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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20231012BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALN20231012BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H01L31/06 455
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021565502
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045730
(87)【国際公開番号】W WO2021124991
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2019229717
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真悟
(72)【発明者】
【氏名】末崎 恭
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/189878(WO,A1)
【文献】特表2013-509695(JP,A)
【文献】特開2012-089829(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216339(WO,A1)
【文献】特開2013-239476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0198002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1真性半導体層および第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2真性半導体層および第2導電型半導体層と、前記半導体基板の前記一方主面側に積層された第3真性半導体層とを備えるバックコンタクト型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記第1導電型半導体層の材料膜の上にパターン印刷レジストを形成し、前記半導体基板の前記一方主面側にはパターン印刷レジストを形成しないレジスト形成工程と、
前記パターン印刷レジストを用いて、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜および前記第1真性半導体層の材料膜を除去することにより、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域にパターン化された前記第1真性半導体層および前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記パターン印刷レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記半導体基板の前記一方主面側に前記第3真性半導体層を形成する第3半導体層形成工程と、
をこの順で含み、
前記レジスト形成工程の前に、前記半導体基板の前記一方主面側に仮の半導体層を形成する仮半導体層形成工程を更に含み、
前記仮の半導体層は、前記第1半導体層形成工程において除去される、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1真性半導体層および第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2真性半導体層および第2導電型半導体層と、前記半導体基板の前記一方主面側に積層された第3真性半導体層とを備えるバックコンタクト型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記第1導電型半導体層の材料膜の上にパターン印刷レジストを形成し、前記半導体基板の前記一方主面側にはパターン印刷レジストを形成しないレジスト形成工程と、
前記パターン印刷レジストを用いて、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜および前記第1真性半導体層の材料膜を除去することにより、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域にパターン化された前記第1真性半導体層および前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記パターン印刷レジストを除去するレジスト除去工程と、
前記半導体基板の前記一方主面側に前記第3真性半導体層を形成する第3半導体層形成工程と、
をこの順で含み、
前記第1半導体層材料膜形成工程の後に、リフトオフ層形成工程を更に含み、
前記レジスト除去工程の後に、第2半導体層材料膜形成工程と第2半導体層形成工程とを更に含み、
前記リフトオフ層形成工程では、前記第1導電型半導体層の材料膜の上にリフトオフ層を形成し、
前記レジスト形成工程では、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記リフトオフ層の上に前記パターン印刷レジストを形成し、
前記第1半導体層形成工程では、前記パターン印刷レジストを用いて、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1導電型半導体層の材料膜および前記第1真性半導体層の材料膜を除去することにより、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域にパターン化された前記第1真性半導体層、前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成し、
前記第2半導体層材料膜形成工程では、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記リフトオフ層の上、および前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域に、前記第2真性半導体層の材料膜および前記第2導電型半導体層の材料膜を形成し、
前記第2半導体層形成工程では、前記リフトオフ層を除去することにより、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記第2真性半導体層の材料膜および前記第2導電型半導体層の材料膜を除去し、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域の上にパターン化された前記第2真性半導体層および前記第2導電型半導体層を形成し、
前記第3半導体層形成工程および前記第2半導体層形成工程の後に、前記第1導電型半導体層に対応する第1透明電極層および第1金属電極層と、前記第2導電型半導体層に対応する第2透明電極層および第2金属電極層とを形成する電極層形成工程を更に含み、
前記電極層形成工程は、
前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上にこれらに跨って透明電極層の材料膜を形成する透明電極層材料膜形成工程と、
前記透明電極層の材料膜を介して前記第1導電型半導体層の上に前記第1金属電極層を形成し、前記透明電極層の材料膜を介して前記第2導電型半導体層の上に前記第2金属電極層を形成する金属電極層形成工程と、
前記第1金属電極層および前記第2金属電極層をマスクとして用いて、前記透明電極層の材料膜をパターニングすることにより、互いに分離された前記第1透明電極層および前記第2透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、
をこの順で含む、
太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記レジスト除去工程では、アルカリ溶液を用いて前記パターン印刷レジストを剥離する、請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。このような裏面電極型の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部に順に積層された第1真性半導体層、第1導電型半導体層および第1電極層と、半導体基板の裏面側の他の一部に順に積層された第2真性半導体層、第2導電型半導体層および第2電極層とを備える。また、この太陽電池は、半導体基板の受光面側に順に積層された第3真性半導体層および光学調整層を備える。
【0003】
一般に、第1導電型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)および第2導電型半導体層のパターニング(2回目のパターニング)において、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。しかし、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法では、例えばスピンコート法によるフォトレジスト塗布、フォトレジスト乾燥、フォトレジスト露光、フォトレジスト現像、フォトレジストをマスクとして用いた半導体層のエッチング、およびフォトレジスト剥離のプロセスが必要であり、プロセスが複雑であった。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、2回目のパターニングにおいて、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法により、パターニングのプロセスの簡略化を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-75526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、1回目のパターニングにおいて、パターン印刷法によるパターン印刷レジストを用いることを考案している。これにより、スピンコート法によるフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)を用いた場合と比較して、露光および現像の工程を削減することができ、パターニングのプロセスの更なる簡略化が可能となる。
【0007】
ところで、半導体基板の受光面側の第3真性半導体層は、第1導電型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)の前に製膜される。そして、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)では、裏面側と同様に、半導体基板の受光面側にもパターン印刷レジストを形成し、エッチング溶液から第3真性半導体層を保護する。
【0008】
しかし、裏面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)した後に、受光面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)すると、裏面側のパターン印刷レジストの熱履歴が2回となり、裏面側のパターン印刷レジストが剥離し難くなってしまう。そのため、裏面側のパターン印刷レジストの剥離残りが発生してしまう。
【0009】
また、第1導電型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)の前に、半導体基板の受光面側の第3真性半導体層を形成すると、その後の製造プロセスにおいて第3真性半導体層がダメージを受けてしまう。
【0010】
本発明は、パターン印刷レジストの剥離残りを低減し、製造プロセスにおける第3真性半導体層のダメージを低減する太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1真性半導体層および第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2真性半導体層および第2導電型半導体層と、前記半導体基板の前記一方主面側に積層された第3真性半導体層とを備えるバックコンタクト型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域における前記第1導電型半導体層の材料膜の上にパターン印刷レジストを形成し、前記半導体基板の前記一方主面側にはパターン印刷レジストを形成しないレジスト形成工程と、前記パターン印刷レジストを用いて、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜および前記第1真性半導体層の材料膜を除去することにより、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域にパターン化された前記第1真性半導体層および前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記パターン印刷レジストを除去するレジスト除去工程と、前記半導体基板の前記一方主面側に前記第3真性半導体層を形成する第3半導体層形成工程と、をこの順で含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、太陽電池の製造方法において、パターン印刷レジストの剥離残りを低減することができ、製造プロセスにおける第3真性半導体層のダメージを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る太陽電池を背面側からみた図である。
図2図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程、仮半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程を示す図である。
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図である。
図3F】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図3G】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図3H】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図3I】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図4A】比較例の太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程、第3真性半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
図4B】比較例の太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程を示す図である。
図4C】比較例の太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図4D】比較例の太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程を示す図である。
図4E】比較例の太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図4F】比較例の太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図4G】比較例の太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図4H】比較例の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図4I】比較例の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0015】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を背面側からみた図である。図1に示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備えるn型(第2導電型)半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0016】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0017】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
【0018】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0019】
図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層(第3真性半導体層)13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(主に、第1領域7)に順に積層された真性半導体層(第1真性半導体層)23、p型(第1導電型)半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2領域8)に順に積層された真性半導体層(第2真性半導体層)33、n型(第2導電型)半導体層35および第2電極層37を備える。
【0020】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0021】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0022】
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0023】
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0024】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。真性半導体層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。真性半導体層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13,23,33は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0025】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0026】
p型半導体層25は、真性半導体層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。p型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。p型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0027】
n型半導体層35は、真性半導体層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。n型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。n型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0028】
第1電極層27は、p型半導体層25上に形成されており、第2電極層37は、n型半導体層35上に形成されている。第1電極層27は、p型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、n型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。金属電極層29,39は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0029】
(比較例の太陽電池の製造方法)
本願発明者らは、p型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)において、パターン印刷法によるパターン印刷レジストを用いることを考案している。これにより、スピンコート法によるフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)を用いた場合と比較して、露光および現像の工程を削減することができ、太陽電池の製造プロセスの簡略化が可能となる。
【0030】
なお、パターン印刷とは、フォトリソグラフィ法のように、一度、パターン化前のレジスト膜(非パターンレジスト膜)を形成した後に、露光・現像のような工程を経る印刷ではなく、スクリーン印刷若しくはグラビア印刷のようなプレス印刷、または、インクジェット印刷のような吐出印刷のような、レジスト付着面に対して、直接、パターン化したレジスト(印刷材料)を付着させる印刷法を意味する。また、パターン印刷レジストとは、パターン印刷に使用される印刷材料(レジスト材料)を意味する。
【0031】
更に、本願発明者らは、p型半導体層のパターニングにおいて、パターン印刷レジストを除去する溶液として安価なアルカリ溶液を採用することを考案している。これにより、太陽電池の低コスト化が可能となる。
【0032】
また、本願発明者らは、n型半導体層のパターニング(2回目のパターニング)において、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を採用することを考案している。これにより、太陽電池の製造プロセスの簡略化が可能となる。
【0033】
更に、本願発明者らは、リフトオフ層を、以下に示すような酸性溶液に対する特性を有する下層と上層とを有する2層構造とすることを考案している。
下層のエッチング速度>上層のエッチング速度
これによれば、エッチング速度が遅い上層により、p型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)後の基板洗浄工程において、リフトオフ層の剥離を抑制しつつ、エッチング速度が速い下層により、n型半導体層のパターニング(2回目のパターニング)のリフトオフ工程において、リフトオフ性を高めることができる。
【0034】
また、本願発明者らは、透明電極層のパターニングにおいて、金属電極層をマスクとして用いることを考案している。これにより、フォトリソグラフィ法等によるレジストをマスクとして用いる必要がなく、太陽電池の製造プロセスの簡略化が可能となる。
【0035】
以下に、図4A図4Iを参照して、本願発明者らの考案に基づく比較例の太陽電池1Xの製造方法、およびその課題について説明する。図4Aは、比較例の太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程、第3半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、図4Bは、比較例の太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程を示す図である。また、図4Cは、比較例の太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図であり、図4Dは、比較例の太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程を示す図である。また、図4Eは、比較例の太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図4Fは、比較例の太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図4Gは、比較例の太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図4Hおよび図4Iは、比較例の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0036】
まず、図4Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、受光面側および/または裏面側に凹凸構造(テクスチャ構造)を有する半導体基板11Xの裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23ZXおよびp型半導体層材料膜25ZXを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0037】
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの受光面側の全面に、真性半導体層(第3真性半導体層)13Xを積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。なお、真性半導体層材料膜23ZXおよびp型半導体層材料膜25ZXと、真性半導体層13Xとの製膜の順序は限定されない。
【0038】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの裏面側の全面に、具体的にはp型半導体層材料膜25ZX上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)41Xを積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
リフトオフ層41Xは、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の材料で形成される。リフトオフ層41Xの膜厚は、例えば1nm以上1μm以下であると好ましい。
【0039】
リフトオフ層41Xは、半導体基板11X側から下層と上層とを有する2層構造であってもよい。下層および上層は、以下に示すような酸性溶液に対する特性を有する。
下層のエッチング速度>上層のエッチング速度
例えば、リフトオフ層41Xが酸化珪素を主成分とする膜である場合、その主成分をSiOxと表したときのxの値は、以下の関係式を満たす。
下層のx>上層のx
【0040】
次に、図4B図4Dに示すように、パターン印刷レジスト90Xを用いて、半導体基板11Xの裏面側において、第2領域8におけるリフトオフ層41X、p型半導体層材料膜25ZXおよび真性半導体層材料膜23ZXを除去することにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層(第1真性半導体層)23X、p型半導体層25Xおよびリフトオフ層41Xを形成する。
【0041】
具体的には、図4Bに示すように、半導体基板11Xの裏面側において、第1領域7におけるp型半導体層材料膜25ZXおよびリフトオフ層41X上に、パターン印刷法を用いてパターン印刷レジスト90Xを形成する(レジスト形成工程)。また、半導体基板11Xの受光面側の全面に、パターン印刷法を用いてパターン印刷レジスト90Xを形成する(レジスト形成工程)。パターン印刷レジストの膜厚は、例えば1μm以上50μm以下である。パターン印刷法を用いたパターン印刷レジストによれば、従来のスピンコート法を用いたフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)におけるレジストの露光および現像が不要となる(製造プロセスの簡略化)。このとき、第1の課題および第2の課題が生じる(詳細は後述する)。
【0042】
その後、図4Cに示すように、パターン印刷レジスト90Xをマスクとして、半導体基板11Xの裏面側において、第2領域8におけるリフトオフ層41Xをエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層41Xを形成する。リフトオフ層41Xに対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
その後、パターン印刷レジスト90Xをマスクとして、半導体基板11Xの裏面側において、第2領域8におけるp型半導体層材料膜25ZXおよび真性半導体層材料膜23ZXをエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層23Xおよびp型半導体層25Xを形成する(第1半導体層形成工程)。p型半導体層材料膜25ZXおよび真性半導体層材料膜23ZXに対するエッチング溶液としては、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液等の酸性溶液が用いられる。
【0043】
その後、図4Dに示すように、裏面側および受光面側のパターン印刷レジスト90Xを除去する(レジスト除去工程)。パターン印刷レジスト90Xに対するエッチング溶液としては、KOH等の安価なアルカリ溶液が用いられる(低コスト化)。このとき、第2の課題が生じる(詳細は後述する)。
【0044】
次に、半導体基板11Xの両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理が行われる。フッ酸処理とは、フッ酸のみならず、フッ酸に他の種類の酸(第1洗浄工程では、例えば塩酸)を含めた混合物での処理も含むものとする。このとき、リフトオフ層41Xにおけるエッチング速度が遅い上層により、リフトオフ層41Xの剥離を抑制することができる。このとき、第2の課題が生じる(詳細は後述する)。
【0045】
次に、図4Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの裏面側の全面に、具体的には第1領域7におけるリフトオフ層41X上および第2領域8に、真性半導体層材料膜33ZXおよびn型半導体層材料膜35ZXを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0046】
次に、図4Fに示すように、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11Xの裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33ZXおよびn型半導体層材料膜35ZXを除去することにより、第2領域8に、パターン化された真性半導体層(第2真性半導体層)33Xおよびn型半導体層35Xを形成する(第2半導体層形成工程)。
【0047】
具体的には、リフトオフ層41Xを除去することにより、リフトオフ層41X上の真性半導体層材料膜33ZXおよびn型半導体層材料膜35ZXを除去し、第2領域8に真性半導体層33Xおよびn型半導体層35Xを形成する。リフトオフ層41Xの除去溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。このとき、リフトオフ層41Xにおけるエッチング速度が速い下層により、リフトオフ性を高めることができる。
【0048】
次に、図4Gに示すように、半導体基板11Xの受光面側の全面に、光学調整層15Xを形成する(光学調整層形成工程)。
【0049】
次に、図4Hおよび図4Iに示すように、半導体基板11Xの裏面側に、第1電極層27Xおよび第2電極層37Xを形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11Xの裏面側において、第1導電型半導体層25Xおよび第2導電型半導体層35Xの上にこれらに跨って透明電極層材料膜28ZXを積層(製膜)する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0050】
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層材料膜28ZXを介して第1導電型半導体層25X上に金属電極層29Xを形成し、透明電極層材料膜28ZXを介して第2導電型半導体層35X上に金属電極層39Xを形成する(金属電極層形成工程)。
【0051】
その後、金属電極層29Xおよび金属電極層39Xをマスクとして用いて、透明電極層材料膜28ZXをパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28Xおよび第2透明電極層38Xを形成する(透明電極層形成工程)。透明電極層材料膜28ZXに対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
【0052】
ここで、従来の太陽電池の製造方法では、透明電極層材料膜の形成後であって金属電極層の形成前に、透明電極層の形成(パターニング)を行う。
透明電極層の形成(パターニング)では、例えばフォトリソグラフィ法を用いて透明電極層材料膜をパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層および第2透明電極層を形成する。フォトリソグラフィ法では、
・透明電極層材料膜の上にレジストを塗布し、
・レジストを感光させることにより、レジストに開口を形成し、
・レジストをマスクとして開口において露出した透明電極層材料膜をエッチングすることにより、互いに分離された第1透明電極層および第2透明電極層を形成し、
・レジストを除去する。
【0053】
これに対し、比較例の太陽電池の製造方法によれば、透明電極層材料膜の形成後に、金属電極層の形成および透明電極層の形成(パターニング)をこの順で含み、透明電極層の形成(パターニング)では、第1金属電極層29Xおよび第2金属電極層39Xをマスクとして用いて、透明電極層材料膜28ZXをパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28Xおよび第2透明電極層38Xを形成する。これにより、比較例の太陽電池の製造方法によれば、従来のように、マスクを用いたフォトリソグラフィ法等を用いる必要がなく、透明電極層の形成の簡略化および短縮化が可能である。
【0054】
以上の工程により、比較例の裏面電極型の太陽電池1Xが完成する。
【0055】
ここで、比較例の太陽電池の製造方法では、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)の前に、受光面側の真性半導体層(第3真性半導体層)13Xを製膜する。そして、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)では、裏面側と同様に、受光面側にもパターン印刷レジストを形成し、エッチング溶液から真性半導体層13Xを保護しつつ、真性半導体層13Xを残していた。
【0056】
(第1の課題)
しかし、裏面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)した後に、受光面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)すると、裏面側のパターン印刷レジストの熱履歴が2回となり、裏面側のパターン印刷レジストが剥離し難くなってしまう。そのため、裏面側のパターン印刷レジストの剥離残りが発生してしまう。
【0057】
(第2の課題)
また、第1半導体層形成工程(1回目パターニング)の前に、受光面側の真性半導体層13Xを形成すると、その後の製造プロセスにおいて真性半導体層13Xがダメージを受けてしまう。
例えば、パターン印刷レジストとの接触により、レジスト剥離溶液(アルカリ溶液)との接触により、洗浄溶液(フッ酸)との接触により、受光面側の真性半導体層13Xがダメージを受けてしまう。
【0058】
第1の課題および第2の課題に関し、本願発明者らは、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)に対するレジスト形成工程において受光面側にパターン印刷レジストを形成せず、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)においてこの段階で形成された受光面側の仮の真性半導体層を剥離する。そして、第2半導体層材料膜形成工程において、受光面側の真性半導体層を製膜し直すことを考案する。
【0059】
(本実施形態の太陽電池の製造方法)
以下、図3A図3Iを参照して、図1および図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程、仮半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、図3Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程を示す図である。また、図3Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図であり、図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程を示す図である。また、図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図であり、図3Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図3Gは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図3Hおよび図3Iは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0060】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法を用いて、受光面側および/または裏面側に凹凸構造(テクスチャ構造)を有する半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0061】
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、仮の半導体層13Zを積層(製膜)してもよい(仮半導体層形成工程)。仮の半導体層13Zは、例えば真性半導体層である。仮の半導体層13Zを形成すると、後述するレジスト形成工程時などにおいて、半導体基板11の受光面側に意図せず汚染源(有機物質等)が付着してしまうことを防ぐことができる。なお、受光面側の仮の半導体層13Zは形成されなくてもよい。なお、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zと、仮の半導体層13Zとの製膜の順序は限定されない。
【0062】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的にはp型半導体層材料膜25Z上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)41を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
リフトオフ層41は、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の材料で形成される。リフトオフ層41の膜厚は、例えば1nm以上1μm以下であると好ましい。
【0063】
リフトオフ層41は、半導体基板11側から下層と上層とを有する2層構造であってもよい。下層および上層は、以下に示すような酸性溶液に対する特性を有する。
下層のエッチング速度>上層のエッチング速度
例えば、リフトオフ層41が酸化珪素を主成分とする膜である場合、その主成分をSiOxと表したときのxの値は、以下の関係式を満たす。
下層のx>上層のx
【0064】
次に、図3B図3Dに示すように、パターン印刷レジスト90を用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8におけるリフトオフ層41、p型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zを除去することにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層(第1真性半導体層)23、p型半導体層25およびリフトオフ層41を形成する。
【0065】
具体的には、図3Bに示すように、半導体基板11の裏面側において、第1領域7におけるp型半導体層材料膜25Zおよびリフトオフ層41上に、パターン印刷法を用いてパターン印刷レジスト90を形成する(レジスト形成工程)。パターン印刷レジスト90の膜厚は、例えば1μm以上50μm以下である。パターン印刷法を用いたパターン印刷レジストによれば、従来のスピンコート法を用いたフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)におけるレジストの露光および現像が不要となる(製造プロセスの簡略化)。
【0066】
一方、半導体基板11の受光面側には、パターン印刷レジストを形成しない(レジスト形成工程)。これにより、裏面側のパターン印刷レジスト90を印刷して焼成(乾燥)した後に、受光面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)する必要がなく、裏面側のパターン印刷レジスト90の熱履歴は1回となる。これにより、裏面側のパターン印刷レジスト90の熱履歴を低減でき、後述するレジスト除去工程において、裏面側のパターン印刷レジスト90の剥離し難さが低減され、裏面側のパターン印刷レジスト90の剥離残りが低減される(第1の課題解決)。
また、受光面側にパターン印刷レジストを形成せず、後述するように受光面側の真性半導体層13は形成されていないので、パターン印刷レジストとの接触による受光面側の真性半導体層13のダメージが無い(第2の課題解決)。
【0067】
その後、図3Cに示すように、パターン印刷レジスト90をマスクとして、半導体基板11の裏面側において、第2領域8におけるリフトオフ層41をエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層41を形成する。リフトオフ層41に対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
その後、パターン印刷レジスト90をマスクとして、半導体基板11の裏面側において、第2領域8におけるp型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zをエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層(第1真性半導体層)23、p型半導体層25を形成する(第1半導体層形成工程)。p型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zに対するエッチング溶液としては、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液等の酸性溶液が用いられる。
このとき、半導体基板11の受光面側にパターン印刷レジストが形成されていないので、半導体基板11の受光面側に形成された仮の半導体層13Zが除去される。
【0068】
その後、図3Dに示すように、パターン印刷レジスト90を除去する(レジスト除去工程)。パターン印刷レジスト90に対するエッチング溶液としては、KOH等の安価なアルカリ溶液が用いられる(低コスト化)。
このとき、後述するように受光面側の真性半導体層13は形成されていないので、レジスト剥離溶液(アルカリ溶液)との接触による受光面側の真性半導体層13のダメージが無い(第2の課題解決)。
【0069】
次に、半導体基板11の両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理が行われる。フッ酸処理とは、フッ酸のみならず、フッ酸に他の種類の酸(第1洗浄工程では、例えば塩酸)を含めた混合物での処理も含むものとする。このとき、リフトオフ層41におけるエッチング速度が遅い上層により、リフトオフ層41の剥離を抑制することができる。
また、このとき、後述するように受光面側の真性半導体層13は形成されていないので、洗浄溶液(フッ酸)との接触による受光面側の真性半導体層13のダメージがない(第2の課題解決)。
【0070】
次に、図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層(第3真性半導体層)13を積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。
【0071】
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1領域7におけるリフトオフ層41上および第2領域8に、真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0072】
次に、図3Fに示すように、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去することにより、第2領域8に、パターン化された真性半導体層(第2真性半導体層)33およびn型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0073】
具体的には、リフトオフ層41を除去することにより、リフトオフ層41上の真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去し、第2領域8に真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する。リフトオフ層41の除去溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。このとき、リフトオフ層41におけるエッチング速度が速い下層により、リフトオフ性を高めることができる。
【0074】
次に、図3Gに示すように、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成する(光学調整層形成工程)。
【0075】
次に、図3Hおよび図3Iに示すように、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側において、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の上にこれらに跨って透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0076】
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層材料膜28Zを介して第1導電型半導体層25上に金属電極層29を形成し、透明電極層材料膜28Zを介して第2導電型半導体層35上に金属電極層39を形成する(金属電極層形成工程)。
【0077】
その後、金属電極層29および金属電極層39をマスクとして用いて、透明電極層材料膜28Zをパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。透明電極層材料膜28Zに対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。これにより、上述したように、従来のようにマスクを用いたフォトリソグラフィ法等を用いる必要がなく、透明電極層の形成の簡略化および短縮化が可能である。
【0078】
以上の工程により、図1および図2に示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)において、受光面側にパターン印刷レジストを形成しないので、裏面側のパターン印刷レジスト90を印刷して焼成(乾燥)した後に、受光面側のパターン印刷レジストを印刷して焼成(乾燥)する必要がなく、裏面側のパターン印刷レジスト90の熱履歴は1回となる。これにより、裏面側のパターン印刷レジスト90の熱履歴を低減でき、裏面側のパターン印刷レジスト90の剥離し難さが低減される。そのため、裏面側のパターン印刷レジスト90の剥離残りが低減される。なお、受光面側のパターン印刷レジストの剥離残りは無い。
【0080】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)において受光面側にパターン印刷レジストを形成しないので、第1半導体層形成工程(1回目のパターニング)の前に形成された受光面側の仮の半導体層13Zは除去される。そして、第2半導体層形成工程(2回目のパターニング)において、受光面側の真性半導体層(第3真性半導体層)13を製膜し直す。これにより、製造プロセスにおいて受光面側の真性半導体層13がダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、パターン印刷レジストとの接触が無く、レジスト剥離溶液(アルカリ溶液)との接触が無く、洗浄溶液(フッ酸)との接触が無いので、受光面側の真性半導体層13がダメージを受けることが抑制される。その結果、太陽電池の性能が向上する。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、第1導電型半導体層25をp型半導体層、第2導電型半導体層35をn型半導体層としたが、第1導電型半導体層25をn型半導体層、第2導電型半導体層35をp型半導体層に置き換えてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0083】
また、上述した実施形態では、半導体基板11としてn型半導体基板を例示したが、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1X 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11,11X 半導体基板
13,13X 真性半導体層(第3真性半導体層)
13Z 仮の半導体層
15,15X 光学調整層
23,23X 真性半導体層(第1真性半導体層)
23Z,23ZX 真性半導体層材料膜(第1真性半導体層材料膜)
25,25X p型半導体層(第1導電型半導体層)
25Z,25ZX p型半導体層材料膜(第1導電型半導体層材料膜)
27,27X 第1電極層
28,28X 第1透明電極層
29,29X 第1金属電極層
33,33X 真性半導体層(第2真性半導体層)
33Z,33ZX 真性半導体層材料膜(第2真性半導体層材料膜)
35,35X 第2導電型半導体層
35Z,35ZX 第2導電型半導体層材料膜
37,37X 第2電極層
38,38X 第2透明電極層
39,39X 第2金属電極層
41,41X リフトオフ層
90,90X パターン印刷レジスト
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I