、以下の表5に示すパラメータに従って更に処理してタンジェンシャルフロー濾過を行い、セツキシマブタンパク質を濃縮し、最終賦形剤を含まない製剤緩衝液に緩衝液交換した。
【0149】
【表5】
【0150】
TFFシステムから回収したタンパク質溶液を、最終賦形剤溶液を含む製剤緩衝液を用いて5mg/mLに希釈した。
【0151】
得られた溶液を0.2μmフィルター(MOC-ポリエーテルスルホン)によって無菌的に濾過してPETG瓶に入れた。こうして得た濾液は原薬としての使用に適した最終タンパク質生成物セツキシマブであった。
【0152】
代表的なバッチ例の回収率データは以下の表6に示す通りであった。
【0153】
【表6】
【0154】
上述の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲に対する限定として解釈すべきではない。開示された実施形態に対する様々な変更や改変は当業者には明らかであろう。そのような変更や改変は本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0155】
本発明は、プロセス中に容器/バッグを繰り返し交換することなく、複数日間の連続プロセス用持続操作を行うための自動化バイオプロセスを提供する。
【0156】
本発明は、制御装置を用いてSCADA又はDCSによって上流及び下流プロセス全体を調節且つモニターする自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0157】
本発明は、ウイルスの不活性化用の拡張可能で正確なリアルタイム自動化pH調整システムを備えた、治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセス用システムを提供する。
【0158】
本発明は、HPLC分析用の自動化オンラインサンプリングによって詳細なプロセス分析とプロセスパラメータのフィードバックが可能になる、自動化バイオプロセス及びシステムを提供する。
【0159】
本発明は、連続バッチ終了毎に問題なくチューブを交換して操作を容易にするためのピンチバルブを備えたシステムを用いて治療用タンパク質を生産するための自動化統合連続バイオプロセスを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8