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特許7365433車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法
<図1>
  • 特許-車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法 図1
  • 特許-車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法 図2
  • 特許-車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法 図3
  • 特許-車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B62D6/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021575495
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 DE2020200041
(87)【国際公開番号】W WO2021008661
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】102019210509.2
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ファイク・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・ミヒャエル
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020604(JP,A)
【文献】特開2018-012390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0261896(US,A1)
【文献】特開2002-120744(JP,A)
【文献】特開2013-216202(JP,A)
【文献】特開2009-051491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00,30/00-60/00
B62D 5/04, 6/00
G05B 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)の横方向操縦をサポート乃至自動化するための、第一処理ユニット(3)と第二処理ユニット(4)とを有するレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)であって、
前記第一処理ユニット(3)は、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度を有する操舵角を定めることにより操舵モーメント介入を制御することができる様に構成されていて、
前記第二処理ユニット(4)は、精度要求シグナル(g)を第一処理ユニット(3)へ出力し、上下の閾値の間に前記帰還制御精度をスケーリングすることによって、操舵角の定常的帰還制御精度を適合する様に構成されていて、
前記第二処理ユニット(4)は、入力部と出力部を包含する積分手段(I)を備えた帰還制御ユニットを包含し、前記積分手段(I)の出力部は、入力部と精度要求シグナル(G)に依存して加重される様にフィードバック接続されている当前記レーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項2】
上限値は、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度を変化させず、下限値が、定常的帰還制御精度の予め設定されている最大減衰を変化させることを特徴とする請求項1に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項3】
上下の閾値間の精度要求シグナル(G)が、予め与えられ、定常的な帰還制御誤差は、上限値付近において、ゼロに近づき、且つ、下限値付近において、許容される最大帰還制御誤差が発生することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項4】
第二処理ユニット(4)が、操舵角の帰還制御精度を、時間的なフェードオーバーによって調整できる様に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項5】
前記精度要求シグナル(G)が、略連続的に形成され、第二処理手段(4)が、上下の閾値間を補間乃至フェードオーバーするように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項6】
精度要求シグナル(G)に依存する加重が、ゲインファクタであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項7】
外乱値割込を備えた帰還制御手段を有する第一処理ユニット(3)を包含する、但し、外乱値に比例した制御モーメントへの割込が、精度要求シグナル(G)に依存した加重後に実行されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項8】
適合される帰還制御精度の減衰率が、二段乃至多段のカスケード帰還制御ユニットを用いて決定されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項9】
第一処理ユニット(3)が、定常的帰還制御精度を有する操舵角を定めるための操舵角帰還制御ユニット、並びに、操舵角をプレ制御するためのプレ制御ユニットを包含している、但し、プレ制御ユニットの貢献は、作動モーメントに比例した割込が実施される前に、精度要求シグナル(G)による設定条件に従って、スケーリングされることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項10】
定常的帰還制御精度が、第二処理ユニット(4)による適合までは、予め定められた初期値を有していることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項11】
第二処理ユニット(4)が、操舵輪不安定性が発生した場合、及び/又は、ドライバーによる介入が認識された場合は、帰還制御精度を、アダプティブに減衰する様に構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項12】
帰還制御精度が、動的な運転マヌーバやカーブへの進入及び/又はカーブからの退出の際は、少なくとも70%の精度要求シグナル(G)によって定められることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項13】
設定されて走行モードに依存して、及び/又は、ドライバー固有の運転挙動に依存して、精度プリセット(G)を用いて、より強い、又は、やや弱い再命令トルクが、ドライバーが操舵する際に、作用されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)を備えていることを特徴とする車両(2)。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載のレーンガイド付きドライバーアシスタント装置(1)を備えた車両(2)の横方向操縦をサポート乃至自動化するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の横方向操縦をサポート乃至自動化するためのレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、並びに、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーンガイド付きドライバーアシストシステムは、車両を選択されたコースに沿って、横方向及び縦方向に帰還制御するために、捕捉された周辺データと路面データを用いる。横方向車両操縦用のアクチュエータとしては、多くの場合、ドライバーアシストシステムの制御ユニットから適した制御シグナルを受ける電動パワーステアリング装置(EPS)が用いられる。
【0003】
操舵されたの向き、即ち、車両の横方向ポジションに影響を与えるための対応するデフォルトシグナルとしては、EPS電動モータのモータ・モーメントに付加されるオーバーラップ・モーメントに実績がある。これにより、与えられたEPSモータ・モーメントが、ドライバーによって与えられた操舵モーメントとアクチュエータ加速とが直接的な関係となるため、改善された操舵快適性や操舵輪安定性が得られる。しかしながら、モータモーメント・インターフェースにおける短所は、車両バスを介したコミュケーションに起因して頻繁に起こり得る長いシグナル応答時間であり、その結果、帰還制御ダイナミクスに限界がある。
【0004】
この様な応答時間と言う欠点を回避するため、EPSにおける高速な計算タスクを実現できる下位の操舵角帰還制御手段を用いることが一般的である。操舵角帰還制御手段の特性は、レーンガイド付きドライバーアシスタント装置の快適性に関わるパラメータに対して決定的な影響を有している。第一にこれは、直線走行におけるドライバーによって感知可能なステアリングホイールの作動に関しており、ここでは、振幅の小さな、連続的で流れるようなステアリングホイールの動きが、期待されている。
【0005】
更には、ドライバーアシストシステムと同方向又は逆方向へのドライバーによる操舵における操舵感覚は、その際に感じ得る操舵モーメントが、理に適っていると受け入れることができると言う意味において、快適でなければならない。この際、ドライバーは、ステアリングホイールの操舵角が増すに従って、機械的なバネの特徴と同様な略一次関数的に増していく操舵モーメントを見込んでいる。一方、ドライバーは、一定の操舵において、操舵モーメントが、継続的に増していくとは想定していない。
【0006】
市場に出回っている多くのEPS操舵角帰還制御手段は、EPS上のリソースに制限があるため、単純なPI(D)帰還制御ストラクチャ、又は、外乱値補償を有する帰還制御手段をベースにしているが、これらは、単独で見ると適切なガイド変数帰還制御を提供するが、ドライバーアシストシステムと組み合わせると、上記の如く、快適性に欠点を有する、即ち、落ち着かない操舵挙動を示し、ドライバーが操舵をオーバーライドする際は、常に理に適っていると受け入れることができるとは言いがたい操舵感覚を与える。
【0007】
帰還制御された操舵アクチュエータの落ち着かない操舵挙動の原因は、帰還制御手段積分部と、操舵システムの静止摩擦及び滑り摩擦との相互作用にある。これにより、帰還制御手段設定と摩擦インスタンスに依存した振幅と周波数の操舵角のリミットサイクルが形成される。
【0008】
操舵をオーバーライドすることが快適でない理由は、ドライバーによる介入が、操舵角帰還制御において不具合と解釈され、帰還制御手段積分部が、又は、負荷補整手段が、理想角度と(用いることができる調整モーメントの範囲における)実際の角度とが再一致するまで、補正制御されることにあると考えられる。当該帰還制御手段積分部、又は、負荷補整手段のチャージは、急激に実施されるものではなく、帰還制御設計に従い、設定されている時間枠内に実施される。この様な連続的なチャージの増強中、ドライバーは、操舵角が一定に保たれている間も、快適ではなく、且つ、合理さを欠いた理に適っているとは受け入れがたいカウンターモーメントの増加を感じる。
【0009】
ESPの帰還制御の設計においては、良好な快適さと、良好な帰還制御ダイナミクス、外乱値補正制御並びに帰還制御精度を同時に達成すると言うチャレンジは、基礎的な帰還制御ストラクチャを用いる場合、どちらか一方を優先しなければならない相反する目標である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明の課題は、上記のADAS制御装置とEPS操舵角帰還制御手段との相互作用の快適性に関する欠点、言い換えれば、レーンガイド付きドライバーアシスタント装置のシステム性能、特に、レーン維持精度やカーブ進入・退出挙動を制限することなく、落ち着かない操舵挙動及び理に適っていない操舵オーバーライド・モーメントを低減する、又は、排除することである。レーン維持精度の低下は、例えば、定常的及び変動的横方向間隔誤差により、直進及びカーブ走行に影響を与える。
【0011】
課題は、EPSシステムに可能な限り介入せず、ユニバーサルな操舵角帰還制御手段タイプを採用でき、EPSにおけるアプリケーションやテストの手間を最小限に抑え、EPSとドライバーアシストシステム間において必要となるシグナルの流れを最小限にとどめることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本課題は、請求項1に記載の特徴を有するレーンガイド付きドライバーアシスタント装置、請求項15に記載の特徴を有する車両、並びに、請求項16に記載の特徴を有する方法によって、解決される。本発明の好ましい、乃至、有利な実施形態は、従属請求項、以下の明細、並びに、図によって示される。
【0013】
当該課題の解決策は、特に、車両の電動パワーステアリング装置上の操舵角帰還制御手段を、極僅かだけ機能的に拡張し、電動パワーステアリング装置へのインターフェースを1つのインターフェースシグナル分だけ拡張することで、設定条件に応じて電動パワーステアリング装置の定常的な帰還制御精度を、処理ユニット、特に好ましくは、ドライバーアシスタント手段の制御手段を用いて、アダプティブにソフトにすることに基づいている。
【0014】
これにより、車両の横方向操縦をサポートする乃至自動化するレーンガイド付きドライバーアシスタント手段が提供される。ここで言う「レーンガイド付きドライバーアシスタント手段」は、例えば、レーンを維持する、及び/又は、車線変更を実施するためのレーン・アシスタント(Lane Keeping Assist, Lane Departure Protection)であると解釈できる。
【0015】
当該レーンガイド付きドライバーアシスタント手段は、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度を有する操舵角を定めることにより操舵モーメント介入を制御することができる様に構成された第一処理ユニットを包含している。当該第一処理ユニットは、例えば、車両の中央制御手段である。特に、当該第一処理ユニットは、EPS制御手段であることが好ましい。よって、当該第一処理ユニットは、例えば、EPS(Electronic Power Steering、ドイツ語:Elektronische Servolenkung、日本語:電子制御舵取装置)上において、ローカライズされる。ここで言う「定常的帰還制御精度」とは、特に、予め定められ容認される帰還制御エラー、言い換えれば、制御されるべき操舵角の予め定められ容認される誤差であると解釈できる。
【0016】
当該レーンガイド付きドライバーアシスタント手段は、精度要求シグナルを第一処理ユニットへ出力し、上下の閾値の間に当該帰還制御精度をスケーリングすることによって、操舵角の定常的帰還制御精度を適合する様に構成されている第二処理ユニットを包含している。これにより、特に、第一処理ユニットへのインターフェースシグナルを用いて第二処理ユニットによって帰還制御精度を変化させることが実施される。言い換えれば、好ましくは、定常的帰還制御精度のアダプティブな変更が実施される。第二処理ユニットは、特に、レーンガイド付きドライバーアシスタント手段の制御手段であることができる。尚、当該第二処理ユニットは、第一処理ユニットにオーバーライドされる帰還制御である側方誘導を定めるものであることが好ましい。当該精度要求シグナルは、好ましくは、デジタルに構成されている。
【0017】
当該第二処理ユニットは、少なくとも一つ、乃至、それぞれ一つずつの入力部と出力部を包含している積分手段を備えた帰還制御ユニットを有しているが、当該積分手段の出力部は、精度要求シグナルに依存して加重される様に入力部にフィードバック接続されている。ここで言う「加重」は、例えば、加算乃至乗算されるゲインファクタであることができる。言い換えれば、精度要求シグナルを介して、特に積分手段出力部のフィードバックを加重することができる。その結果として、積分手段のチャージが影響を受け、それにより帰還制御精度を変更できることになる。これにより、帰還制御精度を制限することで、更なる積分手段のチャージが無いようにできると言う著しい長所が得られる。
【0018】
特に好ましくは、上限値は、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度を変化させない。更に、下限値は、定常的帰還制御精度の予め設定されている最大減衰を変化させることが好ましい。そして、これらは、二つの極値であることが特に好ましい。これにより、好ましくは、上下の閾値間の精度要求シグナルが、第二処理ユニットによって予め与えられる。その結果として、特に、第一処理ユニットによって実施される操舵角制御手段は、制御する操舵角の帰還制御精度を減衰する機能分、拡張される。
【0019】
尚、定常的な帰還制御誤差は、上限値付近において、ゼロに近づくことが特に好ましい。この場合、定常的帰還制御精度は、変更されない。更には、下限値付近において、許容される最大帰還制御誤差が発生することが好ましい。尚、上下の閾値の間にある値においては、残留する帰還制御誤差は、許容される。この様にすることで、最大帰還制御精度を、例えば、連続的に減衰することができる。
【0020】
例えば、第二処理ユニットは、操舵角の帰還制御精度を、時間的なフェードオーバーによって調整できる様に構成されている。この様にすることで、制御量内の不連続性を有利に低減できる。この様な不連続性は、例えば、状態が飛び飛びに入れ替わる場合に発生する。時間的なフェードオーバーは、例えば、直線的な上昇勾配によって実施可能である。
【0021】
好ましい発展形態によれば、時間的なフェードオーバーを生成するために、当該精度要求シグナルは、略連続的に形成される。更に、当該第二処理手段は、上下の閾値間を補間乃至フェードオーバーするように構成されていることが好ましい。
【0022】
当該第一処理ユニットは、好ましくは、外乱値割込を備えた帰還制御手段を包含しているが、外乱値に比例した制御モーメントへの割込は、精度要求シグナルに依存した加重後に実行される。ここで言う「加重」は、例えば、加算乃至乗算されるゲインファクタであることができる。
【0023】
ある好ましい実施形態によれば、適合される帰還制御精度の減衰率は、二段乃至多段のカスケード帰還制御ユニットを用いて決定される。言い換えれば、減衰率は、要するに、特に高い乃至低い帰還制御精度の実現は、好ましくは、異なるパラメータが設定されている、及び/又は、それらの間において、切り替えるための、オーバーライドするための、及び/又は、補間するための第二処理ユニットが構成されている異なる帰還制御ストラクチャを有する付加的な第二、第三乃至更なる帰還制御手段を使用することにより実現される。
【0024】
ある好ましい更なる実施形態によれば、第一処理ユニットは、定常的帰還制御精度を有する操舵角を定めるための操舵角帰還制御ユニット、並びに、操舵角をプレ制御するためのプレ制御ユニットを包含しているが、プレ制御ユニットの貢献は、作動モーメントに比例した割込が実施される前に、精度要求シグナルによる設定条件に従って、スケーリングされる。特に、プレ制御のスケーリングは、定常的帰還制御精度のスケーリングに依存することなく、例えば、独立した精度シグナルによって実施される。
【0025】
尚、定常的帰還制御精度は、第二処理ユニットによる適合までは、予め定められた初期値を基本設定として有していることが好ましい。
【0026】
また、定常的帰還制御精度の適合は、状況に応じて、特には、実施されるべき、又は、実施された車両の横方向運転マヌーバに応じて実施されることが好ましい。
【0027】
例えば、帰還制御精度は、特に、第二処理手段によって、操舵輪不安定性が発生した場合、又は、予め定められた程度分弱められ、その結果として低減される。
【0028】
代案的、又は、オプション的捕捉として帰還制御精度は、ドライバーによる介入が認識された場合、特に第二処理手段によってアダプティブに弱められる、又は、予め定められた程度分弱められる。
【0029】
尚、当該帰還制御精度は、動的に実施される乃至実施された運転マヌーバやカーブへの進入及び/又はカーブからの退出の際に、第二処理手段によって、特に好ましくは、少なくとも70%、特に好ましくは、100%の精度要求シグナルによって定められる。ここで言う「動的な運転マヌーバ」とは、例えば、二連続の車線変更、又は、回避動作(緊急回避)のことである。即ち、特にセーフティ・クリティカルな交通シナリオにおいて、正確な操舵プロセスの実施が保証される。動的な運転マヌーバは、例えば、ウインカーのセット、突然のドライバーによる介入やドライバーの運転挙動を評価すること、例えば、前方の渋滞の最後部など周辺部を評価することによって割出されることができる。
【0030】
ある好ましい更なる実施形態によれば、設定されて走行モードに依存して、及び/又は、ドライバー固有の運転挙動に依存して、精度プリセットを用いて、より強い、又は、やや弱い再命令トルクが、ドライバーが操舵する際に、作用される。「走行モード」とは、例えば、設定可能なスポーツ、快適、又は、ECO走行モードのことである。ここで言う「ドライバー固有の運転挙動」とは、特に、例えば、スポーティ、快適性重視、先験的な、又は、ゆっくりとした運転スタイルと言ったドライバーのタイプであると解釈できる。言い換えれば、当該第二処理ユニットは、運転挙動や走行モードがスポーティになればなるほど、帰還制御精度を高めることができる様に構成されている。これは一例に過ぎないが、スポーツモードが設定されている場合、スポーティなタイプのドライバーは、一般的に、直接的な操舵挙動を不快に感じないことが多いため、少なくとも70パーセントの精度要求シグナルを有する帰還制御精度を、想定することができる。
【0031】
概ドライバーアシスタント手段は、特に好ましくは、マイクロコントローラ乃至プロセッサ、中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit/特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array/フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、並びに、これらに類するもの、及び、関連する方法ステップを実施するためのソフトウェアを包含している。
【0032】
よって、本発明は、デジタル・エレクトロニクス回路、コンピュータ・ハードウェア、ファームウェア乃至ソフトウェアとして実施されることができる。
【0033】
本発明の更なる対象は、上記の明細に係るレーンガイド付きドライバーアシスタント手段を装備した車両に関する。
【0034】
本発明の更なる対象は、上記の明細に係るレーンガイド付きドライバーアシスタント手段を装備した車両をサポートするための、又は、自動化するための方法に関する。これは、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度における操舵角設定による操舵モーメント介入によって制御されるが、当該操舵角の定常的帰還制御精度は、精度要求シグナルの出力によって、帰還制御精度のスケーリングが、上下の閾値間になるように適合される。
【0035】
本発明の更なる対象は、レーンガイド付きドライバーアシスタント手段を装備した車両の横方向操縦をサポートする又は自動化するためのコンピュータープログラム・プロダクトに関するが、当該コンピュータープログラム・プロダクトは、車両の制御装置内乃至車載コンピュータ上で実行されたとき、先に説明された方法を実行する命令を包含している。
【0036】
本発明の更なる特徴、長所、及び、作用は、以下の好ましい実施例の説明によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第一及び第二処理ユニットを有するレーンガイド付きドライバーアシスタント手段を概略的に示す。
図2】プレ制御を備えた従来のPID操舵角帰還制御手段を用いた場合の図1のレーンガイド付きドライバーアシスタント手段の実施例を示す。
図3】精度プリセットのパスに対して外乱値割込を備えたPD操舵角制御手段の拡張例を示す。
図4】P-PIカスケード帰還制御手段を精度プリセットのパス分、拡張した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、車両2用のレーンガイド付きドライバーアシスタント手段1の概略的な描写を示している。ドライバーアシスタント手段1は、電動サポートされた操舵システムの定常的帰還制御精度を有する操舵角を定めることにより操舵モーメント介入を制御することができる様に構成された第一処理ユニット3を包含している。第一処理ユニット3は、例えば、操舵モーメント介入を制御するための電動パワーステアリング手段EPSの制御装置である。
【0039】
ドライバーアシスタント手段1は、精度要求シグナルを第一処理ユニット3へ出力し、上下の閾値の間に当該帰還制御精度をスケーリングすることによって、操舵角の定常的帰還制御精度を適合する様に構成されている第二処理ユニット4を包含している。
【0040】
図2は、プレ制御を備えた従来のPID操舵角帰還制御手段1を用いた場合の図1のレーンガイド付きドライバーアシスタント手段の実施例を示している。単なる例示ではあるが、ここでは、当該第二処理ユニット3は、入力部と出力部を包含する積分手段Iを備えた帰還制御ユニットを包含している、但し、当該積分手段Iの出力部は、入力部と精度要求シグナルGに依存して加重される様にフィードバック接続されている。
【0041】
この際、本発明に係るアスペクトは、プレ制御の割合は、[0%…100%]の値範囲を有する連続的な精度プリセットGの設定条件に依存して、スケーリングされることである。
【0042】
本発明に係る更なるアスペクトは、これも精度要求シグナルGに従ってスケーリングされる帰還制御手段の積分手段出力部が、積分手段入力部に、負帰還と言う意味でフィードバックされることである。精度プリセットが、100%である場合、ループゲインは、0であり、精度プリセットが100%である場合、それは、与え得る最大ゲインMとなる。
【0043】
負帰還ブランチを有する積分手段ブロックの伝達関数は、以下のとおりである:
G(s)=1/(s+最大フィードバック係数M*(1-精度プリセットG/100))
【0044】
純粋な積分手段から精度プリセットGの値いかんによって、予め設定自在なDCゲインを有するPT1エレメントが得られる。
【0045】
これら双方の対策により、ドライバー介入の際、積分手段Iによる連続的なチャージの増強を効果的に回避することができる。精度要求シグナルGが0%の場合に、最大フィードバック係数M用に高い値が選択されていると、ドライバーがステアリングホイールを切った時には、言ってみれば、
減衰されたスプリングのシステム等式に相当するためドライバーにとって理に適っていると受け入れることができる、EPS_Motormoment_Ueberlagerung(モータ・モーメント_オーバーラップ)=control_error*(s*kd+kp)の大きさのEPSモータ・オーバーラップ・モーメントを発生させるPD帰還制御手段のみであるかの様な状態となる。
【0046】
プレ制御割合のスケーリングをしない場合、プレ制御次第では、ドライバーに理に適っていないと感じられ得る操舵角に依存した付加的な付加モーメントが発生する。
【0047】
純粋な積分手段IをPT1エレメントに変換することに伴い、システムの静止摩擦と滑り摩擦とに依存し主に付着滑りに関する正確な定常的帰還制御精度を得ようと努めなくなるため、帰還制御手段が、制御値「操舵角」のリミットサイクルも阻止される。これにより操舵輪安定性及びドライバーの感じる乗り心地が高められる。
【0048】
第一処理ユニット3、特に、第一処理ユニット3の操舵角帰還制御手段が、PI(D)アプローチではなく、EPSをベースにしている場合であっても、当該方法は、図3からも解るように、同様に実施可能である。
【0049】
図3は、精度プリセットのパスに対して外乱値割込を備えたPD操舵角制御手段の拡張例を示している。ここには、外乱値割込を備えた帰還制御手段を有する第一処理ユニット3が示されているが、外乱値に比例した制御モーメントへの割込は、精度要求シグナルに依存した加重後に実行される。
【0050】
外乱値推定及び割込をベースとした帰還制御手段を用いる場合、推定された外乱値外乱モーメント・ロー(Stoermoment_roh)は、割込される前に、精度シグナルによってスケーリングされる:
外乱モーメント(Stoermoment)=(外乱モーメント・ロー(Stoermoment_roh)*(精度プリセットG/100))
【0051】
図4は、P-PIカスケード帰還制御手段を精度プリセットのパス分、拡張した例を示している。この実施例では、複数の異なるパラメータ化と異なる帰還制御ストラクチャ(デザイン)を有する帰還制御手段を実現でき、その間において、第二処理ユニット4が構成され、切り替え自在であり、フェードオーバー、及び/又は、補間できるように、多段のカスケード帰還制御ユニットによって、適合される帰還制御精度の減衰率が定められる。
【0052】
例示されているカスケード帰還制御は、操舵角用のP帰還制御手段と操舵角速度用のPI帰還制御手段を包含しているが、インナーカスケードの積分手段Iは、図2のPID帰還制御手段と同様に、制限される。
I成分を有する状態帰還制御手段アプローチ乃至カスケード帰還制御手段アプローチの場合、積分手段Iは、適宜、フィードバック接続される(図4の実施例参照)。
【0053】
帰還制御手段如何によらず一般的に定常的な帰還制御精度を司るパスは、効果に関してスケーリングして減衰される。
【0054】
注意すべきは、図4に示されている二段のカスケード帰還制御は、例示であり、限定されるものではなく、他の帰還制御手段や帰還制御手段タイプもP帰還制御手段やPI帰還制御手段として考え得ることである。
【0055】
アダプティブな帰還制御手段精度インターフェースのオペレーションは、必要に応じて、又は、原則的に実施されることができる。これにより、操舵輪不安定性が発生した場合は、精度をアダプティブに低減できる。また、ドライバー介入が認識された場合も、操舵モーメントを適合するために精度を低減できる。ダイナミックな運転マヌーバや、カーブへの侵入乃至カーブからの退出では、少なくとも70%と言った高い精度を選択することが好ましい。
図1
図2
図3
図4